特許第5881848号(P5881848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881848会議システムにおけるエコー・キャンセルのための方法および構成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881848
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】会議システムにおけるエコー・キャンセルのための方法および構成
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/02 20060101AFI20160225BHJP
   H04M 3/56 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   H04R3/02
   H04M3/56 C
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-542777(P2014-542777)
(86)(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公表番号】特表2015-506126(P2015-506126A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】EP2012072696
(87)【国際公開番号】WO2013075998
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2014年7月17日
(31)【優先権主張番号】11306550.2
(32)【優先日】2011年11月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】ドベラーレ,フィリップ
【審査官】 菊池 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−164239(JP,A)
【文献】 特表2005−513835(JP,A)
【文献】 特開2003−060792(JP,A)
【文献】 特開昭59−153367(JP,A)
【文献】 特開2003−333560(JP,A)
【文献】 米国特許第06320958(US,B1)
【文献】 米国特許第06327276(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0310328(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00− 3/14
H04M 3/38− 3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エコー・キャンセルのための方法であって、
それぞれの取得されたマーク付けされたソース信号(D1;D11、D21)を送信するために、それぞれのソース信号のそれぞれの開始するタイミング基準を識別するための、またそれぞれのトランスミッタ(TX1;TX11、TX21)を識別するためのそれぞれのマーカー信号(m1;m11、m21)を用いてそれぞれのソース信号(S1;S11、S21)をマーク付けするステップと、
少なくとも1つの集約ノード(AN1;AN1、AN2、AN)に対する前記それぞれのトランスミッタによる前記それぞれマーク付けされたソース信号を送信するステップと、
前記少なくとも1つの集約ノードによって受信された前記それぞれのマーク付けされたソース信号を合計し、それによって、マルチキャスト・ノード(mcast)を経由して、前記それぞれのトランスミッタ(TX1;TX11、TX21)に関連するそれぞれのレシーバ(RX1;RX11、RX21)に対して提供するためのマルチキャスト信号(DAG1;DA)を生成するステップと、
前記それぞれのレシーバにおいて、前記それぞれのマーク付けされたソース信号(D1;D11、D21)を修正し、それによってそれぞれの遅延され、また正規化されたそれぞれのマーク付けされたソース信号を取得するために、それぞれの往復電力正規化値と往復遅延値とを決定するステップと、
前記それぞれのレシーバにおいて、前記マルチキャスト信号から前記それぞれの往復の遅延され、また正規化されたマーク付けされたソース信号を差し引き、それによって、前記それぞれのレシーバにおいてそれぞれのエコー・キャンセルされたマルチキャスト信号(EC1;EC11、EC21)を取得するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記それぞれのマーカー信号(m1)は、前記それぞれのソース信号に対する帯域内信号として生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記それぞれのマーカー信号(m1;m11)は、前記それぞれのソース信号に対する帯域外信号として生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数のトランスミッタと、複数のレシーバと、マルチキャスト・ノードと、少なくとも1つの集約ノードとを含むシステムであって、
各トランスミッタ(TX1;TX11)は、ソース信号(S1;S11)を、前記ソース信号の時間基準を識別するための、また前記トランスミッタを識別するためのマーカー信号(m1;m11)を用いてマーク付けするように適合された信号ソース修正手段(SM1;SM11)を備え、
前記信号ソース修正手段は、それによって、前記少なくとも1つの集約ノード(AN1)を経由して前記マルチキャスト・ノード(mcast)に対する送信のためにマーク付けされたソース信号(D1;D11)を生成するように適合されており、
前記少なくとも1つの集約ノードは、前記トランスミッタからの前記それぞれのマーク付けされたソース信号を合計し、それによって、前記マルチキャスト・ノード(mcast)を経由して、前記複数のレシーバに対して提供するためのマルチキャスト信号(DAG1;DA)を生成するように適合されており、
各レシーバ(RX1;RX11)は、前記複数のトランスミッタのうちの一つのトランスミッタ(TX1;TX11)に関連づけられ、またそれから前記マルチキャスト信号(DAG1;DA)を受信するための前記マルチキャスト・ノード(mcast)に結合されており、
前記レシーバはさらに、それぞれの遅延され、また正規化されたマーク付けされたソース信号を生成するための、前記レシーバに関連する前記トランスミッタによって提供される、それぞれのマーク付けされたソース信号(D1;D11)の、前記レシーバにおける修正ステップ中に使用されるためのそれぞれの往復電力正規化値および往復遅延値を決定するように適合されており、
前記レシーバはさらに、前記マルチキャスト信号(DAG1;DA)から前記それぞれの往復遅延され、また正規化されたマーク付けされたソース信号を差し引いて、それによって、エコー・キャンセルされたマルチキャスト信号(EC1;EC11)を取得するように適合されており、
前記レシーバはさらに、前記トランスミッタに結合されている少なくとも1つの集約ノードにおける総和プロセスの結果としての通話に参加するトランスミッタの数量として前記それぞれの往復電力正規化値を決定するように適合されており、
前記レシーバはさらに、前記マルチキャスト信号を、ある種の可変な遅延へシフトした前記トランスミッタから受信されるそれぞれのマーカー信号と比較することにより、両方のマーカーが一致するときに遅延が決定されるように、前記それぞれの往復遅延値を決定するように適合されている、システム
【請求項5】
各トランスミッタ(TX1)が、前記マーカー信号(m1)前記ソース信号(S1)に対する帯域内信号として生成するように適合されたマーカー生成手段(MG1)を含む、請求項4に記載のシステム
【請求項6】
各トランスミッタ(TX1)が、前記マーカー信号(m1;m11)前記ソース信号(S1;S11)に対する帯域外信号として生成するように適合されたマーカー生成手段(MG1;MG11)を含む、請求項4に記載のシステム
【請求項7】
トランスミッタ(TX1;TX11)に関連づけられ、またそれからマルチキャスト信号(DAG1、DA)を受信するためのマルチキャスト・ノード(mcast)に結合されており、さらに、それぞれの遅延され、また正規化されたマーク付けされたソース信号を生成するための、レシーバに関連する前記トランスミッタによって提供される、それぞれのマーク付けされたソース信号(D1;D11)の、前記レシーバにおける修正ステップ中に使用されるためのそれぞれの往復電力正規化値および往復遅延値を決定するように適合されており、さらに、前記マルチキャスト信号(DAG1;DA)から前記それぞれの往復遅延され、また正規化されたマーク付けされたソース信号を差し引いて、それによって、エコー・キャンセルされたマルチキャスト信号(EC1;EC11)を取得するように適合されているレシーバ(RX1;RX11)。
【請求項8】
1つまたは複数のデータ処理装置の上で実行されるときに、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法ステップを実行するように適合されたソフトウェアを含むコンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、会議サービスについてのエコー・キャンセルのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かなりの距離を隔てたテレビ会議システムにおいて使用されるような、複数の関係者のオーディオ接続においては、現在、すべてのオーディオ・ソースを表す集約信号は、あらゆる個別のソースに関してかなりの遅延を有する可能性がある。これに起因して、集約信号が、例えば、ラウドスピーカを経由して、ソース施設において受信されて戻されるときには、この集約信号のローカル・オーディオ・ソースをフィルターにかけて取り除く必要がある。これは、この遅延された元の信号が、ほぼ1秒程度またはそれより長いことさえある遅延を伴う深刻なエコーとして考えられることになるからである。セントラル・サーバにおける伝統的な実装形態は、それゆえに、個々に異なる集約信号の束を生成するために、すべての他の信号を選択的に合計することができる。これは、しかしながら、重いネットワーキング負荷をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多数の参加者の信号がコンポジット信号を生成するように追加される会議ブリッジのようなアプリケーションについてのエコー・キャンセルのための簡単であるが、それにもかかわらず有効な方法を可能にするための代替的な方法および構成を提供することが、本発明の実施形態の一目的である。
【0004】
ただし、例えばマイクロフォンに対するラウドスピーカの結合に起因する音響エコー・キャンセルに対処することは、本発明の実施形態の目的ではない。したがって、送信信号のリターン・エコーを抑制するための問題解決手法を提供することが、一目的である。音響エコーも抑制される必要があることは明らかであるが、このためには他の技法が一般的に使用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、この目的は、エコー・キャンセルのための方法によって達成され、前記方法は、
それぞれの取得されたマーク付けされたソース信号を送信するために、それぞれのソース信号のそれぞれの開始するタイミング基準を識別するための、またそれぞれのトランスミッタを識別するためのそれぞれのマーカー信号を用いて前記それぞれのソース信号をマーク付けするステップと、
少なくとも1つの集約ノードに対する前記それぞれのトランスミッタによるそれぞれマーク付けされたソース信号の送信のステップと、
前記少なくとも1つの集約ノードによって受信されたそれぞれのマーク付けされたソース信号を合計し、それによって、マルチキャスト・ノード(mcast)を経由して、それぞれのトランスミッタに関連するそれぞれのレシーバに対して提供のためのマルチキャスト信号を生成するステップと、
前記それぞれのレシーバにおいて、前記それぞれのマーク付けされたソース信号を修正し、それによってそれぞれの遅延され、また正規化されたそれぞれのマーク付けされたソース信号を取得するために、それぞれの往復電力正規化値と往復遅延値とを決定するステップと、
前記それぞれのレシーバにおいて、前記マルチキャスト信号からそれぞれの往復の遅延され、また正規化されたマーク付けされたソース信号を差し引き、それによって、前記それぞれのレシーバにおいてそれぞれのエコー・キャンセルされたマルチキャスト信号を取得するステップと
を含む。
【0006】
セントラル・サーバにおける選択的処理が、必要とされず、またローカル・エコー・キャンセルが、今や、レシーバにおいて集約信号から遅延され、また利得調整されたマーク付けされたソース信号のはるかに簡単な減算に帰着させられるので、これは、大きなエリアに広がる会議サービスをサポートするために必要とされる処理電力およびエネルギーをかなり低減させる。
【0007】
一実施形態においては、本方法は、集約ノードによってそれぞれ送信されたマーク付けされたソース信号を受信するステップと、前記集約ノードにおいて、それぞれの受信されたマーク付けされたソース信号について、それぞれの遅延されたソース信号とそれぞれのマーカーへと分離するステップと、それぞれの遅延されたソース信号とそれぞれのマーカーを再び合計し、それによって前記マルチキャスト・ノードへ提供するための集約信号を生成するステップとをさらに含む。
【0008】
この問題解決手法は、1つの集約ノードに結合されるトランスミッタ/レシーバ・ノードのいくつかのクラスタが、最終的なマルチキャスト・ノードに対するツリー状構成へとさらに接続され得るので、アクティブな参加者の数に関して非常にスケーラブルであることが分かっている。そのような構成を用いると、音声をただ聴いている受動的な参加者を追加することは、非常に簡単であり、エネルギー効率がよく、またどのようなさらなる処理電力も、または重いネットワーク負荷も必要としない。
【0009】
一実施形態においては、マーカー信号は、前記ソース信号に対する帯域内信号として生成される。
【0010】
これは、結果として生じるマルチキャスト信号が、この信号を搬送するレガシー機器によってトランスペアレントに取り扱われ得る単一の信号であるという利点を有する。
【0011】
一実施形態においては、異なるトランスミッタについてのそのような帯域内信号のうちの異なる帯域内信号は、元のオーディオ信号の中に、例えば、低電力雑音信号として挿入される適切な相関特性を有する疑似ランダム・コードに基づいて生成される可能性があり、その結果、人間によってはほとんど気付くことができないが、相互に関連するデコーダだけが、マーカーを抽出することができる。これらのコードのおのおのは、特定のトランスミッタ毎に異なり、またこれらのコードは、通常、例えば、この方法を実現するためのマスタ・ソフトウェア・プログラムを用いて、あらかじめ決定される。
【0012】
別の実施形態においては、予備の、または未使用のオーディオ信号ビットは、マーカーの帯域内符号化のために使用される可能性がある。複数の除外された値を注意深く帰属させることにより、オーディオ・デコーダからのシンボル・ビットは、マスクされることになる。8−ビット・システムにおいて、それは、例えば、0、127および255を表す以下の組合せが、除外される場合とすることができる。{0、127、255}の中にあるMと、{0、127、255}の中にないVとを用いたMVMを満たす任意の3ビットは、1のシンボルであり、任意の3ビットのMMVは、0のシンボルである。
【0013】
さらに別の実施形態においては、前記マーカー信号は、前記ソース信号に対する帯域外信号として生成される。
【0014】
本発明は、同様に、前記ソース信号の時間基準を識別するための、またトランスミッタを識別するためのマーカー信号を用いてソース信号をマーク付けするように適合された信号ソース修正手段を備えるトランスミッタの実施形態に関し、前記信号ソース修正手段は、それによって、集約ノードに対する送信のためのマーク付けされたソース信号を生成するように適合されている。
【0015】
本発明はまた、複数のそのようなトランスミッタに結合され、またこれらのトランスミッタによって送信されるそれぞれの受信されたマーク付けされたソース信号をマルチキャスト・ノードへのさらなる送信のための集約信号へと合計するように適合された集約ノードについての実施形態に関する。
【0016】
一実施形態においては、これらのマーク付けされた受信ソース信号は、最初に、それぞれのマーカー信号と、遅延されたソース信号へと分離され、共通の時間基準に向かって同期化のステップが、続いており、この同期化された信号は、次に、合計されて、マルチキャスト・ノードへのさらなる送信のための集約信号を形成する。
【0017】
本発明はまた、少なくとも1つの集約ノードに結合され、また前記少なくとも1つの集約ノードから、前記複数のそれぞれのトランスミッタに関連する複数のそれぞれのレシーバに向かってさらにプロビジョニングしているいずれかのマルチキャスト信号を受信するように適合されたマルチキャスト・ノードの実施形態に関する。
【0018】
代わりに、マルチキャスト・ノードは、少なくとも1つのそれぞれの集約信号を受信するように、また前記複数のそれぞれのトランスミッタに関連する複数のそれぞれのレシーバに向かってさらにプロビジョニングするために前記少なくとも1つのそれぞれの集約信号をマルチキャスト集約信号へと合計するように適合されるように最終的な集約ノードと結合される可能性もある。
【0019】
さらに、本発明はまた、マルチキャスト・ノードに結合され、またトランスミッタに関連づけられるレシーバの実施形態に関し、前記レシーバは、マルチキャスト・ノードから、マルチキャスト信号を受信するように適合されており、前記レシーバは、さらに、それぞれの遅延され、また正規化されたマーク付けされたソース信号を生成するための、前記レシーバに関連する前記トランスミッタによって提供される、それぞれのマーク付けされたソース信号の、前記レシーバにおける修正するステップ中に使用されるためのそれぞれの往復電力正規化値および往復遅延値を決定するように適合されており、前記レシーバは、さらに、前記マルチキャスト信号からそれぞれの往復の遅延され、また正規化されたマーク付けされたソース信号を差し引いて、それによってエコー・キャンセルされたマルチキャスト信号を取得するように適合されている。
【0020】
特許請求の範囲において使用される用語「結合される(coupled)」は、直接接続だけに限定されるようには解釈されるべきではないことに注意すべきである。それゆえに、表現「デバイスBに結合されるデバイスA」の範囲は、デバイスAの出力が、デバイスBの入力に直接に接続されるデバイスまたはシステムだけに限定されるべきではない。それは、他のデバイスまたは手段を含む経路とすることができる、Aの出力と、Bの入力との間の経路が、存在することを意味している。
【0021】
特許請求の範囲において使用される用語「備えている/含んでいる(comprising)」は、以下でリストアップされる手段だけに限定されるように解釈されるべきではないことに注意すべきである。それゆえに、表現「手段Aと、Bとを備えるデバイス」の範囲は、コンポーネントAと、Bとだけから構成されるデバイスだけに限定されるべきではない。それは、本発明に関して、デバイスのただ関連のあるコンポーネントが、Aと、Bとであることを意味している。
【0022】
添付の図面と一緒に解釈される一実施形態についての以下の説明を参照することにより、本発明の上記および他の目的および特徴は、より明らかになり、また本発明それ自体は、最も良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】1つの集約ノードに、またマルチキャスト・ノードに結合されるトランスミッタ/レシーバの構成を示す図である。
図2】関連する結合されたトランスミッタおよびレシーバと、1つのマルチキャスト・ノードとを有する集約ノードのツリー構造の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、複数のトランスミッタTX1からTXnを備えるシステムの一例を示すものである。図面を詰め込みすぎないようにするために、TX1だけが、十分に詳細に示されている。しかしながら、このシステムのすべての他のトランスミッタは、TX1に類似している。
【0025】
本システムは、オーディオ会議システムの一例として説明されるであろう。しかしながら、図面の中で示され、また以下の複数の段落において説明されるようなシステムは、オーディオ/ビデオ/データであるか、またはこのすべての混合物であるかにかかわらず、任意のタイプの会議構成に同様に適用される可能性がある。
【0026】
TX1は、ソース入力信号を受信する手段を備える。図1において、トランスミッタに対するこのソース入力信号は、A/D変換されたデジタル信号S1であり、示されたスピーカによって発せられるアナログ音声信号を表しており、このアナログ信号は、マイクロフォンを用いて感知され、またよく知られている回路を用いてデジタル・スピーチ信号またはデジタル・オーディオ信号へと変換される。
【0027】
トランスミッタTX1は、ソース信号S1を受信し、またこの受信のすぐ後に、マーカー生成手段MG1をトリガするように適合された信号ソース修正手段SM1をさらに備える。トリガ信号は、SM1からMG1への間の破線としてc1で示される。MG1は、このトリガ信号c1の受信のすぐ後に、マーカー信号m1を生成するように適合され、このマーカー信号m1を使用して、ソース信号の開始する時間基準を識別し、またさらにトランスミッタTX1を識別する。トランスミッタのこの識別情報は、例えば、公開IPアドレス、またはMACアドレス、あるいは会議システムの上のアカウント、または構造化された電話番号などとすることができ、また通常、ビット・ストリングの形態の下で提供される。ソース信号の時間基準の識別は、例えば、自由なビットまたは予備のビットを使用することにより、例えば、第1のスピーチ・パケットの中へのトランスミッタ識別情報を表すシンボルの挿入によって実行される可能性がある。これらのマーカー・ビットが、ストリームの中に挿入される場合の位置は、次いでタイミング基準を示すように表現することができる。この問題解決手法は、帯域内の問題解決手法に対応する。
【0028】
代わりに、別々の信号が、このマーカーのために使用されることを意味する帯域外の問題解決手法が、使用されることもある。一実施形態においては、一実施形態においては、これは、例えば、端末の中のデータ構造に対するポインタを含む、ビットの別個の並列シーケンスによって表される可能性もあり、このデータ構造は、端末識別情報を含む。このポインタまたは第2のポインタは、タイミング基準を示す開始時間を示すために、データストリームそれ自体における特定の位置を指し示している可能性もある。代わりに、データ・ビットストリームそれ自体に関して、この余分なビットストリームの相対的な開始時間は、それ自体、タイミング基準を表すこともでき、それによって第2のポインタの使用を軽減することができる。
【0029】
信号ソース修正手段SM1は、それによって、ソース信号S1へのこのマーカー信号m1の包含により着信ソース信号を修正することになる。結果として生じる信号は、マーク付けされたソース信号D1で示され、また通信ネットワークを経由して、マルチキャスト・ノードmcastに対して送信される。
【0030】
マーカー信号m1が、前記ソース信号S1に対する帯域内信号として生成されるときに、それは、追加の雑音として現れて、それを信号の中で隠すことができる。おのおのの異なる端末についてのマーカーのための帯域内信号は、例えば、端末の間で適切な相関特性を有する疑似ランダム・コードに基づいたものとすることができ、その後に、良好な識別を可能にすることができる。
【0031】
代わりに、マーカー信号は、それゆえに、前記ソース信号S1に対する帯域外信号として生成されることもある。これは、信号が、追加の雑音なしに搬送され得る利点を有するが、信号が、時間情報を搬送するためのオーディオ・ソース・データストリームと同期させられる追加のストリームを必要とする短所を有する。
【0032】
マーク付けされたソース信号で示される、結果として生じる信号は、図1においてD1によって表現される。D1は、それゆえに、ソース信号とすることができ、そこでは、いくつかの予備のビットは、今や何らかの専用の値を受信しており、または2つの並列な同期信号から、すなわち、m1と一緒にS1から構成されることもある。
【0033】
会議システムの各参加するトランスミッタTX1からTXnは、次いで、一般に集約ノードを経由して、それらのマーク付けされたソース信号をマルチキャスト・ノードに対して生成し、また送信するように適合される。そのような集約ノードは、図1上でAN1で示され、またこの集約ノードに結合されるトランスミッタTX1からTXnによって送信される、D1’からDn’で示されるそれぞれの遅延されたマーク付けされたソース信号を受信するように適合される。そのような集約ノードは、それらのトランスミッタからかなりの距離に配置される可能性があるので、それぞれのマーク付けされたソース信号は、一般に、それぞれのネットワーク遅延を受けていることになる。一実施形態においては、集約ノードAN1は、ただ、これらの異なる遅延された信号を総和信号へと合計することになる。別の好ましい実施形態において、集約ノードAN1は、それらの元のそれぞれの遅延されたマーカー信号m1”、...、mn”へと、またS1”からSn”で示されるそれぞれの遅延されたソース信号へと、それぞれの遅延されたマーク付けされたソース信号を分離するように適合される。これは、図1の実施形態において示されている。
【0034】
次のステップにおいて、これらの再同期されたそれぞれの遅延されたソース信号S1”、...、Sn”ならびにそれらの再構成されたマーカーm1”からmn”は、再同期されたマーク付けされたソース信号D1”からDn”を形成するために再び統合され、またこれらのそれぞれの再同期されたマーク付けされたソース信号は、次に、マルチキャスト・ノードに向かって、また場合によっては別の集約ノードを経由してさらなる送信のために集約信号DAG1を生成するように合計される。
【0035】
それぞれの遅延されたマーク付けされたソース信号D1’からDn’が、それらのそれぞれのソース信号と、マーカーとに分離されていない、以前に説明された実施形態においては、再同期させられる前に、これらのそれぞれの遅延されたマーク付けされたソース信号は、集約ノードAN1に単に合計される。
【0036】
図1においては、ただ1つの集約ノードが示されており、この集約ノードは、マルチキャスト・ノードに直接にリンクされる。図2を参照して説明されるように、一般に、集約ノードのチェーンが存在し得る。次いで、最後の集約ノードANは、異なる受信信号を、例えば、図2におけるDAG1とDAG2とを合計して、最終的な集約信号DAを生成し、この集約信号は、次いで、異なるレシーバに対してマルチキャストして戻される。
【0037】
図1において、マルチキャスト・ノードは、mcastで示され、またmcastに結合されたただ1つの集約ノードが存在している。この場合、このマルチキャスト・ノードは、この集約ノードから集約信号DAG1を受信するように適合されており、またさらに、集約ノードに結合されたトランスミッタに関連するすべてのレシーバに向かってマルチキャスト構成でそれを提供する。
【0038】
トランスミッタTX1に関連するレシーバは、図1においては、RX1で示される。RX1は、TX1からマーク付けされたソース信号D1を受信し、またmcastからマルチキャスト集約信号を、この実施形態においては、ちょうど集約信号DAG1を受信する。レシーバRX1は、さらに、マルチキャスト集約信号DAG1から遅延され、また電力正規化されたマーク付けされたソース信号を差し引くように適合される。これは、DAG1が、会議通話に対する会話する参加者の数に関連したよく知られた値を用いて減衰されているD1の時間遅延されたコピーを含むからである。この往復電力正規化値は、集約するノードにおける総和プロセスの結果であるので、この減衰値は、往復電力正規化値として考えられる可能性があり、また通話に参加するアクティブなトランスミッタの数量に等しい。レシーバにおけるデジタル・コーダにとって使用可能な最大分解能を使用する固有の利得適応を使用することにより、またマーカーに起因して、D1に関するDAG1の正確な遅延は、例えばコンパレータにおいて両方のマーカーが一致するときに、遅延が決定されるように、例えば、受信信号DAG1をマーカー信号m1と比較することにより決定されるが、ある種の可変な遅延へとシフトされる可能性もある。DAG1からそのときに遅延され、また電力調整されたD1信号を差し引くことにより、エコーのないマルチキャスト信号が、次いで取得される。これは、EC1で示され、また図1においてラウドスピーカL1として示されている出力デバイスに対して供給される。オプションとして、このプロセスを容易にするために、元のソース信号S1はまた、ユーザがユーザ自身が話していることを聴くことを可能にするために、ラウドスピーカに別に供給されることもある。
【0039】
図2は、それぞれのトランスミッタ/レシーバの組合せに結合された集約ノードの2つのクラスタを備えるシステムを示すものであり、これらのクラスタのうちの各集約ノードは、ここでは、それ自体、マルチキャスト・ノードに接続された最終的な集約されたノードに結合されている。アップストリーム方向における、したがって、トランスミッタから集約ノードへの各クラスタの内部のオペレーションは、図1を参照して説明されたものと基本的に同じである。図1の実施形態との違いは、ここでは各集約ノードAN1とAN2とが、それぞれの集約信号DAG1とDAG2とをDAで示される最終的な集約信号へと合計する最終的な集約ノードANに対してそのそれぞれ生成された集約信号DAG1、DAG2を供給することであり、この最終的な集約信号は、そのときには、マルチキャスト・ノードに供給するためのマルチキャスト信号に対応することになる。このマルチキャスト・ノードmcastは、さらに、それぞれの集約ノードAN1とAN2とに結合された2つの複数のレシーバに対してこのマルチキャスト信号を供給することになる。
【0040】
いくつかの実施形態においては、マルチキャスト・ノードと、最終的な集約ノードとは、1つの単一装置へと組み込まれるように結合される可能性があることに注目すべきである。
【0041】
すべての実施形態においては、あらゆる参加者は、集約信号DAのまさに同じコピーを受信する。マルチキャスト・ツリーにおけるあらゆるノードは、まさに同じ信号を処理し、ツリーが、ネットワーク・トポロジについて最適化されることを可能にするので、マルチキャスト・ノードmcastからすべての参加者へと戻る分布は、このようにしてマルチキャスト・ツリーを用いて最適化される可能性があり、大きな帯域幅とエネルギーとの節約を保証する可能性がある。伝統的なシステムにおいては、これは、あらゆる参加者に対して進む信号が同じではないので、不可能であった。
【0042】
そのような分散型システムは、一般に2つの異なるツリー構造を使用して、アップストリーム・データと、ダウンストリーム・データとを管理することができる。アップストリーム・データは、すべてのブランチ上で異なる信号を搬送するツリーを使用する。このツリーに対して新しいオーディオ・ソースを追加することは、ツリーの中で、したがって、新しいトランスミッタに結合された集約ノードを経由して、ローカルに行われる可能性がある。これは、ツリーの残りの部分には影響を及ぼさない。
【0043】
ダウンストリーム・データは、すべてのブランチ上で、DAで示される、同じマルチキャスト信号を搬送するツリーを使用する。このツリーに対して、非アクティブ・トランスミッタに結合される新しい音声のリスナーまたはレシーバを追加することは、ローカルに行われる可能性があり、またさらに重要なことに、すべてのブランチが、同じ信号を搬送するので、ツリーは、非常に簡単に再バランスさせることができる。これは、膨大な量の受動的なリスニング参加者を接続に加入させることを非常に簡単にする。
【0044】
アクティブなトランスミッタTX11に結合されたレシーバ、例えば、RX11の内部で、マーク付けされたソース信号D11は、この場合にも、往復電力正規化ファクタを用いて最初に正規化され、また時間遅延を用いて遅延させられる。電力正規化は、通話に参加するアクティブなトランスミッタの数量として決定されることもあり、また遅延値は、例えば、時間変化する基準を有する純粋なマーカー信号を受信信号と比較する上記で述べられる技法を用いてDAから決定されることもある。マーカーが一致することが見出された時間インスタンスは、そのときには、往復遅延に対応する。正規化され、また遅延された信号は、次に、それによって、図2において、レシーバRX11と、RX21とのための、それぞれEC11、EC21で示されるそれぞれのレシーバについてエコーのないマルチキャスト信号を取得するために、マルチキャスト集約信号DAから差し引かれる。
【0045】
これらの遅延オペレーションと、電力正規化オペレーションとは、レシーバRX11とRX21とに示されるようなモジュール「ASUB」を用いて実行される。
【0046】
類似したオペレーションは、すべての他のレシーバの中で行われる。
【0047】
実装形態は、参加する可能性のあるトランスミッタ、レシーバ、集約ノード、およびマルチキャスト・ノード上の分散型のやり方で実施されるソフトウェアを用いて実現されることもある。このソフトウェアは、ローカルなインストレーションのために、分散型のやり方で提供される可能性があり、または、例えば、完全なオペレーションを制御するセントラル・サーバからのダウンロード可能なソフトウェアとすることができる。このサーバは、集約ノードまたはマルチキャスト・ノードの中に位置することができ、あるいはリモート・サーバとすることができ、このリモート・サーバから、すべての参加する要素は、それらの特定のオペレーションを実施するために、それらの部分をただダウンロードすることができる。
【0048】
本発明の原理が、特定の装置に関連して上記で説明されてきているが、この説明は、単なる例として行われているにすぎず、また添付の特許請求の範囲において規定されるようには、本発明の範囲に対する限定としては行われていないことを明確に理解すべきである。その特許請求の範囲においては、指定された機能を実行するための手段として表現される任意の要素は、その機能を実行する任意のやり方を包含することを意図している。これは、例えば、したがって、機能を実行するそのソフトウェアを実行するための適切な回路、ならびに、もしあれば、ソフトウェア制御された回路に結合された機械的要素と組み合わされたファームウェア、マイクロコードなどを含めて、a)その機能を実行する電気的要素または機械的要素の組合せ、あるいはb)任意の形態におけるソフトウェアを含むことができる。そのような特許請求の範囲によって規定されるような本発明は、様々な列挙された手段によって提供される機能が、特許請求の範囲が要求する方法で組み合わせられ、また一緒にまとめられ、またそれ以外の方法で具体的にそのように規定されない限り、任意の物理的構造は、請求される本発明の新規性にとってほとんど重要でなく、または全く重要でないということにある。出願人は、それゆえに、これらの機能を提供することができる任意の手段を本明細書において示されるこれらの手段と同等であるように考えている。
図1
図2