(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881858
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】スタンバイモードを有するフロー電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20160225BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20160225BHJP
H01M 8/04186 20160101ALI20160225BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/04 P
H01M8/04 L
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-549195(P2014-549195)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公表番号】特表2015-506542(P2015-506542A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】US2012070286
(87)【国際公開番号】WO2013096276
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年7月25日
(31)【優先権主張番号】13/331,407
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】パンディ,アルン
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,マイケル エル.
【審査官】
守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−004568(JP,A)
【文献】
特開2006−313691(JP,A)
【文献】
特開2003−086228(JP,A)
【文献】
特開2003−079070(JP,A)
【文献】
特開2004−274981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液であって、該電解液から引き出すことが可能なまたはそれらに貯蔵することが可能な電力量に関する全エネルギー容量を画定する電解液と、
電気化学的セルと、
前記電解液を貯蔵するように、前記電気化学的セルと流体的に連結された、外部貯蔵部と、
ONモードと、OFFモードと、スタンバイモードと、を備えたレドックスフロー電池装置であって、
前記ONモードは、前記外部貯蔵部から電気化学的セルを通して前記電解液を循環させることにより、前記レドックスフロー電池装置から引き出すことが可能なまたは前記レドックスフロー電池装置に貯蔵することが可能な電力量に関する該レドックスフロー電池装置の全エネルギー容量へのアクセスを可能にし、
前記OFFモードは、前記電気化学的セルから前記電解液を空にすることにより、前記全エネルギー容量へのアクセスを不能にし、
前記スタンバイモードは、前記電気化学的セル中に前記電解液を貯蔵することにより、該電気化学的セルを通して前記電解液を循環させることなく前記全エネルギー容量の一部へのアクセスを可能にすることを特徴とするレドックスフロー電池装置。
【請求項2】
前記電解液は、アノード液およびカソード液を含むことを特徴とする請求項1に記載のレドックスフロー電池装置。
【請求項3】
前記外部貯蔵部は、第1の外部貯蔵部および第2の外部貯蔵部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のレドックスフロー電池装置。
【請求項4】
アノード液およびカソード液であって、該アノード液および該カソード液から引き出すことが可能なまたはそれらに貯蔵することが可能な電力量に関する全エネルギー容量を画定するアノード液およびカソード液と、
電気化学的セルと、
前記アノード液および前記カソード液の各々を貯蔵するように、それぞれ前記電気化学的セルと流体的に連結された、第1の外部貯蔵部および第2の外部貯蔵部と、
ONモード、OFFモード、およびスタンバイモードを有するように構成されたコントローラと、
を備えたフロー電池装置であって、
前記ONモードは、それぞれ、前記第1の外部貯蔵部および前記第2の外部貯蔵部から電気化学的セルを通して前記アノード液および前記カソード液の各々を循環させることにより、前記全エネルギー容量へのアクセスを可能にし、前記OFFモードは、前記電気化学的セルから前記アノード液または前記カソード液の少なくとも一方を空にすることにより、前記全エネルギー容量へのアクセスを不能にし、前記スタンバイモードは、前記電気化学的セル中に前記アノード液および前記カソード液の各々の一部を貯蔵することにより、該電気化学的セルを通して前記アノード液または前記カソード液を循環させることなく前記全エネルギー容量の一部へのアクセスを可能にすることを特徴とする、フロー電池装置。
【請求項5】
それぞれ、前記第1の外部貯蔵部と前記電気化学的セルとの間、および、前記第2の外部貯蔵部と前記電気化学的セルとの間に連結された供給管を含み、前記供給管の各々は、互いに並列に配置された弁およびポンプを含むことを特徴とする請求項4に記載のフロー電池装置。
【請求項6】
アノード液およびカソード液であって、該アノード液および該カソード液から引き出すことが可能なまたはそれらに貯蔵することが可能な電力量に関する全エネルギー容量を画定するアノード液およびカソード液と、
電気化学的セルと、
前記アノード液および前記カソード液の各々を貯蔵するように、それぞれ前記電気化学的セルと流体的に連結された、第1の外部貯蔵部および第2の外部貯蔵部と、
を備えたフロー電池装置の運転方法であって、
それぞれ、前記第1の外部貯蔵部および前記第2の外部貯蔵部から前記電気化学的セルを通して前記アノード液および前記カソード液の各々を循環させることにより、該アノード液および該カソード液の全エネルギー容量へのアクセスを可能にするONモードで運転し、
前記電気化学的セルから前記アノード液または前記カソード液の少なくとも一方を空にすることにより、前記全エネルギー容量へのアクセスを不能にするOFFモードで運転し、
前記電気化学的セル中に前記アノード液および前記カソード液の各々の一部を貯蔵することにより、該電気化学的セルを通して前記アノード液または前記カソード液を循環させることなく前記全エネルギー容量の一部へのアクセスを可能にするスタンバイモードで運転する、
ことを備えた運転方法。
【請求項7】
電力の需要予測に応じて、前記スタンバイモードで運転することを含むことを特徴とする請求項6に記載の運転方法。
【請求項8】
間欠性電源からの電力の貯蔵予測に応じて、前記スタンバイモードで運転することを特徴とする請求項6に記載の運転方法。
【請求項9】
前記スタンバイモードで運転しながら、前記アノード液および前記カソード液から電力を引き出す、または前記アノード液および前記カソード液に電力を貯蔵することを含むことを特徴とする請求項6に記載の運転方法。
【請求項10】
前記ONモードで運転することによる周期的な補給を行いながら、前記スタンバイモードで運転することを含むことを特徴とする請求項6に記載の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを選択的に貯蔵、放出するフロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
レドックスフロー電池またはレドックスフローセルとして知られるフロー電池は、電気エネルギーを、蓄電可能であるとともに電力需要があるときに電気エネルギーを後で放出することが可能な、化学エネルギーに変換するように設計される。一例として、フロー電池は、風力発電装置などの再生可能エネルギーシステムとともに用いられて、消費者需要を超えたエネルギーを貯蔵し、それ以降の需要が高いときにそのエネルギーを放出する。
【0003】
基本的なフロー電池は、電解質層によって隔離された負極および正極を有するレドックスフローセルを含み、電解質層は、イオン交換膜などのセパレータを含む。負極電解液が負極に送られ、正極電解液が正極に送られて、電気化学的に可逆的なレドックス反応を生じさせる。充電時に、供給された電気エネルギーにより一方の電解液で化学的還元反応が生じるとともに、他方の電解液で酸化反応が生じる。セパレータは電解液の混合を防止するが、選択されたイオンは透過してレドックス反応を完了させる。放電時は、電解液中に含まれる化学エネルギーを逆反応で放出させて、電極から電気エネルギーが引き出される。とりわけフロー電池は、可逆的な電気化学反応に関わる外部供給される電解液を使用することにより、その他の電気化学的装置とは区別される。
【0004】
開示の実施例の様々な特徴および利点が、以下の詳細な説明から当業者にとって明らかとなるであろう。詳細な説明に添付の図面を以下のように簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】一例のフロー電池装置のONモードを示す図。
【
図1B】一例のフロー電池の電気化学的セルを示す図。
【
図3】フロー電池装置のスタンバイモードを示す図。
【
図4】フロー電池をONモード、OFFモード、スタンバイモード間で作動させるための一例の論理図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1A,
図2,
図3は、従来のフロー電池装置に比べて性能が向上した一例のフロー電池装置20の選択された部分を示す。一例として、フロー電池装置20は、風力発電装置などの再生可能エネルギーシステムで発生させた電気エネルギーを、以降の電気エネルギーが必要となる時期まで貯蔵することが可能な化学エネルギーに変換するように用いられ、次いでフロー電池20は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。フロー電池装置20は、例えば配電網に電池エネルギーを供給する。
【0007】
従来のフロー電池装置は、ONモードおよびOFFモードの2モードにおける一つで作動する。ONモードでは、アノード液およびカソード液から電力が引き出される間、またはアノード液およびカソード液に電力が貯蔵される間、アノード液およびカソード液は各貯蔵タンクから電気化学的セルを通して循環される。フロー電池装置から電力が引き出されない、または電力が貯蔵されない期間中、フロー電池装置の自己放電を防止するように、フロー電池装置はONモードからOFFモードに切り換えられる。
【0008】
OFFモードでは、アノード液およびカソード液は電気化学的セルから各貯蔵タンクへと移され、空にされる。それにより、電気化学的セルのイオン交換膜を通した電気化学的活性種の拡散による、フロー電池装置の自己放電を防ぐ。OFFモードへの切り替えにおける欠点は、フロー電池装置から電力を引き出す需要がある場合、またはフロー電池装置に電力を貯蔵する需要がある場合に、従来技術のフロー電池装置は反応が遅い。すなわち、従来技術のフロー電池装置のエネルギー容量にアクセスするように、その装置は電気化学的セルを通してアノード液およびカソード液を循環させる必要がある。したがって、補助コンポーネントを起動させ、次いでアノード液/カソード液を各貯蔵タンクから電気化学的セルへと循環させるのに必要な時間だけ、従来技術のフロー電池装置から電力を引き出す、または従来技術のフロー電池装置に電力を貯蔵する能力が遅延する。こうした遅延により、従来技術のフロー電池装置を完全に充電または放電するのに必要な時間が増え、電力出力が変更される割合が増える。
【0009】
以下に詳述するように、本発明のフロー電池装置20は、フロー電池装置20がONモードまたはOFFモードのいずれでもない場合に、フロー電池装置20の全容量の一部に即時に、またはほぼ即時にアクセスすることができる第3のモード、すなわちスタンバイモードを提供する。
【0010】
図1Aを参照すると、フロー電池装置20がONモードにあることを示す。フロー電池装置20内のコントローラ22は、ONモード、OFFモード、およびスタンバイモード間の切り替えを制御する。コントローラ22は、ソフトウェア、ハードウェア、またはその両方を含む。一例では、コントローラ22は、フロー電池装置20の動作を制御するソフトウェアを有するコンピュータである。本発明の記載を考慮すれば、記載のコントローラ22をどのように実装するかは当業者にとって理解されるであろう。
【0011】
図示されるように、フロー電池装置20は、アノード液およびカソード液を含み、これらは、電気化学的セル24内で発生する電気化学反応のレドックス対として機能する。例えば、アノード液およびカソード液の電気化学的活性種は、バナジウム、臭素、鉄、クロム、亜鉛、セリウム、鉛、またはそれらの組合せに基づく。実施例では、アノード液またはカソード液は上記の一つ以上の電気化学的活性種を含む水溶液である。
【0012】
アノード液およびカソード液は、それぞれ、外部貯蔵部26,28に収容される。図示されるように、外部貯蔵部26,28は、実質的に同等の円筒状の貯蔵タンクである。しかしながら、外部貯蔵部26,28は、代替的にその他の形状やサイズを有してもよい。さらに
図1Aでは、外部貯蔵部26,28が一つまたは複数の電気化学的セル24の下に配置されるように示されるが、代替的な配置では、外部貯蔵部26,28は、一つまたは複数のセル24よりも上、または一つまたは複数のセル24と同じ鉛直レベルに配置されてもよい。
【0013】
アノード液およびカソード液は、それぞれ、供給管30を通してフロー電池装置20の一つまたは複数のセル24に供給(例えば、ポンプ輸送)され、戻り管32により一つまたは複数のセル24から外部貯蔵部26,28へと戻される。
【0014】
図示の例では、供給管30の各々が、その内部に互いに平行に配置されたポンプ34および弁36を含む。コントローラ22が少なくとも弁36およびポンプ34に電気的に接続されて、それらの動作を制御する。またコントローラ22は、一つまたは複数のセル24において電気化学的なレドックス反応を完了させるように回路を完成させる電気経路38を含む、フロー電池装置20内のその他の補助コンポーネントに電気的に接続される。
【0015】
図1Bは、複数のセル24のうちの一つにおける一部の断面図を示す。当然のことながら、フロー電池20は、フロー電池20の設計容量に応じて、スタック内に複数のこうしたセル24を含むことができる。図示のように、セル24は第1のバイポーラ板40と、該第1のバイポーラ板40から離間された第2のバイポーラ板42と、を含む。バイポーラ板40,42は導電性を有し、例えば黒鉛板または金属板であってもよい。
【0016】
第1のバイポーラ板40は複数の流路40aを含み、それらの流路40aは、第1の流路44と、リブ48により第1の流路44から離間された、隣接する第2の流路46と、を含む。この例では、第2のバイポーラ板42が代替的に異なる形態を有することが考えられるが、第2のバイポーラ板42の形態は第1のバイポーラ板40と実質的に同様である。
【0017】
多孔質電極52,54が、それぞれ、第1および第2のバイポーラ板40,42にすぐ隣接するように配置される。したがって、多孔質電極52は第1のバイポーラ板40の表面と接触しており、多孔質電極54は第2のバイポーラ板42の表面と接触する。イオン交換膜などのセパレータ56が、多孔質電極52,54の間に配置される。
【0018】
多孔質電極52,54の一方または両方が、炭素、または、白金やニッケルなどの触媒材料が分散された炭素等の、アノード液およびカソード液に関して触媒活性を有する導電性材料を含む。すなわち、電極材料の表面はフロー電池20において触媒活性を有する。フロー電池20のレドックス反応では、反応に対するエネルギー障壁は比較的低く、酸素または水素などの気体反応物質を利用する電気化学的装置のように、貴金属や合金等のより強力な触媒材料を一般に必要としない。一例では、電極材料は炭素であり、炭素材料を清浄化し、改良された活性触媒部位としての機能を果たす炭素表面を形成させるように、従来の熱処理および/または化学処理法を用いることにより活性化される。当然のことながら、バイポーラ板40,42および流路40aはフロー電池20において任意選択的である。すなわち、フロー電池20は、代替的に流れ場流路を用いることなく電解液を電極52,54へと直接ポンプ輸送する「流通」運転を行うように構成されうる。
【0019】
上述したように、コントローラ22はフロー電池装置20をONモード、OFFモード、およびスタンバイモードの間で選択的に切り換える。例えば、コントローラ22は、電力の需要予測に応じて、かつ/または、フロー電池装置20とともに動作するように接続された風力エネルギー源などの再生可能または間欠性エネルギー源の状態に応じて、それらのモード間で切り換えられる。概して、スタンバイモードにより、電力入力あるいは電池からの電力出力を問わず、予測できない電力需要を有するシステムにおいて迅速に対応する能力を提供する。
【0020】
ONモードは、アノード液およびカソード液をそれぞれ外部貯蔵源26,28から電気化学的セル24を通して循環させることにより、フロー電池装置20の全エネルギー容量へのアクセスを可能にする。したがって、アノード液およびカソード液の循環時は、フロー電池装置20を完全に充電することができ、あるいは、電気経路38を用いて完全に放電することができる。
【0021】
ONモードでは、アノード液およびカソード液が電気化学的セル24を通流して、別の循環サイクルのために各外部貯蔵源26,28へと再循環して戻るように、コントローラ22がポンプ34を作動させ、弁36を閉じる。電気化学的セル24では、アノード液およびカソード液は各バイポーラ板40,42の流路40aおよびマニホルド(図示せず)を通流する。
【0022】
図2は、フロー電池装置20がOFFモードにあることを示す。OFFモードは、電気化学的セル24からアノード液またはカソード液の少なくとも一方を実質的に空にすることにより、全エネルギー容量へのアクセスを不能にする。一部の例では、アノード液およびカソード液の両方が電気化学的セル24から空にされる。
【0023】
OFFモードでは、実質的にアノード液および/またはカソード液の全てが電気化学的セル24から各外部貯蔵部26,28へと排出されるように、コントローラ22がポンプ34の一方または両方を停止させ、弁36の一方または両方を開く。したがって、OFFモードでは、電気化学的セル24の流路40aおよびマニホルドは、電解液の少なくとも一方が完全または実質的に空にされる。電気化学的セル24のスタックおよび貯蔵部26の配置に応じて、電気化学的セル24スタックの電解質溶液の大部分を空にするその他の方法が考えられる。例えば、電気化学的セル24のスタックが貯蔵部26,28よりも低くない場合、電気化学的セル24のスタックを空にするようにポンプ34が使用される。
【0024】
OFFモードでは、アノード液またはカソード液の少なくとも一方、またはアノード液およびカソード液の両方が電気化学的セル24中に存在していない、あるいはセル24を通して循環していないため、フロー電池装置20から電力を引き出す、またはフロー電池装置20に電力を貯蔵する能力はない。さらに、反応物が装置中のどことも直接接触していないため、フロー電池装置20の自己放電が実質的に低減される。しかしながら、(シールを通した浸透により、または、空気の侵入を防ぐように能動的な不活性パージガスが使用されていない場合に)空気が存在する場合、空気との還元により依然として少量の意図せぬ低率の自己放電が起こりうる。
【0025】
図3は、フロー電池装置20がスタンバイモードにあることを示す。スタンバイモードは、電気化学的セル24中にアノード液およびカソード液の一部を貯蔵することにより、電気化学的セル24を通してアノード液またはカソード液を循環させることなく全エネルギー容量の一部へのアクセスを可能にする。理解されるように、全エネルギー容量の「一部」とは、容量の100%未満の量を表す。
図1〜3では、電気化学的セル24、弁36、およびポンプ34が電解液を含む、または電解液を含んでいないことを示すように、電気化学的セル24、弁36、およびポンプ34が選択的に網掛けされる。すなわち、網掛けされた箇所では、電気化学的セル24は電解液を含み、弁は開にされており、ポンプは作動している。
【0026】
スタンバイモードでは、コントローラ22はポンプ34を停止させ、弁36を閉にする。したがって、電気化学的セル24内に存在するアノード液およびカソード液は、各外部貯蔵部26,28に逆流することはできない。すなわち、アノード液およびカソード液のそれらの部分は、電極52,54および/または流路40aなどの電気化学的セル24や、供給管30およびマニホルドの少なくとも一部内に貯蔵される。アノード液およびカソード液の一部が電気化学的セル24内に所定の期間保持され、その間、アノード液およびカソード液から電力は引き出されない、またはアノード液およびカソード液に電力が保存されない。理解されるように、電極および/または流れ場流路および/またはマニホルドの容積容量は、電気化学的セル24の貯蔵能力を向上させるように選択される。
【0027】
スタンバイモードにおける電気化学的セル24内でのアノード液およびカソード液の貯蔵により、セル24を通してアノード液またはカソード液を循環させることなく、フロー電池装置20の全エネルギー容量の一部へのアクセスを可能にする。すなわち、電気化学的セル24内に貯蔵されたアノード液およびカソード液は、瞬時の需要を満たすように、電力を引き出せるまたは電力を貯蔵させるための容量を有する。
【0028】
図4は、ONモード、OFFモード、スタンバイモード間でフロー電池装置20を作動させる一例の論理図を示す。記載のように、コントローラ22は、電気化学的セル24を通して循環する電解液を、電気化学的セル24から空にするか、あるいは、電解液を循環させることなく少なくとも部分的に電気化学的セル24に補給するかに関して、複数のモード間で切り換えるように、ポンプ34および弁36の動作を制御する。更なる例では、
図4にも示すように、装置がスタンバイモードにおいて電力供給を行える状態にあることを保証すべく、電気化学的セル24内に電解液を補給するように(さもなければ徐々に自己放電する)、コントローラ22は、フロー電池装置20を短時間、スタンバイモードからONモードに周期的に切り換える。一例として、このコンセプトは無停電電源機能としての機能を果たす、または局部出力の質を向上させるように機能するフロー電池装置20と組み合わせて用いられる。代替的に、要望が、フロー電池装置20を集電(すなわち、充電)できるように維持することである場合、スタック中の完全に放電した反応物が集電可能であるため、この周期的な補給は必要ないであろう。
【0029】
一例では、コントローラ22が電力の需要予測に応じてフロー電池装置20をスタンバイモードにする。すなわち、フロー電池装置20から電力が引き出されるまたはフロー電池装置20に電力が貯蔵される可能性を見越して、コントローラ22はフロー電池装置20をスタンバイモードにする。したがって、どの瞬間においても、フロー電池装置20は、ポンプ34が起動してアノード液およびカソード液を電気化学的セル24に循環させるのを待つ必要により遅延することなく、電力を供給もしくは電力を貯蔵させる能力を有する。その点に関し、本発明に開示のフロー電池装置20により、複数の電線や瞬時に応答する変圧器を利用する送電および配電容量を補うように、迅速な応答時間を提供し、かつ、より高い割合で電力を変動かつ利用できるようにする。
【0030】
特徴部の組合せを図示の例に示すが、本発明の様々な実施例の利点を実現するために全ての特徴部を組み合わせる必要はない。換言すれば、本発明の実施例に従って設計されたシステムは、必ずしも図の一つに示された全ての特徴部または図に概略的に示す全ての部位を含むものではない。さらに、一実施例の選択された特徴部をその他の実施例の選択された特徴部と組み合わせてもよい。
【0031】
上記の記載は本質的に限定的なものではなく例示に過ぎない。本発明の真意を逸脱することなく開示の実施例に対する種々の変形や修正が当業者にとって明らかとなるであろう。本発明に付与される法的保護の範囲は付記の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定される。