(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流入口及び二つの流出口が設けられた弁本体と、前記流入口と二つの流出口との間に各々配設された二つの制御弁と、該二つの制御弁を開閉駆動するための単一の回転駆動源と、を備え、前記二つの制御弁によって前記二つの流出口を選択的に開閉可能な方向切換弁であって、
前記二つの制御弁のうちの少なくとも一方はパイロット式の弁形態をとり、前記回転駆動源と前記二つの制御弁との間に、前記二つの制御弁を相互に逆方向に開閉駆動する逆駆動機構が設けられており、
前記パイロット式の弁形態をとる制御弁は、ピストン型の主弁体と、該主弁体が摺動自在に嵌挿されるとともに、該主弁体により背圧室と主弁室とに仕切られた嵌挿室と、前記背圧室の圧力を前記流出口へ逃がすためのパイロット通路と、前記パイロット通路を開閉するためのパイロット弁体と、該パイロット弁体が摺動自在に嵌挿される筒状案内部と、を備え、前記パイロット弁体と前記筒状案内部との間に形成される摺動面間隙が前記流入口ないし主弁室の圧力を前記背圧室に導く均圧通路として使用されていることを特徴とする方向切換弁。
前記回転駆動源としてステッピングモータが用いられており、前記不思議遊星歯車機構は前記ステッピングモータ内に付設されていることを特徴とする請求項5に記載の方向切換弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記電磁弁を2個用いる手法では、圧縮機からの冷媒を同時に二つの熱交換機に分配する際には2個の電磁弁を共に全開状態で維持する必要があり、そのため、2個の電磁弁に長時間継続して通電しなければならず、消費電力が大きくなる等の問題がある。
【0006】
また、ステッピングモータ等の回転駆動源により弁体を回動させる等して二つの流出口を選択的に開閉することにより方向(流路)の切り換えを行うようにされた従来の一般的な三方切換弁は、流路切り換えに比較的長時間を要するという課題の他、通常、二つの流出口を共に全開させることはできないため、上記ニーズ(圧縮機からの冷媒を同時に二つの熱交換機に分配すること)には応えられず、仮にできたとしても、両流出口を共に全開するまでにステッピングモータ等の回転駆動源を相当長い時間回転させなければならないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、一つの流入口と二つの流出口とを有し、ステッピングモータ等の回転駆動源により二つの流出口を選択的に開閉することにより方向(流路)の切り換えを行うようにされるとともに、二つの流出口を共に全開にさせることのできる、流路切り換えの迅速化・省エネ化等を図ることのできる方向切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明に係る方向切換弁は、基本的には、流入口及び二つの流出口が設けられた弁本体と、前記流入口と二つの流出口との間に各々配設された二つの制御弁と、該二つの制御弁を開閉駆動するための単一の回転駆動源と、を備え、前記二つの制御弁によって前記二つの流出口を選択的に開閉可能とされ、前記二つの制御弁のうちの少なくとも一方はパイロット式の弁形態をとり、前記回転駆動源と前記二つの制御弁との間に、前記二つの制御弁を相互に逆方向に開閉駆動する逆駆動機構が設けられており、前記パイロット式の弁形態をとる制御弁は、ピストン型の主弁体と、該主弁体が摺動自在に嵌挿されるとともに、該主弁体により背圧室と主弁室とに仕切られた嵌挿室と、前記背圧室の圧力を前記流出口へ逃がすためのパイロット通路と、前記パイロット通路を開閉するためのパイロット弁体と、該パイロット弁体が摺動自在に嵌挿される筒状案内部と、を備え、前記パイロット弁体と前記筒状案内部との間に形成される摺動面間隙が前記流入口ないし主弁室の圧力を前記背圧室に導く均圧通路として使用されていることを特徴としている。
【0009】
好ましい態様では、前記二つの制御弁と前記回転駆動源との間に、前記逆駆動機構としてのシーソー型揺動アームが設けられている。
【0010】
他の好ましい態様では、前記二つの制御弁と前記回転駆動源との間に、前記逆駆動機構としての歯車列が設けられる。
【0011】
他の好ましい態様では、前記回転駆動源と前記逆駆動機構との間に減速機構が設けられる。
【0012】
他の好ましい態様では、前記減速機構は不思議遊星歯車式減速機構とされる。
【0013】
他の好ましい態様では、前記回転駆動源としてステッピングモータが用いられる。
【0014】
他の好ましい態様では、前記回転駆動源としてステッピングモータが用いられ、前記不思議遊星歯車式減速機構は、前記ステッピングモータ内に付設される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る方向切換弁の好ましい態様では、制御弁としてパイロット式の弁形態をとるものが採用され、ステッピングモータ等の回転駆動源と二つの制御弁との間に、二つの制御弁を相互に逆方向に開閉駆動する逆駆動機構(例えばシーソー型揺動アーム)が配在されているので、例えばシーソー型揺動アームを所定角度範囲内で回動(揺動)させることにより、二つの流出口を選択的に開閉できるとともに、シーソー型揺動アームを特定回動(揺動)位置、例えば水平位置で停止させることにより、二つの制御弁(二つの流出口)を共に全開にすることができる。
【0016】
そのため、前述した如くの、圧縮機からの冷媒を同時に二つの熱交換機に分配することが要求されるヒートポンプ式冷暖房システムに本発明の方向切換弁を2個の電磁弁に代えて用いることができる。この場合、本発明の方向切換弁では、二つの流出口を共に全開にした後は、通電せずとも全開状態が維持されるので、2個の電磁弁を用いる場合に比して省エネ化等が図られる。
【0017】
また、制御弁としてパイロット式の弁形態をとるものが採用されているので、小さな駆動力で大口径の流出口を開閉することができる上、逆駆動機構としてシーソー型揺動アーム等を用いることにより、パイロット弁体及び主弁体の高リフト化を図ることができるとともに、二つの制御弁の開閉には、シーソー型揺動アームを小角度(例えば40度以内)回動させるだけでよいので、回転駆動源として比較的小型(小出力)のステッピングモータを用いても、従来型の三方切換弁等に比して、流路切り換えを迅速に行うことができ、流路切り換え応答性が向上する。
【0018】
また、回転駆動源と逆駆動機構との間に減速機構を設ければ、閉弁時に逆圧がかかっても開弁してしまうことが少ない。
【0019】
さらに、不思議遊星歯車式減速機構は出力軸側にトルクを加えても回転されないから、上記の減速機構としてこの不思議遊星歯車式減速機構を採用すれば、閉弁時に強い逆圧がかかっても開弁することがなく、確実な閉弁性能を維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る方向切換弁の一実施形態(第1実施例)を示す正面図、
図2は
図1のX-X断面図、
図3は
図2のY-Y断面図である。
【0023】
図示第1実施例の方向切換弁1は、例えば、圧縮機からの冷媒を同時に二つの熱交換機に分配することが要求されるカーエアコン等のヒートポンプ式冷暖房システムにおいて前述した2個の電磁弁に代えて用いられるもので、流入口10と二つの流出口(第1流出口11及び第2流出口12)を有する弁本体2と、回転駆動源としてのステッピングモータ15とを備えている。
【0024】
弁本体2は、天井部付き円筒状の上側ハウジング2Aと、該上側ハウジング2Aの下側にシール材(Oリング)7を挟んで4本の六角穴付きボルト8で締め付け固定された有底円筒状の下側ハウジング2Bとを有し、上側ハウジング2A内には上部室3が画成され、下側ハウジング2Bには、その正面側に横穴状の流入口10が設けられるとともに、その下面側に縦穴状の第1流出口11及び第2流出口12が設けられている。
【0025】
上側ハウジング2Aの正面側には、横に寝かせた状態でステッピングモータ15が取り付けられている。このステッピングモータ15は、上側ハウジング2Aの上部正面部に螺合固定された基台部41と、該基台部41に圧入固定された円筒状の保持案内部材42と、前記基台部41にその下端部が溶接接合された冷媒密封用のキャン18と、このキャン18の内周側に配在されたロータ16と、キャン18の外周に外嵌されたステータコイル17とを有し、ステータコイル17とロータ16との間には、エアギャップαが形成されている。該モータ15内には、不思議遊星歯車式減速機構40が付設され、モータ15の出力軸43(不思議遊星歯車式減速機構40の出力軸)の回転が、上側ハウジング2Aに回動自在に支持された連結回動軸45に伝達されるようになっている。なお、本例では遊星歯車式減速機構40により、ロータ16の回転を1/45程度に減速して出力するようになっている。
【0026】
連結回動軸45は、軸受46に支持された大径部45aと軸受47に支持された小径部45bとからなっており、この連結回動軸45の大径部45aの小径部側端部(前記上部室3内)にシーソー型揺動アーム50が圧入、スプライン嵌合、接着接合等により一体的に固定されている。このシーソー型揺動アーム50は、前記モータ15の回転軸線Oを支点としており、上記連結回動軸45に外嵌固定された短円筒状の中央部50Cと、該中央部50から側方に左右対称的に突出する同長のアーム部50A、50Bとからなっており、各アーム部50A、50Bの外端部には、横方向に伸びる長穴52が形成された厚肉中央部50dと薄肉側板部50e、50eとが設けられている。
【0027】
下側ハウジング2Bは、上下に貫通する段付き縦穴状の下部室4が左右に並設されている。
図3において左側の下部室4には、第1制御弁20Aが配在されるとともに、その下部に弁座11a付きの前記第1流出口11が設けられ、右側の下部室4には、第2制御弁20Bが配在されるとともに、その下部に弁座12a付きの前記第2流出口12が設けられている。
【0028】
第1制御弁20Aと第2制御弁20Bは、基本構成は同じで、それぞれパイロット式の弁形態をとる。以下、第1制御弁20Aの方を主体に(代表して)説明する。第1制御弁20A(20B)は、ピストン型の主弁体23と、該主弁体23が摺動自在に嵌挿されるとともに、該主弁体23により背圧室26と主弁室25とに仕切られた嵌挿室24と、前記背圧室26の圧力を前記流出口11(12)へ逃がすためのパイロット通路27と、前記シーソー型揺動アーム50の外端付近に連結された弁棒部30bを有する、前記パイロット通路27を開閉するためのパイロット弁体30と、該パイロット弁体30が摺動自在に嵌挿される筒状案内部材35と、を備えている。
【0029】
より詳細には、筒状案内部材35は、段付き円筒状とされ、下から順に、前記下部室4の上部に嵌め込まれてかしめ固定され、その内周に前記主弁体23が摺動自在に嵌挿される大径部35c(前記嵌挿室24の上部を画成)と、中間部35bと、パイロット弁体30が摺動自在に嵌挿される小径案内部35aとからなっている。
【0030】
前記嵌挿室24における主弁体23より上側に背圧室26が形成され、主弁体23より下側に主弁室25が形成されている。主弁体23は、上部大径部23aと、中間小径部23bと、弁体部23cとを有し、弁体部23cの下面側には、弁座11a(12a)に離接して流入口11(12)を開閉する、ゴムあるいはテフロン(登録商標)等からなる円環状のシール材23dが例えばかしめ固定されている。また、主弁体23の大径部23aの上端外周部には、筒状案内部材35(嵌挿室24)の天井ストッパ部35sに接当して主弁体23の最大リフト位置を定める円環状凸部23sが突設され、さらに、大径部23aの外周にはシール材(ピストンリング)23fが装着されている。また、主弁体23を上方(開弁方向)に付勢すべく、上部大径部23aと弁座11a(12a)外周部との間には、圧縮コイルばねからなる開弁ばね28が縮装されている。
【0031】
一方、主弁体23の中央部には、背圧室26の圧力を流出口11(12)へ逃がすための弁座27a付きパイロット通路27が貫設されており、このパイロット通路27を開閉すべくその弁座27aに離接するようにパイロット弁体30が前記筒状案内部材35に上下方向に摺動自在に嵌挿されている。パイロット弁体30は、弁体部30aと該弁体部30aより小径の弁棒部30bとを有し、弁体部30aの下面側には、弁座27aに離接してパイロット通路27を開閉する、ゴムあるいはテフロン(登録商標)等からなる円形状のシール材30dが例えばかしめ固定されている。
【0032】
ここで、本実施例の方向切換弁1では、第1制御弁20A及び第2制御弁20Bの主弁室25-25間に流入口10が形成されており、流入口10は第1制御弁20A及び第2制御弁20Bの主弁室25、25にそれぞれ連通するとともに、中央挿通穴6を介して上部室3にも連通しており、したがって、流入口10、左右の両主弁室25、25、及び上部室3は、高圧(等圧)の冷媒が充満することになる。
【0033】
また、筒状案内部材35の小径案内部35a内には、前記パイロット弁体30の弁体部30aが摺動自在に嵌挿される大内径部35eと弁棒部30bが摺動自在に嵌挿される小内径部35fとが形成されており、弁棒部30bと小内径部35fとの間に形成される摺動面間隙β、並びに、弁体部30aと大内径部35eとの間に形成される摺動面間隙γが前記流入口10ないし主弁室25の圧力を上部室3を介して前記背圧室26に導く均圧通路として使用されている。
【0034】
一方、パイロット弁体30の弁棒部30bは、前記シーソー型揺動アーム50の左右方向の外端部に横倒しコ字状の連結部材36を介して連結されている。詳細には、弁棒部30bの上端には凸部30gが突設され、この凸部30gに連結部材36の底辺部36bが圧入、接着接合等により固定され、連結部材36の両側板部36a、36aが前記シーソー型揺動アーム50の外端部の厚肉中央部50dと薄肉側板部50e、50eとの間に挿入されている。連結部材36の両側板部36a−36a間には、ピン53が厚肉中央部50dに形成され長穴52を通した状態で圧入等により架設されている。
【0035】
したがって、例えばシーソー型揺動アーム50の両アーム部50A、50Bが共に水平の状態(位置)から、該揺動アーム50を時計回りに回転(揺動)させると、左側のアーム部50Aの外端部に連結された第1制御弁20Aのパイロット弁体30が引き上げられるとともに、右側のアーム部50Bの外端部に連結された第2制御弁20Bのパイロット弁体30が押し下げられる。本実施例においては、シーソー型揺動アーム50は、例えば両アーム部50A、50Bが共に水平位置から上下に最大で20度ずつ合計40度の範囲内で回動(揺動)せしめられるようになっている。
【0036】
また、それぞれパイロット式の弁形態をとる第1制御弁20A及び第2制御弁20Bにおいて、主弁室25の圧力をP1、背圧室26の圧力をP2、流出口11、12の圧力をP3、背圧室26の水平断面積(主弁体23の受圧面積)をAp、流出口11、12の水平断面積をAv、開弁ばね28の付勢力をPfとし、主弁体23を押し上げる力を開弁力、主弁体23を押し下げる力を閉弁力とすれば、第1制御弁20A及び第2制御弁20Bの開弁条件は、
閉弁力 = P2×Ap<開弁力 = P1×(Ap-Av)+P3×Av+Pf
となる。
【0037】
このような構成とされた方向切換弁1においては、モータ15に所定態様で通電して、例えば
図3に示される如くに、シーソー型揺動アーム50(の両アーム部50A、50B)を水平位置から時計回りに20度回転させた状態とすると、第1制御弁20Aのパイロット弁体30が最上昇位置まで引き上げられてパイロット通路27が全開にされるとともに、第2制御弁20Bのパイロット弁体30がパイロット通路27を全閉にする位置へ押し下げられた状態となる。そのため、第1制御弁20Aにおいては[閉弁力<開弁力]となり、主弁体23は、その円環状凸部23sが天井ストッパ部35sに接当する最大リフト位置まで上昇し、第1流出口11が全開となる。それに対し、第2制御弁20Bの主弁体23は第2流出口12を閉じたままとなる。そのため、この状態では、流入口10からの冷媒は第1流出口11へのみ流れる。
【0038】
なお、この状態でモータ15への通電は停止されるが、二つの制御弁20A、20Bは上記状態を維持する。また、この状態においては、第2制御弁20Bの背圧室26に、弁棒部30bと小内径部35fとの間に形成される摺動面間隙β、並びに、弁体部30aと大内径部35eとの間に形成される摺動面間隙γを介して流入口10ないし主弁室25の圧力が上部室3を介して導入され、主弁室25と背圧室26の圧力は略等しくされ、そのため、[閉弁力>開弁力]となっている。
【0039】
続いて、モータ15に所定態様で通電して、シーソー型揺動アーム50を
図3に示される位置から反時計回りに20度回転(揺動)させて、
図4に示される如くに水平位置で停止させると、第1制御弁20Aにおいて、パイロット弁体30が押し下げられるが、パイロット通路27は開いたまま、主弁体23は最大にリフトしたままであり、第1流出口11は全開のままである。
【0040】
それに対し、第2制御弁20Bにおいては、パイロット弁体30が引き上げられてパイロット通路27が開かれるが、この状態にされた時点(瞬間)では、背圧室26の圧力が十分には抜けていないため、[閉弁力>開弁力]となり、主弁体23により第2流出口12は閉じられたままであるが、その直後(例えば約1秒後)には、
図5に示される如くに、背圧室26の圧力が抜けて[閉弁力<開弁力]となり、主弁体23は、その円環状凸部23sが天井ストッパ部35sに接当する最大リフト位置まで上昇し、第2流出口12も全開となる。これにより、流入口10からの冷媒が第1流出口11と第2流出口12の両方に流れる。なお、この状態でモータ15への通電は停止されるが、二つの制御弁20A、20Bはともに全開状態を維持する。
【0041】
次に、
図5に示される、二つの流出口11、12が共に全開にされている状態から、
図6に示される如くに、シーソー型揺動アーム50を水平位置からさらに反時計回りに20度回転(揺動)させると、第2制御弁20Bのパイロット弁体30が最上昇位置まで引き上げられてパイロット通路27が全開にされるとともに、第1制御弁20Aのパイロット弁体30がパイロット通路27を全閉にする位置へ押し下げられた状態となる。そのため、第2制御弁20Bにおいては[閉弁力<開弁力]となり、主弁体23は、その円環状凸部23sが天井ストッパ部35sに接当する最大リフト位置まで上昇し、第2流出口12が全開となる。それに対し、第1制御弁20Aにおいては、[閉弁力>開弁力]となり、主弁体23は第1流出口11を閉じる。そのため、この状態では、流入口10からの冷媒は第2流出口12へのみ流れる。主弁体23は、[閉弁力>開弁力]となる以前に、パイロット弁体30の押圧により弁座11aに着座されることもできる。
【0042】
主弁体23は弁座11aに着座した後は、パイロット弁体30により該弁座11a側に押圧されるが、パイロット弁体30は不思議遊星歯車式減速機構40を介してアクチュエータ(ステッピングモータ)に連結されているので、主弁体23に強い逆圧が加わっても、該主弁体23は開弁することがない。すなわち、不思議遊星歯車式減速機構40は、出力軸側にトルクを加えても回転することがないので、主弁体23に強い逆圧がかかってもその強制的な開弁が阻止され、閉弁状態が維持できる。
【0043】
なお、この状態でモータ15への通電は停止されるが、二つの制御弁20A、20Bは上記状態を維持する。また、この状態においては、第1制御弁20Aの背圧室26に、弁棒部30bと小内径部35fとの間に形成される摺動面間隙β、並びに、弁体部30aと大内径部35eとの間に形成される摺動面間隙γを介して流入口10ないし主弁室25の圧力が上部室3を介して導入され、主弁室25と背圧室26の圧力は略等しくされ、その一方で弁座11aは弁体部23cにより閉鎖されるため、[閉弁力>開弁力]となっている。
【0044】
以上のように、本実施例の方向切換弁1においては、二つの制御弁20A、20Bとしてパイロット式の弁形態をとるものが採用され、モータ15と二つの制御弁20A、20Bとの間に、二つの制御弁20A、20Bを相互に逆方向に開閉駆動する逆駆動機構としてのシーソー型揺動アーム50が配在されているので、シーソー型揺動アーム50を所定角度範囲内で回動(揺動)させることにより、二つの流出口11、12を選択的に開閉できるとともに、シーソー型揺動アーム50を特定回動(揺動)位置、すなわち水平位置で停止させることにより、二つの制御弁20A、20B(二つの流出口11、12)を共に全開にすることができる。
【0045】
そのため、前述した如くの、圧縮機からの冷媒を同時に二つの熱交換機に分配することが要求されるヒートポンプ式冷暖房システムに本実施例の方向切換弁1を2個の電磁弁に代えて用いることができる。この場合、本実施例の方向切換弁1では、二つの流出口11、12を共に全開にした後は、通電せずとも全開状態が維持されるので、2個の電磁弁を用いる場合に比して省エネ化等が図られる。
【0046】
また、二つの制御弁20A、20Bとしてパイロット式の弁形態をとるものが採用されているので、小さな駆動力で大口径の流出口11、12を開閉することができる上、逆駆動機構としてシーソー型揺動アーム50が用いられているので、パイロット弁体30及び主弁体23の高リフト化を図ることができるとともに、二つの制御弁20A、20Bの開閉には、シーソー型揺動アーム50を小角度(例えば40度以内)回動させるだけでよいので、回転駆動源として比較的小型(小出力)のステッピングモータ15(+遊星歯車式減速機構40)を用いても、従来型の三方切換弁等に比して、流路切り換えを迅速に行うことができ、流路切り換え応答性が向上する。
【0047】
なお、本発明に係る方向切換弁は、上記した第1実施例の方向切換弁1の構成に限られないことは勿論であり、様々な変更を加えることができる。
【0048】
例えば、上記第1実施例では、二つの制御弁20A、20Bは共にパイロット式の弁形態をとるものであったが、
図7に示される第2実施例の方向切換弁1’のように、右側の第2制御弁20B’を直動型のもの代えてもよい。この第2制御弁20B’は、比較的小口径の第2流出口12’を開閉する弁体部60aと弁棒部60bとを備えた弁体60が前述したパイロット弁体30と同様にシーソー型揺動アーム50の右側のアーム部50Bの外端に連結されており、シーソー型揺動アーム50を第1実施例と同様に所定角度範囲内で回動させることにより、二つの流出口11、12’を選択的に開閉できるとともに、シーソー型揺動アーム50を水平位置で停止させることにより、二つの制御弁20A、20B’(二つの流出口11、12’)を共に全開にすることができ、第1実施例と同様な効果を奏する。また、第2制御弁20B’は、シーソー型揺動アーム50の回動角度に応じて第2流出口12’の実効開口面積(開度)をリニヤに変えることができるので、流量制御弁として使用することができる。
【0049】
なお、弁体60の上下動は、弁体部60aが主弁室65の内壁に案内されて行われるが、弁体部60aと主弁室65の内壁との間隔を
図7に示された程度の間隔よりも狭くすれば、その案内をさらに安定して行うことが出来る。また、弁棒部60bを上下に摺動させる案内(ガイド)手段を、別途、弁本体2の内部に設けても良い。
【0050】
この第2実施例における弁体60も不思議遊星歯車式減速機構を介してアクチュエータに接続されているので、該弁体60の先端に設けられた弁体部60aが弁座12a’に着座して閉弁した後、該弁体部60aに強い逆圧がかかってもその強制的な開弁が阻止される。
【0051】
また、上記実施例では、駆動機構としてシーソー型揺動アーム50が採用されているが、それに代えて、歯車列を設けてもよい。具体的には、例えば、前記連結回動軸45に駆動歯車を設けるとともに、該駆動歯車の左右に従動歯車(列)を設け、該左右の従動歯車(列)で二つの制御弁20A、20Bを相互に逆方向に開閉駆動するようにしてもよい。