特許第5881881号(P5881881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5881881
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】破砕機用の刃板及び破砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 1/10 20060101AFI20160225BHJP
   B02C 1/04 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   B02C1/10
   B02C1/04
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-96129(P2015-96129)
(22)【出願日】2015年5月10日
【審査請求日】2015年8月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592092618
【氏名又は名称】油圧機工業有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137899
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 広文
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 保明
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−040514(JP,A)
【文献】 特開2005−087915(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/023632(WO,A1)
【文献】 特許第3330083(JP,B2)
【文献】 実開昭61−032351(JP,U)
【文献】 特許第5748323(JP,B2)
【文献】 特許第4885478(JP,B2)
【文献】 特開2002−361402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/10
B02C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材部と、この母材部の表面に多数配置した刃部とでなる、破砕機用の刃板であって、
この刃部は、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成する菱型刃部と、
十字状の先端帯状部と先端帯状部側の裾野部との角でエッジを形成し、前記裾野部の傾斜帯状部と前記裾野部の傾斜部との角でエッジを形成した、多面形状で構成され、前記菱形刃部の頂点に結合した山形刃部とでなることを特徴とした、固定側又は移動側に設置する破砕機用の刃板。
【請求項2】
母材部と、この母材部の表面に多数配置した刃部とでなる、固定側に設置する破砕機用の刃板(固定刃板)であって、
この刃部は、前記母材部の上方側に配置した凹状刃部と、
この凹状刃部の下方側に配置した、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成する菱型刃部と、
十字状の先端帯状部と先端帯状部側の裾野部との角でエッジを形成し、前記裾野部の傾斜帯状部と前記裾野部の傾斜部との角でエッジを形成した、多面形状で構成され、前記菱形刃部の対角線の頂点に結合した山形刃部と、
前記母材部の最下段に配置した前記山形刃物の一部に、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成した凸状刃部を連設したことを特徴とした、固定側に設置する破砕機用の刃板(固定刃板)。
【請求項3】
請求項2に記載の破砕機用の刃板において、
前記凹状刃部は、前記母材部に窪みを形成し、この窪みに縦刃と横刃を組み合わせた開口形状とし、
前記凹状刃部の左側内面、右側内面、下側内面を奥側に向かって傾斜させ、上側内面を母材部に対して垂直とすることを特徴とした、固定側に設置する破砕機用の刃板(固定刃板)。
【請求項4】
母材部と、この母材部の表面に多数配置した刃部とでなる、移動側に設置する破砕機用の刃板であって、
この刃部は、前記母材部の上方側に配置した凹状刃部と、
この凹状刃部の下方側に配置した、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成する菱型刃部と、
十字状の先端帯状部と先端帯状部側の裾野部との角でエッジを形成し、前記裾野部の傾斜帯状部と前記裾野部の傾斜部との角でエッジを形成した、多面形状で構成され、前記菱形刃部の頂点に結合した山形刃部と、
前記母材部の最下段に配置した前記山形刃物の一部に、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成した凸状刃部を連設し、
この凸状刃部の両脇には、半割三角錐を上下に連設した小刃部とでなることを特徴とした、移動側に設置する破砕機用の刃板(移動刃板)。
【請求項5】
請求項4に記載の破砕機用の刃板において、
前記小刃部は、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成したことを特徴とした、移動側に設置する破砕機用の刃板(移動刃板)。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の破砕機用の刃板において、
前記凹状刃部は、前記母材部に窪みを形成し、この窪みに縦刃と横刃を格子状に組み合わせた開口形状とし、
前記凹状刃部の左側内面、右側内面、下側内面を奥側に向かって傾斜させ、上側内面を母材部に対して垂直とすることを特徴とした、移動側に設置する破砕機用の刃板(移動刃板)。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のうちいずれか一に記載の破砕機用の刃板において、
前記凸状刃部に一又は二以上の切欠部を有することを特徴とした、移動側に設置する破砕機用の刃板(移動刃板)。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうちいずれか一に記載の破砕機用の刃板であって、
前記母材部及び前記刃部の材質をハイマンガン鋳鋼製とし、
前記母材部の表面、裏面、平面、底面、側面のいずれか一面以上にボルトが螺挿されるボルト穴を施したことを特徴とした、固定側又は移動側に設置する破砕機用の刃板。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のうちいずれか一に記載の破砕機用の刃板であって、
前記菱型刃部の前記帯状部、前記山形刃部の前記先端帯状部、前記傾斜帯状部、前記凸状刃部の前記帯状部、前記小刃部の前記帯状部の幅が5mm〜15mmであることを特徴とした、固定側又は移動側に設置する破砕機用の刃板。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のうちいずれか一に記載の破砕機用の刃板であって、
前記母材部に配置した前記山形刃部の前記傾斜帯状部間の角度θが90°以上とすることを特徴とした、固定側又は移動側に設置する破砕機用の刃板。
【請求項11】
並設された一対のサイドフレームと、この両サイドフレームの前方同士を接続するフロントフレームと、前記両サイドフレームの後方同士を接続するリアフレームとで構成し、被破砕物を投入する上方開放部及び破砕処理物が排出される下方開放部を有する上下開放のフレームと、
前記フレームに対して垂直又は傾斜して設けたホルダーに固定支持される固定刃板と、
前記両サイドフレーム間に架設した支点軸に軸支され、後退限界位置で前記フレームに対して傾斜し、前進限界位置で前記フレームに対して垂直となり、前記リアフレームに設けたシリンダーのピストンロッドの前後動に伴って前記支点軸を支点として前後動する移動刃板と、
前記固定刃板と前記移動刃板との間に形成されるV字形の破砕空間に被破砕物が供給され、前記移動刃板が固定刃板に対して前進することによって前記被破砕物が破砕される破砕機において、
前記固定刃板及び/又は前記移動刃板を請求項1、請求項8に記載の刃板とすることを特徴とした破砕機。
【請求項12】
並設された一対のサイドフレームと、この両サイドフレームの前方同士を接続するフロントフレームと、前記両サイドフレームの後方同士を接続するリアフレームとで構成し、被破砕物を投入する上方開放部及び破砕処理物が排出される下方開放部を有する上下開放のフレームと、
前記フレームに対して垂直又は傾斜して設けたホルダーに固定支持される固定刃板と、
前記両サイドフレーム間に架設した支点軸に軸支され、後退限界位置で前記フレー
ムに対して傾斜し、前進限界位置で前記フレームに対して垂直となり、前記リアフレームに設けたシリンダーのピストンロッドの前後動に伴って前記支点軸を支点として前後動する移動刃板と、
前記固定刃板と前記移動刃板との間に形成されるV字形の破砕空間に被破砕物が供給され、前記移動刃板が固定刃板に対して前進することによって前記被破砕物が破砕される破砕機において、
前記固定刃板を請求項2、請求項3、請求項8、請求項9、請求項10のいずれかに記載の固定刃板とし、
前記移動刃板を請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項10のいずれかに記載の移動刃板とすることを特徴とした破砕機。
【請求項13】
請求項11乃至請求項12に記載の破砕機において、
前記両サイドフレームの内側には、耐摩耗性を有するライナーをさらに設けることを特徴とした破砕機。
【請求項14】
請求項11乃至請求項13のうちいずれか一に記載の破砕機において、
前記ホルダーは上方部と下方部からなり、下方部には、排出下端が前側へ延出し、上方から下方にかけて傾斜面を有する受け刃を有することを特徴とした破砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被破砕物を破砕するための破砕機用の刃板(固定刃板、移動刃板)及び破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、不要となった鋳物製品、湯口、湯道、堰等の被破砕物を破砕する破砕機が知られている。これらの不用品である被破砕物を破砕する場合、被破砕物を細かく破砕することができれば、破砕後の廃材を保存、運搬、処理等を行う場合においても便利である。そこで、効率的な被破砕物の破砕が実現されるためには破砕機において使用される刃物が特に重要な存在となる。ここで、不要となった被破砕物を破砕する破砕機に関する文献の一例として、例えば、下記のような文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
文献1は、上下面開放のフレームに設けられた千鳥状に突設する多数個の山形状の刃物を有する固定刃物装置と、この固定刃物装置に対峙し、フレームの下方に枢着部を有する山形状の刃物と嵌め合い関係となる多数個の山形状の刃物を有する揺動自在な揺動刃物装置と、この揺動刃物装置を揺動させるシリンダー等の押圧手段と、揺動刃物装置と固定刃物装置の下方に設けられた破砕・折断鋳物片を排出する排出口とで構成されている「油圧による鋳造用の堰、湯道、不良製品の破砕・折断装置」である。
【0004】
【特許文献1】特開平6−106083
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、文献1に係る発明は、固定刃物装置の山形状の刃物と、この固定刃物装置に対峙する揺動刃物装置の山形状の刃物との嵌め合いにより鋳造用の堰、湯道、不良製品の破砕・折断するものであり、当接対象物である被破砕物に対して、いわゆる「面」で接触するものである。したがって、本発明のように後述する帯状部やエッジでの接触、いわゆる「線」での接触ではないため、不要鋳物製品に応力集中が働きにくくなり、破砕済みの堰、湯道、不良製品が細かく破砕されない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の目的は、母材部の表面に配置された、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成する菱形刃部と、先端帯状部と先端帯状部側の裾野部との角でエッジを形成し、裾野部の傾斜帯状部と裾野部の傾斜部との角でエッジを形成した山形刃部等が当接対象物である被破砕物に対して、いわゆる「線」又は「点」で接触することによって、折断する不要鋳物製品である被破砕物に応力集中を起こし、被破砕物を細かく破砕する破砕機用の刃板及びこの刃板を使用した破砕機を提供するものである。
【0007】
請求項1の発明は、母材部と、この母材部の表面に多数配置した刃部とでなる、破砕機用の刃板であって、
この刃部は、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成する菱型刃部と、
十字状の先端帯状部と先端帯状部側の裾野部との角でエッジを形成し、裾野部の傾斜帯状部と裾野部の傾斜部との角でエッジを形成した、多面形状で構成され、前記菱形刃部の頂点に結合した山形刃部とでなることを特徴とした、固定側又は移動側に設置する破砕機用の刃板である。
【0008】
請求項2の発明は、母材部と、この母材部の表面に多数配置した刃部とでなる、固定側に設置する破砕機用の刃板(固定刃板)であって、
この刃部は、前記母材部の上方側に配置した凹状刃部と、
この凹状刃部の下方側に配置した、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成する菱型刃部と、
十字状の先端帯状部と先端帯状部側の裾野部との角でエッジを形成し、裾野部の傾斜帯状部と裾野部の傾斜部との角でエッジを形成した、多面形状で構成され、前記菱形刃部の頂点に結合した山形刃部と、
前記母材部の最下段に配置した前記山形刃物の一部に、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成した凸状刃部を連設したことを特徴とした、固定側に設置する破砕機用の刃板(固定刃板)である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の破砕機用の刃板において、
前記凹状刃部は、前記母材部に窪みを形成し、この窪みに縦刃と横刃を組み合わせた開口形状とし、
前記凹状刃部の左側内面、右側内面、下側内面を奥側に向かって傾斜させ、上側内面を母材部に対して垂直とすることを特徴とした、固定側に設置する破砕機用の刃板(固定刃板)である。
【0010】
請求項4の発明は、母材部と、この母材部の表面に多数配置した刃部とでなる、移動側に設置する破砕機用の刃板であって、
この刃部は、前記母材部の上方側に配置した凹状刃部と、
この凹状刃部の下方側に配置した、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成する菱型刃部と、
十字状の先端帯状部と先端帯状部側の裾野部との角でエッジを形成し、裾野部の傾斜帯状部と裾野部の傾斜部との角でエッジを形成した、多面形状で構成され、前記菱形刃部の頂点に結合した山形刃部と、
前記母材部の最下段に配置した前記山形刃物の一部に、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成した凸状刃部を連設し、
この凸状刃部の両脇には、半割三角錐を上下に連設した小刃部とでなることを特徴とした、移動側に設置する破砕機用の刃板(移動刃板)である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の破砕機用の刃板において、
前記小刃部は、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成したことを特徴とした、移動側に設置する破砕機用の刃板(移動刃板)である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4又は請求項5に記載の破砕機用の刃板において、
前記凹状刃部は、前記母材部に窪みを形成し、この窪みに縦刃と横刃を格子状に組み合わせた開口形状とし、
前記凹状刃部の左側内面、右側内面、下側内面を奥側に向かって傾斜させ、上側内面を母材部に対して垂直とすることを特徴とした、移動側に設置する破砕機用の刃板(移動刃板)である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項4乃至請求項6のうちいずれか一に記載の破砕機用の刃板において、
前記凸状刃部に一又は二以上の切欠部を有することを特徴とした、移動側に設置する破砕機用の刃板(移動刃板)である。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項7のうちいずれか一に記載の破砕機用の刃板であって、
前記母材部及び前記刃部の材質をハイマンガン鋳鋼製とし、
前記母材部の表面、裏面、平面、底面、側面のいずれか一面以上にボルトが螺挿されるボルト穴を施したことを特徴とした、固定側又は移動側に設置する破砕機用の刃板である。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項8のうちいずれか一に記載の破砕機用の刃板であって、
前記菱型刃部の前記帯状部、前記山形刃部の前記先端帯状部、前記傾斜帯状部、前記凸状刃部の前記帯状部、前記小刃部の前記帯状部の幅が5mm〜15mmであることを特徴とした、固定側又は移動側に設置する破砕機用の刃板である。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項9のうちいずれか一に記載の破砕機用の刃板であって、
前記母材部に配置した前記山形刃部の前記傾斜帯状部間の角度θが90°以上とすることを特徴とした、固定側又は移動側に設置する破砕機用の刃板である。
【0017】
請求項11の発明は、並設された一対のサイドフレームと、この両サイドフレームの前方同士を接続するフロントフレームと、前記両サイドフレームの後方同士を接続するリアフレームとで構成し、被破砕物を投入する上方開放部及び破砕処理物が排出される下方開放部を有する上下開放のフレームと、
前記フレームに対して垂直又は傾斜して設けたホルダーに固定支持される固定刃板と、
前記両サイドフレーム間に架設した支点軸に軸支され、後退限界位置で前記フレームに対して傾斜し、前進限界位置で前記フレームに対して垂直となり、前記リアフレームに設けたシリンダーのピストンロッドの前後動に伴って前記支点軸を支点として前後動する移動刃板と、
前記固定刃板と前記移動刃板との間に形成されるV字形の破砕空間に被破砕物が供給され、前記移動刃板が固定刃板に対して前進することによって前記被破砕物が破砕される破砕機において、
前記固定刃板及び/又は前記移動刃板を請求項1、請求項8に記載の刃板とすることを特徴とした破砕機である。
【0018】
請求項12の発明は、並設された一対のサイドフレームと、この両サイドフレームの前方同士を接続するフロントフレームと、前記両サイドフレームの後方同士を接続するリアフレームとで構成し、被破砕物を投入する上方開放部及び破砕処理物が排出される下方開放部を有する上下開放のフレームと、
前記フレームに対して垂直又は傾斜して設けたホルダーに固定支持される固定刃板と、
前記両サイドフレーム間に架設した支点軸に軸支され、後退限界位置で前記フレー
ムに対して傾斜し、前進限界位置で前記フレームに対して垂直となり、前記リアフレームに設けたシリンダーのピストンロッドの前後動に伴って前記支点軸を支点として前後動する移動刃板と、
前記固定刃板と前記移動刃板との間に形成されるV字形の破砕空間に被破砕物が供給され、前記移動刃板が固定刃板に対して前進することによって前記被破砕物が破砕される破砕機において、
前記固定刃板を請求項2、請求項3、請求項8、請求項9、請求項10のいずれかに記載の固定刃板とし、
前記移動刃板を請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項10のいずれかに記載の移動刃板とすることを特徴とした破砕機である。
【0019】
請求項13の発明は、請求項11乃至請求項12に記載の破砕機において、
前記両サイドフレームの内側には、耐摩耗性を有するライナーをさらに設けることを特徴とした破砕機である。
【0020】
請求項14の発明は、請求項11乃至請求項13のうちいずれか一に記載の破砕機において、
前記ホルダーは上方部と下方部からなり、下方部には、排出下端が前側へ延出し、上方から下方にかけて傾斜面を有する受け刃を有することを特徴とした破砕機である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1〜請求項6の発明によれば、刃板の母材部の表面に菱型刃部、山形刃部等を配置し、菱形刃部は帯状部と傾斜部の角でエッジを形成し、山形刃部は十字状の先端帯状部と裾野部との角でエッジを形成し、また、傾斜帯状部と裾野部との角でエッジを形成しているため、この各帯状部、各傾斜帯状部、先端帯状部、各エッジによって当接対象物である被破砕物に対して、いわゆる「線」又は「点」で接触することによって、破砕する不要鋳物製品である被破砕物に応力集中を起こして被破砕物を細かく破砕(切断、折断、砕く、潰す、割る等)することができる。したがって、例えば、鉄素材である破砕済みの廃材をマグネットリフターの磁力により吸引して運搬するような場合、被破砕物を細かく破砕することができれば、この細かい破砕済みの廃材をマグネットリフターで大量に吸引して運搬することができるため、運搬が便利となる。また、破砕後の廃材を収納用バケットに収納する際、ほぼ隙間なく破砕後の廃材を入れ込むことができ、収納バスケット内の密度を高くできることにより、保管や運搬等が便利になり、作業効率が向上し、さらには工場のヤードを広く利用することができる。また、破砕後の廃材を電気炉等で溶解する際、廃材が細かくなることによって溶解スピードが速くなり、溶解時の消費電力量(kwh)を抑えることができるため、溶解コスト、作業コストを下げることができる。
【0022】
また、各帯状部、各傾斜帯状部、先端帯状部によってエッジの寿命を延ばすことができる。
【0023】
母材部の上方側に配置した凹状刃部によって被破砕物を効果的に大割りすることができる。
【0024】
移動刃板に配置した凸状刃部、凸状刃部の両脇に配置した小刃部によって、これら単独での効果又は相乗効果により、被破砕物の効果的な破砕や、破砕済みの廃材の排出が可能となる。
【0025】
固定刃板及び移動刃板での被破砕物への接触が、複数箇所での線当たり、又は、点当たりとして起こり被破砕物が細かく破砕され、製品原料としてのサイズに破砕可能とすることによって被破砕物を言わば「製品化」することが可能となる。
【0026】
請求項7の発明によれば、移動刃板に配置した凸状刃部に有する一又は二以上の切欠部により、被破砕物の効果的な破砕や、破砕済みの廃材の排出が容易となる。
【0027】
請求項8の発明によれば、母材部及び刃部の材質を硬度と靱性が高いハイマンガン鋳鋼製の刃板としているため、使用するたびに加工硬化し、耐摩耗性、衝撃磨耗性に優れた刃板を提供できる。
【0028】
従来の刃板の場合は、一定の期間でのメンテナンスが必要であったが、本発明のハイマンガン鋳鋼製の刃板の場合は、使用すればするほど硬度と靱性が増すため、約数年間〜十数年間以上メンテナンスフリーとなる。
【0029】
また、ハイマンガン鋳鋼製の母材部にボルト穴加工を施しているため、使用すればするほどボルト穴部分が加工硬化し、ボルト穴の強度が上がり、また、ボルト穴が緩まなくなり、刃板の取付精度、性能向上を図ることができる。
【0030】
刃板の硬度を高くすることによって、刃板の長寿命化による交換頻度の低くすることができ、交換作業に要する労力の軽減を図ることができる。
【0031】
請求項9の発明によれば、帯状部、先端帯状部、傾斜帯状部、凸状刃部及び小刃部の帯状部の幅を5mm〜15mmとすることによって、折断する被破砕物に効率的に応力集中を起こし、被破砕物を細かく破砕することができ、また、エッジの寿命を延ばすことができる。
【0032】
請求項10の発明によれば、山形刃部の裾野部の傾斜帯状部間の角度θが90°以上とすることによって、傾斜帯状部間に破砕物が嵌り込まれ難くなることによって、被破砕物や破砕済みの廃材が落下し易くなる。
【0033】
請求項11発明〜請求項14発明によれば、請求項1〜請求項10の発明の効果を有する刃板を使用する破砕機により被破砕物を効率的に破砕することができ、破砕機の稼働率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、固定刃板の正面図である。
図2図2は、固定刃板の側面図である。
図3図3は、固定刃板の背面図である。
図4図4は、固定刃板の斜視図である。
図5図5は、移動刃板の正面図である。
図6図6は、移動刃板の側面図である。
図7図7は、移動刃板の背面図である。
図8図8は、移動刃板の斜視図である。
図9図9は、山形刃部と山形刃部の関係を図示した平面図である。
図10図10は、菱型刃部及び山形刃部の拡大正面図である。
図11図11は、図1の固定刃板及び図5の移動刃板を設置した破砕機の移動刃板を前後動させた状態の側面図である。
図12図12は、固定刃板と、移動刃板が前進限界位置まで前動した状態の側面図である。
図13図13は、被破砕物が受け刃に引っ掛かっている状態を図示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明を実施するための形態を以下に示す。
【0036】
本発明は、不要となった鋳物製品、湯口、湯道、堰等の被破砕物Xを細かく破砕することができる破砕機Y用の刃板、及び、この刃板を配置した破砕機Yである。この刃板は、破砕機Yの固定側に設置する固定用の固定刃板40、破砕機Yの移動側に設置する移動用の移動刃板50とすることができ、固定刃板40の母材部41の破砕面である表面41aに多数配置した刃部42と、移動刃板50の母材部51の破砕面である表面51aに多数配置した刃部52とで被破砕物Xを破砕する構成である。
【0037】
また、刃板の母材部41、51及び刃部42、52をハイマンガン鋳鋼製とし、刃板の母材部41、51に刃板取付け用のボルトが螺挿されるボルト穴3(雌ねじ穴)を施したこと等を特徴とする。
【0038】
固定刃板40及び移動刃板50の母材部41,51の表面41a、51aに多数配置する刃部42、52の形状について、各図に基づいて説明する。
【0039】
まず、固定刃板40の刃部42を主に図1図4等で図示し、移動刃板50の刃部52を主に図5図8で図示している。
【0040】
以下、図1図4等で図示した固定刃板40について説明する。
【0041】
固定刃板40の母材部41の上方側に、略長方形状の凹状刃部43を配置する。また、この凹状刃部43の下方側に、帯状部44aと傾斜部44bの角でエッジ(刃先)44dを形成する菱型刃部44と、十字状の先端帯状部45aと先端帯状部45a側の裾野部45bとの角でエッジ(刃先)45b3を形成し、裾野部45bの傾斜帯状部45b1と裾野部45b傾斜部45b2との角でエッジ(刃先)45b4を形成した、多面形状で構成され、菱形刃部44の頂点に結合した山形刃部45と、さらに、母材部41の最下段に配置した山形刃物45の一部に、帯状部46aと傾斜部46bの角でエッジ(刃先)46cを形成した凸状刃部46を連設して配置する。
【0042】
凹状刃部43は、主に、母材部41に窪みを形成し、この窪みに縦刃43eと横刃43fを組み合わせた開口形状とし、正面視した凹状刃部43の左側内面43a、右側内面43b、下側内面43dを奥側に向かって傾斜させ、上側内面43cを母材部41に対して垂直とする。また、上側内面43cを下方に傾斜させる構成であってもよい。すなわち、破砕の際、被破砕物Xが上方へ逃げ難くなればどのような構成であってもよい。なお、図1等ではこの略長方形状の凹状刃部43を横に3つ連設しているが、凹状刃部43の数や大きさ等は特に限定されない。したがって、例えば、この窪みに複数の縦刃43eと複数の横刃43fを格子状に組み合わせて、例えば6つ以上の凹状刃部43形成する構成であってもよい。
【0043】
また、図2図4では、縦刃43eよりも横刃43fの方が延出した構成となっているが、その他、横刃43fよりも縦刃43eの方が延出した構成、縦刃43eと横刃43fが同位の構成であってもよい。また、横刃43fは、図2図4で図示したものよりもさらに延出した構成とすることもできる。
【0044】
この凹状刃部43の下方側に配置する菱形刃部44について説明する。
【0045】
この菱形刃部44は、母材部41の表面41a上に文字通り菱型に配置したものであり、菱形の各辺が帯状部44aと傾斜部44bからなる。具体的には、帯状部44aから両側にかけて傾斜部44bを形成した断面視略台形状である。
【0046】
帯状部44aと傾斜部44bの角をエッジ44dとすることによって被破砕物Xを細かく破砕できる。なお、この帯状部44aは曲面とすることも可能である。
【0047】
固定刃板40、後述する移動刃板50の菱形刃部44、54の四辺で囲繞された領域を嵌合領域44c、54cとしている。例えば、固定刃板40がフレーム9に対して垂直に配置し、また、支持ブロック16の数を調整することによって支点軸19の位置をフロントフレーム12寄りとし、移動刃板50が固定刃板40側へ前進限界位置Z2まで前動した場合は、固定刃板40及び移動刃板50の互いの嵌合領域44c、54cに互いの山形刃部55、45が嵌合するように配置することができる。具体的には、固定刃板40の菱形刃部44の四辺で囲繞された嵌合領域44cには移動刃板50の山形刃部55が嵌合するように配置され、移動刃板50の菱形刃部54の四辺で囲繞された嵌合領域54cには固定刃板40の山形刃部45が嵌合するように配置されることとなる。この状態を図11図12で図示している。また、支持ブロック16の数を調整することによって支点軸の位置をリアフレーム13寄りとすると、移動刃板50が固定刃板40側へ前進限界位置Z2まで前動した場合であっても、固定刃板40及び移動刃板50の互いの嵌合領域44c、54cに互いの山形刃部55、45が嵌合せずに配置することができる。すなわち、支点軸19の位置の調整次第では、移動刃板50が前進限界位置Z2まで前動した場合、固定刃板40の先端帯状部45aと、移動刃板50の先端帯状部55aとの間に空間を形成することもできる。
【0048】
次に山形刃部45について説明する。
【0049】
山形刃部45は、欠缺した三角錐を母材部41の表面41a上に四つ結合配置して文字通り山形形状としたような多面形状で構成され、十字状の先端帯状部45aと、裾野部45bからなる。
【0050】
換言すると裾野部45bは、前側(先端帯状部45a側)から後側(母材部41の表面41a側)にかけて末広がりとなった形状を構成する。すなわち、前側から後側にかけて徐々に高さが高くなるように形成されている。
【0051】
また、裾野部45bは、複数の傾斜帯状部45b1と複数の傾斜部45b2からなり、各傾斜帯状部45b1から両側にかけて傾斜部45b2が形成される。そして、各傾斜帯状部45b1の一端と先端帯状部45aの十字状の十字線の一端が連結したような構成となる。
【0052】
十字状の先端帯状部45aと裾野部45b(先端帯状部45a側)との角でエッジ43b3を形成し、各傾斜帯状部45b1と裾野部45b(各傾斜部45b2)との角でエッジ45b4を形成することによって被破砕物Xを細かく破砕できる。なお、この十字状の先端帯状部45aや各傾斜帯状部45b1は曲面とすることも可能である。
【0053】
また、裾野部45bの各傾斜部45b2の先端帯状部45a側の一部には、エッジ45b3を形成するため、傾斜した欠損部47を有している。図10等で図示したように、この欠損部47は奥側にかけて傾斜する構成であり、より具体的には、各傾斜部45b2の先端帯状部45a側の一部に略三角形状の傾斜面を構成する。なお、この欠損部47は、略三角形状の傾斜面を構成する他、略四角形、半球形状等の傾斜面であってもよい。また、欠損部47を傾斜面とせず、垂直な面としてもよい。要は、破砕の際に切欠き部によってエッジ45b3が形成され、被破砕物に応力集中が掛かりやすくなり、より効率的に破砕されることになればどのような構成であってもよい。
【0054】
菱形刃部44と山形刃部45の高さ関係は、菱形刃部44よりも山形刃部45のほうが高く設定されている。具体的には、側面視して菱型刃部44の帯状部44aが山形刃部45の裾野部45bの中腹になるように配置している。菱形刃部44と山形刃部45の数や大きさ等は特に限定されない。
【0055】
山形刃部45の固定刃板40への配置に関しては、図1等で図示したように、最上段目、第二段目、第三段目、最下段目に分けることができる。この山形刃部45は、菱形刃物44の頂点に結合して配置しているため、山形刃部45は母材部41上に千鳥状に配置されている。なお、図1等で図示したように、上から第二段目であって正面視して左端及び右端の山形刃部45、及び、最下段の左端及び右端の山形刃部45と凸状刃部46を半割して設置している。
【0056】
また、図9で図示したように、山形刃部45の傾斜帯状部45b1間の角度θが90°以上とすることによって山形刃部45と山形刃部45の間に被破砕物X(破砕された廃材)が挟まり難くなり、この山形刃部45と山形刃部45の間から被破砕物X(破砕された廃材)が滑落し易くなる。
【0057】
なお、図示しないが、破砕機Yの固定側又は移動側に設置する刃板の刃部42,52を、菱形刃部44と山形刃部45を配置したのみの例も挙げられる。
【0058】
さらに、固定刃板40の母材部41の最下段目の山形刃物44の一部に凸状刃部46を配置する。この凸状刃部46は、帯状部46aと傾斜部46bとの角をエッジ46cとすることによって被破砕物Xを細かく破砕できる。なお、この帯状部46aは曲面とすることも可能である。この凸状刃部46は、破砕機Yの排出口付近の被破砕物Xを破砕するのに特に有効である。
【0059】
菱型刃部44の帯状部44a、山形刃部45の先端帯状部45a、傾斜帯状部45b1、凸状刃部46の帯状部46aの幅は、望ましくは5mm〜15mmであるが、本発明の効果を奏するのであれば、4mm以下であっても、16mm以上であってもよい。
【0060】
次に、図11図12で図示するフレーム9に対して垂直又は傾斜して固定刃板40を固定支持するホルダー15について説明する。
【0061】
ホルダー15は上方部15aと下方部15bからなり、下方部15bには、排出下端15b2が前側(移動刃板50側)へ延出し、上方から下方にかけて滑り台のような傾斜面を有する受け刃15b1を有することを特徴とする。そして、この傾斜面に沿って移動刃板50の凸状刃部46が移動する。傾斜面と凸状刃部46の間には隙間があり、この隙間は、移動刃板50が後退限界位置Z1から前進限界位置Z2に至るまで同間隔である。同間隔とすることによって、破砕済みの破砕物Yの排出が容易となる。
【0062】
また、ホルダー15の下方部15bの排出下端15b2の延出する長さは問わない。したがって、図11等で図示したものよりもさらに延出した構成とすることもできる。
【0063】
上記ホルダー15は、上方部15aと下方部15bの分離できる分離型と、上方部15aと下方部15bに分離できない一体型とすることができる。
【0064】
被破砕物Xが菱形刃部44や山形刃部45で破砕されて細かく破砕された場合は、破砕済みの廃材が傾斜面に沿って滑り台で滑るようして排出されるが、被破砕物Xが長尺物の場合、長尺物の被破砕物Xが滑り台のような傾斜面に引っ掛かることによって被破砕物Xの落下を防止し、この傾斜面に引っ掛かった被破砕物Xを移動刃板50の凸状刃部46で破砕し、さらにこの破砕した廃材を移動刃板50の凸状刃部46で掻き出し排出することができる。
【0065】
この、ホルダー15の材質としては、例えば、特殊合金鋼等を採用する。
【0066】
次に図5図8等で図示した移動刃板50について説明する。
【0067】
移動刃板50の母材部51の上方側に、凹状刃部53を配置する。また、この凹状刃部53の下方側に、帯状部54aと傾斜部54bの角でエッジ(刃先)54dを形成する菱型刃部54と、十字状の先端帯状部55aと先端帯状部55a側の裾野部55bとの角でエッジ(刃先)55b3を形成し、裾野部55bの傾斜帯状部55b1と裾野部55bの傾斜部55b2との角でエッジ(刃先)55b4を形成した、多面形状で構成され、菱形刃部54の頂点に結合した山形刃部55と、さらに、母材部51の最下段に配置した山形刃物55の一部に、帯状部56aと傾斜部56bの角でエッジ(刃先)56cを形成した凸状刃部56を連設し、この凸状刃部56の両脇には、半割三角錐を上下に連設した小刃部58を配置する。また、この小刃部58は、帯状部58aと傾斜部58bの角でエッジ(刃先)58cを形成する構成であってもよいし、帯状部58aと傾斜部58bの角でエッジ(刃先)58cを形成しない構成であってもよい。



以上
【0068】
凹状刃部53は、主に、母材部51に窪みを形成し、この窪みに複数の縦刃53eと複数の横刃53fを格子状に組み合わせた開口形状としている。その他、凹状刃部53の形状や、凹状刃部53の数や大きさ等は特に限定されない等の点に関しては、固定刃板40の凹状刃部43に準ずる。
【0069】
移動刃板50の菱形刃部54及び山形刃部55に関しては、固定刃板40の菱形刃部44及び山形刃部45に準ずる。
【0070】
凸状刃部56は、帯状部56aと傾斜部56bからなり、帯状部56aから両側にかけて傾斜部56bを構成する。帯状部56aと傾斜部56bの角をエッジ56cとすることによって被破砕物Xを細かく破砕できる。なお、この帯状部56aは曲面とすることも可能である。
【0071】
凸状刃部56は、側面視して上方から下方にいくにつれて湾曲しており、下端で爪部56dを構成する。この爪部56dで被破砕物Xを引っ掛けて確実かつ効率的に破砕及び掻き出すことができる。
【0072】
また、図11図12で図示したように、凸状刃部56に一又は二以上の切欠き部57を入れる構成であってもよい。この構成によればさらに確実かつ効率的に破砕及び掻き出すことができる。また、図5等のように凸状刃部56に一又は二以上の切欠き部57を入れない構成であってもよい。
【0073】
その他の構成については固定刃板40の凸状刃部46に準ずる。
【0074】
小刃部58は、帯状部58aと傾斜部58bからなり、帯状部58aから両側にかけて傾斜部58bを構成する。帯状部58aと傾斜部58bの角をエッジ58cとすることによって被破砕物Xを細かく破砕できる。なお、この帯状部46aは曲面とすることも可能である。小刃部58は、図5で図示したように、凸状刃部56の傾斜部56bに当設して配置してもよいし、傾斜部56bに当設せずに配置してもよい。
【0075】
小刃部58は側面視して湾曲している。なお、図5等ではそれぞれの凸状刃部56の両脇に小刃部58を2つ設けているが、1つであってもよい。また、この小刃部58は、爪部58dを有しており、この爪部58dによってより確実かつ効果的に被破砕物Xを破砕することができ、また、被破砕物Xを掻き出すことができる。
【0076】
さらには、図示しないが、小刃部58の下方であって、横方向及び/又は縦方向に刃部を設けることもできることによって被破砕物Xを確実かつ効率的に破砕及び掻き出すことができる。
【0077】
本発明の刃板を構成する母材部41、51及び刃部42、52の材質としては、ハイマンガン鋳鋼製であることが挙げられる。ハイマンガン鋳鋼は、使用すればするほど使用部分から次々に硬化する、加工硬化が生じる。すなわち、当初の硬度は低いが、表面に加えられる衝撃等によって表面から加工硬化すると共に耐摩耗性が一躍向上し刃板の寿命も大幅に上がることとなる。具体的には、刃板の加工硬化後の硬さは、HRC40〜50以上となる。
【0078】
なお、刃板を構成する母材部41、51及び刃部42、52のその他の材質としては、例えば、機械構造用炭素鋼(SC)、機械構造用合金鋼(SCM等)等の特殊鋼や、普通鋳鋼FCDを基本とした合金鋳造品等が挙げられる。
【0079】
なお、刃板の母材部41,51の材質と刃部42、52の材質が同じにすることによって、刃板自体が不要となった場合は、母材部41,51と刃部42、52を一緒に処理できるため、再生処理が容易である。
【0080】
ボルト穴3は、一般的には、図示しない市販のマシニングセンタ等の工作機械を用いて形成する。例えば、マシニングセンタの主軸にボルト穴3加工用の工具を取付けて、この工具の回転によってボルト穴3を形成する。このボルト穴3は、母材部41の表面41a、裏面41b、平面41c、底面41d、側面41eのいずれか一面以上に施され、ボルト穴の径をM(mm)、ネジ山のピッチをP(mm)としたときに、M20×2.5P、M24×3.0P、M30×3.0Pのうちいずれかとするボルト穴3加工が可能である。
【0081】
ボルト穴3の形成方法の一例としては、下記のとおりである。ここでは固定刃板40について説明する。まず、固定刃板40の所定の箇所、例えば、取付け面である母材部41の表面41a、裏面41b、平面41c、底面41d、側面41eのいずれか一面以上にドリル等によって下穴を穿孔する。そして、この穿孔した下穴の内壁面に対してタップ等を用いてねじ溝を形成することによってねじ穴加工を施す。
【0082】
下穴は、タップのねじ部の外径よりも小さい内径に形成されていて、このタップを回転しながら挿通することにより、下穴の内壁面を切削してボルト溝が形成され、ボルト穴3が加工される。すなわち、ボルトよりも径寸法が小さい下ねじ(下穴、内径)をドリル等で切削加工し、その下ねじに沿ってボルト穴3を切削加工する。例えば、タップを使用してボルト穴3を形成する場合には、まずボルトの下径(最小径)の穴をドリル等によって穿け、この下穴にタップをねじ込みながらボルト穴3を形成する。
【0083】
マシニングセンタには、マシニングセンタの駆動手段および主軸をボルト穴3の形成プログラムにしたがって駆動制御する制御装置を利用する。具体的には、予めボルト穴3の形成プログラムで規定されたボルト穴3の形成手順にしたがって、ボルト穴3の加工用の特殊工具と固定刃板40、移動刃板50との間の位置および速度制御等を行う。また、マシニングセンタは、ボルト穴3の形成プログラムにおいて、たとえば、主軸モータの回転数を解読することにより主軸の回転数の制御等を行う。
【0084】
具体的な加工方法としては、例えば、X軸・Y軸・Z軸の三軸制御可能なマシニングセンタ等の主軸に装着した特殊工具(超鋼ネジ切りチップ等)で、マシニングセンタ等のヘリカル送り(円弧)機能を利用して雌ねじ穴を形成する方法が挙げられる。
【0085】
この方法による場合、まず、取付け面である母材部41の表面41a、裏面41b、平面41c、底面41d、側面41eのいずれか一面以上にドリル等によって下穴を穿孔する。
【0086】
そして、特殊工具(超鋼ネジ切りチップ等)を装着したマシニングセンタの主軸を回転させながら、この主軸をZ軸方向ヘヘリカル送りし、下穴の内周面に雌ねじ溝を切削加工する。例えば、1公転ごとに1ピッチ進む等のようにヘリカル送りされることによって雌ねじ溝を形成する。
【0087】
また、先端にドリルをもったタップを使用することによって、下穴からねじ切りまでを1本の工具で可能となる。具体的には、マシニングセンタの主軸にドリルタップを取付けてボルト穴3を形成する。
【0088】
以上のように、マシニングセンタ等のヘリカル送り(円弧)機能を利用することによって、固定刃板40にボルト穴3が加工される。
【0089】
同様の方法により、移動刃板50にもボルト穴3が形成される。加工方法は、固定刃板40と同様であるため、ここでは省略する。図7では、シリンダー6のピストンロッド7に固定するためのボルト穴3等が加工されている。
【0090】
なお、これらのボルト穴3の位置、大きさ、数等は特に限定されない。
【0091】
ボルト穴3加工を施した刃板の固定に関しては、例えば、一例として、図11図12では、固定刃板40にはホルダー15を使用し、このホルダー15に固定刃板40を取付けている。具体的には、破砕機Yのフレーム9に設けたホルダー15の固定刃板40設置面に凹部又は凸部を形成し、一方で固定刃板40のホルダー15設置面に凸部又は凹部を形成し、ホルダー15の固定刃板40設置面の凹部又は凸部と固定刃板40のホルダー15設置面の凸部又は凹部を嵌合させ、ホルダー15及び固定刃板40に形成したボルト穴3にボルト等をホルダー15側から挿入することによって固定刃板40をホルダー15に取付ける。
【0092】
また、従来の移動刃板50は、記述した固定刃板40のようにホルダー15を使用し、このホルダー15に移動刃板50を取付けていた。例えば、ホルダー15の移動刃板50設置面に凹部又は凸部を形成し、一方で移動刃板50のホルダー15設置面に凸部又は凹部を形成し、このホルダー15の移動刃板50設置面の凹部又は凸部と移動刃板50のホルダー15設置面の凸部又は凹部を嵌合させ、ホルダー15及び移動刃板50に形成したボルト穴3にボルト等をホルダー50側から挿入することによってホルダー15に移動刃板50を取付けることとしていた。図11図12では、移動刃板50にはホルダー15を使用せず、移動刃板50の背面上方にシリンダーのピストンロッドを固定している。このように移動刃板50の背面上方にピストンロッドを固定しているので、少ない力で移動刃板50を前後動させることができる。
【0093】
なお、その他の例としては、本発明の効果を奏するのであれば、固定刃板40と移動刃板50のどちらにもホルダー15を介在させる場合、また、固定刃板40と移動刃物50のどちらにもホルダー15を介在させない場合も考えられる。さらには、ホルダー15機能をも発揮する固定刃板40、すなわち、ホルダー兼固定刃板を使用することもできる。
【0094】
この刃物(刃板)取付け用のホルダー15を使用しない場合は、製品としてコストダウンを図ることができ、また、軽量化対策が容易となるため、破砕機Yの総重量を抑えることが可能となる。
【0095】
このように、固定刃板40及び移動刃板50は、ボルトを介して着脱するものであるため、固定刃板40及び移動刃板50が単独で容易に交換可能である。
【0096】
なお、ボルトは、例えば、高炭素鋼製で、高負荷・高トルクに対応するものが望ましい。
【0097】
なお、本発明の刃板は、主に、硬くて厚い等の特性を有する難破砕(難切断、難折断)のもの、例えば、ダクタイル鋳鉄(FCD材)等に有用であるが、ねずみ(普通)鋳鉄(FC材)の破砕(切断、折断)にも有用である。
【0098】
次に、固定刃板40及び移動刃板50が設置される破砕機Yの構成の一例を説明する。
【0099】
破砕機Yは、並設された一対のサイドフレーム10,11と、両サイドフレーム10,11の前方同士を接続するフロントフレーム12と、両サイドフレーム10,11の後方同士を接続するリアフレーム13とで構成し、被破砕物Xを投入する上方開放部9a及び破砕済みの廃材が排出される下方開放部9bを有する上下開放のフレーム9と、このフレーム9に対して垂直又は傾斜して設けたホルダー15に固定支持される固定刃板40と、両サイドフレーム10,11間に架設した支点軸19に軸支され、後退限界位置Z1でフレームに対して傾斜し、前進限界位置Z2でフレーム9に対して垂直となり、リアフレーム13に設けたシリンダー6のピストンロッド7の前後動に伴って支点軸19を支点として前後動する移動刃板50とを主構成要素とし、固定刃板40と移動刃板50との間に形成されるV字形の破砕空間Vに被破砕物Xが供給され、移動刃板50が固定刃板40に対して前動することで被破砕物Xが破砕される。
【0100】
なお、既述のとおり、移動刃板50は、両サイドフレーム10,11間に架設した支点軸19に軸支されているが、具体的には、移動刃板50の下側に形成した半円形の軸支部59によって支点軸19に軸支されている。そして、支点軸19に図示しない支点軸キャップを被せてボルト等の固定具で移動刃板50に固定する。
【0101】
また、支点軸19は、主に、軸受けと、両サイドフレーム10,11に大きく開設した枠穴と、この枠穴に嵌合する支持ブロック16を利用して支持されている。従って、枠穴に嵌合する支持ブロック16の抜差しを利用して、枠穴内において左右の支持ブロック16の数を調整することで、支点軸19の位置を変更できる。すなわち、移動刃板50が前進限界位置Z2にきたときの固定刃板40と移動刃板50との間に形成される破砕空間Vを調整することができる。
【0102】
また、支点軸19の位置を変更するその他の構成としては、図示しないが、軸受けと、軸受けに内設したメタルと、偏心ブッシュと、偏心ブッシュを軸受けに固止するための止め具を使用する構成も挙げられる。この構成によると、ボルト等の止め具を取り外し、偏心ブッシュを回転移動し、支点軸19の位置を変更し、この偏心ブッシュの変更後に偏心ブッシュをボルト等の止め具で固定し、偏心ブッシュを固止する。このようにして支点軸19の位置を変更し固定することができる。
【0103】
図12等で図示するように、移動刃板50の母材部51に配置した凸状刃部56及び小刃部58は、支点軸19の近傍に位置する。
【0104】
また、図12中、Xは支点軸19の中心からピストンロッド7までの距離である。Yは支点軸19の中心から移動刃板50の表面51aの下方までの距離である。てこの原理でXの距離が、Yの距離の4倍から6倍とする。このため、重くて硬いような被破砕物であっても少ない力で破砕することができる。
【0105】
固定刃板40を固定するホルダー15がフレーム9に対して傾斜して設けられた場合は、このホルダー15に固定支持される固定刃板40もフレーム9に対して傾斜して配置されることになる。このように、固定刃板40がフレーム9に対して傾斜して配置され、また、移動刃板50も後退限界位置Z1にある場合は、固定刃板40と移動刃板50との間に形成されるV字形の破砕空間Vを広く採ることができるため、比較的大きな被破砕物Xを投入することができる。
【0106】
また、固定刃板40を固定するホルダー15がフレーム9に対して垂直に設けられた場合は、このホルダー15ーに固定支持される固定刃板40もフレーム9に対して垂直に配置されることになる。このように、固定刃40板がフレーム9に対して垂直に配置されている場合は、固定刃板40と移動刃板50との間に形成されるV字形の破砕空間Vは、固定刃板40が傾斜している場合に比べて狭くなるが、移動刃板50が前進限界位置Z2にきたときは、移動刃板50と固定刃板40が前後に略水平に対峙し、固定刃板40と移動刃板50との間に形成される破砕空間が狭くなるため、被破砕物Xをより細かく破砕することができる。
【0107】
図11では、シリンダー6の設置方法としてトラニオン型を図示しているが、その他の方法によってもよい。このシリンダー6は、油圧や空圧を作動流体とする流体シリンダーを用いることもできる。例えば、油圧シリンダー装置の場合は、ピストンロッド7を前後動させることによって、固定刃板40と移動刃板50の間に投入された被破砕物を破砕する直線送り駆動機構となる。したがって、油圧シリンダーの直線送り駆動装置で移動刃板50を徐々に変位させ、油圧の強力な圧力を被破砕物Xに作用させ、被破砕物Xを破砕する。
【0108】
シリンダー6のピストンロッド7側にはトラニオンを備えており、このシリンダー6は、トラニオン軸を介してトラニオン軸受によって、リアフフレーム13に対して回転可能に支持されている。
【0109】
ピストンロッド7の先端にクレビス軸受を備え、クレビス軸を介してシリンダーブラケットが回動可能に枢着され、このシリンダーブラケットの装着面を移動刃板50の裏面の上方にボルト穴3加工が施されている所定の位置に取付ける。
【0110】
移動刃板50の裏面51bの上方にピストンロッド7に枢着したシリンダーブラケットが取付けられており、ピストンロッド7が伸縮することによって支点軸19を支点として移動刃板50が前進後退する。この前進後退は、支点軸19を軸支点としたテコの原理を利用するもので、シリンダー6の出力を抑えることができ、比較的小さい動力で移動刃板50を可動することができる。
【0111】
両サイドフレーム10,11の内側には一枚又は複数枚のライナーをボルト等の止め具で着脱自在に設けることも可能である。また、このボルト等の止め具の頭を研磨手段で略面一に加工する構成を採用することも可能である。
【0112】
このライナーは、例えば、超硬合金等の耐摩耗性を有する高硬度材を採用しており、このライナーを両サイドフレーム10,11に設けることによって、この両サイドフレーム10,11への被破砕物Xによる衝撃回避を図ることができるため、両サイドフレーム10,11の耐久性の向上及び長寿命化を図ることができる。また、両サイドフレーム10,11と刃板との摩擦を回避することができる。なお、このライナーの硬度は、例えば、HRC50〜HRC60程度である。
【符号の説明】
【0113】
3:ボルト穴
6:シリンダー
7:ピストンロッド
9:フレーム
9a:上方開放部
9b:下方開放部
10:サイドフレーム
11:サイドフレーム
12:フロントフレーム
13:リアフレーム
15:ホルダー
15a:上方部
15b:下方部
15b1:受け刃
15b2:排出下端
16:支持ブロック
17:支点軸
40:固定刃板
41:母材部
41a:表面
41b:裏面
41c:平面
41d:底面
41e:側面
42:刃部
43:凹状刃部
43a:左側内面
43b:右側内面
43c:上側内面
43d:下側内面
43e:縦刃
43f:横刃
44:菱形刃部
44a:帯状部
44b:傾斜部
44c:嵌合領域
44d:エッジ
45:山型刃部
45a:先端帯状部
45b:裾野部
45b1:傾斜帯状部
45b2:傾斜部
45b3:エッジ
45b4:エッジ
46:凸状刃部
46a:帯状部
46b:傾斜部
46c:エッジ
47:欠損部
50:移動刃板
51:母材部
51a:表面
51b:裏面
51c:平面
51d:底面
51e:側面
52:刃部
53:凹状刃部
53a:左側内面
53b:右側内面
53c:上側内面
53d:下側内面
53e:縦刃
53f:横刃
54:菱形刃部
54a:帯状部
54b:傾斜部
54c:嵌合領域
54d:エッジ
55:山型刃部
55a:先端帯状部
55b:裾野部
55b1:傾斜帯状部
55b2:傾斜部
55b3:エッジ
55b4:エッジ
56:凸状刃部
56a:帯状部
56b:傾斜部
56c:エッジ
56d:爪部
57:切欠き部
58:小刃部
58a:帯状部
58b:傾斜部
58c:エッジ
58d:爪部
59:軸支部
V:破砕空間
X:被破砕物
Y:破砕機
Z1:後退限界位置
Z2:前進限界位置
【要約】      (修正有)
【課題】不要鋳物製品である被破砕物を細かく破砕することができる破砕機用の刃板及びこの刃板を使用した破砕機を提供する。
【解決手段】母材部41と、この母材部の表面に多数配置した刃部とでなる、破砕機用の刃板40であって、刃部は、帯状部と傾斜部の角でエッジを形成する菱型刃部44と、十字状の先端帯状部と裾野部との角でエッジを形成し、傾斜帯状部と裾野部との角でエッジを形成した、多面形状で構成され、菱形刃部の対角線の交点箇所に結合した山形刃部45とでなる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図10
図11
図12
図13