特許第5881883号(P5881883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5881883弁座加工機および当該弁座加工機を用いた弁座加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5881883
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】弁座加工機および当該弁座加工機を用いた弁座加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 5/06 20060101AFI20160225BHJP
   B23B 41/00 20060101ALI20160225BHJP
   B23B 41/12 20060101ALI20160225BHJP
   B23P 6/00 20060101ALN20160225BHJP
【FI】
   B23B5/06
   B23B41/00 B
   B23B41/12
   !B23P6/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-120763(P2015-120763)
(22)【出願日】2015年6月16日
【審査請求日】2015年8月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 大地
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴公
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−028892(JP,A)
【文献】 特開平04−244301(JP,A)
【文献】 特開2006−239836(JP,A)
【文献】 実開昭55−151401(JP,U)
【文献】 実開昭61−099402(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3021143(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 5/06
B23B 41/00−41/16
B23P 6/00
B24B 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路を形成する弁本体部と、前記弁本体部に着脱可能に設けられて前記弁本体部における弁座に密着係合可能な弁体を駆動することによって前記流路を開閉する弁駆動部とを備えた弁装置における前記弁座を加工する弁座加工機であって、
前記弁本体部に取り付けられる台座部と、
前記台座部に設けられ、当該台座部に対して異なる二軸方向に移動可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、当該本体部に対して前記弁体の駆動方向に移動可能な支持部と、
前記支持部に設けられ、当該支持部に対して前記弁体の駆動方向と平行な軸回りに回動可能な主軸と、
前記主軸に設けられ、前記弁座を加工するための工具を保持すると共に前記主軸に対して前記弁体の駆動方向と交差する方向に移動可能な工具ホルダと、
前記支持部および前記工具ホルダの移動を制御する制御部と
を備え
前記本体部が、前記台座部を押圧して当該本体部と前記台座部との間に隙間を形成する押圧手段を備えたものである
ことを特徴とする弁座加工機。
【請求項2】
前記台座部が、前記弁本体部に設けられた既設のボルト穴と同ピッチ且つ同数のボルト挿通穴を有するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の弁座加工機。
【請求項3】
前記主軸の外周側に回転可能に取り付けられ、前記弁本体部に固定可能なリング部材を備えた
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弁座加工機。
【請求項4】
流体の流路を形成する弁本体部と、前記弁本体部に着脱可能に設けられて前記弁本体部における弁座に密着係合可能な弁体を駆動することによって前記流路を開閉する弁駆動部とを備えた弁装置における前記弁座を加工する弁座加工方法であって、
前記弁本体部から前記弁駆動部を取り外し、前記弁本体部に請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の弁座加工機を取り付け、前記工具ホルダに切削工具を取り付け、前記支持部を前記弁体の駆動方向に移動すると共に、前記工具ホルダを前記弁体の駆動方向と交差する方向に移動することにより、前記弁座を前記弁体に対応した形状に加工する
ことを特徴とする弁座加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンへの流体の供給に用いられる弁装置における弁座がエロージョンによって浸食した際に、当該弁座の補修加工を施す弁座加工機、および、当該弁座加工機を用いた弁座加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、蒸気タービンを利用した発電設備においては、ボイラで発生した蒸気の熱エネルギーを蒸気タービンで機械的仕事に変換しており、これらボイラと蒸気タービンとの間に、弁装置が設けられている。弁装置は、ボイラから蒸気タービンへ送られる蒸気(流体)の流路を形成すると共に、弁体を動作させて流路における内壁の一部(弁座)と密着させることによって当該流路を開閉するものである。
【0003】
この弁装置においては、ボイラから弁装置(流路)内に流入した蒸気が、その内壁に噴流となって衝突するという問題がある(特許文献1参照)。このように蒸気が流路の内壁に衝突することによって、弁装置としての圧力損失が発生すると共に、当該内壁の浸食(エロージョン)が発生してしまう。特に、弁座に浸食が発生すると、弁座に沿って蒸気タービンへ流入する蒸気の流れが乱れる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−214709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、弁座に浸食が発生した場合には、弁座を補修加工する必要がある。補修加工は、弁座の表面を切削して浸食部分を除去すると共に弁体に対応した形状に再加工するものである。
【0006】
この弁座の補修加工は、弁装置を発電設備のある工場(発電工場)から加工設備のある工場(加工工場)へ移動して行われる。つまり、弁装置を、ボイラと蒸気タービンとの間から取り外して発電工場から加工工場へ運搬し、当該加工工場において補修加工を施した後、補修加工が施された弁装置を加工工場から発電工場へ運搬して再びボイラと蒸気タービンとの間に取り付ける。
【0007】
このように、弁装置における弁座の補修加工は、弁装置の取り外しおよび取り付け作業、工場間の運搬作業、ならびに、加工設備による加工作業を必要とし、多大な費用と時間を要するものである。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、タービンへの流体の供給に用いられる弁装置における弁座の補修加工を容易に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第一の発明に係る弁座加工機は、流体の流路を形成する弁本体部と、前記弁本体部に着脱可能に設けられて前記弁本体部における弁座に密着係合可能な弁体を駆動することによって前記流路を開閉する弁駆動部とを備えた弁装置における前記弁座を加工する弁座加工機であって、前記弁本体部に取り付けられる台座部と、前記台座部に設けられ、当該台座部に対して異なる二軸方向に移動可能な本体部と、前記本体部に設けられ、当該本体部に対して前記弁体の駆動方向に移動可能な支持部と、前記支持部に設けられ、当該支持部に対して前記弁体の駆動方向と平行な軸回りに回動可能な主軸と、前記主軸に設けられ、前記弁座を加工するための工具を保持すると共に前記主軸に対して前記弁体の駆動方向と交差する方向に移動可能な工具ホルダと、前記支持部および前記工具ホルダの移動を制御する制御部とを備え、前記本体部が、前記台座部を押圧して当該本体部と前記台座部との間に隙間を形成する押圧手段を備えたものであることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第二の発明に係る弁座加工機は、第一の発明に係る弁座加工機において、前記台座部が、前記弁本体部に設けられた既設のボルト穴と同ピッチ且つ同数のボルト挿通穴を有するものであることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第三の発明に係る弁座加工機は、第一または第二の発明に係る弁座加工機において、前記主軸の外周側に回転可能に取り付けられ、前記弁本体部に固定可能なリング部材を備えたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第四の発明に係る弁座加工方法は、流体の流路を形成する弁本体部と、前記弁本体部に着脱可能に設けられて前記弁本体部における弁座に密着係合可能な弁体を駆動することによって前記流路を開閉する弁駆動部とを備えた弁装置における前記弁座を加工する弁座加工方法であって、前記弁本体部から前記弁駆動部を取り外し、前記弁本体部に第一から第三のいずれか一つの発明に係る弁座加工機を取り付け、前記工具ホルダに切削工具を取り付け、前記支持部を前記弁体の駆動方向に移動すると共に、前記工具ホルダを前記弁体の駆動方向と交差する方向に移動することにより、前記弁座を前記弁体に対応した形状に加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第一の発明に係る弁座加工機によれば、弁装置の弁座がエロージョンによって浸食した際に、弁座加工機を弁駆動部に代えて弁装置の弁本体部に組み付けることができるので、弁装置(弁本体部)がタービン等に組み付けられた状態で弁座の補修加工を行うことができる。よって、弁装置における弁座の補修加工において、弁装置のタービン等からの取り外し作業およびタービン等への取り付け作業、ならびに、発電設備のある工場と加工設備のある工場間の運搬作業をなくすことができる。
また、押圧手段によって本体部と台座部との間に隙間を形成することにより、当該隙間(本体部と台座部との間)に高さ調整ライナを挿入することができる。よって、例えば、本体部の一端側に高さ調整ライナを挟み込んで本体部の一端側のみを高くすることにより、台座部に対する本体部(主軸)の傾きを調整することができる。
【0015】
第二の発明に係る弁座加工機によれば、弁装置における既設のボルト穴と弁座加工機におけるボルト挿通穴とが互いに同ピッチ且つ同数設けられているので、弁装置に対して弁座加工機をボルト穴のピッチ毎に位相をずらして組み付けることができる。つまり、弁装置に対する弁座加工機の取り付け向きを変えることができる。よって、弁装置の近くに他の機器(周辺構造物等)がある場合には、当該他の機器との干渉を回避しつつ、弁座加工機の弁装置への組み付けを行うことができる。
【0016】
第三の発明に係る弁座加工機によれば、リング部材を、主軸の回動を許容しつつ弁本体部に固定することができるので、加工の際に生じる加工抵抗等による主軸の振れ(振動や煽り)を防止することができる。
【0018】
第四の発明に係る弁座加工方法によれば、弁装置の弁座がエロージョンによって浸食した際に、弁座加工機を弁駆動部に代えて弁装置の弁本体部に組み付けることができるので、弁装置(弁本体部)がタービン等に組み付けられた状態で弁座の補修加工を行うことができる。よって、弁装置における弁座の補修加工において、弁装置のタービン等からの取り外し作業およびタービン等への取り付け作業、ならびに、発電設備のある工場と加工設備のある工場間の運搬作業をなくすことができる。
また、支持部および工具ホルダの移動を制御して切削工具による弁座の加工を行うことにより、弁座を弁体に対応した形状に容易に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1に係る弁座加工機の構造を示す平面図である。
図2】実施例1に係る弁座加工機の構造を示す断面図(図1におけるII−II矢視断面図)である。
図3】実施例1に係る弁座加工機における台座部と本体部との固定方法を示す説明図(図1におけるIII−III矢視断面)である。
図4】実施例1に係る弁座加工機における押圧手段を示す説明図(図1におけるIV−IV矢視断面)である。
図5】実施例1に係る弁座加工機における防振リングを示す説明図(図2におけるV−V矢視断面)である。
図6】実施例1に係る弁座加工機を用いた弁座の加工方法を示す説明図である。
図7】実施例1に係る弁座加工機を用いた補修加工を施す弁装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る弁座加工機の実施例について、添付図面を参照して詳細に説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1に係る弁座加工機を用いて補修加工を施す弁装置の構造について、図7を参照して説明する。
【0022】
図7に示すように、弁装置101には、蒸気の流路110aを形成する弁本体部110と、この弁本体部110に着脱可能に設けられて弁本体部110における流路110aを開閉するように後述する弁体124を動作する弁駆動部120とが備えられている。弁装置101は、発電設備における図示しないボイラと図示しない蒸気タービンとの間に設けられるものであり、弁本体部110によってボイラから蒸気タービンへ供給される蒸気が流通する流路110aを形成すると共に、弁駆動部120によって当該流路110aにおける蒸気の流通の停止や当該流路110aを流通する蒸気の流量の調整を行うものである。
【0023】
弁本体部110には、水平方向における一方側(図7における右方側)に開口する第一開口部111と、鉛直方向における一方側(図7における下方側)に開口する第二開口部112と、鉛直方向における他方側(図7における上方側)に開口する第三開口部113とが設けられている。弁本体部110においては、第一開口部111が図示しないボイラと接続され、第二開口部112が図示しない蒸気タービンと接続されており、図示しないボイラで発生された蒸気は、第一開口部111を介して弁装置101(弁本体部110)内に流入され、その後、第二開口部112を介して図示しない蒸気タービンへ流出されるようになっている。つまり、弁本体部110には、第一開口部111と第二開口部112とを連通する流路110aが形成されている。
【0024】
第三開口部113は、流路110aと連通して第二開口部112と対向するように形成されている。また、第三開口部113は、弁本体部110における上面114に臨んで形成されており、この第三開口部113が臨む上面114は、平らに加工された加工面である。弁本体部110の上面114には、弁装置101における弁駆動部120が取り付けられるようになっている。
【0025】
弁駆動部120には、弁本体部110(上面114)に固定される取付板121と、取付板121に設けられて図示しない駆動源を有する駆動部本体122と、駆動部本体122によって一方向(鉛直方向であって、図7における上下方向)に動作される弁棒123および弁体124とが備えられている。
【0026】
弁本体部110の上面114には、第三開口部113の近傍に複数のボルト穴115が形成されており、このボルト穴115には、それぞれスタッドボルト116がねじ込まれている。一方、弁駆動部120の取付板121には、弁本体部110の第三開口部113に対応した位置に弁棒123を挿通可能な弁棒挿通穴125が形成されると共に、弁本体部110のボルト穴115およびスタッドボルト116に対応した位置にスタッドボルト116を挿通可能なボルト挿通穴126が形成されている。
【0027】
取付板121(弁駆動部120)のボルト挿通穴126に上面114(弁本体部110)のスタッドボルト116が挿通され、当該スタッドボルト116の先端からナット117がねじ込まれることにより、取付板121(弁駆動部120)は上面114(弁本体部110)に固定されている。なお、弁本体部110におけるボルト穴115およびスタッドボルト116は、第三開口部113を囲んで周方向に所定距離離間して複数設けられており(図1参照)、弁駆動部120におけるボルト挿通穴126は、ボルト穴115およびスタッドボルト116に対応するように、すなわち、弁棒挿通穴125を囲んで周方向に所定距離離間して複数(ボルト穴115およびスタッドボルト116と同ピッチおよび同数)設けられている(図7参照)。
【0028】
駆動部本体122は、図示しない固定手段によって取付板121に固定され、弁棒123は、駆動部本体122から取付板121の弁棒挿通穴125を挿通して下方に突出して設けられ、弁体124は、弁棒123の先端側(図7における下端側)に取り付けられている。
【0029】
弁棒123および弁体124は、駆動部本体122の図示しない駆動源によって、弁棒123の軸方向(図7における上下方向)に動作するようになっている。弁本体部110の第二開口部112には、弁体124に対応した形状の弁座118が設けられており、弁駆動部120の動作によって弁体124は弁座118に密着係合するようになっている。弁体124が弁座118に密着係合することにより、弁本体部110における流路110aが閉じられ、図示しないボイラから図示しない蒸気タービンへの蒸気の流通が停止される。
【0030】
本発明の実施例1に係る弁座加工機の構造について、図1から図5を参照して説明する。
【0031】
図1および図2に示すように、弁座加工機1は、弁装置101の弁本体部110に固定される台座部10と、台座部10に設けられて当該台座部10に対して水平なX軸方向(図1における上下方向)およびY軸方向(図1および図2における左右方向)に移動可能な本体部20と、本体部20から水平な一方側(図1および図2における左方側)に延設されて当該本体部20に対して鉛直なZ軸方向(図2における上下方向)に移動可能な支持部30と、支持部30の先端側(図1および図2における左端側)に設けられて当該支持部30に対して鉛直なW軸方向(図2における上下方向)に移動可能かつ鉛直なC軸回りに回動可能に支持される主軸40と、主軸40の先端部(図2における下端部)に設けられて切削工具Tを保持すると共に当該主軸40に対して鉛直方向と交差するXt軸方向(図2においては、左右方向)に移動可能な工具ホルダ50と、支持部30のZ軸方向の移動と主軸40のW軸方向の移動およびC軸回りの回動と工具ホルダ50のXt軸方向の移動をそれぞれ制御可能なNC装置60とから概略構成される。
【0032】
この弁座加工機1は、弁装置101の弁座118がエロージョンによって浸食した際に、当該弁座118を補修加工するためのものであり、弁駆動部120(図7参照)に代えて弁装置101の弁本体部110に組み付けられるものである。つまり、弁座加工機1は、移動可能なものであり、弁装置101(弁本体部110)が図示しないボイラおよび図示しない蒸気タービンに組み付けられた状態で弁座118の補修加工を行うことができるものである。
【0033】
図1および図2に示すように、弁座加工機1の台座部10は、円形部11と方形部12とを合わせた平板形状から成り(図1参照)、円形部11において台座部10が弁装置101の弁本体部110に固定され、方形部12において弁座加工機1の本体部20が台座部10に固定されている(図1および図2参照)。
【0034】
台座部10の円形部11には、主軸40を挿通可能な(第三開口部113と略同径であり、図1および図2においては、第三開口部113よりも大きい径を有する)主軸通し穴13と、スタッドボルト116を挿通可能な複数(図1においては十二個)のボルト通し穴14とが設けられている。主軸通し穴13は、第三開口部113に対応した位置に形成され、複数のボルト通し穴14は、弁装置101のボルト穴115およびスタッドボルト116に対応した位置、すなわち、主軸通し穴13を囲んで周方向に所定距離離間して複数(ボルト穴115およびスタッドボルト116と同ピッチ且つ同数)設けられている。
【0035】
弁座加工機1における台座部10のボルト通し穴14に弁装置101における弁本体部110のスタッドボルト116を挿通し、当該スタッドボルト116の先端からナット15をねじ込むことにより、台座部10(弁座加工機1)を弁本体部110(弁装置101)に固定することができる。
【0036】
ここで、弁装置101における複数のスタッドボルト116と弁座加工機1(台座部10)における複数のボルト通し穴14とが、互いに同ピッチ且つ同数設けられているので、弁装置101に対して弁座加工機1を1ピッチ(または複数ピッチ)分だけ回転させても、台座部10のボルト通し穴14に弁装置101のスタッドボルト116を挿通させることができる。よって、台座部10(弁座加工機1)を弁本体部110(弁装置101)に対して1ピッチ毎に位相をずらして組み付けることができる。このように、弁装置101に対する弁座加工機1の取り付け向きを可変としたことにより、弁装置101の近くに図示しない他の機器(周辺構造物)がある場合には、当該他の機器との干渉を回避しつつ、弁座加工機1の弁装置101(弁本体部110)への組み付けが可能となる。
【0037】
図1および図3に示すように、弁座加工機1の本体部20には、フランジ21が対称の位置(図1における上方側および下方側)に設けられている。このフランジ21が、当該フランジ21と略同じ高さ(図3における上下方向長さ)に形成されたライナ22と共に、押し付け金具23およびボルト24によって押え付けられることにより、本体部20は台座部10に固定されている。
【0038】
図1および図2に示すように、台座部10には、本体部20の周囲(図1においては四方)に位置する突出部16,17が設けられている。水平なX軸方向における本体部20の両側(図1における上方側および下方側)に位置する突出部16には、X軸方向位置調整ボルト18がねじ込まれており、このX軸方向位置調整ボルト18をねじ回すことによって、台座部10上において本体部20をX軸方向に移動することができる。水平なY軸方向における本体部20の両側(図1における左方側および右方側)に位置する突出部17には、Y軸方向位置調整ボルト19がねじ込まれており、このY軸方向位置調整ボルト19をねじ回すことによって、台座部10上において本体部20をY軸方向に移動することができる。つまり、X軸方向位置調整ボルト18およびY軸方向位置調整ボルト19によって、水平面(X−Y平面)内における台座部10に対する本体部20の位置を調整することができるようになっている。
【0039】
また、図1および図4に示すように、本体部20には、フランジ21を鉛直方向(図4においては、上下方向)に貫通する複数(図1においては、四つ)のねじ穴25が形成されており、このねじ穴25には、それぞれ押し上げボルト26がねじ込まれている。この押し上げボルト26をフランジ21にねじ込むことによって、台座部10に対して本体部20を持ち上げる、すなわち、台座部10と本体部20との間に隙間を形成することができる。このように本体部20を持ち上げて台座部10と本体部20との間に隙間を形成することにより、当該隙間(台座部10と本体部20との間)に図示しない高さ調整ライナを挿入することができる。つまり、本体部20の一端側に図示しない高さ調整ライナを挟み込み、本体部20の一端側のみを高くすることにより、台座部10に対する本体部20の傾き(主軸40の鉛直方向に対する傾き)を調整することができるようになっている。
【0040】
上述したように、弁装置101に固定された台座部10に対して、本体部20のX軸方向位置、Y軸方向位置および傾きを調整可能としたことにより、主軸40を弁座118の中心と一致させた正確な加工を行うことができる。なお、台座部10に対する本体部20の固定にライナ22と押し付け金具23とボルト24とを用いることにより、X軸方向位置、Y軸方向位置および傾きを調整した状態で本体部20を台座部10に固定することができる。
【0041】
図2および図5に示すように、主軸40には、回転可能に支持される防振リング41が設けられている。防振リング41は、主軸40の先端に設けた切削工具Tによる加工の際に、加工抵抗等による主軸40の振れ(振動や煽り)を防止することができるものであり、主軸40の外径と略同径(僅かに大きい径)の内径を有するリング部41aと、このリング部41aの外周側に突出可能な複数(図5においては、四つ)の突出ボルト41bとから構成される。防振リング41は、突出ボルト41bをねじ回してリング部41aからの突出量を調整することによって、主軸40のC軸回りの回動を許容しつつ、例えば、第三開口部113の内側に固定される。
【0042】
本発明の実施例1に係る弁座加工機を用いた弁座加工方法について、図1から図7を参照して説明する。
【0043】
図示しないボイラおよび図示しない蒸気タービンの駆動によって弁装置101にエロージョンによる浸食が生じた場合には、ボイラおよび蒸気タービンの駆動を停止した時(定期検査時など)に、以下に示す補修作業を行う。
【0044】
まず、弁装置101において弁本体部110に組み付けられている弁駆動部120を取り外し(図7参照)、この弁駆動部120に代わって弁座加工機1を弁装置101の弁本体部110に組み付ける(図2参照)。つまり、弁本体部110に設置されたスタッドボルト116を台座部10のボルト通し穴14に挿通すると共に当該スタッドボルト116にナット15をねじ込むことにより、加工機1における台座部10が弁装置101における弁本体部110に固定される。
【0045】
このとき、弁装置101の周囲に図示しない他の機器(周辺構造物等)がある場合には、当該他の機器との干渉および作業性を考慮して弁座加工機1を設置する。台座部10に設けられた複数のボルト通し穴14がスタッドボルト116と同ピッチ且つ同数で設けられていることにより、弁装置101に対する弁座加工機1(台座部10)の取り付け向き(方形部12が位置する方向)を種々の方向にすることができるので、図示しない他の機器との干渉および作業性を考慮して弁座加工機1を設置することができる(図1参照)。
【0046】
次に、台座部10に対する本体部20の水平面内における位置(X軸方向位置およびY軸方向位置)と傾きとを調整する。つまり、X軸方向位置調整ボルト18およびY軸方向位置調整ボルト19により、台座部10に対する本体部20のX軸方向位置およびY軸方向位置を調整し(図1および図2参照)、押し上げボルト26によって本体部20を持ち上げて図示しない高さ調整ライナを挿入することにより、台座部10に対する本体部20の傾き(主軸40の鉛直方向に対する傾き)を調整する(図1および図4参照)。
【0047】
このとき、例えば、主軸40における軸方向(図2においては、上下方向)に異なる二箇所に図示しないダイアルゲージを取り付け、当該ダイアルゲージを弁装置101の弁本体部110における弁座118および第三開口部113の内周側に押し当てることにより得た計測データに基づいて、本体部20のX軸方向位置、Y軸方向位置、傾きの調整量を求めることができる。
【0048】
次に、本体部20を台座部10に固定する。つまり、図3に示すように、本体部20におけるフランジ21の近傍にライナ22を設置し、フランジ21およびライナ22を押し付け金具23およびボルト24によって押え付けられることによって、本体部20を台座部10に固定する。
【0049】
次に、主軸40に設けた防振リング41を第三開口部113の内側に固定する。つまり、主軸40に係合する防振リング41を、軸方向(図2における上下方向)に移動して第三開口部113の位置に合わせ、突出ボルト41bを調整することによって防振リング41を第三開口部113の内側に固定する(図2および図5参照)。
【0050】
以上の作業により、弁座118の補修加工の準備、すなわち、弁座加工機1の弁装置101(弁本体部110)への設置が完了する。
【0051】
続いて、弁座加工機1による弁装置101の補修加工を行う。
【0052】
まず、図6に示すように、切削工具Tを工具ホルダ50によって保持した状態で主軸40を回転駆動させ、支持部30をZ軸方向(または、主軸40をW軸方向)に移動させると共に工具ホルダ50をXt軸方向に移動させることにより、弁座118における範囲a118を切削加工する。このとき、弁座118の浸食部分を除去することができる程度に支持部30(または、主軸40)および工具ホルダ50を移動する。
【0053】
このように、NC装置60によって工具ホルダ50(切削工具T)を動作させて弁座181における範囲a181を切削加工(NC加工)することにより、弁座118を補修加工して弁体124に対応した形状とすることができる。
【0054】
以上のようにして、弁装置101(弁本体部110)を図示しないボイラおよび図示しない蒸気タービンに組み付けられた状態で弁座118の補修加工を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 弁座加工機
10 弁座加工機の台座部
11 円形部
12 方形部
13 主軸通し穴
14 ボルト通し穴
15 ナット
16 突出部
17 突出部
18 X軸方向位置調整ボルト
19 Y軸方向位置調整ボルト
20 弁座加工機の本体部
21 フランジ
22 ライナ
23 押し付け金具
24 ボルト
25 ねじ穴
26 押し上げボルト(押圧手段)
30 弁座加工機の支持部
40 弁座加工機の主軸
41 防振リング(リング部材)
41a 防振リングのリング部
41b 防振リングの突出ボルト
50 工具ホルダ
60 NC装置
101 弁装置
110 弁本体部
110a 流路
111 第一開口部
112 第二開口部
113 第三開口部
114 上面
115 ボルト穴
116 スタッドボルト
117 ナット
118 弁座
120 弁駆動部
121 取付板
122 駆動部本体
123 弁棒
124 弁体
125 弁棒挿通穴
126 ボルト挿通穴
【要約】
【課題】タービンへの流体の供給に用いられる弁装置における弁座の補修加工を容易に行う。
【解決手段】流体の流路を形成する弁本体部110と、前記弁本体部110における弁座118に密着係合可能な弁体124を駆動する弁駆動部120とを備えた弁装置101における前記弁座118を加工する弁座加工機1であって、前記弁本体部110に取り付けられる台座部10と、当該台座部10に対して異なる二軸方向に移動可能な本体部20と、当該本体部20に対して前記弁体124の駆動方向に移動可能な支持部30と、当該支持部30に対して前記弁体124の駆動方向と平行な軸回りに回動可能な主軸40と、前記弁座118を加工するための工具Tを保持すると共に前記主軸40に対して前記弁体124の駆動方向と交差する方向に移動可能な工具ホルダ50と、前記支持部30および前記工具ホルダ50の移動を制御する制御部60とを備えて成る。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7