【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1に係る弁座加工機を用いて補修加工を施す弁装置の構造について、
図7を参照して説明する。
【0022】
図7に示すように、弁装置101には、蒸気の流路110aを形成する弁本体部110と、この弁本体部110に着脱可能に設けられて弁本体部110における流路110aを開閉するように後述する弁体124を動作する弁駆動部120とが備えられている。弁装置101は、発電設備における図示しないボイラと図示しない蒸気タービンとの間に設けられるものであり、弁本体部110によってボイラから蒸気タービンへ供給される蒸気が流通する流路110aを形成すると共に、弁駆動部120によって当該流路110aにおける蒸気の流通の停止や当該流路110aを流通する蒸気の流量の調整を行うものである。
【0023】
弁本体部110には、水平方向における一方側(
図7における右方側)に開口する第一開口部111と、鉛直方向における一方側(
図7における下方側)に開口する第二開口部112と、鉛直方向における他方側(
図7における上方側)に開口する第三開口部113とが設けられている。弁本体部110においては、第一開口部111が図示しないボイラと接続され、第二開口部112が図示しない蒸気タービンと接続されており、図示しないボイラで発生された蒸気は、第一開口部111を介して弁装置101(弁本体部110)内に流入され、その後、第二開口部112を介して図示しない蒸気タービンへ流出されるようになっている。つまり、弁本体部110には、第一開口部111と第二開口部112とを連通する流路110aが形成されている。
【0024】
第三開口部113は、流路110aと連通して第二開口部112と対向するように形成されている。また、第三開口部113は、弁本体部110における上面114に臨んで形成されており、この第三開口部113が臨む上面114は、平らに加工された加工面である。弁本体部110の上面114には、弁装置101における弁駆動部120が取り付けられるようになっている。
【0025】
弁駆動部120には、弁本体部110(上面114)に固定される取付板121と、取付板121に設けられて図示しない駆動源を有する駆動部本体122と、駆動部本体122によって一方向(鉛直方向であって、
図7における上下方向)に動作される弁棒123および弁体124とが備えられている。
【0026】
弁本体部110の上面114には、第三開口部113の近傍に複数のボルト穴115が形成されており、このボルト穴115には、それぞれスタッドボルト116がねじ込まれている。一方、弁駆動部120の取付板121には、弁本体部110の第三開口部113に対応した位置に弁棒123を挿通可能な弁棒挿通穴125が形成されると共に、弁本体部110のボルト穴115およびスタッドボルト116に対応した位置にスタッドボルト116を挿通可能なボルト挿通穴126が形成されている。
【0027】
取付板121(弁駆動部120)のボルト挿通穴126に上面114(弁本体部110)のスタッドボルト116が挿通され、当該スタッドボルト116の先端からナット117がねじ込まれることにより、取付板121(弁駆動部120)は上面114(弁本体部110)に固定されている。なお、弁本体部110におけるボルト穴115およびスタッドボルト116は、第三開口部113を囲んで周方向に所定距離離間して複数設けられており(
図1参照)、弁駆動部120におけるボルト挿通穴126は、ボルト穴115およびスタッドボルト116に対応するように、すなわち、弁棒挿通穴125を囲んで周方向に所定距離離間して複数(ボルト穴115およびスタッドボルト116と同ピッチおよび同数)設けられている(
図7参照)。
【0028】
駆動部本体122は、図示しない固定手段によって取付板121に固定され、弁棒123は、駆動部本体122から取付板121の弁棒挿通穴125を挿通して下方に突出して設けられ、弁体124は、弁棒123の先端側(
図7における下端側)に取り付けられている。
【0029】
弁棒123および弁体124は、駆動部本体122の図示しない駆動源によって、弁棒123の軸方向(
図7における上下方向)に動作するようになっている。弁本体部110の第二開口部112には、弁体124に対応した形状の弁座118が設けられており、弁駆動部120の動作によって弁体124は弁座118に密着係合するようになっている。弁体124が弁座118に密着係合することにより、弁本体部110における流路110aが閉じられ、図示しないボイラから図示しない蒸気タービンへの蒸気の流通が停止される。
【0030】
本発明の実施例1に係る弁座加工機の構造について、
図1から
図5を参照して説明する。
【0031】
図1および
図2に示すように、弁座加工機1は、弁装置101の弁本体部110に固定される台座部10と、台座部10に設けられて当該台座部10に対して水平なX軸方向(
図1における上下方向)およびY軸方向(
図1および
図2における左右方向)に移動可能な本体部20と、本体部20から水平な一方側(
図1および
図2における左方側)に延設されて当該本体部20に対して鉛直なZ軸方向(
図2における上下方向)に移動可能な支持部30と、支持部30の先端側(
図1および
図2における左端側)に設けられて当該支持部30に対して鉛直なW軸方向(
図2における上下方向)に移動可能かつ鉛直なC軸回りに回動可能に支持される主軸40と、主軸40の先端部(
図2における下端部)に設けられて切削工具Tを保持すると共に当該主軸40に対して鉛直方向と交差するXt軸方向(
図2においては、左右方向)に移動可能な工具ホルダ50と、支持部30のZ軸方向の移動と主軸40のW軸方向の移動およびC軸回りの回動と工具ホルダ50のXt軸方向の移動をそれぞれ制御可能なNC装置60とから概略構成される。
【0032】
この弁座加工機1は、弁装置101の弁座118がエロージョンによって浸食した際に、当該弁座118を補修加工するためのものであり、弁駆動部120(
図7参照)に代えて弁装置101の弁本体部110に組み付けられるものである。つまり、弁座加工機1は、移動可能なものであり、弁装置101(弁本体部110)が図示しないボイラおよび図示しない蒸気タービンに組み付けられた状態で弁座118の補修加工を行うことができるものである。
【0033】
図1および
図2に示すように、弁座加工機1の台座部10は、円形部11と方形部12とを合わせた平板形状から成り(
図1参照)、円形部11において台座部10が弁装置101の弁本体部110に固定され、方形部12において弁座加工機1の本体部20が台座部10に固定されている(
図1および
図2参照)。
【0034】
台座部10の円形部11には、主軸40を挿通可能な(第三開口部113と略同径であり、
図1および
図2においては、第三開口部113よりも大きい径を有する)主軸通し穴13と、スタッドボルト116を挿通可能な複数(
図1においては十二個)のボルト通し穴14とが設けられている。主軸通し穴13は、第三開口部113に対応した位置に形成され、複数のボルト通し穴14は、弁装置101のボルト穴115およびスタッドボルト116に対応した位置、すなわち、主軸通し穴13を囲んで周方向に所定距離離間して複数(ボルト穴115およびスタッドボルト116と同ピッチ且つ同数)設けられている。
【0035】
弁座加工機1における台座部10のボルト通し穴14に弁装置101における弁本体部110のスタッドボルト116を挿通し、当該スタッドボルト116の先端からナット15をねじ込むことにより、台座部10(弁座加工機1)を弁本体部110(弁装置101)に固定することができる。
【0036】
ここで、弁装置101における複数のスタッドボルト116と弁座加工機1(台座部10)における複数のボルト通し穴14とが、互いに同ピッチ且つ同数設けられているので、弁装置101に対して弁座加工機1を1ピッチ(または複数ピッチ)分だけ回転させても、台座部10のボルト通し穴14に弁装置101のスタッドボルト116を挿通させることができる。よって、台座部10(弁座加工機1)を弁本体部110(弁装置101)に対して1ピッチ毎に位相をずらして組み付けることができる。このように、弁装置101に対する弁座加工機1の取り付け向きを可変としたことにより、弁装置101の近くに図示しない他の機器(周辺構造物)がある場合には、当該他の機器との干渉を回避しつつ、弁座加工機1の弁装置101(弁本体部110)への組み付けが可能となる。
【0037】
図1および
図3に示すように、弁座加工機1の本体部20には、フランジ21が対称の位置(
図1における上方側および下方側)に設けられている。このフランジ21が、当該フランジ21と略同じ高さ(
図3における上下方向長さ)に形成されたライナ22と共に、押し付け金具23およびボルト24によって押え付けられることにより、本体部20は台座部10に固定されている。
【0038】
図1および
図2に示すように、台座部10には、本体部20の周囲(
図1においては四方)に位置する突出部16,17が設けられている。水平なX軸方向における本体部20の両側(
図1における上方側および下方側)に位置する突出部16には、X軸方向位置調整ボルト18がねじ込まれており、このX軸方向位置調整ボルト18をねじ回すことによって、台座部10上において本体部20をX軸方向に移動することができる。水平なY軸方向における本体部20の両側(
図1における左方側および右方側)に位置する突出部17には、Y軸方向位置調整ボルト19がねじ込まれており、このY軸方向位置調整ボルト19をねじ回すことによって、台座部10上において本体部20をY軸方向に移動することができる。つまり、X軸方向位置調整ボルト18およびY軸方向位置調整ボルト19によって、水平面(X−Y平面)内における台座部10に対する本体部20の位置を調整することができるようになっている。
【0039】
また、
図1および
図4に示すように、本体部20には、フランジ21を鉛直方向(
図4においては、上下方向)に貫通する複数(
図1においては、四つ)のねじ穴25が形成されており、このねじ穴25には、それぞれ押し上げボルト26がねじ込まれている。この押し上げボルト26をフランジ21にねじ込むことによって、台座部10に対して本体部20を持ち上げる、すなわち、台座部10と本体部20との間に隙間を形成することができる。このように本体部20を持ち上げて台座部10と本体部20との間に隙間を形成することにより、当該隙間(台座部10と本体部20との間)に図示しない高さ調整ライナを挿入することができる。つまり、本体部20の一端側に図示しない高さ調整ライナを挟み込み、本体部20の一端側のみを高くすることにより、台座部10に対する本体部20の傾き(主軸40の鉛直方向に対する傾き)を調整することができるようになっている。
【0040】
上述したように、弁装置101に固定された台座部10に対して、本体部20のX軸方向位置、Y軸方向位置および傾きを調整可能としたことにより、主軸40を弁座118の中心と一致させた正確な加工を行うことができる。なお、台座部10に対する本体部20の固定にライナ22と押し付け金具23とボルト24とを用いることにより、X軸方向位置、Y軸方向位置および傾きを調整した状態で本体部20を台座部10に固定することができる。
【0041】
図2および
図5に示すように、主軸40には、回転可能に支持される防振リング41が設けられている。防振リング41は、主軸40の先端に設けた切削工具Tによる加工の際に、加工抵抗等による主軸40の振れ(振動や煽り)を防止することができるものであり、主軸40の外径と略同径(僅かに大きい径)の内径を有するリング部41aと、このリング部41aの外周側に突出可能な複数(
図5においては、四つ)の突出ボルト41bとから構成される。防振リング41は、突出ボルト41bをねじ回してリング部41aからの突出量を調整することによって、主軸40のC軸回りの回動を許容しつつ、例えば、第三開口部113の内側に固定される。
【0042】
本発明の実施例1に係る弁座加工機を用いた弁座加工方法について、
図1から
図7を参照して説明する。
【0043】
図示しないボイラおよび図示しない蒸気タービンの駆動によって弁装置101にエロージョンによる浸食が生じた場合には、ボイラおよび蒸気タービンの駆動を停止した時(定期検査時など)に、以下に示す補修作業を行う。
【0044】
まず、弁装置101において弁本体部110に組み付けられている弁駆動部120を取り外し(
図7参照)、この弁駆動部120に代わって弁座加工機1を弁装置101の弁本体部110に組み付ける(
図2参照)。つまり、弁本体部110に設置されたスタッドボルト116を台座部10のボルト通し穴14に挿通すると共に当該スタッドボルト116にナット15をねじ込むことにより、加工機1における台座部10が弁装置101における弁本体部110に固定される。
【0045】
このとき、弁装置101の周囲に図示しない他の機器(周辺構造物等)がある場合には、当該他の機器との干渉および作業性を考慮して弁座加工機1を設置する。台座部10に設けられた複数のボルト通し穴14がスタッドボルト116と同ピッチ且つ同数で設けられていることにより、弁装置101に対する弁座加工機1(台座部10)の取り付け向き(方形部12が位置する方向)を種々の方向にすることができるので、図示しない他の機器との干渉および作業性を考慮して弁座加工機1を設置することができる(
図1参照)。
【0046】
次に、台座部10に対する本体部20の水平面内における位置(X軸方向位置およびY軸方向位置)と傾きとを調整する。つまり、X軸方向位置調整ボルト18およびY軸方向位置調整ボルト19により、台座部10に対する本体部20のX軸方向位置およびY軸方向位置を調整し(
図1および
図2参照)、押し上げボルト26によって本体部20を持ち上げて図示しない高さ調整ライナを挿入することにより、台座部10に対する本体部20の傾き(主軸40の鉛直方向に対する傾き)を調整する(
図1および
図4参照)。
【0047】
このとき、例えば、主軸40における軸方向(
図2においては、上下方向)に異なる二箇所に図示しないダイアルゲージを取り付け、当該ダイアルゲージを弁装置101の弁本体部110における弁座118および第三開口部113の内周側に押し当てることにより得た計測データに基づいて、本体部20のX軸方向位置、Y軸方向位置、傾きの調整量を求めることができる。
【0048】
次に、本体部20を台座部10に固定する。つまり、
図3に示すように、本体部20におけるフランジ21の近傍にライナ22を設置し、フランジ21およびライナ22を押し付け金具23およびボルト24によって押え付けられることによって、本体部20を台座部10に固定する。
【0049】
次に、主軸40に設けた防振リング41を第三開口部113の内側に固定する。つまり、主軸40に係合する防振リング41を、軸方向(
図2における上下方向)に移動して第三開口部113の位置に合わせ、突出ボルト41bを調整することによって防振リング41を第三開口部113の内側に固定する(
図2および
図5参照)。
【0050】
以上の作業により、弁座118の補修加工の準備、すなわち、弁座加工機1の弁装置101(弁本体部110)への設置が完了する。
【0051】
続いて、弁座加工機1による弁装置101の補修加工を行う。
【0052】
まず、
図6に示すように、切削工具Tを工具ホルダ50によって保持した状態で主軸40を回転駆動させ、支持部30をZ軸方向(または、主軸40をW軸方向)に移動させると共に工具ホルダ50をXt軸方向に移動させることにより、弁座118における範囲a
118を切削加工する。このとき、弁座118の浸食部分を除去することができる程度に支持部30(または、主軸40)および工具ホルダ50を移動する。
【0053】
このように、NC装置60によって工具ホルダ50(切削工具T)を動作させて弁座181における範囲a
181を切削加工(NC加工)することにより、弁座118を補修加工して弁体124に対応した形状とすることができる。
【0054】
以上のようにして、弁装置101(弁本体部110)を図示しないボイラおよび図示しない蒸気タービンに組み付けられた状態で弁座118の補修加工を容易に行うことができる。