(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5881885
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】亜鉛蒸気を含むガスからの亜鉛の回収方法および装置
(51)【国際特許分類】
C22B 19/04 20060101AFI20160225BHJP
C22B 5/16 20060101ALI20160225BHJP
C22B 19/30 20060101ALN20160225BHJP
C22B 7/02 20060101ALN20160225BHJP
【FI】
C22B19/04
C22B5/16
!C22B19/30
!C22B7/02 A
【請求項の数】21
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-144950(P2015-144950)
(22)【出願日】2015年7月22日
【審査請求日】2015年9月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000156260
【氏名又は名称】株式会社 テツゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(72)【発明者】
【氏名】上川 清太
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03463473(US,A)
【文献】
特開平04−232216(JP,A)
【文献】
特開平05−271799(JP,A)
【文献】
特許第5116883(JP,B1)
【文献】
特開平11−193424(JP,A)
【文献】
特表2011−530650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス導入口とガス排出口を有し内部に1本または2本以上の冷却チューブを配置した閉空間において、亜鉛蒸気含有ガスがガス導入口から導入され、ガス排出口から排出され、さらに前記閉空間内で、前記亜鉛蒸気含有ガスの流れ方向で前記冷却チューブの下流側にセラミックス製または表面にセラミックスをコーティングした2個以上のペレットを配置し、内部に冷却媒体を流した前記冷却チューブに、亜鉛蒸気含有ガスを接触させ、前記冷却チューブの表面に亜鉛を凝縮させ、凝縮した亜鉛を前記閉空間内の鉛直方向下部に集めて回収することを特徴とする亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
【請求項2】
前記冷却チューブがセラミックス製または表面にセラミックスをコーティングしたものであることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
【請求項3】
前記セラミックスが炭化珪素であることを特徴とする請求項1または2に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
【請求項4】
前記冷却チューブが、亜鉛蒸気含有ガスの流れ方向に直交するように配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
【請求項5】
前記冷却チューブが、水平に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
【請求項6】
前記冷却媒体が水であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
【請求項7】
前記冷却チューブの断面形状が、円形、鉛直方向上方を頂点とする三角形、または鉛直方向に長軸を有する楕円形を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
【請求項8】
前記冷却チューブに、鉛直方向上方を頂点とする屋根型形状のセラミックス製ブロックを配置したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
【請求項9】
前記ブロックが、前記冷却チューブに接触していないことを特徴とする請求項8に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
【請求項10】
前記閉空間の鉛直方向下部に集めた溶融亜鉛を、溶融状態のまま前記閉空間の外部に取り出し、回収することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
【請求項11】
閉空間を形成する筐体と、当該筐体内に配置された1本または2本以上の冷却チューブと、前記筐体に設置されたガス導入口およびガス排出口と、筐体の鉛直方向下部に設置された亜鉛排出手段を有し、
前記冷却チューブの内部には冷却媒体が流れ、
亜鉛蒸気含有ガスが前記ガス導入口から筐体内に導入され、
亜鉛蒸気含有ガスが前記ガス排出口から筐体外に排出され、
前記筐体内で、前記亜鉛蒸気含有ガスの流れ方向で前記冷却チューブの下流側に複数個のセラミックス製または表面にセラミックスをコーティングしたペレットを配置し、
前記筐体内において前記冷却チューブと亜鉛蒸気含有ガスを接触させ、前記冷却チューブの表面に亜鉛を凝縮させ、
凝縮して生じた亜鉛を前記筐体内の鉛直方向下部に集め、前記亜鉛排出手段により筐体外に排出し回収することを特徴とする亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【請求項12】
前記冷却チューブがセラミックス製または表面にセラミックスをコーティングしたものであることを特徴とする請求項11に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【請求項13】
前記セラミックスが炭化珪素であることを特徴とする請求項11または12のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【請求項14】
前記冷却チューブが、亜鉛蒸気含有ガスの流れ方向に直交するように配置されていることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【請求項15】
前記冷却チューブが、水平方向に配置されていることを特徴とする14に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【請求項16】
前記冷却媒体が水であることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【請求項17】
前記冷却チューブの断面形状が、円形、鉛直方向上方を頂点とする三角形、または鉛直方向に長軸を有する楕円形状を有することを特徴とする請求項11〜16のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【請求項18】
前記冷却チューブに、鉛直方向上方を頂点とする屋根型形状のセラミックス製ブロックを配置したことを特徴とする請求項11〜17のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【請求項19】
前記ブロックが、前記冷却チューブに接触していないこと特徴とする請求項18に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【請求項20】
前記筐体の鉛直方向下部に集めた溶融亜鉛を、溶融状態のまま前記亜鉛排出装置で筐体の外部に排出し回収することを特徴とする請求項11〜19のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【請求項21】
前記筐体の内部の少なくとも一部を被覆していることを特徴とする請求項11〜20のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛に炭材を加え加熱し、還元処理した際に発生する亜鉛蒸気を含むガスから、亜鉛を回収する方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年亜鉛価格の高騰により、亜鉛の有効利用が求められており、亜鉛を多量に含有する製鉄ダストからの回収が注目されている。製鉄ダスト、特に電気炉製鋼プロセスで発生する粉塵(電炉ダスト)の発生原単位は電気炉での粗鋼生産量の1.8%程度であり、日本国内の電炉ダストの発生量は1999年で約52万トン、2013年では約44万トン程度と推定されている。
通常、電気炉(電炉)製鋼プロセスは、鉄スクラップを原料とし、亜鉛めっき鋼板のスクラップが大量に投入される。そのため、電炉ダスト中には平均して25%程度の亜鉛が含有されている。この亜鉛を回収するための各種の取り組みがなされている。2013年には発生量の約80%が亜鉛回収業で中間処理されており、残りの約20%は薬注処理等の無害化処理後に管理型処分場や遮断型処分場で埋め立て処分されている。
【0003】
電炉ダストから金属亜鉛を回収する方法として、ウエルツ法とISP(Imperial Smelting Process)法を組合せた方法が提案されている(非特許文献1および2)。例えば、非特許文献1には、ウエルツ法により製鋼煙灰から亜鉛の原料である粗酸化亜鉛(ZnO)を製造する方法が記載されている。また、非特許文献2には、ウエルツ法で回収された粗酸化亜鉛(ZnO)をISP法で最終処理して金属亜鉛として回収する方法が記載されている。非特許文献1に開示されている工程を簡単に説明すると、電炉ダストに粉コークスを混合し、ロータリーキルン(非特許文献1では内熱式ロータリーキルン)に装入し、ロータリーキルン内で1200℃に加熱する。この結果、装入物はロータリーキルン内を転動しながら移動し、この移動中に電炉ダスト中の酸化亜鉛と酸化鉄が炭素により還元される。亜鉛は金属亜鉛として揮発したのち排ガス中の酸素により再酸化され粗酸化亜鉛(ZnO)粉となる。粗酸化亜鉛粉は、ダストチャンバー・電気集塵機などで捕集され、回収される。一方、酸化鉄は金属鉄を含むクリンカー(塊)としてロータリーキルン下流側から排出され、回収される。
【0004】
ウエルツ法で回収された粗酸化亜鉛は亜鉛品位が60%程度である。電炉ダストからの脱亜鉛率(亜鉛回収率)は60%〜70%程度しかなく、残りの30〜40%の亜鉛はクリンカーに含まれている。
【0005】
得られた粗酸化亜鉛(ZnO)は、ISP法で亜鉛として回収される。ISP法による亜鉛精錬は大別して焼結工程、溶鉱工程、精錬工程から成っている。
焼結工程では、主原料の亜鉛・鉛精鉱(硫化鉱)とウエルツ法で回収した粗酸化亜鉛を溶剤とともに所定割合で混合・造粒し、焼結機で脱硫・焼結して焼結鉱とする。
【0006】
得られた焼結鉱を800℃に予熱された塊コークスと共に溶鉱炉に層状に装入し、羽口より950℃の熱風を送風する。焼結鉱中の亜鉛は炉内で還元され蒸発し、約8%の亜鉛濃度でCO、CO
2ガスと共に溶鉱炉炉頂から排出される。亜鉛を含む排出ガスは、鉛スプラッシュ・コンデンサーに入る。鉛スプラッシュ・コンデンサーでは鉛浴中に浸漬されたローターにより撹拌・飛散された鉛滴で、溶鉱炉排ガスが550℃まで急冷され、亜鉛蒸気は凝縮し鉛滴中に溶解する。
亜鉛が溶解した鉛を冷却樋で440℃に冷却し、温度による溶解度差を利用して亜鉛を浮上析出させ分離する。これがいわゆる溶鉱炉亜鉛で、亜鉛が分離された鉛は再び前記コンデンサーに戻される。
精製工程では、前記溶鉱炉亜鉛は連続樋にて鋳造炉に送られ、ここで温度精錬による脱鉛と脱鉄を行い、亜鉛純度が98.5%以上の蒸留亜鉛として製品化される。
【0007】
この他、特許文献1には、亜鉛製品を溶解し、気化させ、発生した亜鉛蒸気を亜鉛コンデンサー(凝縮器)で亜鉛末(亜鉛粉末)にする技術が開示されている。亜鉛コンデンサー(凝縮器)内では、亜鉛蒸気を循環させ亜鉛を凝縮することが提案されている。また、空気冷却器により亜鉛蒸気を冷却し、亜鉛を凝縮させることが提案されている。冷却された亜鉛は、凝固し、亜鉛末として回収されると記載されている。
【0008】
また、非特許文献3には、鉄鋼電気炉で発生する排ガスを重金属コンデンサーに導き亜鉛を凝縮して回収する技術が開示されている。重金属コンデンサーは、亜鉛蒸気を含むガスに常温のアルミナ(Al
2O
3)ボールを投入し、アルミナボール表面に亜鉛を凝縮させて回収する。アルミナボールの表面に付着した亜鉛は、溶融亜鉛浴に投入して撹拌することにより、容易に分離することができると記載されている。(非特許文献3では、この方法を「JRCM法」として紹介している。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2011−530650号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】杉本裕史、滝澤寛、上田浩「曹鉄メタル(株)における製鋼煙灰処理」Journalof MMIJ Vol.123(2007)No.12
【非特許文献2】第205・206回西山記念技術講座「スラグ・ダストの利材化と新しい展開」日本鉄鋼協会 平成23年6月 160〜161ページ
【非特許文献3】第205・206回西山記念技術講座「電炉ダスト処理の課題と役割」日本鉄鋼協会 平成23年6月 100〜101ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
亜鉛蒸気を含むガスから亜鉛を回収する方法としては、前述したようにISP法、循環冷却法(特許文献1のコンデンサー)、およびアルミナボールによる接触冷却(非特許文献3の重金属コンデンサー)が提案されている。
【0012】
ISP法(非特許文献2参照)については、溶鉱炉に加えて焼結機と熱風炉などの大型設備が必要であるだけでなく、高価な塊コークスを使わざるを得ないといった経済的な問題もある。また、現在のウエルツ法とISP法の組合せでは、酸化亜鉛を二度にわたって還元しているためプロセスが複雑化するだけでなく、エネルギーの無駄が生じており、さらに設備も複雑化する。このため、これらの方法に代わり、電炉ダストから還元鉄を製造する際に、省プロセス、省エネルギー、高効率に、亜鉛を回収することができる方法が求められている。
【0013】
一方、特許文献1では、亜鉛蒸気含有ガスを循環冷却する方法が提案されているが、その具体的な循環方法が開示されていない。また、2%酸素を取り込み、亜鉛表面を酸化させた固体として回収しているため、後で再溶融する際に溶融しにくいため、亜鉛の再利用に際し使いにくい。さらに、装置的にも大がかりなものとなる。
【0014】
非特許文献3のJRCM法(アルミナボールによる接触冷却方法)は、試験的な実現性は確認されているが、個別の開発要素が多いため、まだ実用化がなされていない。例えば、アルミナボールの投入、回収方法や、アルミナボールとガスの接触時間制御が難しい。バッチ処理を前提としているため、各バッチの立上げ時に、設備、特に排ガス系が冷えているため、配管内などに亜鉛が凝着することが懸念される。
このように従来技術には解決すべき課題が多い。
【0015】
そこで、本発明は、亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛の回収に際し、特に酸化鉄と酸化亜鉛を含有する電炉ダストから還元鉄を製造する際に発生する亜鉛蒸気を含有する還元処理ガスに着目し、プロセス上の観点からもエネルギー効率の観点からも効率的に、さらに簡便な設備にて亜鉛を回収可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
(a)亜鉛蒸気含有ガスを、固定した冷却チューブに接触させることにより、亜鉛蒸気含有ガスを接触冷却することにより、冷却チューブ表面に亜鉛を均一に凝縮させることができる。
【0017】
(b)また、冷却チューブは固定されているので可動部がなく、シール性を高めることができるため、大気を遮断した環境下で亜鉛の分離回収処理を行うことができる。
【0018】
(c)冷却チューブ(パイプ)は、金属製(例えばCu、Al、Fe、など)だと亜鉛と反応するため使用できない。そこで、セラミックス製チューブ、例えば熱伝導性の良好な炭化珪素(SiC)製チューブを適用することにより、亜鉛が反応することなく回収できる。また、溶融亜鉛とぬれにくいことからも、SiCが好ましいことを知見した。
【0019】
(d)冷却チューブの構造は、円形断面のチューブでも構わないが、凝縮した亜鉛液滴が滴下しやすいように、例えば屋根型や鉛直方向を長軸とした楕円形などでもよい。
【0020】
(e)本発明者らは、さらに亜鉛回収率を上げるために検討を重ねた。その結果、冷却チューブ間を通り抜けチューブ表面に接触しなかったガスは、亜鉛蒸気や溶融亜鉛微粒子を含んだままになっている。そこで、冷却チューブの下流側にセラミックス製ペレットを配置して亜鉛を凝縮・凝集し、回収することができることを見出した。
即ち、亜鉛蒸気や溶融亜鉛微粒子を含んだガスが、セラミックス製ペレットの間隙を通過する際に、ペレット表面に接触し、亜鉛が凝縮・凝集され分離されるからである。この時、凝縮・凝集し溶融亜鉛となったものは、液滴となって下方へ滴下し回収される。
セラミックス・ペレットの材質は、冷却チューブと同様で、炭化珪素(SiC)が好ましい。
【0021】
(f)一方、亜鉛含有ガスを冷却する際に、当該ガスが金属鉄と接触することにより、金属鉄が触媒となりカーボン・デポジション反応(2CO→CO2+C)が進み、CO2が生成されることが分かった。このCO2により、気化した亜鉛(亜鉛蒸気)が再酸化されるため、金属亜鉛が回収できなくなることが分かった。これを防止するためには、亜鉛含有ガスを冷却する空間において、触媒となる金属鉄の露出部分を被覆すればよいことを見出した。被覆は、耐熱塗料や耐火ライニングで行うとよい。
【0022】
本発明は、上記知見を基に成されたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
【0023】
(1)
ガス導入口とガス排出口を有し内部に1本または2本以上の冷却チューブを配置した閉空間において、亜鉛蒸気含有ガスがガス導入口から導入され、ガス排出口から排出され、さらに前記閉空間内で、前記亜鉛蒸気含有ガスの流れ方向で前記冷却チューブの下流側にセラミックス製または表面にセラミックスをコーティングした2個以上のペレットを配置し、内部に冷却媒体を流した
前記冷却チューブに、亜鉛蒸気含有ガスを接触させ、前記冷却チューブの表面に亜鉛を凝縮させ
、凝縮した亜鉛を前記閉空間内の鉛直方向下部に集めて回収することを特徴とする亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法
。
(2)前記冷却チューブがセラミックス製または表面にセラミックスをコーティングしたものであることを特徴とする(1
)に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
(
3)前記セラミックスが炭化珪素であることを特徴とする(
1)または(
2)に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
(
4)前記冷却チューブが、亜鉛蒸気含有ガスの流れ方向に直交するように配置されていることを特徴とする(1)〜(
3)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
(
5)前記冷却チューブが、水平に配置されていることを特徴とする(
4)に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
(
6)前記冷却媒体が水であることを特徴とする(1)〜(
5)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
(
7)前記冷却チューブの断面形状が、円形、鉛直方向上方を頂点とする三角形、または鉛直方向に長軸を有する楕円形を有することを特徴とする(1)〜(
6)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
(
8)前記冷却チューブに、鉛直方向上方を頂点とする屋根型形状のセラミックス製ブロックを配置したことを特徴とする(1)〜(
7)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
(
9)前記ブロックが、前記冷却チューブに接触していないことを特徴とする(
8)に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
(1
0)前記閉空間の鉛直方向下部に集めた溶融亜鉛を、溶融状態のまま前記閉空間の外部に取り出し、回収することを特徴とする(1)〜(
9)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収方法。
(1
1)閉空間を形成する筐体と、当該筐体内に配置された1本または2本以上の冷却チューブと、前記筐体に設置されたガス導入口およびガス排出口と、筐体の鉛直方向下部に設置された亜鉛排出手段を有し、
前記冷却チューブの内部には冷却媒体が流れ、
亜鉛蒸気含有ガスが前記ガス導入口から筐体内に導入され、
亜鉛蒸気含有ガスが前記ガス排出口から筐体外に排出され、
前記筐体内で、前記亜鉛蒸気含有ガスの流れ方向で前記冷却チューブの下流側に複数個のセラミックス製または表面にセラミックスをコーティングしたペレットを配置し、
前記筐体内において前記冷却チューブと亜鉛蒸気含有ガスを接触させ、前記冷却チューブの表面に亜鉛を凝縮させ、凝縮して生じた亜鉛を前記筐体内の鉛直方向下部に集め、前記亜鉛排出手段により筐体外に排出し回収することを特徴とする亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置
。
(12)前記冷却チューブがセラミックス製または表面にセラミックスをコーティングしたものであることを特徴とする(1
1)に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
(1
3)前記セラミックスが炭化珪素であることを特徴とする(1
1)または(1
2)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
(1
4)前記冷却チューブが、亜鉛蒸気含有ガスの流れ方向に直交するように配置されていることを特徴とする(1
1)〜(1
3)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
(1
5)前記冷却チューブが、水平方向に配置されていることを特徴とする(1
4)に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
(1
6)前記冷却媒体が水であることを特徴とする(1
1)〜(1
5)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
(
17)前記冷却チューブの断面形状が、円形、鉛直方向上方を頂点とする三角形、または鉛直方向に長軸を有する楕円形状を有することを特徴とする(1
1)〜(1
6)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
(
18)前記冷却チューブに、鉛直方向上方を頂点とする屋根型形状のセラミックス製ブロックを配置したことを特徴とする(1
1)〜(
17)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
(
19)前記ブロックが、前記冷却チューブに接触していないこと特徴とする(
18)に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
(2
0)前記筐体の鉛直方向下部に集めた溶融亜鉛を、溶融状態のまま前記亜鉛排出装置で筐体の外部に排出し回収することを特徴とする(1
1)〜(
19)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
(2
1)前記筐体の内部の少なくとも一部を被覆していることを特徴とする(1
1)〜(2
0)のいずれか1項に記載の亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、亜鉛蒸気含有ガスから高品位の金属亜鉛を効率よく、またコンパクトな設備により回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛回収装置の概念図。
図1(a)は、冷却チューブのみ配置した場合の例。
図1(b)は、冷却チューブの下流側にペレットを配置した場合の例。
【
図2】本発明に係る冷却チューブの断面形状の模式図。
図2(a)は円形断面を、(b)は三角形断面を、(c)は楕円形断面を、(d)は円形断面のチューブ上に屋根型形状のブロックを配置した時の断面形状、(e)円形断面のチューブ上に屋根型形状のブロックを離して配置した時の断面形状の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の詳細について
図1に示す概念図を例にして説明する。なお、以下に示す実施態様は一例であり、本発明の実施態様はこれに限定されることはない。
【0027】
本発明の基本的原理は、亜鉛蒸気含有ガス50を、内部に冷却媒体を流した冷却チューブ56に接触させ、前記チューブの表面に亜鉛を凝縮させ、亜鉛を分離回収することである。
【0028】
亜鉛蒸気は酸素と混合すると酸化し易く、一旦粗酸化亜鉛(ZnO)になると、再度還元しないと亜鉛として回収できない。このため、空気(特に酸素)が混入しないよう注意しなければならない。そこで、亜鉛蒸気の冷却・凝縮を、空気を遮断した閉空間内において行う必要がある。亜鉛回収装置51の筐体は、閉空間を形成し、大気とは遮断されている構造とすることが望ましい。筐体(閉空間。以下、同じ。)内には、1本または2本以上のガス冷却用のチューブ(以下、冷却チューブ)56が配置されている。また、筐体には、亜鉛蒸気含有ガス50を筐体内(閉空間内)に導入するためにガス導入口51−1と、筐体外にガスを排出するためにガス排出口51−2が設置されている。冷却チューブ56の内部には、チューブ自体を冷却するための冷却媒体を流すことができる。
【0029】
冷却媒体は、特に限定しないが、冷却能、取扱いの容易さ、制御性の観点から水が好ましい。もちろん、空気、その他の冷却媒体も適用できる。冷却媒体により、冷却チューブが冷やされ、その表面温度は亜鉛の沸点(907℃)より低くなる。
【0030】
筐体内に導入された亜鉛含有ガス50は、筐体内に配置された冷却チューブ56と接触することにより、亜鉛蒸気含有ガスが冷却され、冷却チューブ表面に亜鉛が凝縮する。
冷却チューブの表面温度は、亜鉛の融点(420℃)より低くてもよい。亜鉛蒸気含有ガスの温度が1000℃程度あるため、冷却チューブに接触しても直ぐには凝固せず、液滴のままチューブ表面から落下する。
冷却チューブ表面から落下した亜鉛の液滴(溶融亜鉛)61は、筐体の下部(鉛直方向下部)に集められる(
図1では溶融亜鉛溜51−3に集めている。)。集められた溶融状態の亜鉛は、亜鉛排出装置(亜鉛排出手段)により筐体外に排出される。溶融状態の亜鉛の場合、空気(酸素)に触れても、表面のみ酸化し、内部は溶融亜鉛のままである。そのため、亜鉛の回収は、大気中で行うことができる。
【0031】
[冷却チューブ]
冷却チューブ56は亜鉛蒸気含有ガスと接触するため、亜鉛と反応する金属製チューブは、そのままでは使うことはできない。特にCu、Al、Fe、Cr、Ni、Tiはいずれも亜鉛と反応性が高いため使用できない。そのため、冷却チューブ材質はセラミックス製とするとよい。若しくは、金属製チューブ表面にセラミックス・コーティングを施した冷却チューブとしてもよい。セラミックスの材質は特に問わないが、熱伝導性の良い炭化珪素(SiC)が好ましい。
冷却チューブの形状は特に限定しない。内部が中空になっており、冷却媒体が流れるようになっていればよい。
【0032】
また、冷却チューブ表面に凝縮して生成した亜鉛の液滴が落下し易い構造にすることが好ましい。例えば、冷却チューブの断面形状が、円形であればよい(
図2(a))。亜鉛の液滴の流れ易さの観点から、例えば、鉛直方向上方を頂点とする三角形(
図2(b))や、鉛直方向に長軸を有する楕円形(
図2(c))を有するようにしてもよい。さらには、円形断面の冷却チューブに屋根型形状のブロック102を配置してもよい(
図2(d))。ブロックの材質も冷却チューブと同様セラミックス、特に炭化珪素(SiC)にするとよい。
【0033】
冷却チューブの断面形状は、すべてのチューブが同じである必要はない。亜鉛回収装置内の部位によって冷却チューブの断面形状が異なっていてもよい。例えば、ガス流れの上流では比較的ガス温度が高いため、凝縮した亜鉛は凝固することなく滴下するが、ガス流れ下流ではガス温度が低くなるため、冷却チューブ表面で凝固し易くなる。そのため、ガス流れ下流では、凝縮した亜鉛が落下し易いように、急傾斜の屋根型形状のブロックを配置するとよい。さらに、
図2(d)に示すように、屋根型ブロックを冷却チューブに密着させると、熱伝導により屋根型ブロックも温度が低下し、ガスを冷却する。このため、ガス温度が低下する下流では、ブロックの冷却能力を弱め、かつ凝縮した亜鉛が落下し易いように、屋根型ブロックを冷却チューブから離すとよい(
図2(e))。離隔する距離は、0.5〜5mm程度でよく、温度条件により適宜決定すればよい。離隔するためには、例えばセラミックス球を、スペーサーとしてブロックと冷却チューブの間に挟めばよい。
【0034】
冷却チューブ表面は、できるだけ平坦な表面性状となることが望ましい。表面に凹凸があると亜鉛液滴の流れ性が悪くなり、落下しにくいからである。もちろん、ブロック表面も同様である。なお、ここでは屋根型ブロックを例として説明しているが、ブロック形状はこれに限定される必要はない。
【0035】
冷却用チューブは、亜鉛含有ガスのガス流れ方向に対し直交するように配置するとよい。ガス流れ方向に平行に配置すると、ガスが下流に向かうにしたがい冷却され、下流部分で溶融亜鉛の一部が凝固するおそれがある。また、ガス流れは、鉛直方向である必要はないが、溶融亜鉛の液滴の落下を助ける観点から、鉛直上方から下方に向けガスを流すことが好ましい。重力とガス流れにより、鉛直下方に落下し易くなるからである。したがって、冷却チューブは水平に配置することが好ましい。
【0036】
亜鉛含有ガスが万遍なく冷却チューブと接触するように、冷却チューブは複数本(2本以上)配置することが好ましい。2本以上のガス冷却用チューブを配置する場合、その配置方法は特に限定されない。亜鉛の液滴が落下する際に、下方のチューブに衝突したとしても、凝固温度にならなければチューブに固着することなく、チューブ表面を滑落する。しかし、密に配置しすぎるとガス流れを乱し、均一な冷却ができなくなるため、一定の間隔を保つことが望ましい。
【0037】
[ガス流れ]
亜鉛含有ガスは、筐体に設置したガス導入口から筐体内部に導入される。前述したように、亜鉛蒸気は空気中の酸素と接触することにより酸化してしまうため、極力空気を遮断することが必要である。そのため亜鉛蒸気発生から筐体への導入経路についても、空気を遮断する必要がある。例えばダクトにより輸送されることが好ましい。
【0038】
前述したように、ガス流れ方向は特に問わないが、鉛直上方から下方に流れることが好ましい。凝縮した亜鉛液滴の落下を助長することができるからである。また、亜鉛が凝縮除去された後のガスは、筐体の鉛直下部に相当する部分からガス排出口を通って筐体外に排出される。
図1に示すように、筐体下部で大きく旋回させて、ガス流れ方向を変えることにより、亜鉛液滴との分離性をよくすることができるので望ましい。一例として、
図1では、筐体下部において、排出されるガスの流れ方向は斜め上方にしている。これにより、ガス流中の亜鉛液滴を遠心力で振り払うことができるため、効率よく回収することができる。
ガス流速は、1m/秒〜10m/秒程度がよい。早すぎると、熱伝達が悪化し、遅すぎると筐体断面積が大きくなり設備費が増大する。
【0039】
[ペレット]
冷却チューブ間を通り抜け、チューブ表面に接触しないガスは、亜鉛蒸気や溶融亜鉛微粒子を含んだままになっている。このため、亜鉛回収率を上げるため、筐体内(閉空間内)で、亜鉛蒸気含有ガスの流れ方向で冷却チューブの下流側に、セラミックス製またはセラミックス・コーティングを施したペレットを複数個配置するとよい。亜鉛蒸気や溶融亜鉛微粒子を含んだガスが、セラミックス製ペレットの間隙を通過する際に、ペレット表面に接触し、亜鉛が凝縮・凝集され分離されるからである。この時、凝縮・凝集し溶融亜鉛となったものは、液滴となって下方へ滴下し回収される。
【0040】
ペレットの大きさは特に限定しないが、直径5〜10mm程度、高さ5〜10mm程度の円柱形や、直径5〜10mm程度の球形であると扱い易く、適度な空隙を確保することができる。
セラミックスの材質は特に問わないが、冷却チューブと同様に、熱伝導性の良い炭化珪素(SiC)が好ましい。SiCであれば、溶融亜鉛にぬれることもなく、容易に分離回収することができる。
【0041】
配置するペレットの数は複数(2個以上)であれば特に限定されないが、亜鉛含有ガスが万遍なくペレット表面に接触することが望ましいので、筐体(閉空間)中の亜鉛含有ガスが通過する断面を埋めるように配置するとよい。また、ペレットを多重に重ねることにより、より亜鉛含有ガスとペレット表面が接触するようになり、亜鉛の回収率が向上する。このように、ペレットが筐体断面を埋め、層になっているものを、本明細書中ではペレット充填層と呼ぶ。充填層の厚みは200〜500mmにするとよい。好ましくは、その下限は300mmに、上限は400mmにするとよい。
【0042】
[亜鉛排出装置]
筐体の鉛直方向下部には、亜鉛液滴が溜まる空間を有することが望ましい。溶融亜鉛を溜めることにより、排出し易くなるからである。例えば、金属ポンプをつかうことにより、溶融亜鉛を筐体(閉空間)の系外に、空気に触れることなく排出することが可能となる。例えば、スクリューコンベヤや、傾斜を利用した排出方法なども適用できる。溶融亜鉛の流路中に堰を設け、空気が混入しないように溶融亜鉛でシールすることもできる。例えば、
図1に示すように、筐体下部を溶融亜鉛に浸漬することで大気の混入を防ぐこともできる。もちろん、排出方法はこの方法に限定されることはない。空気の混入を遮断しつつ、溜まった溶融亜鉛を筐体外に排出することができればよい。
筐体(閉空間)外に出した溶融亜鉛は、例えば、型にいれてインゴットにしてもよいし、アトマイズして亜鉛末としてもよい。回収方法は、特に限定しない。
【0043】
[筐体内部被覆]
亜鉛含有ガスを冷却する際に、亜鉛含有ガスが金属鉄に接触するとカーボン・デポジション反応によってCO2(二酸化炭素)が発生し、このCO2により蒸気亜鉛が再酸化し、粗酸化亜鉛(ZnO)になる。前述したように、一旦粗酸化亜鉛(ZnO)になると金属亜鉛が回収できないため、このカーボン・デポジション反応を抑制することが望ましい。
筐体が鋼で製造されている場合、その内面を被覆し、亜鉛含有ガスが直接筐体(鋼)と接触させないようにするとよい。被覆は特に限定しないが、例えば塗装をすればよい。塗料は限定しないが、例えば耐熱塗料などがある。また、例えばライニングしてもよい。例えばセラミックス塗料などでのライニングなどがある。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
以下、本発明について試験プラントでの実施例を説明する。
試験プラント(
図3に概念図を示す。)では、酸化鉄および酸化亜鉛を含む電炉ダスト(電気炉製鋼法により発生する製鉄ダスト)を還元処理する際に発生する還元処理ガスから亜鉛を分離回収することを試みた。還元処理ガス中には、還元された亜鉛の蒸気が含まれている。
表1に、試験操業で使用した電炉ダストおよび炭材としての粉コークスの化学成分を示した。この電炉ダストの粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック)にて測定し、D50=1.5μm、同じく粉コークスのD50=36.2μmであった。D50とは、累積粒度分布において細粒からの累積頻度が50%に相当する粒径いう。
【0045】
【表1】
【0046】
表2に、試験操業で使用した含炭成型体の原料配合割合と配合原料水分を(含炭成型体水分にほぼ同じ)示す。炭材としての粉コークスをC当量が1.0となるように添加し、水分調整用の水とバインダーとしてのコーンスターチを加え、双腕ニーダーでよく混合した後、半乾式押し出し成型機で底面直径20mmφ×長さ25mmの含炭成型品20を製造した。
【0047】
【表2】
【0048】
<試験プラントの設備仕様>
試験プラント全体概念図を
図3に示す。処理能力は含炭成型体50dkg(ドライ状態での重量(Kg)を示す。以下同じ。)/hである。基本的構成は
図3のように実機設備に近いが、外熱式ロータリーキルン32の外熱炉33は簡便のため電気加熱式としている。内熱式ロータリーキルン22の加熱には熱風発生装置を使用した。また、外熱式ロータリーキルンの排ガスは亜鉛回収装置51で冷却された後、排ガス燃焼装置57でCOガスを燃焼し無害化されてから屋外放出される構造とした。
【0049】
主な設備仕様を以下に示す。
[内熱式ロータリーキルン]
・ステンレス鋼製:内径500mm×長さ4m
・加熱方式:熱風発生装置
[外熱式ロータリーキルン]
・耐熱鋳鋼製:内径300mm×長さ4m、最高使用温度1150℃
・外熱炉:電気加熱式、全長2m
[含炭成型体供給・排出装置]
・内熱式ロータリーキルンへの供給装置:常温型2重ダンパー
・内熱式ロータリーキルンから外熱式ロータリーキルンへの移送装置:高温型水冷ロータリーバルブ直列2台
・外熱式ロータリーキルンからの排出装置:常温型2重ダンパー
[亜鉛回収装置]
・一辺25cmの正方形の断面をもつ縦長の筐体の上部に、内部を水冷した外径30mm、内径20mmの炭化珪素(SiC:99%)のチューブを千鳥状に25本配置した。水平方向のチューブ間隔30mmとし、上から4本、3本、4本と交互に配列し、合計25本を配置した。
・筐体の内壁は80mm厚のキャスタブル(耐火ライニング)、その外側に20mm厚の断熱材、その外側に鋼板、その外側に50mmのN2吹き込み層、その外側に鋼板を配置した。
・SiCパイプの加熱冷却に伴う膨張収縮を吸収し、外気を遮断するため、SiCパイプの取り付け部にOリング設置した。
・さらに、外熱式ロータリーキルンから亜鉛回収装置までの配管の内面には、カーボン・デポジション対策として、耐熱塗料を塗布した。また、亜鉛回収装置の内壁の内側面はキャスタブルでライニングしているが、念のため、内壁の内側面にも耐熱塗料を塗布した。
【0050】
<試験方法>
以下の手順により試験を行った。
(1)内熱式ロータリーキルン22の熱風発生装置24を作動させたのち、内熱式ロータリーキルン22内に装入装置(2重ダンパー)21を経由して、前述した方法により製造した含炭成型体20を50dkg/hの速度で装入した。含炭成型体が予熱・乾燥されて内熱式ロータリーキルン22から排出される時の温度が900℃となるように熱風発生装置24の燃料燃焼量と内熱式ロータリーキルンの回転数を制御した。
【0051】
(2)外熱式ロータリーキルン32は、外面温度を1050℃になるまで昇温させた。900℃まで加熱された含炭成型体が、装入装置(水冷ロータリーバルブ)31を経由して外熱式ロータリーキルン32に装入開始されたのちは、外熱炉長2mの間の滞留時間が30分となるように外熱式ロータリーキルンの回転数を調整すると同時に、外熱式ロータリーキルン外面温度が1050℃を維持するよう外熱炉の電力投入量を制御した。
【0052】
(3)含炭成型体は還元が終了すると還元鉄(DRI)40となる。1050℃の還元鉄は外熱式ロータリーキルン32の排出口に設置された水冷ボックス内で200℃以下まで冷却したのち、排出装置(2重ダンパー)35を経由して外部に排出し回収した。回収した還元鉄の分析結果を表3に示した。
【0053】
【表3】
【0054】
(4)外熱式ロータリーキルン32内部では、含炭成型体が還元されて、亜鉛蒸気とCOガスおよびCO
2ガス(亜鉛蒸気含有ガス)が発生する。この亜鉛蒸気含有ガス50を排気ブロア54で吸引し、SiC製の冷却チューブ56を並べた亜鉛回収装置51に通した。なお、水温は常温(室温)であった。亜鉛蒸気含有ガス中の亜鉛蒸気は500℃の溶融亜鉛として冷却チューブ56の表面に凝縮し、その後滴下し、亜鉛回収装置51の下部に設置した溶融亜鉛溜51−3に貯留した。溶融亜鉛溜51−3は、溜まった亜鉛が凝固しないよう、溶融亜鉛の温度が500℃±50℃になるようで保定した。貯留した溶融亜鉛は1時間置きに鋳型に流し込んで回収した。この時、溶融亜鉛溜には一定量の溶融亜鉛を溜めておき、そこに亜鉛回収装置の一端を浸漬し、大気が混入しないよう溶融亜鉛そのものでシールする構造とした。回収した金属亜鉛の分析値を表4に示した。この時の金属亜鉛の回収量は、平均すると1時間当たり4.8Kgであった。
【0055】
【表4】
【0056】
(5)亜鉛回収装置で亜鉛を回収した後の排ガス58は排ガス燃焼装置57で過剰空気の元で燃焼され、次いで大量の空気で希釈することで200℃以下に冷却し、更に集塵機(バグフィルター)53で徐塵した後大気に放散した。
以上、一連の試験により、酸化鉄と酸化亜鉛を含む電炉ダストから純度の高い鉄(還元鉄)と亜鉛(還元亜鉛)を分離回収することが確認できた。
【0057】
[実施例2]
実施例1と同様の試験装置において、亜鉛回収装置の冷却チューブの上部に、チューブと密着するように底面を加工したSiC製の屋根型ブロック102(
図2(d)参照)(長さ25cm、頂角60°)を乗せ、亜鉛の堆積状況を確認した。屋根型ブロックをのせたチューブと、のせないチューブ(つまり円形断面ままのチューブ)が交互になるように配置した。また、最下段(ガス流れ下流に相当)のブロックは半分に分割し、一方はチューブに密着させ、他方はチューブから離隔して設置した。離隔距離は約1mmとして、直径1mmのアルミナ球をスペーサーとして挟み込んだ。
【0058】
この結果、ガス流れ下流(筐体下部)になるほど亜鉛の堆積量は増加する傾向にあるが、屋根型ブロックをのせたチューブは、円形断面のチューブに比較して亜鉛の堆積量が減少していることを確認した。また、最下段のブロックをのせたチューブにおいても、ブロックを1mm離隔した方が、亜鉛の堆積量は少なくなることを確認した。
【0059】
[実施例3]
実施例1と同様の試験装置において、亜鉛回収装置の筐体内の冷却チューブの下流側(筐体の下部側)に、筐体の断面(250mm四方の断面)が全て埋まるように配置した。ペレットは直径8mmの球形SiCセラミックス(SiCセラミックス・ボール)とした。そのSiCセラミックス・ボールを約49000個投入した結果、厚さ約400mm程度のSiCセラミックス・ボール充填層(ペレット充填層)ができた。
実施例1の試験方法と同様に試験を行った。
その結果、亜鉛回収量は、平均すると1時間当たり約6.7Kgであった。これにより、ペレット充填層を設けることにより金属亜鉛の回収量が増大したことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、亜鉛蒸気を含有するガスが得られるものであれば、当該ガスから亜鉛を分離回収することができる。例えば電気炉による製鉄プラントで発生する電炉ダストから還元鉄を製造する際に発生する亜鉛蒸気含有ガスから亜鉛を分離回収することができる。
【符号の説明】
【0061】
20 含炭成型体
21 装入装置
22 予熱装置(内熱式ロータリーキルン)
24 予熱装置用バーナー(熱風発生装置)
31 装入装置
32 還元処理装置(外熱式ロータリーキルン)
33 還元処理装置の加熱装置
35 排出装置
40 還元鉄
50 亜鉛蒸気含有ガス
51 亜鉛回収装置
51-1 ガス導入口
51-2 ガス排出口
51-3 溶融亜鉛溜
51-4 亜鉛回収装置(図示せず)
53 集塵機
54 送風機
56 冷却チューブ(水冷)
57 排ガス燃焼装置
58 排ガス
59 ペレット(充填層)
60 亜鉛
61 亜鉛(溶融亜鉛)
81 集塵機
82 送風機
83 煙突
101 冷却チューブ
102 屋根型ブロック
【要約】
【課題】本発明は、亜鉛蒸気含有ガスからの亜鉛の回収に際し、特に酸化鉄と酸化亜鉛を含有する電炉ダストから還元鉄を製造する際に発生する亜鉛蒸気を含有する還元処理ガスに着目し、プロセス上の観点からもエネルギー効率の観点からも効率的に、さらに簡便な設備にて亜鉛を回収可能とすることを課題とする。
【解決手段】本発明は、ガス導入口とガス排出口を有し、内部に1本または2本以上の冷却チューブを配置した閉空間において、亜鉛蒸気含有ガスがガス導入口から導入され、ガス排出口から排出され、内部に冷却媒体を流した冷却チューブに、亜鉛蒸気含有ガスを接触させ、前記冷却チューブの表面に亜鉛を凝縮させ、凝縮した亜鉛を前記閉空間内の鉛直方向下部に集めて回収することを特徴とする。
【選択図】
図1