特許第5881951号(P5881951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881951
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ワークフロー管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20120101AFI20160225BHJP
【FI】
   G06Q10/06 100
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-5650(P2011-5650)
(22)【出願日】2011年1月14日
(65)【公開番号】特開2012-146239(P2012-146239A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年9月3日
【審判番号】不服2015-4298(P2015-4298/J1)
【審判請求日】2015年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】595155484
【氏名又は名称】株式会社クレオ
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 英俊
【合議体】
【審判長】 金子 幸一
【審判官】 手島 聖治
【審判官】 石川 正二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−531062(JP,A)
【文献】 特開2009−252163(JP,A)
【文献】 特開2007−94517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上のプロセスを含むワークフローを、権限ある利用者がプロセスをある状態から他の状態へと遷移させることにより進行させるワークフロー管理システムであって、
利用者を識別するための利用者識別情報を保持するための利用者識別情報保持部と、
前記プロセスの状態と、その状態に関連付けられた操作であるアクションと、前記アクションの実行権限を得るために利用者識別情報が満たすべき条件であるロールと、を保持するためのプロセス定義保持部と、
前記アクションを構成する複数の定型化された処理であるアクション要素を保持するためのアクション要素保持部と、
前記アクション要素を構成要素としてアクションを定義するために、一以上のアクション要素の組合せの選択を受け付けてプロセス定義保持部にプロセスの状態に関連付けて保持させるアクション定義受付部と、
前記ロールと前記利用者識別情報を照合した結果当該利用者に当該アクションの実行権限があると認めた場合には、当該利用者から当該アクションの実行を受け付けて実行するアクション実行部と
を有するワークフロー管理システム。
【請求項2】
前記複数のアクション要素は、少なくともプロセスの状態を遷移させるためのアクション要素を含むことを特徴とする請求項1に記載のワークフロー管理システム。
【請求項3】
前記プロセス定義保持部は、他のプロセスとの関連である関連情報をさらに保持し、
前記複数のアクション要素は、関連するプロセスを新たに生成するためのアクション要素と、新たに生成されたプロセスとの関連を定義するための関連情報を前記プロセス定義保持部に記録するためのアクション要素とを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワークフロー管理システム。
【請求項4】
前記複数のアクション要素は、関連する外部システムとの間でコマンドを送受信するためのアクション要素をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のワークフロー管理システム。
【請求項5】
プロセスに関連した業務情報を当該プロセスに関連付けて保持するための業務情報保持部と、
プロセスに関連した業務情報を読み出すための業務情報読出部と
をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載のワークフロー管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワークフロー管理システムにおいてユーザがワークフローを柔軟に定義できるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークフロー管理システムは、効率的な生産システムあるいは作業組織を実現するために定型的な仕事の流れを規定してこれを実行させるものである。そこで従来のワークフロー管理システムの設計開発においては、まず開発時点で最良と考えられる仕事の流れや人事組織を規定し、次にこれを反映したシステムを構築するという手法が採用されていた。しかし、効率的な生産システムや作業組織は試行錯誤を通じて改善されていくものであることから改善を直ちに反映できるように仕事の流れの定義は柔軟に改変可能であることが望ましい。そこで特許文献1は、現在の組織環境に対応した部署名、役職及びユーザの情報が格納され、人事異動などの組織変更のために過去と現在とで組織環境が異なる場合でも運用することのできるワークフローシステムを提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−195468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークフロー管理システムは組織内での文書回覧及び決裁管理にとどまらず、製造プロセスの管理、ITILに準拠したITサポート業務の管理、情報セキュリティマネジメントシステム等その応用範囲は多岐にわたることから、それらのいずれの用途にも使用可能となるような汎用性を備えていることが望ましい。特許文献1のワークフローシステムは人的組織変更には柔軟に対応可能であるが、これら多様な運用形態に対応可能なほどの汎用性を有しない。本発明が解決しようとする課題は、これら多様な運用形態に対応可能な汎用性のあるワークフロー管理システムを提供することである。
【0005】
また従来のワークフロー管理システムでは、システムの利用者がワークフローに基づいてシステムの仕様を策定し、これに適合したシステムをプログラミングにより構築する手法が一般的であり、従って、ワークフローに重要な変更が生じた場合にはプログラムの変更により対応する必要があった。本発明が解決しようとするもうひとつの課題は、ワークフローに変更が生じた場合においてもプログラムを改変することなく柔軟にワークフローの定義を変更できるようなワークフロー管理システムを提供することである。
【0006】
本願発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は前記課題を以下の方法により解決した。
【0008】
第一に、従来技術のワークフロー管理システムが人的組織全体や全製造工程をひとまとまりとしてこれに対応した一つのワークフローとしてデザインされていたのに対し、本願発明では仕事の流れを複数のプロセスに細分化し、ワークフローはそれら複数のプロセスが有機的に連鎖した集合体として定義される。このようにワークフローを多数の異なるプロセスの組合せとして定義することにより、どのようなワークフローでも自由に設計し、変更することが可能となった。
【0009】
第二に、本発明では、プロセスにおける作業の進捗状況を表現するためにプロセスの状態がひとつ選択されるものとし、プロセスの進捗に応じて権限のあるユーザが定義されたアクションを実行することによりプロセスの状態が遷移する構成とした。このような構成を採用することにより、プロセスを進捗させる際の権限の管理を簡単に実現することが可能となった。
【0010】
第三に、本発明では、プロセスを遷移させるためのアクションを定義するに際し、複数のアクション要素をユーザが自由に組み合わせることによりアクションを定義できる構成とした。このような構成とすることでユーザはシステムの修正を行うことなく自由に状態間の遷移やプロセス間の連携を定義することが可能となった。
【0011】
第1発明は、以上のような構成を全て採用したワークフロー管理システムに関する。
【0012】
第2発明はさらに、複数のアクション要素は、少なくともプロセスの状態を遷移させるためのアクション要素を含むことを特徴とする第1発明のワークフロー管理システムに関する。
【0013】
第3発明はさらに、複数のアクション要素は、関連するプロセスを新たに生成し、プロセス間の関連を定義するためのアクション要素を含むことを特徴とするワークフロー管理システムに関する。
【0014】
第4発明はさらに、複数のアクション要素は、関連する外部システムとの間でコマンドを送受信するためのアクション要素をさらに含むことを特徴とするワークフロー管理システムに関する。
【0015】
第5発明はさらに、プロセスに関連した業務情報を当該プロセスに関連付けて保持しこれを当該プロセスにおいて読み出すことのできるワークフロー管理システム、に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、様々な使用目的や使用方法に対応した汎用的なワークフロー管理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1のワークフロー管理システムの特徴のひとつであるプロセスの連鎖によるワークフローの定義の概念を表す図。
図2】一のプロセスの状態が遷移する様子を表す図。
図3】一のプロセスを定義するための構成を表す図。
図4】実施例1のワークフロー管理システムの機能ブロック図。
図5】アクション要素の具体例。
図6】アクション定義受付部がユーザからアクション要素の選択を受け付けるためのインタフェイスの一例。
図7】実施例1のワークフロー管理システムのハードウェア構成図。
図8】実施例1のワークフロー管理システムの実際の使用態様を表す図。
図9】実施例1のワークフロー管理システムにおいてアクションの定義が行われる際の処理の流れを表すフロー図。
図10】実施例1のワークフロー管理システムにおいてアクションの実行が行われる際の処理の流れを表すフロー図。
図11】実施例3のワークフロー管理システムの概念を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例1は請求項1記載の第1発明及び請求項2記載の第2発明に関する。実施例2は請求項3記載の第3発明に関する。実施例3は請求項4記載の第4発明に関する。実施例4は請求項5記載の第5発明に関する。
【実施例1】
【0019】
<実施例1の概念>
【0020】
図1は、実施例1のワークフロー管理システムの特徴のひとつであるプロセスの連鎖によるワークフローの定義の概念を表す図である。図中のひとつひとつの丸はプロセスを表しており、丸の中の番号は説明のためのプロセスの番号である。プロセス間の矢印はワークフローの進捗方向を表している。例えば、第3プロセスからは第4プロセスと第5プロセスへ進捗するルートがあり、また、案件を中止するルートもある。このように一つのプロセスから同時に複数のプロセスに進捗してもよい。またプロセス間の遷移はワークフローの進捗のみならず、第4プロセスから第1プロセスへの遷移のように既に通過したプロセスへの回帰であってもよい。このようなプロセス間の遷移は権限ある者がアクションを実行することにより実現される。
【0021】
このように、本発明のワークフロー管理システムは、仕事の流れを複数のプロセスに細分化し、ワークフローはそれら複数のプロセスが有機的に連鎖した集合体として定義される。このようにワークフローを多数の異なるプロセスの組合せとして定義することにより、どのようなワークフローでも自由に設計し、変更することが可能となる。
【0022】
図2は、一のプロセスの状態が遷移する様子を表す図である。プロセス内部では常に一の状態が選択されており、図の例では「新規」→「対応中」→「対応済み」→「完了」のように状態が遷移する。そしてそれぞれの遷移は権限ある者がアクションを実行することにより実現される。アクションによる遷移には、図2のようにプロセス内部でその状態を遷移させるものと、図1の矢印のように一のプロセスから別のプロセスへと遷移するものとがあり、さらにはこれら両方を同時に行うものがある。
【0023】
図3は、一のプロセスを定義するための構成を表す図である。図はプロセスの状態が「対応中」である場合における「アクション」と「ロール」の定義を表している。アクションとロールの定義は状態ごとに行われ、プロセスの状態が変わればこれらも異なる。図のアクション中、「対応を確認し、対応済みとする」とするアクションは、図2で説明したようなプロセス内部でその状態の遷移をもたらすアクションである。また、「二次対応へエスカレーションする」とするアクションは図1で説明した一のプロセスから別のプロセスへの遷移を伴うアクションである。「中止する」とするアクションは、図1で説明した案件の中止をもたらすアクションである。
【0024】
図3はまた、「対応を確認し、対応済みとする」アクション及び「中止する」アクションはAさんのみが実行することができ、「二次対応へエスカレーションする」アクション及び「内容を訂正する」アクションはBさんのみが実行することができ、「保留とする」アクションは、Cさんのみが実行することができることを表している。このように、アクションごとに実行権限を有する者を定義することができる。もちろん、一のアクションを実行することができる者が複数定義されてよい。
【0025】
「二次対応へエスカレーションする」とあるアクションは別プロセスへと遷移するアクションである。例えば、当該プロセスがコールセンターによる顧客苦情処理という一次対応であって、サービスマンの現地派遣という二次対応を要請した場合がこれに該当する。当アクションはBさんのみが実行することができる。
【0026】
あるアクションを実行した場合に、反復実行される類型化された複数の処理を同時に行うことがある。例えば、「二次対応へエスカレーションする」アクションにおいては、二次プロセスを新規生成してワークフローを二次プロセスへ遷移させる処理を行うと同時に、一次プロセスの状態を「対応済み」とする処理を行ってもよい。このように、アクションを構成する要素となる類型化された処理を「アクション要素」と呼ぶ。本発明は、複数のアクション要素をユーザが自由に組み合わせてアクションを定義できることを特徴とする。
<実施例1の構成>
【0027】
図4は、実施例1のワークフロー管理システムの機能ブロック図である。実施例1のワークフロー管理システム0401は、利用者識別情報保持部0402と、プロセス定義保持部0403と、アクション要素保持部0404と、アクション定義受付部0405と、アクション実行部0406とを有する。利用者識別情報保持部には利用者情報0420が保持され、プロセス定義保持部には状態0411、アクション0412及びロール0413が保持される。これらの保持を行うことにより実質的にはプロセス0410を定義して保持することとなる。アクション要素保持部には一以上のアクション要素0430が保持される。
【0028】
実施例1のワークフロー管理システムは、「一以上のプロセスを含むワークフローを、権限ある利用者がプロセスをある状態から他の状態へと遷移させることにより進行させるワークフロー管理システム」である。ワークフローが一以上のプロセスを含むものであることは図1で、プロセスの状態の遷移については図2で既に説明した。
【0029】
「利用者識別情報保持部」は、利用者を識別するための利用者識別情報を保持する。利用者識別情報とは、典型的にはログインIDやパスワード等を指し、図3にて説明したアクションの実行権限を判断する際等に利用される情報である。
【0030】
「プロセス定義保持部」は、「状態」と、「アクション」と、「ロール」を保持する。プロセスの状態については、図2で説明した。アクションとは「状態に関連付けられた操作」であり、「ロール」とは「アクションの実行権限を得るために利用者識別情報が満たすべき条件である。」これらは図3で説明した。状態、アクション及びロールはプロセスごとに保持される。そしてこのような定義が多数のプロセスについて保持されることにより、ワークフローの定義が構築される。
【0031】
このようにワークフローを定義するために、ワークフローを構成するための多数のプロセスが定義される。このようなプロセスの定義は定型化された業務の型を定義するものであるが、実際の業務においては同一のプロセスについて多数の案件が処理されシステムにインスタンスとして登録される。そのようなインスタンスを識別するためプロセス定義保持部はさらにインスタンス識別番号を保持するようにするとよい。
【0032】
「アクション要素保持部」は、前記アクションを構成する複数の操作であるアクション要素を保持する。繰り返しになるが、アクション要素とはアクションを構成する単位要素となる定型化された処理のことをいう。図5は、アクション要素の具体例である。図のようにアクション要素は通常複数定義される。これらのうち、二番目の「関連案件を作成する」は図3の「二次対応へエスカレーションする」の箇所で説明した二次プロセスの生成に使用される。八番目の「状態を更新する」は図3の「対応を確認し、対応済みとする」の箇所で説明した状態の更新に使用されるものであって、「プロセスの状態を遷移させる」アクション要素である。
【0033】
「アクション定義受付部」は、前記アクション要素を構成要素としてアクションを定義するために、一以上のアクション要素の組合せの選択を受け付けてプロセス定義保持部に保持させる。
【0034】
図6は、アクション定義受付部がユーザからアクション要素の選択を受け付けるためのインタフェイスの一例である。図のインタフェイス0600は、コールセンターの苦情受付業務に係るプロセスの状態が対応中である場合に実行可能な「二次対応へエスカレーションする」アクションを定義するものである。アクションは必ず特定のプロセスの特定の状態に関連して定義される。図のプロセス名欄0601はプロセスを、状態欄0602はプロセスの状態を、アクション名欄0603は当該アクションのアクション名を指定するために使用される。
【0035】
アクション要素一覧0604は前記「二次対応へエスカレーションする」アクションを構成するものとして選択可能な全てのアクション要素のなかから既に選択したアクション要素のリストが表示される。そのような選択の方法としては、図のように追加ボタン0605をマウスポインタなどで押し下げると図5のような選択可能なアクション要素の一覧が表示され、そのひとつをクリックするなどして選択すると前記アクション要素一覧に追加するといった構成等が考えられる。
【0036】
図にはないが、アクション要素一覧に含まれるアクション要素のそれぞれを実行する順番を指定するようにしてもよい。
【0037】
図の例では、「二次対応へエスカレーションする」を実行すると、第一に、「関連案件を作成する」アクション要素により、例えばサービスマンの現地派遣という新たなプロセスが生成され、第二に、「状態を更新する」アクション要素により、サービスセンタによる当プロセスの状態が「対応中」から「対応済み」に変更され、第三に、「コメントを作成する」アクション要素により、担当者が「サービスマンが現地対応中」といったコメントを作成でき、第四に、「メールを送信する」アクション要素により、サービスマンに対し現地での対応を指示するメールを送信することができる。これら一組の処理をひとつのアクションにて実行することができる。
【0038】
ロール一覧0606は、前記アクションを実行する権限を定義する。図では、実行権限のある担当者の名前の一覧となっているが、名前の代わりに実行権限のある者の役職名や肩書などであってもよい。
【0039】
「アクション実行部」は、「前記ロールと前記利用者識別情報を照合した結果当該利用者に当該アクションの実行権限があると認めた場合には、当該利用者から当該アクションの実行を受け付けて実行する。」アクション実行部は、利用者からアクションの実行について指示を受けたときは、まず当該利用者に当該アクションの実行権限があるかを判断する。具体的には、利用者のログインIDにより利用者を識別し、当該アクションのロールが権限ある者の名前リストである場合には利用者の名前がそのリストに含まれるかを、当該アクションのロールが権限ある者の肩書である場合には当該利用者がその肩書を有するかを、判断する。当該利用者に実行権限があると判断した場合には、アクションを構成するアクション要素を順番に又は同時に実行する。
【0040】
図7は、実施例1のワークフロー管理システムのハードウェア構成図である。ワークフロー管理システムは、各種演算処理及び検索処理を行うCPU0701と、プログラムやデータを保持するためのハードディスクドライブ装置、ROMなどの外部記憶装置0702と、プログラムやデータを一時的に記憶して保持するメモリ0703と、を備えている。また、通信回線を介して通信を行うための通信インタフェイス0704も備えている。そしてそれらがデータ通信経路であるシステムバス0705によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0041】
外部記憶装置に保持されたプログラムは必要に応じてメモリに読みだされ、CPUは当該プログラムをメモリに参照することで各種演算処理を実行する。また、このメモリにはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており、CPUの演算処理においては、そのアドレスを特定し格納されているデータにアクセスすることで、データを用いた演算処理を行うことが可能になっている。
【0042】
図8は、実施例1のワークフロー管理システムの実際の使用態様を表す図である。ワークフロー管理システム0801は、インターネットや社内LAN等の通信回線0802を介して多数のパーソナルコンピュータ0803に接続される。ワークフローを構成するプロセスを担当するユーザはそれぞれこれらパーソナルコンピュータをインタフェイスとしてワークフロー管理システムにログインし、ワークフローを進捗させる。
【0043】
このようなハードウェア構成や使用態様は他の実施例でも同様である。
【0044】
図9は、実施例1のワークフロー管理システムにおいてアクションの定義が行われる際の処理の流れを表すフロー図である。第一に、アクション要素保持部が、前記アクションを構成する複数の操作であるアクション要素を保持する(ステップ0901)。第二に、アクション定義受付部が、前記アクション要素を構成要素としてアクションを定義するために、一以上のアクション要素の組合せの選択を受け付けてプロセス定義保持部に保持させる(ステップ0902)。最後に、プロセス定義保持部が、プロセスの状態に関連付けられた操作であるアクションを保持する(ステップ0903)。
【0045】
図10は、実施例1のワークフロー管理システムにおいてアクションの実行が行われる際の処理の流れを表すフロー図である。第一に、利用者識別情報保持部が利用者を識別するための利用者識別情報を保持し(ステップ1001)、プロセス定義保持部が、アクションの実行権限を得るために利用者識別情報が満たすべき条件であるロールを保持する(ステップ1002)。第二に、アクション実行部がロールと利用者識別情報を照合し、利用者にアクションの実行権限があるかどうかを判断する(ステップ1003)。ステップ1003で利用者にアクションの実行権限があると判断された場合には、アクション実行部がアクションの実行を受け付けて実行する(ステップ1004)。
<実施例1の効果>
【0046】
実施例1のワークフロー管理システムによれば、様々な使用目的や使用方法に対応した汎用的なワークフロー管理システムが提供される。すなわち、当ワークフロー管理システムによれば、プロセスを有機的に制限なく連鎖させることによりワークフローを自由にデザインすることができる。また、予め用意されたアクション要素を組み合わせることによりプログラムの変更を行うことなく、プロセス内の状態の遷移の際の処理や、プロセス間の関係も自由に定義することができる。このように、実施例1のワークフロー管理システムによれば、使用目的毎に異なるワークフロー管理システムを導入する必要がなく、ひとつのシステムで多様な使用目的や、使用方法に対応することができる。
【実施例2】
【0047】
<実施例2の概念>
【0048】
実施例1のワークフロー管理システムは図1におけるように一のプロセスから他のプロセスへの遷移が可能なものであった。このようなプロセス間の遷移は複雑なワークフローを定義するうえで重要なものである。例えば、ITサービス運用の分野においてベストプラクティスとして標準仕様となっているITIL(Information Technology Infrastructure Library)のサービスマネジメントは、「インシデント管理」、「問題管理」、「構成管理」、「変更管理」及び「リリース管理」の五つのプロセスにより構成されるが、ワークフロー管理システムを使用してこれを運用しようとする場合にはそれぞれのプロセス間で遷移可能とすることが求められる。そしてそのようなプロセス間の遷移は、前述のようにアクション要素を組み合わせることにより自由に定義可能であり、具体的には図3の「二次対応へエスカレーションする」アクションのように一のプロセスから別のプロセスを生成することにより実現された。
【0049】
ところが実際の運用においては、一次プロセスから二次プロセスが生成されて一次プロセスがそのまま終了となることは少なく、二次プロセスが終了した後にはワークフローが一次プロセスに帰ってくることが珍しくない。例えば、前述したITILのサービスマネジメントでは、一次プロセスであるインシデント管理において発生したインシデントについて事業活動への影響が最小限となるよう迅速なサービスの復旧を行うと同時に、二次プロセスである問題管理においてインシデントの原因追究及び再発防止策の策定が行われる。二次プロセスである問題管理において原因解明や対応手段の策定が早急になされた場合には、一次プロセスのインシデント管理に直ちにその対応手段が利用されることがある。
【0050】
このように二次プロセスから一次プロセスへのワークフローの回帰を可能とするためには、一次プロセスから二次プロセスを生成する際に両プロセスを関連付けておくことが必要となる。実施例2のワークフロー管理システムは、このように関連するプロセスを紐づけすることにより、プロセス間におけるプロセスの進捗・回帰を容易としたワークフロー管理システムである。
<実施例2の構成>
【0051】
実施例2のワークフロー管理システムの機能ブロック図は図4で説明した実施例1のワークフロー管理システムのそれと多くの部分で共通するので省略する。異なるのはプロセス0410を定義する情報として状態0411、アクション0412及びロール0413の他に「関連情報」が含まれることと、アクション要素0430とは、具体的には、(1)関連するプロセスを新たに生成するためのアクション要素と、(2)新たに生成されたプロセスとの関連を定義するための関連情報を前記プロセス定義保持部に記録するためのアクション要素とが含まれるものである点である。以下、実施例2のワークフロー管理システムに独自の構成を説明する。
【0052】
「プロセス定義保持部」は、他のプロセスとの関連である関連情報をさらに保持する。「関連情報」とは、他のプロセスとの関連を示す情報である。例えば、前述のITILの設例では一次プロセスである「インシデント管理」から「問題管理」が二次プロセスとして生成された。この場合、インシデント管理のインスタンスの関連情報としては、生成した問題管理のインスタンスのインスタンス識別番号を保持するなどする。
【0053】
「複数のアクション要素」は、関連するプロセスを新たに生成するためのアクション要素と、新たに生成されたプロセスとの関連を定義するための関連情報を前記プロセス定義保持部に記録するためのアクション要素とを含む。
【0054】
「関連するプロセスを新たに生成するためのアクション要素」とは、例えば、図5で説明した「関連案件を作成する」アクション要素である。「新たに生成されたプロセスとの関連を定義するための関連情報を前記プロセス定義保持部に記録するためのアクション要素」は、例えば、前述のITILの設例において新たに生成された二次プロセスのインスタンスのインスタンス識別番号を生成元の一次プロセスのインスタンスの関連情報に記録するアクション要素のこと等をいう。この場合、生成元の一次プロセスのインスタンスのインスタンス識別番号を二次プロセスのインスタンスの関連情報として同時に記録してもよい。
<実施例2の効果>
【0055】
実施例2のワークフロー管理システムによれば、関連するプロセス間の遷移を自在に行うことができる。
【実施例3】
【0056】
<実施例3の概念>
【0057】
図11は、実施例3のワークフロー管理システムの概念を表す図である。ワークフロー管理システム1101は他のシステムと協働することにより、さらに効率的な業務遂行を実現することが可能となる。他のシステムとしては、企業からの情報を発信するためのポータルサイト1105、ネットワークのセキュリティを監視するためのネットワーク監視システム1106、電子メールの送受信を行うためのメールシステム1107、IT資産の管理のための資産管理システム1108、営業活動を支援するための顧客データベース機能等を担う営業支援システム1109等がある。実施例3のワークフロー管理システムは、これら他のシステムと協働するためのコマンド1104を送受信するためのアクション要素1103が利用可能であり、そのようなアクション要素を組み込んだアクション1102を定義することができる。
【0058】
このような他システムとの協働の例としては、人事異動というワークフローの処理と関連して顧客の担当替えがあった場合に営業支援システムの担当者を自動で変更したり、顧客からの貸出IT資産の不具合の苦情を受けた際の貸出IT資産の交換処理というワークフローに関連して貸出IT資産の資産管理システムで貸出状態の変更記録を自動で行ったりする処理がこれに当る。
<実施例3の構成>
【0059】
実施例3のワークフロー管理システムの複数のアクション要素は、関連する外部システムとの間でコマンドを送受信するためのアクション要素をさらに含む。図4を用いて説明すると、アクション要素保持部0404に保持されたアクション要素0430には、関連する外部システムとの間でコマンドを送受信するためのアクション要素が含まれ、アクション定義受付部0405はそのようなアクション要素の選択を受け付けてアクション0412を定義することができ、アクション実行部0406がそのようなアクションを実行することにより、他システムとの協働が実現される。その他の構成は実施例1や2のワークフロー管理システムと同様である。
<実施例3の効果>
【0060】
実施例3のワークフロー管理システムによれば、他システムとの協働による効率的なワークフローの処理を実現することができる。
【実施例4】
【0061】
<実施例4の概念>
【0062】
ワークフローの処理においては、いくつかの定型化された処理が可能であるケースが多い。例えば、顧客からの問い合わせを受け付ける業務においては顧客から頻繁に受ける同種の問い合わせ(FAQ)があり、 FAQに対しては模範回答を予め用意しておきこれを繰り返し使用することで業務の効率化を実現することができる。このように特定のプロセスにおいて頻繁に使用される業務情報はいつでも読み出し可能としておくことにより業務の効率を飛躍的に高めることができる。実施例4のワークフロー管理システムは、このような業務情報をプロセスに関連付けて保持し、当該プロセスにおいて直ちに読み出し可能とするワークフロー管理システムである。
<実施例4の構成>
【0063】
実施例4のワークフロー管理システムは、図4に表わされた構成の他に業務情報保持部及び業務情報読出部を有する。「業務情報保持部」は、プロセスに関連した業務情報を当該プロセスに関連付けて保持する。「プロセスに関連した業務情報」の例としては、サーバの貸し出し業務に関連したサーバの資産一覧情報や、コールセンター業務に関連した顧客一覧情報や、契約管理業務に関連した契約一覧情報等があげられる。
【0064】
保持する方法としては、プロセスに関連したアクションを実行する際に当該アクションにおいて使用された業務情報を自動的に又は選択により保存する構成としてもよい。例えばコールセンターが顧客から住所変更の申請を受けた場合に、住所変更のプロセスにおけるアクションに顧客一覧情報を更新するアクション要素が組み込まれていれば、業務情報保持部により顧客一覧情報が自動的に更新される。このように構成することにより、業務が効率化され、また顧客情報の管理が一層確実なものとなる。
【0065】
「業務情報読出部」は、プロセスに関連した業務情報を読み出す。プロセスに関連付けた保持された業務情報は当該プロセスにおいて常時読み出し可能とするのが便宜である。例えば、前記コールセンター業務のプロセスでは顧客一覧情報を直ちに読み出し可能とすることにより効率的な対応が可能となる。
<実施例4の効果>
【0066】
実施例4のワークフロー管理システムは、頻繁に使用される類型化された文書や処理方法等の業務情報を保持して直ちに読み出し可能とすることにより業務の効率化を実現することのできるワークフロー管理システムである。
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