(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は使い捨て注射器(4)を示す。この種の注射器は一回限り使用することができる。使用後に、それらは再使用されないようにロックされる。
【0012】
使い捨て注射器(4)は、ハウジング(10)、ばねエネルギー貯蔵部(50)、ピストン作動ラム(60)、トリガーユニット(80)、円筒/ピストンユニット(100)及び改ざん防止シール(90)を含む。
【0013】
ハウジング(10)は、底部で解放された、そして床(39)が頂部に位置しているポット形の中空体である。それは、例えば、ガラス繊維強化ポリアミドで射出成形によって生産される。ハウジング(10)は実質的にチューブ状の構成を有し、そして二つの機能領域に分けられ、それらの一方は上部ジャケット領域(31)であり、そして他方は下方固定領域(41)である。ジャケット領域(31)において、ハウジング(10)は、例えば、互いに反対向きに位置している二つの窓状開口部(33)を有する。各々の場合、圧力棒(21)は個々の開口部(33)の下方端上に関節状に搭載されている。床(39)は中央孔(38)を有する。
【0014】
圧力棒(21)は、例えば、その長さの80%に沿って、ハウジング(10)の壁の肉厚及び曲率を有する。この領域はまた、なかんずく弾性屈曲ビーム(28)の機能を有する。それは、鎌形の断面を有する。
【0015】
適切な場合、使用中に、屈曲ビームの端部領域において生じる曲げ応力を低減するために、この屈曲ビーム(28)の一部も矩形断面を備えることができる。
【0016】
本明細書では、個々の圧力棒(21)の上部自由端は、半径方向に外側に向かって突き出ているカム(22)によって形成されている。後者は、中央線(5)の方向に向っている少なくとも一つの支持面(23)、及び中央線(5)から離れた方向の接触面(24)を有する。
【0017】
ハウジング(10)の下方半分はスリーブ形トリガーエレメント(82)によって囲まれている。後者は、例えば、実質的に円筒状であり、そしてそれは、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体で作られる。トリガーエレメント(82)はハウジング(10)の半径方向の外面(13)に沿って動くことができるように搭載されている。それはトリガーエレメント(82)の端面で戻り側面(84)の部分である鋭い端部(85)を有する後部で終わっている。
図1によると、端部(85)の下方に、圧力棒(21)上に一体化されて形成されるカム(22)が、トリガーエレメント(82)の内壁(59)をそれらの接触面(24)としっかり接触させる。
【0018】
ハウジング(10)の後方端部を完全に囲んでいるトリガーキャップ(81)は、トリガーエレメント(82)上に、例えば、端部(85)の近くに固定される。トリガーキャップ(81)は円周の広げられた領域(83)を含み、注射器がトリガーされると、その中にカム(22)が受け入れられる(
図8を参照)。非回転対称のトリガーエレメント(82)の場合、この広げられた領域(83)の代わりに、圧力棒(21)ごとに、部分的に広がった領域又は覆われていない開口部を備えることができる。広げられた領域(83)の上方で、トリガーキャップ(81)は、滑ることができるようにハウジング(10)の外壁(13)にのしかかっている。
【0019】
ハウジング(10)中に配置されるピストン作動ラム(60)は二つの領域に分けられる。下方の領域はピストンスライド(76)である。その直径は、円筒/ピストンユニット(100)の円筒(101)の後方領域の内径よりも僅かに小さい。ピストンスライド(76)の下方端面は直接、円筒/ピストンユニット(100)のピストン(111)上に直接、作用する。
【0020】
ピストン作動ラム(60)の上方領域、すなわち、ラム板(73)は、平らで、少なくとも部分的に円筒状のディスクであり、その外径はジャケット領域(31)中のハウジング(10)の内径より数十分の一ミリメーター小さい。下方端面はピストンスライド(76)の周りに配置されたカラー面(75)を有する。それは、円錐台形ジャケットの形を有し、その頂角は約100〜140度である。示された代表的実施態様において、カラー面(75)は140度の頂角を有する。円錐台形ジャケットの仮想頂部はピストンスライド(76)の領域内の中央線(5)上に位置する。カラー面(75)も球状の曲率を有することができる。
【0021】
ピストンスライド(76)も勿論ラム板(73)から分離された部品として設計することができる。この目的のために、それは次いでハウジング(10)の内壁上を誘導される。
【0022】
らせん圧縮ばね(50)は、ラム板(73)及びハウジング(10)の頂部に位置する床(39)の間に、事前に張力をかけられて座する。らせん圧縮ばね(50)は、例えば、スペーサースリーブ(19)を介してハウジング(10)の床(39)にのしかかる。らせん圧縮ばね(50)のバネ力はラム板(73)を介して圧力棒(21)に伝えられる。カラー面(75)が傾いているために、圧力棒(21)はスプライン歯車のように半径方向に外側へ強制的に動かされる。トリガースリーブ(82)はこの半径方向の力を永久に支える。
【0023】
ラム板(73)の上方で、ピストン作動ラム(60)は誘導ピン(62)を有する。後者は、らせん圧縮ばね(50)を誘導し、又は後者によって誘導される。ラム板(73)の下方で、ピストンスライド(76)は誘導ピン(62)に連続して中央部に位置している。
【0024】
挿入可能な円筒/ピストンユニット(100)を受けるための固定領域(41)はジャケットセクション(31)の下方に位置している。固定領域(41)は、中央線(5)に平行に向けられた、例えば、八つのばねフック(42)を含む。ばねフック(42)は、遊びがない円筒/ピストンユニット(100)を受けるための少なくとも二つの側面付きアンダーカット(43)各々有する。アンダーカット(43)の互いに反対側の側面は、例えば、90度の角度を取り囲む。ばねフック(42)の長さ及びバネ定数は、円筒/ピストンユニット(100)がばねフック(42)の塑性変形なしで挿入することができるように寸法取りされる。
【0025】
説明用の実施態様において、注射用の水又は注射溶液(1)で充填することができる円筒(101)は、例えば、透明で肉厚のポットであり、場合により円筒状の外壁は、例えば、ばねフック(42)のアンダーカット(43)の側面に、寸法的に安定した状態で、のしかかる円周のロックリング(102)を支持する。棒のないピストン(111)は、円筒(101)の、例えば、円筒状又は円錐状の孔中に座する。その前面又は少なくともほぼ円錐状の端面で、例えば、テフロン(登録商標)誘導体のテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)で作られたピストン(111)は、シールリング(114)又は永久に弾性的なシール化合物を受けるための軸方向の環状溝(112)を有する。適切な場合、例えば、円筒状の金属板がピストン(111)の後方端面内に挿入される。
図1の図において、ピストン(111)は前方位置に座している。その上端は円筒(101)から突き出ている。ピストン(111)の長さは、挿入されたピストン(111)(
図1及び8を参照)が少なくとも1ミリメーターだけ後部上端の上方に突き出るように選択される。ピストン(111)の中央領域は狭められている。周囲が狭められた領域は、ピストンの全長の約30%に対応する長さを有する。狭められた領域は、溶液を受ける容器内部(110)の領域において、円筒の最大内径よりも16〜20%小さな直径を有する。狭められた領域及び前方ピストン領域、すなわち、この場合、底に位置するピストン領域の間に位置する前方移行部は、例えば、35〜40度の円錐角を有する。他の移行部、すなわち後方移行部は35度及び90度の間の円錐角を有する。
【0026】
ピストン(111)の後方の、例えば、切頭円錐状の端面(113)中に、ポンプ棒(140)をカップリングするための床(118)を有する、中央の円錐状のピストン凹部(115)がある。ピストン凹部(115)の円錐角は、例えば、1度である。その下方端で、ポンプ棒(140)は、例えば、ピストン(111)にカップリングのための円錐状のV−ねじ山(141)を有する。V−ねじ山(141)の円錐角は、例えば、6度である。ポンプ棒(140)がピストン凹部(115)内に回転されるとき、V−ねじ山(141)のねじ山ピッチは必要な対向ねじ山に押し込まれる。ポンプ棒(140)の前端が切頭円錐端面(145)の狭い先端を介して床(118)と接触するとき、中に入る操作(turning-in operation)が完了される。
【0027】
短い円筒状のノズル状の孔(106)は円筒(101)の孔の中央に位置しており、その円筒状の床は、少なくとも部分的にピストンの前端面の外形に適合される。孔(106)は約0.1〜0.5ミリメーターの直径を有する。この孔(106)は、その直径の1〜5倍長い。それは円筒(101)の底の外部端面(103)の円筒状凹部(107)中で終わる。この端面(103)は、使用の安全性を増すために、接着リング(104)を追加的に備えることができる。
【0028】
円筒/ピストンユニット(100)の円筒(101)上に中心を合わせられたクロージャーキャップ(120)は、トリガーエレメント(82)の下方端面にのしかかっている。クロージャーキャップ(120)の少なくともほぼ円筒状の外面は、端面(58)近くのトリガーエレメント(82)の同様に円筒状である外面と同じ直径を有する。
【0029】
クロージャーキャップ(120)は、円筒/ピストンユニット(100)の少なくとも下方1/4を囲み、そしてしっかりと寄りかかるビーカーである。クロージャーキャップ(120)の一部は、そのポット領域(125)を用いて、円筒(101)の円筒状外壁、及びその上に固定された接着リング(104)を有する下方端面(103)の下方端にのしかかる。
【0030】
ポット領域(125)は、互いに反対向きに位置している二つの窓(126)を有する。窓(126)は、少なくともピストン(111)の直径に対応する幅を有する。窓(126)の下方端、つまり板状脚(129)の最も近くに位置する端部は、円筒床(108)の高さで配置される。窓(126)及びそれを透過する光の助けを借りて、なかんずく、円筒内容物にバブルがないことをチェックすることが可能である。板状脚(129)上に、アダプター開口部(127)として一体的に、例えば、円錐状のチューブセクションが形成される。アダプター開口部(127)は、その内壁として、少なくともセクションにおいてルアー(Luer)内部円錐を有する。
図1によると、アダプター開口部(127)はクロージャーストッパー(128)を用いて無菌状態で閉じられる。この目的のために、クロージャーストッパー(128)は、それを用いてそれがアダプター開口部(127)中に圧力ばめ(force fit)を用いて座し、そして同時に、無菌の、気密、かつ液密状態で、円筒(101)の凹部(107)も閉じる、例えば、ルアー外部円錐を有する。
【0031】
トリガーの前に安全性を与えるために、クロージャーキャップ(120)はバンデロール(90)を用いて注射器(4)のトリガーエレメント(82)に結合される。バンデロール(90)は接着ラベルとして構成される改ざん防止シールである。
【0032】
バンデロール(90)自身は、例えば、一つの側のいくつかの領域において接着剤で被覆された一片の紙及び/又はフィルムである。それは、各々の場合、目打ちを介して又は別の所定の破断点を介して、互いに分離することができる、例えば、三つの分離された片で構成される。
【0033】
図2は、そこに針注射器(150)が取り付けられた使い捨て注射器(4)を示す。説明用の実施態様において、針注射器(150)(
図5を参照)は、融合針(152)を持つガラス円筒(151)を有する。針(152)は、後者を破壊することによってのみガラス円筒(151)から分離することができる。針(152)の方向に向いているガラス円筒(151)の頭(156)は球状のキャップ形を有する。ピストン棒(154)及び作動ラム(155)を有するピストン(153)はガラス円筒(151)中を誘導される。針注射器(150)は、例えば、0.4ミリリッターの個々の用量の、例えば、活性物質含有注射溶液(1)Clexaneで充填される。
【0034】
図1に示されたクロージャーストッパー(128)は、
図2においては孔が開けられたストッパー(131)によって置き換えられており、その孔(132)は少なくとも針(152)と同じ長さである。適切な場合、孔が開けられたストッパー(131)は、無菌の膜を有することができ、そして針注射器(150)に対する改ざん防止シールとして役立つことができる。充填のために注射器(4)中にはめ込まれるときに、針(152)は膜を貫通する。例えば、孔が開けられたストッパー(131)は、例えば、外側円錐(134)を介して、圧力ばめ及び/又はフォームフィット(form fit)でクロージャーキャップ(120)に接着し、そして、バレル(101)の凹部(107)を無菌の、気密、かつ液密状態で閉じる。
図4において個々の部分として示されたこの二重円錐アダプター(131)は、例えば、合成熱可塑性プラスチック、例えば、ポリエチレンで作られる。しかしながら、それはステンレス鋼、ガラス、チタン、天然ゴムなどで作ることもできる。
【0035】
ストッパーの縦方向に向いている貫通孔(132)の断面は、例えば、少なくとも針の断面に対応している。ノズル孔(106)から離れて面しているその端部で、このルアーストッパーは凹部(133)、例えば、貫通孔(132)を囲んでいる内部円錐(133)を有する。例えば凹形のこの凹部(133)は、針注射器(150)の頭(156)を気密、かつ液密状態で受け、一方、貫通孔(132)は、針(152)の周りと最小の遊びで係合する。針注射器(150)は孔が開けられたストッパー(131)中に気密、かつ液密状態で固定され、又はその中にロックされる。
【0036】
使い捨て注射器(4)を使用することができるようにするために、円筒/ピストンユニット(100)が充填されなければならない。この目的のために、針注射器(150)中に貯蔵された全ての注射溶液(1)は、ピストン棒(154)を用いて針注射器ピストン(153)を押し込むことによって、又はポンプ棒(140)を用いてピストン(111)を引き戻すことによって、円筒(101)内に押し込まれるか吸引される。注射溶液(1)は容器内部(157)から出て、気密、かつ液密状態でそこに結合されている容器内部(110)内へと流れる。吸引によって充填するために、ポンプ棒(140)は、前方から後方の端部位置へとその全ストロークに沿って手動で引かれる。ピストン(111)の狭められた領域がシールエレメント(105)を通るときでさえ、後方シールエレメント(105)はカラー(119)上の位置に留まる。一旦、ピストン(111)がその後方位置に達すると、シールエレメント(105)は再びピストン(111)を半径方向にのしかかり、そして無菌のシールを供する。シールエレメント(114)及び(105)の組合せによっても、ピストン(111)のポンプ運動中に、無菌の容器内部(110)が確保される。
図3は、充填された使い捨て注射器(4)を示す。円筒(101)内に吸引されていた気泡が、公知の方法で、例えば、ピストン(111)又はピストン(153)を少し押し戻し、一方でクロージャーキャップ(120)を頂部で保持することによって除かれるときに、吸引手順は完了する。クロージャーキャップ(120)中に配置された二つの窓(126)はこの手順をチェックするために使用することができる。例えば目盛付きのポンプ棒(140)は、ここで、ピストン(111)の凹部(115)から外に回転することができ、そしてハウジング(10)から外に引くことができる。薬剤(1)の定められた個々の用量がここで円筒/ピストンユニット(100)の円筒(101)中に保存される。
【0037】
孔が開けられたストッパー(131)を有する針注射器(150)は、この時点でクロージャーキャップ(120)から、そして円筒(101)から取り外すことができる。
【0038】
円筒(101)が投入され、そして適切な場合、如何なる空気もそこから除かれた後、ノズル状孔(106)が凹部(107)と共に、無菌のストッパー(128)を用いて、無菌の、気密、かつ液密状態で、前方にて再び遮断されたとき、充填された注射器は、一時的に保存することができる。このストッパー(128)もクロージャーキャップ(120)中に圧力ばめ及び/又はフォームフィットで接着する。
【0039】
使い捨て注射器を作動させるために、切り取りバンデロール(90)が切り取りタブ(95)に助けられて、本体からずっと分離される。ここでクロージャーキャップ(120)はストッパー(128)を用いて円筒(101)から下方に引かれる(
図7を参照)。
【0040】
ここで注射器が注射部位上に取り付けられ、そしてスリーブ形のトリガーユニット(80)が注射部位の方向に押し下げられる。圧力棒(21)は、それらの実際の出発位置内に弾性的に外側へ曲がる。カム(22)は広げられた領域(83)内に端部(85)に亘って外側に滑る。ここでもはや変形しない圧力棒(21)は、ばねエレメント(50)の効果の下で、ピストン(111)が円筒(101)を空っぽにしながら突然下方に動くように、ピストン作動ラム(60)を開放する(
図8を参照)。ピストン(111)の前方への動きの間じゅう、狭められたピストン領域がそれを通過するにつれて、後方シールエレメント(105)がブレーキ作用に耐えられない故に、ピストンの摩擦が一時的に減少する。注射溶液(1)は注射部位内に送達される。