特許第5881981号(P5881981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881981
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】受動型量制限バルブ
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20160225BHJP
   F02M 55/00 20060101ALI20160225BHJP
   F16K 17/30 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   F02M55/02 350P
   F02M55/00 D
   F02M55/02 350A
   F16K17/30 A
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-144527(P2011-144527)
(22)【出願日】2011年6月29日
(65)【公開番号】特開2012-47170(P2012-47170A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2014年6月2日
(31)【優先権主張番号】10174196.5
(32)【優先日】2010年8月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501082602
【氏名又は名称】ヴェルトジィレ シュヴァイツ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス カレッリ
(72)【発明者】
【氏名】キース カイペルス
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−252860(JP,A)
【文献】 特開平11−280930(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02341087(FR,A1)
【文献】 特開平07−293394(JP,A)
【文献】 特開平11−082234(JP,A)
【文献】 国際公開第99/060266(WO,A1)
【文献】 特表2002−515565(JP,A)
【文献】 特開2002−285934(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/065698(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0296413(US,A1)
【文献】 特表2009−501863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
F16K 17/00−17/168
F16K 17/18−17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型ディーゼルエンジン用の受動型量制限バルブであって、
流体媒体用の入口と出口を有すると共に、入口と出口の間に配設されたバルブ室を有するバルブハウジングを備え、
入口側と出口側の間に閉塞要素をそれぞれ有するバルブ本体は、前記バルブ室に配置され、前記閉塞要素は、それぞれ、入口側と出口側のバルブシートと協動してシールを行うように構成され、
入口側の前記閉塞要素は、スプリングにより入口側の前記バルブシートに向かって付勢され、
前記バルブ本体に設けられるピストンを有し、前記ピストンの外側は、前記バルブ室の壁を通って摺動可能に導かれ、
流体媒体が流れることができる少なくとも1つの通路穴は、前記ピストンの端面に設けられており、
前記バルブ本体は、前記スプリングの内部に延在することを特徴とする、量制限バルブ。
【請求項2】
前記通路穴の長さの前記通路穴の直径に対する比は、各通路穴に対して4以下である、請求項1に記載の量制限バルブ。
【請求項3】
入口側の前記閉塞要素は、入口側の前記バルブシートと線接触するように構成される、請求項1又は2に記載の量制限バルブ。
【請求項4】
出口側の前記閉塞要素は、出口側の前記バルブシートと線接触するように構成される、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の量制限バルブ。
【請求項5】
入口側又は出口側の前記閉塞要素は、入口側又は出口側の前記バルブシートと協動する球面を有する、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の量制限バルブ。
【請求項6】
前記球面の曲率の中心は、前記バルブ本体の長手軸に対して偏心する、請求項5に記載の量制限バルブ。
【請求項7】
入口側又は出口側の前記バルブシートは、円錐形の表面を有する、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の量制限バルブ。
【請求項8】
入口側及び出口側の前記閉塞要素は、同一の設計である、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の量制限バルブ。
【請求項9】
前記通路穴は、径方向で前記スプリングの外側に配置される、請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の量制限バルブ。
【請求項10】
入口側の前記バルブシートと入口側の前記閉塞要素との間の連通を開くための圧力差は、2バールから20バールとなる、請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の量制限バルブ。
【請求項11】
前記ピストンは、別の部品として構成され、前記バルブ本体に接続される、請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の量制限バルブ。
【請求項12】
前記スプリングは、前記ピストンの前記端面で支持される、請求項1〜11のうちのいずれか1項に記載の量制限バルブ。
【請求項13】
請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の量制限バルブを有する大型ディーゼルエンジン。
【請求項14】
前記量制限バルブは、燃料用の高圧貯蔵部と燃料噴射ノズルとの間に配置される、請求項13に記載の大型ディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型ディーゼルエンジン用の受動型量制限バルブに関する。本発明は、更に、かかる受動型量制限バルブを有する大型ディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
大型ディーゼルエンジンは、2ストロークエンジン若しくは4ストロークエンジンとして構成されることができ、船舶用の駆動ユニットとして頻繁に使用され、若しくは、例えば電気エネルギの生成用の大型のジェネレータを駆動するため、固定動作でも使用される。
【0003】
コモンレールシステムは、この点で、現在の大型ディーゼルエンジンにおける燃料供給のために確立されている。この点、燃料は、アキュムレータ若しくはレールとも呼ばれる圧力貯蔵部内に高圧ポンプにより搬送される。それぞれのシリンダに燃料を噴射する全てのシリンダの燃料噴射ノズルには、次いで、圧力貯蔵部から加圧された燃料が供給される。
【0004】
この点、圧力貯蔵部と各燃料噴射ノズルの間にそれぞれの受動型量制限バルブを設けることは、知られている。この受動型量制限バルブは、燃料の事前設定可能な量がそれぞれの作業サイクルで燃料噴射ノズルに圧力貯蔵部から流れると直ぐに圧力貯蔵部とそれぞれの燃料噴射ノズルとの間の連通を自動的に閉じる目的を有する。これにより、漏れや他の種の損傷の場合に燃料が制御されない態様で若しくは望ましくない態様で出て行くのを防止することができる。更に、例えば整備作業に関して、エンジンがオフされ、燃料が、比較的低い圧力(例えば2バールから20バール)で循環されるとき、即ち、燃料システムの詰まりを避けるために貯蔵タンク及び圧力貯蔵部を通って循環されるとき、圧力貯蔵部と燃料噴射ノズルとの間の接続ラインを除去することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE 10 2005 012165 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1600から2000バールの非常に高い燃料の圧力に起因して、受動型量制限バルブは、非常に良好で信頼性の高いシール機能を有することが必要である。
【0007】
大型ディーゼルエンジン内の既知の受動型量制限バルブの問題点は、特に温度で誘起される燃料の粘性変動から生まれる。重油は、通常、大型ディーゼルエンジンの燃料として使用され、典型的には、十分に流動可能となり若しくは噴射可能となるために、その非常に高い粘性に起因して100度以上の温度まで加熱される必要がある。更に、しかしながら、十分低い粘性を有するマリンディーゼルオイルも使用され、これにより、エンジンは、通常、始動され、また、オフされる。典型的には、エンジンは、特に、港領域での船舶の移動中にマリンディーゼルオイルで動作され、遷移は、次いで、開けた海の重油の動作へと連続的になされる。しかし、マリンディーゼルオイルでの動作は、通常、重油での動作よりも燃料供給システムにおいて低温で生じる。また、これらの温度変動に起因して燃料の粘性に変動がある。しかし、これらの粘度の変化は、量制限バルブが閉じた後の燃料の通過量に影響する。例えば、量制限バルブが、第1粘性に対する特定の量に設定される場合、量制限バルブは、その他の粘性にて、より少ない量の燃料の後、若しくは、より多い量の燃料の後にだけ、既に閉じることがある。
【0008】
本発明は、この望ましくない作用に対する対策を提供することである。従って、本発明の目的は、バルブが自動に閉じた後の通過量が媒体の粘度に実質的に依存しない大型ディーゼルエンジン用の受動型量制限バルブを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的を満足する本発明の主題は、独立項の特徴により特徴付けられる。
【0010】
本発明によれば、大型ディーゼルエンジン用の受動型量制限バルブであって、
流体媒体用の入口と出口を有すると共に、入口と出口の間に配設されたバルブ室を有するバルブハウジングを備え、
入口側と出口側の間に閉塞要素をそれぞれ有するバルブ本体は、前記バルブ室に配置され、前記閉塞要素は、それぞれ、入口側と出口側のバルブシートと協動してシールを行うように構成され、
入口側の前記閉塞要素は、スプリングにより入口側の前記バルブシートに向かって付勢され、
前記バルブ本体に設けられるピストンを有し、前記ピストンの外側は、前記バルブ室の壁を通って摺動可能に導かれる、受動型量制限バルブが提案される。流体媒体が流れることができる少なくとも1つの通路穴は、前記ピストンの端面に設けられる。
【0011】
バルブ室は、前室と後室へとピストンにより分割され、ピストンの端面の少なくとも1つの通路穴は、前室と後室の連通を画成する。通路穴は、ピストンの端面に設けられるので、それは、非常に短く構成されることができ、従って、その流れ抵抗は、媒体の粘度から実質的に独立である。これにより、量制限バルブが自動に閉じた後の通過量が媒体の粘度から独立することになる。
【0012】
粘度からの独立性は、特に、通路穴の長さの前記通路穴の直径に対する比は、各通路穴に対して4以下であるときに保証される。
【0013】
特に良好なシール機能は、入口側の前記閉塞要素は、入口側の前記バルブシートと線接触するように構成されるとき、本発明による量制限バルブを使用することで達成される。
【0014】
同じ理由で、好ましくは、出口側の前記閉塞要素は、出口側の前記バルブシートと線接触するように構成される。
【0015】
線接触は、特に、入口側又は出口側の前記閉塞要素が、入口側又は出口側の前記バルブシートと協動する球面を有することで、容易に実現されることができる。
【0016】
この構成において、好ましい対策は、球面の曲率の中心が、前記バルブ本体の長手軸に対して偏心することである。球面のより小さい曲率は、このようにして実現されることができ、これにより、線接触の長さが増加する。開く圧力、より正確には、開くために要する圧力差は、これにより小さい値に設定することができる。
【0017】
好ましい実施例では、入口側又は出口側の前記バルブシートは、円錐形の表面を有する。特に良好なシール作用は、これにより達成されることができる。
【0018】
入口側及び出口側の前記閉塞要素が同一の設計である場合は、その2つの閉塞要素の若しくはバルブ本体の自動中心出しに関して好ましい。
【0019】
好ましい実施例によれば、バルブ本体は、前記スプリングの内側に延在する。これは、特に簡易な設計構造的である。
【0020】
実際の局面では、各通路穴が径方向で前記スプリングの外側に配置されることが効果的である。
【0021】
入口側の前記バルブシートと入口側の前記閉塞要素との間の連通を開くための圧力差が、2バールから20バールとなる場合に、実際に効果的であることが証明された。これは、量制限バルブは、燃料が循環動作で貯蔵容器と圧力貯蔵部の間で循環されるときに、閉じた状態のままであるべきであるためである。圧力貯蔵部の圧力は、通常、循環動作で、2バールから20バール、例えば10バールとなる。この際、入口側の前記バルブシートと入口側の前記閉塞要素との間の連通を開くための圧力差は、幾分高く、例えば15バールに設定され、従って、循環動作で開動作が起きない。
【0022】
製造上、好ましくは、ピストンは、別の部品として構成され、前記バルブ本体に接続される。
【0023】
更に効果的には、スプリングは、ピストンの前記端面で支持される。
【0024】
本発明による量制限バルブを有する大型ディーゼルエンジンが本発明により更に提案される。
【0025】
量制限バルブは、好ましくは、燃料用の高圧貯蔵部と燃料噴射ノズルとの間に配置される。
【0026】
更に効果的な対策及び本発明の好ましい実施例は、従属項から導かれる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による量制限バルブの一実施例の長手方向の断面図。
図2】大型ディーゼルエンジンのコモンレールシステムの概略図。
図3図1の実施例のバルブ本体の図。
図4】ピストンが配置された図1の実施例のバルブ本体の図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の詳細な説明を行う。尚、寸法どおりで無く部分的に断面にて概略図で示されている。
【0029】
図1は、長手方向の断面図で、参照符号1により全体として指示される本発明による量制限バルブの一実施例を示す。断面は、量制限バルブ1の長手軸Aに沿ってなされる。
【0030】
量制限バルブ1は、受動型バルブであり、即ち制御信号によりアクティブに制御若しくは作動されないことを意味し、例えば、むしろ、支配する圧力差に応じて自身で若しくは自動的に開閉する。
【0031】
受動型量制限バルブ1は、バルブハウジング2を備え、バルブハウジング2は、ここでは2つの部品で構成され、下部21とカバー若しくは上部22を含む。上部22及び下部21は、互いに複数のネジ23により固定される。バルブハウジング2は、流体媒体用の入口3と出口4を有する。長手軸Aの方向に延在するバルブ本体6が内部に配置されるバルブ室5は、入口3と出口4の間のバルブハウジング2内に設けられる。
【0032】
図3は、より理解しやすいようにバルブ本体6のその他の概略図を示す。その2つの軸端は、2つの閉塞要素63,64、即ち、入口側の閉塞要素63及び出口側の閉塞要素64により形成される。これらの閉塞要素63,64は、それぞれ、入口側のバルブシート31及び出口側のバルブシート41と協動してシールを行うように構成される。双方のバルブシート31,41は、バルブハウジング2内に、即ち、出口側のバルブ室5の端部若しくは入口側のバルブ室5の端部にて設けられる。バルブシート31,41は、バルブハウジング2内に直接的に形成されることができ、若しくは、別の部品として製造され、バルブハウジング2内の対応する切欠き部内に挿入され、例えば収縮により、そこで固定される。バルブシート31,41を別の部品として製造することは、用途に応じてより効果的であり、これは、材料に関するより高い柔軟性がそこから生まれるためである。この際、バルブシート31,41に対して、バルブハウジング2とは異なる材料から製造されることができる。
【0033】
本実施例では、入口側と出口側の双方のバルブシート31,41は、それぞれ、円錐形の表面32,42を有し、円錐形の表面32,42は、それぞれ、入口側と出口側の閉塞要素63,64と協動する。
【0034】
ピストン7は、バルブ本体6に設けられ、その外径に関して、外側がバルブ室5の壁を通って摺動可能に案内されるように、寸法付けられる。僅かな隙間は、ピストン7の外側とバルブ室5の壁の間に設けられる。図4は、より理解しやすいようにピストン7を備えるバルブ本体6の図を示す。ピストン7は、略円筒状に構成され、そのシリンダ軸が長手軸Aに一致するように配置される。ピストン7は、入口3に面する側に端面71を有し、ピストン7の他方の軸方向の端部は開口する。
【0035】
バルブ本体6及びピストン7は、1ピースで構成されることができる。しかし、通常、バルブ本体6及びピストン7を2つの別の構成要素として製造し、続いてそれらを接続することは、技術的な生産の観点からより好ましい。ピストン7は、その特性を理想的にそれぞれの用途に適合し若しくは製造を簡易化するため、例えば異なる材料の1つ以上の部品から製造されることができる。
【0036】
ここで説明される実施例では、ピストン7の端面71は、バルブ本体6を受け入れる機能を果たす中心孔72を備える。バルブ本体6は、端面71に対する当接部として機能するフランジ状の突起65を有する。バルブ本体6は、フランジ状の突起65が内側から端面71に当接するまで端面71の中心孔72を通って内側から押される。この点、寸法は、互いに対して適合され、従って、入口側のバルブ本体6の閉塞要素63は、ピストン7の端面71を越えて完全に突出する(図4参照)。ここで説明される実施例では、ピストン7は、バルブ本体6上に収縮される。
【0037】
本発明によれば、軸方向で端面71を通って長手軸Aに平行に延在する少なくとも1つの通路穴73は、ピストンの端面71内に設けられる。本実施例では、複数の通路穴73が設けられる。
【0038】
各通路穴73は、直径dと長さLを有し、直径dは、流れ抵抗に対して決定的な直径を意味し、即ち概して、通路穴73の最も小さい直径である。
【0039】
更に、複数の穴74は、ピストン7のジャケット表面に設けられ、それぞれ、ピストン7の壁を通って径方向に延在する。この点、径方向は、軸方向に垂直な方向を意味し、軸方向は、長手軸Aにより決定される。流体媒体は、例えばピストン7の潤滑を提供するために、穴74を通って出てバルブ室5の壁に到達することができる。
【0040】
特に図1に示すように、バルブ本体6は、入口側の閉塞要素63が入口側のバルブシート31に押圧されるように、スプリング8により入口側のバルブシート31に向かって付勢される。スプリング8は、軸方向に延在し、バルブ本体6と共軸であり、バルブ本体6は、スプリング8の内側に延在する。スプリング8は、バルブハウジング2にて、出口側でバルブシート41まわりに支持される一方、ピストン7の端面にて内側に支持される。
【0041】
更なる詳細を説明する前に、量制限バルブ1の動作モードが先ず説明されるべきである。量制限バルブ1は、大型ディーゼルエンジンのコモンレールシステムに適している。現代の大型ディーゼルエンジンでは、通常、例えば燃料噴射用、ガス交換用若しくは補助システム用に、複数のコモンレールシステムが存在する。以下、参照は、燃料噴射の用途に対してなされる。大型ディーゼルエンジンは、通常、燃料として重油で動作され、即ち流体媒体はこの場合重油である。更なる燃料として、マリンディーゼルオイルは、しばしば、使用され、特に、港内のエンジン動作用に使用され、即ち船舶が港を出発する前若しくは港領域内に帆走するとき、大型ディーゼルエンジンは、典型的には、マリンディーゼルオイルで動作される。マリンディーゼルオイルでの動作時の燃料の動作温度は、通常、重油動作時よりも顕著に低い。燃料の粘性の変動は、これからも生まれる。
【0042】
本発明による量制限バルブ1は、重油に適しており、それ故に、大型ディーゼルエンジンの燃料噴射のコモンレールシステムで使用されることができる。図2は、かかる大型ディーゼルエンジンのコモンレールシステムの概略図を示す。システムは、高圧ポンプ50を含み、これにより、燃料、即ち重油は、アキュムレータ若しくはレールとも呼ばれる圧力貯蔵部51内へ搬送される。この圧力貯蔵部51は、通常、略シリンダヘッドのレベルでエンジンに沿って延在する管状の構成要素として構成される。ライン52は、圧力貯蔵部から分岐し、燃料噴射ノズル53に至り、それらに重油を供給する。図2では、理解のために十分である理由から、かかる1つのライン52及び1つの燃料噴射ノズル53のみが示されている。圧力貯蔵部内の重油は、噴射圧に略対応する圧力である。この圧力は、例えば1600バールであるが、例えば2000バールまでも、より高くすることもできる。例えば圧力貯蔵部51に直接若しくは圧力貯蔵部51上に取り付けられる、量制限バルブ1は、圧力貯蔵部51とライン52の間に設けられる。量制限バルブ1は、その入口3が圧力貯蔵部51に連通しその出口4がライン52に連通するように、配置される。
【0043】
燃料噴射ノズル53がシリンダ内に燃料を依然として噴射していない限り、量制限バルブ1は、図1に示す閉位置であり、この場合、入口側の閉塞要素63は、入口側のバルブシート31と協動してシールし、重油が量制限バルブ1を通過できないようにする。この状態では、略同一の流体圧は、出口4と入口3とで重油を介して存在する。スプリング8は、入口側のバルブシート31内へとシールする態様で入口側の閉塞要素63を付勢する。
【0044】
燃料噴射ノズル53がシリンダの燃焼スペース内に重油を噴射し始めると直ぐに、ライン52内の圧力は落ちる。これは、バルブ本体6が図示(図1)に従いピストン7と共に上方へ動く結果を有し、これにより、入口側の閉塞要素63は、入口側のバルブシート31から上昇して離れ、従って、圧力貯蔵部51からの重油は、通路穴73、量制限バルブ1を通過でき、ライン52内に流入することができる。入口側のバルブシート31で連通を開くために必要とされる圧力差は、以下で更に説明される異なる対策により設定されることができる。この圧力差は、効果的には、2バールから20バールまでの値に設定される。圧力差は、循環動作中の圧力貯蔵部51内の圧力よりも大きい圧力に設定される。
【0045】
入口側のバルブシート31でのバルブ接続が開である場合、ピストン7のストロークは、重油の噴射される量に依存し、少なくとも近似的に比例する。噴射プロセスが終了すると直ぐに、即ち燃料噴射ノズル53が閉じられると直ぐに、ライン52内の圧力が再び上昇する。これによりピストン7が動き、スプリング8の張力を介して、図示(図1)に従い下方に動き、その際、重油は、通路穴73を通って流れ出ることができる。この動きは、入口側の閉塞要素63が再び入口側のバルブシート31内にシールする態様で付勢されるときに終了する。
【0046】
ピストン7は、最大として決定された重油の量が量制限バルブ1を通過したときに最大ストロークに到達する。量制限バルブ1は、通常、正規の若しくは正常な噴射プロセス時に、ピストン7の最大ストロークは、出口側のバルブシート41内に出口側の閉塞要素64をシール態様で付勢するには不十分である。
【0047】
例えば、量制限バルブ1の下流側で燃料噴射ノズル53の漏れ若しくは異常が生じた場合、正常な噴射プロセスよりも多くの重油が量制限バルブ1を通って流れる。これは、ピストンが、出口側のバルブシート41内に出口側の閉塞要素64をシール態様で付勢されるまで、図示(図1)に従いその上方向の動きを継続する結果を有する。これがなされると直ぐに、更なる重油は、ライン52内へと量制限バルブ1を通って流れることができなくなる。
【0048】
例えば、整備作業の過程で、燃料噴射ノズル53若しくはライン52を解体することが望ましいことがある。大型ディーゼルエンジンは、この目的のためにオフされる。燃料は冷却せず、従って非常に粘性があり若しくはほとんど固体であり、燃料供給系を塞ぐので、図2に示されない逆流ライン及び圧力貯蔵部51を通って燃料容器から燃料を循環させることが通常である。この循環動作は、通常、図示されない粗引きポンプでのみ生じ、即ち、高圧ポンプ50は、この循環動作では作動状態にない。圧力貯蔵部51内の圧力は、循環動作において、典型的には、2バールから20バールとなり、例えば10バールとなる。
【0049】
圧力貯蔵部51内の圧力がこの値まで降下した場合、ライン62は、減圧され、次いで、解体されることができる。量制限バルブ1の出口4での圧力は、それにより降下する。しかし、入口側のバルブシート31と入口側の閉塞要素63の間の連通を開くための圧力差は、循環動作時の圧力よりも大きくなるように設定され、この例では、この圧力差は、約15バールに設定されるので、ピストンは動かず、むしろ、ピストンは、圧力の無いラインにより図1に示す閉位置に留まる。
【0050】
かかるライン52の解体を可能な限り簡易化するために、効果的には、入口側のバルブシート31と入口側の閉塞要素63の間の連通を開くための圧力差は、2バールから20バールの値に設定され、即ち、循環動作時の圧力貯蔵部51の圧力よりも大きい値に設定される。これにより、重油は、簡易な態様で再循環されることができる。2バールから20バールの圧力差が意味するところは、入口側の閉塞要素63は、図示(図1)に従い底部の端面71の側の圧力が、量制限バルブ1の入口3の圧力よりも、2バールから20バールの間のこの値だけ小さい場合にだけ、開くことである。
【0051】
本発明による量制限バルブ1の主要な局面は、少なくとも1つの通路穴73がピストン7の端面71に設けられることである。この対策に起因して、燃料が通って流れる(若しくは逆方向に戻される)各通路穴73は、非常に短く維持できるので、これにより、通路穴73の流体力学上の流れ抵抗は、燃料の粘性から独立する。従って、量制限バルブが設定される燃料の量が、燃料の粘性の変動時にも一定に維持されることが保証される。それ故に、量制限バルブ1が特定の最大の量に設定される場合、燃料の粘性が変化し若しくは粘性が変動したとき、この最大値に到達する燃料の量も一定となる。この粘性からの独立性は、特定の値に対する非常に正確で不変の燃料の制限を達成できることを意味し、この値は、また、粘性の変動時に如何なる変化も受けない。
【0052】
通路穴の流体力学上の流れ抵抗は、通って流れる媒体の粘性に独立しているので、通路穴73の長さLの通路穴73の直径dに対する比がせいぜい4であるときに特に効果的であることが証明された。この点で直径dは、流れ抵抗に対して決定的な直径dを意味し、概して、長さLに亘って直径が変化する場合は、最小直径である。
【0053】
圧力貯蔵部51内の動作圧は非常に大きく、例えば1600バール若しくは2000バールまでもなるので、非常に良好なシール作用は、入口側のバルブシート31と入口側の閉塞要素63の間若しくは出口側のバルブシート41と出口側の閉塞要素64の間で達成されることが、必然的に重要である。この目的のため、入口側の閉塞要素63又は出口側の閉塞要素64、特には入口側の閉塞要素63及び出口側の閉塞要素64の双方が、入口側のバルブシート31又は出口側のバルブシート41とそれぞれ線接触するように構成されることが、特に効果的であることが証明されている。関連する同士間の、かかる線接触は、非常に効率的であり、特に漏れが無い。線接触は、更に、ピストン7の回転に関して非常に許容性があり、即ち高いシール作用は、ピストンの軽い回転や向きの誤差があっても保証される。
【0054】
本実施例では、線接触は、入口側のバルブシート31及び出口側のバルブシート41の双方で実現され、入口側の閉塞要素63及び出口側の閉塞要素64のそれぞれは、入口側又は出口側のバルブシート31,41のそれぞれにそれぞれの円錐表面32又は42とそれぞれ協動する球面631又は641を有する。
【0055】
軸方向に関する線接触の位置は、それぞれの連通を開くために必要とされる圧力差に影響する。例えば、入口側のバルブシート31では、全体の外周に亘って測定される線接触の長さが長くなると、図1の絵に関して、軸方向に関して線接触がより高くなる。線接触の長さが大きいほど、連通を開くために必要とされる圧力差が小さくなる。それぞれの連通が開かれる圧力差は、それ故に、それぞれ、球面631又は641の線接触の位置に亘って設定されることができる。
【0056】
好ましい圧力差は、2バールから20バールで比較的小さいので、線接触の長さが大きいことが望ましい。これは、それぞれ、球面631又は641の曲率の中心Mがバルブ本体6の長手軸Aに対して偏心することにおいて特に保証されることができる。これは、曲率の中心M、ここでは、球面631又は641がそれぞれある当該球の中心が、長手軸Aに平行で長手軸Aから間隔eを有する直線K上にあることを意味する。曲率の中心が長手軸A上にある場合よりも、非常に小さい曲率は、この対策により実現されることができる。
【0057】
多くの場合、曲率は、実際の性能の局面下では比較的小さいが、効果的には、球面631及び641と円錐面32及び42間でそれぞれ線接触が保証されるほど大きくあるべきである。それぞれの線接触の長さ及びそれに伴い開くのに要する圧力差は、所与の曲率で間隔eの大きさを介して設定することができる。
【0058】
それぞれの連通を開くために必要とされる圧力差に関して影響を与えることができる若しくは設定することができる更なる手段は、弾性特性の選択、特にスプリング8の弾性係数の選択である。
【0059】
入口側の閉塞要素63及び出口側の閉塞要素64が、少なくとも、それぞれのバルブシート31,41と協動する表面に関して同一に構成されていることは、更に効果的な対策である。バルブ本体6の自動中心出し作用は、この対称性により実現されることができる。バルブ本体6の簡易な中心出しは、ピストン7のジャケット表面とバルブ室5の壁との間の僅かな隙間により達成される。
【0060】
入口側のバルブシート31と入口側の閉塞要素63の間、及び、出口側のバルブシート41と出口側の閉塞要素64の間の線接触は、それぞれ協動する表面の他の幾何的な実施例により実現されることもできる。例えば、協動する表面の双方は、それぞれ、球面として構成されることができ、若しくは、協動する表面の双方は、それぞれ、特には異なる円錐角を持って、円錐面として構成される。
【0061】
上述の如く、全ての通路穴73は、好ましくは、軸方向に関してスプリング8の外側にある、即ち、通路穴73の中心軸と長手軸Aとの間の間隔は、各通路穴に関して、ピストンの端面71の外面でのそれぞれの通路穴73の半径にスプリング8の外径の半分を足したものよりも大きい。
【符号の説明】
【0062】
1 量制限バルブ
2 バルブハウジング
3 入口
4 出口
5 バルブ室
6 バルブ本体
7 ピストン
8 スプリング
31、41 バルブシート
51 圧力貯蔵部
63,64 閉塞要素
71 端面
73 通路穴
図1
図2
図3
図4