特許第5882021号(P5882021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5882021ゴム組成物及び空気入りタイヤ、並びに微粒子ゴム粉末の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882021
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ゴム組成物及び空気入りタイヤ、並びに微粒子ゴム粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20160225BHJP
   C08C 19/06 20060101ALI20160225BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20160225BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20160225BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20160225BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08C19/06
   C08L23/26
   C08J3/12 ZCEQ
   C08L101/00
   B60C1/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-229963(P2011-229963)
(22)【出願日】2011年10月19日
(65)【公開番号】特開2013-87222(P2013-87222A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(72)【発明者】
【氏名】川合 伸友
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−298232(JP,A)
【文献】 特開2004−176013(JP,A)
【文献】 特開平08−217855(JP,A)
【文献】 特表2004−514041(JP,A)
【文献】 特開昭62−230838(JP,A)
【文献】 特開昭49−041448(JP,A)
【文献】 米国特許第05569690(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
B60C 1/00
C08C 19/06
C08J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄架橋性ゴムからなるベースポリマー100質量部に、平均粒子径が10μm以下であり粘度平均分子量が500,000〜1,500,000であるエポキシ化天然ゴムからなる微粒子ゴム粉末1〜300質量部を配合してなり、前記微粒子ゴム粉末が前記ベースポリマー中に分散したゴム組成物。
【請求項2】
前記微粒子ゴム粉末のエポキシ化率が5モル%以上50モル%以下であることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物
【請求項3】
前記微粒子ゴム粉末のエポキシ化率が50モル%超100モル%以下であることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなるゴム部分を有する空気入りタイヤ。
【請求項5】
DRCを70〜85質量%に調製した天然ゴムラテックスを、過酸化水素を用いてエポキシ化することで微粒子化することを特徴とするエポキシ化天然ゴムからなる微粒子ゴム粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物などのポリマー組成物に配合するのに好適な微粒子ゴム粉末に関し、また、それを用いたポリマー組成物、及び空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマー組成物、とりわけゴム組成物においては、物性を改良するために、複数種のゴムポリマーを混ぜ合わせたブレンド系としたり、カーボンブラックやシリカ、その他の有機/無機フィラーを混ぜ合わせたりする手法が知られている。
【0003】
また、耐摩耗性や発熱性などを改良するために、ポリブタジエンゴムゲルやスチレンブタジエンゴムゲルなどの微粒子ゴム粉末をゴム組成物に配合することが提案されている(下記特許文献1〜3参照)。これらの従来技術では、乳化重合等により得られた合成ゴムを基にした微粒子ゴム粉末が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−057038号公報
【特許文献2】特許第3606860号公報
【特許文献3】特開2006−257160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のように単純にゴムポリマーを練り合わせて架橋するブレンド系では、相溶性の悪い(即ち、溶解度パラメータSP値が極端に違う)ゴムポリマー同士の場合、一方のゴムポリマーが他方のゴムポリマーに微分散化した均一な相構造を得ることは難しく、所望の物性が得られないという問題がある。また、カーボンブラックやシリカ、その他の有機/無機フィラーについては、ゴムポリマーに対する相溶性に劣り、物性改良を行うためには表面処理やカップリング剤などが必要になる場合がある。
【0006】
一方、上記従来の微粒子ゴム粉末は、合成ゴムの乳化重合品からなるものであるため、分子量が比較的小さく、物性面で劣るという問題があり、また、高分子量化しようとすると、粒径が大きく、かつバラツキが大きくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、ゴム組成物などのポリマー組成物に配合して用いた場合に、その物性を改良することができる微粒子ゴム粉末の製造方法、及び該微粒子ゴム粉末を用いたゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゴム組成物は、硫黄架橋性ゴムからなるベースポリマー100質量部に、平均粒子径が10μm以下であり粘度平均分子量が500,000〜1,500,000であるエポキシ化天然ゴムからなる微粒子ゴム粉末1〜300質量部を配合してなり、前記微粒子ゴム粉末が前記ベースポリマー中に分散したものである。本発明に係る空気入りタイヤは、該ゴム組成物を用いてなるゴム部分を有するものである。
【0009】
本発明はまた、DRCを70〜85質量%に調製した天然ゴムラテックスを、過酸化水素を用いてエポキシ化することで微粒子化することを特徴とするエポキシ化天然ゴムからなる微粒子ゴム粉末の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る微粒子ゴム粉末であると、ポリマー組成物に配合することで良好な物性を付与することができる。特に、空気入りタイヤに用いられる場合、微粒子ゴム粉末のエポキシ基量の設定により、粘弾性や硬度等の制御が可能となり、例えばウェットスキッド性や発熱性等を改良することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0012】
[微粒子ゴム粉末]
本発明に係る微粒子ゴム粉末は、エポキシ化天然ゴムからなるものである。このように天然由来となる天然ゴムを使用し変性したものであるので、高分子量である天然ゴムの特性を保持した微粒子ゴム粉末が得られ、物性改良効果に優れる。
【0013】
また、エポキシ化率を変化させることにより、ガラス転移点や結晶性が変化するので、エポキシ化率によって、微粒子ゴム粉末の硬度や、ポリマー組成物の粘弾性を制御することができる。エポキシ化率は100モル%以下の範囲内で設定することができ、エポキシ化率が低いほど、ゴムポリマーに近い性質を持ち、ゴム組成物中においてゴムポリマーを代替するものとして用いることができる。逆に、エポキシ化率が高いほど、硬く樹脂に近づくため、ゴム組成物中においてフィラーを代替するものとして用いることができる。ここで、エポキシ化率は、全イソプレンユニットのモル数に対するエポキシ基のモル数の比率であり、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)により、イソプレン二重結合とエポキシ基結合部のプロトンピークの比によって定量される。
【0014】
例えば、エポキシ化率が5〜50モル%の場合、微粒子ゴム粉末をゴムポリマー代替として用いることにより、従来の練り込み/架橋を行うポリマーブレンド系ではなし得ない、均一相を持った擬似相構造とすることができる。すなわち、微粒子ゴム粉末は元々所定の粒子径を持つ微粒子状をなしているので、ベースポリマーを海相とし、これに微粒子ゴム粉末を島相として均一に分散した海島構造を形成することができる。そのため、動的粘弾性、引張などの物理特性を改良することができる。このようにゴムポリマー代替として用いる場合、エポキシ化率は10〜40モル%であることがより好ましい。
【0015】
また、エポキシ化率が50モル%を超え100モル%以下の場合、微粒子ゴム粉末をフィラー代替として用いることにより、従来のゴムポリマー/フィラーの混合系ではなし得ない、優れた物性を付与することができる。すなわち、微粒子ゴム粉末は、天然ゴムからなるものであり、カーボンブラックやシリカ等のフィラーに比べて、ゴムポリマーに対する相性がよいので、凝集を抑えることができ、そのため発熱性を改良することができる。また、引張特性を改良することもできる。また、従来のフィラーに比べて比重が小さく軽量であるため、ポリマー組成物の軽量化を図ることができる。このようにフィラー代替として用いる場合、エポキシ化率は60〜80モル%であることがより好ましい。
【0016】
微粒子ゴム粉末を構成するエポキシ化天然ゴムの分子量は、特に限定されないが、粘度平均分子量が100,000〜1,500,000であることが、混練の際に周りのポリマーに関係なく形状を保持できる点から好ましい。粘度平均分子量は、より好ましくは500,000〜1,300,000であり、更に好ましくは800,000〜1,200,000である。
【0017】
微粒子ゴム粉末の平均粒子径は10μm以下であることが好ましい。平均粒子径が10μmを超えるものでは、補強性に劣り、ポリマー組成物に用いたときに、引張強度や伸び、耐摩耗性等が不十分となる。微粒子ゴム粉末の平均粒子径の下限は、特に限定されないが、0.001μm以上であることが好ましい。微粒子ゴム粉末の平均粒子径は、より好ましくは0.01〜5μmであり、更に好ましくは0.1〜1μmである。ここで、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される値である。
【0018】
エポキシ化天然ゴムからなる微粒子ゴム粉末は、天然ゴムラテックスをエポキシ化することにより得られる。詳細には、乳化状態である天然ゴムラテックスを、DRC(Dry Rubber Content)で80質量%程度(例えば70〜85質量%)に調製(濃縮)し、これを用いて、過酸化水素によりエポキシ化することで、乳化粒子中のエポキシ基とポリマー間の水素結合により、微粒子状態を作ることができ、そこに水を再度加えることで安定した微粒子ゴムラテックスが得られ、これを乾燥することで微粒子ゴム粉末を得ることができる。DRCについては上記濃度に限定するものではないが、ラテックス濃度が低い場合は、得られる微粒子が少なく、通常のエポキシ化天然ゴムとなってしまう。また、上記濃度よりも高くなると、乳化状態が不安定になるため、薬品や温度環境等により微粒子が破壊されやすくなる。
【0019】
このようにして得られるエポキシ化天然ゴムの微粒子ゴム粉末は、内部架橋で粒子化されている割合は低く、分子同士の高度な絡み合いで粒子化されている。そのため、この微粒子ゴム粉末は、トルエンに溶解し、従ってトルエン膨潤指数が大きいので、この点でも、特許文献1〜3に記載されたゴムゲルとは異なる。しかも、このように内部架橋の割合が低いにも関わらず、この微粒子ゴム粉末は熱可塑性を失っており、ゴムポリマーとの混合時にもその微粒子状の形態をそのまま保持する。なお、微粒子ゴム粉末は、上記のように内部架橋されていない場合に限定されるものではなく、硫黄や過酸化物等を用いて内部架橋を形成してもよく、その場合、架橋度を上げるほど、トルエン膨潤指数は小さくなる。
【0020】
[ポリマー組成物]
本発明に係るポリマー組成物において、ベースポリマーとしては、特に限定されず、ゴムポリマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂など、様々なポリマーを用いることができる。例えば、フィルムやシートなどの用途の場合、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの各種熱可塑性樹脂をベースポリマーとして用いることができる。
【0021】
好ましくは、ベースポリマーとしてゴムポリマーを用いることであり、この場合、ポリマー組成物はゴム組成物とも称される。ゴムポリマーとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴムなどの非硫黄架橋性ゴムでもよいが、好ましくは、硫黄架橋性ゴムを用いることである。硫黄架橋性ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系ゴムの他、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンジエン共重合体ゴム(EPDM)などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。また、これらに一部官能基を付与した変性ポリマーに対しても同様の効果が得られる。これらの中でも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、及びポリブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましく用いられる。更に好ましくは、天然ゴム及び/又はポリイソプレンゴムであり、これらのゴムは、エポキシ化天然ゴムからなる上記微粒子ゴム粉末との相溶性に優れることから、微粒子ゴム粉末を用いることによる物性向上効果をより高めることができる。
【0022】
上記微粒子ゴム粉末の配合量は、特に限定されないが、通常、ベースポリマー100質量部に対して、1〜300質量部にて配合されることが好ましい(ここで、ベースポリマーの配合量である100質量部には、微粒子ゴム粉末の配合量は含めない)。微粒子ゴム粉末の配合量は、より好ましくは、5〜200質量部であり、更に好ましくは、10〜100質量部である。微粒子ゴム粉末の配合量が300質量部を超えると、微粒子ゴム粉末をポリマー代替として考えた場合でも、微粒子ゴム粉末に対するベースポリマーの比率が低くなりすぎて、ベースポリマーによって微粒子ゴム粉末を繋ぎ止めることが難しくなり、形状を維持することが困難となる。
【0023】
特に、該ポリマー組成物をタイヤ用ゴム組成物とする場合、微粒子ゴム粉末の配合量は、ベースポリマーである硫黄架橋性ゴム100質量部に対して、5〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜100質量部である。微粒子ゴム粉末の配合量が5質量部未満であると、その添加効果が不十分となるおそれがある。逆に、200質量部を超えると、微粒子ゴム粉末をゴムポリマー代替として用いた場合に、島相となる微粒子ゴム粉末の量が相対的に多くなって、均一相を持った擬似層構造をとりにくくなり、また、微粒子ゴム粉末をフィラー代替として用いた場合には、フィラー分の配合量が多くなりすぎて、伸びや引裂強度が著しく低下するおそれがある。
【0024】
本発明に係るポリマー組成物には、カーボンブラックやシリカなどのフィラーを配合することができる。フィラーの配合量は、特に限定されないが、ゴム組成物、とりわけタイヤ用ゴム組成物の場合、ベースポリマー(硫黄架橋性ゴム)100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量部である。
【0025】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SAFクラス(N100番台)、ISAFクラス(N200番台)、HAFクラス(N300番台)、FEF(N500番台)、GPF(N600番台)(ともにASTMグレード)のものなどが挙げられる。また、シリカとしても、特に限定されず、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ、沈降シリカなどの二酸化ケイ素構造を持つものが挙げられ、特に含水珪酸を主成分とする湿式シリカを用いることが好ましい。なお、フィラーとしてシリカを配合する場合、スルフィドシランやメルカプトシランなどのシランカップリング剤を併用することが好ましく、シランカップリング剤は、通常、シリカ100質量部に対して2〜25質量部にて用いることができる。
【0026】
カーボンブラック及びシリカ以外のフィラーとしては、例えば、酸化チタン、クレー、タルク、炭酸カルシウムなどが挙げられる。なお、以上挙げたカーボンブラックやシリカ、更にはその他のフィラーは、いずれか一種を単独で用いてもよく、あるいはまた複数種のフィラーを組み合わせて持ちしてもよい。
【0027】
本発明に係るポリマー組成物には、上記の成分の他に、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫剤、加硫促進剤など、種々の添加剤を任意に配合することができる。ベースポリマーとして硫黄架橋性ゴムを用いるゴム組成物においては、通常、加硫剤として硫黄や硫黄含有化合物等が配合される。特に限定するものではないが、加硫剤の配合量は上記硫黄架橋性ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、この場合、加硫剤とともに加硫促進剤も通常は配合され、その配合量としては、上記硫黄架橋性ゴム100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。なお、上記のように微粒子ゴム粉末をゴムポリマー代替として用いる場合、ゴム組成物の加硫時に微粒子ゴム粉末の内部でも架橋が行われ、また微粒子ゴム粉末と硫黄架橋性ゴムとの間でも架橋が行われる。そのため、この場合、硫黄架橋性ゴムと微粒子ゴム粉末の合計量を基準にして、該合計量100質量部に対して、加硫剤を0.1〜10質量部配合することが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部配合することである。
【0028】
上記ポリマー組成物の調製方法は、特に限定されず、通常の混合方法を用いて調製することができる。例えば、ポリマー組成物がゴム組成物の場合、通常のバンバリーミキサーやニーダーなどのゴム用混練機を用いて混練することで調製され、所定形状に成形し架橋させることで、タイヤ、防振ゴム、ベルトなどの各種ゴム製品を得ることができる。好ましくは、タイヤ用ゴム組成物して用いることであり、常法に従い、例えば140〜180℃で加硫成形することにより、空気入りタイヤのトレッドゴムやサイドウォールゴムなどの様々なゴム部分を形成することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
微粒子ゴム粉末についての平均粒子径、粘度平均分子量及び比重の測定は以下により行った。
【0031】
・平均粒子径:光源として赤色半導体レーザ(波長680nm)を用いる島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置「SALD−2200」により測定し、粒度分布の平均値を平均粒子径とした。
【0032】
・粘度平均分子量:粘度はLAUDA社製「粘度測定器PVS1」により測定した。標準試料として1,4−ポリイソプレン(分子量:600、1500、7500、21000、80000、210000、750000、1000000の8種類)を用い、粘度法による[η]=KMαの係数K、αを算出し(ここで、[η]は固有粘度、Mは分子量を表す。)、その係数を用いて、式から各試料の粘度平均分子量を求めた。
【0033】
・比重:島津製作所製の比重計「MICROMERITICS」を用いて測定した。
【0034】
[微粒子ゴム粉末1:エポキシ化率が10モル%の微粒子ゴム粉末]
天然ゴムラテックス(レジテックス社製「LA−NR」、DRC=60質量%」)100gに、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)2.4gを加えて乳化状態を安定化させ、50rpmで攪拌しながら40℃で加熱し、DRC=80質量%になるまで水分を飛ばした。そこに30質量%過酸化水素水14.2g、ギ酸5.4gを滴下し、60℃で24時間反応させた。これに水100gを加えて水中に再分散させ、室温で1時間攪拌した後、乾燥することで、微粒子ゴム粉末1を得た。得られた微粒子ゴム粉末1は、エポキシ化率が10モル%であり、平均粒子径が0.6μmであり、粘度平均分子量が1,200,000であり、比重は0.92であった。
【0035】
[微粒子ゴム粉末2:エポキシ化率が25モル%の微粒子ゴム粉末]
過酸化水素水の量を35.4gとし、ギ酸の量を13.6gとし、その他は微粒子ゴム粉末1と同様にして、微粒子ゴム粉末2を得た。得られた微粒子ゴム粉末2は、エポキシ化率が25モル%であり、平均粒子径が0.5μmであり、粘度平均分子量が1,180,000であり、比重は0.93であった。
【0036】
[微粒子ゴム粉末3:エポキシ化率が40モル%の微粒子ゴム粉末]
過酸化水素水の量を56.6gとし、ギ酸の量を21.7gとし、その他は微粒子ゴム粉末1と同様にして、微粒子ゴム粉末3を得た。得られた微粒子ゴム粉末3は、エポキシ化率が40モル%であり、平均粒子径が0.5μmであり、粘度平均分子量が1,120,000であり、比重は0.93であった。
【0037】
[微粒子ゴム粉末4:エポキシ化率が60モル%の微粒子ゴム粉末]
過酸化水素水の量を85.0gとし、ギ酸の量を32.6gとし、その他は微粒子ゴム粉末1と同様にして、微粒子ゴム粉末4を得た。得られた微粒子ゴム粉末4は、エポキシ化率が60モル%であり、平均粒子径が0.5μmであり、粘度平均分子量が1,160,000であり、比重は0.93であった。
【0038】
[微粒子ゴム粉末5:エポキシ化率が80モル%の微粒子ゴム粉末]
過酸化水素水の量を113gとし、ギ酸の量を43.4gとし、その他は微粒子ゴム粉末1と同様にして、微粒子ゴム粉末5を得た。得られた微粒子ゴム粉末5は、エポキシ化率が80モル%であり、平均粒子径が0.6μmであり、粘度平均分子量が1,120,000であり、比重は0.93であった。
【0039】
[第1実施例](ポリマー代替)
上記で得られた微粒子ゴム粉末1〜3をポリマー代替として用いて、バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、常法に従いタイヤ用ゴム組成物を調製した。詳細には、まず第一混合段階で、硫黄及び加硫促進剤を除く成分を混練し、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して、ゴム組成物を調製した。表中の各成分は以下の通りである。
【0040】
・天然ゴム:RSS#3
・エポキシ化天然ゴム1:マレーシアMRB社製「ENR−25」
・エポキシ化天然ゴム2:マレーシアMRB社製「ENR−50」
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニック・デグサ社製「Si69」
・亜鉛華:三井金属鉱業株式会社製「亜鉛華1種」
・ステアリン酸:花王株式会社製「ルナックS−20」
・硫黄:細井化学工業株式会社製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」
【0041】
・ポリブタジエンゴムゲル:日本ゼオン株式会社製のブタジエンゴムラテックス「Nipol LX111A2」(DRC=54質量%)を100rpmで攪拌させながら、過酸化ベンゾイル(BPO)により80℃でパーオキサイド架橋し、ゲル化させたものを乾燥して、ポリブタジエンゴムゲルを得た。得られたゲル粉末の粒子径は0.3μm、比重は0.92であった。
【0042】
・スチレンブタジエンゴムゲル:日本ゼオン株式会社製のスチレンブタジエンゴムラテックス「Nipol LX110」(DRC=40.5質量%)を100rpmで攪拌させながら、過酸化ベンゾイル(BPO)により80℃でパーオキサイド架橋し、ゲル化させたものを乾燥して、スチレンブタジエンゴムゲルを得た。得られたゲル粉末の粒子径は0.2μm、比重は0.95であった。
【0043】
得られた各ゴム組成物について、160℃×20分で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて、動的粘弾性試験を行い、tanδ(0℃)とtanδ(60℃)を評価するとともに、引張試験を行い、M300とEBを評価し、更に硬度を評価した。各評価方法は次の通りである。
【0044】
・tanδ(0℃):USM社製レオスペクトロメーターE4000を用いて、周波数50Hz、静歪み10%、動歪み2%、温度0℃の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。0℃でのtanδは、湿潤路面に対するグリップ性能(ウェット性能)の指標として一般に用いられているものであり、上記指数が大きいほどtanδが大きく、ウェット性能に優れることを示す。
【0045】
・tanδ(60℃):温度を60℃に変え、その他はtanδ(0℃)と同様にして、tanδを測定し、その逆数について、比較例1の値を100とした指数で表示した。60℃でのtanδは、低発熱性の指標として一般に用いられているものであり、上記指数が大きいほどtanδが小さく、従って、発熱しにくく、タイヤとしての低燃費性に優れることを示す。
【0046】
・M300,EB:JIS K6251に準拠した引張試験を行い(ダンベル3号)、M300(300%伸長時モジュラス)及びEB(切断時伸び)について、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、M300、EBが大きく、補強性に優れることを示す。
【0047】
・硬度:JIS K6253に準拠して測定し(タイプAデュロメータ)、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、硬度が高いことを示す。
【0048】
結果は表1に示す通りであり、微粒子形状のゴム粉末でない一般的なエポキシ化天然ゴムを用いた比較例2,3では、ウェット性能については若干改善されていたものの、改善効果は小さく、また低燃費性の改良効果は得られず、更に、補強性、特にM300の低下がみられた。
【0049】
これに対し、エポキシ化天然ゴムからなる微粒子ゴム粉末を用いた実施例1〜7であると、ウェット性能の改善効果に優れ、また低燃費性の改善効果にも優れていた。また、補強性、特にEBが高く、M300の低下も見られなかった。
【0050】
【表1】
【0051】
[第2実施例](フィラー代替)
上記で得られた微粒子ゴム粉末4,5をフィラー代替として用いて、バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合(質量部)に従って、常法に従いタイヤ用ゴム組成物を調製した。詳細には、まず第一混合段階で、硫黄及び加硫促進剤を除く成分を混練し、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して、ゴム組成物を調製した。表2中の各成分は第1実施例と同じである。
【0052】
得られた各ゴム組成物について、第1実施例と同様に、tanδ(0℃)、tanδ(60℃)、M300、EB及び硬度を評価した(なお、基準となる比較例1は第1実施例と同じ)。
【0053】
結果は表2に示す通りであり、微粒子形状のゴム粉末でない一般的なエポキシ化天然ゴムを用いた比較例4では、ウェット性能については改善されていたものの、低燃費性の改良効果は得られず、また、補強性、特にM300と、硬度の低下がみられた。ポリブタジエンゴムゲルを用いた比較例5では、ウェット性能と低燃費性の双方につき改善効果が不十分であり、補強性、特にM300の低下がみられた。スチレンブタジエンゴムゲルを用いた比較例6でも、低燃費性の改善効果が不十分であり、補強性、特にM300の低下がみられた。これに対し、エポキシ化天然ゴムからなる微粒子ゴム粉末を用いた実施例8〜12であると、ウェット性能を損なうことなく、低燃費性の改善効果に優れていた。また、EBとM300が向上しており、補強性の改善効果が見られた。
【0054】
【表2】
【0055】
[第3実施例]
バンバリーミキサーを使用し、下記表3に示す配合に従って、常法に従いタイヤ用ゴム組成物を調製した。詳細には、まず第一混合段階で、硫黄及び加硫促進剤を除く成分を混練し、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して、ゴム組成物を調製した。表中のSBRは、スチレンブタジエンゴム(JSR株式会社製「SBR1502」)であり、その他は表1と同じである。
【0056】
得られた各ゴム組成物について、第1実施例と同様に、tanδ(0℃)、tanδ(60℃)、M300、EB及び硬度を評価した(評価は、いずれも比較例7を基準として、それに対する指数で示した)。
【0057】
結果は表3に示す通りであり、微粒子形状のゴム粉末でない一般的なエポキシ化天然ゴムを用いた比較例8,9では、ウェット性能については改善されていたものの、低燃費性が悪化しており、また、補強性、特にM300の低下がみられた。スチレンブタジエンゴムを用いた比較例10では、ウェット性能と低燃費性の双方につき改善効果がみられたが、補強性、特にM300の低下がみられた。これに対し、エポキシ化天然ゴムからなる微粒子ゴム粉末をポリマー代替として用いた実施例13,15であると、ウェット性能の改善効果に優れ、また低燃費性の改善効果にも優れていた。また、補強性、特にM300が向上しており、比較例8〜10のような低下は見られなかった。また、微粒子ゴム粉末をフィラー代替として用いた実施例14では、ウェット性能を損なうことなく、低燃費性の改善効果に優れていた。また、EBとM300が向上しており、補強性の改善効果が見られた。
【0058】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る微粒子ゴム粉末は、フィルムやシート、塗料、被覆材などの各種用途の樹脂成形体に配合する成分として用いることができ、また、タイヤを始めとして、防振ゴム、ベルトなどの各種の用途のゴム組成物に配合する成分として用いることができる。特に好ましくは、タイヤ用ゴム組成物として用いることであり、乗用車用空気入りタイヤの他、トラックやバスなどの重荷重用空気入りタイヤなどに好適に用いることができる。