(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882022
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】多条ねじ式開閉容器
(51)【国際特許分類】
B65D 41/04 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
B65D41/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-239715(P2011-239715)
(22)【出願日】2011年10月31日
(65)【公開番号】特開2013-95478(P2013-95478A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年4月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
【審査官】
神山 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−164057(JP,A)
【文献】
実開昭52−142056(JP,U)
【文献】
実開昭59−115754(JP,U)
【文献】
実開昭53−30450(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部の外側に軸線周りに間隔を置いて形成された複数のねじ部を有する容器本体と、当該容器本体のねじ部に取り外し可能に螺合する複数のねじ部が形成された蓋体とを備える多条ねじ式開閉容器であって、
容器本体側のねじ部と、蓋体側のねじ部との双方の接触部分に、蓋体が自重によって締まることを防止する抵抗手段を設け、
容器本体の口部に、蓋体を容器本体に対していっぱいまで締めると蓋体のねじ部の内周側側面に形成された窪みに嵌合して蓋体の緩みを防止する戻り防止用の突起を設け、
前記抵抗手段は、容器本体側のねじ部の上面に形成された交互に連続する複数の凸部及び凹部と、蓋体側のねじ部の下面に形成された1つの凸部との組み合わせであることを特徴とする多条ねじ式開閉容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口部の外側に形成された複数のねじ部を有する容器本体と、この容器本体のねじ部に取り外し可能に螺合する複数のねじ部が形成された蓋体とを備える多条ねじ式開閉容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の多条ねじ式開閉容器には、ねじ部を異なるリード角で形作ることで、同じリード角のねじ部ではねじ結合する一方、異なるリード角のねじ部では圧入を伴うねじ込み移動を行うことにより、蓋体を小さな回転力で締結するとともに、その締結力を安定して得られるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4262239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした従来の多条ねじ式開閉容器によれば、使用中に容器本体から外した蓋体を一時的に容器本体に載せ置くことで、別の作業を行うことができるものの、ねじ部の構造(形状)が複雑で、当該構造がねじ部の全長に亘って形成されていることから、蓋体を締めるときに要する力も、締め込み動作全体としてみれば、結果的に大きくなってしまう問題がある。
【0005】
本発明の目的とするところは、構造が簡素で、締め込みに要する力の上昇を抑えつつ、容器本体に載せ置いた蓋体を自重によって締結させることがない、使い勝手の良好な新規の多条ねじ式開閉容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、口部の外側に軸線周りに間隔を置いて形成された複数のねじ部を有する容器本体と、当該容器本体のねじ部に取り外し可能に螺合する複数のねじ部が形成された蓋体とを備える多条ねじ式開閉容器であって、
容器本体側のねじ部と、蓋体側のねじ部との
双方の接触部分に、蓋体が自重によって締まることを防止する抵抗手段を設け、
容器本体の口部に、蓋体を容器本体に対していっぱいまで締めると蓋体のねじ部の内周側側面に形成された窪みに嵌合して蓋体の緩みを防止する戻り防止用の突起を設け
、
前記抵抗手段は、容器本体側のねじ部の上面に形成された交互に連続する複数の凸部及び凹部と、蓋体側のねじ部の下面に形成された1つの凸部との組み合わせであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器本体側のねじ部と、蓋体側のねじ部との
双方の接触部分に、蓋体が自重によって締まることを防止する抵抗手段を設けたため、蓋体を容器本体に載せ置いても、蓋体の自重によって蓋体が締まることがない。このため、合間に他の作業を行うことができて使い勝手が良い。
【0009】
また、かかる構成によれば、抵抗手段は、少なくとも、互いのねじ部が接触し合ってねじ付けが開始される部分に設けるだけですむ。これにより、抵抗手段を設けたことに伴い締め込みに要する力が上昇しても、その上昇は小さく抑えることができる。なお、抵抗手段は、上述のとおり、少なくとも、互いのねじ部が接触し合ってねじ付けが開始される部分に設ければよいが、更にねじ付けを行ったときも、予備抵抗が生じるように、更にねじ部に沿って局所的に設けることもできる。
【0010】
更に、かかる構成によれば、ねじ部そのもの断面形状を異形にする等の必要がない。このため、構造を複雑化させることなく、簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の多条ねじ式開閉容器の一形態である、化粧容器を示す斜視図である。
【
図2】同形態において、容器本体から蓋体を分離した状態であって、当該蓋体を一部で示す分解図である。
【
図3】同形態において、容器本体側のねじ部と蓋体側のねじ部とが係合した状態を、その拡大図とともに示す模式図である。
【
図4】同形態において、蓋体を容器本体に締結させた状態を示す半断面図である。
【
図5】(a)は
図4のX−X断面図であり、(b)は(a)を分離した状態で模式的に示す斜視分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一形態である化粧容器1を詳細に説明する。
【0013】
化粧容器1は、
図1に示すように、容器本体2と蓋体3からなる。
【0014】
容器本体2は、
図2に示すように、口部2aの外周面に複数のねじ部(おねじ部)4が螺旋状に形成されている。ねじ部4はそれぞれ、同一のリード角で構成されており、軸線O周りに間隔を置いて配置されている。また、蓋体3も、その天壁3aから垂下する周壁3bの内周面に複数のねじ部(おねじ部)5が形成されている。ねじ部5もそれぞれ、同一のリード角で構成されており、軸線O周りに間隔を置いて配置されている。これにより、蓋体3を容器本体2の口部2aに対して軸線O周りに回転させることで、蓋体3を容器本体2に締結することができる。なお、
図1では、ねじ部4,5の符号は、1つのねじ部にのみに例示的に付し、その他は省略している。
【0015】
図3に示すように、容器本体側のねじ部4と、蓋体側のねじ部5との接触部分にはそれぞれ、蓋体3が自重によって締まることを防止する抵抗手段R4,R5が設けられている。
【0016】
抵抗手段R4は、
図3の拡大図に示すように、ねじ部4の接触部分に形成された複数の凸部4p及び凹部4nからなる。抵抗手段R5は、同拡大図に示すように、ねじ部5の接触部分に形成された1つの凸部5pからなる。ねじ部5の凸部5pは、蓋体3を一定の力でねじ込まなければ、ねじ部4の凸部4pを乗り越えることができない。これにより、蓋体3は、その自重によって締まることがない。
【0017】
抵抗手段R
4は、ねじ部
4の始端
4aから直近の位置に設けることで、蓋体3の自重によるねじ付けを完全に阻止することができるが、本形態では、抵抗手段R
4を、
図3のように、ねじ部
4の始端
4aから間隔ΔCを置いて設けている。これにより、蓋体3は、その自重によって自動的に一定量だけ、軽くねじ付けておくこともできる
。
【0018】
なお、抵抗手段R4は、ねじ部4の始端4aから終端4bの間の広い範囲に凹凸状に設けられている
。また、凸部5p及び凸部4p(又は凹部4n)の寸法(係合力)は、容器の用途や使用者層等を考慮して、適宜、設定することができる。
【0019】
抵抗手段R4,R5を解除するには、例えば、蓋体3を上方から下向きに押し付ければよく、その後のねじ付けについても、更に蓋体3を下向きに押し付けても、蓋体3の自重を利用しても、或いは、従来と同様、使用者が蓋体3を握って軸線O周りに回してもよい。また、本形態において、蓋体3には、
図4に示すように、その天壁3aから筒部3cが垂下している。この筒部3cは、蓋体3を下向きに押し付けることにより、或いは、使用者が蓋体3を握って軸線O周りに回すことにより、同図に示すように、容器本体2に対して蓋体3をいっぱいまで締めると、容器本体2の口部2a内側上端に形成された切り欠き2fに配置される。筒部3cには、シール突起3pが設けられている。同様に、天壁3aにも、周壁3bと筒部3cとの間にシール突起3pが一体に垂下する。
【0020】
これに対し、容器本体2の口部2aには、
図4に示すように、戻り防止用の突起6が設けられている。蓋体3を容器本体2に対して、上述のとおり、蓋体3を下向きに押し付けることにより、或いは、使用者が蓋体3を握って軸線O周りに回すことにより、同図に示すように、いっぱいまで締めると、突起6は、
図5(a)に示すように、蓋体3のねじ部5に形成された窪み7に嵌合することで、蓋体3の緩みを防止する。突起6は、蓋体3を一定の力で緩めなければ、窪み7から抜け出すことができない。なお、突起6及び窪み7の寸法(係合力)も、容器の用途や使用者層等を考慮して、適宜、設定することができる。なお、
図2では、突起6の符号は、1つの突起にのみに例示的に付し、その他は省略している。また、突起6は、少なくとも1ヶ所設ければよい。
【0021】
更に、容器本体2は、
図4に示すように、口部2aと胴部2bとの間のネック部2cに、音出し用の振動板8が設けられている。また、蓋体3の周壁3bの内周面下端には、
図2に示すように、軸線O周りに間隔を置いて振動板係止部9が設けられている。振動板係止部9は、2つのリブ9aからなり、その相互間に、隙間9bを形成する。隙間9bには、
図6に示すように、振動板8が蓋体3のねじ込みに伴いリブ9aを乗り越えることで配置される。これにより、蓋体3のねじ込みに併せて一定の間隔でクリック音(クリック感)を生じさせることができる。なお、
図2では、振動板係止部9の符号は、1つの係止部にのみに例示的に付し、その他は省略している。
【0022】
上述のとおり、本発明によれば、容器本体側のねじ部4と、蓋体側のねじ部5との接触部分にそれぞれ、蓋体3が自重によって締まることを防止する抵抗手段R4,R5を設けたため、蓋体3を容器本体2に載せ置いても、蓋体3の自重によって蓋体3が締まることがない。このため、蓋体3を空けたまま、他の作業を行うことができて使い勝手が良い。
【0023】
また、かかる構成によれば、抵抗手段R4,R5は、少なくとも、互いのねじ部4,5が係合し合ってねじ付けが開始される部分に設けるだけですむ。即ち、抵抗手段R4,R5は、ねじ部4,5全体に対して局所的に設けることができる。これにより、抵抗手段R4,R5を設けたことに伴い締め込みに要する力が上昇しても、その上昇は小さく抑えることができる。
【0024】
更に、かかる構成によれば、ねじ部4,5そのもの断面形状を異形にする等の必要がない。このため、構造を複雑化させることなく、簡素化を図ることができる。
【0026】
上述したところは、本発明の一形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、容器本体2は、胴部2bから筒状の脚部2dが設けられたものであるが、ボトル形容器等の様々な容器を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、口部の外側に螺旋状に形成された複数のねじ部を有する容器本体と、当該容器本体のねじ部に取り外し可能に螺合する複数のねじ部が形成された蓋体とを備える多条ねじ式開閉容器であれば、様々なものに適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 化粧容器(多条ねじ式開閉容器)
2 容器本体
2a 口部
2b 胴部
2c ネック部
2d 脚部
3 蓋体
3a 天壁
3b 周壁
3c 筒部
3d シール突起
4 ねじ部(容器本体側)
4p 凸部(抵抗手段)
4n 凹部(抵抗手段)
5 ねじ部(蓋体側)
5p 凸部(抵抗手段)
6 戻り防止用の突起
7 戻り防止用の窪み
8 振動板
9 振動板係止部
9a リブ
9b 隙間
R4 抵抗手段(容器本体側のねじ部)
R5 抵抗手段(蓋体側のねじ部)