特許第5882061号(P5882061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5882061トリアジン誘導体を含む有機エレクトロルミネセンス素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882061
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】トリアジン誘導体を含む有機エレクトロルミネセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20160225BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20160225BHJP
   C07D 251/24 20060101ALI20160225BHJP
   C07D 487/14 20060101ALI20160225BHJP
   C07D 235/18 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   H05B33/22 B
   H05B33/14 B
   H05B33/10
   C07D251/24
   C07D487/14
   C07D235/18
【請求項の数】8
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2011-541138(P2011-541138)
(86)(22)【出願日】2009年11月26日
(65)【公表番号】特表2012-513668(P2012-513668A)
(43)【公表日】2012年6月14日
(86)【国際出願番号】EP2009008441
(87)【国際公開番号】WO2010072300
(87)【国際公開日】20100701
【審査請求日】2012年11月26日
(31)【優先権主張番号】102008064200.2
(32)【優先日】2008年12月22日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】プフルム、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ、ジモネ
(72)【発明者】
【氏名】カイザー、ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】パルハム、アミル・ホサイン
(72)【発明者】
【氏名】フォゲス、フランク
(72)【発明者】
【氏名】クレーバー、ヨナス・バレンティン
(72)【発明者】
【氏名】ブエシング、アルネ
【審査官】 中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−520875(JP,A)
【文献】 特表2009−503849(JP,A)
【文献】 特開2008−133277(JP,A)
【文献】 特開2006−313909(JP,A)
【文献】 特開2008−280330(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/015781(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陰極及び少なくとも一つの蛍光エミッターを含む少なくとも一つの発光層を含む、有機エレクトロルミネセンス素子であって、少なくとも一つの式(7)の化合物を含む電子輸送層が発光層と陰極との間に導入されることを特徴とする、有機エレクトロルミネセンス素子。
【化1】
(式中:使用される記号と指標は以下のとおりである:
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、N(R、N(Ar、B(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R、B(OR、B(R、B(N(R、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S若しくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられてよい。)、または、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族環構造、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する基Rは、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、N(R、N(Ar、B(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R、B(OR、B(R、B(N(R、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S若しくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられてよい。)、または、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する基Rは、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、同じ窒素、燐またはホウ素に結合する二個の基Arは、単結合またはB(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)およびP(=O)Rから選ばれるブリッジにより互いに連結してもよく、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、Dまたは1〜20個のC原子を有する脂肪
族若しく芳香族及び/複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、H原子は、D若しくFで置き代えられてよく;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族若しくは芳香族環構造を形成してもよく;、
mは、0、1,2または3であり、
oは、出現毎に同一であるか異なり、0または1である。)
【請求項2】
基Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル若しくはアルコキシ基、または3〜10個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル若しくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上のH原子は、D若しくはFで置き代えられてよい。)、または、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、またはこれらの構造の組み合わせであることを特徴とする、請求項1記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項3】
基Rは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜25個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であることを特徴とする、請求項1または2記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項4】
基Rは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rにより置換されてよいフェニル、ナフチル若しくはオルト-、メタ-或いはパラ-ビフェニルであることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項5】
基Rは、出現毎に同一であるか異なり、非置換であるフェニル、ナフチル若しくはオルト-、メタ-或いはパラ-ビフェニルであることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項6】
各ベンゼン環上で、指標m=0であること、および指標n+o=0または1であることを特徴とする、請求項1〜5何れか1項記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項7】
oは、0である、請求項1〜6何れか1項記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項8】
一以上の層は、昇華プロセスにより適用されること及び/または一以上の層は、OVPD(有機気相堆積)プロセス若しくはキャリアガス昇華により適用されること及び/または一以上の層は、溶液からまたは印刷プロセスにより製造されることを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジン誘導体を電子輸送材料として含む有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
【0002】
有機半導体が、機能性材料として使用される有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構造は、例えば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461及びWO 98/27136に記載されている。しかしながら、一層の改善がいまだに望まれている。したがって、有機エレクトロルミネセンス素子の寿命、効率および駆動電圧に関する改善がいまだ必要である。更に、高い熱安定性と高いガラス転移温度とを有し、分解せずに昇華可能である化合物が必要とされている。
【0003】
特に、電子輸送材料の場合には、有機エレクトロルミネセンス素子の上記特性に重要な影響を及ぼすのは、まさに電子輸送材料の特性でもあることから、特性の改善がいまだ望まれている。特に、良好な効率、長い寿命と低い駆動電圧を同時に生じる電子輸送材料に関する改善がいまだ必要である。特に、電子輸送材料の特性は、有機エレクトロルミネセンス素子の寿命、効率および駆動電圧をしばしば制限するものでもある。
【0004】
より電子が豊富な発光層がより良好な効率を生じることから、発光層へのより良好な電子注入を生じる入手可能な電子輸送材料が望まれる。さらに、より良好な注入は、駆動電圧を減じることができる。したがって、電子輸送材料の更なる改善が、この目的のために必要である。
【0005】
さらに、先行技術に従う有機エレクトロルミネセンス素子に使用される多くの材料は、有機エレクトロルミネセンス素子製造工程において気相蒸着源上で結晶化し、そのために気相蒸着源をふさぐ傾向があることから、材料の加工性の改善の必要性がいまだ一般的に存在する。したがって、これら材料は、大量生産における増加した複雑性をもって使用することができるだけである。
【0006】
AlQを電子伝導体として使用するエレクトロルミネセンス素子は、以前からすでに知られており、1993年にUS 4,539,507にすでに記載されていた。AlQは、それ以来電子輸送材料としてしばしば使用されてきたが、多くの欠点を有する:昇華温度で部分的に分解することから、残留物を残すことなく気相堆積することができず、これが、特に製造プラントでの主な問題である。このため、気相蒸着源は連続的に清掃され或いは交換されねばならない結果となる。さらに、AlQ分解生成物がOLEDに入り、短い寿命と、量子効率とパワー効率の減少の原因となる。さらに、AlQは、低電子移動度であり、より高い電圧とそれゆえのより低いパワー効率を生じる。ディスプレーにおける短絡を回避するために、層厚を増加することが望まれるが、その低電荷運搬移動性とその結果の電圧増加により、これは、AlQでは不可能である。他の電子伝導体の電荷運搬移動性(US 4,539,507)も同様にそこでより厚い層を構築するためにはあまりにも低く、OLEDの寿命は、AlQを使用するときよりも更にずっとより悪化する。AlQの本来の色(固体中で黄色)は、再吸収と弱い再発光により、特に、青色OLEDの場合にカラーシフトを生じ得、非常に望ましくないものとなる。効率と色配置での相当の損失を伴って、青色OLEDを製造することが可能となるだけである。
【0007】
したがって、有機エレクトロルミネセンス素子において、良好な効率と同時に長い寿命をもたらす電子輸送材料への需要が引き続き存在する。驚くべきことに、ある種の以下に示すトリアジン誘導体を電子輸送材料として含む有機エレクトロルミネセンス素子は先行技術を超える顕著な改善を有することが、今回見出された。これら材料により、先行技術に従う材料を使用しても不可能である高い効率と長い寿命を同時に得ることが可能である。さらに、加えて、駆動電圧が顕著に減少し、より高いパワー効率が生じることが見出された。
【0008】
さらに、有機アルカリ金属化合物と組み合わせてトリアジン誘導体を電子輸送材料として含む有機エレクトロルミネセンス素子は、先行技術を超える顕著な改善を有することが、見出された。これら材料の組み合わせを使用することにより、高い効率と長い寿命が同時に達成され、駆動電圧は減少する。
【0009】
US 6,229,012 と US 6,225,467は、OLEDにおける電子輸送材料としてトリアジン基により置換されたフルオレンおよびビフェニル誘導体の使用を開示している。しかしながら当該特許は、特に、フルオレン基に代えてスピロビフルオレン基を含む材料が、上記特許に開示された材料を超える顕著な効果を与えることを明らかにしてはいない。
【0010】
WO 05/053055は、燐光OLEDでの正孔障壁層中の正孔障壁材料としての、トリアジン誘導体、特に、トリアジン基で置換されたスピロビフルオレン誘導体の使用を開示している。しかしながら、当該出願は、これら材料がまた、蛍光エレクトロルミネセンス素子のための電子輸送材料として適切であることを明らかにしてはいない。
【0011】
本発明は、陽極、陰極及び少なくとも一つの蛍光エミッターを含む少なくとも一つの発
光層または少なくとも一つの燐光エミッターを含み、以下の正孔障壁層と組合わせて使用される少なくとも一つの発光層を含む有機エレクトロルミネセンス素子であって、少なくとも一つの式(1)または式(2)の化合物を含む電子輸送層が発光層若しくは正孔障壁層と陰極との間に導入されることを特徴とする、有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
【化1】
【0012】
式中:使用される記号と指標は以下のとおりである:
Arは、以下の式(3)の基であり、
【化2】
【0013】
式中:点線の結合はスピロビフルオレンへの結合を示す。
【0014】
Ar’は、以下の式(4)の基であり、
【化3】
【0015】
式中:点線の結合はスピロビフルオレンへの結合を示す。
【0016】
、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、N(R、N(Ar、B(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R、B(OR、B(R、B(N(R、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、または3〜40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、S若しくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられてよい。)、または、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する基Rは、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、同じ窒素、燐またはホウ素に結合する二個の基Arは、単結合またはB(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)およびP(=O)Rから選ばれるブリッジにより互いに連結してもよく、
は、出現毎に同一であるか異なり、H若しくはDまたは1〜20個のC原子を有する脂肪族または芳香族若しくは複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、H原子は、D、Fで置き代えられてよく;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ-或いはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;、
nは、0または1であり、
mは、0、1,2または3であり、
oは、同じ環中でn=0ならば、0、1、2、3または4であり、同じ環中でn=1ならば、0、1、2または3である。
【0017】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極及び陽極と陰極の間に配置される少なくとも一つの発光層を含み、陽極と陰極の間に配置される少なくとも一つの層は少なくとも一つの有機若しくは有機金属化合物を含む素子を意味するものと解される。電子輸送層は、上記式(1)または(2)の少なくとも一つの化合物を含む。有機エレクトロルミネッセンス素子は、必ずしも有機または有機金属材料から構築される層のみを含む必要はない。したがって、無機材料を含む一以上の層も可能であり、まったく無機材料から構築されることも可能である。
【0018】
本発明の目的のために、蛍光発光化合物は、励起単項状態から室温でルミネッセンスを呈する化合物である。本発明の目的のために、重い原子を含まない、すなわち、36を超える原子番号を有する原子を含まないすべてのルミネッセンス化合物が、特に、蛍光発光化合物とみなされるべきである。
【0019】
本発明の目的のために、燐光発光化合物は、比較的高いスピン多重度、すなわち>1のスピン多重度を有する励起状態から、特に、励起三重項状態から、室温でルミネッセンスを呈する化合物である。本発明の目的のために、すべてのルミネッセンスイリジウム及び白金化合物は、特に、燐光発光化合物とみなされるべきである。
【0020】
本発明の目的のために、アリール基は、少なくとも6個のC原子を含み;本発明の目的のために、ヘテロアリール基は、少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O及び/またはSから選ばれる。ここで、アリール基若しくはヘテロアリール基は、単純な芳香族環すなわちベンゼン、または、単純な複素環式芳香族環、例えば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または、縮合アリール若しくはヘテロリール基の何れかを意味するものと解される。
【0021】
本発明の目的のために、縮合アリール若しくはヘテロリール基は、少なくとも2個の、芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、たとえば、ベンゼン環が互いに縮合する、すなわち、互いに環化により縮合する、すなわち、少なくとも1個の共通の端と共通の芳香族構造を有するアリール若しくはヘテロリール基を意味するものと解される。したがって、たとえば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンズアントラセン、ピレン等のような構造が本発明の目的のための縮合アリール基とみなされるべきであり、キノリン、アクリジン、ベンゾチオフェン、カルバゾール等は本発明の目的のための縮合へテロアリール基とみなされるべきであり、一方、フルオレン、スピロビフルオレンは、孤立した芳香族構造が含まれないことから縮合アリール基とみなされない。
【0022】
本発明の目的のために、芳香族環構造は、少なくとも6個のC原子を環構造中に含む。本発明の目的のために、複素環式芳香族環構造は、少なくとも2個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を環構造中に含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O及び/またはSから選ばれる。本発明の目的のために、芳香族若しくは複素環式芳香族環構造は、必ずしもアリール若しくはヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、その代わりに、加えて、複数のアリール若しくはヘテロアリール基は、例えば、sp混成のC、N或いはO原子のような非芳香族単位(H以外の原子は、好ましくは、10%より少ない)により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。したがって、例えば9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン、ベンゾフェノン等のような構造も、本発明の目的のための芳香族環構造を意味するものと解されることを意図されてもいる。同様に、芳香族若しくは複素環式芳香族環構造は、複数のアリール若しくはヘテロアリール基が互いに単結合により結合される構造、たとえば、ビフェニル、ターフェニルまたはビピリジンを意味するものと解される。
【0023】
本発明の目的のためには、C〜C40-アルキル基は、ここで、加えて、個々のH原子若しくはCH基は、上記した基により置換されていてよく、特に、好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、tert-ペンチル、2-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、tert-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、シクロヘプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチル、3-(3,7-ジメチル)オクチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよび2,2,2-トリフルオロエチルを意味するものと解される。アルケニル基は、特に、好ましくは、基エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニルおよびシクロオクテニルを意味するものと解される。アルキニル基は、特に、好ましくは、基エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル或いはオクチニルを意味するものと解される。C〜C40-アルコキシ基は、特に、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシまたは2-メチルブトキシを意味するものと解される。5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族または複素環式芳香族環構造は、各場合に、上記した基Rにより置換されていてもよく、任意の所望の位置で、芳香族または複素環式芳香族系に連結していてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンズアントラセン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ベンゾフルオランセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-若しくはトランス-インデノフルオレン、シス-若しくはトランス-モノベンゾインデノフルオレン、シス-若しくはトランス-ジベンゾインデノフルオレン、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン及びベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解される。
【0024】
式(1)および(2)の化合物は、好ましくは、70℃より高い、特に、好ましくは、90℃より高い、非常に、特に、好ましくは、110℃より高いガラス転移温度Tを有する。
【0025】
本発明の別の好ましい具体例では、式(3)または(4)中の基Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル若しくはアルコキシ基、または3〜10個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル若しくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上のH原子は、D若しくはFで置き代えられてよい。)、または、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造である。特に好ましい本発明の具体例では、基Rは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜25個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造である。基Rは、非常に、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜14個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、特に、フェニル、ナフチル若しくはオルト-、メタ-或いはパラ-ビフェニルであり、夫々は1以上の基Rにより置換されてよいが、好ましくは、非置換である。
【0026】
本発明の別の好ましい具体例では、基Rは、スピロビフルオレンに直接結合し、出現毎に同一であるか異なり、H、D、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル若しくはアルコキシ基、または3〜10個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル若しくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上のH原子は、D若しくはFで置き代えられてよい。)、または、各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、または、これら構造の組み合わせである。特に好ましい本発明の具体例では、基Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、1〜5個のC原子を有する直鎖アルキル基、または3〜6個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上のH原子は、D若しくはFで置き代えられてよい。)、または各場合に1以上の基Rにより置換されてよい5〜25個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造である。
【0027】
更に好ましい本発明の具体例では、基Arは、スピロビフルオレンの2位で結合する。一以上の基Arが存在するならば、他の基Arは、好ましくは、7位及び/又は2’位及び/又は7’位で結合する。したがって、特に好ましい式(1)および(2)の化合物は、式(5)および(6)の化合物である。
【化4】
【0028】
式中:記号と指標は上記に記載されるのと同じ意味を有し、ここで、n=0に対して、置換基Rは対応する位置で結合してもよい。
【0029】
式(1)、(2)、(5)および(6)の化合物の好ましい具体例では、指標m=0すなわち、基Arとは別の、更なる置換基はベンゼン環に結合しない。
【0030】
式(1)、(2)、(5)および(6)の化合物のさらに好ましい具体例では、各ベンゼン環上で、指標n+o=0または1であり、すなわち、最大一個の基Arまたは最大一個の基Rが各ベンゼン環に結合する。特に、好ましくは、o=0である。
【0031】
式(5)の化合物は、特に好ましくは、一または二個のトリアジン基を含む。したがって、式(5)の化合物は、特に好ましくは、式(7)、(8)および(9)の化合物から選択される。
【化5】
【0032】
式中:使用される記号は上記に記載されるのと同じ意味を有し、oは、出現毎に同一であるか異なり、0または1、好ましくは0である。
【0033】
式(6)の化合物は、特に好ましくは、式(10)の化合物から選択される。
【化6】
【0034】
式中:記号と指標は上記に記載されるのと同じ意味を有し、oは、出現毎に同一であるか異なり、0または1、好ましくは0である。
【0035】
式(7)〜(10)の特に好ましい化合物は、トリアジン単位に結合し、出現毎に同一であるか異なり、5〜25個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であり、特に、フェニル、1-或いは2-ナフチル、オルト-、メタ-或いはパラ-ビフェニルまたは2-スピロビフルオレニルである。指標oは、ここで、非常に、好ましくは、0である。
【0036】
(1)、(2)および(5)〜(10)の好ましい化合物の例は、以下に示す構造式1〜69である。
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【化7-5】
【0037】
有機エレクトロルミネセンス素子が有機アルカリ金属化合物でドープされたトリアリール置換トリアジン誘導体を含む電子輸送層を含むか、または、有機アルカリ金属化合物を含む更なる層がトリアリールトリアジンを含む電子輸送層と陰極との間に導入されることが特に有利であることが判明した。トリアジンは、ここで、以下に示す式(1)または(2)の化合物であってよいか、または、他の芳香族トリアジン化合物であってよい。
【0038】
したがって、本発明は、さらに、陽極、陰極及び少なくとも一つの発光層と発光層と陰極との間に配置された少なくとも一つの電子輸送層を含み、電子輸送層は少なくとも一つの式(11)または(12)の化合物を含み、
【化8】
【0039】
式中:Rは、上記に記載されるのと同じ意味を有し、使用されるその他の記号は以下のとおりである:
Arは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する一価の芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であり
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する二価の芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であり、
電子輸送層は有機金属化合物でドープされていることを特徴とするか、有機金属化合物を含む更なる層が、式(11)または(12)の化合物を含む電子輸送層と陰極との間に導入されていることを特徴とする。
【0040】
式(11)および(12)の化合物は、好ましくは、70℃より高い、特に、好ましくは、90℃より高い、非常に特に、好ましくは、110℃より高いガラス転移温度Tを有する。
【0041】
式(11)の化合物において、少なくとも一つの基Arは、好ましくは、次の式(13)〜(27)の基から選択される。
【化9-1】
【化9-2】
【化9-3】
【0042】
式中:Rは、上記に記載されるのと同じ意味を有し、点線の結合はトリアジン単位への結合を表わし、さらに、:
Xは、出現毎に同一であるか異なり、B(R)、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、N(R)、P(R)およびP(=O)(R)から選ばれる二価のブリッジであり、
mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1,2または3であり、
oは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり、
Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜18個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基であり、
Arは、1以上の基Rで置換されてよい10〜18個の芳香族環原子を有する縮合アリール若しくはヘテロアリール基であり、
p、rは、出現毎に同一であるか異なり、0、1または2、好ましくは、0または1であり、
qは、1または2、好ましくは、1である。
【0043】
本発明の好ましい具体例では、式(27)中のArは、1以上の基Rで置換されてよい10〜18個の芳香族C原子を有する縮合アリール基である。Arは、特に、好ましくは、1以上の基Rで置換されてよいナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ベンズアントラセンおよびクリセンから成る群より選ばれる。非常に、特に、好ましくは、アントラセンおよびベンズアントラセンである。
【0044】
本発明のさらに好ましい具体例では、式(27)中のArおよびArは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rで置換されてよい6〜14個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基である。ArおよびArは、特に好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rで置換されてよいベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、アントラセン、フェナントレン、フェナントロリン、ピレン、ベンズアントラセンおよびクリセンから成る群より選ばれる。ArおよびArは、非常に特に、好ましくは、ベンゼンおよびナフタレンである。
【0045】
特に、好ましいArは、次の式(13a)〜(26a)の基から選択される。
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
【0046】
式中:使用される記号と指標は上記と同じ意味を有する。ここでXは、好ましくは、同一であるか異なり、C(R、N(R)、OおよびS、特に、好ましくは、C(Rから選ばれる。
【0047】
式(27)の特に、好ましい具体例は、次式(27a)〜(27d)の基である。
【化11】
【0048】
式中:これら基は、1以上の基Rで置換されてもよく、使用される記号と指標は上記と同じ意味を有し、点線の結合はトリアジンへの結合を示し、ここで、式(27a)〜(27d)の基は、1以上の基Rで置換されてよく、式(27a)〜(27d)中の指標pは、0または1である。
【0049】
式(11)の好ましい化合物は、二または三個の基Arが、上記式(13)〜(27)の基を表わす。
【0050】
式(11)のさらに好ましい化合物は、基Arが、上記式(13)〜(27)の基を表わし、他の基Arの一個または両方が、1以上の基Rで置換されてよいフェニル、1-或いは2-ナフチル、オルト-、メタ-或いはパラ-ビフェニルを表わすが、好ましくは、無置換である。
【0051】
式(12)の化合物中の好ましい基Arは、次の式(28)〜(39)の基から選択される。
【化12-1】
【化12-2】
【化12-3】
【0052】
式中:使用される記号と指標は上記に記載されるのと同じ意味を有し、点線の結合はトリアジン単位への結合を表わす。
【0053】
特に、好ましい基Arは、次の式(28a)〜(39a)の基から選択される。
【化13-1】
【化13-2】
【化13-3】
【0054】
式中:使用される記号と指標は上記に記載されるのと同じ意味を有する。ここでXは、同一であるか異なり、好ましくは、C(R、N(R)、OおよびS、特に、好ましくは、C(Rから選ばれる。
【0055】
式(12)のさらに好ましい化合物は、基Arが、上記式(28)〜(39)の基から選ばれ、Arは、出現毎に同一であるか異なり、上記式(13)〜(27)または、1以上の基Rで置換されてよいフェニル、1-或いは2-ナフチル、オルト-、メタ-或いはパラ-ビフェニルから選ばれるが、好ましくは、無置換である。
【0056】
上記構造1〜69とは別に、式(11)および(12)の好ましい化合物の例は、次の構造70〜178である。
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【化14-4】
【化14-5】
【化14-6】
【化14-7】
【化14-8】
【0057】
上記トリアジン化合物は、たとえば、US 6,229,012,US 6,225,467,WO 05/05305およびDE 102008036982.9.に記載されたプロセスにより合成することができる。一般的に、トリアジンの例として以下のスキーム1に示すとおり、求核芳香族置換反応および金属触媒カップリング反応、特に、スズキカップリングが、化合物の合成のために適切である。したがって、たとえば、芳香族グリニャール化合物が、求核芳香族置換反応において、1,3,5-トリクロロトリアジンと反応することができ、量論比に応じて、モノアリール-、ジアリール-およびトリアリールトリアジンを得る、さらに、たとえば、ボロン酸またはボロン酸誘導体により各場合に置換された芳香族化合物が、各場合に、パラジウム触媒によりカップリングすることができ、式(1)および(11)の化合物のための一個の反応性脱離基および式(2)および(12)の化合物のための二個の反応性脱離基により置換されるトリアジンとなる。適切な反応性脱離基は、たとえば、ハロゲン、特に、塩素、臭素若しくは沃素、トリフレート或いはトシレートである。さらなる適切な合成方法は、芳香族ニトリルのトリマー化である。これら合成方法は、有機化学分野の当業者に一般的に知られており、進歩性を要することなく、式(11)および(12)のトリアジン化合物に適用することができる。
【0058】
スキーム1
【化15】
【0059】
上記トリアジン誘導体は、有機エレクトロルミネセンス素子の電子輸送層に有機アルカリ金属化合物と組み合わせて、本発明に使用することができる。「有機アルカリ金属化合物と組み合わせて」とは、ここで、トリアジン誘導体と有機アルカリ金属化合物が、一層内で混合物の形で、または、連続する二層内で分離しているかのいずれかであることを意味する。本発明の好ましい具体例では、トリアジン誘導体と有機アルカリ金属化合物は、一層内で混合物の形で存在する。
【0060】
本発明の目的のために、有機アルカリ金属化合物は、少なくとも一つのアルカリ金属、すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムを含む化合物を意味するものと解されることを意図している。
【0061】
適切な有機アルカリ金属化合物は、たとえば、WO 07/050301、WO 07/050334およびEP 1144543.に開示された化合物である。これらは、参照として、本出願に組み込まれる。
【0062】
好ましい有機アルカリ金属化合物は、次の式(40)の化合物である。
【化16】
【0063】
式中:Rは、上記に記載されるのと同じ意味を有し、ここで、曲線は、2または3以上の原子と、Mと5-或いは6-員環を形成するために必要である結合を表わし、これら原子は、1以上の基Rで置換されてよく、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属を表わす。
【0064】
ここで、上記に示したとおりに、式(40)の錯体はモノマー形態で存在することも、または、たとえば、二個のアルカリ金属と二個の配位子、四個のアルカリ金属と四個の配位子、六個のアルカリ金属と六個の配位子を含む凝集体形態または他の凝集体形態で存在することも可能である。
【0065】
式(40)の好ましい化合物は、次の式(41)および(42)の化合物である。
【化17】
【0066】
式中:使用される記号と指標は上記のとおりの意味を有する。
【0067】
さらに好ましい有機アルカリ金属化合物は、次の式(43)の化合物である。
【化18】
【0068】
式中:使用される記号と指標は上記のとおりの意味を有する。
【0069】
アルカリ金属は、好ましくは、リチウム、ナトリウムおよびカリウム、特に、好ましくは、リチウムおよびナトリウム、非常に、特に、好ましくは、リチウムから選ばれる。
【0070】
特に、好ましい式(41)の化合物は、特に、M=リチウムである。さらに、指標mは、非常に、特に、好ましくは、0である。したがって、非置換リチウムキノリナートが非常に、特に、好ましい。
【0071】
有機エレクトロルミネセンス素子は、、特に、好ましくは、上記式(7)〜(10)の化合物から選択されるトリアジン化合物の混合物を含み、特に、o=0であり、Rが、フェニル、1-或いは2-ナフチル、オルト-、メタ-或いはパラ-ビフェニルまたは2-スピロビフルオレニルであり、式(41)の有機アルカリ金属化合物は、好ましくは、M=リチウム、特に、非置換リチウムキノリナートである。
【0072】
適切な有機アルカリ金属化合物の例は、次の表に示される構造179〜223である。
【化19-1】
【化19-2】
【化19-3】
【0073】
トリアジン化合物と有機アルカリ金属化合物が混合物の形態であるならば、式(11)または(12)のトリアジン化合物の有機アルカリ金属化合物に対する比が、好ましくは、20:80〜80:20、特に、好ましくは、30:70〜70:30、非常に、特に、好ましくは、30:70〜50:50、特に、30:70〜45:55である。したがって、有機アルカリ金属化合物は、特に、好ましくは、式(11)または(12)のトリアジン化合物よりも高い割合で存在する。
【0074】
トリアジン化合物と有機アルカリ金属化合物が混合物の形態であるならば、この電子輸送層の層厚は、好ましくは、3〜150nm、特に、好ましくは、5〜100nm、非常に、特に、好ましくは、10〜60nm、特に、15〜40nmである。
【0075】
トリアジン化合物と有機アルカリ金属化合物が二個の連続する層中に存在するならば、式(11)または(12)のトリアジン化合物を含む層の層厚は、好ましくは、3〜150nm、特に、好ましくは、5〜100nm、非常に、特に、好ましくは、10〜60nm、特に、15〜40nmである。有機アルカリ金属化合物を含み、トリアジン層と陰極との間に配置される層の層厚は、好ましくは、0.5〜20nm、特に、好ましくは、1〜10nm、非常に、特に、好ましくは、1〜5nm、特に、1.5〜3nmである。
【0076】
ここで、発光層は、蛍光または燐光層であり得る。一般的には、すべての知られた発光材料および層が本発明の電子輸送層と組み合わせて適切であり、当業者は、進歩性を有することなく、本発明の電子輸送層と任意の所望の発光層とを結合することができるだろう
有機エレクトロルミネセンス素子は、陰極、陽極及び少なくとも一つの発光層に加えて、更なる層を含んでもよい。これらは、たとえば、各場合に1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子注入層、電子障壁層、励起子障壁層及び/または電荷生成層(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J.Endo, K. Mori, N. Kawamura, A. Yokoi, J.Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)及び/又は有機若しくは無機p/n接合から選択される。さらに、素子中で電荷バランスを制御する中間層が存在してもよい。さらに、層、特に、電荷輸送層はドープされていてもよい。層のドーピングは、改善された電荷輸送のために有利であり得る。しかしながら、これら層の夫々は、必ずしも存在する必要はなく、層の選択は、常に、使用される化合物次第であることが指摘されねばならない。
【0077】
本発明のさらなる好ましい具体例では、有機エレクトロルミネセンス素子は、複数の発光層を有する。これらの発光層は、特に好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光長を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光若しくは燐光を発することができ、その3層は青色、緑色及びオレンジ色若しくは赤色発光を呈する種々の発光化合物が発光層に使用される。特に好ましいものは、3層構造であり、(基本構造については、例えば、WO 05/011013参照。)。3以上の発光層使用も好ましいかもしれない。広域発光帯を有し、白色発光を呈するエミッターも、同様に白色発光に適する。
【0078】
本発明による電荷輸送層は、先行技術に従って使用される任意の所望の陰極材料とともに使用することができる。特に、適切な陰極材料の例は、一般的には、低い仕事関数を有する金属であり、アルミニウム層或いは銀層に引き続かれる。それらの例は、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウム及びサマリウムであり、各場合にアルミニウム或いは銀層に引き続かれる。マグネシウムと銀の合金が更に適切である。純粋アルミニウムが、更に適切である。
【0079】
本発明による電荷輸送層と陰極との間に、電子注入層を更に導入することも可能である。電子注入層のために適切な材料は、たとえば、LiF、リチウムキノリナート、CsF、CsCO、LiO、LiBO、KSiO、CsO或いはAlである。
【0080】
更に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、通常、10−5mbar未満、好ましくは10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中での気相堆積により適用されることを特徴とする。しかしながら、圧力は、より低くても、たとえば、10−7mbar未満でもよいことに留意する必要がある。
【0081】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセス若しくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用されることを特徴とする。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機蒸気ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、ひいては構造化される(例えば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0082】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、例えば、スピンコーティングにより、若しくは、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷或いはオフセット印刷、特に好ましくはLITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)或いはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。可溶性の化合物が、この目的のためには必要である。高い可溶性は、化合物の適切な置換により達成することができる。ここで、個々の材料の溶液だけではなく、複数の化合物、たとえば、マトリックス材料とドーパントを含む溶液も適用できる。
【0083】
有機エレクトロルミネセンス素子はまた、1以上の層を溶液から適用し、また、1以上の他の層を気相堆積により適用することによりハイブリッドシステムとして製造され得る。したがって、たとえば、発光層を溶液から適用し、式(1)、(2)、(11)または(12)の化合物を含む電子輸送層を上に、随意に有機アルカリ金属化合物と組み合わせて、真空気相堆積により適用することもできる。
【0084】
これらのプロセスは当業者に一般的に知られており、当業者により進歩性を必要とすることなく、式(1)、(2)、(11)或いは(12)または上記好ましい具定例の化合物を含む有機エレクトロルミネセンス素子に適用することができる。
【0085】
本発明は、さらに、少なくとも一つの式(11)または(12)の化合物と少なくとも一つの有機アルカリ金属化合物を含む混合物に関する。ここで、好ましくは、式(11)または(12)の化合物は、上記好ましい具定例から選ばれる。有機アルカリ金属化合物は、ここで、好ましくは、上記式(40)〜(43)の化合物から選ばれる。
【0086】
本発明は、なお、さらに、有機アルカリ金属化合物と組み合わせた有機エレクトロルミネセンス素子における電子輸送層中の電子輸送材料としての式(11)または(12)の化合物の使用に関する。ここで、好ましくは、式(11)または(12)の化合物は、上記好ましい具定例から選ばれる。有機アルカリ金属化合物は、ここで、好ましくは、上記式(40)〜(43)の化合物から選ばれる。
【0087】
ArとArが式(15)〜(27)および式(32)〜(39)の基を表わす式(11)または(12)化合物は、それぞれ新規であり、同様に、本願発明の主題である。本発明は、さらに、ArとArが式(15)〜(27)および式(32)〜(39)の基を表わす式(11)または(12)の一以上の化合物をそれぞれ、特に、電子輸送層に含む有機エレクトロルミネセンス素子に関する。ここで、電子輸送層は、ドープされていても、ドープされていなくてもよい。層は、好ましくは、有機アルカリ金属化合物でドープされていてもよい。ここで、これら材料の好ましい具体例は、上記具体例である。
【0088】
本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、先行技術を凌駕する以下の驚くべき効果を有する。
【0089】
1.本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、非常に高い効率を有する。改善された効率は、電子輸送層からの発光層への改善された電子注入におそらく起因する。
【0090】
2.本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、同時に、同等な寿命を有する。
【0091】
3.本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、同時に、低い駆動電圧を有する。低い駆動電圧は、電子輸送層からの発光層への改善された電子注入におそらく起因する。
【0092】
本発明は、次の例により更に説明されるが、それにより限定することを望むものではない。当業者は、進歩性を要することなく、本発明による更な化合物を調製し、それらを有機電子素子に使用することができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1図1a)は、ETM4の使用時の気相堆積源を示し、図1b)は、ETM2の使用時の気相堆積源を示す。
【例】
【0094】
以下の合成は、他に断らない限り、無水溶媒中で保護ガス雰囲気下で行われる。出発材料は、アルドリッチ(ALDRICH)(トリ-o-トリルホスフィン、酢酸パラジウム(II))から購入することができる。スピロ9,9’-ビフルオレン-2-ボロン酸は、未公開出願DE102008036982.9にしたがって、調製することができる。2-クロロカルボニル-2’,7’-ジブロモスピロ-9,9’-ビフルオレンは、J. Org. Chem. 2006, 71, 456-465に記載されたとおりに、調製することができる。
【0095】
例1: 2-(4,6-ビス[3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)スピロ-9,9’-ビフルオレンの合成:
【化20】
【0096】
a)2-クロロ-(4,6-ビス[3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)-1,3,5-トリアジンの合成:
ヘキサン中のn-ブチルリチウムの2.0モル溶液82.6mlが、400mlのテトラヒドロフラン中の50.30g(163ミリモル)の1-ブロモ-[3,1’,5,1”]ターフェン-1-イルの−78℃に冷却された溶液に、ゆっくりと滴下され、混合物は15分間攪拌された。反応溶液は、400mlのテトラヒドロフラン中の10.00g(45ミリモル)の塩化シアヌル酸の−78℃に冷却された溶液に、ゆっくりと滴下され、冷却が解除された。RTが到達したときに、沈殿生成物がろ過された。収率は、21.08g(37ミリモル)で理論値の67.9%に対応する。
【0097】
b)2-(4,6-ビス[3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)スピロ-9,9’-ビフルオレンの合成:
17.46g(48ミリモル)のスピロ9,9’-ビフルオレン-2-ボロン酸、21.06g(37ミリモル)の2-クロロ-(4,6-ビス[3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)-1,3,5-トリアジンと21.4g(101ミリモル)の燐酸三カリウムが、1200mlのトルエン、1200mlのジオキサンと480mlの水中に懸濁される。438mg(1.4ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと次に54mg(0.3ミリモル)の酢酸パラジウム(II)がこの懸濁液に添加され、反応混合物は、還流下16時間加熱される。冷却後、有機相が分離され、シリカゲルでろ過され、500m1の水で三度洗浄され、引き続き蒸発幹固される。残留物は、トルエンから再結晶化され、最後に高真空下昇華される。収率は、20.21g(24ミリモル)で理論値の64.4%に対応する。
【0098】
例2:2-(4,6-ビス(3-([3,1’,5,1”]ターフェニル-1-イル)フェン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)スピロ-9,9’-ビフルオレンの合成:
【化21】
【0099】
a)1-ブロモ-3-([3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)フェニルの合成:
40.0g(146ミリモル)の3-ブロニル-[3,1’,5,1”]ターフェン、18.8g(146ミリモル)の1-ヨード-3-ブロモベンゼンと109.3g(730ミリモル)の炭酸カリウムが、1350mlのトルエンと1150mlの水中に懸濁される。844mg(0.73ミリモル)のパラジウム(0)テトラキス(トリフェニルホスフィン)がこの懸濁液に添加され、反応混合物は、還流下16時間加熱される。冷却後、有機相が分離され、200m1の水で三度洗浄され、硫酸ナトリウムを使用して乾燥され、引き続き蒸発幹固される。残留物は、エタノールで洗浄され、酢酸エチルから再結晶化され、最後に減圧下乾燥される。収率は、47.6g(123ミリモル)で理論値の84.5%に対応する。
【0100】
b)2-クロロ-4,6-ビス(3-([3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)フェン-1-イル)-1,3,5-トリアジンの合成:
合成は、1-ブロモ-[3,1’,5,1”]ターフェン-1-イルが43.88g(143ミリモル)の1-ブロモ-3-([3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)フェニルに置き代えられて、例1と同様に実行される。収率は、6.30g(9.0ミリモル)で理論値の23.3%に対応する。
【0101】
c)2-(4,6-ビス(3-([3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)フェン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)スピロ-9,9’-ビフルオレンの合成
合成は、4.07g(11.3ミリモル)のスピロ9,9’-ビフルオレン-2-ボロン酸を使用して、2-クロロ-(4,6-ビス[3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)-1,3,5-トリアジンが、6.30g(9.0ミリモル)の2-クロロ-4,6-ビス(3-([3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)フェン-1-イル)-1,3,5-トリアジンに置き代えられて、例1と同様に実行される。収率は、4.9g(4.8ミリモル)で理論値の56.3%に対応する。
【0102】
例3:2-(4,6-ジフェニル-,3,5-トリアジン-2-イル)-2’,7’-ビス([3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)スピロ-9,9’-ビフルオレンの合成:
【化22】
【0103】
a)2-(4,6-ジフェニル-,3,5-トリアジン-2-イル)-2’,7’ジブロモスピロ-9,9’-ビフルオレンの合成:
47.90g(89ミリモル)の2-クロロカルボニル-2’,7’ジブロモスピロ-9,9’-ビフルオレン、11.90g(89ミリモル)の三塩化アルミニウムと1.9ml(27ミリモル)の塩化チオニルが、フラスコ中の260mlジクロロベンゼン中に懸濁された。19.3ml(187ミリモル)のベンゾニトリルが、次いで、ゆっくりと添加された。反応混合物は、100℃で1時間攪拌された。9.55g(179ミリモル)の塩化アンモニウムが添加され、バッチは、100℃で16時間攪拌された。RTまで冷却後、反応溶液は3.5lのメタノールに添加され、混合物は45分間攪拌された。沈殿した固形物はろ過され、トルエンから再結晶化された。収率は、18.8g(26.7ミリモル)で理論値の29.8%に対応する。
【0104】
b)2-(4,6-ジフェニル-,3,5-トリアジン-2-イル)-2’,7’-ビス([3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)スピロ-9,9’-ビフルオレンの合成:
合成は、スピロ9,9’-ビフルオレン-2-ボロン酸が10.65g(38.9ミリモル)の[3,1’,5,1”]ターフェン-1-イルボロン酸に置き代えられて、2-クロロ-(4,6-ビス-([3,1’,5,1”]ターフェン-1-イル)-1,3,5-トリアジンが11.42g(16.2ミリモル)の2-(4,6-ジフェニル-,3,5-トリアジン-2-イル)-2’,7’ジブロモスピロ-9,9’-ビフルオレンに置き代えられて、例1と同様に実行される。収率は、14.62g(14.6ミリモル)で理論値の89.7%に対応する。
【0105】
例4〜17:OLEDの製造
本発明によるOLEDと先行技術に従うOLEDが、WO 04/058911に記載されるとおりの一般的プロセスにより製造されるが、これは、ここに記載される状況(層の厚さの変化、使用される材料)に適合された。
【0106】
以下の例4〜17(表2参照。)では、種々のOLEDの結果が示される。構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆された厚さ150nmの硝子薄片が、OLEDの基板を形成する。改善された加工のために、20nmのPEDOT(水からスピンコート、H.C.Stack,Goslar独から購入。ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン))が、基板に適用される。OLEDは、次の層配列から成る:基板/PEDOT20nm/正孔注入層(HIL)5nm/正孔輸送層(HTM1)140nm/NPB20nm/発光層(EML)30nm/電子輸送層(ETM)20nm/及び最後に陰極。OLEDの製造のために使用された材料は表1に示される。
【0107】
PEDOTとは別のすべての材料は、真空室で熱気相堆積により適用される。ここで発光層は、共蒸発によりホストと前混合されるマトリックス材料(ホスト)とドーパントとから常に成る。例4〜17で使用されたマトリックス材料は、各場合に、5%のD1または1%のD2でドープされた化合物H1である。OLEDは、青色発光を示す。陰極は、随意の電子輸送層(LiFまたはLiQ)と上に堆積された厚さ100nmのAl層により形成される。
【0108】
OLEDは、標準方法により特性決定される;この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、電流効率(cd/Aで測定)、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としてのパワー効率(Im/Wで測定)と量子効率(EQE、パーセントで測定)及び寿命が測定される。寿命は、6000cd/mの初期輝度が、半分に低下した時間として定義される。示された例4〜12に従って製造されたOLEDは、すべて、同等のCIEy座標と示された初期輝度で約150時間の同等の寿命を有する。これは、当業者に、基本として知られる外挿式を使用すると初期輝度が1000cd/mでの約5500時間に相当する。例13および14では、初期輝度6000cd/mでの寿命は、約110時間であり、1000cd/mでの約4000時間に相当する。例15および16では、初期輝度6000cd/mでの寿命は、約500時間(例15)または540時間(例16)であり、それぞれ、1000cd/mでの約18、000時間または19、400時間の寿命に相当する。例17では、初期輝度6000cd/mでの寿命は、約300時間であり、それぞれ、1000cd/mでの約11、000時間の寿命に相当する。
【0109】
表2は、いくつかのOLED(例4〜17、本テクストで示される寿命)の結果を示す。本発明による電子輸送材料は、表1からの化合物ETM3、ETM4およびETM5であり、電子輸送層での化合物は、ある場合では、LiQとの混合物の形態である。表2での、ETM4:LiQ(40%:60%)のような情報は、化合物ETM4は、LiQとともに、より正確には、体積比で40%のETM4と60%LiQ混合物に適用されることを意味している。この型の層は、二つの材料の共蒸発により発光層と同様に製造される。先行技術として、化合物Alqを含む電子輸送層、ETM1(WO 08/145239に従う)およびETM2(WO 03/060956に従う)が、ある場合に同様にLiQと混合されて、言及される。
【0110】
先行技術と比較して、ETM3、ETM4およびETM5を含む本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、特に、顕著に増加したパワー効率により優れている。
【0111】
LiQと混合されない電子輸送層(例4,5、8、10および17)が比較されるならば、14%のパワー効率の増加が、先行技術に従う最良の試料(ETM2の使用、例5)と比べてETM4(例10)の使用について明らかである。ETM5(例17)の使用については、80%のパワー効率増加が、先行技術に従う最良の試料(ETM2の使用、例5)と比べて明らかである。これは、顕著な改善である。
【0112】
トリアジン化合物とLiQの混合物から成る本発明による電子輸送層の使用に関しては、非常により大きな改善を達成することができる。先行技術の例7に従う最良値と比べて、LiQとの混合物における本発明による化合物ETM3とETM4の使用に関して、顕著に改善されたパワー効率を達成することができる。40%対60%の比のETM3:LiQ混合物の使用については、10%までのパワー効率の改善を達成することができる(例7と例12との比較)。先行技術と比べて23%のパワー効率のさらなる改善が、40%対60%の比のETM4:LiQ混合物から成る本発明による電子輸送層の使用により可能である(例7と例11との比較)。
【0113】
先行技術と比べて24%のパワー効率のさらなる改善が、40%対60%の比のETM5:LiQ混合物から成る本発明による電子輸送層の使用により可能である(例7と例15との比較)。ETM5については、ETM5(例17)と比較してETM5:LiQの混合物(例16)を使用して、若干のパワー効率の減少(−12%)を犠牲にして、6000cd/mで300時間(例17)から、6000cd/m(例17)で540時間(例16)の寿命の増加が可能であった(表には示されていない。)。これは、約80%のかなりの改善を示す。
【0114】
本発明による電子輸送層は、ドーパントD1に代えてドーパントD2を使用する先行技術に比べて、大幅な改善をも示す。ドーパントD2は、アミン基の不存在ひいては顕著により低いHOMO或いはLUMOレベルにより本質的に異なる。先行技術に従うETM1から成る電子輸送層と比べて、極度に高い値を示す(例13と例14との比較)色座標が実質的に変わることなく、本発明によるETM4:LiQ(40%:60%)電子輸送層の使用に関して、70%のパワー効率の増加を達成することができる。
【0115】
表1
【表1-1】
【表1-2】
【0116】
表2
【表2】
【0117】
例18:加工性の比較
本発明による電子輸送材料のさらなる利点は、先行技術ETM2と比べて顕著に改善された加工性である。
【0118】
材料ETM4とETM2の層は、同一の気相堆積条件下(0.1nm/sの気相堆積速度)2時間堆積される。この条件下でETM4は、気相堆積源を詰まらせる傾向がまったくない。逆に、化合物ETM2の使用時には、材料の層が気相堆積源の上端に管状に内部に成長し、ただの約1.5時間後には、制御された気相堆積は、化合物ETM2ではもはや可能ではない結果となる。これは、図1の写真により確認され、図1a)では、ETM4の使用時の気相堆積源を示し、図1b)は、ETM2の使用時の気相堆積源を示し、各場合に、約1nmの気相堆積速度で、各場合に1.5時間気相堆積後のものである。気相堆積源の目詰まりがまったくないことが、図1a)で明らかであり、図1b)ではただの約1.5時間後には気相堆積源は非常に目詰まりしており(図の淡い「蓋」から明らかである。)、制御されたさらなる堆積は、ここで不可能である。したがって、本発明によるETM4化合物は、先行技術に従うETM2化合物よりも、大量生産での使用に顕著により適している。
図1