特許第5882097号(P5882097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5882097転がり軸受装置の製造装置および転がり軸受装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882097
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】転がり軸受装置の製造装置および転がり軸受装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20160225BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20160225BHJP
   F16C 25/06 20060101ALI20160225BHJP
   B23P 19/02 20060101ALI20160225BHJP
   G01M 13/04 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   B23P21/00 306A
   F16C19/16
   F16C25/06
   B23P19/02 B
   G01M13/04
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-68017(P2012-68017)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-198949(P2013-198949A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】小坂 貴之
【審査官】 谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−056559(JP,A)
【文献】 特開平03−154724(JP,A)
【文献】 特開2002−317818(JP,A)
【文献】 特開平02−076647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 21/00
B23P 19/02
F16C 19/16
F16C 25/06
G01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸に配置された相対回転可能な内輪と外輪を有して軸方向に間隔をあけて同軸に配列される2つの転がり軸受と、該2つの転がり軸受の各前記外輪に圧入状態で嵌合された軸部材とを備える転がり軸受装置組立体の前記軸部材を軸回りに回転させる回転駆動部と、
前記2つの転がり軸受の前記外輪どうしを軸方向に近接させる方向に押込み、これらの外輪を位置決めする押込み部と、
前記軸部材の回転により前記内輪に対して前記外輪が回転させられる際に該外輪から該内輪に伝達されるトルクを測定するトルク測定部と、
該トルク測定部により測定されるトルクが所定の許容範囲内で略一定になるように、前記押込み部を制御する制御部と備える転がり軸受装置の製造装置。
【請求項2】
前記軸部材を支持し、前記回転駆動部により前記軸回りに回転可能な支持部と、
該支持部と前記軸部材との滑りを抑制する滑り抑制部とを備える請求項に記載の転がり軸受装置の製造装置。
【請求項3】
前記押込み部が、前記内輪を押込みながら該内輪と共に前記軸回りに回転可能に設けられている請求項に記載の転がり軸受装置の製造装置。
【請求項4】
前記押込み部が、前記外輪を押込みながら該外輪と共に前記軸回りに回転可能に設けられている請求項に記載の転がり軸受装置の製造装置。
【請求項5】
前記支持部の前記軸回りの回転と前記押込み部の前記軸回りの回転とを同期させる回転伝達機構を備える請求項または請求項に記載の転がり軸受装置の製造装置。
【請求項6】
前記支持部に対して前記軸部材を前記軸方向に押し付ける押付部を備える請求項から請求項のいずれかに記載の転がり軸受装置の製造装置。
【請求項7】
所定の第1変位量で前記押込み部を前記軸方向に進退させる第1駆動部と、
該第1駆動部の前記第1変位量よりも大きく総変位量よりも小さい第2変位量で、前記第1駆動部または前記支持部を前記軸方向に進退可能な第2駆動部とを備える請求項1から請求項のいずれかに記載の転がり軸受装置の製造装置。
【請求項8】
前記トルク測定部が、前記転がり軸受に対して接触可能および退避可能に設けられている請求項1から請求項のいずれかに記載の転がり軸受装置の製造装置。
【請求項9】
前記押込み部と前記内輪もしくは前記外輪との接触を検出可能な検出部を備え、
前記制御部が、前記検出部により前記押込み部と前記内輪もしくは前記外輪との接触が検出されるまで前記第2駆動部を駆動させ、前記検出部により前記押込み部と前記内輪との接触が検出された場合に前記第1駆動部を駆動させる請求項または請求項に記載の転がり軸受装置の製造装置。
【請求項10】
前記第1駆動部と前記検出部とが共通の圧電素子からなり、
該圧電素子により前記押込み部を進退させる動作と該圧電素子により前記押込み部と前記内輪もしくは前記外輪との接触を検出する動作とを切替える切替え回路を備える請求項に記載の転がり軸受装置の製造装置。
【請求項11】
前記第2駆動部が、前記転がり軸受に予圧がかからない範囲で前記第1駆動部または前記支持部を軸方向に進退させて、前記押込み部とともに前記内輪を軸方向に押し込む請求項または請求項に記載の転がり軸受装置の製造装置。
【請求項12】
軸方向に間隔をあけて同軸に配列される2つの転がり軸受の内輪に軸部材が嵌合状態で圧入された転がり軸受組立体の外輪に対して、前記外輪を回転させる回転工程と、
該回転工程により前記内輪に対して前記外輪が回転させられている前記2つの転がり軸受の前記外輪どうしを軸方向に近接させる方向に押し込む押込み工程と、
該押込み工程により前記外輪が押込まれながら前記内輪に対して回転する際に、該外輪から該内輪に伝達されるトルクを測定するトルク測定工程とを含み、
前記押込み工程が、前記トルク測定工程により測定されるトルクが所定の許容範囲内で略一定になった状態で、前記外輪の押込みを終了する転がり軸受装置の製造方法。
【請求項13】
前記外輪と押込み部との接触を検出する検出工程と、
該検出工程により前記外輪と押込み部との接触を検出されるまで、前記外輪に近接する方向に前記押込み部を移動させる接触工程とを含み、
前記押込み工程が、前記検出工程により前記外輪と前記押込み部との接触が検出されたら、該押込み部により前記内輪を押込む請求項12に記載の転がり軸受装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受装置の製造装置および転がり軸受装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気記録装置(HDD)等に用いられる転がり軸受装置を製造する製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の転がり軸受装置の製造方法は、内輪とシャフト(軸)とを圧入により固定する転がり軸受装置に対し、共振周波数を測定しながらシャフトに内輪を押込み、共振周波数が一定になるように予圧をかけるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−239956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の製造方法のように、転がり軸受装置に共振周波数が一定になるように予圧をかけた場合、共振周波数は一定になるものの、転がり軸受のラジアルプレイやレースウェイの曲率の個体差により、トルクにばらつきが発生するという問題がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、トルクのばらつきを低減した転がり軸受装置を製造する製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、同軸に配置された相対回転可能な内輪と外輪を有して軸方向に間隔をあけて同軸に配列される2つの転がり軸受と、該2つの転がり軸受の各前記内輪に圧入状態で嵌合された軸部材とを備える転がり軸受装置組立体の前記軸部材を軸回りに回転させる回転駆動部と、前記2つの転がり軸受の前記外輪どうしを軸方向に近接させる方向に押込み、これらの外輪を位置決めする押込み部と、前記軸部材の回転により前記内輪に対して前記外輪が回転させられる際に該外輪から該内輪に伝達されるトルクを測定するトルク測定部と、該トルク測定部により測定されるトルクが所定の許容範囲内で略一定になるように、前記押込み部を制御する制御部と備える転がり軸受装置の製造装置を提供する
【0007】
本発明によれば、押込み部により、転がり軸受装置組立体の外輪どうしが軸方向に近接する方向に押込まれて位置決めされることで、転がり軸受に予圧をかけた状態で外輪と軸部材とが圧入固定された転がり軸受装置が製造される。
【0008】
この場合において、回転駆動部により、軸部材が軸回りに回転させられると、軸部材に圧入された外輪内輪に対して軸回りに回転し、外輪から内輪にトルクが伝達される。したがって、押込み部により転がり軸受に予圧をかけながら、輪に対して外輪が回転させられる際に内輪から外輪に伝達されるトルクをトルク測定部により測定し、そのトルクが所定の許容範囲内で略一定になるように、制御部により押込み部を制御することで、トルクのばらつきを低減した転がり軸受装置を製造することができる。
【0009】
上記発明においては、前記軸部材を支持し、前記回転駆動部により前記軸回りに回転可能な支持部と、該支持部と前記軸部材との滑りを抑制する滑り抑制部とを備えることとしてもよい。
【0010】
このように構成することで、支持部により支持された軸部材が、滑り抑制部により支持部との滑りを抑制された状態で回転駆動部により支持部と共に軸回りに回転させられる。したがって、回転駆動部により決められる一定の回転数で軸部材を回転させることができる。これにより、滑りによって軸部材の回転数が変動して外輪から内輪に伝達されるトルクが変化するのを防ぎ、トルク測定部により正確なトルクを測定することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記押込み部が、前記外輪を押込みながら該外輪と共に前記軸回りに回転可能に設けられていることとしてもよい。
このように構成することで、押込み部を支持部および軸部材と同期して回転させることができる。したがって、押込み部と内輪との間の滑りによる、外輪から内輪に伝達されるトルクの変動を抑制し、トルク測定部により正確なトルクを測定することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記支持部の前記軸回りの回転と前記押込み部の前記軸回りの回転とを同期させる回転伝達機構を備えることとしてもよい。
このように構成することで、押込み部と内輪との間の滑りを抑制することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記支持部に対して前記軸部材を前記軸方向に押し付ける押付部を備えることとしてもよい。
このように構成することで、押込み部により外輪を押込んでいない状態や押込み部と外輪との間の圧力が低い状態でも、押付部により、転がり軸受装置組立体の軸部材を支持部に押し付けて、軸部材と支持部との間の滑りを防止することができる。したがって、滑りによって軸部材の回転数が変動して外輪から内輪に伝達されるトルクが低下するのを防ぐことができる。これにより、正確なトルクを測定して、予圧のかけ過ぎを防止することができる。
【0014】
また、上記発明においては、所定の第1変位量で前記押込み部を前記軸方向に進退させる第1駆動部と、該第1駆動部の前記第1変位量よりも大きく総変位量よりも小さい第2変位量で、前記第1駆動部または前記支持部を前記軸方向に進退可能な第2駆動部とを備えることとしてもよい。
【0015】
このように構成することで、第1駆動部の駆動だけでは押込み部による外輪の押込み量が足りない場合に、第2駆動部により押込み部に対して近接する方向に第1駆動部を移動させた状態で、第1駆動部を再度駆動させて押込み部により外輪を押込むことで、所望のトルクを満たすように転がり軸受に予圧をかけることができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記トルク測定部が、前記転がり軸受に対して接触可能および退避可能に設けられていることとしてもよい。
このように構成することで、転がり軸受装置組立体に予圧をかけた後、転がり軸受からトルク測定部を離間させた状態で押込み部による外輪の押込みを開放することにより、トルク測定部に過剰な負荷をかけることなく転がり軸受装置を取り出すことができる。これにより、トルク測定部が破損するのを防止するとともに、トルク測定部を校正し直す手間を省くことができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記押込み部と前記外輪との接触を検出可能な検出部を備え、前記制御部が、前記検出部により前記押込み部と前記外輪との接触が検出されるまで前記第2駆動部を駆動させ、前記検出部により前記押込み部と前記内輪との接触が検出された場合に前記第1駆動部を駆動させることとしてもよい。
このように構成することで、制御部により第1駆動部と第2駆動部とを効率的に切り替えて、転がり軸受に予圧をかける時間を短縮することができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記第1駆動部と前記検出部とが共通の圧電素子からなり、該圧電素子により前記押込み部を進退させる動作と該圧電素子により前記押込み部と前記外輪との接触を検出する動作とを切替える切替え回路を備えることとしてもよい。
このように構成することで、第1駆動部と検出部を共通にする分だけ装置を安価にすることができる。また、第1駆動部と検出部とを別部材にする場合と比較して、外輪を押込む際の押込み力による装置側の変形を防ぎ、外輪を精度よく押込むことができる。
【0019】
また、上記発明においては、前記第2駆動部が、前記転がり軸受に予圧がかからない範囲で前記第1駆動部または前記支持部を軸方向に進退させて、前記押込み部とともに前記外輪を軸方向に押し込むこととしてもよい。
このように構成することで、第2駆動部の駆動により外輪を軸方向に押込む分だけ、第1駆動部により押込み部を進退させるストローク量を小さくすることができる。したがって、外輪を軸方向に押込んで転がり軸受に予圧をかけるのにかかる時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トルクのばらつきを低減した転がり軸受装置を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る製造装置および製造方法により製造される転がり軸受装置の縦断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る転がり軸受装置の製造装置の縦断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る転がり軸受装置の製造方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態の第1変形例に係る転がり軸受装置の製造装置の縦断面図である。
図5】本発明の一実施形態の第2変形例に係る転がり軸受装置の製造装置の縦断面図である。
図6】本発明の一実施形態の第3変形例に係る転がり軸受装置の製造装置の縦断面図である。
図7】本発明の一実施形態の第4変形例に係る転がり軸受装置の製造装置の縦断面図である。
図8】本発明の一実施形態の第5変形例に係る転がり軸受装置の製造装置の縦断面図である。
図9】本発明の一実施形態の第5変形例に係る転がり軸受装置の製造方法を示すフローチャートである。
図10】本発明の一実施形態の第5変形例に係る別の転がり軸受装置の製造装置の縦断面図である。
図11】本発明の一実施形態の第5変形例に係る別の転がり軸受装置の製造装置の縦断面図である。
図12】本発明の一実施形態の第5変形例に係る別の転がり軸受装置の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る転がり軸受装置の製造装置および製造方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る転がり軸受装置の製造装置100は、例えば、ハードディスクドライブ装置等に用いられる図1に示すような転がり軸受装置1を製造することができるようになっている。
【0026】
転がり軸受装置1は、例えば、同図に示すように、軸方向に間隔をあけて同軸に配列される第1転がり軸受10および第2転がり軸受20と、これらの転がり軸受10,20に嵌合されるシャフト(軸部材)31と、転がり軸受10,20間に軸方向に挟まれるスペーサ部材33とを備えている。
【0027】
シャフト31は、中空の略円筒形状に形成されており、軸方向の一端に全周にわたり径方向外方に突出する鍔状のフランジ部31aを備えている。このシャフト31には、フランジ部31a側から第1転がり軸受10、第2転がり軸受20の順に嵌め込まれている。
【0028】
第1転がり軸受10は、同軸に配置された円環形状の内輪11および外輪13と、これら内輪11と外輪13との間の円環状空間に周方向に間隔をあけて内蔵される複数個の転動体15とを備えている。第2転がり軸受20は、第1転がり軸受10と同様の構成および寸法を有し、内輪21および外輪23と、複数個の転動体25とを備えている。各転動体15,25は、図示しないリテーナにより等間隔配置された状態で転動可能に保持されている。
【0029】
これらの第1転がり軸受10および第2転がり軸受20は、内輪11,21がシャフト31の外周面を圧入状態で嵌合することにより、内輪11,21とシャフト31とがそれぞれ固定されるようになっている。また、第1転がり軸受10は、内輪11の軸方向の端面がフランジ部31aに突き当てられている。
【0030】
内輪11,21は、それぞれ外周面に深溝型若しくはアンギュラ型の内輪軌道を有し、外輪13,23は、それぞれ内周面に深溝型若しくはアンギュラ型の外輪軌道を有している。これら内輪11,21の内輪軌道と外輪13,23の外輪軌道との間で転動体15,25が転動させられることにより、内輪11,21と外輪13,23とがそれぞれ相対回転させられるようになっている。
【0031】
スペーサ部材33は、例えば、外形寸法が外輪13,23の外径寸法と略等しく、内径寸法が外輪13,23の内径寸法よりも小さく内輪11,21の外径寸法よりも大きい略円環形状を有している。このスペーサ部材33の軸方向の一方の端面(下端面)には、第1転がり軸受10の外輪13の軸方向の一方の端面(上端面)が付き当てあられ、スペーサ部材33の軸方向の他方の端面(上端面)には、第2転がり軸受20の外輪23の軸方向の一方の端面(下端面)が付き当てられている。これにより、第1転がり軸受10と第2転がり軸受20の内輪11,21間には、スペーサ部材33の軸方向の長さに応じた隙間が形成されている。
【0032】
このように構成された転がり軸受装置1は、内輪11,21どうしを相互に近接する方向に押圧した状態でシャフト31に固定することにより、内輪11,21および外輪13,23と転動体15,25とを隙間なく接触させて、転がり軸受10,20に予圧をかけた状態を維持することができるようになっている。以下、転がり軸受10,20に予圧をかける前の状態、すなわち、内輪11,21どうしの距離と外輪13,23どうしの距離が略同程度になるまで組み立てた仮組みの状態を転がり軸受装置組立体1Aという。
【0033】
本実施形態に係る転がり軸受装置の製造装置100は、図2に示すように、転がり軸受装置組立体1Aが載置される載置部50と、載置部50に載置された転がり軸受装置組立体1Aのシャフト31を軸回りに回転させるモータ(回転駆動部)55と、内輪11,21どうしを軸方向に近接させる方向に押込んで位置決めする押込み機構60と、押込み機構60を制御する制御部57と、外輪13,23に対して内輪11,21が回転する際に内輪11,21から外輪13,23に伝達されるトルクを測定するロードセル(トルク測定部)59とを備えている。
【0034】
モータ55は、鉛直方向に延びる回転軸55aを有している。
載置部50は、シャフト31を支持可能なシャフト受け(支持部)51と、シャフト受け51を軸回りに回転可能に支持する回転支持部材53、シャフト31とシャフト受け51との滑りを抑制する減圧部(滑り抑制部。図示略)とを備えている。
【0035】
シャフト受け51は、モータ55の回転軸55aに接続されており、回転支持部材53により支持されてモータ55により軸回りに回転させられるようになっている。このシャフト受け51には、シャフト31のフランジ部31aを固定して、シャフト31を鉛直方向に向けて配置することができるようになっている。
減圧部は、シャフト受け51に設けられており、減圧によりシャフト31を吸着するようになっている。
【0036】
押込み機構60は、第2転がり軸受20の内輪21を軸方向に押込み可能な内輪プッシャー(押込み部)61と、内輪プッシャー61を軸回りに回転可能に支持する回転支持部材63と、内輪プッシャー61を軸方向に進退させるアクチュエータ(第1駆動部)65とを備えている。
【0037】
内輪プッシャー61は、内輪21の軸方の端面と略等しい寸法を有する円環形状の接触面(図示略)を有する接触部61aを備えている。また、内輪プッシャー61は、モータ55の回転軸55aと同軸に配置され、接触部61aの接触面が内輪21の軸方向の端面に接触可能に設けられている。
【0038】
この内輪プッシャー61は、接触部61a接触面が内輪21の端面に接触した状態で内輪21が軸回りに回転すると、摩擦力により内輪21の回転力が接触部61aに伝達され、シャフト受け51およびシャフト31と同期して軸回りに回転するようになっている。
【0039】
アクチュエータ65としては、例えば、圧電素子が用いられる。このアクチュエータ65は、制御部57により所定の変位量で内輪プッシャー61を軸方向に移動させることができるようになっている。
【0040】
ロードセル59は、例えば、摩擦係数が高い樹脂等の高摩擦係数材料からなる接触部59aを備えている。このロードセル59は、第1転がり軸受10の外輪13に対して径方向外方から接触部59aを押し付けて、外輪13,23に働く周方向の力、すなわち、外輪13,23に対して内輪11,21が回転する際に内輪11,21から外輪13,23に伝達されるトルクを測定することができるようになっている。ロードセル59により測定されたトルクは、制御部57に送られるようになっている。
【0041】
制御部57は、内輪プッシャー61を移動させる駆動信号をアクチュエータ65に出力するようになっている。この制御部57は、ロードセル59により測定されるトルクが所定の許容範囲内で略一定になるように、アクチュエータ65の駆動を制御するようになっている。
【0042】
次に、本実施形態に係る転がり軸受装置の製造方法について、図3のフローチャートを参照して説明する。
本実施形態に係る転がり軸受装置の製造方法は、転がり軸受装置組立体51Aの外輪13,23に対して内輪11,21を回転させる回転工程SA1と、回転工程SA1により外輪13,23に対して内輪11,21が回転させられている2つの転がり軸受10,20の内輪11,21どうしを軸方向に近接させる方向に押し込む押込み工程SA2と、押込み工程SA2により内輪11,21が押込まれながら外輪13,23に対して回転する際に、内輪11,21から外輪13,23に伝達されるトルクを測定するトルク測定工程SA3とを含んでいる。
【0043】
押込み工程S2は、トルク測定工程S3においてロードセル59により測定されるトルクが所定の許容範囲内で略一定になった状態で、制御部57によりアクチュエータ65の駆動が制御されて、内輪21の押込みを終了するようになっている。
【0044】
次に、このように構成された本実施形態に係る転がり軸受装置の製造装置100および製造方法の作用について説明する。
本実施形態に係る転がり軸受装置の製造装置100および製造方法により転がり軸受装置1を製造するには、まず、転がり軸受装置1の仮組みを行った後、シャフト31のフランジ部31aをシャフト受け51に固定して、転がり軸受装置組立体1Aを載置部50に載置する。
【0045】
そして、内輪プッシャー61の接触部61aの接触面を第2転がり軸受20の内輪21の軸方向の端面に接触させるとともに、ロードセル59の接触部59aを第1転がり軸受10の外輪13の外周面に接触させる。また、制御部57に所定のトルク値を設定する。
【0046】
次いで、モータ55を作動させ、シャフト受け51と共にシャフト31を回転軸55a回りに回転させる(回転工程SA1)。シャフト31が軸回りに回転させられると、シャフト31に圧入された内輪11,21が外輪13,23に対して軸回りに回転し、内輪11,21から外輪13,23にトルクが伝達される。
【0047】
次いで、制御部57により、アクチュエータ65を駆動させて内輪プッシャー61を軸方向に移動させる。すると、第2転がり軸受20の外輪23に対して回転させられている内輪21が軸方向に押圧され、第1転がり軸受10の内輪11に対して近接する方向に内輪21が押込まれる(押込み工程SA2)。
【0048】
この場合において、内輪11がフランジ部31aに突き当てられているので、内輪21を軸方向に押込むだけで内輪11,21どうしを軸方向に近接させることができる。これにより、第1転がり軸受10および第2転がり軸受20に予圧がかかり、内輪11,21から外輪13,23に伝達されるトルクが上昇する。
【0049】
また、外輪13,23に対して内輪11,21が回転している際に、ロードセル59により、内輪11,21から外輪13,23に伝達されるトルクが測定される(トルク測定工程SA3)。この場合において、減圧部によりシャフト31がシャフト受け51との滑りを抑制されながらシャフト31と共に軸回りに回転させられるので、モータ55により決められる一定の回転数でシャフト31を回転させることができる。
【0050】
さらに、内輪プッシャー61が摩擦力により内輪21と同期して軸回りに回転することで、シャフト受け51とシャフト31との間の滑りおよび内輪21と内輪プッシャー61との滑りが抑制される。したがって、シャフト31をよりスムーズに回転させて、滑りによってシャフト31の回転数が変動して内輪11,21から外輪13,23に伝達されるトルクが変化するのを防ぐことができる。したがって、正確なトルクを測定することができる。また、トルクの測定値が低下するのを防止し、予圧をかけすぎることを防ぐことができる。
【0051】
ロードセル59により測定されたトルクは制御部57に送られ、制御部57により、そのトルクの測定値が予め設定された所定のトルク値に略一致するまでアクチュエータ65が駆動させられる。そして、トルクが所定の許容範囲内で略一定になると、制御部57によりアクチュエータ65の駆動が停止され、内輪21の押込みが終了する。
これにより、第1転がり軸受10および第2転がり軸受20に予圧をかけた状態で、シャフト31に対して内輪21が位置決め状態で圧入固定された転がり軸受装置1が完成する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る転がり軸受装置の製造装置および製造方法によれば、転がり軸受10,20に予圧をかけながら、外輪13,23に対して内輪11,21が回転させられる際に内輪11,21から外輪13,23に伝達されるトルクが所定の許容範囲内で略一定になるように、内輪21の押込みを制御して位置決め固定することで、トルクのばらつきを低減した転がり軸受装置1を製造することができる。
【0053】
本実施形態においては、滑り抑制部として、減圧部を例示して説明したが、これに代えて、例えば、摩擦係数が高いテフロン(登録商標)ゴムやウレタン樹脂等の高摩擦係数材料を採用することとしてもよい。この場合、シャフト受け51とシャフト31との間に高摩擦係数材料を配置することとすればよい。また、滑り抑制部として、シャフト31を外周から把持するチャックを採用することとしてもよい。この場合、シャフト受け51にチャックを配置することとすればよい。また、滑り抑制部として、シャフト受け51とシャフト31とを締結するネジを採用することとしてもよい。
【0054】
また、本実施形態においては、回転支持部材65により内輪プッシャー61を保持し、内輪プッシャー61を内輪21と同期させて回転させることとしたが、内輪プッシャー61は、固定して軸回りに回転させないこととしてもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、以下のように変形することができる。
本実施形態においては、シャフト受け51の回転を内輪21の摩擦力のみにより内輪プッシャー61に伝達することとしたが、第1変形例としては、例えば、図4に示すように、シャフト受け51に接続されるベルト71および内輪プッシャー61に接続されるベルト73と、これらのベルト71,73が接続されており、シャフト受け51の回転を内輪プッシャー61に伝達可能な棒状の回転伝達部材75とを有する回転伝達機構70を備えることとしてもよい。この場合、回転伝達部材75は、回転軸55aと平行に軸回りに回転可能に配置し、軸方向に間隔を空けてベルト71およびベルト73を接続することとすればよい。
【0056】
このようにすることで、内輪プッシャー61にシャフト受け51の回転を積極的に伝達して、内輪21の回転と内輪プッシャー61の回転とを確実に同期させることができる。したがって、これら内輪21と内輪プッシャー61との間の滑りを防止し、滑りによりトルクが変動するのを回避することができる。これにより、所望のトルクに精度よく予圧を設定することができる。
【0057】
第2変形例としては、図5に示すように、シャフト31を軸方向に押圧してシャフト受け51に押し付ける柱状の押付部材81およびバネ部材83等からなるシャフトプッシャー(押付部)82を備えることとしてもよい。この場合、内輪プッシャー61の接触部61aの半径方向内側において押付部材81を回転軸に沿って進退可能に配置するとともに、バネ部材83を押付部材81に接続して回転軸に沿って伸縮可能に配置することとすればよい。
【0058】
このようにすることで、内輪プッシャー61により内輪21を押込んでいない状態や内輪プッシャー61と内輪21との間の圧力が低い状態でも、シャフトプッシャー82により、転がり軸受装置組立体1Aのシャフト31をシャフト受け51に押し付けて、シャフト31とシャフト受け51との間の滑りを防止することができる。したがって、滑りによってシャフト31の回転数が変動して内輪11,21から外輪13,23に伝達されるトルクが低下するのを防ぐことができる。これにより、正確なトルクを測定して、予圧のかけ過ぎを防止することができる。
【0059】
第3変形例としては、図6に示すように、第2変形例に係る製造装置100において、アクチュエータ65(以下、第1アクチュエータ65という。)の変位量(以下、第1変位量とする。)よりも大きく第1アクチュエータ65の総変位量よりも小さい第2変位量で、第1アクチュエータ65を軸方向に進退可能な第2アクチュエータ(第2駆動部)85を備えることとしてもよい。この場合、制御部57により、第1アクチュエータ65および第2アクチュエータ85の駆動を制御することとすればよい。
【0060】
この場合、第1アクチュエータ65の駆動だけでは内輪プッシャー61による内輪21の押込み量が不足する場合に、第1アクチュエータ65の変位を一旦元に戻し、第2アクチュエータ85により第2変位量で第1アクチュエータ65を軸方向に移動させてから、第1アクチュエータ65を再び駆動させて内輪プッシャー61により内輪21を再度押し込むこととすればよい。
【0061】
本変形例においては、第1アクチュエータ65として圧電素子を採用し、第2アクチュエータ85としては、例えば、ステッピングモータ(図示略)に送りねじを取り付けて構成されるスライドモータ等を採用することとすればよい。
【0062】
このようにすることで、圧電素子からなる第1アクチュエータ65は微小な変位をコントロールでき、トルクのコントロールを精度よく行うことができる。そして、ステッピングモータからなる第2アクチュエータ85により、第1アクチュエータ65の総変位量と同等または総変位量よりも小さい第2変位量で第1アクチュエータ65の位置を簡易に調節することができる。
【0063】
本変形例においては、第2アクチュエータ85が、転がり軸受10,20に予圧がかからない範囲で第1アクチュエータ65を軸方向に移動させて、内輪プッシャー61とともに内輪21を予め決めた所定の位置まで軸方向に押し込むこととしてもよい。
このようにすることで、第2アクチュエータ85の駆動により内輪21を軸方向に押込む分だけ、第1アクチュエータ65により内輪プッシャー61を進退させるストローク量を小さくすることができる。したがって、内輪21を軸方向に押込んで転がり軸受10,20に予圧をかけるのにかかる時間を短縮することができる。
【0064】
第4変形例としては、図7に示すように、第3変形例に係る製造装置100において、第1転がり軸受10の外輪13に対してロードセル59を接触可能および退避可能に設けることとしてもよい。この場合、例えば、外輪13の半径方向にロードセル59を進退可能に配置することとすればよい。
【0065】
このようにすることで、転がり軸受装置組立体1Aに予圧をかけた後、第1転がり軸受10の外輪13からロードセル59を離間させた状態で、第2アクチュエータ85により第1アクチュエータ65を軸方向に後退させて、内輪プッシャー61と内輪21との接触状態およびシャフトプッシャー82とシャフト31との接触を開放することにより、ロードセル59に過剰な負荷をかけることなく転がり軸受装置1を取り出すことができる。これにより、ロードセル59が破損するのを防止するとともに、ロードセル59を校正し直す手間を省くことができる。
【0066】
第5変形例としては、図8に示すように、さらに、内輪プッシャー61と内輪21との接触を検出可能な圧力センサ(検出部)87を備えることとしてもよい。そして、図9のフローチャートに示されるように、回転工程SA1後に、制御部57が、圧力センサ87により内輪プッシャー61と内輪21との接触を検出し(検出工程SB1)、検出工程SB1により内輪プッシャー61と内輪21との接触が検出されるまで第2アクチュエータ85を駆動させ(接触工程SB2)、検出工程SB1により内輪プッシャー61と内輪21との接触が検出された場合に第1アクチュエータ65を駆動させることとしてもよい。
【0067】
図8においては、第1アクチュエータ65と第2アクチュエータ85との間に圧力センサ87を配置して、第2アクチュエータ85に対する第1アクチュエータ65の押圧力を検出することとしている。
【0068】
このようにすることで、制御部57により第1アクチュエータ65と第2アクチュエータ85とを効率的に切り替えて、転がり軸受10,20に予圧をかける時間を短縮することができる。すなわち、ロードセル59により測定されるトルクを監視しながら第1アクチュエータ65を駆動させ、内輪プッシャー61の変位量では不足する場合に第2アクチュエータ85を第2変位量だけ駆動させて、再度、第1アクチュエータ65を駆動させて内輪21を押し込むような場合と比較して、第1アクチュエータ65の変位量を有効に使用して予圧をかけた状態の転がり軸受装置1を短時間で製造することができる。
【0069】
本変形例においては、第1アクチュエータ65と第2アクチュエータ85との間に圧力センサ87を配置することとしたが、これに代えて、例えば、第1アクチュエータ65と内輪プッシャー61との間に圧力センサ87を配置して、圧力センサ87により、第1アクチュエータ65に対する内輪プッシャー61の押圧力を検出することとしてもよい。
【0070】
また、例えば、図10に示すように、シャフト受け51を回転軸55a回りに回転可能に保持する保持部91と、保持部91を固定するベース93とを設け、これら保持部91とベース93との間に圧力センサ87を配置して、圧力センサ87によりベース93に対する保持部91の押圧力を検出することとしてもよい。
【0071】
本変形例においては、図11に示すように、第1アクチュエータ65と制御部57とを結ぶスイッチング回路(切替え回路)95を備え、スイッチング回路95により、制御部57からの駆動信号に基づいて第1アクチュエータ65に電圧をかけて駆動させる回路95aと第1アクチュエータ65にかかる荷重により発生する電圧を制御部57に送る回路95bとを切り替えることとしてもよい。
【0072】
この場合、例えば、図12のフローチャートに示されるように、転がり軸受装置組立体1Aを組み立ててシャフト受け51に裁置してシャフト受け51と共にシャフト31を回転軸55a回りに回転させた後(回転工程SA1)、回路95bに設定して圧力センサ87により第1アクチュエータ65にかかる電圧を監視し(検出工程SB1)、制御部57により内輪プッシャー61と内輪21とが接触するまで第2アクチュエータ85を駆動させることとすればよい(接触工程SB2)。
【0073】
そして、圧力センサ87により内輪プッシャー61と内輪21との接触が検出された場合に、スイッチング回路95により回路95bから回路95aに切り替え(スイッチングSB3)、第1アクチュエータ65に電圧を加えて駆動させて、内輪プッシャー61により内輪21を押し込むこととすればよい(押込み工程SA2)。
【0074】
その後、ロードセル59により所定のトルクが測定されたら(トルク測定工程SA3)、制御部57により内輪21の押込みを終了し、第2アクチュエータ85の駆動により第1アクチュエータ65を軸方向に後退させて内輪プッシャー61およびシャフトプッシャー82を退避させるとともに、ロードセル59も退避させて(退避SB4)、転がり軸受装置1を取り出すこととすればよい。
【0075】
本変形例においては、第1駆動部として第1アクチュエータ65を例示し、検出部として圧力センサ87を例示して説明したが、これに代えて、例えば、第1駆動部および検出部として共通の圧電素子を用いることとしてもよい。そして、圧電素子により内輪プッシャー61を軸方向に進退させて内輪21を押込む動作と、この圧電素子により内輪プッシャー61と内輪21との接触を検出する動作とをスイッチング回路95により切替えることとしてもよい。
【0076】
このようにすることで、第1駆動部と検出部とを1つの圧電素子を用いて共通にする分だけ製造装置100を安価にすることができる。また、第1駆動部と検出部とを別部材にする場合と比較して、内輪プッシャー61により内輪21を押込む際の押込み力による製造装置100側の変形を防ぎ、内輪21を軸方向に精度よく押込むことができる。
【0077】
以上、本発明の一実施形態およびその変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の一実施形態および変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。
【0078】
具体的には、外輪に中空形状の軸を圧入し、外輪どうしを軸方向に近接させる方向に押し込み外輪を回転させて内輪に伝わるトルクを測定しても良い。また、同軸に配置された2つの内輪と2つの外輪とで2つの転がり軸受を構成する例を示したが、2つの内輪もしくは2つの外輪とスペーサ部材を一体化した構造のもの、即ち内輪もしくは外輪の何れか一方が一つの部材で構成され軌道輪を二箇所有する構造も本発明の「同軸に配置された相対回転可能な内輪と外輪を有して軸方向に間隔をあけて同軸に配列される2つの転がり軸受」に該当するものとする。
【符号の説明】
【0079】
1 転がり軸受装置
1A 転がり軸受装置組立体
10 第1転がり軸受
11,21 内輪
13,23 外輪
15,25 転動体
20 第2転がり軸受
31 シャフト(軸部材)
51 シャフト受け(支持部)
55 モータ(回転駆動部)
59 ロードセル(トルク測定部)
61 内輪プッシャー(押込み部)
65 (第1)アクチュエータ(第1駆動部)
70 回転伝達機構
82 シャフトプッシャー(押付部)
85 第2アクチュエータ(第2駆動部)
87 圧力センサ(検出部)
95 スイッチング回路(切替え回路)
SA1 回転工程
SA2 押込み工程
SA3 トルク測定工程
SB1 検出工程
SB2 接触工程


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12