【実施例1】
【0010】
本実施例1の蓄冷器式冷凍機1は、例えば冷媒ガスとしてヘリウムガスを用いるギフォードマクマホン(GM)タイプの極低温冷凍機である。
図1に示すように、蓄冷器式冷凍機1は、第一ディスプレーサ2と、第一ディスプレーサ2に長手方向に連結される第二ディスプレーサ3を備える。第一ディスプレーサ2と第二ディスプレーサ3とは、例えば、ピン4、コネクタ5、ピン6を介して接続される。
【0011】
第一シリンダ7と第二シリンダ8は、一体に形成されており、第一シリンダ7の低温端と第二シリンダ8の高温端が第一シリンダ7底部にて接続されている。第二シリンダ8は第一シリンダ7と同一の軸方向に延在する形態にて形成され、第一シリンダ7よりも小径の円筒部材である。第一シリンダ7は第一ディスプレーサ2を長手方向に往復移動可能に収容し、第二シリンダ8は第二ディスプレーサ3を長手方向に往復移動可能に収容する。
【0012】
第一シリンダ7、第二シリンダ8には、強度、熱伝導率、ヘリウム遮断能などを考慮して、例えばステンレス鋼が用いられる。第二ディスプレーサ3のステンレス鋼などの金属製の筒の外周面上には、フッ素樹脂などの耐摩耗性樹脂の皮膜を形成してもよい。
【0013】
第一シリンダ7の高温端には、第一ディスプレーサ2及び第二ディスプレーサ3を往復駆動する図示しないスコッチヨーク機構が設けられており、第一ディスプレーサ2、第二ディスプレーサ3はそれぞれ第一シリンダ7、第二シリンダ8にそって往復移動する。
【0014】
第一ディスプレーサ2は円筒状の外周面を有しており、第一ディスプレーサ2の内部には、第一蓄冷材が充填されている。この第一ディスプレーサ2の内部容積は第一蓄冷器9として機能する。第一蓄冷器9の上部には整流器10が、下部には整流器11が設置される。第一ディスプレーサ2の高温端には、室温室12から第一ディスプレーサ2に冷媒ガスを流通する第一開口13が形成されている。
【0015】
室温室12は、第一シリンダ7と第一ディスプレーサ2の高温端により形成される空間であり、第一ディスプレーサ2の往復移動に伴い容積が変化する。室温室12には、圧縮機14、サプライバルブ15、リターンバルブ16からなる吸排気系統を相互に接続する配管のうち、給排共通配管が接続されている。また、第一ディスプレーサ2の高温端よりの部分と第一シリンダ7との間にはシール17が装着されている。
【0016】
第一ディスプレーサ2の低温端には、第一膨張空間18に第一クリアランスを介して冷媒ガスを導入する第二開口19が形成されている。第一膨張空間18は、第一シリンダ7と第一ディスプレーサ2により形成される空間であり、第一ディスプレーサ2の往復移動に伴い容積が変化する。第一シリンダ7外周の第一膨張空間18に対応する位置には、図示しない被冷却物に熱的に接続された第一冷却ステージ20が配置されており、第一冷却ステージ20は第一クリアランスを通る冷媒ガスにより冷却される。
【0017】
第二ディスプレーサ3は円筒状の外周面を有しており、第二ディスプレーサ3の内部は、上端の整流器21、下端の整流器22、上下中間に位置する仕切り材23を挟んで軸方向に二段に分かれている。この第二ディスプレーサ3の内部容積のうち、仕切り材23よりも高温側の高温側領域24には、例えば鉛やビスマスなどの非磁性材の第二蓄冷材が充填される。仕切り材23の低温(下段)側の低温側領域25には、高温側領域24とは異なる蓄冷材、例えばHoCu2などの磁性材の第二蓄冷材が充填される。仕切り材23により、高温側領域24の蓄冷材と低温側領域25の蓄冷材とが混合するのが防止される。この第二ディスプレーサ3の内部容積である高温側領域24と低温側領域25とが第二蓄冷器として機能する。第一膨張空間18と第二ディスプレーサ3の高温端とは、コネクタ5周りの連通路で連通されている。この連通路を介して第一膨張空間18から第二蓄冷器24、25に冷媒ガスが流通する。
【0018】
第二ディスプレーサ3の低温端には、第二膨張空間26に第二クリアランスを介して冷媒ガスを流通させるための第三開口27が形成されている。第二膨張空間26は、第二シリンダ8と第二ディスプレーサ3により形成される空間であり、第二ディスプレーサ3の往復移動に伴い容積が変化する。第二クリアランスは、第二シリンダ8の低温端部分と第二ディスプレーサ3により形成されるものである。
【0019】
第二シリンダ8外周の第二膨張空間26に対応する位置には、被冷却物に熱的に接続された第二冷却ステージ28が配置されており、第二冷却ステージ28は第二クリアランスを通る冷媒ガスにより冷却される。
【0020】
第一ディスプレーサ2には、比重、強度、熱伝導率などの観点から、例えば布入りフェノール等が用いられる。第一蓄冷材は例えば金網等により構成される。また、第二ディスプレーサ3は、例えば鉛、ビスマスなどの球状の第二蓄冷材をフェルト及び金網により軸方向に挟持することにより構成される。なお、上述のように、第二ディスプレーサ3の内部容積を、仕切り材により複数の領域に分割してもよい。
【0021】
第一ディスプレーサ2及び第二ディスプレーサ3は、それぞれ低温端に熱交換部29、30を具備してもよい。熱交換部29、30は、ディスプレーサ本体との接合の観点から、二段状の円柱形状を有している。熱交換部29は圧入ピン31により第一ディスプレーサ2に固定され、熱交換部30は圧入ピン32により第二ディスプレーサ3に固定される。これにより、第一冷却ステージ20、第二冷却ステージ28の双方において実質的な熱交換面積を増やして、冷却効率を高めている。
【0022】
さらに本実施例1の蓄冷器式冷凍機1では、
図1に示すように、第二ディスプレーサ3内部の高温側領域24に、軸方向に延在する円柱状の伝熱部材33を含んでいる。伝熱部材33は、少なくとも蓄冷器よりも軸方向に大きな熱を伝えることができる材料、つまり熱伝導係数が大きい材質が用いられる。具体的には、例えば銅、アルミニウム及びそれらの合金などの熱伝導率の高い材質が挙げられる。また、伝熱部材33には、蓄冷器の側壁を構成する材質よりも熱伝導係数が大きい材質を用いることが好ましい。
【0023】
伝熱部材33は高温側領域24の非磁性材の第二蓄冷材に埋設され、第二蓄冷材に隣接して軸方向に連続的に延在している。また、
図1から明らかなように伝熱部材33の高温端は第一冷却ステージ20の下端よりも低温側に位置し、伝熱部材33の低温端は第二冷却ステージ28の上端よりも高温側に位置している。
【0024】
高温側領域24における伝熱部材33の軸方向の位置は、蓄冷機式冷凍機1の通常運転時における高温側領域24の温度分布を考慮して定められる。一般的な極低温冷凍機においては、
図1中下側の伝熱部材33の低温端は仕切り板23よりも、所定距離だけ高温側に離隔していることが好ましい。また、伝熱部材33の
図1中上側の高温端は整流器21に接触してもよい。なお、
図1中では図示しないが、伝熱部材33は高温側領域24における軸方向の位置を維持するために、支持部材を備えてもよい。例えば、伝熱部材33の低温端に十字形状の支持部材を設けることができる。
【0025】
この低温端が位置する軸方向の領域は、冷媒のヘリウムガスの比熱が非磁性材の第二蓄冷材の比熱を上回る領域であって、冷凍機の運転中においては例えば8〜20Kの温度範囲(より好ましくは8〜10数K)に収まる領域である。また、この温度領域で比熱が高い蓄冷材として非磁性材である鉛やビスマスが挙げられる。
【0026】
次に、冷凍機の動作を説明する。冷媒ガス供給工程のある時点においては、第一ディスプレーサ2及び第二ディスプレーサ3は第一シリンダ7及び第二シリンダ8の下死点に位置する。それと同時、またはわずかにずれたタイミングでサプライバルブ15を開とすると、サプライバルブ15を介して高圧のヘリウムガスが給排共通配管から第一シリンダ7内に供給され、第一ディスプレーサ2の上部に位置する第一開口13から第一ディスプレーサ2の内部の第一蓄冷器9に流入する。第一蓄冷器9に流入した高圧のヘリウムガスは、第一蓄冷材により冷却されながら第一ディスプレーサ2の下部に位置する第二開口19及び第一クリアランスを介して、第一膨張空間18に供給される。
【0027】
第一膨張空間18に供給された高圧のヘリウムガスは、コネクタ5周りの連通路を介して、第二ディスプレーサ3の内部の第二蓄冷器24、25に流入する。第二蓄冷器24、25に流入した高圧のヘリウムガスは、第二蓄冷材により冷却されながら第二ディスプレーサ3の下部に位置する第三開口27及び第二クリアランスを介して、第二膨張空間26に供給される。
【0028】
このようにして、第一膨張空間18及び第二膨張空間26は、高圧のヘリウムガスで満たされ、サプライバルブ15は閉とされる。この時、第一ディスプレーサ2及び第二ディスプレーサ3は、第一シリンダ7及び第二シリンダ8内の上死点に位置する。それと同時、またはわずかにずれたタイミングでリターンバルブ16を開とすると、第一膨張空間18、第二膨張空間26内の冷媒ガスは減圧され膨張する。膨張により低温になった第一膨張空間18のヘリウムガスは第一クリアランスを介して第一冷却ステージ20の熱を吸収し、第二膨張空間26のヘリウムガスは第二クリアランスを介して第二冷却ステージ28の熱を吸収する。
【0029】
第一ディスプレーサ2及び第二ディスプレーサ3は下死点に向けて移動し、第一膨張空間18及び第二膨張空間26の容積は減少する。第二膨張空間26内のヘリウムガスは、第二クリアランス、第三開口27、第二蓄冷器25、24、連通路を介して第一膨張空間18に戻される。さらに、第一膨張空間18内のヘリウムガスは、第二開口19、第一蓄冷器9、第一開口13を介して、圧縮機14の吸入側に戻される。その際、第一蓄冷材及び第二蓄冷材は、冷媒ガスにより冷却される。この工程を1サイクルとし、冷凍機はこの冷却サイクルを繰り返すことで、第一冷却ステージ20及び第二冷却ステージ28を冷却する。
【0030】
本実施例1の蓄冷器式冷凍機1及び第二蓄冷器24、25によれば以下のような作用効果が得られる。高温側領域24の高温端から低温端に向けての温度プロファイルは高温端からの距離に逆比例的な傾向を示し、双曲線的なプロファイルとなる。この温度プロファイルの中間領域(8K〜30K)は、伝熱部材33により高温端から熱が伝わることから、伝熱部材33が無い場合の温度プロファイルよりも高温側にシフトされる。この高温側領域24内部の温度プロファイルの上昇によりこの領域に溜まるヘリウムガスの量が少なくなり、冷凍機システム全体の圧力差が大きくなるため、冷凍性能を高くすることができる。
【0031】
加えて、伝熱部材33が第二蓄冷器24、25の軸方向に延在しており、高温端から低温端に向けて熱を伝達することから、第一冷却ステージ20の温度を低下させて第一冷却ステージ20の冷凍性能を高めることができる。また、伝熱部材33の低温端が上述した冷媒の比熱が蓄冷材の比熱を上回る温度領域に位置していることから、伝熱部材33の高温端から低温端に熱が伝達されても、伝熱部材33の低温端近傍の第二蓄冷器24、25の高温側領域24内の第二蓄冷材や冷媒の温度も上昇されることがない。つまり、第二冷却ステージ28の冷凍性能を確保した上で第一冷却ステージ20の冷凍性能を高めることができる。
【0032】
なお、上述した
図1における伝熱部材33は例示的に円柱形状のものを示したが、製造のし易さや温度プロファイルのオフセットのさせ方つまり第二蓄冷材や冷媒ガスとの熱交換の程度に応じて適宜異なる形態とすることができる。つまり、伝熱部材33の軸方向に垂直な断面における形状は
図2(a)に示すような円、
図2(b)に示すような円筒、
図3(c)に示すような外周面にフィン形状を有する円とすることもでき、軸方向を含む断面形状についても例えば
図2(d)に示すように高温端が幅広の台形形状とすることもできる。
【0033】
また
図1における伝熱部材33は第二蓄冷器24、25の高温側領域24の中心に一本配置する形態としているが、
図3に示すように本数を複数本として、中心から径方向に離隔する位置に離散的に配置することもできる。この場合、伝熱部材34複数本のトータルの熱容量と第二蓄冷材の占有する体積及び熱容量とのバランスを考慮して、
図1に示した伝熱部材33よりも一本あたりの断面積を適宜小さく設定することもできる。
【0034】
さらに伝熱部材の配置形態は上述した形態に限られず、例えば
図4に示すように伝熱部材35を第二蓄冷器24、25の高温側領域24の円柱形状に沿った上下一対の円盤形状として軸方向に離散的に配置することもできる。同様に、
図5に示すように、伝熱部材36を第二蓄冷材の球よりも径が大きい球形状を複数有するものとして、軸方向及び径方向に離散的に配置することもできる。
【実施例2】
【0035】
上述した実施例1及び関連する変形例においては、伝熱部材は蓄冷器の内部に配置するものとしたが、蓄冷器を構成する蓄冷材を外包する円筒形状とすることもできる。以下それについての実施例2について述べる。
【0036】
図6に示す本実施例2の蓄冷器式冷凍機41は、冷凍機としての機能、動作態様、基本的な構成要素は実施例1に示したものとほぼ同様であるため、同等の構成要素については同一の符号を付し、相違点を主に説明する。
【0037】
本実施例2の蓄冷器式冷凍機41では、高温側領域24の第二蓄冷材を外包する円筒形状の伝熱部材42を具備している。伝熱部材42の外周面形状は第二ディスプレーサ3の外周面形状と一致する形態をなし、伝熱部材42の高温端は第二ディスプレーサ3の高温端に連結され、第二ディスプレーサ3は伝熱部材42を介してピン6に連結される。このように、伝熱部材42の高温端は軸方向において第一冷却ステージ20の下端よりも高温側かつ上端よりも低温側に位置して第一膨張空間18内部に配置されてもよい。伝熱部材42の低温端は実施例1において述べたものと同様に例えば8K〜20Kの温度領域をなす軸方向の位置に配置される。
【0038】
本実施例2によれば伝熱部材42の軸方向の配置において高温端を軸方向においてより高温側に配置することができる。これにより、第一冷却ステージ20の温度をより効果的に低下させることができる。
【0039】
なお高温側領域24内を通流する冷媒ガスが中心から径方向に離隔するにつれて流速が低減する傾向があることを考慮して、例えば
図7に示すように伝熱部材42の低温端の内周側には適宜、複数の通流孔を有する円板状の熱交換器43を付加することができる。これにより、より効果的に第一冷却ステージ20の温度を低下させ冷凍効率を高めることができる。
【0040】
本実施例2では、伝熱部材42が第二ディスプレーサ側壁を形成する形態を例に挙げて説明したが、ディスプレーサ側壁の内側で、第二蓄冷材を外包するように伝熱部材42を形成してもよい。また、必ずしも全ての第二蓄冷材を外包する必要はなく、伝熱部材42は第二蓄冷材の少なくとも一部を外包すればよい。
【実施例4】
【0045】
上述した実施例1〜3においてはディスプレーサ式の冷凍機に本発明を適用する形態を示したが、本発明はパルスチューブ型の冷凍機にも適用することができる。以下それについての実施例4について述べる。
【0046】
本実施例4のパルスチューブ型の蓄冷器式冷凍機101は、
図9に示すように、一段目蓄冷器102と、二段目蓄冷器103と、一段目パルス管104と、二段目パルス管105と、を含んで構成される。一段目蓄冷器102と一段目パルス管104と二段目パルス管105のそれぞれの高温端は、圧縮機107の吐出側から三分岐する分岐管108及び吸込側から三分岐する分岐管109と、それぞれの高温端に対応する給排共通配管110、111、112を介して接続されている。
【0047】
分岐管108の給排共通配管110への第一接続点P1の手前には蓄冷器サプライバルブV1が配置され、分岐管108の給排共通配管111への第二接続点P2の手前には一段目サプライバルブV3が配置され、分岐管108の給排共通配管112への第三接続点P3の手前には二段目サプライバルブV5が配置される。
【0048】
分岐管109の給排共通配管110への第一接続点P1の手前には蓄冷器リターンバルブV2が配置され、分岐管109の給排共通配管111への第二接続点P2の手前には一段目リターンバルブV4が配置され、分岐管109の給排共通配管112への第三接続点P3の手前には二段目リターンバルブV6が配置される。
【0049】
給排共通配管111の一段目パルス管104の高温端と第二接続点P2との間には流量制御バルブV7が配置され、給排共通配管112の二段目パルス管105の高温端と第三接続点P3との間には流量制御バルブV8が配置される。これらの流量制御バルブはパルス管内に発生するガスピストンの位相調整機構として作用する。また、流量制御バルブに代えてオリフィスを用いることもできる。
【0050】
一段目パルス管104の高温端には整流熱交換器113が配置され、低温端には整流熱交換器114が配置される。二段目パルス管105の高温端には整流熱交換器115が配置され低温端には整流熱交換器116が配置される。
【0051】
一段目パルス管104の低温端と一段目蓄冷器102の低温端とは一段冷却ステージ117により熱的に連結され、一段冷却ステージ117の内部に位置する一段目低温端連結管118により、一段目パルス管104の低温端と一段目蓄冷器102の低温端は冷媒ガスが通流可能に接続される。二段目パルス管105の低温端と二段目蓄冷器103の低温端は二段目低温端連結管119により冷媒ガスが通流可能に接続される。
【0052】
さらに本実施例4の蓄冷器式冷凍機101では、
図9では図示は省略しているが、二段目蓄冷器103内部は実施例1の第二蓄冷器と同様に、上段に非磁性材を含む高温側領域、下段に磁性材の蓄冷材を有する低温側領域とを含み、高温側領域の内部に、軸方向に延在する例えば銅、アルミ等の熱伝導率の高い材質の例えば円柱状の伝熱部材120を含んでいる。
【0053】
伝熱部材120は高温側領域の球状の非磁性材の蓄冷材に埋設され、蓄冷材に隣接して軸方向に連続的に延在している。また、伝熱部材120の高温端は一段冷却ステージ117の下端よりも低温側に位置し、伝熱部材120の低温端は第二蓄冷器103の低温端に位置する図示しない二段冷却ステージの上端よりも高温側に位置している。
【0054】
伝熱部材120の低温端が位置する軸方向の領域は、冷媒のヘリウムガスの比熱が非磁性材の蓄冷材の比熱を上回る領域であって、冷凍機の運転中においては例えば8〜20Kの温度範囲(より好ましくは8〜10数K)に収まる領域である。
【0055】
このように構成されたバルブパルスチューブ型の蓄冷器型冷凍機101では、高圧の冷媒ガスの供給過程において、一段目サプライバルブV3、二段目サプライバルブV5が開かれると、冷媒ガスは、分岐管108および給排共通配管111又は給排共通配管112を介して、一段目パルス管104及び二段目パルス管105の低温端に流入する。
【0056】
また、蓄冷器サプライバルブV1が開かれると、冷媒ガスは、圧縮機107から分岐管108および給排共通配管110を通り、一段目蓄冷器102から一段目パルス管104の低温端に流入するとともに、二段目蓄冷器103を通って二段目パルス管105の高温端に流入する。
【0057】
一方、低圧の冷媒ガスの回収過程では、一段目リターンバルブV4又は二段目リターンバルブV6が開かれると、一段目パルス管104又は二段目パルス管105内の冷媒ガスは、それぞれの高温端から、給排共通配管111又は給排共通配管112及び分岐管109を通り、圧縮機107に回収される。また、蓄冷器リターンバルブV2が開かれると、一段目パルス管104内の冷媒ガスは、低温端から一段目蓄冷器102、給排共通配管110、分岐管109を介して、圧縮機107に回収される。同様に、二段目パルス管105内の冷媒ガスは二段目蓄冷器103、一段目蓄冷器102、給排共通配管110、分岐管109を介して圧縮機107に回収される。
【0058】
本実施例4のパルスチューブ型の蓄冷器式冷凍機101では、圧縮機107により圧縮された作動流体である冷媒ガス(例えば、ヘリウムガス)が一段目蓄冷器102、二段目蓄冷器103および一段目パルス管104、二段目パルス管105に流入する動作と、作動流体が一段目パルス管104、二段目パルス管105及び一段目蓄冷器102、二段目蓄冷器103から流出され、圧縮機107に回収される動作を繰り返すことで、蓄冷器およびパルス管の低温端に寒冷が形成される。また、これらの低温端に、被冷却対象を熱的に接触させることで、被冷却対象から熱を奪うことができる。
【0059】
本実施例4の蓄冷器式冷凍機102及び上段の蓄冷器によれば以下のような作用効果が得られる。つまり実施例1で述べたように、上段の蓄冷器の高温端から低温端に向けての温度プロファイルの中間領域が高温側にシフトすることにより、この領域に溜まるヘリウムガスの量が少なくなり、冷凍機システム全体の圧力差が大きくなるため、冷凍性能を高くすることができる。
【0060】
また、伝熱部材120が軸方向に延在しており、伝熱部材120の高温端から低温端に向けて熱を伝達することから、一段冷却ステージ117の温度を低下させて一段目の冷凍性能を高めることができる。伝熱部材120の低温端が上述した冷媒の比熱が蓄冷材の比熱を上回る温度領域に位置していることから、伝熱部材120により高温端から低温端に熱が伝達されても、低温端近傍の上段の蓄冷器内の蓄冷材や冷媒の温度も上昇されることがない。すなわち、二段目の冷凍性能を確保した上で一段目の冷凍性能を高めることができる。
【0061】
実施例4は、伝熱部材が蓄冷器の内部に位置する例について説明したが、実施例2と同様に、伝熱部材が蓄例材を外包する形態とすることもできる。また、二段パルスチューブ冷凍機を例に説明したが、実施例3と同様に単段パルスチューブとすることもできる。
【0062】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0063】
例えば、上述した蓄冷器式冷凍機においては段数が二段及び単段である場合を示したが、この段数は三段以上に適宜選択することが可能である。また、実施の形態では、蓄冷器式冷凍機がディスプレーサ式のGM冷凍機やパルスチューブ型である例について説明したが、これに限られない。例えば、本発明は、スターリング冷凍機、ソルベイ冷凍機などにも適用することができる。