(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882141
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/08 20060101AFI20160225BHJP
B65D 51/16 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
B65D47/08 F
B65D51/16 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-138088(P2012-138088)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-995(P2014-995A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2014年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】古塩 秀一
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
【審査官】
佐野 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−246127(JP,A)
【文献】
特開2001−270540(JP,A)
【文献】
特開2007−099315(JP,A)
【文献】
特開2007−099317(JP,A)
【文献】
特開2000−238820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
B65D 51/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部を覆う天面壁から起立する環状壁を有し、該口部に固定保持されるキャップ本体と、該環状壁を内側に収めて該キャップ本体に覆い被さるとともにヒンジを介して該キャップ本体に揺動可能に連結する蓋体とを備えるヒンジキャップにおいて、
前記蓋体は、前記環状壁を取り囲む周壁と、該周壁の半径方向内側にて該周壁と一体連結して該周壁との間に下向きの環状空間を形成する環状リブとを備え、
前記環状壁は、その外周面に半径方向外側へ向けて膨出する外側凸部を備えるとともに、その内側縁部に半径方向内側へ向けて低くなる内側傾斜面を備え、
前記周壁に、前記外側凸部に係合するとともに前記環状壁と気密に当接する内側凸部を設け、
前記環状リブの外側縁部に、前記内側傾斜面と同方向に傾斜して該内側傾斜面と気密に当接する外側傾斜面を設け、
前記環状リブは、その外周面に少なくとも1つの縦リブを有することを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
前記環状リブは、前記周壁との連結壁に設けられ前記環状空間に対面する少なくとも1つの横リブを備える請求項1に記載のヒンジキャップ。
【請求項3】
前記縦リブと横リブとを一体連結してなる請求項2に記載のヒンジキャップ。
【請求項4】
前記キャップ本体は、前記蓋体の閉鎖姿勢にて前記天面壁の上面及び前記周壁の下面の少なくとも一方側に、他方側と当接してこれらの相互間に隙間を形成する少なくとも1つの段部を備える請求項1〜3の何れかに記載のヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に固定保持されるキャップ本体と、このキャップ本体にヒンジを介して連結する蓋体とを備えるヒンジキャップに関するものであり、特に、容器にヒンジキャップを固定する打栓工程、及びシャワー水を散布して加熱された容器全体の冷却を行う冷却工程において、内容物の加熱充填に起因して発生する各種の不具合を有効に回避することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物を容器に充填し、打栓によってヒンジキャップを容器の口部に固定保持する、内容物の充填、打栓工程においては、例えば内容物が食品である場合には、充填される内容物そのものの他、容器及びヒンジキャップの内側の殺菌処理を行うために、内容物を加熱して容器に充填することが行われている。そして、内容物の加熱充填後は、容器及びヒンジキャップの外側にシャワー水を散布して(最初は比較的温度の高い水を散布し、その後低い温度の水に切り換えて散布する)容器全体の冷却を行う(冷却工程)ことが一般的である。
【0003】
ところで、加熱充填後の容器に打栓されるヒンジキャップにおいては、このヒンジキャップ内の空気(キャップ本体と蓋体との間の空気)が比較的温度の高い冷却温水シャワー時に膨張するため、蓋体が勝手に開いてしまうことがあった(温水シャワーにより、キャップ内部が温められて膨張し、内圧が高まって上蓋を押し上げ、不用意に開蓋してしまう)。また、温度の低いシャワー水の散布によってヒンジキャップ内の空気は冷やされて収縮するので、キャップ内に水が引き込まれるおそれもあった。このような不具合に対応するものとして、例えば特許文献1には、キャップ本体と上蓋との間に形成されるキャップ内空間を、周状側壁部によって内側の空間と外側の空間とに区画し、内側の空間が負圧になっても、外側の空間には切り欠きを介して外気と等圧にするようにして、内側空間への水の浸入が防止できるとするキャップが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−24549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シャワー水は容器全体に満遍なく散布されるため、上述したキャップにおいても切り欠きを通して水が外側空間内に浸入することがあり、これにより内側空間内に水が引き込まれるおそれがあった。このため、打栓工程及び冷却工程において、蓋体が勝手に開く不具合やキャップ内へ水が浸入する不具合を、より確実に防止することができる新たなヒンジキャップの出現が強く求められていた。
【0006】
本発明の課題は、打栓工程及び冷却工程において、内容物が加熱充填された後の温水シャワーに伴う、蓋体が開く不具合やキャップ内へ水が浸入する不具合を、より確実に防止することができる新たなヒンジキャップを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器の口部を覆う天面壁から起立する環状壁を有し、該口部に固定保持されるキャップ本体と、該環状壁を内側に収めて該キャップ本体に覆い被さるとともにヒンジを介して該キャップ本体に揺動可能に連結する蓋体とを備えるヒンジキャップにおいて、
前記蓋体は、前記環状壁を取り囲む周壁と、該周壁の半径方向内側にて該周壁と一体連結して該周壁との間に下向きの環状空間を形成する環状リブとを備え、
前記環状壁は、その外周面に半径方向外側へ向けて膨出する外側凸部を備えるとともに、その内側縁部に半径方向内側へ向けて低くなる内側傾斜面を備え、
前記周壁に、前記外側凸部に係合するとともに前記環状壁と気密に当接する内側凸部を設け、
前記環状リブの外側縁部に、前記内側傾斜面と同方向に傾斜して該内側傾斜面と気密に当接する外側傾斜面を設け
、
前記環状リブは、その外周面に少なくとも1つの縦リブを有することを特徴とするヒンジキャップである。
【0009】
前記環状リブは、前記周壁との連結壁に設けられ前記環状空間に対面する少なくとも1つの横リブを備えることが好ましい。
【0010】
前記縦リブと横リブとを一体連結することが好ましい。
【0011】
前記キャップ本体は、前記蓋体の閉鎖姿勢にて前記天面壁の上面及び前記周壁の下面の少なくとも一方側に、他方側と当接してこれらの相互間に隙間を形成する少なくとも1つの段部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
キャップ本体の環状壁に、外側凸部と内側傾斜面とを設け、蓋体を、環状壁を取り囲む周壁と、周壁の半径方向内側にて一体連結してその周壁との間で下向きの環状空間を形成する環状リブとを備えるものとし、周壁に、外側凸部に係合するとともに環状壁と気密に当接する内側凸部を設け、環状リブの外側縁部に、内側傾斜面と気密に当接する外側傾斜面を設けたので、キャップ本体と蓋体とは、二重にシールされることとなり、ヒンジキャップ内への水の浸入がより確実に防止される。
【0013】
ヒンジキャップを容器の口部に打栓すると、蓋体はキャップ本体に向けて押し付けられて、キャップ本体の環状壁が蓋体の環状空間に一時的に入り込む。ここで、環状リブの外周面に少なくとも1つの縦リブを設ける場合は、この縦リブにて、環状壁と環状リブの外周面との間に隙間が形成され、この隙間を通してヒンジキャップ内の空気を外界へ排出することができるので、打栓後、元の形状に復元したヒンジキャップ内は負圧になり、これによりヒンジキャップ内の空気の膨張に起因する蓋体の開きを防止できる。
【0014】
環状リブに、周壁との連結壁に設けられ環状空間に対面する少なくとも1つの横リブを設ける場合は、より強い打栓が行われて環状壁が連結壁に近づくまで環状空間内に深く入り込むことがあっても、これらの間には横リブにて空気の排出路が確保されているので、所期した通りにヒンジキャップ内を負圧にすることができ、打栓具合のばらつきに関わりなく、蓋体の開きを防止できる。
【0015】
縦リブと横リブとを一体連結して設ける場合は、環状リブの外周面と環状壁との間、及び連結壁と環状壁との間には、1本につながったリブによって、打栓時においても連続した空気の通路が形成されるので、より確実に蓋体の開きを防止できる。
【0016】
キャップ本体は、前記蓋体の閉鎖姿勢にて前記天面壁の上面及び前記周壁の下面の少なくとも一方側に、他方側と当接してこれらの相互間に隙間を形成する少なくとも1つの段部を備えるものとする場合は、ヒンジキャップを打栓によって容器の口部へ装着する際、ヒンジキャップ内の空気をこの隙間を通して排出することができ、打栓後のヒンジキャップ内を確実に負圧にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に従うヒンジキャップの実施の形態を示す、(a)は蓋体の閉鎖姿勢で示す断面図(
図2のX−Xに沿う断面図であり、蓋体の開放姿勢を二点鎖線で併せて示す)、及び部分拡大断面図であって、(b)は、(a)のA−Aに沿う断面図である。
【
図2】
図1に示すヒンジキャップを、蓋体の開放姿勢で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従うヒンジキャップの実施の形態を示す、(a)は蓋体の閉鎖姿勢で示す側面視での断面図(蓋体の開放姿勢を二点鎖線で併せて示す)、及び部分拡大断面図であって、(b)は、(a)のA−Aに沿う断面図であり、
図2は、
図1に示すヒンジキャップを、蓋体の開放姿勢で示す平面図であり、
図3は、
図1に示すヒンジキャップの斜視図である。
【0019】
図1(a)において、符号1はヒンジキャップである。ヒンジキャップ1は、キャップ本体10と、キャップ本体10の上部を覆う蓋体20とを備えている。また、キャップ本体10と蓋体20とは、ヒンジhを介して一体連結されていて、蓋体20は、キャップ本体10に対して揺動可能となっている。
【0020】
キャップ本体10は、容器の口部Bを取り囲み、この口部Bにアンダーカット係合によって固定保持される外筒11を備えている。また、外筒11の上端部には、口部Bを覆う天面壁12を一体連結している。天面壁12の裏面側には、口部Bの内周面と液密に当接する環状のシール壁12aを設けている。なお、外筒11は、図示の例では筒状となる1つの周壁で形成されるものであるが、例えば内側壁と、この内側壁を隙間をあけて取り囲む外側壁とを備え、これらの相互間を周方向に間隔をあけて複数個の連結片で切り離し可能に連結させた二重壁構造としてもよく、この二重壁構造の外筒11によれば、内容物を使い切った後に容器とキャップ本体10とを分離させる作業が容易となる。
【0021】
天面壁12には、図示の例では裏面側が凹となる環状の破断予定溝13aを設けていて、この破断予定溝13aの半径方向内側には、密閉壁13を一体連結している。なお、破断予定溝13aは、表面側が凹となるように設けてもよい。
【0022】
また、密閉壁13の表面側には支柱14を起立させて設けていて、支柱14の上端には、環状のプルリング15を一体連結している。内容物を注出させる際には、このプルリング15に指を差し込んで引き上げることで、密閉壁13は破断予定溝13aに沿って引きちぎられて注出開口が形成される。
【0023】
符号16は、密閉壁13を取り囲んで天面壁12から起立する注出筒である。注出筒16の内周側は、注出開口から流出する内容物の注出経路となっていて、その先端は外側に向かって湾曲してリップを形成しており、液切れ性能を高めている。また、注出筒16の内周面には、垂直方向に延びるリブ16aを設けていて、ここでは
図2に示すように、隣接する2本のリブ16aを、密閉壁13を挟んで対向する配置で設けている。
【0024】
符号17は、
図1(a)に示すように、注出筒16を間隔をあけて取り囲む環状壁である。環状壁17は、
図1(a)の拡大図に示すように、その外周面に半径方向外側へ向けて膨出する、環状の外側凸部17aを備えている。また、環状壁17の上端における半径方向内側の縁部は、半径方向内側へ向かって低くなるように傾斜する、内側傾斜面17bとなっている。
【0025】
図2及び
図3に示す符号18は、環状壁17の半径方向外側にて、天面壁12の上面に形成した少なくとも1つの段部である。図示の例で段部18は、平面視にて角形状となっている。また、段部18は、図示の例では周方向に合計7つ設けられている。
【0026】
そして、
図1(a)に示すように蓋体20は、外筒11の外周面に連続するとともに環状壁17を取り囲む環状の周壁21と、周壁21の上端に連結する頂壁22とを備えていて、周壁21の下面は、
図2に示した段部18と当接している。これにより、
図1(a)に示すように、天面壁12の上面と周壁21の下面との間には、隙間Sが形成される。なお、段部18を周壁21の下面に設けて、これを天面壁12の上面に当接させるようにしてもよい。さらに、段部18を設けずに、キャップ本体10に対して蓋体20が浮くようにして隙間Sを形成してもよい。また、周壁21の外周面には、ヒンジhと対向する位置に摘み部Tを設けている。そして、
図1(a)の拡大図に示すように、周壁21の縁部内面には、環状壁17の外側凸部17aに係合して蓋体20を閉鎖姿勢で維持するとともに、環状壁17の外周面と気密に当接する内側凸部21aを設けている。
【0027】
また、周壁21の半径方向内側には、連結壁21bを介して周壁21と一体連結するとともに、周壁21との間で下向きの環状空間Uを形成する環状リブ21cを設けている。環状リブ21cの下端における半径方向外側の縁部は、内側傾斜面17bと同方向に傾斜する外側傾斜面21dとなっていて、外側傾斜面21dは、内側傾斜面17bに気密に当接している。
【0028】
そして、環状リブ21cの外周面には、少なくとも1つの縦リブ21eを設けている。更に連結壁21bには、環状空間Uに対面する少なくとも1つの横リブ21fを備えている。ここでは、縦リブ21eと横リブ21fを一体連結して、
図1(b)に示すように隣接して2本配置するとともに、更にこれら2本の一体化したリブを、
図2に示すように、摘み部Tを除いて合計3箇所に設けている。
【0029】
また、頂壁22の裏面側には、注出筒16の内周面に当接して内容物の注出経路を密閉するシール筒23を一体連結している。これにより、シール筒23は、注出筒16との協働にて、蓋体20の内部空間を、それらを境に半径方向内側に位置する内側空間Cと、半径方向外側に位置する外側空間Kとに区画している。なお、
図1(a)に示すように、シール筒23の先端23aは、蓋体20の閉鎖姿勢にて、リブ16aから僅かに上方に位置している。
【0030】
上記のように構成されるヒンジキャップ1は、加熱された内容物を充填した後、蓋体20を閉めた状態で、打栓によって容器の口部Bに固定保持される。打栓の際、シール筒23の先端23aは、リブ16aに乗り上げるので、内側空間C内の空気は、一時的に形成される注出筒16とシール筒23との隙間から外側空間Kに排出される。
【0031】
また、周壁21の下面は段部18と当接しているので、打栓時において周壁21は、半径方向外側に拡径するようにスライドしつつキャップ本体10側に押し付けられる。これに伴い、環状壁17は、蓋体20の環状空間Uに入り込み、内側傾斜面17bと環状リブ21cの外周面との間には縦リブ21eによって隙間が形成され、また、環状壁17の外周面と内側凸部21aとの間にも隙間が形成される。これにより、外側空間K内の空気もこれらの隙間を通して外界に排出される。なお、環状リブ21cは、環状壁17の内側傾斜面17bに沿って半径方向内側にスライドするので、環状空間Uの間口が広がって、環状壁17を環状空間Uへスムーズに入り込ませることができる。また、上述した段部18は、打栓時において周壁21の下面を支持するので、打栓に伴う蓋体20の変形を有効に防止することができる。
【0032】
そして打栓後は、蓋体20は直ちに復元して、内側空間C及び外側空間Kは元の気密状態に戻るので、内側空間C内及び外側空間K内は負圧となる。これにより、ヒンジキャップ1を口部Bに固定保持後、加熱された内容物によって内側空間C内、及び外側空間K内の空気が次第に温められて膨張しても、蓋体20が勝手に開いてしまうことがなくなる。
【0033】
上述したヒンジキャップ1は、環状壁17の外周面と内側凸部21aとが気密に当接し、外側傾斜面21dと内側傾斜面17bとが気密に当接して、キャップ本体10と蓋体20は二重にシールされている。これにより、冷却工程において容器及びヒンジキャップ1の外側にシャワー水が散布されても、この水のヒンジキャップ1内への浸入を確実に防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、内容物を加熱充填することに伴って発生する、蓋体が勝手に開く不具合やキャップ内へ水が浸入する不具合を、より確実に防止することができるヒンジキャップを提供することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ヒンジキャップ
10 キャップ本体
12 天面壁
17 環状壁
17a 外側凸部
17b 内側傾斜面
18 段部
20 蓋体
21 周壁
21a 内側凸部
21b 連結壁
21c 環状リブ
21d 外側傾斜面
21e 縦リブ
21f 横リブ
B 口部
h ヒンジ
U 環状空間