【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は前記欠点を回避し、費用のかかる、高価な機械のための投資費用を回避し、工具摩擦を減少させかつ短い加工時間を保証し、品質を、特に高いトルク伝達値の達成に関しても好適化することで、内及び/又は外ジョイント部分、ひいては等速固定ジョイントの経済的でかつ品質的に高価値の製造を提供することである。さらにピッチ精度が改善されかつ屑のない製造、特に高精度の球走行軌道が製造可能で、加工時間、特に運転及び操作時間が減じられるようにすることである。さらに支持性が高められかつ廃品が回避されるようにもしたい。
【0011】
さらに本発明は高い強度を有し、高精度で、つまり好適な嵌合と好適な真円回転で高いトルクの伝達を可能にし、価格的に有利な、合理的な製造を可能にするトルク伝達装置を提供し、このような構成部分を備えた装置、機械及び設備の寿命が高められるようにすることである。
【0012】
課題の第1の部分は本発明によれば、軌道底の湾曲が、その軸方向の経過で見て、少なくとも部分的に球接触線の湾曲とは異なるようにジョイント外部分及び/又はジョイント内部分とが構成されていることによって解決された。この場合、「線」という概念には軌道もしくは走行溝における面状の領域又は線及び面の組合わせを含んでいる。この場合には軌道底が、軸方向で見て、部分的にかつ少なくともほぼ軸平行に延びていると有利である。
【0013】
換言すれば本発明によれば軌道は全軸方向の区間に亙って完全に変形される必要はなく、球接触線を達成するために変形が必要であるところだけでしか変形される必要はなくなる。有利にはジョイント内及び/又はジョイント外部分は前成形体として成形工具内で非研削加工で製造されかつ少なくともほぼ軸平行に延在する溝と突起とを、前成形された、球接触線を形成するための輪郭として備えている。
【0014】
前成形は例えば鍛造、例えば冷間及び/又は熱間鍛造方法で製造できるが、他の形状付与法、例えば焼結で製造されることもできる。
【0015】
ジョイント内部分とジョイント外部分とはいずれも、成形工具にて突起もしくは溝を非切削加工で形成することで形成されることができる。この変形は球走行溝もしくは球接触線が幾何学的に最終成形され、これらが切削加工される必要がなくなるカリブレート工具内で行なうことができる。
【0016】
ジョイントが屈曲する場合に球が沿って動く球接触もしくは走行線を製造する場合には有利には、前成形体を製造する場合に形成された溝又は溝底もしくは切欠きの所定の軸方向の領域がカリブレート工具によって変形されず、したがってその領域の少なくともほぼ軸方向に延びる構造が部分的に、ジョイント外もしくはジョイント内部分の完成した外軌道もしくは内軌道の軸方向に経過に亙って維持されたままに保たれる。これはなかんづくわずかな変形作業の利点をもたらす。
【0017】
さらに本発明はジョイント外部分及び/又はジョイント内部分の軌道が前成形技術的に、つまり冷間及び/又は熱間変形で製作され、その際、まず少なくともほぼ軸平行な切欠きを製作し、次いで球走行軌道を逆向きに、有利には同様に変形技術によって、例えばプレスもしくはカリブレート過程で幾何学的に少なくともほぼ完全に、切削加工を必要とすることなしで形成する。
【0018】
この場合には前成形も球接触線の逆向きの経過もそれぞれ1つの作業過程で製作され、しかも冷間及び/又は熱間変形で製作される。この場合には、続いて行なわれる作業過程がカリブレート過程であると有利である。この場合には少なくともジョイント部分の球走行軌道は(硬化方法、例えば浸炭硬化のあとでも)もはや切削加工される必要はなくなる。
【0019】
少なくともほぼ軸方向に平行に延びる切欠きを有する前成形体をまず製作し、次いでこれを球の接触もしくは走行線を有する球走行軌道に変形することによって廃棄物のない製作が保証され、ひいては安価で、合理的な製作と高いピッチ精度が、しかも工具自体によって達成される。機械自体は精度の高い案内は必要としない。何故ならば前成形体において少なくともほぼ軸平行に延びる突起もしくは溝が唯一の工具によってあらかじめ与えられ、球走行溝を仕上げ成形する場合に、工具の成形フィンガ自体が実地において通されるからである。
【0020】
特別な利点は既に述べたように、前成形体が唯一の工具にて製造されると有利である。何故ならば部分のピッチ精度は工具のピッチ精度と同じ精度で得られ、工具が分割されていないためにきわめて高くなるからである。
【0021】
さらにこのような作業のためには、分割された工具の場合には各工具半部のために必要である案内は不要になる。
【0022】
さらに前成形体から交差部、ひいては球走行軌道もしくは溝を形成するカリブレート作業に際しても工具の案内は互いに、既に存在する、正確に分割された前成形体で行なうことができ、したがって特別な案内精度を有する機械は不要である。さらに前成形体自体は狙ってカリブレート工具に挿入される必要はない。何故ならば例えば8つの軌道全部が当初同じでありかつこの同じ物から、カリブレート工具にて、異なったものが製造されるからである。
【0023】
さらにDE10209933C2号明細書(その内容とDE10209933A1号明細書の内容は本願に統合されている)によって保護されたジョイント外部分におけるケージセンタリング面を本発明に従って構成するかもしくは製造することも有利である。
【0024】
外ジョイントにおける前記ケージセンタリング面は、それぞれ隣り合う第1と第2のケージセンタリング面の間で軸方向に延びる溝もしくは凹部が設けられるように構成されていることができる。この場合、前記溝もしくは凹部の底の湾曲度はその軸方向の経過にてケージセンタリング面の湾曲と異なることができる。さらにこの軌道底も、軸方向で見て、少なくとも部分的に少なくともほぼ軸平行に延びることができる。
【0025】
球接触線又は走行軌道のための溝と突起のように前成形体におけるケージセンタリング面も成形工具内で非切削加工で、間に少なくともほぼ軸平行に延びる溝を備えた隣接する半径方向の突起として製作されていることができる。この場合、両方の突起はそれぞれ2つの隣接する走行軌道の間に設けられていることができる。
【0026】
この前成形体は例えば同様に鍛造によって製造されていることができる。ケージセンタリング面は有利には非切削の変形、例えばそれぞれ1つの溝に隣接する突起を成形するカリブレート加工によって仕上げ変形される。この場合には互いに隣接するケージセンタリング面の一方は一方の、例えば駆動側の端部から発して、被駆動側の端部に向かって延び、その際、外ジョイントの軸線に近づき、第2のケージセンタリング面は被駆動側の端部から発して駆動側の端部に向かって延び、その隣、内ボス軸線に近づく。
【0027】
走行軌道と関連して記述したのと同じ形式でこの場合にも、前成形体の溝もしくは突起は少なくとも部分的に維持されることができる。
【0028】
本発明のさらなる構成は、トルクを伝達するために少なくとも1つの構成部材を有するトルク伝達ユニットに関し、前記構成部材に一体成形された、他のエレメントとの形状接続的な係合によってトルク流を形成するそれぞれ2つの機能領域を介してトルクを伝達する。この場合、両方の機能領域の少なくとも一方は成形部、例えば長手方向歯として構成されている。
【0029】
このようなトルク伝達ユニットは例えばDE10220715A1号明細書によって側方軸と関連して公知でありかつDE102371172B3号明細書によって長手方向軸と関連して公知である。
【0030】
DE10220715A1号明細書では側方軸の両端に設けられた球等速ジョイントは、このような構成部分を2つ有し、構成部分にはそれぞれ異なった、各構成部分に一体成形された機能領域が設けられ、該機能領域が形状接続的な係合によりトルク流を形成しかつ該機能領域の一方が長手方向歯として構成されている。
【0031】
この場合、一方の構成部分は形状接続的な係合によるトルク流を形成する一方の機能領域がジョイント外部分に設けられた、一体成形された長手方向歯を有する接続ジャーナルであり、トルクを伝達する他方の機能領域はジョイント外部分における、ジョイントの球のための走行軌道である。
【0032】
同様にトルクを伝達するために2つの機能領域を有する第2の構成部材は、一方の機能領域として中央の内領域に一体に成形された長手方向歯を有し、他方の機能領域としてジョイント内部分に一体成形された球走行軌道を有する。
【0033】
DE10237172B3号明細書によるトルク伝達ユニットではそこに含まれた3つのジョイントの各々のために、同様にトルクを伝達するために2つの機能領域を有するそれぞれ1つの構成部分が設けられている。すなわち、一体成形された長手方向もしくは差込み歯を一方の機能領域としてかつ一体成形された球走行軌道を他方の機能領域として有している。
【0034】
このような構成部分、すなわち例えばジョイント部分においては、内歯は通常はブローチ加工され外歯は通常は立削りされるかフライス加工されるか転造されるか又は圧延されるかして製作されかつ球走行軌道は切削加工又は非切削加工で製作される。
【0035】
十分なトルクを伝達できるためには少なくとも球走行軌道は硬化されている。この走行軌道は誘導的に硬化されることができ、残った領域は、つまり長手方向歯を含めて、基本硬度に保っておくことができる。これは長手方向歯を形成するためには好適であるが、多くの場合に必要となる高い伝達トルク値と所望される耐用年限とを達成することはできない。
【0036】
しかし、例えば誘導硬化された球走行軌道は部分的な硬化に際して発生するひずみに基づき、硬化後、必要な精度に達するために硬く加工されなければならない。つまり、硬くフライス加工又は研磨されなければならない。
【0037】
他の公知の可能性はまず歯をやわらかい状態で製作し、全体を、つまり一体成形された長手方向歯と共に浸炭硬化することである。しかし、この場合には歯にも差込み歯にも硬化ひずみが発生し、この硬化ひずみは長手方向歯の場合だけ付加的な高い費用でしか除去することができない。すなわち、硬い層において相応する、高価な特殊な機械と工具で硬ブローチ加工される必要がある。
【0038】
本発明の別の課題は、トルクを伝達するために2つの機能領域を有する少なくとも1つの構成部分を有し、一方の機能領域が長手方向プロファイリングとして、特に長手方向歯として構成されているトルク伝達ユニットにおいて、構成部分を全体として硬化するが長手方向歯が他方の機能領域よりも
小さい硬さを有するがジョイント外部分又は内部分の基本硬さよりも高い硬度を有し、したがって長手方向歯が球走行軌道よりも
小さい硬度を有するが基本硬さを上回る硬さを少なくともその半径方向の寸法の部分領域に亙って有している。
【0039】
この場合、硬化としては、少なくとも所定の硬化深さが生じる硬化、つまり工作物の基準硬さを少なくともほぼ歯の高さを越えて高める硬化が有利である。この場合に特に有利であるのは拡散プロセスと結合された硬化プロセス、例えば費用的に好適な表面硬化、例えば後続の冷却と焼戻しを伴う浸炭硬化の形の表面硬化である。この硬化プロセスは高い縁硬度及び、少なくともここで対象となっている構成部分の場合には、縁部硬度を有する領域の内部に位置する領域における比較的に低い硬度、核硬度をもたらす。
【0040】
さらに縁硬度を有する領域を少なくともほぼ除去することは、例えば施削プロセスにより、歯が形成される軸方向の領域にて、やわらかい、硬化されていない材料の加工と同様の機械と工具とで実地において同じ条件で、つまり例えば従来のブローチ、フライス、立削り又は類似した機械で行なうことができることが示された。
【0041】
第2の機能領域、この場合には球走行軌道は周知のように縁硬度のゾーンの内部に硬フライス及び/又は研磨されることができる。しかし、全く特別な、独自でかつ独立した発明的な構想は、少なくとも1つがトルク伝達装置に設けられた構成部分であって、それぞれ当該構成部分に一体成形された、形状接続的な係合を介してトルク流を形成する2つの異なる機能領域を有し、一方の機能領域が長手方向歯として構成されかつ他方の機能領域が例えばジョイントの球のための走行軌道であり、構成部分が、特に機能領域の一方が非切削加工で製作され、次いで冒頭に記述したように硬化され、特に表面硬化され、さらに構成部材が、一体成形された球走行軌道が切削加工されていないかもしくはされないことで優れており、したがって球走行軌道が硬化過程のあとで、組込まれた状態にある構成部分を提供し、このような構成部分を製作する方法を提供することにある。このようなジョイントのためには請求項に述べた処置及び/又は明細書に述べた処置を適用することができる。
【0042】
このような構成部分を製造するためには構成部分全体を表面硬化、特に浸炭硬化し、次いで冷却及び焼戻し過程を実行することが有利である。このあとで、長手方向歯を設けようとする軸方向の領域にて硬い領域、つまり縁層と場合によっては移行領域が部分的に除去、例えば切削加工で、すなわち例えば施削によって除去され、次い
でいわゆるコア硬度にもたらされた領域に長手方向歯が形成される。
【0043】
この長手方向歯は既に述べたように、特に切削加工によって、例えばブローチ加工によってしかも軟ブローチ加工によって、すなわち普通の工具と機械で行なうことができる。なぜならば前記工具と機械はブローチ加工を、単に基準硬さを有する部分が許すのと同じ形式で許すからである。
【0044】
本発明は比較的に低いコストで特殊な機械の調達を必要とすることなしに長手方向歯の迅速でかつ合理的な製造を、十分な硬さと相応に高い強度で、熱間ブローチを使用する可能性によって保証する。
【0045】
以下、本発明を
図1から
図18に基づき詳細に説明する。
図1から8にはまず等速ジョイントもしくはその結合が公知技術による長手方向軸を例として示してある。