【0013】
岩塊の安定性評価方法において、(a)打音検査装置を用いた
基盤岩上の評価対象となる岩塊の打音測定により、0〜2000Hzの範囲で最大振幅を示すピークを抽出し、(b)0〜500Hzの範囲において、前記(a)で抽出した前記最大振幅の1/2以上の振幅を示すピークがあるか否かを判定し、(c)前記(b)で、0〜500Hzの範囲に前記(a)で抽出した前記最大振幅の1/2以上の振幅を示すピークがある場合、前記岩塊は不安定岩塊であると判定し、前記(a)で抽出した前記最大振幅の1/2以上の振幅を示すピークがない場合、前記岩塊は安定性が不明であると判定し、(d)前記(c)で安定性不明と判定された場合、0〜2000Hzの範囲における最大振幅が
前記基盤岩の最大振幅の2倍以上か否かを判定し、(e)0〜2000Hzの範囲における前記最大振幅が前記基盤岩の最大振幅の2倍以上である場合、前記岩塊は不安定岩塊であると判定し、2倍未満である場合、前記岩塊は安定乃至不安定岩塊であると判定する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明による安定性評価方法は、次のように2段階に分割することができる。
【0016】
判定の第1段階では、岩塊の振動に関わる情報を含むと考えられる0〜500Hzのピークに注目し、0〜2000Hzの範囲の最大振幅に対する0〜500Hzの範囲の最大振幅の比を、岩塊の安定性評価の指標として判定を行う。後述する適用例では、0〜500Hzの範囲に振動測定の速度スペクトルの卓越周波数と一致する音圧スペクトルのピークが認められる。この値が、安定岩塊の場合は10〜50%、不安定岩塊の場合は10〜100%を示すことから、「不安定」、「安定性不明」の閾値を暫定的に50%と設定した。
【0017】
次に、判定の第2段階では、基盤岩の最大振幅に対する岩塊の最大振幅の比を、岩塊の安定性評価の指標として更なる判定を行う。上述したように、岩塊の測定結果を基盤岩の測定結果で除することで正規化することにより、岩種によらず基盤岩に比べて岩塊(安定岩塊、不安定岩塊)の方が音圧スペクトルの最大振幅が大きいことがわかっている。そこで、本発明では、「不安定」、「安定〜不安定」の閾値を暫定的に基盤岩の振幅の2倍に設定した。
【0018】
次に、本発明による安定性評価方法のフローについて具体的に説明する。
【0019】
図1は本発明による岩塊の安定性評価フローを示す図である。
(a)打音検査装置を用いた岩塊の打音測定により、0〜2000Hzの範囲で最大振幅を示すピークを抽出する(ステップS1)。
(b)0〜500Hzの範囲において、ステップS1で抽出した最大振幅の1/2以上の振幅を示すピークがあるか否かを判定する(ステップS2)。
(c)0〜500Hzの範囲に最大振幅の1/2以上の振幅を示すピークがある場合(ステップS2のYES)、不安定岩塊と判定する(ステップS3)。あるいは、最大振幅の1/2以上の振幅を示すピークがない場合(ステップS2のNO)、岩塊の安定性が不明であると判定する(ステップS4)。
(d)安定性不明と判定された場合、0〜2000Hzの範囲における最大振幅が基盤岩の最大振幅の2倍以上か否かを判定する(ステップS5)。
(e)0〜2000Hzの範囲における最大振幅が基盤岩の2倍以上である場合(ステップS5のYES)、不安定岩塊と判定する(ステップS6)。あるいは、最大振幅が基盤岩の2倍未満である場合(ステップS5のNO)、安定〜不安定岩塊と判定する(ステップS7)。
【0020】
なお、この安定性評価フローにおいて、ステップS1〜S4が上述した第1段階に相当し、ステップS5〜S7が第2段階に相当する。
【0021】
以下、本発明の具体的な適用例について説明する。
【0022】
表1は具体的な適用例による判定結果を示しており、
図2は本発明の具体的な適用例において0〜500Hzの範囲のピークに注目した判定結果を示す図、
図3は本発明の具体的な適用例において0〜2000Hzの範囲のピークに注目した判定結果を示す図である。
【0023】
【表1】
【0024】
ここでは、安山岩からなる斜面で適用した結果を示す。
【0025】
適用の結果、ハンマー打診および目視観察による定性的評価により不安定と判断された岩塊は、本発明の評価方法によっても全て不安定と判定された。
【0026】
まず、不安定と判定された岩塊(岩塊9〜33)のうち10岩塊(岩塊10,14,15,17,18,22,24,25,29,33)で、0〜500Hzの範囲に最大振幅の1/2以上の振幅を示すピークが認められた。これは、本発明の安定性評価方法の第1段階で不安定岩塊と判定されたことを意味し、表1および
図2においてB/A(ここで、Aは0〜2000Hzの最大振幅、Bは0〜500Hzの最大振幅)比は0.50以上の値を示している。また、そのうち2岩塊(岩塊18,24)は、0〜500Hzの範囲のピークが0〜2000Hzの範囲の最大振幅と等しく、即ちB/Aの値が1.00となっている。
【0027】
不安定と判定された岩塊のうち残りの15岩塊(岩塊9,11〜13,16,19〜21,23,26〜28,30〜32)は、基盤岩の振幅との比較によって不安定と判定された。これは、本発明の安定性評価方法の第1段階では安定性不明と判定され、第2段階で不安定岩塊と判定されたことを意味し、表1および
図3においてA/〔基盤岩の最大振幅〕の比は2.0以上の値を示している。また、そのうち11岩塊(岩塊9,12,13,16,19,20,26〜28,30,31)は、基盤岩の5倍以上の振幅を示し、即ちA/〔基盤岩の最大振幅〕の値が5.0以上となっている。
【0028】
一方、定性的評価により安定と判断された岩塊(岩塊1〜8)は、本発明の評価方法では、3岩塊(岩塊5,6,8)が安定と判定され、5岩塊(岩塊1〜4,7)は不安定と判定された。
【0029】
不安定と判定された5岩塊のうち1岩塊(岩塊1)は、0〜500Hzの範囲に最大振幅の1/2以上の振幅を示すピークが認められた(表1、
図2参照)。残りの4岩塊(岩塊2〜4,7)は、A/〔基盤岩の最大振幅〕の比が3.7〜5.2の値を示したが、これらの値は、定性的評価によっても不安定と判断された岩塊(岩塊9〜33)に比べて低い傾向がある(
図3参照)。
【0030】
以上のことから、本発明による打音測定による岩盤斜面中の岩塊の安定性評価方法によれば、目視観察等の定性的評価により不安定と判断される岩塊を全て不安定岩塊と判定することができ、さらに、定性的評価では安定と判断される岩塊についても不安定岩塊か否かを評価することができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。