特許第5882215号(P5882215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882215
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】微小粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/533 20060101AFI20160225BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20160225BHJP
   G01N 33/552 20060101ALI20160225BHJP
   G01N 33/553 20060101ALI20160225BHJP
   G01N 33/545 20060101ALI20160225BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20160225BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   G01N33/533
   B81C1/00
   G01N33/552
   G01N33/553
   G01N33/545 A
   C12M1/00 A
   C12M1/34 Z
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-533448(P2012-533448)
(86)(22)【出願日】2010年10月14日
(65)【公表番号】特表2013-507621(P2013-507621A)
(43)【公表日】2013年3月4日
(86)【国際出願番号】CH2010000257
(87)【国際公開番号】WO2011044708
(87)【国際公開日】20110421
【審査請求日】2013年10月9日
(31)【優先権主張番号】09012970.1
(32)【優先日】2009年10月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514305091
【氏名又は名称】ミカルティス ナームローゼ フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】MYCARTIS NV
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ デミエール
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ガンペ
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−516195(JP,A)
【文献】 特開2006−208198(JP,A)
【文献】 特表2009−516822(JP,A)
【文献】 特開2002−214241(JP,A)
【文献】 特開2005−148626(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0278942(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/014848(WO,A2)
【文献】 特開2009−294195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/533
B81C 1/00
C12M 1/00
C12M 1/34
G01N 33/545
G01N 33/552
G01N 33/553
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光アッセイの支持体として適した微小粒子の製造方法であって、
(a)下層、絶縁層及び上層を含むサンドイッチ構造を有するウェーハを提供する工程、
(b)上層をエッチングして微小粒子を描画する工程;
(c)絶縁層をエッチング除去する工程;
(d)微小粒子を引き離すことが可能な力を避けて微小粒子を保持し続けながら、ウェーハの上に層を堆積する工程;及び
(e)微小粒子をウェーハからリフトオフする工程
を含み、その際、工程(d)が工程(c)の後であり且つ工程(e)の前に起こる、前記製造方法。
【請求項2】
ウェーハがSOIウェーハである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(d)の層が誘電材料である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
誘電材料が酸化物又は窒化物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
誘電材料が二酸化ケイ素である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
工程(d)の層がポリマー又は金属である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
ポリマーがパリレンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
金属がアルミニウム、クロム、金及び銀からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
工程bを、
(i)感光性レジスト層をウェーハ上にスピン塗布すること;
(ii)フォトリソグラフィ技術を用いて該感光性層上で微小粒子を描画すること;及び
(iii)シリコン上層をエッチングすること
によって実施する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(iii)を、深いシリコンエッチングによって、好ましくはボッシュ法によって行う、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
感光性レジスト層がネガ型又はポジ型のフォトレジストである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
工程(d)の層の堆積を、プラズマ強化化学蒸着、蒸着又はスパッタリングによって行う、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(e)が音波処理によって実施される、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
微小粒子にリガンドを結合させる工程を更に含む、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小粒子、特にシリコンの微小粒子、及びこれらのコーティング方法に関する。
【0002】
序論
複数の刊行物(例えば、欧州特許EP1276555B1号)は、ウェーハベースの微小製造技術を用いる、微小粒子、特にシリコンの微小粒子の製造を記載している。抗体又は核酸などの生物学的プローブを、次いで、当該技術分野で公知の技術を用いてそれらの微小粒子に結合させることができ、続いて、該微小粒子を試料中の標的分析物の検出に使用できる。
【0003】
しかしながら、シリコンの微小粒子の表面で蛍光プローブ(典型的には5’端でFAM蛍光体により標識されたssDNAプローブ)を結合させて、その後、Cy5で標識された相補的標的によるハイブリダイゼーションアッセイを行う場合、蛍光体は、ハイブリダイゼーション前のFAMチャネルでもハイブリダイゼーション後のCy5チャネルでも蛍光シグナルを示さなかった。
【0004】
研究後、これは部分的に反射性のシリコン微小粒子の表面で光を生じる破壊的な光干渉によって引き起こされると考えられた。この現象は、複数の科学的刊行物(Bras, M.ら、Optimisation of a silicon/silicon dioxide substrate for a fluorescence DNA microarray. Biosensors & bioelectronics, 2004. 20(4): 第797〜806頁; Volle, J.N.ら、Enhanced sensitivity detection of protein immobilization by fluorescent interference on oxidized silicon. Biosensors and Bioelectronics, 2003. 19(5): 第457〜464頁)に記載されている。同じ現象が反射性の材料ではある程度まで見られる。
【0005】
上記の科学的刊行物は、蛍光体を表面から離して、この効果を、蛍光シグナルを示し且つ潜在的に増幅させる建設的な光干渉へと逆にするために、最適化された厚さでの酸化物層の添加を示唆する。類似の方法、即ち、固有の厚さを有する透明な層(二酸化シリコン、窒化シリコン又はその他のもの)の添加は、シリコン以外の材料に基材として適用され得る。
【0006】
研磨シリコンウェーハ(又はSOI(silicon-on-insulator)ウェーハ)の反射係数は、500〜700nmの波長範囲で約35〜40%である。これは、有意な光干渉がこの範囲内で生じることを意味しており、これにはFAM、Cy3、及びCy5などの一般的な蛍光標識が含まれる。この干渉効果は、蛍光標識をシリコンの反射表面から離す層(この場合、酸化物)の厚さに依存する。特定の場合、干渉が蛍光シグナルを完全にアニールし得るが、他の場合にはシグナルを強力に強める。干渉は、層の厚さに応じて、層の屈折率に応じて、光の波長に応じて、及び入射角に応じて、破壊的又は建設的のいずれかであってよい。例えば、準垂直入射では、基材によって鏡のように反射した光線の建設的な光干渉は、電磁界「アンチノード」の位置で最大であり、これは基材からの距離dan=(2k+l))λeff/4に一定間隔で位置し;kは正の整数であり且つλeffは伝搬媒質における光の波長である。従って、k=0の場合、共通のCy5蛍光標識について、dan=λeff/4=λCy5/noxide/4=654/1.45/4=113nmであり、式中、λCy5は吸光ピークと発光ピークとの間の平均値であり、noxideは二酸化ケイ素の屈折率である。従って、最大の建設的な光干渉を達成するために、層は約113nmの厚さを有する必要がある。同じ推論が他の蛍光標識にも適用される。
【0007】
上記で参照された化学的刊行物は、シリコン基材の上面に酸化物層を追加する方法を記載している。しかしながら、これらの方法は、容易に扱えて且つ既にそれらの最終的な様式である大きな基材にのみ適用可能である。ミクロン範囲、典型的には1〜300ミクロンの小さな微小粒子、例えば、ここで考慮されているものについては、これらの方法はすぐに適用できない。典型的には、かかる小さな微小粒子は、懸濁液中で、粉末として「バッチ式で」扱われるか又は一時的に大きな基材につながれており、当該技術分野で開示された方法は、かかる条件で要求される工程をどのように実施するか教示していない。
【0008】
ウェーハベースの微小製造技術を用いる微小粒子の製造は当該技術分野で周知である。これらの技術は、典型的には絶縁体層を有する特定のウェーハ(SOIウェーハ)を使用する。微小粒子は、デバイス層上部に構成され、次いで埋込み絶縁層をエッチングで除去して剥離される。例えば、WO2009/014848号、WO07/081410号、GB2306484号、US2003/203390号、EP1018365号及びEP2113301号は、様々な形状及び構造を有する種々の(通常コードされた)微小粒子の製造を記載している。
【0009】
しかしながら、上記の正の干渉の構成に寄与し得る本質的に透明な層を追加するための製造技術が当該技術分野で要求されている。透明な層の追加の課題は、この透明な層を構成する材料が、絶縁層(SOIウェーハ中の埋込み絶縁層)として使用される材料と同じ場合に特に挑戦的である。なぜなら、かかる追加の層は、通常、HF(フッ化水素酸溶液)の溶液又は蒸気中で、絶縁体をエッチングで除去した時に部分的に又は全体的に除去されるからである。
【0010】
この課題を克服してこれらの微小粒子のコーティングを行うための可能な方法は、従来の懸濁技術を用いることであり得る。要求される厚さ及び要求される規則性/反復性を有する層によるコーティングを達成可能な方法は未だ知られていない。実際に、バッチ毎に不規則な又は異なる厚さは、同量の結合された蛍光体の場合(即ち、同量の標識された標的が捕捉される)、時間毎に不規則な又は異なる蛍光標識表示をもたらし、これは量子化を困難に又は不可能にする。例えば、数ナノメートル、典型的には3nmの薄い酸化物層は、ピラニア溶液(典型的な比3:1での硫酸HSOと過酸化水素Hとの混合物)中の微小粒子を酸化する時に得られ、これは破壊的な光干渉を作ることによって微小粒子に対して垂直な蛍光読み取りを妨げる。別の例は、ナノ粒子のシリカコーティングに類似するゾルゲル法を用いて微小粒子の周りに薄いシリカ(二酸化ケイ素)のシェルを形成すること(Graf C, Vossen DLJ, Imhof A, van Blaaderen A. A General Method To Coat Colloidal Particles with Silica. Langmuir. 2003; 19 (17): 6693-6700)であるが、これは制御された均一な層を提供せず、また要求される約100nmの厚さも達成しない。化学的溶液堆積としても知られる、ゾルゲル法は、材料科学の分野で広範に使用される湿式化学技術であり、これは主に、バラバラの粒子又は網状ポリマーのいずれかの統合網(又はゲル)の前駆体として働く、化学的溶液(又はゾル)から出発する材料(典型的には酸化物)の製造に使用される。
【0011】
ここで再び、ポリマー層が酸化物層の代わりに考慮されてもよいが、要求される厚さ(100nmを上回る)及び均質性を有する層を得ることが困難になる。
【0012】
従って、要求される厚さ及び規則性/反復性を有する表面上に、層、好ましくは透明な層、更に好ましくは酸化物層を有する微小粒子の製造を可能にする方法が当該技術分野で要求されている。
【0013】
発明の要約
本発明は、微小粒子の表面上に存在する蛍光シグナルの光学的な表示に適した平坦な微小粒子を製造するための新規なウェーハベースの微小製造のプロセスを提供する。微小粒子の微小製造は、シリコン又はMEMS(微小電気機械システム)の製造所などのクリーンルーム設備で日常的に実行されている標準的なプロセスに基づく。このプロセスは、一表面及びその外周上に堆積された薄膜層を有する微小粒子の革新的な製造方法と組み合わされて、エッチングプロセス工程の間の予期しない挙動を利用する。
【0014】
従って、第1の態様において、本発明は、蛍光アッセイに適した微小担体の製造方法であって、
(a)下層、絶縁層及び上層を含むサンドイッチ構造を有するウェーハを提供する工程、
(b)上層をエッチングして微小粒子を描画する工程;
(c)絶縁層をエッチング除去する(微小粒子の前剥離)工程;
(d)微小粒子を保持し続けるウェーハの上に薄膜層を堆積する工程;及び
(e)微小粒子をウェーハからリフトオフする工程
を含む、前記製造方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明はここで開示された方法によって得られるシリコン微小粒子を提供する。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、ウェーハ様形状を有し且つ一表面上及びその外周上を誘電材料の層によって被覆されているシリコン微小粒子及び/又はシリコン微小担体を提供する。
【0017】
微小粒子は、典型的には0.1〜300マイクロメートルの間に含まれる寸法を有し且つコードされてよく、例えば、診断用途に、好ましくは多重アッセイに使用されてよい。
【0018】
蛍光ベースのアッセイを実施して、かかる微小粒子及び/又は微小担体を蛍光画像に曝す時に、追加の層で被覆されている表面及び外周は、蛍光シグナルを与えるが、従来の蛍光顕微鏡法を用いることによって、層で被覆されていない表面には蛍光シグナルは見られない。
【0019】
図面
本発明はより良く理解され、前記のものとは異なる対象は、その以下の詳細な説明を考慮する時に明らかになる。かかる説明は添付の図面を参照し、その際、
【0020】
図1は、本発明による例示的な6段階の微小製造プロセスフローを示す。左列は断面図を示すが、右列は本願明細書に記載された製造プロセスの6つの異なる工程の間の微小粒子の平面図を示す(下層3;埋込み層(又は絶縁層)2、上層1、感光性レジスト層4、コードの一部として微小粒子を移動させる孔5、薄膜層6)。
【0021】
図2はPECVDによる酸化物堆積後の微小担体表面のSEM特性を示す。
【0022】
図3は蒸着による酸化物堆積後の微小担体表面のSEM特性を示す。
【0023】
図4は酸化物厚さを変化させる蛍光読み取りのグラフ図を示す(蛍光強度の表示からバックグランド蛍光を引く)。
【0024】
図5はFITC標識したシリコン微小粒子の表面にわたる蛍光分析を示す。この実施態様では、微小粒子はコードされ、このコード(孔)は、グラフと明確に区別される。
【0025】
図6は、ハイブリダイゼーションアッセイで相補的DNA標的と反応したDNAプローブを有する(この態様でコードされた)生体機能化された微小粒子の顕微鏡像を示す。2つの左像(A、C)は強い光の下で取られて全ての微小粒子を示す。2つの右像(B、D)は蛍光の下で取られて、蛍光標的と反応した微小粒子を表す。
【0026】
図7は、ハイブリダイゼーションアッセイで相補的DNA標的と反応したDNAプローブを有する生体機能化された微小粒子(酸化物層を有していない)の顕微鏡像を示す。2つの左像(A、C)は強い光の下で取られて全ての微小粒子を示す。2つの右像(B、D)は蛍光の下で取られる。蛍光シグナルは、シリコン表面で破壊的な光干渉効果のために見ることができない。
【0027】
図8はウェーハ形態の微小粒子の様々な例を示す。前面7はディスクの形(上)、四角形の形(下)、又は八角形の形(中)を有する。
【0028】
図9はゾルゲル法からの薄く且つ不均一なシリカ層で被覆した微小粒子のSEM像を示す。像はコーティングの斑点のある表面を示す。
【0029】
図10は層ごとにゾルゲル法を用いてシリカ層で被覆し且つDNA配列で標識されたCy5で機能化した微小粒子の蛍光像を示す。蛍光シグナルは、強度の大きな変動と、微小粒子内の及びその両端の表面均一性を示す。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明の範囲内で、以下の定義が適用される:
「機能化」又は「生体機能化」とは、所与の標的分子(分析物)のための捕捉分子又は受容体分子として働き得る、1種以上であるが、好ましくは1種の、その表面に結合されたリガンドを有する担体又は微小担体を意味する。用語「分子」は広く理解されるべきであり且つ複数の分子、粒子又は細胞を含み得る。例えば、標的「分子」は、ウィルス粒子であってよく及び/又は捕捉「分子」(リガンド)は抗原結合フラグメントの群であってよい。別の例では、標的「分子」は、DNA、RNA又はssDNA断片などの核酸であってよく、捕捉「分子」は、前者とハイブリッド形成するように設計されたDNA、RNA又はssDNA断片などの別の核酸であってよい。さらに、特に1つの標的分子を捕捉するために、別の捕捉分子が必要になり得る。本発明の範囲内で、記載された例は、「捕捉分子」又は「標的分子」としてそれぞれ分類する。リガンド及び標的分子は、天然、合成又は半合成であってよい。
【0031】
用語「機能」とは、所与の標的分子と結合及び/又は反応する能力を意味し、従って特定のリガンドの存在を意味する。
【0032】
用語「リガンド」、「捕捉分子」及び「受容体分子」は本願明細書では同義に使用される。同じことが用語「標的分子」及び「分析物」にも適用される。
【0033】
「微小粒子」とは、顕微鏡的サイズにおいて、典型的には最大寸法が100nm〜300マイクロメートル、好ましくは1μm〜200μmである、任意の種類の粒子を意味する。微小粒子は任意の形状及びサイズであってよい。好ましくは、微小粒子はウェーハの形態を有しており、これはその高さがその幅及びその長さの両方よりも顕著に(例えば、少なくとも2倍)小さく、それらが2つの殆ど平行及び殆ど平坦な表面を上面及び下面に有することを意味する。
【0034】
本願明細書で使用される「微小担体」とは、試料中の分析物を分析及び/又はこれと反応させるために機能化された微小粒子である。用語「機能化微小担体」は、本願明細書で同時に使用される。
【0035】
本願明細書では「ウェーハ様形状」又は「ウェーハの形」とは、その高さがその幅及びその長さの両方よりも顕著に(例えば、少なくとも2倍)小さく、微小粒子が2つの殆ど平行及び殆ど平坦な表面(前面)をその上面及びその下面に有する、微小粒子の特定の形状を意味する(図8を参照のこと)。「ディスク様」形状とは、円形前面を有するウェーハの形態の形状を意味する。
【0036】
第1の態様において、本発明は、蛍光アッセイに適した微小担体の製造方法であって、
(a)下層、絶縁層及び上層を含むサンドイッチ構造を有するウェーハを提供する工程、
(b)上層をエッチングして微小粒子を描画する工程;
(c)絶縁層をエッチング除去して、それによって微小粒子をウェーハから前剥離させる工程;
(d)微小粒子を保持し続けるウェーハの上に薄膜層を堆積する工程;及び
(e)微小粒子をウェーハからリフトオフする工程
を含む、前記製造方法を提供する。
【0037】
好ましい実施態様において、ウェーハの下層及び上層は、単結晶シリコンで作られているか又は該シリコンを含んでいる。好ましくは、このウェーハはSOI(silicon-on-insulator)ウェーハである。SOIウェーハは市販されている(供給者の例:ICEMOS TECHNOLOGY LTD, 5 Hannahstown Hill. Belfast)。それらは3層、即ち、単結晶シリコンで作られた厚い下層3、BOX(埋込み酸化物層)と呼ばれる酸化物で作られた埋込み層(又は絶縁層)2、及び単結晶シリコンで作られたデバイス層と呼ばれる上層1のサンドイッチ構造から構成される。上層1は、これが遥かに薄い、典型的には1〜10マイクロメートルであることを除いて、下層3と化学的に同一である。埋込み層2の典型的な厚さは10nm〜1μmの範囲である。デバイス層1の典型的な厚さは100μm〜500μmの範囲である。この厚さの解像度は典型的には100nmのオーダーである。
【0038】
工程(b)は、多様な方法で行ってよく、好ましくはフォトリソグラフィである。記載した方法の好ましい実施態様において、工程(b)は
(i)感光性レジスト層をウェーハの上層に塗布すること;
(ii)フォトリソグラフィ技術を用いて該感光性層上で微小粒子を描画すること;
(iii)微小粒子を描画するために上層をエッチングすること;及び
(iv)該感光性層を除去すること
によって実施される。
【0039】
感光性レジストはポジ型又はネガ型のフォトレジストであってよい。ポジ型のレジストの一例は、Shipley Companyから供給されるMICROPOSIT S 1805 PHOTO RESISTであり、ネガ型のフォトレジストの一例はGersteltec Engineering Solutionsから供給されるGM1040 SU-8 PHOTO EPOXYである。
【0040】
感光性レジスト層4は、当該技術分野で公知の種々の技術、例えば、スプレーコーティング、又は好ましくはスピンコーティングによってウェーハ上に適用されてよい。
【0041】
典型的には、微小粒子の表面レイアウト7を描画するために、感光性レジスト4は、クロム/ガラスマスクなどのマスクを通してUV光で照射される。微小粒子レイアウトに対応するマスクのオープンパターンは、空間選択的なUV照射を提供する。光開始剤が反応して、感光性レジストが空間選択的に照射されたレジストの重合を開始させる。次に特定の化学作用を用いて未露光の及び未反応のレジストを除去する。硬化したレジストのパターンを残して微小粒子の外形を画定する。
【0042】
本願明細書の好ましい実施態様において、硬化したフォトレジスト4のパターンを残してコードを更に画定する。前記コードは、好ましくは、微小粒子中の、孔状構造5ではない、更に好ましくは全貫通孔の存在からなるバイナリーコードにある。
【0043】
続いて、上層がエッチングされる(工程(iii)を参照のこと)。これは例えば、ディープ反応性シリコンエッチング(DRIE)、例えば、DRIE(Deep Reactive Ion Etching; Madou MJ, 2002, Fundamentals of microfabrication, CRC Press)に基づくディープシリコンエッチングのためのボッシュ法(J.K. Bhardwaj, H. Ashraf, Proc. SPIE, 2639, 224 (1995); A. Schilp, M. Hausner, M. Puech, N. Launay, H. Karagoezoglu, F. Laermer, Advanced etch tool for high etch rate deep reactive ion etching in silicon micromachining production environment, Proceeding MST 2001, Dusseldorf)によって行ってよい。
【0044】
次にウェーハからの微小粒子の「前剥離」が続く。本願明細書に記載された方法の工程(c)において、絶縁層2がエッチング除去される。これは、エッチング除去されるべき材料がエッチング剤の液相中又はエッチング剤の気相中にそれぞれ浸漬される任意の適した化学的又は化学物理的エッチング法によって達成される。フッ化水素酸蒸気相エッチャー(HF VPE)の使用が好ましい。HFは室温で蒸発し、エッチングプロセスが自発的に開始される。エッチング速度は好ましくはウェーハ温度によって制御され、これは35℃〜60℃に調整されてよい。マスクによって与えられた設計に従ってパターン形成された上層1の材料からなる層が残る。
【0045】
絶縁層2は犠牲層として使用され、この除去は基材ウェーハからの微小粒子の剥離又はリフトオフを意味する。しかしながら、最初の予想とは異なり、微小粒子は飛び出さないが、基材ウェーハに、即ち、残っている下層3に結合されたままである。全ての微小粒子は、絶縁層のエッチング前にそれらがあったのと殆ど同じ位置に留まる。理論により拘束されないが、この予想外の挙動は、微小粒子の非常に小さいサイズ、体積、及び質量によるものである。粒子の結合を維持する力は、恐らく分子間の及び静電的な相互作用によるものであり、未だ完全に特徴付けられていない。それらは逆さの配置でさえもウェーハのマニプレーションを可能にし、これは複数の次のプロセス工程にとって鍵であり且つ広範のクリーンルームプロセス、例えば、微小粒子の機械的、光学的、熱的、又は磁気特性を変性するための金属、合金、及び酸化物の堆積を、ウェーハが逆さに維持されることを要求される場合でさえも、可能にする。
【0046】
剥離工程の完了は、例えば、完全なHF蒸気放出後の傾斜角を示す、微小粒子上での色のランダムな分布を観察することによって、位相差顕微鏡法又はDIC(微分干渉コントラスト)顕微鏡法の下で確認することができる。
【0047】
微小粒子が未だウェーハに結合されているので、次に追加の薄膜層6が工程(d)において微小粒子上に堆積され得る。この薄膜層の追加は、それらが微小粒子を引き離すような、ウェーハの加速又は表面上への力の印加を要求しない限り、様々なクリーンルームプロセスを用いて行うことができる。好ましくは、スプレーコーティング又はスピンコーティングなどのウェーハの振動又は回転を伴うプロセス、又は積層法などの結合された微小粒子に機械的応力を作用させることを伴うプロセスは避けるべきである。従って、好ましい実施態様において、PECVDなどの気相中で種々の材料の薄膜堆積、蒸着、又はスパッタリングが使用される。
【0048】
工程(d)の薄膜層6は、好ましくは殆ど透明であり且つ好ましくは誘電材料、更に好ましくは酸化物又は窒化物、更に一層好ましくは二酸化ケイ素である。しかしながら、本願明細書で開示された方法は、好適なポリマー、例えば、パリレン又は金属(アルミニウム、クロム、金、銀など)の堆積にも適している。
【0049】
光学的な変更の場合、層6の厚さは、これが後で表面蛍光読み取りの間に光干渉機構を規定するので、最も重要である。この典型的な厚さは、赤色の蛍光標識で働く場合、約110nmである。透明な層を得るために、任意の誘電材料、例えば、窒化物を使用してよい。しかしながら、最適な誘電体厚は、これが伝搬媒質の反射率について調整されたので異なる。
【0050】
工程(d)における薄膜層6の堆積は、多くの公知の方法、例えば、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)によって、蒸着によって又はスパッタリングによって行ってよい(Madou MJ, 2002, Fundamentals of microfabrication, CRC Pressを参照のこと)。典型的な装置は、それぞれOxford Plasmalab System 100、Leybold Optics LAB 600H、及びPfeiffer SPIDER 600である。PECVDなどの薄膜堆積プロセスの間に堆積された材料の厚さは反応時間によって制御される。好ましくは、振動及び/又は振盪及び/又は回転を用いるような重要なウェーハの加速を要求するプロセスは、前剥離される微小粒子が得られる機械的応力によって引き離され得るので避けられる。
【0051】
従って、スピンコーティングに基づく堆積方法は回避されるべきである。
【0052】
シリコン基材ウェーハを使用する場合、堆積温度は好ましくはできるだけ低く維持されて、前剥離されたシリコン微小粒子がシリコン基材ウェーハと融着することを防ぐ。典型的な温度は室温(RT)〜300℃の範囲である。
【0053】
一実施態様において、二酸化ケイ素はPECVD技術によって堆積される。この目的のために、ジクロロシラン又はシラン及び酸素などの気体の混合物は、典型的には数百ミリトール〜数トールの圧力で使用される。
【0054】
工程(e)において、微小粒子は最終的に基材3からリフトオフする(即ち、実際に剥離する)。これは、水音波浴中で音波処理などの機械的撹拌下でアセトンなどの液体溶液中にウェーハを浸漬することによって又は振動させることによって行ってよい。この音波処理に基づく方法は、瞬時に微小粒子を基材ウェーハから取り除いて液体溶液に移動させた。
【0055】
前記方法によって得られる微小粒子及び/又は微小担体は、好ましくは殆ど平坦な形状を有し、即ち、典型的には平坦である。表面7のレイアウトは典型的にはフォトリソグラフィプロセスで使用されるマスクによって規定される(上記を参照のこと)。具体的な表面のレイアウトは、ディスク、四角形又は八角形である(図8を参照のこと)。最も好ましくはディスク様形状である。好ましくは、その直径は1〜300μmの間の範囲である。
【0056】
有利な実施態様において、微小粒子はコードされ、好ましくはデジタルコード、更に一層好ましくは彫り込まれたデジタルコードである。このような彫り込まれたデジタルコードは、例えば、1つ以上の孔様構造5の存在又は不在から構成されており、好ましくは粒子の全厚さにわたる(「全貫通孔」とも呼ばれる)。従って、特定の微小粒子上の特定の位置での孔5の設定は、その微小粒子のコードであるバイナリー数として解釈できる。このコードは解読工程の間に白色光照射の下で単純なオプチックスによって読むことができる。例えば、多重バイオアッセイで使用される場合、微小粒子のコードは、微小粒子の表面に結合される固有の種類のプローブを示す。
【0057】
別の態様では、本発明はここで開示された方法によって得られるシリコン微小粒子及び/又はシリコン微小担体を提供する。
【0058】
さらに別の態様では、本発明は、ウェーハ様形状を有し且つ一表面上及びその外周上を誘電材料の層によって被覆されているシリコン微小粒子及び/又はシリコン微小担体を提供する。
【0059】
本願明細書で提供される微小担体は、生物学的アッセイで使用されてよい。この目的のために、クリーンルームで微小製造された後に、微小粒子は、抗体又はssDNA配列などの1つ以上の捕捉プローブで生体機能化され、次いで対応するバイオマーカーを捕捉するために生物学的試料で使用されてよい。蛍光アッセイでは、該アッセイは、バイオマーカーの捕捉が微小粒子の表面に生じる蛍光シグナルによって明らかになり、且つ蛍光読み取りによって検出できるように設計されている。これは、典型的には相補的な分子に結合された又は分析物に直接結合された蛍光標識の使用を含む、当該技術分野で公知の方法を用いて行われる。微小粒子及び/又は微小担体は、例えば、患者のバイオマーカープロフィールを得るための、多重アッセイにおいて特に有用である。前述の目的のために、理想的には異なるコードを有する微小担体が使用される。
【0060】
一実施態様において、微小製造プロセスのフローは、図1を参照すると、以下の通り記載された6つの主な工程を含む:
1.最初のSOIウェーハ(典型的には、4インチの直径、380μmの厚さの基材ウェーハ3、1μmの厚さのボックス2、10μmのデバイス層1の寸法に制限されない)を提供する。
2.ポジ型の感光性レジスト4をSOIウェーハ上にスピンコーティングする。感光性レジスト4をクロム/ガラスマスクを介してUV光で照射する。微小粒子レイアウトに対応するクロム層中のオープンパターンは、空間選択的なUV照射を提供する。光開始剤が反応して、感光性レジストが空間選択的に照射されたレジストの重合を開始させる。次に特定の化学作用を用いて未露光の及び未反応のフォトレジスト4を除去する。硬化したフォトレジスト4のパターンを残して、特に特定の実施態様で、更にはデジタルコードで、微小粒子の外形7を画定する。これは次の工程のシリコンエッチングのためのマスクとして働く、即ち、これはレジストで被覆された領域がエッチング除去されることを防ぐ。
3.保護レジスト4を有していない上のシリコン層1は、例えば、周知のボッシュ法を用いて層全体を通して完全にエッチング除去される。エッチングはボックス層2が到達した時のみ停止する。次にレジスト4が湿式化学浴中で除去される。微小粒子の設計によってパターン形成された、きれいな単結晶シリコン層1が残る。
4.この工程が「前剥離」プロセスである。ボックス層2は、例えば、フッ化水素酸蒸気相エッチャー(HF VPE)によって完全にエッチング除去される。HFは室温で蒸発し、エッチングプロセスが自発的に開始される。エッチング速度はウェーハ温度によって制御され、これは35℃〜60℃に調整されてよい。ボックス層2は犠牲層として使用され、この除去は基材ウェーハからの微小粒子の剥離又はリフトオフを意味する。HF蒸気放出の完了は、HF蒸気放出完了後の異なる傾斜角を示す、微小粒子上の色のランダムな分布を観察することによって、位相差顕微鏡法又はDIC(微分干渉コントラスト)顕微鏡法の下で確認することができる。
5.微小粒子が未だウェーハに結合されている事実を利用して、次に二酸化ケイ素などの追加の酸化物層6を微小粒子上に堆積させる。PECVD、蒸着、又はスパッタリングなどの異なる種類の酸化物堆積法を用いてよい。堆積温度は、前剥離されたシリコン微小粒子がシリコン基材ウェーハと融着することを防ぐためにできるだけ低く維持されるべきである。典型的な温度は室温(RT)〜300℃の範囲である。PECVD技術からの二酸化ケイ素の堆積のために、ジクロロシラン又はシラン及び酸素などの気体の混合物は、典型的には数百ミリトール〜数トールの圧力で使用される。
6.微小粒子は最終的に、水音波浴中で穏やかな音波処理の下でアセトンなどの液体溶液中にウェーハを浸漬することによって基材からリフトオフする(即ち、実際に剥離する)。この音波処理に基づく方法は、瞬時に微小粒子を基材ウェーハから取り除いて液体溶液に移動させた。微小粒子は液体コンテナ又は容器内の懸濁液中に保持し、次の回収のために沈降させる。アセトン中に保持された微小粒子は、例えば、短音波処理パルスなどの機械的攪拌の下で非常に良好に再分散される。
【0061】
例示
材料
本願明細書に記載された方法の出発材料は、市販されているSOI(silicon-on-insulator)ウェーハ(供給者:ICEMOS TECHNOLOGY LTD, 5 Hannahstown Hill. Belfast)である。本願明細書に記載された微小製造プロセスフローで使用されるSOIウェーハの直径は4インチである。寸法:4インチの直径、380μm厚さの基材ウェーハ、1μm厚さのBOX、10μmのデバイス層。
【0062】
特に指定しない限り、微小粒子は図1について概説された手順に従って製造された。
【0063】
以下の実施例で使用される微小粒子は、特定の位置での全貫通孔の存在又は不在によって刻まれたデジタルコードを含み、それによってバイナリーコードを構成する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、本発明による例示的な6段階の微小製造プロセスフローを示す。
図2図2はPECVDによる酸化物堆積後の微小担体表面のSEM特性を示す。
図3図3は蒸着による酸化物堆積後の微小担体表面のSEM特性を示す。
図4図4は酸化物厚さを変化させる蛍光読み取りのグラフ図を示す。
図5図5はFITC標識したシリコン微小粒子の表面にわたる蛍光分析を示す。
図6図6は、ハイブリダイゼーションアッセイで相補的DNA標的と反応したDNAプローブを有する生体機能化された微小粒子の顕微鏡像を示す。
図7図7は、ハイブリダイゼーションアッセイで相補的DNA標的と反応したDNAプローブを有する生体機能化された微小粒子の顕微鏡像を示す。
図8図8はウェーハ形態の微小粒子の様々な例を示す。
図9図9はゾルゲル法からの薄く且つ不均一なシリカ層で被覆した微小粒子のSEM像を示す。
図10図10は層ごとにゾルゲル法を用いてシリカ層で被覆し且つDNA配列で標識されたCy5で機能化した微小粒子の蛍光像を示す。
【0065】
実施例1:ボッシュ法
(例えば、2009年10月9日でのアクセスとしてhttp://en.wikipedia.org/wiki/Deep_reactive-ion_etchingを参照のこと)
パルス型又は時間多重化エッチングとしても知られたボッシュ法は、ほぼ鉛直構造を達成するために2つのモードの間で繰り返し交互に切り換える。
【0066】
・標準的な、ほぼ等方性のプラズマエッチング。プラズマは、ほぼ垂直方向からウェーハを攻撃する複数のイオンを含有する。(シリコンの場合、六フッ化硫黄[SF6]がよく使用される。)
・化学的に不活性なパッシベーション層の堆積。(例えば、C4F8源ガスはテフロンに類似する物質を生じる。)
【0067】
各相は数秒間続く。パッシベーション層は、基材全体を更なる化学的攻撃から保護し且つ更なるエッチングを防ぐ。しかしながら相をエッチングする間、基材に衝撃を与える方向性イオンは、溝の底で(しかしながら側面ではない)パッシベーション層を攻撃する。方向性イオンはこれに衝突してこれをスパッタし、この基材を化学エッチングに曝す。
【0068】
これらのエッチング/堆積工程が何回も繰り返されると、エッチピットの底でのみ行われる多数の非常に小さい等方性エッチング工程が生じる。0.5mmのシリコンウェーハを通してエッチングするために、例えば、100回〜1000回のエッチング/堆積工程が必要である。2相プロセスは、側壁に約100〜500nmの振幅を有する波形を生じさせる。循環時間は調整できる:短い循環はより滑らかな壁を生じさせ、長い循環はより速いエッチング速度をもたらす。
【0069】
実施例2:酸化物堆積
2つの酸化物堆積技術、PECVD及び蒸着を試験した。PECVD技術は100℃で行ったが、蒸着は室温で行った。両方の技術は高真空環境を要求した。両方の技術は、酸化物表面の清浄度及び均質性に関して、高倍率SEM(走査型電子顕微鏡)画像によって特徴付けられた。従って、これらの技術は、それらが提供するカップリング化学法、蛍光の強さ及び均一性に関して評価される。
【0070】
この厚さは、分光反射率計NanoSpec6100装置などの機器を使用して偏光解析法又は反射光測定を用いて測定でき、これは多くのクリーンルーム設備(例えば、2009年10月9日にアクセスされたhttp://cmi.epfl.ch/metrology/Nanospec.phpを参照のこと)に存在し且つNanometrics Inc(http://www.nanometrics.com/)によって市販されている。
【0071】
図2及び図3は、それぞれPECVD及び蒸着による酸化物(SiO)の堆積後の単一の微小粒子の表面を示す。蒸着によって得られる表面は、PECVDによって得られるものよりも平滑で、更に均一に酸化物が堆積されているように見える。しかしながら、酸化物の密度及び粗さなどの表面特性の効果は、後の表面生体機能化の段階で評価された。
【0072】
非常に重要なことは、構造化され且つ前剥離された微小粒子上への酸化物の堆積(図1の工程5)が、音波処理下での液体溶液中への最終的なリフトオフ(即ち、実際の剥離)を防がないことを強調することである。この最終工程は、酸化物の堆積による悪影響を全く与えず、構造化された微小粒子上へ酸化物が堆積されなかった場合、従来通りに挙動する。
【0073】
実施例3:蛍光読み取り上の酸化物厚さの影響
文献(Bras, M.ら、Optimisation of a silicon/silicon dioxide substrate for a fluorescence DNA microarray. Biosensors & bioelectronics, 2004. 20(4): 第797〜806頁; Volle, J.N.ら、Enhanced sensitivity detection of protein immobilization by fluorescent interference on oxidized silicon. Biosensors and Bioelectronics, 2003. 19(5): 第457〜464頁)によれば、生体機能化シリコン表面の蛍光読み取りは酸化物層厚さに依存する。これを確認するために、異なる酸化物層厚さを有するアミノ変性シリコンウェーハの生体機能化を5’−NH−DNA−3’FAMプローブを用いて試験した。ハイブリダイゼーションアッセイを、100nmの酸化物層厚さを有するSiウェーハ上で実施した。
【0074】
予めアミノ変性したシリコンウェーハ(及び実験手順の対照としてのシリカビーズ)の試料を、以下に記載する通りに調製した:
・試料1:プレーンのシリコン(未処理)
・試料2:酸化したシリコン(ピラニア)
・試料3:HFエッチングシリコン(0nm)
・試料4:50nm
・試料5:100nm
・試料6:200nm
【0075】
全ての試料を4回(1mL)ホウ酸塩緩衝剤(pH8.2、純粋な水中の10nMのホウ酸塩及び150nMの塩化ナトリウム)中で洗った。全ての試料(上澄みを除去した)に、400μLの10%のグルタルアルデヒドのホウ酸塩緩衝剤の溶液を添加し、この試料を室温で1時間撹拌した。シリコン断片及びシリカビーズを4回(1mL)ホウ酸塩緩衝剤中で洗った後、上澄みを除去した。シリカビーズの懸濁液の上澄みを除去する前に、200μlをシッフ試験のために分取し(Eine neue Reihe organischer Diamine. H. Schiff Justus Liebigs Ann Chemie 140, 92-137 1866年)、これはビーズがアルデヒド基の存在を表す紫に変わるので、良い結果をもたらした。
【0076】
その後、400μLのホウ酸塩緩衝剤及び10(1nモル)の5’NH2−DNA−3’FAMを全ての基材に添加し、これらの試料を室温で2時間撹拌した。この後、シリコン断片及びシリカビーズを4回洗い(1mL)、ホウ酸塩緩衝剤中に再懸濁し(1mL)及び顕微鏡法によって分析した。
【0077】
像:
【表1】
【0078】
試料SiO100nmを、400μLのSSPE(5x)緩衝液中で、10μLのCy5標識されたDNA標的(固定化FAM標識プローブに適合する)で更にインキュベートして、蛍光がCy5フィルタの下で観察されるかどうか確認した。同じことを対照用の試料プレーンSiに対して行った。この試料を室温で5分間撹拌しながらインキュベートし、その後、これらをSSPE緩衝液(1mL)で3回洗い且つCy5フィルタの下で分析した。
【0079】
結果:
蛍光の結果は、文献から予想される通り、DNAプローブの固定化が成功し、最も高い強度が試料SiO100nmについて観察されたことを示唆する。この試料をCy5適合標的でインキュベーションした後に観察されたCy5蛍光は、ハイブリダイゼーションが起こったことを示唆する。蛍光の欠如が見られるので、Cy5−DNAの非特異的結合はプレーンSi上に存在しない。
【0080】
実施例4:単一の微小粒子上での表面蛍光読み取り
蛍光プローブを有する微小粒子の生体機能化は、単一粒子の表面にわたるプローブ結合の均一性を光学的に特徴付けることができる。図5は、かかる光学的特性を示す。この単純な方法は単一の粒子水準での品質維持として存在する。
【0081】
この単純な光学特性技術は、単一の粒子水準にて従来型の比色定量試験(例えば、Kaiser Test、E. Kaiser, R. L. Colescott, C. D. Bossinger, P. I. Cook, Analytical Biochemistry 34 595 (1970年)を参照のこと)又は分光測定(例えば、FTIR)に対して極めて有利である。まず、単一の微小粒子上の望ましい官能基の相対量は、蛍光単位について定量できるが、従来の方法は、バルク中の官能基の総量に基づく情報しか提供しない。表面上の所望の基しか蛍光染料と反応しないので、他の方法でのような偽陽性の結果(例えば、反応容器中の残留出発材料による)はあまり生じない。1つのラベルされた微小粒子(図5)の表面にわたる蛍光強度を分析することによって、蛍光が中央領域で完全に均一であることが判明した。
【0082】
実施例5:蛍光ハイブリダイゼーションアッセイ
表面蛍光読み取りに適した微小粒子の使用は、あるタイプのプローブP1が特別なデジタルコードの微小粒子に結合されるハイブリダイゼーションアッセイにおいて実証されている。生体機能化微小粒子は、蛍光標識を有するP1に相補的な標的T1を用いてマイクロチューブ内でインキュベートされる。微小粒子をインキュベーション後に洗浄し、懸濁液のアリコートを顕微鏡スライドに広げる。蛍光読み取りは蛍光倒立型顕微鏡でなされる。顕微鏡スライド上での微小粒子の配向は、幾つかの微小粒子は表面蛍光読み取りについて正確に配向される(酸化物層が観察側にある)が、幾つかの他の粒子は誤って配向される(酸化物層が観察の反対側にある)ことを意味する、この方法によって制御されない。
【0083】
図6は強い光の像の下での微小粒子(左欄)及び蛍光像の下での同じ微小粒子(右欄)を示す。右の像は、蛍光標的と反応し且つ正確な配向にある微小粒子の表面上の蛍光シグナルを表す。
【0084】
この試験は、イムノアッセイ又はハイブリダイゼーションアッセイなどの多重生物学的アッセイにおけるシリコン微小粒子の使用を例証する。
【0085】
実施例6:酸化物のない単一の微小粒子上での表面蛍光読み取り
この節は、シリコン表面上での蛍光読み取りを可能にするための追加の酸化物層の必要性を例証する。実施例5に記載されたのと同じ実験を、それらが追加の酸化物層を有していないことを除いて、先の粒子に類似する微小粒子で繰り返す。同じ実験プロトコルをそれらの微小粒子で繰り返す。図7の左像は強い光の像の下での微小粒子を示し、右像は蛍光像の下での同じ微小粒子を示す。
【0086】
蛍光シグナルは、微小粒子の表面上での酸化物層の欠如のために観察できない。このネガ型の対照は、シリコン微小粒子上の表面蛍光読み取りのための追加の酸化物層の必要性を立証する。
【0087】
実施例7:微小粒子周りの酸化物層の層ごとのゾルゲル堆積
従来のゾルゲル処理は、反応チャンバ内で懸濁液中のシリコン微小粒子で行われた。8mLのEtOH、2mLの水、10μLのTEOS([TEOS]=1g/L)、及び500μLの25%NHOHをチャンバに添加する。この反応を1時間行い、EtOH溶液で数回洗浄する。ゾルゲル堆積後の表面接触角の明らかな減少は、固体支持体の表面でのシリコン酸化物の重要な形成を示す。この酸化物の形成も、SiOに対応するピークがゾルゲル法後にはっきりと見えるXPS測定によって明らかになった。
【0088】
ゾルゲル堆積後のシリカ層の特徴は、SEMを用いて不均一であり且つ30nm未満の推定厚さ値を有する薄い層であることを示した。これらの得られた表面特性は、微小粒子表面上での強く且つ均一な蛍光シグナルを可能にしない。
【0089】
あるいは30nmを上回ってSiO厚さを増大するために、ゾルゲル反応とアミノ基による表面の機能化(APTES)を交互に行う、逐次的手法を試した。課題は、代替的に負の電荷(ゾルゲル処理)及び正の電荷(APTES処理)を創り出し、表面とのTEOSの結合性を高めることである。この方法は、以下のプロトコルを複数回繰り返して試験した:
1.微小粒子を反応管に入れる。0.8mLのEtOH、0.2mLの水、5μLのTEOS([TEOS]=5g/L)、及び50μLの25%NHOHを添加する。10分間反応させる。次いでEtOHで管を複数回洗浄する。
2.アセトン1mL及び100μLのAPTESを添加する。反応を10分間行う。次いでアセトンで複数回洗浄する。
【0090】
逐次的手法によって得られたシリカ層の特性は80nm以下の層厚さを示した。連続的に行われた5つの処理によってSiO厚さは約87nmであったが、未だ不良な表面の均質性が示される(図9を参照のこと)。層ごとのゾルゲル法によって得られる厚さ値は、蛍光シグナル読み取りにおいて最高の効率のために要求される値の100nmに近い。
【0091】
実施例8:層ごとのゾルゲル法によって堆積された酸化物を有する単一の微小粒子での表面蛍光読み取り
ゾルゲル法においてシリカで被覆された微小粒子は、その表面上での蛍光読み取りを評価するために、蛍光標識したDNA配列(Cy5)により更に誘導され且つ機能化された。微小粒子は薄いプラスチック膜(約150μm)を通して蛍光顕微鏡の下で観察された。
【0092】
先の試験は、SiOコーティングを全く使用しない場合、シグナルが極めて弱く且つ通常の蛍光顕微鏡から検出できないことを示した。ゾルゲル法を1つだけ使用する場合、コーティングの厚さが薄い(<30nm)ためにシグナルが小さすぎることも示された。しかしながら、層ごとのゾルゲル処理(約80nmの厚さ)は測定可能なシグナル強度を与えた(図10を参照のこと)。しかしながら、微小粒子の表面上での蛍光シグナルは、微小粒子内で及びそれにわたって非常に不均一である。
【0093】
本発明の現在好ましい実施態様及び実施例が示され且つ説明されたが、本発明はそこに限定されず、以下の特許請求の範囲内で他のやり方で様々に具体化され且つ実施され得ることが明確に理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10