特許第5882218号(P5882218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5882218超音波診断装置および超音波画像の表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882218
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】超音波診断装置および超音波画像の表示方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20160225BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   A61B8/08
   A61B8/14ZDM
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-534957(P2012-534957)
(86)(22)【出願日】2011年7月28日
(86)【国際出願番号】JP2011067191
(87)【国際公開番号】WO2012039193
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年7月22日
(31)【優先権主張番号】特願2010-211163(P2010-211163)
(32)【優先日】2010年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
(72)【発明者】
【氏名】猪上 慎介
【審査官】 冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−259605(JP,A)
【文献】 特開2008−284287(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/048847(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に超音波を送信して受信した信号を用いて弾性を表す弾性値データから構成されるボリュームデータを生成する弾性像ボリュームデータ作成部と、
前記ボリュームデータを構成する弾性値データについて弾性値の大きさごとに頻度を計数し、前記頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値の値を大きく、前記所定の範囲外の弾性値の値を小さく変換する弾性値変換部と、
前記弾性値変換部の変換後のボリュームデータをレンダリングすることにより3次元弾性像を生成するボリュームレンダリング部と、を有し、
前記頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値とは、前記弾性値の大きさごとの頻度から求めた、前記ボリュームデータを構成する弾性値の最頻値、平均値、最大値および最小値のいずれかを用いて定めた値を含むこと
を特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記弾性値変換部は、前記頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値を第1の定数に変換し、前記所定の範囲外の弾性値を前記第1の定数よりも小さい第2の定数に変換することにより2値化すること
を特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値とは、前記弾性値の大きさごとの頻度から求めた、前記ボリュームデータを構成する弾性値の最頻値であり、前記弾性値変換部は、当該弾性値の最頻値を第1の定数に変換し、前記所定の範囲外の弾性値を、前記最頻値が離れるにつれて第1の定数よりも徐々に小さい値になるように変換すること
を特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値とは、前記弾性値の大きさごとの頻度から求めた、前記ボリュームデータを構成する弾性値の最小値であり、前記弾性値変換部は、当該弾性値の最小値に所定の大きな値を割り当て、前記ボリュームデータを構成する弾性値が大きくなるにつれて前記所定の大きな値よりも徐々に小さな値を割り当てること
を特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記弾性値変換部の変換後のボリュームデータの最大値および最小値は、それぞれボリュームレンダリング部がレンダリング可能な最大値および最小値であること
を特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記ボリュームデータの弾性値を複数の領域に予め分離し、前記ボリュームレンダリング部は分離した後の領域ごとに前記弾性値の変換を行ってレンダリングを行うこと
を特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
被検体内に超音波を送信して受信した信号を用いて弾性を表す弾性値データから構成されるボリュームデータを生成し、前記ボリュームデータを構成する弾性値データについて弾性値の大きさごとに頻度を計数し、前記頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値の値を大きく、前記所定の範囲外の弾性値の値を小さく変換し、前記変換後のボリュームデータをレンダリングすることにより3次元弾性像を生成して表示し、前記頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値とは、前記弾性値の大きさごとの頻度から求めた、前記ボリュームデータを構成する弾性値の最頻値、平均値、最大値および最小値のいずれかを用いて定めた値を含むこと
を特徴とすることを超音波画像の表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して被検体内の診断部位について超音波画像を表示する超音波診断装置に関し、特に、被検体の生体組織の硬さを示す弾性画像を3次元画像として表示することのできる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置は、特許文献1および2のように、超音波を被検体内に送波し、その反射波から生体組織の超音波反射エコー信号を受信し、信号処理を施すことにより、超音波反射率を輝度とする診断部位の白黒断層像(Bモード像)を生成し表示している。
【0003】
また、特許文献2では、白黒断層像とその取得位置から3次元座標変換を行うことにより、複数の断層像データを3次元に配置した3次元ボリュームデータを得て、これをボリュームレンダリングすることにより、任意の視線方向から見た診断部位の3次元濃淡像を得る手法が開示されている。レンダリングの手法としては、3次元ボリュームデータを構成するボクセルの輝度の値に応じてボクセルごとに不透明度を付与し、視線上に並ぶボクセルの不透明度の累積値が1になるまで、その視線上のボクセルの輝度値を順次累積した値を、2次元投影面上の画素(ピクセル)値とする手法が開示されている。
【0004】
また、特許文献1および2においては、診断部位の弾性像を求める手法も開示されている。まず、2フレームの白黒断層像を選択し、画像上の各点が2フレーム間でどれだけ変位したかをブロックマッチング等により求め、求めた変位に周知の演算を施すことにより、画像上の各点についての硬さを表す弾性値(歪や弾性率等)を求める。求めた弾性値の大きさを色変換テーブルに従って色相情報に変換することにより、弾性値を色相で表す2次元弾性像を得る。
【0005】
さらに、特許文献2では、3次元濃淡像において、外側の不透明度の高いボクセルに隠れて、内側の病変部の3次元像が得られないという問題を解決するために、白黒断層像から得た3次元ボリュームデータの各ボクセルに、弾性値の大きさに応じて不透明度を付与し、ボリュームレンダリングを行う手法を開示している。これにより、硬い組織をより不透明に、軟らかい組織をより透明になるように表した3次元濃淡像を得ている。
【0006】
また、特許文献2では、複数の2次元弾性像を座標変換して3次元ボリュームデータを得て、これをボリュームレンダリングすることにより、3次元弾性像を生成している。このときボクセル値を単純に累積する通常のレンダリング方法では、弾性値が累積され、生体組織の弾性特性がゆがめられた3次元弾性像となるという問題が生じるため、白黒断層像の輝度データを用いて視線上で最も寄与率の高いボクセルを求め、そのボクセルの弾性値を2次元投影面の弾性値として3次元弾性像を生成している。
【0007】
表示方法としては、特許文献1では、白黒断層像(2次元)と2次元弾性像とを重ねて表示している。特許文献2では、白黒3次元像と3次元弾性像とを重畳した画像を生成し、これを3方向の白黒断層画像と、一画面上に並べて表示することが示されている。
【0008】
また、特許文献3には、白黒断層像と2次元弾性像を一画面上に並べて表示することや、白黒断層像と2次元弾性像を重畳表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO2005/048847号公報
【特許文献2】特開2008-259605号公報
【特許文献3】特開2000-60853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の被検体の弾性像を求める手法では、特許文献1および2に記載のように2フレームの白黒断層像を選択し、被検体に圧力が加わったことにより画像上の各点が2フレーム間でどれだけ変位したかを求め、求めた変位に基づき弾性値(歪や弾性率等)を求める。
このため、大きく変位しやすい軟らかい組織ほど弾性値が大きな数値となり、変位を生じにくい硬い組織ほど弾性値が小さな数値となる。
【0011】
操作者がより鮮明に見たい組織は、腫瘍等の硬い組織であることが多いが、硬い組織の弾性値は小さく、硬い組織を包む軟らかい組織の弾性値は大きい。従来の3次元濃淡像を生成するボリュームレンダリング手法は、3次元ボリュームデータを構成するボクセルの輝度の値に応じてボクセルごとに不透明度を付与し、視線上に並ぶボクセルの不透明度の累積値が1になるまで、その視線上のボクセルの輝度値を順次累積した値を2次元投影面上の画素(ピクセル)値とする。このため、これを弾性値のボリュームデータのレンダリングに用いると、弾性値の数値が大きい軟らかいボクセルの2次元投影面への寄与率が高くなり、軟らかい組織の内側にある注目すべき硬い組織の描出は困難になる。
【0012】
仮に、弾性値の数値が大きい軟らかい組織のボクセルのデータをフィルタを掛ける等で除去した場合、硬い組織のボクセルの3次元像を得ることはできるが、硬い組織のボクセルの弾性値の数値は小さいため、レンダリングで積算後の数値も小さく、コントラストの高い鮮明な3次元像を得にくい。
【0013】
特許文献2では、内側の病変部の3次元像を得るために、白黒断層像から得た3次元ボリュームデータの各ボクセルに、弾性値の大きさに応じて不透明度を付与してレンダリングしているが、この手法で積算されるのは、白黒断層像の輝度データ(超音波反射率)であるため、3次元弾性像は得られない。
【0014】
本発明の目的は、注目すべき硬さの部位の3次元弾性像を鮮明に描出することのできる超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明によれば、以下のような超音波診断装置が提供される。
すなわち、被検体内に超音波を送信して受信した信号を用いて弾性を表す弾性値データから構成されるボリュームデータを生成する弾性像ボリュームデータ作成部と、ボリュームデータを構成する弾性値データについて弾性値の大きさごとに頻度を計数し、頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値の値を大きく、所定の範囲外の弾性値の値を小さく変換する弾性値変換部と、弾性値変換部の変換後のボリュームデータをレンダリングすることにより3次元弾性像を生成するボリュームレンダリング部と、を有し、頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値とは、弾性値の大きさごとの頻度から求めた、ボリュームデータを構成する弾性値の最頻値、平均値、最大値および最小値のいずれかを用いて定めた値を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の別の態様によれば、超音波画像の表示方法が提供される。
すわなち、被検体内に超音波を送信して受信した信号を用いて弾性を表す弾性値データから構成されるボリュームデータを生成し、ボリュームデータを構成する弾性値データについて弾性値の大きさごとに頻度を計数し、頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値の値を大きく、所定の範囲外の弾性値の値を小さく変換し、変換後のボリュームデータをレンダリングすることにより3次元弾性像を生成し、前記頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値とは、前記弾性値の大きさごとの頻度から求めた、前記ボリュームデータを構成する弾性値の最頻値、平均値、最大値および最小値のいずれかを用いて定めた値を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、頻度により定めた注目すべき硬さの部位の弾性値の数値が大きくなることで、ボリュームレンダリングにより積算した場合に、注目すべき硬さの部位の値が大きくなり、注目すべき硬さ部位のコントラストの大きな3次元弾性像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の超音波診断装置の構成を示すブロック図。
図2】実施形態1の弾性値変換部の動作を示すフローチャート。
図3】(a)実施形態1の弾性値変換部の生成した弾性値と頻度との関係を示すグラフ、(b)実施形態1において、弾性値変換部の変換後の弾性値(相対値)と変換前の弾性値(相対値)との関係を示すグラフ。
図4】(a)実施形態1で得られた3次元弾性像、ならびに、2次元弾性像と白黒断層像との合成画像を表示した画面例を示す説明図、(b)図(a)のカラーマップ15の拡大図、(c)比較例の3次元弾性像、ならびに、2次元弾性像と白黒断層像との合成画像を表示した画面例を示す説明図。
図5】(a)実施形態2の弾性値変換部の生成した弾性値と頻度との関係を示すグラフ、(b)実施形態2において、弾性値変換部の変換後の弾性値(相対値)と変換前の弾性値(相対値)との関係を示すグラフ。
図6】実施形態2で得られた3次元弾性像を示す説明図。
図7】(a)実施形態3の弾性値変換部の生成した弾性値と頻度との関係を示すグラフ、(b)実施形態3において、弾性値変換部の変換後の弾性値(相対値)と変換前の弾性値(相対値)との関係を示すグラフ。
図8】(a)実施形態4の弾性値変換部の生成した弾性値と頻度との関係を示すグラフ、(b)実施形態4において、弾性値変換部が生成する重みwと、変換前の弾性値(相対値)との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態の超音波診断装置を添付図面に基づいて説明する。本実施形態においては、被検体の所定断面における組織の超音波反射率の分布を示すBモード像を白黒断層像、白黒断層像のデータから構成したボリュームデータをレンダリングした2次元投影像を3次元像、被検体の組織の弾性を表す弾性値の所定断面における2次元分布を示す像を2次元弾性像、2次元弾性像のデータから構成したボリュームデータをレンダリングした2次元投影像を3次元弾性像という。
【0020】
図1に示すように、超音波診断装置には、被検体1に当接させて用いる探触子2と、探触子2を介して被検体1内の診断部位に超音波を所定の時間間隔で繰り返し送信する送信部3と、被検体1で反射した反射エコー信号を時系列に受信する受信部4と、超音波受信制御部5と、受信された反射エコーを整相加算する整相加算部6とが備えられている。
【0021】
探触子2は、列状または扇形に配列された複数の振動子を含み、振動子から被検体1に超音波を送受信する。探触子2には、複数の振動子を配列方向と直交する方向(短軸方向)に機械的に走査する機能が備えられ、超音波を3次元に送受信することができる。なお、探触子2として、複数の振動子を2次元配列されたものを用いることにより、振動子を機械的に振ることなく、超音波を3次元に送受信する構成としてもよい。
【0022】
送信部3は、探触子2を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成する。その際、探触子2の各振動子に受け渡す送波信号の位相を制御し、送信される超音波の収束点をある深さに設定する。また、受信部4は、探触子2の各振動子が受信した反射エコー信号を所定のゲインで増幅してRF信号すなわち受波信号を生成する。超音波送受信制御部5は、送信部3や受信部4を制御する。整相加算部6は、RF信号の位相を整合させた後加算することにより、1点または複数の収束点に対し収束した超音波ビームを形成してRF信号フレームデータ(RAWデータに相当)を生成する。
【0023】
また、超音波診断装置には、操作者からの設定を受け付けるインターフェース部43と、画像表示部13と、画像表示部13に表示させる画像の種類を切り替える切替加算部12と、画像系制御部44と、短軸走査位置制御部45とを備えている。短軸走査位置制御部45は、探触子2が複数の振動子を配列方向と直交する方向に機械的に走査する動作を制御することにより、所定の範囲の3次元送受信を行う。
【0024】
さらに、超音波診断装置は、RFフレームデータから超音波反射率を輝度とする診断部位の白黒断層像および3次元像を生成するための構成として、断層像構成部7、断層像記憶部35、断層像のボリュームデータ作成部36、ボリュームレンダリング部(2次元像)38、および、マルチフレーム構成部(断層像)46を備えている。これに加えて、RF信号フレームデータから2次元弾性像および3次元弾性像を生成するための構成として、RF信号フレームデータ記憶部27、RF信号フレームデータ選択部28、変位計測部30、弾性情報演算部32、弾性画像構成部34、2次元弾性像記憶部39、弾性像のボリュームデータ作成部40、ボリュームレンダリング部(弾性像)42、マルチフレーム構成部(弾性像)48、および、弾性値変換部51を備えている。
【0025】
断層像構成部7は、整相加算部6で生成されたRF信号フレームデータに対して、ゲイン補正、ログ圧縮、検波、輪郭強調およびフィルタ処理等を施し、反射率を輝度(濃淡)とする診断部位の白黒断層像(Bモード像)を生成する。その際、画像系制御部44は、インターフェース部43を介して操作者から白黒断層像の生成条件を受けつけ、断層像構成部7を制御する。
【0026】
断層像記憶部35は、断層像構成部7で構成された白黒断層像とその取得位置とを対応させて記憶する。ここでいう取得位置は、短軸走査位置制御部45の制御による短軸方向の移動量である。ボリュームデータ作成部36は、断層像記憶部35に記憶された複数の白黒断層像(1ボリューム分)に対して短軸方向移動量に応じて再配置する座標変換を行い3次元ボリュームデータを作成する。
【0027】
ボリュームレンダリング部38は、ボリュームデータ作成部36が生成した3次元ボリュームデータを、次式(1)〜(3)を用い、輝度と不透明度に基づきボリュームレンダリングすることにより、被検体の診断部位の3次元像(3次元ボリュームデータの2次元投影像)を構成する。投影方向(視線方向)は、インターフェース43を介して画像系制御部44が操作者から受け付ける。
【0028】
Cout(i)=Cout(i-1)+(1−Aout(i-1))・A(i)・C(i)・S(i)・・・式(1)
Aout(i)=Aout(i-1)+(1−Aout(i-1))・A(i) ・・・式(2)
A(i)=Bopacity[C(i)] ・・・式(3)
式(1)において、Cout(i)は、2次元投影面のピクセル値として出力される値である。C(i)は、2次元投影面上のある点から3次元像を見た場合、視線上i番目(ただし、i=0〜N-1)に存在するボクセルの輝度値である。なお、ここでいうボクセルとは、3次元ボリュームデータを構成する個々の輝度データの位置をいう。視線上にN個のボクセルが並んでいるとき、i=0〜N-1までのボクセルの輝度値を式(1)に従って積算した輝度値Cout(N-1)が最終的に出力されるピクセル値となる。Cout(i-1)は、ボクセルi-1番目までの積算値を示す。
【0029】
式(1)のA(i)は、視線上i番目に存在するボクセルの不透明度であり、0〜1.0の値である。不透明度A(i)は、式(3)のように、予め定められた輝度値C(i)と不透明度(Opacity)との関係を定めたテーブル(Bopacity[C(i)])を参照することにより、または予め定められた輝度値C(i)と不透明度との関係を定めた関数(Bopacity[C(i)])に輝度値C(i)を代入することによって、ボクセルの輝度値の大きさに応じて定められる。例えば、輝度値の大きなボクセルには、大きな不透明度が付与される。このように不透明度を輝度値に応じて付与することにより、出力する2次元投影面の輝度値Cout(N-1)への、そのボクセルの輝度値C(i)の寄与率を決定する。
【0030】
式(2)のAout(i)は、式(3)により付与された不透明度A(i)を、i番目のボクセルまで式(2)の右辺に従って積算した値である。式(1)では、式(2)のようにして計算されるi-1番目のボクセルまでの不透明度の積算値Aout(i-1)を用いる。式(2)から明らかなように、Aout(i)は、ボクセルを通過するたびに積算され1.0に収束される。よって、上記(1)に示されるようにi-1番目までの不透明度の積算値Aout(i-1)が約1.0となった場合、式(1)の右辺第2項は0となり、i番目以降の輝度値C(i)は、出力される2次元投影像(3次元)に反映されない。なお、Cout(i)Aout(i)は、ともに0を初期値とする。
【0031】
式(1)のS(i)は、陰影付けのための重み付け成分であり、輝度値C(i)とその周辺の輝度値より求めた、輝度値の勾配から算定される。例えば、i番目のボクセルを中心とした面(輝度値の勾配)の法線が、予め定めた光源の光軸と一致する場合、光をもっとも強く反射するため、予め定められたテーブルや関数に基づいて、ボクセルiにはS(i)として1.0が付与され、光源と法線が直交する場合にはS(i)として0.0が付与される。これにより、得られる2次元投影像に陰影をつけ、強調効果を与える。
【0032】
マルチフレーム構成部(断層像)46は、ボリュームデータ作成部36で作成された3次元ボリュームデータから任意断面の白黒断層像を生成する。任意断面の位置は、インターフェース部43が操作者から受け付け、画像系制御部44を介してマルチフレーム構成部(断層像)46に設定される。なお、任意断面位置は複数設定でき、マルチフレーム構成部46は、複数の任意断面位置に対してそれぞれ白黒断層像を生成する。
【0033】
これらの構成により、被検体1の診断部位の3次元像および任意断面の白黒断層像が形成される。
【0034】
一方、RF信号フレームデータ記憶部27には、整相加算部6が生成したRF信号フレームデータが順次格納される。例えば、RF信号フレームデータ記憶部27は、整相加算部6から時系列すなわち画像のフレームレートに基づいて生成されるRF信号データをフレームメモリ内に順次格納する。RF信号フレームデータ選択部28は、RF信号フレームデータ記憶部27に格納された複数のRF信号フレームデータから1組すなわち2つのRF信号フレームデータを選び出す。例えば、RF信号フレームデータ選択部28は、画像系制御部44からの指令に応じて、最新に格納されたRF信号フレームデータ(N)を第1のデータとして選択するとともに、時間的に過去に格納されたRF信号フレームデータ群(N-1、N-2、N-3、…、N―M)の中から1つのRF信号フレームデータ(X)を選択する。なお、ここでN、M、XはRF信号フレームデータに付されたインデックス番号であり、自然数とする。
【0035】
変位計測部30は、1組のRF信号フレームデータから生体組織の変位などを求める。
例えば、変位計測部30は、RF信号フレームデータ選択部28により選択された1組のデータ、すなわちRF信号フレームデータ(N)及びRF信号フレームデータ(X)に対して、1次元或いは2次元相関処理を行って、断層画像(2次元反射率像)の各点に対応する生体組織における変位や移動ベクトル(変位の方向と大きさ)に関する1次元又は2次元変位分布を求める。ここで、移動ベクトルの検出にはブロックマッチング法を用いる。ブロックマッチング法とは、断層画像を例えばn×n画素からなるブロックに分け、関心領域内のブロックに着目し、着目しているブロックの反射率分布に最も近似しているブロックを前のフレームから探し、これを参照して予測符号化すなわち差分により標本値を決定する方法である。
【0036】
弾性情報演算部32は、変位計測部30が求めた変位や移動ベクトルに基づいて、所定の演算を行うことにより、弾性値を演算し、時系列な弾性フレームデータとして出力する。ここでいう弾性値とは、被検体1の組織の弾性を表す値であればよく、一例としては歪み、弾性率、変位、粘性、歪み比等が挙げられる。弾性値として歪みを用いる場合、生体組織の移動量例えば変位を空間微分することによって算出することができる。
【0037】
2次元弾性像構成部34は、フレームメモリと画像処理部とを含み、弾性情報演算部32から時系列に出力される弾性フレームデータをフレームメモリに格納し、格納されたフレームデータを画像処理部において処理することにより、被検体の診断部位における弾性値の2次元分布を示す2次元弾性像を生成する。2次元弾性像は、弾性値の値を、予め定めた色変換テーブルに基づき色相情報に変換したカラー像である。例えば、弾性値が所定の小さい値から大きい値へ変化するのに対応して、青(B)から緑(G)、赤(R)へと255階調(1〜255)で順次に変化する色相を付与する。最も硬い部位の弾性値は1、最も軟らかい部位の弾性値は255である。
【0038】
2次元弾性像記憶部39は、弾性像構成部34で生成した2次元弾性像とその取得位置とを対応させて記憶する。ボリュームデータ作成部40は、2次元弾性像記憶部39に格納された2次元弾性像とその取得位置に基づいて3次元座標変換を行なうことにより、空間的に連続する複数の2次元弾性像を3次元に配置した3次元ボリュームデータを生成する。
【0039】
弾性値変換部51は、操作者が注目する硬さの組織、例えば弾性値の小さい硬い範囲の組織の形状を明瞭に把握できる3次元像を得るために、3次元ボリュームデータを構成する弾性値を変換する。これにより、操作者が注目する硬さ組織の弾性値が大きく、軟らかい組織の弾性値が小さく3次元ボリュームデータを生成する。変換方法については、後述する実施形態1〜4で具体的に説明する。
【0040】
ボリュームレンダリング部42は、弾性値変換部51によって変換された弾性ボリュームデータを次式(4)〜(6)用い、レンダリングする。投影方向(視線方向)は、インターフェース43を介して画像系制御部44が操作者から受け付ける。これにより、操作者が注目する硬さの組織(変換後の弾性値の大きい範囲)のボクセルの3次元弾性像を得ることができるため、軟らかい組織の内側にある硬い組織の3次元形状を把握可能になる。
【0041】
Eout(i)=Eout(i-1)+(1-Aout(i-1))・A(i)・E(i)・S(i)・・・式(4)
Aout(i)=Aout(i-1)+(1-Aout(i-1))・A(i) ・・・式(5)
A(i)=Eopacity[E(i)] ・・・式(6)
式(4)において、Eout(i)は、投影面のピクセル値として出力される値である。E(i)は、2次元投影面上のある点から3次元弾性画像を見た場合の視線上i番目(ただし、i=0〜N-1)に存在するボクセルの変換後の弾性値(弾性値変換部51による変換後の弾性値)である。視線上にNボクセルの弾性値が並んだとき、i=0〜N-1まで弾性値を式(4)に従って積算した積算値Eout(N-1)が、最終的に出力されるピクセル値となる。Eout(i-1)はi-1番目までの積算値を示す。
【0042】
式(4)のA(i)は、視線上i番目に存在するボクセルの不透明度であり、0〜1.0の値である。不透明度A(i)は、式(6)のように、予め定められた変換後の弾性値E(i)と不透明度(Opacity)との関係を定めたテーブル(Eopacity[E(i)])を参照することにより、または予め定められた弾性値E(i)と不透明度との関係を定めた関数(Eopacity[E(i)])に弾性値E(i)を代入することによって、ボクセルの弾性値の大きさに応じて定められる。
【0043】
式(5)のAout(i)は、式(6)により付与された不透明度A(i)を、i番目のボクセルまで式(5)の右辺に従って積算した値である。式(4)では、式(5)のようにして計算されるi-1番目のボクセルまでの不透明度の積算値Aout(i-1)を用いる。式(5)から明らかなように、Aout(i)は、ボクセルを通過するたびに積算され1.0に収束される。よって、上記(4)に示されるようにi-1番目までの不透明度の積算値Aout(i-1)が約1.0となった場合、式(4)の右辺第2項は0となり、i番目以降の弾性値E(i)は、出力される2次元投影像(3次元)に反映されない。なお、Eout(i)Aout(i) は、ともに0を初期値とする。
【0044】
式(4)のS(i)は、陰影付けのための重み付け成分であり、変換後の弾性値E(i)とその周辺の変換後の弾性値より求めた、弾性値の勾配から算定される。例えば、i番目のボクセルを中心とした面(弾性値の勾配)の法線が、予め定めた光源の光軸と一致する場合、光をもっとも強く反射するため、予め定められたテーブルや関数に基づいて、ボクセルiにはS(i)として1.0が付与され、光源と法線が直交する場合にはS(i)として0.0が付与される。これにより、得られる2次元投影像に陰影をつけ、強調効果を与える。なお、i番目のボクセルを中心とした面の勾配(法線方向)は、i番目のボクセルとその周辺のボクセルの弾性値や位置から求める。
【0045】
3次元弾性像への色相の付与方法については後述する。
【0046】
マルチフレーム構成部(弾性像)48は、弾性値変換部51が変換する前の弾性ボリュームデータから任意断面における2次元弾性像を生成する。任意の断面の指定は、インターフェース部43が操作者から受け付け、画像系制御部44を介してマルチフレーム構成部48に受け渡される。なお、任意断面位置は複数設定でき、マルチフレーム構成部48は複数の任意断面位置に対してそれぞれ2次元弾性像を生成する。
【0047】
切替加算部12は、フレームメモリと、画像処理部と、画像選択部とを備えて構成されている。フレームメモリは、弾性像構成部7およびマルチフレーム構成部46が生成した白黒断層像、2次元弾性像構成部34およびマルチフレーム構成部48が生成したカラー2次元弾性像、ボリュームレンダリング部38が生成した3次元像、ならびに、ボリュームレンダリング部48が生成した3次元弾性像をそれぞれ格納する。
【0048】
切替加算部12は、操作者の指示にしたがって、白黒断層像にカラー2次元弾性像を所定の割合で加算した合成画像を生成することができる。白黒断層像としては、弾性像構成部7が生成した白黒断層像、またはマルチフレーム構成部46が生成した任意断面の白黒断層像を用いる。カラー2次元弾性像としては、2次元弾性像構成部34が生成した2次元弾性像、またはマルチフレーム構成部48が生成した任意断面の2次元弾性像を用いる。合成方法については、特許文献1等に記載されている公知の合成画像の生成方法を用い、白黒断層像の各ピクセルの出力値に、カラー2次元弾性像を対応する各ピクセルの出力値に所定の割合を掛けた値を加算する方法を用いることができる。生成した合成画像はフレームメモリに格納される。
【0049】
切替加算部12は、インターフェース部43を介して受け付けた操作者からの指示に従って、フレームメモリに格納されている白黒断層像、カラー2次元弾性像、3次元像、3次元弾性像、および、合成画像のうち、画像表示部13に表示させる画像を選択して受け渡す。画像表示部13は、受け渡された1以上の画像を所定の配列で画面上に表示する。
【0050】
画像系制御部44は、画像生成に関わる各部を制御する。インターフェース部43は、弾性画像の色相(カラーマップの色相)や、ROI(関心領域)の設定やフレームレート等の設定についても操作者から受け付ける。画像系制御部44は、3次元弾性像の生成のために設定されている弾性値の範囲や、弾性画像についてのカラーマップや、設定されている各種パラメータの値なども画像表示部13の画面上の所定位置に表示させる。
【0051】
<実施形態1>
実施形態1の弾性値変換部51の動作について図2図4を用いて説明する。
【0052】
弾性値変換部51は、内蔵されているメモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、図2に示すフローチャートのように弾性値変換処理を行う。
【0053】
まず、弾性値変換部51は、図2のステップ61において、ボリュームデータ作成部36が生成した弾性値のボリュームデータを取り込む。この変換前のボリュームデータは、弾性値が最も大きな軟らかいボクセルに相対値255を、弾性値が小さい硬いボクセルに相対値1を割り当て、弾性値に比例して相対値が徐々に変化した構成となっている。すなわち、弾性値の相対値は、全体で255階調である。なお、ノイズやエラーにより弾性情報がない場合には、弾性データに相対値0が割り当てられ、弾性情報がないことを示している。
【0054】
ステップ62において、弾性値変換部51は、取り込んだボリュームデータを構成する各ボクセルの弾性値(変換前の相対値)と、その個数を計数し、図3(a)のように弾性値(変換前の相対値)と頻度との関係を示すグラフ100を生成する。図3(a)においてグラフ100のライン101は、ボリュームデータに含まれる、最も硬い弾性値(変換前の相対値)を示す。ライン102は、ボリュームデータに含まれる、最も軟らかい弾性値(変換前の相対値)を示す。ライン103は、ボリュームデータに含まれる弾性値(変換前の相対値)のうち、最も頻度の高い値(最頻値P)を示す。
【0055】
ステップ63において、弾性値変換部51は、図3(b)のように、最頻値Pを中心とした所定の範囲の弾性値(変換前の相対値)に対して、変換後の相対値として最大値255を割り当て、他の範囲の弾性値(変換前の相対値)には変換後の相対値として最小値を割り当てる変換処理を行う。なお、最小値としては、弾性値の最小値である1を割り当てても、弾性情報がないことを示す0を割り当ててもよいが、ここでは、最小値として0を割り当てる例について以下説明する。
【0056】
具体的には、弾性値変換部51は、図3(a)のように、最頻値Pから予め定めた値kだけ小さい値P-kの弾性値(変換前相対値)104と、最頻値Pからk’だけ大きい値P+k’の弾性値(変換前相対値)105を算出する。弾性値変換部51は、図3(b)のようにP-kの弾性値(変換前相対値)104からP+k’の弾性値(変換前相対値)105の範囲には、変換後の相対値として最大値255を割り当て、それ以外の範囲には変換後の相対値として最小値0を割り当てるように変換する。例えば、k=10、k’=10とする。
【0057】
これにより、出現頻度の高い所定の硬さの弾性値に対応するボクセルには、大きな値(最大値255)が付与され、それ以外の頻度の低い弾性値のボクセルには小さな値(最小値0)が付与されたボリュームデータが生成される。ステップ64において、弾性値変換部51は変換後のボリュームデータを、ボリュームレンダリング部42に受け渡す。
【0058】
ボリュームレンダリング部42は、変換後のボリュームデータについて上述の式(4)〜(6)を用いてレンダリングを行い、Eout(i)を求めることにより3次元弾性像を得る。得られた3次元弾性像は、図4(b)の3次元弾性像用カラーマップ15を参照して色付けを行う。
【0059】
3次元弾性像用カラーマップ15は、弾性値変換部51が最大値255を付与した弾性値範囲(最頻値Pを中心とした所定の範囲の弾性値)の変換前の弾性値範囲に対応した色相(一色)を付与し、かつ、Eout(i)の値の大きさに応じて輝度(明度)を変化させるマップである。式(4)より陰影付けのための重み付け成分S(i)の寄与が大きい(S(i)が小さい)ほどEout(i)が小さくなるので黒色(低輝度)に近づくように設定されている。式(4)のS(i)の寄与が大きい、つまりEout(i)の値が小さいほど黒色(低輝度)に近づくようにすることで、陰影の効果が得られ、立体的な3次元弾性像となる。
【0060】
変換前の弾性値範囲に対応した色相(一色)とは、例えば、最頻値Pを中心とした所定の範囲の弾性値の、変換前の弾性値の平均値、最大値、または最小値のうち予め定めた値が、弾性値全体の平均値127より小さければ青、大きければ赤とする。もしくは、最頻値Pを中心とした所定の範囲の弾性値の、変換前の弾性値の平均値、最大値、または最小値のうち予め定めた値が、2次元弾性像のカラーマップ14において対応する色相としてもよい。
【0061】
本実施形態1において、弾性値変換部51の変換後のボリュームデータは、軟らかい組織の相対値が0であるため、3次元弾性像には描出されず、操作者が所望する頻度の高い硬い組織(変換後の弾性値の大きい範囲)の3次元弾性像を得ることができる。しかも、頻度の高い硬い組織のボクセルは、変換後の相対値が大きいため、積算後の数値が大きく、コントラストの高い鮮明な3次元像を得ることができる。
【0062】
得られた3次元像は、切替加算部12を介して、画像表示部13に表示される。図4(a)は、画像表示部13に表示される画像の一例である。画面10の右側領域には、3次元弾性像9が表示されている。3次元弾性像9は、大きな相対値に変換された頻度の高い硬さの組織の像である。3次元弾性像9の右側には、3次元弾性像9の色と弾性値との関係を示す3次元弾性像用カラーマップ15が表示されている。
【0063】
画面10の左側領域には、ここでは白黒断層像11と2次元弾性像8との合成画像が表示されている。2次元弾性像8は、操作者が設定したROIについてのみ生成されているため、白黒断層像11の表示領域の中央部の領域にのみ合成されている。2次元弾性像8の左側には、2次元弾性像8の色相と弾性値との関係を示すカラーマップ14が表示されている。2次元弾性像8は、弾性値変換部51が変換する前のデータから生成されているため、カラーマップ14は、弾性値が大きな軟らかい領域を赤、弾性値が小さい硬い領域を青、中間の領域を緑の色相がそれぞれ割り当てられ、各色は、弾性値の値によって段階的に変化しており、全体で256階調である。なお、画面10の下部の領域16には、操作者から受け付けた各種パラメータの値が表示される。
【0064】
本実施形態1では、被検体1内に超音波を送信して受信した信号を用いて弾性を表す弾性値データから構成されるボリュームデータを生成する弾性像ボリュームデータ作成部40と、ボリュームデータを構成する弾性値データについて弾性値の大きさごとに頻度を計数し、頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値の値を大きく、所定の範囲外の弾性値の値を小さく変換する弾性値変換部51と、弾性値変換部51の変換後のボリュームデータをレンダリングすることにより3次元弾性像を生成するボリュームレンダリング部42とを有する。
【0065】
弾性値変換部51は、頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値を第1の定数に変換し、所定の範囲外の弾性値を第1の定数よりも小さい第2の定数に変換することにより2値化する。上述の頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値とは、最も頻度の高い弾性値を含む弾性値範囲とすることが可能である。
【0066】
図4(a)から明らかなように、軟らかい組織に包まれた頻度の高い硬さの組織の3次元弾性像9を鮮明に描出することができる。よって、操作者は白黒断層像11と2次元弾性像8との合成画像を確認することにより、軟らかい組織の中に硬い組織があることを把握することができ、同時に3次元弾性像9を見ることにより頻度の高い硬さの組織の3次元形状を把握することができるため、操作者が所望する腫瘍等の硬い組織の3次元弾性像を視認できる。
【0067】
比較例として、弾性値変換部51が変換する前の弾性値ボリュームデータを式(4)〜(6)によりレンダリングして得た3次元弾性像19を図4(c)に示す。ボリュームデータは、硬い組織の弾性値(相対値)は小さく、硬い組織を包む軟らかい組織の弾性値(相対値)が大きいため、レンダリングにより視線上のボクセルの弾性値を順次積算すると、弾性値の大きな軟らかいボクセルの2次元投影面への寄与率が高くなり、図4(c)のように、軟らかい組織の外観が描出された3次元像19が得られる。よって、図4(c)では、軟らかい組織の内側にある注目すべき硬い組織の像を視認することができない。
【0068】
なお、本実施形態1では、最頻値Pを中心にP-kからP+k’の範囲に最大値を付与したが、最大値を付与する範囲は、操作者が範囲をインターフェース部を介して設定する構成としてもよい。また、分散のような統計値を用いてもよい。また最頻値P以外の、平均値、最大値、最小値、などの統計値を中心として範囲を設定してもよい。頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値とは、弾性値の大きさごとの頻度から求めた、ボリュームデータを構成する弾性値の最頻値、平均値、最大値および最小値のいずれかを用いて定めた値を含む構成とすることも可能である。例えば、頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値とは、弾性値の大きさごとの頻度から求めた、ボリュームデータを構成する弾性値の最小値であり、弾性値変換部51は、当該弾性値の最小値に所定の大きな値を割り当て、ボリュームデータを構成する弾性値が大きくなるにつれて所定の大きな値よりも徐々に小さな値を割り当てる。
【0069】
また、本実施形態では、所定の範囲には、最大値255をそれ以外には最小値0を付与することで2値化したが、付与する2値は0、255でなくともよく、十分に差異のある2値でよい。
【0070】
さらに、ボリュームデータの弾性値を複数の領域に予め分離し、分離した後の領域ごとに本実施形態1により弾性値の変換を行ってレンダリングを行うことも可能である。
【0071】
<実施形態2>
次に実施形態2の弾性値変換部51の動作について図5および図6を用いて説明する。
実施形態2では、弾性値変換部51は、弾性値のうち最頻値Pに最も大きな相対値を割り当て、最頻値Pを中心にそれ以上の弾性値範囲およびそれ以下の弾性値範囲については線形に相対値が小さくなるように相対値を割り当てる変換を行う。すなわち、弾性値変換部51は、頻度に基づき定めた所定の範囲の弾性値を第1の定数に変換し、所定の範囲外の弾性値を、所定の範囲の弾性値から弾性値が離れるにつれて第1の定数よりも徐々に小さい値になるように変換する。
【0072】
まず、弾性値変換部51は、実施形態1の図2のステップ61、62を行い、弾性像ボリュームデータ作成部40から出力されるボリュームデータについて、弾性値(変換前の相対値)と頻度との関係を示すグラフ200を図5(a)のように作成する。グラフ200に示すライン201は、ボリュームデータに含まれる最も硬い弾性値(変換前の相対値)を示す。ライン202は、ボリュームデータに含まれる、最も軟らかい弾性値(変換前の相対値)を示す。ライン203は、ボリュームデータに含まれる弾性値(変換前の相対値)のうち、最も頻度の高い値(最頻値P)を示す。
【0073】
実施形態2では、ステップ63において図5(b)のように相対値を変換する処理を行う。すなわち、弾性値変換部51は、ライン203が示す最頻値Pに変換後の相対値として255を割り当て、ライン201が示す最も硬い弾性値(変換前の相対値)に対して0を割り当てる。ライン203からライン201の間の弾性値には、変換前の弾性値(相対値)が小さくなるにつれて、変換後の相対値も徐々に小さくなるように変換後の相対値を割り当てる。同様に、ライン203からライン202の間の弾性値には、変換前の弾性値(相対値)が大きくなるにつれて、変換後の相対値が徐々に小さくなるように変換後の相対値を割り当てる。
【0074】
これにより、ボリュームデータの出現頻度の最も高い硬い弾性値に対応するボクセルには、最大の相対値255が付与され、最頻値を中心としてそれ以外の弾性値のボクセルには、最頻値の弾性値から離れるにつれて小さくなる相対値が付与され、弾性値の最小値と最大値は、最小の相対値0となる。
【0075】
ステップ64において、弾性値変換部51は変換後のボリュームデータを、ボリュームレンダリング部42に受け渡す。ボリュームレンダリング部42は、変換後のボリュームデータについて上述の式(4)〜(6)を用いてレンダリングを行い、3次元弾性像を得る。
【0076】
得られた3次元弾性像の一例を図6に示す。本実施形態2では、弾性値の頻度の高い組織に大きな相対値を割り当て、最頻値を中心に相対値が徐々に変化するように変換を行うため、操作者が描出を所望する頻度の高い硬い組織(変換後の弾性値の大きい範囲)の3次元弾性像400を大きなコントラストで鮮明に描出することができる。しかも、頻度の低い軟らかい組織の変換後の相対値も0ではないため、レンダリングにより図6のように硬い組織の3次元弾性像400の周囲に、頻度の低い軟らかい組織の3次元弾性像402が描出される。頻度の低い軟らかい組織は相対値が小さいため、レンダリングによる積算後の数値も小さく、頻度の低い軟らかい組織の3次元弾性像402はコントラストの低い像になる。このため、図6のように頻度の高い硬い組織の3次元弾性像400を、頻度の低い軟らかい組織の3次元弾性像402が覆い隠すことがなく、硬い組織の3次元形状を確認できるとともに、軟らかい組織の3次元形状も把握することができる。
【0077】
このように、実施形態2によれば、操作者が所望する腫瘍等の硬い組織の3次元弾性像を把握でき、軟らかい組織の3次元弾性像も確認できる。
【0078】
なお、実施形態2では、最頻値を中心に徐々に変換後の相対値が小さくなるように弾性値の変換を行ったが、中心値は最頻値に限定されるものではなく、平均値、最大値、最小値などの統計値を基準に中心値を算出する構成にすることも可能である。
【0079】
実施形態2では、変換後の相対値の最大値を255としたが、255よりも小さい所定値でもよい。
【0080】
また、図5のように、実施形態2では、変換後の相対値は、中心値を中心に線形に(直線的に)小さく変化するように変換しているが、必ずしも線形(直線的に)な変化でなくてもよく、曲線や階段状等、変換後の相対値が次第に小さくなる変化であれば構わない。
【0081】
さらに、ボリュームデータの弾性値を複数の領域に予め分離し、分離した後の領域ごとに本実施形態2により弾性値の変換を行ってレンダリングを行うことも可能である。
【0082】
<実施形態3>
次に実施形態3の弾性値変換部51の動作について図7を用いて説明する。実施形態3では、弾性値変換部51はボリュームデータを構成する弾性値(変換前相対値)のうち最も小さな弾性値(最も硬い組織)には、最も大きな相対値255を割り当て、最も大きな弾性値(最も軟らかい組織)には、最も小さな相対値0を割り当て、その間の弾性値範囲には、弾性値に応じて線形に相対値が小さくなるように相対値を割り当てる変換を行う。
【0083】
弾性値変換部51は、実施形態1の図2のステップ61、62を行い、変換前のボリュームデータについて、弾性値(変換前の相対値)と頻度との関係を示すグラフ300を図7(a)のように作成する。ライン301は、弾性ボリュームデータに含まれる最も小さい(硬い)弾性値を示す。ライン302は、弾性ボリュームデータに含まれる最も大きい(軟らかい)弾性値を示す。
【0084】
ステップ63において、弾性値変換部51は、ライン301,302の弾性値(変換前の相対値)を抽出し、図7(b)のように、最も小さい(硬い)弾性値(ライン301)には、変換後の相対値として最大値255を付与する。最も大きい(軟らかい)弾性値(ライン302)には、変換後の相対値として最小値0を付与する。ライン301とライン302の間の弾性値は、線形に変化させる。他の構成は、実施形態1と同様である。
【0085】
これにより、硬い組織に大きな弾性値(変換後の相対値)を、軟らかい組織に小さな弾性値(変換後の相対値)に変換できるとともに、最も硬い組織に最大値255を、最も軟らかい組織に最小値0を付与できるため、相対値の階調を最大限に生かすことができる。
【0086】
本実施形態3で得られる3次元弾性像は、操作者が描出を望む腫瘍等の硬い組織に、大きな弾性値(変換後)が付与されているため、硬い組織の3次元弾性像を大きなコントラストで鮮明に描出することができる。しかも、軟らかい組織の変換後の相対値も0ではないため、寄与度は低いが3次元弾性像が描出される。このため、硬い組織の3次元形状を確認できるとともに、軟らかい組織の3次元形状も把握することができる。
【0087】
なお、ボリュームデータの弾性値を複数の領域に予め分離し、分離した後の領域ごとに本実施形態3により弾性値の変換を行ってレンダリングを行うことも可能である。
【0088】
<実施形態4>
次に実施形態4の弾性値変換部51の動作について図8を用いて説明する。実施形態4では、ボリュームデータを構成する弾性値(変換前相対値)のうち所定の小さな弾性値(硬い組織)には、重みw(w>1)を掛けることにより弾性値を大きくする変換を行う。
【0089】
大きな弾性値(軟らかい組織)には、重みw(w<1)を掛けることにより弾性値を小さく変換する。
【0090】
弾性値変換部51は、実施形態1の図2のステップ61、62を行い、変換前のボリュームデータについて、弾性値(変換前の相対値)と頻度との関係を示すグラフ300を図8(a)のように作成する。ライン401は、弾性ボリュームデータに含まれる最も小さい(硬い)弾性値を示す。ライン402は、弾性ボリュームデータに含まれる最も大きい(軟らかい)弾性値を示す。
【0091】
ステップ63において、弾性値変換部51は、ライン401,402の弾性値(変換前の相対値)を抽出するとともに、ボリュームデータを構成する全弾性値の平均値を求める。図8(b)のライン403は求めた平均値を示す。
【0092】
弾性値変換部51は、図8(b)のように、弾性値の関数である重みwを生成する。wは、弾性値の平均値に対して1、最も小さい(硬い)弾性値(ライン401)から平均値(ライン403)の範囲では、w>1となり、最も大きい(軟らかい)弾性値(ライン402)から平均(ライン403)の範囲ではw<1となるように生成する。すなわち、弾性値変換部51は、弾性値の大きさごとの頻度から求めた、ボリュームデータを構成する弾性値の平均値、最大値および最小値を求め、平均値の弾性値には重み1を、最小値から平均値までの弾性値には1よりも大きな重みを、平均値から最大値までの弾性値には1よりも小さな重みを掛けることにより弾性値を変換する。
【0093】
例えば、最小値(最も硬い)の弾性値(ライン401)に重みwを掛けた場合、255になるようにwを定めることができる。また、最大値(最も軟らかい)の弾性値(ライン402)の重みwは0にすることができる。これらと、平均値(ライン403)の重みw=1を結ぶ直線または曲線は、予め定めた形状とすることができる。
【0094】
弾性値変換部51は生成した重みwの関数を、ボリュームデータを構成する弾性値(変換前)に掛けることにより、変換後のボリュームデータを生成する。これにより、硬い組織の弾性値が大きく、軟らかい組織の弾性値が小さく変換される。また、最も硬い組織に最大値255を、最も軟らかい組織に最小値0を付与することもできるため、相対値の階調を最大限に生かすことが可能である。
【0095】
本実施形態4で得られる3次元弾性像は、操作者が描出を所望する頻度の高い硬い組織に、大きな弾性値(変換後)が付与されているため、頻度の高い硬い組織の3次元弾性像を大きなコントラストで鮮明に描出することができる。しかも、頻度の低い軟らかい組織の変換後の相対値も0ではないため、寄与度は低いが3次元弾性像が描出される。これにより、硬い組織の3次元形状を確認できるとともに、軟らかい組織の3次元形状も把握することができる。
【0096】
なお、ボリュームデータの弾性値を複数の領域に予め分離し、分離した後の領域ごとにボリュームレンダリング部42は、本実施形態3により弾性値の変換を行ってレンダリングを行うことも可能である。
【0097】
なお、上述してきた実施形態1〜4では、弾性ボリュームデータの全体の弾性値を変換する場合について説明したが、弾性ボリュームデータのうち一部の領域のみについて弾性値を変換することも可能である。
【0098】
また、本実施形態1〜4では、ボリュームデータを生成後に弾性値を変換する例について説明したが、ボリュームデータ作成前の2次元弾性像構成部34の出力について、本実施形態の弾性値の変換を施し、その後に弾性ボリュームデータを作成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 被検体、2 探触子、3 送信部、4 受信部、5 超音波送受信制御部、6 整相加算部、7 断層画像構成部、8 カラー2次元弾性像、9 3次元弾性像、10 画面、11 白黒断層像、12 切替加算部、13 画像表示部、14 カラーマップ(2次元弾性像)、15 カラーマップ(3次元弾性像)、16 パラメータ表示領域、27 RF信号フレームデータ記憶部、28 RF信号フレームデータ選択部、30 変位計測部、32 弾性情報演算部、34 2次元弾性像構成部、36 断層像のボリュームデータ作成部、38 ボリュームレンダリング部(2次元像)、39 2次元弾性像記憶部、40 弾性像のボリュームデータ作成部、42 ボリュームレンダリング部(弾性像)、43 インターフェイス部、44 画像系制御部、45 短軸走査位置制御部、46 マルチフレーム構成部(断層像)、48 マルチフレーム構成部(弾性像)、51 弾性値変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8