【実施例】
【0071】
本明細書に記載する表では、脂肪酸は、炭素鎖の長さと、鎖内の二重結合の数によって示される。例えば、C140は、C14:0酸またはミリスチン酸を指し;C160は、C16:0酸またはパルミチン酸を指し;C180は、C18:0酸またはステアリン酸を指し;C181は、C18:1酸またはオレイン酸を指し;C182は、C18:2酸またはリノール酸を指し;C183は、C18:3酸またはα−リノレン酸を指し;C200は、C20:0酸またはアラキジン酸を指し;C201は、C20:1酸またはエイコセン酸を指し、C220は、C22:0酸またはベヘン酸を指し、C221は、C22:1酸またはエルカ酸を指し、C240は、C24:0酸またはリグノセリン酸を指し、C241は、C24:1酸またはネルボン酸を指す。「塩合計量」は、C140、C160、C180、C200、C220およびC240の合計を指す。それぞれの明記されているサンプルについて、代表的な脂肪酸プロフィールが与えられている。
【0072】
他の意味であると示されていない限り、全てのパーセントは、オイルの中の脂肪酸の合計重量%を基準とした重量%を指す。
【0073】
実施例1
アブラナ属植物株15.24
オレイン酸が多く、総飽和脂肪酸含有量が少ないオイルを生成する植物を、90A24と命名された植物と、90I22と命名された植物とをかけ合わせて得た。90A24植物を、IMC 129系統から選んだ高オレイン酸のHIO 11−5(ATCC寄託番号40811;米国特許第5,863,589号)とIMC 144系統から選んだ低飽和脂肪酸のLS 6−5(ATCC寄託番号40813;米国特許第5,668,299号)とをかけ合わせて得た。90I22植物を、IMC 144系統から選んだ低飽和脂肪酸のLS 4−3(ATCC寄託番号40813)と、IMC 01系統から選んだ低α−リノレン酸であるD336(ATCC寄託番号40579;米国特許第5,750,827号)とをかけ合わせて得た。表1には、LS6−5、LS4−3、HIO 11−5の親株と、IMC 01の脂肪酸プロフィールが含まれている。
【0074】
【表1】
【0075】
90A24と90I22とをかけ合わせたF
l世代の子孫は、91ASと命名された。F
1 91AS植物を自家受粉させ、F
2種子を作り、これを収穫し、ガスクロマトグラフィー(GC)によって脂肪酸組成を分析した。リノレン酸含有量が少なく、オレイン酸含有量が多いF
2種子を植え、自家受粉させてF
3種子を作った。F
3種子の脂肪酸組成を分析した。オレイン酸が多く、リノレン酸含有量が少ないF
3種子を植えてF
3植物を作り、これを自家受精させてF
4種子を作った。F
4種子の脂肪酸組成をGCによって分析した。オレイン酸が多く、リノレン酸含有量が少ないF
4種子を植えてF
4植物を作り、そのうち8種類の植物を自家受粉させてF
5種子を作った。F
5種子の脂肪酸組成をGCによって分析した(表2)。
【0076】
91AS51057と命名された株のひとつから得たF
5種子を、総飽和脂肪酸量が4.99%であり、パルミチン酸が2.64%、ステアリン酸が1.33%と低いことに基づいて選択した(表2)。また、この株は、エイコセン酸(C20:1)含有量が1.73%と高かった。この選択した種子(F
5 91AS51057)を植えてF
5植物を作り、これを自家受精させてF
6種子を作った。この5種類の自家受精させた植物のうち、3種類からF
6種子を収穫した。3種類の植物それぞれから収穫したF
6種子の脂肪酸組成を表3に示す。91AS51057株の中で、さらなる5世代にわたって自家受精させ、選択を続けた。表4には、自家受粉させた91AS51057植物の22株から得たF
10種子を収穫した圃場の脂肪酸組成が与えられている。総飽和脂肪酸含有量は4.38〜6.28%の範囲であり、オレイン酸含有量は74.9〜82.5%の範囲であり、α−リノレン酸含有量は2.1〜4.8%の範囲であった。エイコセン酸含有量は1.28%〜2.30%の範囲であり、ほとんどの91AS51057 F
9植物は、エイコセン酸含有量が1.90%〜2.25%のF
10種子を作った。表4を参照。4種類の個々のF
10 91AS51057株の種子(X723868、X723977、X724734、X724738)を選択し、これらの種子をそれぞれの隔離したテントにある圃場に植えた。総飽和物量が少ないX724734株を、15行24列のポジションにある保育圃場に基づいて15.24と命名し、その後のかけ合わせに用い、パルミチン酸およびステアリン酸を減らしつつ、飽和物が少ないという形質を導入した。また、15.24株は、飽和物を減らすことに関連して、エイコサン酸の量が2.06%と多い状態に保持されていた。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
実施例2
15.24植物のFatA2変異の特定
ゲノムマッピング、マップベース遺伝子クローニング、直接配列決定の方策を用い、実施例1に記載した15.24株中の総飽和脂肪酸が低い表現型に関連する遺伝子座を特定した。15.24と01OB240(雑種産生のための細胞質雄性不稔(CMS)A株の維持に使用されるB株)とのかけ合わせからDH(倍加半数体)集合を成長させた。MassARRAYプラットフォーム(Sequenom Inc.、サンディエゴ、CA)を用いた1066 SNP(一塩基多型)マーカーを用い、この2種類の親株をスクリーニングし、この2種類の親の多型SNPマーカーを特定し、179の多型SNPマーカーを特定した。
【0081】
脂肪酸成分とSNPマーカーとのシングルマーカー相関をSASプログラム(SAS Institute 1988)を用いて実施した。JoinMap 3.0(Kyazma)のKosambi関数を用い、Brassica napus遺伝子連鎖地図を構築した。量的形質遺伝子座(QTL)のインターバルマッピングをMapQTL 4.0(Kyazma)を用いて行った。LODスコアが3.0より大きいことは、相関インターバルを示すための閾値であると考えられた。精密QTLマッピングの場合、15.24と01PR06RR.001BのキャノーラR(稔性回復因子)株とをかけ合わせ、BC
3S(自己の戻し交配)集合を成長させた。特定されたQTLインターバルの中のSNPハプロタイプブロックおよび組み換え/かけ合わせ事象を、MS Excel(登録商標)プログラムを用いて特定した。
【0082】
比較ゲノムマッピングを行ない、Brassica napus染色体中で特定されたQTLのポジションを決定し、さらに、特定されたQTLインターバルの中に特定されたSNPマーカーおよび候補遺伝子を包含するBrassica rapa BAC(細菌人工染色体)クローンを、公的に入手可能なBrassicaおよびArabidosisのゲノム配列、遺伝子、遺伝子連鎖地図、brassica.bbsrc.ac.uk/およびncbi.nlm.nih.gov/のWWWから得た他の情報を用い、総飽和脂肪酸が少ないことについて特定した。
【0083】
計148のDH株を、179多型のSNPマーカーを用いて遺伝子型決定した。QTLマッピングから、飽和脂肪酸含有量(C18:0およびC20:0)について、7つのSNPマーカーを包含する主要なQTLインターバル(5 cM)を特定した。15.24と01PR06RR.001Bのキャノーラ稔性回復因子株とをかけ合わせて得た610 BC
3S
1株を用いた精密マッピングから、総飽和脂肪酸が少ない表現型に関連する1 cM QTLインターバルに隣接する2個のSNPマーカーを特定した。比較ゲノムマッピングによって、N3染色体内のこのQTLのポジションを決定し、さらに、このQTLインターバル内のFatA2候補物質を特定した。
【0084】
15.24株と01OB240株から得たDNAをテンプレートとして使用し、FatA配列を増幅させた。得られた配列を、DNASTAR/Lasergene 8.0(DNASTAR, Inc)から得たBLAST(Basic Local Alighnment Search Tool)、MegAlign、EditSeqのプログラムを用いて分析した。FatA1およびFatA2のアイソフォームを増幅させ、代表的なサンプリングを
図1に示している。15.24から得たBnFatA1配列は、B.rapa FatA1およびA.thaliana FatA1の配列と同種であり、一方、15.24から得たBnFatA2配列は、AtFatA2およびB.napus pNL2の配列と同種である。FatA2の2種類のアイソフォーム(または対立遺伝子)は、配列決定の結果から明らかであり、FatA2aおよびFatA2bと名付けられた。これら2種類のアイソフォームの配列間の違いを
図4に示している。
図1および
図2は、代表的なヌクレオチドを示しており(「2」と記されたポジション、FatA2bアイソフォームのみを
図1に示している)、このポジションで、FatA2aは「C」であり、FatA2bは「T」である(
図4にまとめられている)。FatA2の配列決定の結果から、FatA2bアイソフォーム配列内に、15.24は、
図1、
図2、
図4で「1」と記されたポジションによってあらわされる1個のヌクレオチド多型を含んでいた。15.24において、FatA2b配列は、01OB240配列には存在しない「C」から「T」への変異を含んでいる(
図1、2、4の「1」)。
図1および
図2のポジション「1」でのヌクレオチド置換は、FatA2コード配列のポジション942に対応しており(Genbank寄託番号NM_117374.3に記載しているArabidopsis thaliana配列に基づいて番号を付けている)、その結果、コードされたタンパク質のポジション255のプロリンがロイシン残基で置換されている。15.24由来のBrassica napus FatA2b遺伝子の代表的なヌクレオチド配列を与える配列番号:28および配列番号:32を参照。
図4では、15.24株の飽和物の含有量が低いことと相関関係にある「C」から「T」へのSNPがあるポジション798に印が付けられている。配列番号:29は、野生型B.napus FatA2ポリペプチドの残基242〜277のアミノ酸配列を含む。配列番号:29のポジション14(全長アミノ酸配列のポジション255)は、15.24由来のFatA2ポリペプチド内のロイシンである。配列番号:30は、野生型Arabidopsis FatA2ポリペプチドを含む。配列番号:31は、エキソン2〜6に由来するB.napus FATA2bポリペプチドの予想アミノ酸配列を含む。
【0085】
図3は、Arabidopsis FatA2タンパク質、15.24および01OB240由来のBrassica FatA2タンパク質のポジション255付近の保存された領域のアラインメントを含んでいる。ポジション255のプロリンは、Brassica、Arabidopsis、B.napus、B.rapa、B.juncea、Zea mays、Sorghum bicolor、Oryza sativa Indica(米)、Triticum aestivum、Glycine max、Jatropha(樹種)、Carthamus tinctorius、Cuphea hookeriana、Iris tectorum、Perilla frutescens、Helianthus annuus、Garcinia mangostana、Picea sitchensis、Physcomitrella patens subsp.Patens、Elaeis guineensis、Vitis vinifera、Elaeis oleifera、Camellia oleifera、Arachis hypogaea、Capsicum annuum、Cuphea hookeriana、Populus trichocarpaおよびDiploknema butyraceaで保存されている。さらに、アミノ酸242〜277に広がる領域の多くのアミノ酸が、ArabidopsisおよびBrassicaのFatAおよびFatBの両方で同種である(Fett/Lipid 100(1998)167−172を参照)。
【0086】
図4は、01OB240および15.24の遺伝資源に由来する代表的なBnFatA2a配列およびBnFatA2b配列の一部を示す。「1」および「2」と記されたポジションは、
図1、2、3のポジション「1」および「2」に対応している。
【0087】
親株(15.24および0101OB240)および他の遺伝資源の集合(IMC144、IMC129、Q508、Q7415を含む)の大スケールスクリーニングから、FatA2 SNPが15.24特異的であり、総飽和脂肪酸が少ない表現型と統計的に有意に関連しており(飽和物の総含有量についてR2乗=0.28、C18:0についてR2乗=0.489、C20:0についてR2乗=0.385)、エイコセン酸含有量が多いことと統計的に有意に関連していた(R2乗=0.389)。FatA2 SNP1変異は、15.24植物に由来するオイルのC14:0およびC16:0の含有率に有意な相関はなかった。しかし、15.24植物に由来するオイルのC18:0含有量は、C20:1含有量と負の相関があることがわかった(R値=−0.61)。
【0088】
実施例3
Brassica株15.36
オレイン酸が多く、総飽和脂肪酸含有量が少ないオイルを生成する植物を、A12.20010株およびQ508株に由来する植物をかけ合わせて得た。A12.20010株を、IMC144系統からの選択肢と、IMC129系統からの選択肢とをかけ合わせて得た。Q508株は、fad2 D遺伝子およびF遺伝子それぞれに変異を含む高オレイン酸株である。米国特許第6,342,658号の実施例5および7を参照。
【0089】
92EP.1039と命名された植物を、A12.20010とQ508をかけ合わせた子孫の脂肪酸組成に基づいて選択した。92EP.1039植物を、市販のCanadian春型のキャノーラ品種であるTrojan植物とかけ合わせた。92EP.1039およびTrojanのF
1世代の子孫を93PIと命名した。F
1 93PI植物を自家受粉させてF
2種子を作り、これを収穫し、GCによって脂肪酸組成を分析した。
【0090】
オレイン酸含有量が多いF
2種子を選択し、植えてF
2植物を得た。F
2植物を自家受粉させてF
3種子を作った。F
3種子の脂肪酸組成を分析した。表5には、13種類の異なるF
2植物から得た93PI21 F
3種子の脂肪酸プロフィールが含まれている。飽和脂肪酸含有量が少ないF
3 93PI21種子を植えてF
3植物を作り、これを自家受精してF
4種子を作った。F
4 93PI21種子の脂肪酸組成をGCによって分析した。表6には、13種類の異なる自家受粉させたF
3植物から得たF
4 93PI21種子の脂肪酸プロフィールが含まれている。総飽和脂肪酸含有量が最も低い3種類の93PI21植物(T7440796、T740797、T740799)を、5世代にわたってさらに自家受精させ、総飽和脂肪酸含有量が低いことについて選択した。93PI2I株のT740799をF
4世代で93PI41003と命名し、成長を促した。表7は、24種類の自家受粉させたF
7世代の93PI41003植物から収穫したF
8種子の脂肪酸組成を与えている。この結果は、総飽和脂肪酸含有量が4.51%〜6.29%の範囲であり、オレイン酸含有量が64〜71%の範囲であり、α−リノレン酸含有量が4.8〜7.5%であることを示している。エイコセン酸含有量は、1.51%〜1.99%の範囲であった。93PI41003 F
8植物のX727712株を、15行36列のポジションにある保育圃場に基づいて15.36と再び命名し、総飽和脂肪酸組成は4.51%であり、パルミチン酸が2.65%、ステアリン酸が0.94%と少なかった。15.36株をかけ合わせに使用し、他の遺伝子バックグラウンドに飽和物が少ない形質を導入した。
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
実施例4
Brassica napus FatBのクローニング
Brassica napus FatB遺伝子のクローニングは、テンプレートとしてのWestarゲノミックDNAおよびTaqポリメラーゼ(Qiagen)を用い、各々、プライマーFatB1(5'-ATGAAGGTTAAACCAAACGCTCAGGC-3';配列番号:8)およびFatB2(5'-TGTTCTTCCTCTCACCACTTCAGC-3';配列番号:9)を用いるPCRを行うことによって開始した。各々の50μL反応液には、0.5μMのプライマー、1X Qiagen Taqポリメラーゼバッファー、2.5UのTaqポリメラーゼ、および0.2mMのdNTPを含ませた。ターゲットは以下のサイクル条件を用いて増幅した:94℃にて30秒の1サイクル;94℃にて10秒、58℃にて30秒、および72℃にて1分30秒の5サイクル;94℃にて10秒、54℃にて30秒、および72℃にて1分30秒の5サイクル;および94℃にて10秒、51℃にて30秒、および72℃にて1分45秒の24サイクル。PCR反応物のアリコートをアガロースゲルに流し、選択したバンドを切り出し;Qiagen Qiaquickキットを用いてバンドからDNAを溶出した。DNA溶出物は‘ポリッシング’反応に付してT/Aクローニングを促進し、ついでTOPO(登録商標)T/A(登録商標)クローニングキット(Invitrogen)を用いてTOPO(登録商標)T/Aクローニングした。クローンについて配列を得、ついでそれをBLASTを用いて解析してホモロジーを検索した。クローンのうちの1はFatBのようであった。
【0095】
PCRをInvitrogen Platinum(登録商標)Pfxポリメラーゼ、最終濃度2mMのMgSO
4を補充したそのバッファー、およびIMC201株ゲノミックDNAを用いて、以下のサイクル条件で繰り返した:94℃にて2分の1サイクル;94℃にて10秒、60℃にて30秒、および72℃にて1分20秒の5サイクル;94℃にて10秒、57℃にて30秒、および72℃にて1分30秒の5サイクル;および94℃にて10秒、54℃にて30秒、および72℃にて1分30秒の24サイクル。この反応からのPCR産物も、Topo(登録商標)T/A(登録商標)クローニング・システム(Invitrogen)を用いてTopo(登録商標)T/A(登録商標)クローニングした。
【0096】
配列決定した多数のクローンが、同定した遺伝子の4の異なるアイソフォームを含み、FatB(配列番号:10,11,12,13)に対してホモロジーを示した。各遺伝子の開始および停止領域の配列を得るために、製造業者プロトコールに従って、GenomeWalker(商標)キット(Clontech)を利用する‘ウォーキング’法を用いた。ウォーキング法からの配列情報に基づいて、FatB遺伝子の5' UTRおよび3' UTRまたは停止コドン領域付近に対応するプライマーを設計した。PCRは、1X Platinum(登録商標)Taq High Fidelityバッファー;2.5UのPlatinum(登録商標)Taq High Fidelityポリメラーゼ;0.2mMのdNTP;0.5μMのプライマー;および2mMのMgSO
4を含む50μLの反応液中、テンプレートとしてのIMC201ゲノミックDNAおよび2セットのプライマーを用いて行った。第1反応用のプライマーは5'-CTTTGAACGCTCAGCTCCTCAGCC-3'(配列番号:14)および5'-‘AAACGAACCAAAGAACCCATGTTTGC-3'(配列番号:15)とした。第2反応用のプライマーは5'-CTTTGAAAGCTCATCTTCCTCGTC-3'(配列番号:16)および5'-GGTTGCAAGGTAGCAGCAGGTACAG-3'(配列番号:17)とした。第1反応は、以下のサイクル条件下で行った:94℃にて2分の1サイクル;94℃にて10秒、56℃にて40秒、および68℃にて1分30秒の5サイクル;94℃にて10秒、53℃にて30秒、および68℃にて2分の30サイクル。第2反応は以下のサイクル条件下で行った:95℃にて2分の1サイクル;94℃にて10秒、58℃にて40秒、および68℃にて2分の5サイクル;ならびに、94℃にて10秒、55℃にて30秒、および68℃にて2分の30サイクル。両方の反応セットは、〜1.6Kbの予想したサイズのバンドを生成した。
【0097】
DNAをクローニングするために、94℃にて2分の1サイクル、ならびに94℃にて10秒、58℃にて40秒、および68℃にて2分の35サイクルを用いてPCR反応を行った。得られたバンドをゲル精製し、Qiagen Qiex IIカラムに流してアガロースゲルからDNAを精製した。DNAは、Invitrogen T/A(登録商標)クローニングシステムを用いてTopo(登録商標)T/A(登録商標)クローニングした。配列番号:18−21に記載するヌクレオチド配列は、各々、完全長(または、ほぼ完全長の)FatBアイソフォーム1、2,3、および4を表す。
【0098】
FatBアイソフォーム5および6は以下のようにして同定した。プライマー5'-ACAGTGGATGATGCTTGACTC-3'(配列番号:22)および5'-TAGTAATATACCTGTAAGTGG-3'(配列番号:23)をB.napus 01OB240からのFatB配列に基づいて設計し、それを用いてIMC201からB.napusゲノミックDNAを増幅した。得られた産物をクローニングし、配列決定し、ついで新たなFatB部分長のアイソフォームを同定した。GenomeWalker(商標)キット(Clontech)を用いて配列ウォーキングを行った。プライマー5'-TACGATGTAGTGTCCCAAGTTGTTG-3'(配列番号:24)および5'-TTTCTGTGGTGTCAGTGTGTCT-3'(配列番号:25)はゲノム・ウォーキングを通して得た配列に基づいて設計し、それを用いて新たなFatBアイソフォームの連続するORF領域を増幅した。PCR産物をクローニングし、配列決定してFatBアイソフォーム5および6(配列番号:26および配列番号:27)を同定した。6のアイソフォームは、ClustalWアルゴリズムを用いて評価して、82ないし95%の配列同一性を有する。
【0099】
実施例5
突然変異FATB遺伝子
B.napus IMC201種子の集団を化学突然変異誘発に付した。圃場生育IMC201の典型的な脂肪酸組成は、6.4%の総飽和を有して、3.6%のC16:0、1.8%のC18:0、76%のC18:1、12.5%のC18:2、3%のC18:3、0.7%のC20:0、1.5%のC20:1、0.3%のC22:0、0%のC22:1であった。突然変異誘発の前に、15分間浸漬し、ついで室温にて5分間排水することによってIMC201種子を700gmの種子ロットに前−吸収させた。これを4回繰り返して、種皮を軟化した。ついで、前−吸収した種子を4mMのメチルN−ニトロソグアニジン(MNNG)で3時間処理した。MNNGでの処理に続いて、種子から突然変異源を排出し、1時間水で濯いだ。水を除去した後に、種子を52.5mMのメタンスルホン酸エチル(EMS)で16時間処理した。EMSでの処理後、種子から突然変異源を排出し、水で1時間半濯いだ。この二重の突然変異源処理は、種子集団にLD
50を生じた。
【0100】
ほぼ200,000の処理した種子を標準的な温室ポット土壌に植栽し、環境制御した温室に設置した。植物は16時間の日照下で生育した。成熟時に、M2種子を植物から収穫し、一緒にまとめた。M2世代を植栽し、8の植物からの初期のポスト子葉ステージの発達からの葉試料を保存し、これらの植物の葉からDNAを抽出した。葉の収穫、保存およびDNA抽出をほぼ32,000の植物について繰り返し、突然変異B.napus IMC201 DNAを含むほぼ40の96ウェルブロックを得た。突然変異DNAのこのグループ分けは、以後、DNA突然変異誘発ライブラリーという。
【0101】
DNA突然変異誘発ライブラリーをスクリーニングして、停止コドンを含むFatB突然変異体を同定した。一般的に、PCRプライマーを設計して、各FatBアイソフォームの領域を増幅した。反応産物をREVEAL(商標)機器(Transgenomics Inc.)上の温度勾配キャピラリー電気泳動を用いて解析し、これは、化学突然変異およびその後のPCR増幅からのゲノミックDNAに存在する単一ヌクレオチド多型(SNP)のように、異種PCR産物を含むPCR反応物が同種産物のみを含む反応物から区別されることを許容する。
【0102】
この一次突然変異誘発スクリーニング用のソースゲノミックDNA混合物である各M2植物の一次ヒットを表す個々の種子をサンプリングし、アイソフォームPCRを行うためにゲノミックDNAを単離した。PCR反応は、1X Platinum(登録商標)Taq High Fidelityバッファー;2.0UのPlatinum(商標)Taq High Fidelityポリメラーゼ;0.2mMのdNTP;0.5μMのプライマー;および2mMのMgSO
4を含む30μL反応物中、B.napus IMC201ゲノミックDNAを用いて行った。サイクル条件は以下のとおりとした:95℃にて2分の1サイクルにつづく94℃にて6秒、64℃にて40秒および68℃にて40秒の34サイクル。PCR産物を配列決定し、配列を各アイソフォームについて野生型配列と比較した。
【0103】
配列比較は、突然変異が発生し、各アイソフォーム1、2、3および4について突然変異植物を得たことを示した。突然変異体の配列を配列番号:1-4に示す。配列番号:1は、CAGからTAGにコドンが変化したポジション154に突然変異を有するアイソフォーム1のヌクレオチド配列を含む。配列番号:2は、CAGからTAGにコドンが変化したポジション695に突然変異を有するアイソフォーム2のヌクレオチド配列を含む。配列番号:3は、TGGからTGAにコドンが変化したポジション276に突然変異を有するアイソフォーム3のヌクレオチド配列を含む。配列番号:4は、TGGからTGAにコドンが変化したポジション336に突然変異を有するアイソフォーム4のヌクレオチド配列を含む。
【0104】
実施例6
突然変異アブラナ属FatB遺伝子の組合せを運搬するBrassica napus植物
Brassica napus種子オイルの脂肪酸組成に対する実施例5に記載した種々の突然変異Brassica FatB対立遺伝子の効果を決定するために、異なるFatBアイソフォームで異なる組合せの突然変異を運搬しているBrassica napus植物を作製した。各々が異なるアイソフォームに1またはそれを超える突然変異を運搬する親植物を種々の方法で交配し、DNA配列解析によって子孫をスクリーニングして、存在する突然変異(またはその複数)を同定し、その後に自家受粉し、DNA配列解析を行って突然変異が同型または異型接合の状態で存在するかを決定した。
【0105】
この方法を用いて、4のFatBアイソフォームの突然変異対立遺伝子を運搬する3のアブラナ属植物を作製した。これらの植物の各々を自家受粉し、収穫し、温室に再植栽して1,140の植物の集団を作成した。すべての1,140の植物をDNA配列解析を通してスクリーニングして、各々のFatBアイソフォーム遺伝子座に突然変異対立遺伝子が同型または異型接合状態のいずれで存在するかを判定した。以下の突然変異FatBアイソフォームの組合せについて同型接合体であった子孫を同定した:FatBアイソフォーム1、2および3;FatBアイソフォーム1、2および4;FatBアイソフォーム2、3および4;FatBアイソフォーム1、3および4;ならびに、FatBアイソフォーム1、2、3および4。
【0106】
突然変異FatBアイソフォームの組合せを運搬する植物を自家受粉し、種子を収穫した。得られた種子は、脂肪酸組成に対する突然変異対立遺伝子の異なる組合せの影響を評価するために、2の異なる温度様式下の生育チャンバーに植栽した。IMC201親は、両方の温度様式において対照として用いた。
【0107】
種子を4インチのプラスチック製ポット中のPremier Pro-Mix BX ポット土壌(Premier Horticulture,Quebec,Canada)に植栽した。植栽した種子に灌水し、5℃にて5日間階層化し、Conviron ATC60制御-環境下生育チャンバー(Controlled Environments,Winnipeg,MB)中、昼間温度20℃および夜間温度17℃(20/17)で発芽させた。各遺伝子の組合せをランダム化し、2の別々の生育チャンバー中で10回繰り返した。開花時に、もう1のチャンバーはそのまま(20/17)にしつつ、1のチャンバーを14℃の昼間温度および11℃の夜間温度(14/11)の日中温度サイクルに低下した。温度処理は、脂肪酸組成に対する温度の影響を同定するために課した。植物は1週間当たり5回灌水し、150ppmの割合で20:20:20(NPK)液体肥料を用いることにより隔週で施肥した。植物は個々に袋がけして自家受粉および種子の遺伝子純度を確保した。各植物からの種子を生理学上の種子成熟で個々に収穫した。すべての植物はPCRベースアッセイを用いて解析し、予想された遺伝子座にFatB突然変異対立遺伝子が存在すること、ならびに、IMC201家系からの脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子(mFad3a、mFad3bおよびmFad2d)の突然変異対立遺伝子が存在することを確認した。
【0108】
91AE.318 x IMC02の交配からIMC201を選択した。91AE.318は、米国特許第5,668,299号に記載されているIMC129の姉妹または子孫である。IMC02は、IMC01 x Westarの交配から得た。米国特許第5,750,827のExample 3を参照されたい。IMC02は、fad3Aおよびfad3B遺伝子の両方に突然変異を含む。fad3A遺伝子は、ゲノミックDNA中のATGからポジション2565にCからTの突然変異を含み、Fad3Aタンパク質のポジション275にシステインからアルギニンの置換を生じる。fad3B遺伝子は、エキソン−イントロン・スプライシング部位認識配列に位置する、ゲノミックDNAのATGからポジション3053にGからAの突然変異を含む。
【0109】
米国オイル化学者協会のプロトコール(AOCS,2009)による脂肪酸プロフィールのガスクロマトグラフィー測定用の改変法を試料の評価に用いた。バイアルを、液相分離用のポリエチレングリコール系DB-Wax(登録商標)(J&W Scientific,Folsom,CA)に充填した融解シリカ キャピラリーカラム(5m x 0.180mmおよび0.20μmフィルム厚)を備えたHewlett-Packard 5890シリーズIIガスクロマトグラフィー(Hewlett-Packard,Palo Alto,CA)に入れた。水素(H
2)を2.5mL/minの流速のキャリアーガスとして用い、カラム・クロマトグラフィー温度を200℃の等温とした。各植物からの種子を、この方法を通して3回の反復で試験した。
【0110】
異なる温度様式下で生育した植物からの脂肪酸データは2の方法で分析した。最初に、データを異なる環境として別々に解析し、ついでそれを保存し、環境間で解析した。データはproc glmを用いるSAS(SAS Institute,2003)で解析して、平均脂肪酸値の差を見積もった。表8は、前記に論じたように異なる日内温度様式(昼間20℃/夜間17℃;昼間14℃/夜間11℃)に設定した2の環境生育チャンバー中で生育した種々の組合せの突然変異FatB対立遺伝子を運搬する植物によって産生された種子の遺伝子型、集団サイズ、パルミチン酸、ステアリン酸および総飽和脂肪酸の平均値および標準偏差を含む。Isoの前にある遺伝子型は突然変異対立遺伝子の組合せであり、その後の数字は特定の遺伝子座を示す。異なる文字を有する平均は、Student−Newman−Keuls平均分離テストによって決定して有意に異なる。
【0111】
【表8】
【0112】
PCRスクリーニングは、IMC129からのmFad2d突然変異対立遺伝子がFatB突然変異の組合せのすべてにおいて分離していることを示した。スクリーニングした個体の70%において存在していないかまたは異型であることが判明した。この対立遺伝子の効果は、環境間の平均を比較する解析においてパルミチン酸、ステアリン酸および総飽和脂肪酸含有率について統計学上有意義であった。したがって、この対立遺伝子のコピー数(0、1または2)をANOVA平均分離試験における共変数として含めた。環境間で保存したデータを用いた解析において、種子パルミチン酸および総飽和脂肪酸含有率の平均値に有意差を発見した。
【0113】
突然変異FatB対立遺伝子を運搬するすべての植物は、すべての4の突然変異対立遺伝子を運搬する植物において最大の低下を有するIMC201対照に対して、種子パルミチン酸における統計学上有意な減少を示した。総飽和脂肪酸における有意な減少は、突然変異対立遺伝子1、2および3を運搬する植物(すなわち、表9および10中のIso123)ならびにIso1234によって生産される種子において見出された。
【0114】
異なる温度処理下の異なるチャンバー中で生産した種子を別々に分析した場合の平均ステアリン酸含有率について統計学上の有意差が発見された(表10、異なる文字の平均はStudent−Newman−Keuls平均分離試験によって判定して有意に異なる)。20/17環境においては、Iso123、Iso124およびIso1234はすべて、ステアリン酸における有意な減少を示した。Iso1234だけは、14/11環境においてこの減少を示した。Iso123、Iso124およびIso1234の総飽和脂肪酸含有率における減少は20/17環境中で有意であり、すべての対立遺伝子遺伝子座は14/11環境において有意な減少を示した(表9および10)。再度、突然変異対立遺伝子の組合せのすべての形態を運搬する植物は、環境からのデータを別々に解析した場合にパルミチン酸における有意な減少を示した。
【0115】
【表9】
【0116】
ここに報告する3の脂肪酸の平均含有率は、環境の間で有意に異なる(C16:0 F=59.59、p<.0001;C18:0 F=83.42,p<.0001;総飽和 F=122.02,p<.0001)。データは、低温環境が、種子オイル中のこれらの飽和脂肪酸の量を減少することを示している。
【0117】
【表10-1】
【0118】
【表10-2】
【0119】
【表10-3】
【0120】
実施例7
アブラナ属植物系統1764、1975、および2650
以下のようにして、実施例5の系統1764、1975および2650を実施例5のIMC201種子の突然変異誘発集団から選択した。3,000の大きさのM
2世代種子を植栽した。成熟時に、M
3種子(2500個体)を2500のM
2植物から収穫し、GCを通して分析した。表11は、種子オイル中に低い総飽和含有率を有すると同定された3の系統からの種子の脂肪酸プロフィールを提供する:1764、1975、および2650。1764、1975、および2650のM3種子を植栽(系統当たり100)し、得られた植物を自家受粉させた。M
4種子を植物から収穫し、GCを通して分析した(表12を参照されたい)。
【0121】
【表11】
【0122】
【表12-1】
【0123】
【表12-2】
【0124】
【表12-3】
【0125】
【表12-4】
【0126】
実施例8
DH系統Salomon
15.24(実施例1)と1764-92-05(実施例7)との間で交配した。DH集団は、交配からF
1花粒粉を収集し、花粒粉をコルヒチンで処理し、ついでそれをイン・ビトロ(in vitro)で繁殖させることによって生成した。花粒粉からイン・ビトロ(in vitro)で形成した幼植物体を温室に移動し、形成した花序を自家受粉させた。成熟時にDH
1植物から種子を収穫し、脂肪酸プロフィールについて分析した。低い飽和脂肪酸含有率を示す植物からの種子を、温室および圃場において生育した。表13は、Salomonと命名したDH1集団の温室生育植物によって生成された種子の脂肪酸プロフィールを含む。表14は圃場で生育したDH系統Salomon-05の3の植物からの種子の脂肪酸プロフィールを含み、Salomon-005と同時コード化した。IMC111RR、登録カナダB.napus品種を表14に対照として含ませた。Salomon 005の個々の植物の圃場生育種子は、2.92%ないし3.35%のパルミチン酸および0.29%ないし0.47%のステアリン酸を含んで3.83%ないし4.44%の総飽和を有していた。系統Salomon-005は温室および圃場におけるDH系統の最低の総飽和脂肪酸プロフィールを示した。
【0127】
表15は、実施例6に記載した条件下の生育チャンバー中で生育した個々のSalomon-005植物、DH系統Salomonの子孫からの種子の脂肪酸プロフィールを含む。高温環境(20/17)下では、Salomon 005の自家受粉した植物は、2.55%ないし2.70%のパルミチン酸および1.05ないし0.78%のステアリン酸を含む4.13%ないし4.67%の範囲の総飽和脂肪酸を有していた。低温環境(14/11)で生育した場合の同じSalomon 005 DH1ソースからの種子は、2.25%ないし2.39%のパルミチン酸および0.57%ないし0.85%のステアリン酸を含んで3.45%ないし3.93%の総飽和を有していた。1764、1975、および2650のような他の低飽和突然変異体と合した場合の15.24からのFATA2突然変異は、パルミチン酸およびステアリン酸の付加的低下を通して総飽和をさらに低下し得る。
【0128】
低14/11環境において、Salomon-005-09は最低のパルミチン酸含有率を示し、Salomon-005-05は最低のステアリン酸含有率を示し、およびSalomon-005-07は最低の総飽和脂肪酸含有率を示した。表15は、15.24、IMC201および1764-43-06 x 1975-90-14のF6子孫の個々の植物のプロフィールも含む(実施例10を参照されたい)。データは低温環境が種子オイル中の飽和脂肪酸の量を減少することを示している。
系統1764,1975および2650を15.36(実施例3)と交配して、低い飽和脂肪酸含有率を有する子孫を発生させた。
【0129】
【表13】
【0130】
【表14】
【0131】
【表15-1】
【0132】
【表15-2】
【0133】
【表15-3】
【0134】
【表15-4】
【0135】
実施例9
DH集団Skechers
Skechersと命名したDH集団は、15.24と06SE-04GX-33との交配から得た。06SE-04GX-33親系統は04GX-33と01NM.304との交配の子孫から選抜した。約80%のオレイン酸含有率および低飽和脂肪酸含有率を有する系統04GX-33は、01NM.304と欧州春期生育習性系統‘Lila’とを交配し、F
1交配からのDH集団を発育させることよって生成した。系統01NM.304は、IMC302とSurpass 400とのF
1交配のDH集団から発育させた。06SE-04GX-33種子は、0.091%の平均C14:0含有率、4.47%のC16:0含有率、0.68%のC16:1含有率、1.69%のC18:0含有率、79.52%のC18:1含有率、6.62%のC18:2含有率、4.12%のC18:3含有率、0.63%のC20:0含有率、1.22%のC20:1含有率、0.49%のC22:0含有率、0.0%のC22:1含有率、0.21%のC24:0含有率、および0.24%のC24:1含有率を有する。
【0136】
このDH集団は、花粒粉を収集し、花粒粉をコルヒチンで処理し、ついでそれをイン・ビトロ(in vitro)で繁殖させることによって、15.24と06SE-04GX-33の交配から生成した。花粒粉からイン・ビトロ(in vitro)で形成した幼植物を温室に移し、形成した花序を自家受粉させた。種子を成熟時のDH
1植物から収穫し、GCを通して脂肪酸プロフィールについて分析した。表16は、Skechers集団から選抜したDH系統の温室および圃場において生育した植物によって生成した種子の脂肪酸プロフィールを含む。IMC111RRの脂肪酸プロフィールを対照として表16に含める。Skechers-159およびSkechers-339は、温室および圃場において低総飽和脂肪酸プロフィールを示した(表16)。
【0137】
【表16】
【0138】
実施例10
系統1764-43-06 x 1975-90-14
種子における低い総飽和脂肪酸含有率について温室中の単一植物選抜の複数のサイクルにわたって、1764-43-06 x 1975-90-14の交配の子孫を用いて家系選抜プログラムを行った。表17は、F
1交配を作成するために用いた各親の種子脂肪酸プロフィールを含む。表18は、F
6世代を通して進めた選抜の種子脂肪酸プロフィールを含む。同系繁殖体01PR06RR.001Bおよび品種IMC201の平均種子脂肪酸プロフィールを比較のために示す。低総飽和脂肪酸についてのさらなるラウンドの自家受粉および選抜を行い得る。
【0139】
【表17】
【0140】
【表18-1】
【0141】
【表18-2】
【0142】
【表18-3】
【0143】
実施例11
圃場生育植物についての種子脂肪酸プロフィール
実施例10に記載した15.24、Salomon-03、Salomon-05、Salomon-07、F6選抜系統、Skechers-159およびSkecher-339の植物を、カナダ、SK、Aberdeenにおいて、圃場ポット中で生育した。成熟時に、各系統からの種子を収穫し、GC分析によって脂肪酸含有率を測定した。パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸含有率の範囲、および総飽和脂肪酸の範囲を表19に示す。系統Q2およびPioneer(登録商標)品種46A65の種子の範囲を比較のために示す。
【0144】
【表19】
【0145】
実施例12
15.24生殖質の放射線突然変異誘発(RMU)
低総飽和に基づく15.24 x 01OB240のDH集団から選抜した個体からの約30グラム(〜8,000の種子)のM
0種子(実施例2を参照されたい)を、45kradのセシウム照射を用いて突然変異誘発した。照射後ただちに、約1500の突然変異誘発した種子を温室に植栽し、そのうちの約500が植物に発育してM
1種子を生成した。約840のM
1種子を植栽し、M2種子を収穫した。M2種子は、15.24 x 01OB240(対照1と命名;M
0種子)の交配のF
1子孫植物と一緒に植栽した。個々のM2植物および対照植物によって生成したM3種子の脂肪酸組成をGCによって分析した。結果をM2見出しで表20に示す。最低の総飽和を有するM3種子を生成する個々のM
2植物は08AP-RMU-tray 3-18とし、これは対照−1についての6.48%と比較して5.28%の総飽和を有していた。最低の16:0を有するM
3種子を生成する個々のM
2植物は08AP-RMU-tray 13-25とし、これは対照−1についての3.19%と比較しての2.55%の16:0を有していた。最低18:0を有するM
3種子を生成する個々のM
2植物は08AP-RMU-tray 10-34とし、これは対照−1についての1.7%と比較して0.93%の18:0含有率を有していた。表20に示す脂肪酸プロフィールを作成するために用いたM
3種子は、温室中でこれらの3の系統から植栽した
【0146】
各3のグループからの、最低の総飽和、16:0、および18:0を各々有するM
3種子に由来するM
4植物を交配に用いるために選抜した。系統M4-L1601-12は、M
3世代において5.28%の総飽和含有率を有し、08AP-RMU-tray 3-18系から選抜した。系統M4-L1601-12の植物とFatBのアイソフォーム1、2、3、4の同型接合突然変異対立遺伝子を含む系統との交配を行った(実施例6に記載)。2のF
1個体についてのF
2種子からの種子脂肪酸プロフィールを表20に示す。系統M4-Lsat1-23およびM4-L1601-22の植物を交配し、ついで09AP-RMU-003-06と命名したF
1個体に生成した種子についての脂肪酸プロフィールを表20に示す。M4-Lsat1-23およびM4-L1601-22は、5.02%の総飽和および2.43%の16:0を有するM3世代から選抜した。系統M4-L1601-12 X M4-D60-2-01の植物を交配し、ついで09AP-RMU-012-2と命名したF
1個体に生成した種子についての脂肪酸プロフィールを表20に示す。M4-L1601-12 x M4-D60-2-01は、各々、5.28%の総飽和および0.88%の18:0を有するM3世代から選抜した。低総飽和脂肪酸含有率、低16:0および低18:0を有するF
1植物からの種子を、さらなる系統選抜育種のために生育した。幾つかの植物を自家受粉させ、さらなる選抜のためのDH集団を生成するために用いた。F
2植物およびDH集団の子孫に生成した種子中の総飽和脂肪酸含有率は、低総飽和表現型を付与する遺伝子座の突然変異対立遺伝子遺伝的分離に起因して、F1植物で生成する種子におけるよりも低くなることが予想される。
【0147】
【表20】
【0148】
実施例13
低飽和脂肪種子オイルを生成する雑種キャノーラの発育
総6%未満の飽和脂肪酸含有率を有する種子を産する雑種キャノーラ品種は、低飽和系統15.24からの遺伝子を商業的に生育させた雑種、Victory(登録商標)v1035に導入することによって生成した。雑種v1035は、65%の平均オレイン酸含有率を有する。系統15.24、ならびに同系繁殖体01PR06RR.001Bおよび95CB504の植物を温室に植栽した。同系繁殖体01PR06RR.001Bはv1035の雄性親である。同系繁殖体95CB504は、v1035のB系統雌性親である。010PR06RR.001Bおよび15.24の植物を、表21に示すように、95CB504および15.24のように異花受粉させた。
【0149】
【表21】
【0150】
95CB504および15.24の交配からのF
1子孫を95CB04に戻し交配してBC
1-B子孫を生成し、それを自家受粉させた(BC
1S)。低総飽和を有する植物をBC
1-B自家受粉子孫から選抜し、ついで95CB504に戻し交配してBC
2-B子孫を生成した。01PR06RR.001Bおよび15.24の交配からのF
1子孫を01PR06RR.001Bに戻し交配してBC
1-R子孫を生成し、それを自家受粉させた。低総飽和を有する植物をBC
1-R自家受粉子孫から選抜し、ついで01PR06RR.001Bに戻し交配してBC
2-R子孫を生成した。BC-BおよびBC-R子孫の戻し交配、選抜および自家受粉は複数の世代の間続けた。95CB504雄性不妊A系統、00OA05を95CB504B系統の変換と平行して低飽和表現型に変換した。雑種種子は、雌性親としての95CB504B系統および雄性親としての01PR06RR.001B R系統のBC
1S
3世代植物を用いて、手製で生成した。
【0151】
雑種種子は西カナダにおいて5の場所 x 4の繰り返しで生育した。試行プロット場所においては、幾つかの個体l植物を自家受粉用に袋づめし(5の場所 x 2の繰り返し)、成熟時に収穫した。残りの植物は袋がけせず(5の場所 x 4の繰り返し)、種子はバルクで収穫した。
【0152】
そなわる本質に関して、バルク試料は近接したプロットにおける非−低飽和脂肪酸系統との交配を外れるレベルを有していた。個々のおよびバルクの試料からの種子を、脂肪酸含有率について分析した。系統Q2、雑種v1035および商業的品種46A65の対照植物からの種子も個々におよびバルクで収穫した。
【0153】
表22は、雑種1524および対照についての個々の袋がけした試料およびバルク化した試料の脂肪酸プロフィールを示す。結果は、雑種1524によって生成した種子が対照に対して16:0含有率および18:0含有率の統計学上有意な低下、および対照に対して20:1含有率の統計学上有意な増大を有することを示している。また、雑種1524によって生成した種子は、対照に対して総飽和脂肪酸含有率における統計学上有意な低下を有する。個々に袋がけした植物についての総飽和脂肪酸含有率は約5.7%であり、あるいは系統15.24によって与えられるFatA2突然変異を欠く親雑種よりも約0.8%少ない。バルク種子についての総飽和脂肪酸含有率は約5.9%であり、あるいは系統15.24によって与えられるFatA2突然変異を欠く親雑種よりも0.9%を超えて少ない。
【0154】
【表22】
【0155】
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、v1035について前記した戻し交配および選抜プログラムを用いて、低飽和系統Skechers-339からの遺伝子を商業的に生育した雑種に導入することによって作製した。
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、低総飽和について選抜した1764-43-06 x 1975-90-14の交配のF
6子孫と商業的に生育した雑種の親同系繁殖体とを交配することによって作出した。v1035について前記したように戻し交配および選抜を用いて、低総飽和についてA系統、B系統およびR系統を選抜した。
【0156】
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、Salomon-05と商業的に生育した雑種の親同系繁殖体とを交配することによって作出した。v1035について前記した戻し交配および選抜を用いて、低総飽和についてA系統、B系統およびR系統を選抜した。
【0157】
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、Iso1234と雑種1524の親同系繁殖体とを交配することによって作出した。v1035について前記した戻し交配および選抜を用いて、低総飽和についてA系統、B系統およびR系統を選抜した。雑種A2-1234と命名した得られた雑種は、アイソフォーム1、2、3、および4に突然変異FATA2対立遺伝子および突然変異FatB対立遺伝子を運搬している。
【0158】
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、突然変異Fad2対立遺伝子および突然変異Fad3対立遺伝子について同型接合の品種と雑種A2-1234の親同系繁殖体とを交配することによって作出した。v1035について前記した戻し交配および選抜を用いて、低総飽和についてA系統、B系統およびR系統を選抜した。得られた雑種は、突然変異FATA2対立遺伝子、アイソフォーム1、2、3、および4の突然変異FatB対立遺伝子、突然変異Fad2対立遺伝子、および突然変異Fad3対立遺伝子を運搬している。
【0159】
低総飽和脂肪酸含有率の種子を産するもう1の雑種キャノーラ品種は、v1035について前記した戻し交配および選抜を用いて、低飽和系統15.36からの遺伝子を商業的に生育した雑種に導入することによって作製した。
【0160】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と結合した記載したが、先の記載は本発明を説明するためのものであって、その範囲を限定するものではない。本発明の範囲は添付する特許請求の範囲の範囲によって決まる。他の態様、有利な効果および修飾は、以下の特許請求の範囲の範囲内に入る。