(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フローリング板の長手方向の両端が、前記捨板の長手方向と直交する方向の両端と同じ位置にならないように配置される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の床構造。
前記フローリング板の長手方向と直交する方向の両端が、前記捨板の長手方向の両端と同じ位置にならないように配置される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の床構造。
隣接する前記捨板同士の短手側の端面の両端の位置が一致し、かつ隣接する前記捨板同士の長手側の端面の両端の位置が一致しないように前記捨板の長手方向にずれて配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の床構造。
隣接する前記フローリング板同士の短手側の端面の両端の位置が一致し、かつ隣接する前記フローリング板同士の長手側の端面の両端の位置が一致しないように前記フローリング板の長手方向にずれて配置されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の床構造。
前記フローリング板の前記長手方向の長さが1800mmであり、かつ前記フローリング板の短手方向の長さが222mmである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の床構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、気密性や断熱性の高い建築材料を使用することにより、優れた空調効率を有する建築物が供給されるようになってきており、体育館や多目的ホール等といった室内競技施設においても気密性や断熱性が高い建築材料が使用されるようになってきている。特に、最近では、体育館等に冷暖房装置を設置したり、自然エネルギーを利用して床下に地中からの暖気を通風させて床暖房を行うようなことが行われている。このような最近の室内競技施設は、快適性は高いものの、冬期では従来と比較して湿度がかなり低くなる可能性がある。特に、室内競技施設の室内は、加湿器などにより湿度を一定に保つことはできるが、冬期の床下は非常に湿度が低く乾燥した状態となり易い。
【0008】
木材は、一般に、乾燥すると、繊維方向と直交する方向に収縮する割合が大きい。また、捨板、捨板の表面に敷設されたフローリング板は、これらの長手方向が繊維方向である場合が多い。そのため、上記したような床構造では、床下が非常に乾燥した状態になると、捨板は、捨板の幅方向、すなわち、捨板の長手方向と直交する方向(短手方向)に収縮する割合が大きくなる。そのため、
図7に示すような、従来から適用されている床構造では、捨板が幅方向に収縮すると、捨板の表面に敷設されたフローリング板の長手方向に沿う側面の一部が、隣接するフローリング板の長手方向に沿う側面の一部と圧接した状態になる。そして、その状態で床を使用すると、床面の振動によりフローリング板の長手方向に沿う側面同士が擦れあい、フローリング板の一部が長手方向に沿って裂けて、床面に亀裂が生じたり、ささくれが生じる可能性がある。このような床面の損傷は、室内競技施設の利用者等の事故に繋がる可能性もあり、より安全な床構造が求められている。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、床面に亀裂が生じたり、ささくれが生じることを抑制し、安全性に優れた床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明者らは、床構造について鋭意研究をした。その結果、捨板の長手方向とフローリング板の長手方向とが直交するように捨板上にフローリング板を敷設し、かつ1枚のフローリング板が少なくとも1枚の捨板を跨いで1枚の捨板に対して複数のフローリング板を敷設するようにすると、捨板またはフローリング板の一方の収縮率の変動が小さいかほとんど収縮しない方向を、他方の収縮率の変動が大きい方向と同じ向きとできるため、捨板およびフローリング板の収縮による影響を双方互いに打ち消し合うようにすることができる。これにより、フローリング板の端面に亀裂が生じたり、ささくれが生じることを抑制できることを見出した。本発明は、係る知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明による床構造は、床基盤上に所定間隔で敷設された支持脚の間に架設された大引と、前記大引の上部に前記大引の長手方向と直交するように設けられた根太と、前記根太の上部に敷設された捨板と、前記捨板の上部に敷設されたフローリング板と、を備えた床構造であって、前記フローリング板が、前記捨板の長手方向と前記フローリング板の長手方向とが直交し、かつ1枚の前記フローリング板が少なくとも1枚の前記捨板を跨ぐように敷設されていることを特徴とする、床構造である。
【0012】
本発明においては、前記捨板の長手方向が、前記根太の長手方向に対して並行に配置されることが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記捨板の長手方向に沿う両側面が前記根太の長手方向に沿って前記根太上に設けられ、前記捨板の長手方向の長さが、下記式(1)の式を満たすことが好ましい。
L11=k1×D1 ・・・(1)
(式中、L11は、捨板の長手方向の長さであり、k1は2以上の整数であり、D1は、隣接する大引同士の間隔である。)
【0014】
本発明においては、前記捨板の長手方向に沿う両側面が前記根太の長手方向に沿って前記根太上に設けられ、前記捨板の長手方向と直交する方向の長さが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
L12=k2×D2 ・・・(2)
(式中、L12は、捨板の長手方向と直交する方向の長さであり、k2は2以上の整数であり、D2は、隣接する根太同士の間隔である。)
【0015】
本発明においては、前記フローリング板の長手方向と直交する方向の両端面が、前記捨板の長手方向に沿う両側面と同じ位置にならないように設けられ、前記フローリング板の長手方向の長さが、下記式(3)を満たすことが好ましい。
L21=k3×L12 ・・・(3)
(式中、L21は、フローリング板の長手方向の長さであり、k3は2以上の整数であり、L12は、捨板の長手方向と直交する方向の長さである。)
【0016】
本発明においては、前記フローリング板の長手方向の両端が、前記捨板の長手方向と直交する方向の両端と同じ位置にならないように配置されることが好ましい。
【0017】
本発明においては、前記フローリング板の長手方向と直交する方向の両端が、前記捨板の長手方向の両端と同じ位置にならないように配置されることが好ましい。
【0018】
本発明においては、隣接する前記捨板が、前記捨板の短手方向に沿う側面が一致し、かつ前記捨板の長手方向に沿う側面が一致しないように配置されていることが好ましい。
【0019】
本発明においては、隣接する前記フローリング板が、前記フローリング板の短手方向に沿う側面が一致し、かつ前記フローリング板の長手方向に沿う側面が一致しないように配置されていることが好ましい。
【0020】
本発明においては、前記大引が、900mm間隔で設けられていることが好ましい。
【0021】
本発明においては、前記根太が、300mm間隔で設けられていることが好ましい。
【0022】
本発明においては、前記捨板の前記長手方向の長さが1800mmであり、かつ前記捨板の前記短手方向の長さが900mmであることが好ましい
【0023】
本発明においては、前記フローリング板の前記長手方向の長さが1800mmであり、かつ前記フローリング板の短手方向の長さが222mmであることが好ましい。
【0024】
本発明においては、前記捨板が、前記根太の長手方向と前記捨板の長手方向とが一致するように載置されていることが好ましい。
【0025】
本発明においては、前記捨板と前記フローリング板との何れか一方又は両方の長手方向が繊維方向であることが好ましい。
【0026】
本発明においては、室内競技施設の床構造であることが好ましい。
【0027】
本発明による床の施工方法は、床基盤上に所定間隔で敷設された支持脚に支持された大引の上部に、前記大引の延在方向と直交するように根太を設け、前記根太の上面に複数の捨板を敷設し、前記捨板の上面に複数のフローリング板を、前記捨板の長手方向と前記フローリング板の長手方向とが直交し、かつ、1枚のフローリング板が少なくとも1枚の捨板を跨ぐように敷設することを特徴とする、床の施工方法である。
【0028】
本発明においては、前記捨板の長手方向が、前記捨板の長手方向であり、前記捨板の長手方向を、前記根太の長手方向に対して並行に配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、床面に亀裂が生じたり、ささくれが生じることを抑制し、安全性に優れた床構造とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、床構造等の説明の便宜上、下記に示す例においては床基盤を下に配置した図と共に説明がなされるが、本発明は、必ずしもこの配置で使用等がなされるわけではない。なお、以下の説明において、フローリング板が設けられる方向を上または上方といい、床基盤の方向を下または下方という場合がある。
【0032】
[実施形態]
<床構造>
本発明の実施形態に係る床構造について説明する。本実施形態に係る床構造は、体育館、多目的ホール等の室内競技施設に用いられるものである。
図1は、本発明の実施形態に係る床構造の構成を簡略に示す斜視図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る床構造の構成を簡略に示す平面説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係る床構造は、支持脚11と、大引12と、根太13と、捨板14と、フローリング板15とを備えている。
【0033】
支持脚11は、基礎面としての床スラブ(床基盤)16上に所定間隔で立設されている。
図3は、支持脚11に設置した大引12と根太13との連結状態を示す斜視図であり、
図4は、
図3のA−A断面図であり、
図5は、
図3のB−B方向から見た図である。
図3〜
図5に示すように、支持脚11は、床スラブ16に設置される支持台21、支持台21に立設される支持ボルト(調節ボルト)22、ナット23、支持ボルト22の上部に固定される受け具24、緩衝材(弾性部材)25、および締結具26を有する。
【0034】
支持台21は、その断面が台形型形状の鋼板からなり、下端部には平板状の台座部27が設けられている。台座部27は、止着ピンまたは接着剤等を用いて床スラブ16に固定される。支持台21は、上面部の中央には支持ボルト22を保持するための保持孔28が設けられている。支持ボルト22は、その上部近傍が締結ナット23aを用いて受け具24に固定される。また、支持ボルト22は、その下部近傍が締結ナット23bを用いて支持台21の保持孔28に固定される。支持脚11は、支持ボルト22およびナット23を調節することで、受け具24の高さを調整することができる。
【0035】
支持台21同士の間隔は、JIS A 6519の規定に基づいて調整され、この規定の範囲内であれば、室内競技施設における床の設置面積等に応じて適宜調整できるが、例えば、900〜1,400mm間隔で設けられ、好ましくは、900mm間隔で設けられている。また、複数の支持台21の配置または配列は、各列共に、等間隔または千鳥状でもよい。なお、壁側、補強部分などの支持台21同士の間隔は、900mm以下とする。
【0036】
受け具24は、鋼板をプレス加工により屈曲成形して得られるものである。受け具24は、中央に形成された平坦な受板部31、この受板部31の両端からそれぞれ上方に立設された側面部32を有する断面略U字状の部材である。側面部32の上部近傍には締結具26を取り付けるための取付孔33が設けられている。また、受け具24は、受板部31の裏面部の中央に、孔が設けられている。前記孔と六角ナット34の孔とが貫通する状態で六角ナット34が溶接により固定されている。そして、支持ボルト22の上端部を六角ナット34に螺入し、締結ナット23aを用いて受け具24を支持ボルト22に固定する。
【0037】
緩衝材25は、受け具24の内壁に沿って形成された断面略U字形状の部材である。緩衝材25としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、ゴム、合成樹脂等の弾性材料が用いられる。緩衝材25は、その底部が受け具24の受板部31に載置されるとともに、その側面部が受け具24の側面部32に内接した状態で装着(接着)されている。
【0038】
締結具26は、所定の長さのボルト軸26aおよびナット26bからなり、ボルト軸26aの回転により伸縮自在に長さ調整が可能な締め具である。ボルト軸26aは、ねじが刻設された棒状体である。取付孔33にボルト軸26aを通してナット26bでボルト軸26aの長さを調整することで、大引12を緩衝材25を介して受け具24に固定することができる。
【0039】
大引12は、断面が四角形状であり、上面部41、側面部42、およびこれら側面部42の下端からそれぞれ内向きに屈曲した屈曲形成された下面部43からなる、断面が略C字形状の鋼材である。これら下面部43同士の間には、所定の間隔の開口部が形成されている。大引12は、受け具24により支持脚11の上部に支持され、これら支持脚11間に架設される。
【0040】
複数の大引12は、等間隔に均等に配置されるようにしている。大引12同士の間隔は、JIS A 6519の規定に基づいて調整され、この規定の範囲内であれば、室内競技施設における床の設置面積等に応じて適宜調整することができるが、例えば、900〜1,400mm間隔で設けられ、好ましくは、900mm間隔で設けられている。なお、壁側等には、例えば10〜50mm程度の間隙を設けておくことが好ましい。
【0041】
根太13は、鋼板を断面が台形状にプレス加工したチャンネル鋼である。根太13は、中央に形成された平坦な上面部51、この上面部51の両端からそれぞれ下方に立設された側面部52、およびこれら側面部52の下端の両側にはそれぞれ外向きに屈曲して形成されたフランジ部(係止部)53からなる。
【0042】
根太13は、大引11の受板部31に配置され、大引11の長手方向と直交するように設けられている。根太13は、フランジ部53に大引11と固定するためのねじ部54が設けられている。根太13は、ねじ部54でフランジ部53を大引11に係止させて、大引11に固定する。
【0043】
複数の根太13は、大引11の受板部31に等間隔で均等に配置されるようにしている。根太13同士の間隔は、例えば、約300mm間隔で設けられている。なお、壁側等では、例えば15〜30mm程度の間隙を設けておくことが好ましい。
【0044】
捨板14は、根太13の受板部31に敷置される。捨板14は、下張板ともいう。捨板14は、矩形上の板であり、捨板14としては、例えば、針葉樹材の単板、ラワン材等の広葉樹材の単板、これら針葉樹材または広葉樹材の合板、針葉樹材の単板および広葉樹材の単板が共に使用される合板、繊維板、配向性ストランドボード(Oriented Strand Board:OSB)、パーチクルボード等が用いられる。繊維板としては、例えば、中質繊維板(Medium Density fiberboard:MDF)等が挙げられる。捨板14は、根太13に、例えば、接着剤やビスなどにより固定される。また、捨板14が合板の場合、捨板14は繊維方向が同じ向きとなるように複数の単板を組み合わせた合板でもよいし、繊維方向が垂直となるように交互に複数の単板を組み合わせた合板でもよい。また、捨板14は、根太13の受板部31に敷置されるが、これに限定されるものではなく、床下地材とフローリング板15との間に設けるようにしてもよい。
【0045】
捨板14は、捨板14の原料となる木材の加工上の観点から、その長手方向が繊維方向となるようにして用いられることが好ましい。捨板14は、上述の通り、針葉樹材や広葉樹材の単板または合板等の木材からなり、またフローリング板15も同様に木材からなるが、木材は含水率に応じて、
図6に示すような木材の板目(接線)方向、柾目(半径)方向、および長さ(繊維)方向の直交する3軸方向にそれぞれ伸び縮みする。これら3軸方向のそれぞれの方向の伸び縮みの割合(収縮率)は、一般に、3軸方向のそれぞれによって異なり、板目(接線)方向が最も大きく収縮し、ついで柾目(半径)方向が大きく、長さ(繊維)方向にはほとんど収縮しない傾向がある。そのため、木材からなる捨板14およびフローリング板15は、これらの収縮率により生じるこれらの寸法変化が、接線方向が最も大きく、ついで半径方向が大きく、繊維方向がほとんど変化しないことになる。本実施形態においては、フローリング板15が、後述するように、その長手方向が繊維方向となるようにして用いられ、かつフローリング板15が捨板14の繊維方向である長手方向と直交するように設けられる。そのため、捨板14の収縮率の変動が小さいかほとんど収縮しない方向(捨板14の長手方向)が、フローリング板15の繊維方向と直交する方向(フローリング板15の収縮率の変動が大きい方向)と同じ向きとなる。このため、捨板14の短手方向(幅方向)の寸法変化が大きくても、それと同じ向きに相当するフローリング板15の長手方向の寸法変化が小さいかほとんどない。そのため、たとえ捨板14が長手方向と直交する方向(板目方向)に収縮したとしても、従来の床構造のように、フローリング板15の長手方向が捨板14の長手方向と平行するようにフローリング板15を設けた場合と比較して、フローリング板15の長手方向に沿う側面の一部が、隣接するフローリング板15の長手方向に沿う側面の一部との圧接が抑制される。その結果、床下が非常に乾燥した状態となっても、フローリング板15が長手方向に沿って裂けたり、床面に亀裂が生じたり、ささくれたりすることが抑制される。なお、ここでは、捨板14の長手方向が繊維方向の繊維板である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、捨板14が繊維方向のない板でも同様に適用できる。
【0046】
また、捨板14とフローリング板15とが固定されているため、捨板14の短手方向(幅方向)の収縮を抑制するようにフローリング板15が機能し、従来の床構造と比較して捨板自体の収縮も抑制することができる。
【0047】
本実施形態においては、捨板14は、その長手方向と直交する方向である短手方向の長さL12が、2つ以上の根太13の間隔と同じ長さであり、捨板14は、その長手方向に沿う両側面が根太13上に位置するように設けられている。これにより、捨板14は、その長手方向が根太13の長手方向に対して並行に根太13上に設けることができる。捨板14の長手方向に沿う側面14b
側の両
端部を捨板14の長手方向に沿って根太13に固定できるため、捨板14を根太13の長手方向に沿って根太13上に安定して設けることができる。特に、捨板14の長手方向が繊維方向である場合、上記の通り、捨板14の短手方向の方が捨板14の長手方向よりも捨板14の収縮率が大きくなるため、捨板14の収縮率が大きい端面側を捨板14の長手方向に沿って根太13に複数箇所で固定することで、より安定して捨板14の収縮率の変動に起因して生じる捨板14の寸法変化を抑えることができる。
【0048】
本実施形態においては、捨板14の長手方向に沿う側面(長手端面)14b
側の両
端部が根太13の長手方向に沿って根太13上に設けられ、捨板14の長手方向の長さL11が、下記式(1)を満たすようにしている。本実施形態では、捨板14の長手方向の長さL11が、並列に配置される大引12の2つ分の間隔の長さとしている。これにより、捨板14の短手方向に沿う側面(短手端面)14aの捨板14同士の接合部分の安定性を高めることができる。
L11=k1×D1 ・・・(1)
(式中、L11は、捨板の長手方向の長さであり、k1は2以上の整数であり、D1は、隣接する大引同士の間隔である。)
【0049】
本実施形態においては、捨板14の長手方向に沿う側面(長手端面)14b
側の両
端部が、根太13の長手方向に沿って根太13上に設けられ、捨板14の短手方向の長さL12が、下記式(2)を満たすようにしている。本実施形態では、捨板14の短手方向の長さL12が、並列に配置される根太13の3つ分の間隔の長さとしている。これにより、捨板14を根太13の長手方向に沿って根太13上に安定して設けることができる。
L12=k2×D2 ・・・(2)
(式中、L12は、捨板の長手方向と直交する方向(短手方向)の長さであり、D2は、隣接する根太同士の間隔であり、k2は2以上の整数である。)
【0050】
捨板14は、隣接する捨板14同士の短手端面14aが一致し、長手端面14bが一致しないようにずれるようにして配置されている。捨板14の長手方向が繊維方向である場合、上記のように、捨板14の収縮率の変動による捨板14の長手方向の寸法変化は、ほとんど無いか小さいため、捨板14の寸法変化に起因して隣接するフローリング板15の長手方向に沿う側面(長手端面)15bにささくれが生じることは殆どない。
【0051】
捨板14の長手方向の長さL11は、JIS A 6519の規定に基づいて調整され、好ましくは、1,800mm〜1,840mmの範囲内に設定され、より好ましくは、1,800mm〜1,820mmの範囲内であり、最も好ましくは、1,800mm程度である。
【0052】
また、捨板14の短手方向の長さL12は、JIS A 6519の規定に基づいて調整され、好ましくは、890〜910mmの範囲内に設定され、より好ましくは、900mm程度である。
【0053】
フローリング板15が、捨板14の上面に敷設されている。フローリング板15は、捨板14に、例えば、接着剤やビスなどにより固定される。
【0054】
本実施形態においては、フローリング板15は、その短手方向に沿う側面(短手端面)15aおよび長手端面15b
の位置が、捨板14の短手端面14aおよび長手端面14b
の位置
と重ならないよう
にずれて配置され、隣接するフローリング板15同士の接合部分が、捨板14の短手端面14aおよび長手端面14bの位置と重ならないようにしている。これは、捨板14の短手端面14aおよび長手端面14bが根太13上に位置するようにすることで、捨板14上にフローリング板15を固定し易くするためである。
【0055】
フローリング板15は、フローリング板15の原料となる木材の加工上の観点から、その長手方向がフローリング板15の繊維方向となるようにして用いられることが好ましい。
【0056】
本実施形態においては、フローリング板15は、その長手方向が捨板14の長手方向と直交し、1枚のフローリング板15が、1枚の捨板14を跨ぐように敷設されている。すなわち、フローリング板15は、捨板14の長手端面14bに隣接する捨板14同士の間の目地14cを跨いで敷設されている。なお、本実施形態においては、フローリング板15が1枚の捨板14を跨ぐように敷設されているが、これに限定されるものではなく、2枚の捨板14を跨ぐように敷設されていてもよい。このように、フローリング板15が、1枚の捨板14を跨ぎ、フローリング板15で跨がれた捨板14の短手方向に沿う側面に隣接する2枚の捨板14の一部まで伸びて固定されることにより、より一層、捨板14の短手方向(幅方向)の収縮を抑制することができる。
【0057】
本実施形態においては、フローリング板15の長手方向と直交する方向である短手方向に沿う側面15aの両方が、捨板14の長手方向に沿う側面14bと同じ位置にならないように設けられ、フローリング板15の長手方向の長さL21が、下記式(3)を満たすようにしている。本実施形態では、フローリング板15の長手方向の長さL21が、並列に配置される根太13の6つ分の間隔の長さとしている。
L21=k
3×
L12 ・・・(3)
(式中、L21は、フローリング板の長手方向の長さであり、L12は、捨板の長手方向と直交する方向の長さ(短手方向)であり、k3は2以上の整数である。)
【0058】
これにより、フローリング板15の短手端面15aが捨板14の短手端面14aの位置と重ならないようにできるため、捨板14の寸法変化に起因してフローリング板15の短手端面15aに亀裂が生じることを抑制でき、フローリング板15を捨板14上に安定して配置することができる。
【0059】
隣接するフローリング板15同士は、フローリング板15の短手方向に沿う側面(短手端面)15aが一致し、長手端面15bが一致しないようにずれるようにして配置されている。特に、フローリング板15の長手方向が繊維方向である場合、上記のように、フローリング板15の収縮率の変動に起因してフローリング板15の長手方向における寸法変化は、ほとんど無いか小さいため、隣接するフローリング板15の短手端面15aにささくれが生じることは殆どない。
【0060】
フローリング板15が、隣接する捨板14の短手端面14aの目地14c上に配置される場合、目地14c上に位置するフローリング材15は、その長手端面15bが目地14c上に位置しないように配置されている。
【0061】
フローリング板15の長手方向の長さL21は、特に限定されるものではなく床面積や施工条件等に応じて適宜調整することが可能であるが、好ましくは、1800mm〜1840mmの範囲内に設定され、より好ましくは、1800mm〜1820mmの範囲内であり、最も好ましくは、1800mm程度である。これは、隣接する大引12同士の間隔が、一般的に900mm程度であり、隣接する根太13同士の間隔が、一般的に300mm程度であり、本実施形態では、フローリング板15の短手端面15aおよび長手端面15bが
、捨板14の短手端面14aおよび長手端面14b上に位置しないようずれて配置している。こうした施工上の観点から、フローリング板15の長手方向の長さを1800mmとすれば、フローリング板15の短手端面15aおよび長手端面15bを
、捨板14の短手端面14aおよび長手端面14b上に位置しない長さにできるためである。
【0062】
また、フローリング板15の短手方向の長さL22は、特に限定されるものではなく床面積や施工条件等に応じて適宜調整することが可能であるが、好ましくは、55mm〜455mmの範囲内に設定され、より好ましくは、215mm〜455mmの範囲内である。
【0063】
<床の施工方法>
次に、本実施形態に係る床構造の施工方法について説明する。上記本実施形態に係る床構造の施工に際しては、まず床スラブ16の基礎面に支持脚11を立設する。このとき、床スラブ16の上部に複数の大引12を所定間隔(例えば、約900mm間隔)をおいて並行に配置するため、これら大引12を敷設する位置に所定間隔(例えば、約900mm間隔)で支持脚11を配置するようにする。そして、各支持脚11の支持台21の台座部27を止着ピンまたは接着剤等を用いて床スラブ16に固定する。
【0064】
次に、各支持脚11の間に大引12を架設し、この大引12の両下面部43を下にして受け具24内の緩衝材25の底部に載置する。大引12を配置した後、各支持脚11の支持ボルト22を回転操作して、各支持脚11の高さ調整を行う。
【0065】
次に、各支持脚11の高さを調整した後、受け具24の側面部42に設けた取付孔33間に、締結具26のボルト26aを挿通しナット26bを締めて側面部42同士を所定の圧力で挟み、大引12を受け具24に緩衝材25を介して弾性保持しながら固定し、支持脚11の上部で大引12を支持する。各大引12は、一定間隔をおいて互いに平行に配置される。
【0066】
次に、大引12の上部に、大引12の長手方向と直交する方向に所定の間隔(例えば、約300mm間隔)をおいて根太1
3を配置し、ねじ部54で根太1
3のフランジ部53を大引12に固定する。
【0067】
次に、根太1
3の上部に複数の捨板14を敷設して根太1
3に固定する。
図2に示すように、捨板14は3つの根太13間にわたって取り付ける。捨板14の端部は、それぞれ根太13の上部に接着材等を用いて固着する。また、必要に応じて、捨板14同士を接続する場合には、接着剤、接着テープ等を用いる。捨板14は、建物内の壁面の近傍まで配設する。
【0068】
次に、これら捨板1
4の上部にフローリング板15を張り付けて、床面を仕上げる。捨板14の上面に複数のフローリング板15を、捨板14の長手方向とフローリング板15の長手方向とが直交し、かつ、1枚のフローリング板15が少なくとも1枚の捨板14を跨ぐように敷設する。以上のように、本実施形態に係る床構造が施工される。
【0069】
本実施形態に係る床構造は、捨板14をその長手方向が根太13の長手方向と一致するように載置して、捨板14の長手方向とフローリング板15の長手方向とが直交するように捨板14上にフローリング板15を配置している。そして、本実施形態に係る床構造では、フローリング板15が、1枚の捨板14を跨ぎ、フローリング板15で跨がれた捨板14の長手方向に沿う側面14bに隣接する2枚の捨板14の一部まで伸びて固定されている。このため、フローリング板15で跨がれた捨板14が伸縮しても、その両端に位置する2枚の捨板14により固定され、しかも捨板14の寸法変化が小さいかほとんどない方向をフローリング板15の寸法変化が大きい方向と同じ向きとし、かつ捨板14の寸法変化が大きい方向をフローリング板15の寸法変化が小さいかほとんどない方向と同じ向きとしている。これにより、捨板14の寸法変化とフローリング板15の寸法変化とを双方互いに打ち消し合うようにすることができる。また、本実施形態に係る床構造では、捨板14の長手方向の変化率が小さいかほとんど収縮しない方向に沿って、複数のフローリング板15、すなわち、捨板14の長さ/フローリング板15の幅の枚数分が配置さ
れ、また、フローリング板15
同士の接合部分が捨板14の短手端面14aおよび長手端面14bと重なることはなく、捨板14の幅方向に対してフローリング板15
同士の接合部分の箇所は捨板14が少なくとも2枚
分となるようにしている。これにより、捨板14の伸縮により生じる寸法変化が、フローリング板15に影響を与えることを抑制することができる。
【0070】
このように、捨板14の寸法変化とフローリング板15の寸法変化とを双方互いに打ち消し合うようにしつつ、捨板14の寸法変化がフローリング板15に与える影響を抑制することにより、例えば、低湿度環境下等において捨板14およびフローリング板15の含水率が低下して捨板14が収縮した場合であっても、フローリング板15の端面が裂けて亀裂が生じたり、ささくれが生じることを抑制することができる。これにより、耐久性に優れた床構造が形成され、安全性に優れた床構造とすることができる。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る床構造によれば、体育館など室内競技施設の床面のフローリング板が裂けて亀裂が生じたり、ささくれが生じることを抑制することができ、運動競技などに支障のない環境が得られ、体育施設として快適に利用することができるなど、信頼性が高い室内競技施設にすることができる。また、本実施形態に係る床構造は、既存の室内競技施設等においても使用可能であり、室内競技施設等の床の改修等の際にも適用することができる。
【0072】
なお、本実施形態においては、捨板14およびフローリング板15の長手方向が繊維方向である繊維板の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、捨板14が、繊維方向が同じ単板を組み合わせた合板、単板の繊維方向が垂直となるように交互に複数の単板を組み合わせた合板、または繊維板以外の、例えばOSBやパーチクルボード等でも同様に適用することができる。
【0073】
本実施形態においては、大引12は、受け具24に固定して支持されているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、支持ボルト22の上部に平板状の受け部を設け、前記受け部に大引12を架設するようにしてもよい。
【0074】
本実施形態においては、本実施形態に係る床構造は、体育館、多目的ホール等の運動、展示会やコンサート等が行なわれる室内競技施設に用いられる床構造の場合について説明したが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、室内競技施設以外の住宅や、二重床を使用する施設の床構造についても好適に用いることができる。