特許第5882317号(P5882317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5882317-ホウ素化合物の懸濁液 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882317
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ホウ素化合物の懸濁液
(51)【国際特許分類】
   C01B 35/10 20060101AFI20160225BHJP
   C01B 35/12 20060101ALI20160225BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20160225BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20160225BHJP
   C05G 3/00 20060101ALI20160225BHJP
   C05G 3/02 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20160225BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20160225BHJP
   G21C 7/22 20060101ALI20160225BHJP
   G21C 7/24 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   C01B35/10 A
   C01B35/12 A
   A01N25/04 102
   A01N25/10
   C05G3/00 Z
   C05G3/02
   A61K9/10
   A61K47/04
   A61K8/04
   A61K8/19
   A61K8/81
   G21C7/22GDP
   G21C7/24
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-520271(P2013-520271)
(86)(22)【出願日】2011年7月19日
(65)【公表番号】特表2013-538173(P2013-538173A)
(43)【公表日】2013年10月10日
(86)【国際出願番号】IB2011053219
(87)【国際公開番号】WO2012011056
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年7月15日
(31)【優先権主張番号】2011/0284
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】BE
(31)【優先権主張番号】10170187.8
(32)【優先日】2010年7月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513015418
【氏名又は名称】シー−アイピー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】C−IP S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・クーレマンス
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・クーレマンス
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−058589(JP,A)
【文献】 特表2001−520164(JP,A)
【文献】 国際公開第00/023397(WO,A1)
【文献】 米国特許第06426083(US,B1)
【文献】 特開平10−139691(JP,A)
【文献】 米国特許第05590393(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 35/00 − 35/18
A01N 25/04
A01N 25/10
A61K 8/04
A61K 8/19
A61K 8/81
A61K 9/10
A61K 47/04
C05G 3/00
C05G 3/02
G21C 7/22
G21C 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素含有化合物の極性溶剤における懸濁液であって、懸濁液はカルボマーを、懸濁液中にホウ素含有化合物を維持するのに十分な量で含有し、ホウ素含有化合物がふるい分けによって0.063mmの開口を有するふるいを通過する粒子を多くとも20.00重量%示す粒子サイズ分布を有する顆粒として存在し、カルボマーが架橋されており、ホウ素含有化合物は、ホウ酸、ポリホウ酸ナトリウムまたはカリウム、その水和物または非水和物形態、ホウ酸無水物、メタホウ酸ナトリウムまたはカリウム、およびその混合物から成る群から選択されることを特徴とする懸濁液。
【請求項2】
カルボマーは不飽和酸から誘導される水溶性ポリマーである請求項1記載の懸濁液。
【請求項3】
カルボキシメチルセルロース(CMC)、セルロースゴムおよびキサンタンゴムから成る群から選択される追加の分散剤をさらに含有する請求項1または2記載の懸濁液。
【請求項4】
カルボマーは少なくとも5重量ppmの濃度で存在し、ここでは濃度は、懸濁液中にあるホウ素含有化合物の量を除いて、懸濁液の重量に関して表される請求項1〜のいずれか1項記載の懸濁液。
【請求項5】
そのpHは多くとも13.0である請求項1〜のいずれか1項記載の懸濁液。
【請求項6】
さらに、表面張力剤、消泡剤、腐食抑制剤、スケール除去剤、光学的浄化剤、防カビ剤、殺菌剤または抗菌剤、着色剤、湿潤剤、粘度調整剤、流動性調整剤、凍結防止剤、溶剤、充填剤およびその混合物から成る群から選択される少なくとも1つの構成要素を含有する請求項1〜のいずれか1項記載の懸濁液。
【請求項7】
中性子を吸収するための請求項1〜のいずれか1項記載の懸濁液の使用。
【請求項8】
懸濁液は少なくとも10%のホウ素−10を含有し、これによってホウ素の残りはホウ素−11として主に存在する請求項記載の使用。
【請求項9】
核エネルギーからの電力の発生に合わせた請求項または記載の使用。
【請求項10】
ガラスの製造のための請求項1〜のいずれか1項記載の懸濁液の使用。
【請求項11】
肥料の製造のための請求項1〜のいずれか1項記載の懸濁液の使用。
【請求項12】
化粧品または医薬品の製造のための請求項1〜のいずれか1項記載の懸濁液の使用。
【請求項13】
殺生物剤、殺虫剤または天然製品の処理の際の難燃剤としての請求項1〜のいずれか1項記載の懸濁液の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素含有化合物、たとえば、ホウ酸塩またはホウ酸またはその混合物の結晶、粉末または顆粒形態での溶剤または流体中における懸濁液に関する。本発明はさらに、ホウ素含有化合物の懸濁液の、多くの用途における、たとえば、核エネルギーからの電力の工業的発生に伴う核分裂反応によって生じる中性子を、たとえば、反応を制御または停止するために、たとえば吸収するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのホウ素含有化合物はホウ酸塩である。多くの異なる種類のホウ酸塩が存在する。製造業で典型的に使用されるホウ酸塩はナトリウムまたはカリウムに基づくものである。ホウ酸ナトリウムはその多くの異なる形態で、様々な分野の製造業で多くの用途を有する化合物である。テトラホウ酸ナトリウム5水和物(Na・5HO)はたとえば、絶縁性ファイバガラスおよび過ホウ酸ナトリウム漂白剤の製造では大量に使用される。テトラホウ酸ナトリウム10水和物(Na・10HO)は接着剤の一部としておよび耐食システムにおいて見られる。ホウ酸ナトリウムはまた、銀または金をはんだ付けする際の溶剤として、および鉄含有金属の溶接用に塩化アンモニウムと組み合わせて使用される。これらはまた、多くのプラスチックおよびゴム材料用の難燃添加剤として使用される。多くの洗剤、洗濯洗剤、クリーニング剤および漂白製品では、過ホウ酸ナトリウムは活性酸素源としての役割を果たす。
【0003】
ホウ酸(Boric acid)(borate acid、orthoboric acidまたはAcidum Boricumとしても知られる)HBOは織物状ファイバガラスおよびフラットスクリーンモニターの製造で使用される。これはまた、防腐性、抗菌性および抗ウィルス性を有し、そのために水泳プール水用消毒剤としてしばしば使用される。ホウ酸は一般的に、特にアリ、ノミおよびゴキブリに対する殺虫剤としても使用される。核エネルギープラントでは、中性子を吸収するために使用されており、これによって核分裂が生じる速度を低減することができる。これはさらに、難燃剤としておよび他の化学的化合物用前駆体として使用される。ホウ酸は無色の結晶または白色粉末の形態で提供され、水にゆっくりと溶解する。これが鉱物として存在する場合には、サッソライトとも呼ばれる場合がある。
【0004】
ホウ酸およびホウ酸塩、たとえば、ボラックス5水和物、ペンタホウ酸ナトリウム10水和物、メタホウ酸ナトリウム8水和物、テトラホウ酸カリウム4水和物、ペンタホウ酸カリウム8水和物および特にボラックス10水和物は、商業的に非常に幅広く、たとえば、ホウ素含有製品の製造用原材料として、またはこれら自身が主または副成分である組成物の構成要素として使用される。ホウ素含有製品とはたとえば、化粧品、医薬品、皮および織物を処理するための製品、洗剤および接着剤、より特別にはでんぷんおよびカゼイン接着剤であってもよい。
【0005】
原材料としてまたは混合物の成分としてのこれらのホウ素含有化合物の使用は、しばしば固形分としてこれらを添加することを含み、多くの処理でこの添加は連続的に行われる。固体形態でホウ酸またはホウ酸塩を輸送するための現状での方法は、ホッパーまたはスクリューフィーダのような自動投与システムを含むものである。製造における一般的問題点は、固体のホウ素含有化合物が塊を形成し、これが供給の障害となりまたは化合物の偏在を生じる場合があることである。塊の形成はしばしば多くのホウ素含有化合物のハイドロスコープ特性と関係し、しばしばホウ素含有化合物が添加された組成物中に存在しうる水分と結びつく。
【0006】
ホウ酸ナトリウムは一般的ホウ素含有化合物と同様に、大抵は典型的に粉末として知られる。しかし、ホウ素含有化合物の使用に関してはある種の障害がある。なぜなら、これらの化合物のいくつかは人体の特定の危険または健康問題の可能性に関連するからである。固体形態でホウ素含有化合物を輸送し取り扱う場合には、化合物が皮膚と接触しまたは呼吸器官に進入するといったリスクが生じる。そして、粉末としての使用によって吸い込まれうる微細粒子は呼吸システムへと吸収されうる。またこれらは目を刺激しアレルギー反応を引き起こす場合もある。したがって、粉末形態でのホウ素含有化合物の使用を低減する必要がある。
【0007】
ホウ素含有化合物、たとえば、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸は、製造業で幅広く使用される材料であり、したがって、これらを取り扱う人々にとって安全なホウ素含有化合物を含む組成物については、多大な要求がある。液体は容易に吸い込まれないので、通常粉末より輸送が容易で安全である。ホウ酸ナトリウムはホウ酸および他のホウ素含有化合物と同様に、水および他の溶剤に可溶性であるが、通常かなり溶解度は低い。したがって、たとえば水に特定の量のホウ素含有化合物を溶解することは、大量の液体を要し、そして輸送が困難となる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ホウ素含有化合物を安全でより効果的な方法で輸送および取り扱うことができる組成物を提供することである。
【0009】
本発明は上記問題点を取り除きまたは少なくとも軽減し、および/または一般的に改良品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者はホウ素含有化合物を懸濁液中に導入するといった考えに至った。
【0011】
したがって、本発明はホウ素含有化合物の極性溶剤、好ましくは水における懸濁液を提供するものであって、懸濁液はカルボマーを、好ましくは懸濁液中にホウ素含有化合物を維持するのに十分な量で、より好ましくはより長期間懸濁液を安定に維持するのに十分な量で含有することを特徴とする。
【0012】
ホウ素含有化合物、ホウ酸塩またはホウ酸の懸濁液では、化合物自身は非常に部分的にのみ溶解し、主に粒子の形態で液体中に存在する状態にある。水中に多量のホウ素含有化合物の粉末または顆粒を混合しても、化合物は容易に懸濁液にはならない。驚くべきことに、発明者は、カルボマーを懸濁液に添加すると、流体または溶剤におけるホウ素含有化合物の安定的懸濁液がまさに得られうることを発見した。このようにして、多量のホウ素含有化合物を比較的少量の液体における懸濁液中に導入することができる。
【0013】
このような懸濁液は、多量のホウ素含有化合物をコンパクトでかつ安全な方法で輸送することができるといった利益をもたらす。
【0014】
さらなる利益は、ホウ素含有化合物粒子が化合物を粉末として輸送する際に生じていた塊にならないことである。これによってホウ素含有化合物を輸送する導管の目詰まりを排除する。
【0015】
発明者はさらに、カルボマーが懸濁液の粘度に影響し、懸濁液を非ニュートン流体、すなわち非ニュートン粘度および/または流動性状を有する流体へと変化させることを見出した。他方で、懸濁液の粘度は低せん断力では比較的高くなり、このことは安静時には粒子の移動を弱め、効果的に懸濁液の安定性を改良する。他方で、懸濁液の粘度は高せん断力では低くなり、このことは少しのエネルギーしか必要としないので、効果的に懸濁液のポンプ効果を改良し、したがって、効果的に主に懸濁液の取り扱い性を改良する。
【0016】
この流動性状は、一般的ポンプを使用する懸濁液の容易な輸送を可能にし、希釈懸濁液を調製するのに非常に便利である。したがって、懸濁液におけるホウ素含有化合物の濃度を必要に応じて、これはたとえば、ホウ素含有化合物を4,000〜500,000重量ppmといった幅広い範囲で容易に調節することができる。
【0017】
本発明による懸濁液はしたがって、安定的に高濃度のホウ素含有化合物を含むことができ、この化合物は沈殿しないので、これによって化合物は液体中に保持されかつ粉末として吸い込まれることもなく、また、懸濁液は同時に容易にポンピング可能でもある。
【0018】
別の実施の形態では、本発明は中性子を吸収するための本発明による懸濁液の使用について提供するものであって、ここで懸濁液は好ましくは少なくとも10%のホウ素−10、より好ましくは少なくとも12%のホウ素−10、さらにより好ましくは少なくとも14%のホウ素−10、好ましくは少なくとも16%のホウ素−10、より好ましくは少なくとも18%のホウ素−10、およびさらにより好ましくは少なくとも19%のホウ素−10を含有し、これによってホウ素の残りはホウ素−11として主に存在する。本願では、たとえばホウ素−10同位体の存在が、自然に生じるホウ素−11に対するホウ素−10の割合と比べて増加した場合のように、同位体においてある種のホウ素含有化合物が豊富化したものを用いてもよい。
【0019】
また別の実施の形態では、本発明はガラス、たとえば、ガラスファイバ、好ましくはホウケイ酸ガラスの製造のための本発明による懸濁液の使用を提供する。
【0020】
さらに別の実施の形態では、本発明は肥料製造のための本発明による懸濁液の使用を提供する。
【0021】
また別の実施の形態では、本発明は化粧品または医薬品の製造のための、たとえば、防腐剤、粘度調整剤またはpH調整剤としてまたは安定剤としての本発明による懸濁液の使用を提供する。
【0022】
さらに別の実施の形態では、本発明は殺生物剤、殺虫剤またはたとえば、木、ラテックスゴムおよび/または皮のような天然製品の処理の際の難燃剤としての本発明による懸濁液の使用を提供する。
【0023】
濃縮形態または希釈後の使用であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好ましくは懸濁液中に導入されるホウ素含有化合物は、ホウ酸、ポリホウ酸ナトリウムまたはカリウム、その水和物または非水和物形態、ホウ酸無水物、メタホウ酸ナトリウムまたはカリウム、好ましくはテトラホウ酸、ペンタホウ酸またはオクタホウ酸ナトリウム、より好ましくはテトラホウ酸ナトリウム10水和物またはボラックス(Na・10HO)、ケルナイト(Na・4HO)、コレマナイト(Ca11・10HO)およびその混合物から成る群から選択される。
【0025】
本発明の内容では、ホウ素含有化合物の一部は溶液となってもよいと理解される。したがって、懸濁液とは、特定の溶剤中に通常25℃で測定して、または特定しなければ室温(このために通常23℃を用いる)で、ホウ素含有化合物の溶解度を上回る量のホウ素含有化合物含むものである。たとえば、脱水ボラックスは水において約4.71重量%の溶解度を有する。
【0026】
発明者はホウ素含有化合物を顆粒として使用することが、同じ化合物を粉末として使用するのに比べて有益であることを見出した。発明者は、顆粒は作業がより容易で作業場でのダストの発生が少ないことを見出した。これによって、作業場をよりクリーンに保つことができ、作業員の良好な労働衛生を維持するための設備をより簡素化する。顆粒粒子はまた、より容易に湿潤し、顆粒はより容易に懸濁液になることも見出した。
【0027】
好ましくは発明者は、ふるい分けによって0.063mmの開口を有するふるいを通過する粒子を多くとも20.00重量%、より好ましくは多くとも10.00重量%、さらにより好ましくは多くとも6.00重量%および好ましくは多くとも4.00重量%示す粒子サイズ分布を有する形態の顆粒を使用する。さらに好ましくは、多くとも10.00重量%、好ましくは多くとも6.00重量%、より好ましくは多くとも4.00重量%、典型的にさらに多くとも2.00重量%および所望なら1.00重量%以下は1.000mmの開口を有するふるいに留まる。好ましくは代替として、多くとも0.1重量%のみがUS規格ふるい(US Standard sieve)No 8(2.38mmのふるい開口)で留まり、より好ましくはさらに多くとも2.0重量%がUS規格ふるいNo 20(0.841mmのふるい開口)で留まるといったふるい仕様書を有する顆粒を選択してもよい。
【0028】
市販入手可能で好適なホウ素含有化合物はたとえば、エチマイン(Etimine)SAからエチ・マイン(Eti Mine)系列(エチ・マイン・ワークス(Eti Mine Works)としても知られる)、ターキッシュ社(Turkish company)から、たとえば、商品名エンチマデン(ENTIMADEN)(登録商標)で、およびボラックス社(Borax Company)から、リオ・チント(Rio Tinto)系列、イギリスおよびオーストラリアの決定センターでの国際群から得られる。ボラックス社はホウ酸用に商品名オプチバー(Optibor)(登録商標)を使用する場合があり、追加の注記SQ付きのホウ素含有化合物、たとえば、ホウ酸だけでなくテトラホウ酸カリウムを含むものを提供しており、これは特に核産業向けである。この用途では、発明者は、より大きな顆粒、たとえば、US規格ふるいNo.8を用いる仕様に従うが、より少量の特定の不純物、たとえば、多くとも3.0ppmのSOおよび/または多くとも0.4ppmのClおよび/または多くとも2.0ppmのFe(常に重量に基づいて表され、ホウ酸に特に適用可能)しか含有しないものを使用することを望む。ホウ素含有化合物の他の顆粒は所望なら、多くとも500ppmのSO、好ましくは多くとも350ppmのSO、より好ましくは多くとも70ppmのSO、多くとも50ppmのCl、好ましくは多くとも18ppmのCl、より好ましくは多くとも10ppmのClおよび/または多くとも10ppmのFe、好ましくは多くとも7ppmのFe、およびより好ましくは多くとも6ppmのFe(常に重量に基づいて表される)を含有してもよい。
【0029】
本発明の内容では、カルボマーとはモノマーとして不飽和酸またはその誘導体、たとえば、エステルまたはアミドを含有する水溶性ポリマーとして定義され、これは好ましくは、式CH=CR−CO−GまたはCH=CR−COO−Aによって表されてもよい。この式で、RはH、一価アルキル、アリールまたはアルキルアリール基および一価シクロアルキル基の群から選択される置換基を表すが、Hが置換基として好ましく、CHは非常に好適な第2の選択肢である。しかし、Rはまた、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノアルキルおよび1〜9個の炭素原子を含む同様の基の群から選択されてもよい。Gはアミン基−NL、たとえば、−NHを表してもよく、この場合にはモノマーは好ましくはアクリルアミドまたはメタクリルアミドである。Aおよび/またはLはRおよびGから独立して、H、一価アルキル、アリールまたはアルキルアリール基および一価シクロアルキル基の群から選択される置換基を表すが、Hが置換基として好ましく、この場合にはモノマーは不飽和カルボン酸であってもよい。しかし、Aおよび/またはLはまた、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノアルキルおよび1〜35個の炭素原子を含む同様の基の群から選択されてもよい。
【0030】
カルボマーは好ましくは主にまたは全体的に(メタ)アクリル酸またはメタクリル酸のホモポリマー、またはその混合物のコポリマーであり、これは架橋されてもよい。
【0031】
任意に他のコポリマーを用いてもよい。モノカルボン酸および/またはそのエステルにさらに、ポリカルボン酸および/またはそのエステルをコモノマーとして、たとえば、アクリレートまたはメタクリレート、および任意にアルキルアルコキシレート化エステル、たとえば、アルキルアルコキシレート化アクリレートまたはメタクリレートを使用してもよく、これはC15〜C35アルキルアルコキシレート化アクリレートまたはメタクリレートであってもよい。特に少なくとも1つの炭素−炭素オレフィン性二重結合および少なくとも1つのカルボキシル基を含むオレフィン性不飽和カルボン酸、および/またはそのエステルが好ましい。好適な例には、アクリル酸、特にアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アルファ−シアノアクリル酸、ベータ−メタクリル酸(クロトン酸)、アルファ−フェニルアクリル酸、ベータ−アクリルオキシプロピオン酸、ケイ皮酸、p−クロロケイ皮酸、1−カルボキシ−4−フェニル−1,3−ブタジエン、3−アクリルアミド−3−メチルブタン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸およびトリカルボキシエチレンがある。好適なポリカルボン酸の例には、酸無水物、たとえば、マレイン酸無水物があり、ここで無水物基は、同じカルボン酸分子上に位置する2個のカルボキシル基から1分子の水を除去することによって形成される。しかし、アクリルおよびメタクリル酸が好ましい。
【0032】
アルキルアルコキシレート化アクリレートまたはメタクリレートは疎水性コモノマーである。疎水性コモノマーは通常1つの酸またはその2個以上の混合物のエステルであり、これには各種公知の(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミドの1つが含まれてもよい。
【0033】
アルキルアルコキシレート化(メタ)アクリレートのアルキル基は、5〜30個の炭素原子、好ましくは15〜30、より好ましくは20〜25個の炭素原子を含有してもよい。アルキル構造は第1、第2または第3炭素配列を含んでもよい。好適なアルキルアルコキシレート化アクリレートの例には、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレートまたはエトキシプロピルアクリレートがある。アルキル構造はまた、フェニル基を含んでもよく、これは置換されてもよく、かつ好適なアルキル構造はオクチルフェニル、ノニルフェニルおよびドデシルフェニル構造であり、そのアルコキシレート化誘導体、たとえば、1〜12個のエトキシおよび/またはプロポキシ基を含有するものは容易に市販入手可能である。
【0034】
カルボマー内のモノマーはオクタデシルアクリレート、ベヘニルアクリレート、ドデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート等;およびそのシアノ誘導体;メタクリレート、たとえば、ステリルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート等であってもよい。2または3またはそれ以上の長鎖アクリル酸エステルの混合物を、カルボン酸および/またはエステルモノマーの1つと適宜重合してもよい。好ましい疎水性モノマーは線形長鎖疎水性モノマー(ここでアルキル基は少なくとも12個の炭素原子を含有する)、たとえば、ステアリルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、およびベヘニルメタクリレートである。任意に、疎水性アルキルまたはアルキルアリール基でキャップされたポリアルキレンオキサイド分岐を含む疎水性錯体を用いてもよい。
【0035】
アルコキシレート化アルコールの(メタ)アクリル酸エステルについて、アルキル基は典型的に、C〜C24アルキル;アルキルフェニル基、たとえば、オクチルフェニルおよびノニルフェニルを含むアルキルアリール;または多環式ヒドロカルビル化合物、たとえば、ラノリンまたはコレステロールの残基である。好適なアルキル基には、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、パルミチル、ステアリル、エイコシルおよびベヘニルまたはドコシルまたはその混合物がある。このような好適なモノマー混合物はたとえば、ラウリル、ステアリル、セチルおよびパルミチルアルコールの混合物のアルコキシレート化に由来するものであってもよい。
【0036】
上記カルボマー(コ)ポリマーは好ましくは架橋される。架橋剤として、各種ポリ不飽和モノマーを用いてもよく、これによって部分的または実質的に架橋された三次元ネットワークが得られる。好適な架橋剤にはスクロースまたはペンタエリトリトールのアリルエーテル、または他のポリ不飽和モノマー、たとえば、ジアリルエステル、ジメタリルエーテル、アリルまたはメタリルアクリレートおよびアクリルアミド、テトラアリル錫、テトラビニルシラン、ポリアルケニルメタン、ジアクリレートおよびジメタクリレート、ジビニル化合物たとえば、ジビニルベンゼン、ジビニルグリコール、ポリアリルホスフェート、ジアリルオキシ化合物、ホスフィトエステル等がある。典型的なポリ不飽和モノマーには、ジ、トリまたはテトラ、ペンタまたはヘキサアリルスクロース;ジ、トリまたはテトラアリルペンタエリトリトール;ジアリルフタレート、ジアリルイタコネート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、アリルシトレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、テトラメチレンジエタクリレート、テトラメチレンジアクリレート、エチレンジアクリレート、エチレンジメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド等がある。また、エチレン性不飽和カルボン酸等でエステル化されたキャスタオイルまたはポリオールを用いてもよい。好ましい架橋剤にはアリルペンタエリトリトール、アリルスクロース、トリメチロールプロパンアリルエーテルおよびジビニルグリコールがある。
【0037】
本発明による好ましいカルボマーは式(I)を有するポリマーであってもよい。
【化1】
【0038】
別の実施の形態では、本発明によるカルボマーは式(II)を有するポリマーである。
【化2】
【0039】
式(I)および(II)において、zは0または1であってもよく;zが1の場合には、(x+y):zは4:1〜1,000:1、好ましくは6:1〜250:1であってもよく;ここでモノマーユニットはランダム配列でもよく、yは好ましくは0から最大でもxと同じ値までであり;nは少なくとも1であり;さらに、
Rはここで先に特定された意味を有し;
は独立して1〜50の選ばれたアルキレンオキシ基、好ましくはエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド基を表し;
はC〜C35炭化水素基;好ましくは飽和アルキルを表し、しかし場合によってはフェニル基を含み、この場合にはRはオクチルフェノール、ノニルフェニルまたはドデシルフェニル基を表すことが望ましく;
は水素またはC〜Cアルキル、好ましくはHまたはCHを表し;
、AおよびAは独立して水素およびアルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基から選択される。
【0040】
式(I)および(II)において、−O−A1、−O−A2または−O−A3のいずれかは、典型的に式−NLを有するアミン基によって置換されてもよく、ここでLはここで先に特定された意味を有する。
【0041】
カルボマーの製造について、いずれの好適な重合技術を用いてもよい。フリーラジカル重合技術、たとえば、キルク−オスマー(Kirk−Othmer),第5版,ウィレイ(Wiley),第20巻に開示されるような当業者に公知の技術を用いることが望ましい。
【0042】
本発明の実施の形態では、カルボマーは、GPCによって測定されるように、20,000〜5,000,000、好ましくは35,000〜3,000,000、より好ましくは50,000〜2,000,000、さらにより好ましくは70,000〜1,000,000、またより好ましくは80,000〜500,000、さらにより好ましくは90,000〜200,000および最も好ましくは多くとも130,000の範囲の平均分子量Mnを有する。カルボマーは好ましくは架橋される。分子量は好ましくは、カルボマーをジメチルアセトアミド(DMA)中に溶解し、ポリメチルメタクリレート参照標準でキャリブレートされた解析システムにおいて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。より好ましくは、このように分析されるカルボマーはまた、常にDMAに関して、50,000〜5,000,000、好ましくは100,000〜3,000,000、より好ましくは130,000〜2,000,000およびさらにより好ましくは150,000〜200,000の範囲のMwを有する。コポリマーの多分散度は好ましくは1〜5、より好ましくは1.1〜4.0、さらにより好ましくは1.2〜3.0、またより好ましくは1.3〜2.0、さらにより好ましくは1.4〜1.7およびさらにより好ましくは多くとも1.7の範囲であり、同じ方法で決定される。
【0043】
上記効果は、アクリル酸ホモポリマー、特に式IIIに対応する3〜5個の炭素原子を有するα,β不飽和一塩基性アクリル酸を含むカルボマー添加剤を用いた場合に発現し:
CH=CR−COOH (式III)
ここでRはH、一価アルキル、アリールまたはアルキルアリール残基および一価シクロアルキル残基の群から選択される置換基を表すが、Hが置換基として好ましい。しかし、Rはまたアルキル、好ましくはメチル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノアルキルおよび1〜9個の炭素原子を有する同様の基の群から選択されてもよい。
【0044】
アクリル酸およびメタクリル酸のホモポリマーは、経済的に妥当な価格で容易に市販入手可能であり、粘度変更が所望どおりになるので、好ましい。
【0045】
本発明による組成物に圧力またはせん断力を印加しない第1状態と、組成物に圧力またはせん断力を施す第2状態間の好ましい粘度比は、添加剤を用いて得られるものであり、添加剤ではホモポリマーは少なくとも2つの末端ビニルCH=C基を有する多官能性モノマーである架橋剤で架橋されて、上記のような分子量、またさらには0.05〜100、好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜5×10ダルトンを有するとともに、添加剤は高いせん断力では粘度を低下させ、せん断力を排除すると直ちに粘度を上昇させるといった特性を有する。
【0046】
好ましくは、ポリアルケニルポリエーテル、特にアリルペンタエリトリトール架橋剤を用いる。他の好適な架橋剤は少なくとも2つの末端ビニルCH=C基を有する多官能性モノマー、たとえば、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、アリルアクリレート等である。好ましい架橋剤はアルケニル基を含むものであり、ここではオレフィン二重結合が末端メチレン基に結合される。特に好ましい架橋剤は、分子当たり平均2以上のアルケニルエーテル基を有するポリエーテルである。他の好適な架橋剤はジアリルエステル、ジメチルアリルエーテル、アリルまたはメタリルアクリレート、アクリルアミドを含む。その例はアリルペンタエリトリトール、アリルサッカロース、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンプロパンジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアクリレート等である。
【0047】
上記効果は、式IIIのアクリル酸が式IVを有する少なくとも1つのアルキルアクリレートと共重合することによるコポリマーを含む添加剤を用いた場合にも見られ:
CH=CR’−CO−OR” (式IV)
ここでR’はH、メチル、エチルから成る群から選択され、R”はC10〜C30アルキル基、好ましくはC10〜C20の基であり、コポリマーは好ましくは上記のように、少なくとも2つの末端ビニルCH=C基を有する多官能性モノマーである架橋剤で架橋される。
【0048】
式IVの代表的なアクリレートは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、メチルエタクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレートおよび対応するメタクリレートである。好適なコポリマーは、2以上のリストの化合物と式IIIのアクリル酸との混合物のコポリマーを含む。他のコモノマーは、アクリロニトリル、オレフィン性不飽和ニトリル、好ましくは3〜10個の炭素原子を有するもの、たとえば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル;モノオレフィン性不飽和アクリルアミド、たとえば、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、4〜10個の炭素原子を有するものを含むα,β−オレフィン性不飽和カルボン酸のN−アルキロールアミド、好ましくはN−メチロールメタクリルアミドを含む。
【0049】
本発明の内容でカルボマーとしての使用に好適な市販入手可能な製品は、シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Company)から、たとえば、商品名ポリゲル(Polygel)(登録商標)で提供される製品、たとえば、ポリゲル(登録商標)CB 3V、ローム&ハース(Rohm & Haas)から、たとえば、商品名アクソール(Acusol)(登録商標)で提供される製品、ノベオン(Noveon)またはルブリゾール(Lubrizol)から、たとえば、商品名ペムレン(Pemulen)(登録商標)および/またはカルボポール(Carbopol)(登録商標)で提供される製品、たとえば、カルボポール674または981、カルボポールETD 2050、またはノベシックス(Novethix)(登録商標)L−10、ワコー・ピュア・ケミカル社(Wako Pure Chemical Industries)(日本)から、またはアライド・コロイド(Allied Colloids)(イギリス)から、たとえば、サルケア(Salcare)(登録商標)またはSNFフロエルガ(Floerger)による商品名フロスパーズ(Flosperse)(登録商標)で提供される製品で入手可能である。カルボマーは固体粉末、たとえば、カルボポール674またはポリゲルCB−3Vとして入手してもよいが、液体分散体、たとえば、ポリゲルW400またはW301ポリゲルまたはポリゲルDRとして入手してもよい。液体形態は高せん断力混合を要しないので処理が容易で、粉末カルボマーの溶解にとって非常に好ましい。我々の係続中の特許出願PCT/EP2010/053051号公報で非常に詳細にノベシックスL−10を議論している。
【0050】
本発明の実施の形態では、カルボマーは式IIIに対応する3〜5個の炭素原子を有するα,β−不飽和一塩基性アクリル酸のホモポリマーを含む。
CH=CR−COOH (式III)
ここでRはH、一価アルキル、アリールまたはアルキルアリール残基および一価シクロアルキル残基、1〜9個の炭素原子を有するアルコキシ、ハロアルキル、シアノアルキルの群から選択される置換基を表し、ホモポリマーは好ましくは、少なくとも2つの末端ビニルCH=C基を有するモノマーである架橋剤で架橋される。
てもよい。
【0051】
本発明の別の実施の形態では、カルボマーは、
(i)式IIIに対応する3〜5個の炭素原子を有するα,β−不飽和一塩基性アクリル酸:
CH=CR−COOH (式III)
(ここでRはH、一価アルキル、アリール、アルキルアリール残基、一価シクロアルキル残基、1〜9個の炭素原子を有するアルコキシ、ハロアルキル、シアノアルキルの群から選択される置換基である)と、
(ii)式IVで表される少なくとも1つのアルキルアクリレート:
CH=CR’−CO−OR” (式IV)
(ここでR’はH、メチル、エチルの群から選択され、ここでR”はC10〜C30アルキル基である)
とのコポリマーを含み、コポリマーは好ましくは、少なくとも2つの末端ビニルCH=C基を有する多官能性モノマーである架橋剤で好ましく架橋される。
【0052】
本実施の形態では、式IVのR”は好ましくはC10〜C20アルキル基である。
【0053】
本発明の別の実施の形態では、カルボマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるように、20,000〜5,000,000の範囲の平均分子量Mnを有する。
【0054】
好ましくは、本発明によるカルボマーはそれ自身が架橋され、好ましくはカルボマーの架橋剤はアリルペンタエリトリトールである。
【0055】
また別の実施の形態では、本発明による組成物中のカルボマーはそれ自身が擬似プラスチック材料である。
【0056】
本発明による組成物中にカルボマーを投入する場合には、好ましくは膨張性の流体または非ニュートン組成物の性質を明確に観察するために、十分なカルボマーを添加する。
【0057】
別の実施の形態では、カルボキシメチルセルロース(CMC)、セルロースゴムおよびキサンタンゴムから成る群から選択される追加の分散剤が選ばれてもよい。
【0058】
カルボマー分散剤はホウ素含有化合物を非常に効果的に懸濁液中に保持することができることを、発明者は示してきた。この種の分散剤の使用に関するさらなる利点は、懸濁液がチキソトロピー(非ニュートン)流動性状を示しうることである。これによって輸送時に移動している懸濁液は非常に容易に流動するが、安静時にはホウ酸塩またはホウ酸粒子を懸濁液中に保持するのに十分な粘度を示す。
【0059】
このような懸濁液はさらに、製造が非常に容易であるといった大きな利益をもたらす。1つのカルボマー分散剤を懸濁液に添加し、また比較的少量の分散剤を添加するだけで、ホウ素含有化合物を懸濁液中に保持することができ、これによってさらに追加の化合物、たとえば、膨張性粘土を追加の分散剤として、膨張性粘土を安定化するために、さらなる追加の分散剤と任意に組み合わせて添加する必要がない。
【0060】
既存のボラックス懸濁液に比べて本発明による懸濁液のさらなる利点は、本発明による懸濁液が透明な白色であることである。これは、ある種の産業分野、たとえば、不透明または着色懸濁液が望ましくない核産業では多大な利益をもたらす。
【0061】
さらに、本懸濁液は、分散剤の反応性が低いといった利益をもたらす。このことはホウ酸が懸濁液中に保持されねばならない場合に特に重要である。ホウ酸は特定の他の物質とかなり反応性があり、したがってたとえば、ある種のポリサッカリドと反応し、これによってこれらの化合物がホウ酸を懸濁液中に保持するための分散剤として不適切となる場合がある。
【0062】
好ましくは、カルボマーは全懸濁液に基づいて少なくとも5重量ppmで、かつ同じ基準に基づいて任意に2.5重量%以下、好ましくは2.0重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下およびさらにより好ましくは1.0重量%以下の濃度で存在する。より好ましくはカルボマーは、少なくとも50重量ppm、より好ましくは少なくとも500重量ppm、さらにより好ましくは少なくとも750重量ppm、またより好ましくは少なくとも900重量ppm、より好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも1.0重量%、好ましくは少なくとも2.0重量%で、かつ任意に多くとも6.0重量%、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは多くとも4.0重量%で存在し、ここでは濃度は、懸濁液中にあるホウ素含有化合物の量を除いて、懸濁液の重量に関して表される。
【0063】
本発明による組成物中のカルボマーの存在は、赤外線(IR)分光測定法によって、好適なキャリブレーション曲線を作成して決定されてもよく、この方法は組成物中に存在するカルボマーの量の量的同定に好適でありうる。ユニバーサル・ATR・サンプリング・アクセサリ(Universal ATR Sampling Accessory)を備えるパーキン・エルマー(Perkin Elmer)FT−IRスペクトロメータ・スペクトラム(Spectrometer Spectrum)100を用いることが望ましい。
【0064】
実施の形態では、本発明による懸濁液は多くとも13.0、好ましくは多くとも12.5、より好ましくは多くとも12.0、またより好ましくは多くとも11.5、より好ましくは多くとも11.0、さらにより好ましくは多くとも10.5、またより好ましくは多くとも10.0、さらにより好ましくは多くとも9.5、またより好ましくは多くとも9.0、またはより好ましくは多くとも8.5、さらにより好ましくは多くとも8.0、および最も好ましくは多くとも7.5のpHで、かつ任意に少なくとも4.0、好ましくは少なくとも5.0、より好ましくは少なくとも6.0、さらにより好ましくは少なくとも6.5および最も好ましくは少なくとも6.8のpHを有する。pHは対数目盛であり、pHで1単位の減少、たとえば、12.5から11.5への減少は塩基濃度での換算係数10の減少、したがって、pHを調節するのに使用されうる苛性ソーダの濃度で10倍の減少を表すことを覚えておくことが重要である。この特性は、幅広い範囲の構成材料とより良好に適合するだけでなく、懸濁液の漏れや放出の際に考えられるダメージに対するリスクを減らすといった利益を提供する。
【0065】
我々は、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはセルロースゴム、またはキサンタンゴムをカルボマーとともに使用してもよいことを見出した。この化合物はさらに粘度を変更することに寄与しおよび/または組成物を濃厚にしうる。我々は、CMCをカルボマーと組み合わせて用いてもよく、CMCを含有する本発明による組成物は、NaOHのような強塩基によるCMCの変性を排除するために、好ましくは多くとも10.0、より好ましくは多くとも9.0のpHを有することを見出した。
【0066】
別の実施の形態では、本発明による懸濁液の粘度は、印加されるせん断力の量を低い値に低減すれば、著しく増加する。そうゆうものとして、本発明による組成物の粘度比は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計において25℃でスピンドル3を用いて測定され、mPa.sまたはcPで表され、1rpm(低せん断力)のスピンドル速度で測定された粘度を100rpm(高せん断力)のスピンドル速度で測定された粘度で割ったものであるが、これは好ましくは少なくとも5.00、好ましくは少なくとも7.0、より好ましくは少なくとも10.0、さらにより好ましくは少なくとも12.0またはさらに15.0、さらにより好ましくは少なくとも20.0である。この比が高いほど、懸濁液をポンピングした場合とこれが安静である場合間の懸濁液の性状における差異が大きくなる。
【0067】
ホウ素含有化合物は本発明によるカルボマーによって懸濁液へと導入されうる。まず、水中にカルボマーを含有するゲルを、0.5〜6重量%、好ましくは1〜5重量%およびより好ましくは2〜4重量%の範囲の濃度で、典型的には高せん断力ミキサーを用いて調製するのが最も好適である。次に、1000kgのこのゲルに、ホウ素含有化合物、たとえば、100〜2000kgのボラックス、好ましくは400〜1800kgのボラックス、より好ましくは500〜1500kgのボラックス、さらにより好ましくは550〜1000kgのボラックスを懸濁させてもよい。ホウ素含有化合物を単純混合時に添加してもよく、高せん断力ミキサー内でのゲルの調製時に添加してもよい。ホウ素含有化合物のこのような懸濁液は、一連の用途での使用および本発明による使用に好適である。
【0068】
また別の実施の形態では、本発明による懸濁液はさらに、表面張力剤、消泡剤、スケール除去剤、光学的浄化剤、防カビ剤、殺菌剤または抗菌剤、着色剤、湿潤剤、粘度調整剤、流動性調整剤、凍結防止剤、溶剤、充填剤およびその混合物から成る群から選択される少なくとも1以上の構成要素を含有する。これらの構成要素を本発明の工程のいずれの地点で導入してもよく、かつ生じる流体のいずれに導入してもよい。
【0069】
好ましくは懸濁液用に使用される溶剤は水である。また、他の溶剤、たとえば、メタノール、エタノールまたは業界で公知の他のいずれかの極性溶剤を使用してもよい。
【0070】
本発明は、ホウ酸またはホウ酸塩を連続的にまたは半連続的に混合工程または反応環境に添加することが望ましい用途、より特別にはホウ酸塩またはホウ酸の添加を制御された方法で定量し制御することが求められる用途、特に高湿度で行われる用途では非常に有用でありうる。本発明は、洗剤またはクリーナの製造を伴う洗剤産業、液体肥料の工業的生産、核エネルギープラントにおいて、殺虫剤および防カビ剤の配合用に、ガラス、ファイバガラス、プラスチックおよびゴムの製造と合わせて、凍結防止剤組成物、熱流体、金属処理コーティング組成物、絶縁難燃剤組成物、写真用組成物の工業的製造、およびセラミックおよび木材産業での用途において有益でありうる。
【0071】
懸濁液が中性子の吸収に使用される実施の形態では、懸濁液は好ましくは核エネルギーからの電力の発生に合わせて、好ましくは圧力下での水循環を備える核反応容器または「加圧水反応容器(PWR)」内で使用される。
【0072】
中性子を吸収するための使用では、好ましくは、核反応、核反応の制御または管理および核反応のシャットダウンにとって、使用されるウラン棒を制御下に維持することにとって有害となる事柄から、使用の目的または機能を選択することを目指し、ここで核反応とは好ましくは核分裂反応である。
【0073】
ここで本発明をさらに以下の実施例によって例示するが、そこで考えられうる結果に限定されない。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
非ニュートンゲルを産業用せん断力ミキサーを用いて調製し、これによって99.98%の水中に0.02重量%のカルボポール981(ルブリゾール社から)を含有する分散体を形成した。約1分間混合した後、ゲルの準備が完了した。
【0075】
さらに、25%m/m(=質量)の顆粒形態のボラックス10水和物(テクニカル・グレード(Technical grade)、グラニュラ(Granular)、エチマインSAから)をこのゲルに混合した。2分後に、顆粒ボラックス10水和物のゲル懸濁液の準備が完了し、安定化した。
【0076】
(実施例2)
カルボマーゲルの調製
IKA・マジック・LAB・ハイ・シェア・ミキサー(IKA magic LAB High Shear Mixer)内で、40gのカルボポール941粉末を920gの水に混合し、40gの29重量%強度のNaOH溶液を導入することによって、pHを6.8まで上げた。
【0077】
カルボポール941は架橋ポリアクリル酸ポリマーと記されており、粉末形態で入手可能でありうる。カルボポール941をジメチルアセトアミド(DMA)に溶解してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にかけた場合に、カルボポール941は21からだいたい32分の保持ウィンドー間にブロードピークを示すスペクトルを与え、これはDMAに関して、ポリメチルメタクリレート参照標準を用いてキャリブレートされた分析システムにおいて、以下の分子量情報を提供するものであり:Mn=96483、Mw=163802、多分散度Mw/Mn=1.70、MP=114358(保持時間=約26分)、Mz=263738およびMz+1=379289といった結果となった。
【0078】
懸濁液の調製
600リットルの本実施例のカルボマーゲルに、350kgの量のボラックス(10水和物、上記実施例1と同じ原料)を混合し、ボラックスの安定な懸濁液を得た。1000リットルの水中に10kgのカルボポール674を高せん断力混合を用いて混合し、次に、1500kgのボラックスを攪拌下で添加した場合に、同様に安定なボラックス懸濁液を得た。
【0079】
(実施例3)
ホウ酸懸濁液の調製
エチミン(ETIMIN)社から商品名エチマデン(ENTIMADEN)(登録商標)で得られる純度99.90重量%の顆粒ホウ酸を用いた。この顆粒製品は、1.000mmの開口を有するふるい上に残る粒子を多くとも2.00重量%含み、0.063mmの開口を有するふるいを通過する粒子を多くとも4.00重量%しか含まないものであった。
【0080】
最初に2回、同じゲルを、高せん断力混合条件下で10kgのカルボポール674(ルブリゾールから)を1000kgの水中に毎回混合することによって、調製した。次に、懸濁液AおよびBを、それぞれ500kgおよび1000kgの顆粒ホウ酸を各ゲル中に混合することによって調製した。固形分のパーセンテージはそれぞれ20.10重量%および30.50重量%と測定された。懸濁液のpHは調節せず、それぞれ3.4および3.7であった。
【0081】
両方の懸濁液の粘度を、ブルックフィールドRV粘度計を用いて、スピンドル3でこれを各種回転速度で測定した。結果を表1に示し、図1に図示する。全ての結果はセンチポイズ(mPa.s)および1分間当たりの回転における回転速度(rpm)で表す。
【0082】
【表1】
【0083】
粘度変化はスピンドルの回転速度の関数であり、明らかに両方の懸濁液の非ニュートン性状を示しており、より特別には、粘度は低せん断速度で比較的高く、高せん断速度で非常に低くなる。
【0084】
この懸濁液の特別な流動性状の利点は、たとえば、より薄い懸濁液を調製するために、常套のポンプでこれらをポンピングできることである。
【0085】
ここで本発明を十分に記載したが、請求の範囲内のパラメータの幅広い範囲内で、本発明の精神および範囲からから逸脱することなく、本発明を実施することができることは、当業者にとって自明である。当業者に理解されるように、発明全体は、請求の範囲に規定されるように、ここで特に列挙されない他の好ましい実施の形態を含む。
図1