(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発光層(EML)が、少なくとも1つのイオン性量子ドット、並びに、ホスト材料、蛍光エミッタ、リン光エミッタ、正孔輸送材料(HTM)、正孔注入材料(HIM)、電子輸送材料(ETM)及び電子注入材料(EIM)から選択される少なくとも1種の電気的に中性の小有機機能分子を含むことを特徴とする、請求項2に記載のQD−LEC。
ざ瘡、乾癬、湿疹、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性湿疹、浮腫、白斑、皮膚老化、皮膚のしわ、皮膚脱感作、ボーエン病、腫瘍、前癌状態腫瘍、悪性腫瘍、基底細胞癌、扁平上皮癌、二次性転移、皮膚T細胞リンパ腫、日光性角化症、ヒ素角化症、放射線皮膚障害、皮膚発赤、面皰及びセルライトから選択される皮膚疾患及び/又は美容上の皮膚状態の、治療及び/又は予防及び/又は診断のための、請求項11又は12に記載のQD−LEC及び/又はデバイス。
【発明の概要】
【0001】
本発明は、とりわけ、少なくとも1つの量子ドット及び少なくとも1種の小分子有機機能材料を含むデバイスに関する。本発明はまた、例えば、治療及び/又は美容、情報表示並びに一般照明の応用分野におけるデバイスの使用に関する。
【0002】
光療法(光線療法とも呼ばれる)は、広範囲の治療上の疾患(therapeutic disease)及び/又は美容上(cosmetic)(審美的とも呼ばれる)の状態に用いることができる。光源としてLED又はレーザーのいずれかを用いる光療法は、例えば、創傷、傷害、頸部痛、骨関節症、化学療法及び放射線療法の副作用を治療するために既に用いられている。
【0003】
しばしば、治療応用と美容応用との境界は、あいまいであり、個々の状況及び医師の評価に依存する。しばしば、治療条件は美容上の考慮に関連し、逆も同様である。例えば、ざ瘡の治療又は予防は、状態の程度によって治療及び美容上の構成要素の両方を有し得る。同じことが乾癬、アトピー性皮膚炎、他の疾患及び/又は状態の説明となる。多くの疾患及び状態は、例えば、対象の皮膚の視認性の変化によりしばしば表される明らかな意味に関連する。これらの美容上又は審美的変化は、少なくとも一部は重篤な疾患をもたらす心理的な変化にしばしばつながり得る。
【0004】
ある種の状態又は疾患は、治療上の構成要素も役割を果たし得る場合でさえ、美容上の構成要素に対して重要性を有し得る。これらのいくつかは、老化防止、しわ防止、ざ瘡及び白斑の予防及び/又は治療から選択される。
【0005】
多くの診断用ツール又はデバイスは、例えば、ビリルビン、酸素又はCOなどの血液特性を測定するために光源もしばしば必要とする。美容術及び医療において、皮膚は照射すべき主な標的であるが、ヒト又は動物の身体の他の標的も光療法によりアクセスすることができる。これらの標的は、眼、創傷、爪及び身体の内部を含むが、これらに限定されない。光は、例えば、創傷、飲料、栄養物の消毒を促進又は持続させるためにも用いることができる。
【0006】
光療法の他の効果は、ミトコンドリアにおける代謝の刺激である。特定の波長の光は、アデノシン三リン酸(ATP)の形の必須の細胞エネルギーの生産に関与する酵素であるシトクロムcオキシダーゼを刺激する。ATPは、熱力学的に不利な生化学的反応を促進するために細胞エネルギー輸送のために、また細胞エネルギー貯蔵所として必要である。ATPは、老化及び細胞死(酸化ストレス)をもたらす他の生化学的分子(例えば、活性酸素種及び酸化窒素)を調節するためにシグナル分子としても機能し得る。光療法の後に、細胞は、代謝の亢進を示し、より十分に伝達し、より良い方法でストレスの多い条件を乗り切って生き残る。
【0007】
そのような原理は、創傷治癒、結合組織修復、組織修復、組織死の予防、炎症、疼痛、急性傷害、慢性疾患、代謝障害、神経原性疼痛及び季節性情動障害の軽減などの薬物治療及び美容応用分野に適用することができる。
【0008】
光の応用の他の分野は、種々の癌の治療である。癌治療において、光線力学療法(PDT)が重要な役割を果たす。PDTにおいて、光を医薬品とともに用いることができる。これらの療法は、様々な皮膚及び内科疾患を治療するために用いることができる。PDTにおいて、光薬剤(photopharmaceutical)として公知の光感受性治療薬を治療すべき身体の部位に外部から又は内服的に適用する。次に当部位を適切な周波数及び強度の光に曝露して、光薬剤を活性化する。種々の光薬剤が現在入手できる。例えば、5−アミノレブリン酸塩酸塩(Crawford Pharmaceuticals)、メチルアミノレブリン酸(Metfix(登録商標)、Photocure)などの局所薬剤が存在する。Photofin(登録商標)(Axcan製)及びFoscan(登録商標)(Biolitech Ltd製)などの内部悪性腫瘍に主として用いられる注射用薬剤も存在する。しばしば、薬剤は、光感受性光薬剤に代謝される不活性型で適用される。
【0009】
光線力学療法において、光薬剤に光を供給するための主要な手法は、レーザー又はフィルター処理アークランプなどの独立型の光源からの適切な波長の光を投射することである。これらの源は、扱いにくく、高価であり、したがって、病院における使用にのみ適している。これは、患者にとって不便及び治療の高額につながる。1日当たり容認できる数の患者を治療し(治療が費用対効果が高いように)、患者に過度に不便を感じさせることを避けるために、高い光放射照度が必要である。
【0010】
現在までのところ、光療法及びPDTは、低い治療遵守につながる患者にとって不快である大光源の適用によって左右される。現在使用されているデバイスの多くは、据え付けられた状態でのみ適用でき、例えば、病院において又は医師の手術において医療従事者の管理を必要とする。さらに、現在使用されている光源の多くは、その一部のみを照射すべきであったとしても、治療する対象の広い領域を照射し、これが望ましくない副作用をもたらし得る。
【0011】
国際公開第98/46130号及び米国特許第6096066号は、光線力学療法に用いるLEDのアレイを開示している。それらにおいて教示されている小LED源は、患者に対して一様でない光の投射をもたらす。アレイの作製は、多数の接続が必要であるため、複雑である。それらに示されたデバイスは、病院での治療用に設計されている。
【0012】
英国特許第2360461号は、後で光ファイバーを介して透過させる光を発生させるための従来の光線力学療法光源を用いる柔軟な外被を開示している。そのような光源は重いので、デバイスは、携帯型でなく、病院での使用に限定される。
【0013】
米国特許第5698866号は、過駆動無機LEDを用いる光源を開示している。得られる光出力は一様でない。放熱機構が必要であり、デバイスは病院での治療にのみ適している。
【0014】
国際公開第93/21842号は、無機LEDを用いる光源を開示している。可搬型であるが、デバイスは、家庭での患者による歩行使用に適しておらず、臨床での治療が想定される。
【0015】
既存のアプローチのさらなる問題は、特に湾曲した身体部分に対するそのような光源による均一な照射を達成することが困難であり得ることである。
【0016】
上述の分野における光の適用の本質的な前提条件は、デバイスである。今日の市販のシステムは、ほとんどレーザーに基づいている。しかし、これらのシステムは、病院に備えられたもの、すなわち、据え付け型デバイスである。費用を低減し、利便性並びに治療遵守を高めるために、移動できる在宅使用技術が必要である。実際、いくつかの研究がこの方向に向けて傾注されている。
【0017】
Rochesterらは、英国特許第24082092号において柔軟性のある基材上の柔軟性のある発光ダイオードの形態を含む柔軟性のある医療用光源並びに結果として得られる、血液特性(例えば、CO、酸素又はビリルビンのレベル)のモニタリングを対象とする診断用デバイス及び軽い病気の治療用の光療法デバイスを開示した。
【0018】
Vogle Klaus及びKallert Heikoは、欧州特許第018180773号において皮膚の治療用のデバイスを開示した。デバイスは、光源として潜在的に柔軟性の有機発光ダイオード(OLED)を含んでいる。デバイスは、衣類又はプラスターに組み込むことができる。
【0019】
Attiliら(Br. J. Dermatol.、161巻(1号)、170〜173頁、2009年)は、非黒色腫皮膚癌の治療における装着型低放射照度OLEDを用いた外来光線力学療法(PDT)の臨床オープンパイロット試験を公表し、OLED−PDTが従来のPDTより苦痛が少なく、軽量であるという付加的な利点があり、したがって、在宅でのより便利なPDTの可能性があることを提唱した。
【0020】
Samuelらは、欧州特許第1444008号B15において治療及び/又は美容処置に用いる携帯型デバイスを開示した。デバイスは、OLED及び例として使用されたポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)を含む。
【0021】
欧州特許第1444008号は、OLEDを含む光線力学療法による治療のためのデバイスを開示している。
【0022】
有機発光ダイオードは、本質的に柔軟性があり、例えば、インクジェット印刷及びスクリーン印刷などの印刷技術により広い領域にコーティングすることができるという点でそれらの無機対応物(発光ダイオード−LED)と比べて多くの利点を有する。
【0023】
しかし、OLEDにおいて、Ba及びCaなどの活性金属がカソードとして用いられている。したがって、OLEDは、貯蔵時及び動作時の両方において長寿命を保証するための優れた封入を必要とする。全般的にそれぞれ数ナノメートル(several tons of nanometers)を有する多層構造体であるOLEDの製造は、依然として複雑で、費用のかかる職務である。
【0024】
疾患及び/又は美容上の状態の治療、予防及び/又は診断のための有機発光電気化学セル(OLEC、LEEC又はLEC)の使用は、OLEDの使用と比較して種々の理由のために有利である。
【0025】
とりわけOLECは、それらの構造が非常に単純であり、したがって、容易に調製することができる。デバイスの調製は、OLECの場合、OLEDにおけるそのような表面の調製と比較してさほど複雑でない。これは、1)OLECがOLEDと比較して少数の層を有する、2)OLECの発光層が数又は数十マイクロメートルほどの厚さであり得、これにより、大量生産において多くの利用可能なコーティング技術、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷及びスプレイコーティングの使用が可能となる、3)層の均一性に関する要件がさほど厳格でないということに起因する。したがって、特に大量生産の生産費用は、OLEDの生産費用と比較してはるかに低い可能性がある。
【0026】
さらに、OLECは、空気感受性電荷注入層又は電子注入用のカソードとしてBa若しくはCsのような活性金属に依拠せず、これにより、それらの調製がさらに単純化され、OLEDと比較して費用効率が高くなる。これはまた、OLECの封入のより厳格でない要件につながり得る。
【0027】
OLECの基礎をなす技術は、OLED又はLEDのそれと異なる。OLED及びLEDの両方が順方向バイアス及び逆バイアスを有するダイオードである。OLECと対照的に、OLEDとLEDの両方のI−V(電流−電圧)曲線は、非対称性である。それらは半導体技術に相当するが、OLECは基本的に電気化学又はより正確には電解セルである。OLEDにおける電荷輸送は、正孔と電子がいわゆる励起子、すなわち、電子−正孔対を形成するまで分子から分子への正孔及び電子の移動によって起こる。励起子が放射崩壊するときに光が放射される。OLECにおいて、電圧を印加することにより、電解質がアノードにおいて酸化され、カソードにおいて還元される。
【0028】
分子カチオン及びアニオンが電界のもとで拡散し、それらが会合していわゆるp−n接合を形成するまでの間に有機発光材料をドーピングする。さらにp−n接合において有機発光化合物上に励起子が形成される。励起子の放射崩壊が光の放射につながる。OLECの原著及び原理は、Qibing Peiら、Science、1995年、269巻、1086〜1088頁を参照することができる。OLECは、対称性I−V曲線を示し、低い駆動電圧を有し得、カソードとしての活性金属の必要はない。
【0029】
しかし、OLED及びOLECの1つの欠点は、有機エミッタの性質に起因する広域発光であり、これがエネルギー損失又は望ましくない副作用をもたらし得る。OLED及びOLECの広域発光スペクトルは、光療法応用分野におけるだけでなく、表示及び照明応用分野などの他の技術分野においても望ましくない。例えば、表示応用分野について、有機エミッタは、通常低い色純度を有する。
【0030】
OLEDとOLECの両方における有機エミッタの他の欠点は、限られた量子効率である。量子統計学によれば、励起子形成の確率がスピン依存性でない場合、1つの一重項当たり3つの三重項がOLED及びOLECにおいて形成される。蛍光物質に基づくデバイスの一重項励起子形成の確率は、25%にすぎない。したがって、25%の内部量子効率という基本的限界が、単に一重項エミッタに基づくOLED/OLECにもたらされる。この限界は、通常重金属を含有する錯体である三重項エミッタとも呼ばれるリン光ドーパントを組み込むことによって克服することができ、これにより、スピン軌道カップリングを増加させ、一重項及び三重項励起子を得ることができる。しかし、金属錯体は、合成することが困難であり、安定性の問題がある。これまでのところ、安定な(深)青色三重項エミッタは、依然として手に入れにくい。さらに、有機物質の三重項レベルは一般的に一重項レベルより少なくとも0.5eV高いため、それ自体大きいバンドギャップ(又はHOMO−LUMOギャップ)を有する青色三重項エミッタは、ホスト材料及び隣接する層における電荷輸送材料に極めて困難な要求を課す。
【0031】
他方で、他のクラスの発光材料、すなわち、下記のようないわゆる量子ドット又は単分散性ナノ結晶も近年かなりの注目を集めている。量子ドットの利点は、1)理論的内部量子効率が一重項有機エミッタの25%と比べて100%と高いこと、2)一般的有機溶媒に溶けること、3)発光波長をコアサイズにより容易に調節することができること、4)狭い発光スペクトル、5)無機材料中で本質的な安定性である。
【0032】
本明細書で量子ドット又はQDとも呼ぶ、半導体材料を含む最初の単分散性ナノ結晶は、CdE(E=S、Se、Te)に基づいており、Bawendiによる、後にKatariらにより修正されたいわゆるTOPO(トリオクチルホスフィンオキシド)法を用いて製造された。QDの合成に関する総説は、Murray、Norris及びBawendi、「Synthesis and characterization of nearly monodisperse CdE (E=sulfur、selen、tellurium) semiconductor nanocrystallites」、J. Am. Chem. Soc.、115巻[19号]、8706〜8715頁、1993年により示されている。量子ドットの大部分報告されたキャップは、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)又はトリオクチルホスフィン(TOP)に基づいており、これらが電子輸送特性を有すると推測される。
【0033】
CdSe QDに基づく最初の発光ダイオードは、Alivisatosら、「Light emitting diodes made from cadmium selenide nanocrystals and a semiconducting polymer」、Nature (London)、370巻[6488号]、354〜357頁、1994年により報告され、ここで、QDからなる多層がPPV(ポリ(p−フェニレン−ビニレン))と電極との間にサンドイッチ状に挟まれており、電圧の印加により赤色の発光をもたらす。Bulovicら、「Electroluminescence from single monolayers of nanocrystals in molecular organic devices」、Nature (London)、420巻[6917号]、800〜803頁、2002年は、2つの有機層の間にサンドイッチ状に挟まれたCdSe QDの単一単層の使用を述べている。
【0034】
しかし、公知のQD LEDの1つの重大な問題は、QDと隣接する有機層との間の大きいエネルギーレベルオフセットであり、例えば、CdSe QDは、−6.6eVのHOMO及び−4.4eVのLUMOを有し(国際公開第2003/084292号、国際公開第2007/095173号)、他側において機能性有機材料は、通常−3.0eV超のLUMO及び−5.6eV超のHOMOを有する。大きいエネルギーオフセットは、QDがエレクトロルミネッセンスデバイス又は他の電子デバイスにおいて効率的に電子的に活性であることを妨げる。
【0035】
したがって、本発明の目的は、改善された電子デバイスを提供することである。
【0036】
これまでのところ、Legerら(Abstract of the 64
th Northwest Regional Meeting of the American Chemical Society、Tacoma、WA、United States、2009年6月28日〜7月1日)が有望な結果を有する、共役ポリマー及び量子ドットを含む発光電気化学セルを開示した。しかし、共役ポリマーを溶液から容易にコーティングすることができるが、ポリマーOLED/OLECの性能は、蒸発小分子(SM)OLEDに基づくOLEDの性能よりはるかに劣っている。さらに、共役ポリマーは、拡張共役のため、一般的にかなり低い三重項レベルを有する。緑色三重項OLEDの共役ポリマーマトリックスは、これまでのところ報告又は開示されていない。
【0037】
したがって、本発明の一つの目的は、発光波長を精密に調整することができる薄い光源を提供することである。したがって、発光の色純度を改善すべきである。本発明の他の目的は、特にスペクトルの紫外(UV)及び/又は赤外(IR)領域における表示及び照明応用分野向けの高い効率及び低いエネルギー損失を有する発光デバイスを提供することである。本発明のさらに他の目的は、表示、一般照明、バックライト用途、光療法及び/又はPDTなどの種々の技術分野における本発明の光源の適用である。光源は、容易に製造することができ、主としてそれらのサイズ、潜在的なデバイスの柔軟性並びに調整可能なサイズ、形状、照射波長及び照射強度のため、特に光療法応用に関して利用しやすい。
【0038】
驚くべきことに、量子ドットは、上述の目的を達成するためにエミッタ、ホスト材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料及び電子注入材料などの有機機能材料と共にOLECに用いることができることが見いだされた。量子ドットは、容易に製造することができ、有機蛍光又はリン光化合物と対照的に狭い発光スペクトルを有する。それらは、量子ドットの発光極大を決定するサイズに関して調整することができる。高い光ルミネッセンス効率も量子ドットにより得ることができる。さらにそれらの発光強度は、用いるそれらの濃度により調整することができる。さらに、量子ドットは、多くの溶媒に溶け又は一般有機溶媒に容易に溶かすことができ、これにより、多用途の処理方法、特にスクリーン印刷、オフセット印刷及びインクジェット印刷などの印刷法が可能となる。
【0039】
本発明は、少なくとも1つの量子ドット、少なくとも1種のイオン化合物並びにホスト材料、蛍光エミッタ、リン光エミッタ、正孔輸送材料(HTM)、正孔注入材料(HIM)、電子輸送材料(ETM)及び電子注入材料(EIM)から選択される少なくとも1種の小有機機能材料を含む発光電気化学セル(QD−LEC)に関する。
【0040】
一般的に、量子ドットは、その励起子が3つの全空間次元に限定されている半導体である。結果として、それらは、バルク半導体と離散分子系の特性の中間的特性を有する。例えば、化学的方法若しくはイオンインプランテーションにより、又は最先端技術のリソグラフ法により調製されるナノデバイスの形などの量子ドット構造を調製するいくつかの方法がある。
【0041】
本発明の量子ドットは、コロイド状量子ドットとしても公知であるコロイド状半導体ナノ結晶、化学的方法により製造されるナノドット若しくはナノ結晶を指す。
【0042】
半導体材料を含む最初の単分散性コロイド状量子ドットは、CdE(E=S、Se、Te)に基づいており、Bawendiによる、後にKatariらにより修正されたいわゆるTOPO(トリオクチルホスフィンオキシド)法を用いて製造された。QDの合成に関する総説は、Murray、Norris及びBawendi、「Synthesis and characterization of nearly monodisperse CdE (E=sulfur、selen、tellurium) semiconductor nanocrystallites」、J. Am. Chem. Soc.、115巻[19号]、8706〜8715頁、1993年により示されている。当業者に公知であるあらゆる方法を用いてQDを作製することができるが、好ましくは無機QDの制御成長のための溶液相コロイド法を用いる。前記コロイド法は、例えば、Alivisatos A. P.、「Semiconductor clusters, nanocrystals, and quantum dots」、Science、271巻、933頁、X. Peng、M. Schlamp、A. Kadavanich、A. P. Alivisatos、「Epitaxial growth of highly luminescent CdSe/CdS Core/shell nanocrystals with photostability and electronic accessibility」、J. Am. Chem. Soc.、30巻、7019〜7029頁(1997年)及びC. B. Murray、D. J. Norris、M. G. Bawendi、「Synthesis and characterization of nearly monodisperse CdE (E=sulfur、selenium、tellurium) semiconductor nanocrystallites」、J. Am. Chem. Soc.、115巻、8706頁(1993年)により開示されている。これらの方法により、クリーンルーム及び高価な製造装置の必要のない低い費用での加工が可能となる。これらの方法において、高温で熱分解を受ける金属前駆体が有機界面活性剤分子の熱溶液に速やかに注入される。これらの金属前駆体は、高温で分解し、反応してナノ結晶の核となる。この初期の核生成段階の後、成長しつつある結晶へのモノマーの添加により成長段階が始まる。このように、それらの表面を覆う有機界面活性剤分子を有する結晶性ナノ粒子が溶液中で得られる。
【0043】
これらの方法において、合成は、数秒にわたり起こる初期核生成事象とそれに続く数分にわたる高温での結晶成長として起こる。温度、存在する界面活性剤の種類、前駆体の材料及び界面活性剤とモノマーとの比などのパラメーターは、反応の性質及び進行を変化させるために変更することができる。温度は、核生成事象の構造段階、前駆体の分解速度及び成長速度を制御する。有機界面活性剤分子は、溶解度とナノ結晶の形状の制御を調節する。界面活性剤とモノマー、界面活性剤相互、モノマー相互の比及びモノマーの個々の濃度は、成長の速度論に著しく影響を及ぼす。
【0044】
本発明によるQD−LECは、所望の効果を達成するために必要とするほど多くの量子ドットを含み得る。好ましくはQD−LECは、100未満、特に好ましくは70未満、極めて特に好ましくは40未満の異なる量子ドットを含む。さらなる好ましい実施形態において、前記アレイは、20未満の異なる種類の量子ドットを含む。
【0045】
さらに他の実施形態において、本発明によるQD−LECは、4つ、好ましくは3つ、特に好ましくは2つ、極めて特に好ましくは1つの量子ドット(複数可)を含む。
【0046】
1つの量子ドットを含むQD−LECが好ましい。
【0047】
本発明によるQD−LECは、それぞれ好ましくは発光層の全量に対して少なくとも0.1重量%、特に好ましくは少なくとも0.5重量%、極めて特に好ましくは少なくとも3重量%の濃度で量子ドット(複数可)を含む。一実施形態において、本発明によるQD−LECは、15未満、好ましくは10未満、特に好ましくは7未満、極めて特に好ましくは5未満の小有機機能材料(複数可)を含む。
【0048】
本発明による小有機機能材料は、有機エレクトロニクスの分野で一般的に使用され、当業者に周知の材料である。小有機機能材料のコンピテーション(compitation)は、欧州特許第09015222.4号及び欧州特許第10002558.4号に開示されている。
【0049】
小有機機能材料という用語は、所望のホスト、発光、正孔注入、正孔輸送、電子注入及び/又は電子輸送特性を有する小分子を意味する。
【0050】
本発明による小分子は、ポリマー、オリゴマー、デンドリマー又は混合物でない分子である。特に、反復構造は小分子に存在しない。小分子の分子量は、一般的に少数の反復単位を有するポリマー、オリゴマー又はより少ない範囲にある。小分子の分子量は、好ましくは4000g/モル未満、特に好ましくは3000g/モル未満、極めて特に好ましくは2000g/モル未満であり得る。
【0051】
ポリマーは、10〜10000、特に好ましくは20〜5000、極めて特に好ましくは50〜2000反復単位を有し得る。オリゴマーは、2〜9反復単位を有し得る。ポリマー及びオリゴマーの分岐指数は、0(分岐を有さない直鎖状ポリマー)から1(完全に分岐したデンドリマー)までである。本明細書で用いているデンドリマーという用語は、Angew. Chem.、Int. Ed.、1999年、38巻、885頁におけるM.Fischerに従って定義される。
【0052】
ポリマーの分子量(M
W)は、好ましくは約10000〜約2000000g/モルの範囲、特に好ましくは約100000〜約1500000g/モルの範囲、極めて特に好ましくは約200000〜約1000000g/モルの範囲にあり得る。M
Wの測定は、例えば、ポリスチレンを内部標準として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いることにより当業者に公知の標準的技術により実施することができる。
【0053】
混合物は、少なくとも1つのポリマー、デンドリマー又はオリゴマー成分を含む混合物であり得る。
【0054】
ホスト又はマトリックス材料という用語は、エミッタとしてより大きいエネルギーギャップを有し、電子又は正孔輸送特性又は両方を有する材料を意味する。一重項OLEDの場合、エネルギー輸送を保証するためにエミッタの吸収スペクトルがホストの光ルミネッセンススペクトルと本質的に重複することが極めて望ましい。本発明によるQD−LECは、少なくとも1種の小分子ホストを含み得る。原理上、あらゆる小分子ホスト又はマトリックス材料を本発明により用いることができる。
【0055】
エミッタという用語は、励起子エネルギーを受けたときに光学的又は電子的に放射崩壊を受けて光を放射する材料を意味する。主として、2つのクラスのエミッタ、すなわち蛍光エミッタ及びリン光エミッタが存在する。蛍光エミッタという用語は、励起一重項状態からその基底状態への放射遷移を受ける材料又は化合物に関する。したがって、蛍光エミッタは、一重項エミッタとも呼ばれることがある。リン光エミッタという用語は、遷移金属を含むルミネッセンス材料又は化合物(希土類金属、ランタニド及びアクチニドも含む)に関する。リン光エミッタは、主として、スピン禁制遷移、例えば、励起三重項及び/又は五重項状態からの遷移が起こることにより光を放射する。しかし、リン光エミッタにより放射される光の一部は、一重項状態からの発光遷移によっても引き起こされ得る。
【0056】
本明細書で用いるドーパントという用語は、エミッタ又はエミッタ材料という用語についても用いる。原理上、あらゆる小分子発光化合物を本発明により用いることができる。
【0057】
本発明によるQD−LECは、正孔輸送材料(HTM)から選択される少なくとも1種の小有機機能材料を含み得る。HTMは、正孔注入材料又はアノードから注入される正孔(すなわち、陽電荷)を輸送することができる材料又はユニットであることを特徴とする。
【0058】
本発明によるQD−LECは、4つ、好ましくは3つ、特に好ましくは2つ、極めて特に好ましくは1つのHTM(複数可)を含む。1つのHTMを含むQD−LECが好ましい。
【0059】
本発明によるQD−LECは、好ましくはそれぞれ正孔輸送層の全量に対して少なくとも0.1重量%、特に好ましくは少なくとも2重量%、極めて特に好ましくは少なくとも10重量%の濃度でHTM(複数可)を含む。
【0060】
本発明によるQD−LECは、正孔注入材料(HIM)から選択される少なくとも1種の小有機機能材料を含み得る。HIMは、アノードから注入される正孔(すなわち、陽電荷)を促進することができる材料又はユニットを意味する。
【0061】
本発明によるQD−LECは、4つ、好ましくは3つ、特に好ましくは2つ、極めて特に好ましくは1つのHIM(複数可)を含む。1つのHIMを含むQD−LECが好ましい。
【0062】
本発明によるQD−LECは、好ましくはそれぞれ正孔注入層の全量に対して少なくとも0.1重量%、特に好ましくは少なくとも0.5重量%、極めて特に好ましくは少なくとも3重量%の濃度でHIM(複数可)を含む。
【0063】
本発明によるQD−LECは、電子輸送材料(ETM)から選択される少なくとも1種の小有機機能材料を含み得る。ETMは、EIM又はカソードから注入される電子(すなわち、負電荷)を輸送することができる材料を意味する。
【0064】
本発明によるQD−LECは、4つ、好ましくは3つ、特に好ましくは2つ、極めて特に好ましくは1つのETM(複数可)を含む。1つのETMを含むQD−LECが好ましい。
【0065】
本発明によるQD−LECは、好ましくはそれぞれ電子輸送層の全量に対して少なくとも0.1重量%、特に好ましくは少なくとも2重量%、極めて特に好ましくは少なくとも10重量%の濃度でETM(複数可)を含む。
【0066】
本発明によるQD−LECは、電子注入材料(EIM)から選択される少なくとも1種の小有機機能材料を含み得る。EIMは、カソードから有機層に注入される電子(すなわち、負電荷)を促進することができる材料を意味する。
【0067】
本発明によるQD−LECは、4つ、好ましくは3つ、特に好ましくは2つ、極めて特に好ましくは1つのEIM(複数可)を含む。1つのEIMを含むQD−LECが好ましい。
【0068】
本発明によるQD−LECは、好ましくはそれぞれ電子注入層の全量に対して少なくとも0.1重量%、特に好ましくは少なくとも0.5重量%、極めて特に好ましくは少なくとも3重量%の濃度でEIM(複数可)を含む。
【0069】
原理上、当業者に公知のあらゆる小分子EIMを本発明により用いることができる。本明細書における他所で述べたEIMに加えて、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、ヘテロ環式有機化合物、フルオレノン、フルオレニリデンメタン、ペリレンテトラカルボン酸、アントラキノンジメタン、ジフェノキノン、アントロン、アントラキノンジエチレンジアミン、それらの異性体及び誘導体から選択される少なくとも1つの有機化合物を含む適切なEIMを本発明により用いることができる。
【0070】
例えば、Alq
3及びGaq
3などの8−ヒドロキシキノリンの金属錯体は、EIMとして用いることができる。カソードとの界面における例えば、Li、Cs、Ca又はMgなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属によるドーピングの減少は、有利である。Csを含む組合せ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb又はCs、NaとKが好ましい、
例えば、1,10−フェナントロリン誘導体、ベンゾイミダゾール、チオピランジオキシド、オキサゾール、トリアゾール、イミダゾール又はオキサジアゾールなどのヘテロ環式有機化合物は、同様に適している。窒素を含有する適切な五員環の例は、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール及び米国特許出願公開第2008/0102311A1号に開示されている化合物である。
【0071】
好ましいEIMは、置換されていても又は無置換であってもよい式(1)〜(3)を有する化合物から選択される。
【化1】
【0072】
フルオレノン、フルオレニリデンメタン、ペリレンテトラカルボン酸、アントラキノンジメタン、ジフェノキノン、アントロン及びアントラキノンジエチレンジアミンなどの有機化合物、例えば、以下も用いることができる。
【化2】
【0073】
原理上、当業者に公知のあらゆるETMを本発明により用いることができる。本明細書における他所で述べたETMに加えて、適切なETMは、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンゾアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンゾイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシド、フェナジン、フェナントロリン、トリアリールボラン、それらの異性体及び誘導体からなる群から選択される。
【0074】
さらなる適切なETMは、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンゾアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンゾイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシド、フェナジン、フェナントロリン及びトリアリールボランから選択される。
【0075】
電子輸送層用のさらなる適切なETMは、8ヒドロキシキノリンの金属キレート(例えば、Liq、Alq
3、Gaq
3、Mgq
2、Znq
2、Inq
3、Zrq
4)、Balq、4−アザフェナントレン−5−オール/Be錯体(米国特許第5529853A号;例えば、式(6))、ブタジエン誘導体(米国特許第4356429号)、ヘテロ環式蛍光増白剤(米国特許第4539507号)、例えば、1,3,5−トリス(2−N−フェニルベンゾイミダゾリル)ベンゼン(TPBI)(米国特許第5766779号、式(7))などのベンザゾール、1,3,5−トリアジン、ピレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、スピロビフルオレン、デンドリマー、テトラセン、例えば、ルブレン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体(特願2003/11587、特願2004/311184、特願2001/267080、国際公開第2002/043449号)、シラシルシクロペンタジエン誘導体(欧州特許第1480280号、欧州特許第1478032号、欧州特許第1469533号)、ピリジン誘導体(特願2004/200162Kodak)、フェナントロリン、例えば、BCP及びBphen、またビフェニル若しくは他の芳香族基を介して結合した多くのフェナントロリン(米国特許出願公開第2007/0252517号A1)又はアントラセンに結合したフェナントロリン(米国特許出願公開第2007/0122656号A1、例えば、式(8)及び(9))、1,3,4−オキサジアゾール、例えば、式(10)、トリアゾール、例えば、式(11)、トリアリールボラン、例えばまたSiを含む、ベンゾイミダゾール誘導体及び他のNヘテロ環式化合物(米国特許出願公開第2007/0273272号A1参照)、シラシクロペンタジエン誘導体、ボラン誘導体、Gaオキシノイド錯体である。
【0076】
2,9,10置換アントラセン(1−又は2−ナフチル及び4−又は3−ビフェニルを含む)又は2つのアントラセン単位を含有する分子(米国特許出願公開第2008/0193796号A1)が好ましい。
【化3】
【0077】
同様に例えば、式(12)〜(14)の化合物などの、並びに例えば、米国特許第6878469号B2、米国特許出願公開第2006/147747号A及び欧州特許出願公開第1551206号A1に開示されているようなアントラセン−ベンゾイミダゾール誘導体が好ましい。
【化4】
【0078】
本明細書における他所で述べたEIMに加えて、適切なEIMは、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3615404号)、アリールアミン誘導体(米国特許第3567450号)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3526501号)、スチリルアントラセン誘導体(日本特許昭和54年(1979年)第110837号)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3717462号)、アシルヒドラゾン、スチルベン誘導体(日本特許昭和61年(1986年)第210363号)、シラザン誘導体(米国特許第4950950号)、ポリシラン化合物(日本特許平成2年(1990年)第204996号)、PVK、ポルフィリン化合物(日本特許昭和63年(1988年)第2956965号、米国特許第4720432号)、芳香族第三級アミン及びスチリルアミン(米国特許第4127412号)、ベンジジン型のトリフェニルアミン、スチリルアミン型のトリフェニルアミン並びにジアミン型のトリフェニルアミンである。フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体と同様に、アリールアミンデンドリマーも用いることができ(日本特許平成8年(1996年)第193191号)、又はブタジエン誘導体も適している。
【0079】
好ましくは、HIMは、アミン、トリアリールアミン、チオフェン、カルバゾール、フタロシアニン、ポルフィリン及びそれらの誘導体を含む単量体の有機化合物から選択される。
【0080】
第三級芳香族アミン(米国特許出願公開第2008/0102311号A1)、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−トリル)ベンジジン(=4,4’−ビス[N−3−メチルフェニル]−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)(米国特許第5061569号)、N,N’−ビス(N,N’−ジフェニル−4−アミノフェニル)−N,N−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル(TPD232)及び4,4’,4”−トリス[3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)(日本特許平成4年(1992年)第308688号)又はフタロシアニン誘導体(例えば、H2Pc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、Cl2SiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc)が特に好ましい。
【0081】
式(15)(TPD232)、(16)、(17)及び(18)の以下のトリアリールアミン化合物(これらは、置換されていてもよい)並びに米国特許第7399537号B2、米国特許出願公開第2006/0061265号A1、欧州特許出願公開第1661888号A1及び特開08292586Aに開示されているさらなる化合物が特に好ましい。正孔注入材料として適するさらなる化合物は、欧州特許出願公開第08911221号A1及び欧州特許出願公開第1029909号A1に開示されている。一般的な正孔注入層は、米国特許出願公開第2004/0174116号に記載されている。
【化5】
【化6】
【0082】
原理上、当業者に公知のあらゆるHTMを本発明による製剤に用いることができる。本明細書における他所で述べたHTMに加えて、HTMは、好ましくはアミン、トリアリールアミン、チオフェン、カルバゾール、フタロシアニン、ポルフィリン、それらの異性体及び誘導体から選択される。HTMは、特に好ましくはアミン、トリアリールアミン、チオフェン、カルバゾール、フタロシアニン及びポルフィリンから選択される。
【0083】
正孔輸送用の適切な小分子材料は、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3615404号)、アリールアミン誘導体(米国特許第3567450号)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3526501号)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234)、多環式芳香族化合物(欧州特許第1009041号)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許第3615402号)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3717462号)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363)、シラザン誘導体(米国特許第4950950号)、ポリシラン(特開平2−204996)、アニリンコポリマー(特開平2−282263)、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン、PVK、ポリピロール、ポリアニリン及びさらなるコポリマー、ポルフィリン化合物(特開昭63−2956965)、芳香族ジメチリデン型化合物、例えば、CDBP、CBP、mCPなどのカルバゾール化合物、芳香族第三級アミン及びスチリルアミン化合物(米国特許第4127412号)並びに単量体トリアリールアミン(米国特許第3180730号)である。
【0084】
例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)(米国特許第5061569号)又はMTDATA(特開平4−308688)、N,N,N’,N’ −テトラ(4−ビフェニル)ジアミノビフェニレン(TBDB)、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC)、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−3−フェニルプロパン(TAPPP)、1,4−ビス[2−[4−[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB)、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル(TTB)、TPD、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’’’−ジアミノ−1,1’:4’,1”:4”,1’’’−クアテルフェニルなどの少なくとも2つの第三級アミン単位を含有する芳香族第三級アミン、同様に、例えば、4(9H−カルバゾール−9−イル)−N,N−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ベンゼンアミン(TCTA)などのカルバゾール単位を含有する第三級アミンが好ましい。同様に米国特許出願公開第2007/0092755号A1によるヘキサアザトリフェニレン化合物が好ましい。
【0085】
式(19)〜(24)の以下のトリアリールアミン化合物(これらは、置換されていてもよく、欧州特許出願公開第1162193号A1、欧州特許出願公開第650955号A1、Synth. Metals、1997年、91巻(1〜3号)、209頁、独国特許出願公開第19646119号A1、国際公開第2006/122630号A1、欧州特許出願公開第1860097号A1、欧州特許出願公開第1834945号A1、特開08053397A、米国特許第6251531号B1及び国際公開第2009/041635号に開示されている)が特に好ましい。
【化7】
【化8】
【0086】
蛍光エミッタに適する好ましいホスト材料は、アントラセン、ベンゾアントラセン、インデノフルオレン、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、デヒドロフェナントレン、チオフェン、トリアジン、イミダゾール及びそれらの誘導体から選択される。
【0087】
蛍光エミッタに適する好ましいホスト材料は、アントラセン、ベンゾアントラセン、インデノフルオレン、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、デヒドロフェナントレン、チオフェン、トリアジン及びイミダゾールから選択される。
【0088】
本発明によるQD−LECは、4つ、好ましくは3つ、特に好ましくは2つ、極めて特に好ましくは1つのホスト材料(複数可)を含む。1つのホスト材料を含むQD−LECが好ましい。QD−LECが1以上のホスト材料を含む場合、追加のホスト材料についてコホストという用語がしばしば用いられる。
【0089】
蛍光エミッタの特に好ましいホスト材料は、オリゴアリーレン(例えば、欧州特許第676461号による2,2’,7,7’−テトラフェニルスピロビフルオレン又はジナフチルアントラセン)、特に、例えば、フェナントレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレン、スピロフルオレン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、デカシクレン、ルブレン、オリゴアリーレンビニレン(例えば、欧州特許第676461号による4,4’−ビス(2,2−ジフェニルエテニル)−1,1’−ビフェニル(DPVBi)又は4,4−ビス−2,2−ジフェニルビニル−1,1−スピロビフェニル(スピロDPVBi))などの縮合芳香族基を含有するオリゴアリーレン、多脚型金属錯体(例えば、国際公開第2004/081017号)、特に、8ヒドロキシキノリンの金属錯体、例えば、アルミニウム(III)トリス(8−ヒドロキシキノリン)(アルミニウムキノレート、Alq
3)又はビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノリノラト)アルミニウム、またイミダゾールキレート(米国特許出願公開第2007/0092753号A1)並びにキノリン−金属錯体、アミノキノリン−金属錯体、ベンゾキノリン−金属錯体、正孔伝導性化合物(例えば、国際公開第2004/058911号による)、電子伝導性化合物、特に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(例えば、国際公開第2005/084081号及び国際公開第2005/084082号による)、アトロプ異性体(例えば、国際公開第2006/048268号による)、ボロン酸誘導体(例えば、国際公開第2006/117052号による)又はベンゾアントラセン(例えば、独国特許第102007024850号)のクラスから選択される。特に好ましいホスト材料は、ナフタレン、アントラセン、ベンゾアントラセン及び/又はピレンを含有するオリゴアリーレン、又はこれらの化合物のアトロプ異性体、ケトン、ホスフィンオキシド並びにスルホキシドのクラスから選択される。極めて特に好ましいホスト材料は、アントラセン、ベンゾアントラセン及び/又はピレンを含有するオリゴアリーレン、又はこれらの化合物のアトロプ異性体のクラスから選択される。本発明の目的のために、オリゴアリーレンは、少なくとも3つのアリール又はアリーレン基が互いに結合している化合物を意味すると解釈するものとする。
【0090】
蛍光エミッタのさらなる好ましいホスト材料は、特に、式(25)の化合物から選択される。
【0091】
Ar
4−(Ar
5)
p−Ar
6 式(25)
式中、
Ar
4、Ar
5、Ar
6は、出現する毎に、同じであるか又は異なり、5〜30個の芳香族環原子を有するアリール又はヘテロアリール基(これらは、1以上のラジカルにより置換されていてもよい)であり、
pは、1、2又は3であり、
Ar
4、Ar
5及びAr
6におけるπ電子の合計は、p=1である場合に少なくとも30であり、p=2である場合に少なくとも36であり、p=3である場合に少なくとも42である。
【0092】
式(25)のホスト材料において、基Ar
5がアントラセン(これは、1以上のラジカルR
1により置換されていてもよい)を表し、基Ar
4及びAr
6が9及び10位で結合していることが特に好ましい。極めて特に好ましくは、基Ar
4及び/又はAr
6の少なくとも1つは、1−若しくは2−ナフチル、2−、3−若しくは9−フェナントレニル又は2−、3−、4−、5−、6−若しくは7−ベンゾアントラセニル(これらのそれぞれは、1以上のラジカルR
1により置換されていてもよい)から選択される縮合アリール基である。アントラセンベースの化合物は、米国特許出願公開第2007/0092753号A1及び米国特許出願公開第2007/0252517号A1に記載されており、例えば、2−(4−メチルフェニル)−9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン、9−(2−ナフチル)−10−(1,1’−ビフェニル)アントラセン及び9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン及び1,4−ビス(9’−エチニルアントラセニル)ベンゼンである。また、2つのアントラセン単位を含有するホスト材料(米国特許出願公開第2008/0193796号A1)、例えば、10,10’−ビス[1,1’,4’,1”]テルフェニル−2−イル−9,9’−ビスアントラセニルが好ましい。
【0093】
さらなる好ましいホスト材料は、アリールアミン、スチリルアミン、フルオレセイン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、シクロペンタジエン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾオキサゾリン、オキサゾン、ピリジン、ピラジン、イミン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール(米国特許出願公開第2007/0092753号A1)の誘導体、例えば、2,2’,2”−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール]、アルダジン、スチルベン、スチリルアリーレン誘導体、例えば、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセン及びジスチリルアリーレン誘導体(米国特許第5121029号)、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ジケトピロロピロール、ポリメチン、メロシアニン、アクリドン、キナクリドン、ケイ皮酸エステル並びに蛍光染料である。
【0094】
アリールアミン及びスチリルアミンの誘導体、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)が特に好ましい。
【0095】
蛍光エミッタのホストとしてオリゴアリーレンを含む好ましい化合物は、例えば、米国特許出願公開第2003/0027016号A1、米国特許第7326371号B2、米国特許出願公開第2006/043858号A、米国特許第7326371号B2、米国特許出願公開第2003/0027016号A1、国際公開第2007/114358号、国際公開第2008/145239号、日本国特許第3148176号B2、欧州特許第1009044号、米国特許出願公開第2004/018383号、国際公開第2005/061656号A1、欧州特許第0681019号B1、国際公開第2004/013073号A1、米国特許第5077142号、国際公開第2007/065678号及び米国特許出願公開第2007/0205412号A1に開示されている化合物である。特に好ましいオリゴアリーレンベースの化合物は、式(26)〜(32)を有する化合物である。
【化9】
【化10】
【0096】
蛍光エミッタのさらなるホスト材料は、スピロビフルオレン及びその誘導体、例えば、欧州特許第0676461号に開示されているスピロ−DPVBi及び米国特許第6562485号に開示されているインデノフルオレンから選択することができる。
【0097】
リン光エミッタの好ましいホスト材料、すなわち、マトリックス材料は、ケトン、カルバゾール、インドロカルバゾール、トリアリールアミン、インデノフルオレン、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナトレン、デヒドロフェナントレン、チオフェン、トリアジン、イミダゾール及びそれらの誘導体から選択される。いくつかの好ましい誘導体は、下文でより詳細に述べる。
【0098】
リン光エミッタを用いる場合、ホスト材料は、蛍光エミッタに用いられるホスト材料と比べてかなり異なる特性を満たさなければならない。リン光エミッタに用いられるホスト材料は、エミッタの三重項レベルと比較してエネルギーが高い三重項レベルを有することが要求される。ホスト材料は、電子又は正孔又はそれらの両方を輸送することができる。さらに、エミッタは、一重項・三重項混合を十分に促進するために大きいスピン軌道結合定数を有すると推定される。これは、金属錯体を用いることにより可能にすることができる。
【0099】
好ましいマトリックス材料は、N,N−ビスカルバゾリルビフェニル(CBP)、カルバゾール誘導体(例えば、国際公開第2005/039246号、米国特許出願公開第2005/0069729号、特開2004/288381、欧州特許第1205527号又は独国特許第102007002714号による)、アザカルバゾール(例えば、欧州特許第1617710号、欧州特許第1617711号、欧州特許第1731584号、特開2005/347160による)、ケトン(例えば、国際公開第2004/093207号による)、ホスフィンオキシド、スルホキシド及びスルホン(例えば、国際公開第2005/003253号による)、オリゴフェニレン、芳香族アミン(例えば、米国特許出願公開第2005/0069729号による)、双極性マトリックス材料(例えば、国際公開第2007/137725号による)、シラン(例えば、国際公開第2005/111172号による)、9,9−ジアリールフルオレン誘導体(例えば、独国特許第102008017591号による)、アザボロール又はボロン酸エステル(例えば、国際公開第2006/117052号による)、トリアゾール誘導体、オキサゾール及びオキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フェニレンジアミン誘導体、第三級芳香族アミン、スチリルアミン、インドール、アントロン誘導体、フルオレノン誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、カルボジイミド誘導体、ジフェニルキノン誘導体、フタロシアニン誘導体、例えば、Alq
3などの8ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体(8ヒドロキシキノリン錯体は、トリアリールアミノフェノール配位子も含有し得る)(米国特許出願公開第2007/0134514号A1)、配位子としての金属フタロシアニン、ベンゾオキサゾール又はベンゾチアゾールを含む様々な金属錯体−ポリシラン化合物、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)などの正孔伝導性ポリマー、アニリンコポリマー、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、である。
【0100】
さらに特に好ましいマトリックス材料は、インドロカルバゾール及びそれらの誘導体(例えば、式(33)〜(39))(例えば、独国特許第1020090231552.2号、欧州特許第0906947号B1、欧州特許第0908787号B1、欧州特許第906948号B1、国際公開第2008/056746号A1、国際公開第2007/063754号A1、国際公開第2008/146839号A1及び国際公開第2008/149691号A1に開示されている)を含む化合物から選択される。
【化11】
【0101】
好ましいカルバゾール誘導体の例は、1,3−N,N−ジカルバゾールベンゼン(=9,9’−(1,3−フェニレン)ビス−9H−カルバゾール)(mCP)、9,9’−(2,2’−ジメチル[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル)ビス−9H−カルバゾール(CDBP)、1,3−ビス(N,N’−ジカルバゾール)ベンゼン(=1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン)、PVK(ポリビニルカルバゾール)、3,5−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル及び式(40)〜(44)の化合物である。
【化12】
【0102】
好ましいSiテトラアリール化合物は、例えば、(米国特許出願公開第2004/0209115号、米国特許出願公開第2004/0209116号、米国特許出願公開第2007/0087219号A1、米国特許出願公開第2007/0087219号A1)式(45)〜(59)の化合物である。
【化13】
【0103】
リン光ドーパントの特に好ましいマトリックスは、式(51)の化合物(欧州特許第652273号B1)である。
【化14】
【0104】
リン光ドーパントのさらに特に好ましいマトリックス材料は、一般式(52)の化合物(欧州特許第1923448号A1)から選択される。
【0105】
[M(L)
2]
n 式(52)
式中、M、L及びnは、参考文献におけるように定義される。好ましくは、MはZnであり、Lはキノリネートであり、nは2、3又は4である。極めて特に好ましいのは、[Znq
2]
2、[Znq
2]
3及び[Znq
2]
4である。
【0106】
金属オキシノイド錯体から選択されるコホストが好ましい(それによって、リチウムキノレート(Liq)又はAlq
3が特に好ましい)。
【0107】
好ましい実施形態において、前記QD−LEDは、少なくとも1種の小分子有機蛍光エミッタを含む。したがって、本発明はまた、少なくとも1種の小分子有機機能材料が蛍光エミッタから選択されることを特徴とする前記QD−LECに関する。
【0108】
原理上、当業者に公知のあらゆる蛍光エミッタを本発明の目的のために用いることができる。一般的に、エミッタ化合物は、拡張共役π電子系を有する傾向がある。多くの例、例えば、日本特許第2913116号B及び国際公開第2001/021729号A1に開示されているようなスチリルアミン誘導体並びに国際公開第2008/006449号及び国際公開第2007/140847号に開示されているようなインデノフルオレン誘導体が公表された。
【0109】
青色蛍光エミッタは、好ましくは、例えば、9,10−ジ(2−ナフチルアントラセン)及び他のアントラセン誘導体などのポリ芳香族化合物、テトラセン、キサンテン、ペリレンの誘導体(例えば、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレンなど)、フェニレン、例えば、4,4’−(ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル、フルオレン、アリールピレン(米国特許出願公開第2006/0222886号)、アリーレンビニレン(米国特許第5121029号、米国特許第5130603号)、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体(例えば、N,N’−ジメチルキナクリドン(DMQA)など)、ジシアノメチルレンピラン(例えば、4(ジシアノエチレン)−6−(4−ジメチルアミノスチリル−2−メチル)−4H−ピラン(DCM)など)、チオピラン、ポリメチン、ピリリウム及びチアピリリウム塩、ペリフランテン、インデノペリレン、ビス(アジニル)イミン−ボロン化合物(米国特許出願公開第2007/0092753号A1)、ビス(アジニル)メテン化合物及びカルボスチリル化合物である。
【0110】
さらなる好ましい青色蛍光エミッタは、C. H. Chenら、「Recent developments in organic electroluminescent materials」、Macromol. Symp.、125巻、(1997年)、1〜48頁及び「Recent progress of molecular organic electroluminescent materials and devices」、Mat. Sci. and Eng. R、39巻、(2002年)、143〜222頁に記載されている。
【0111】
本発明による好ましい蛍光ドーパントは、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテル及びアリールアミンのクラスから選択される。
【0112】
モノスチリルアミンは、1つの置換又は無置換スチリル基及び少なくとも1つの好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味すると解釈される。ジスチリルアミンは、2つの置換又は無置換スチリル基及び少なくとも1つの好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味すると解釈される。トリスチリルアミンは、3つの置換又は無置換スチリル基及び少なくとも1つの好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味すると解釈される。テトラスチリルアミンは、4つの置換又は無置換スチリル基及び少なくとも1つの好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味すると解釈される。スチリル基は、特に好ましくはスチルベン(これはまた、さらに置換されていてもよい)である。対応するホスフィン及びエーテルは、アミンと同様に定義される。本発明の目的のために、アリールアミン又は芳香族アミンは、窒素に直接結合した3つの置換又は無置換芳香族又はヘテロ芳香族環系を含有する化合物を意味すると解釈される。これらの芳香族又はヘテロ芳香族環系の少なくとも1つは、好ましくは少なくとも14個の芳香族環原子を有する好ましくは縮合環系である。その好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミン及び芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、1つのジアリールアミノ基がアントラセン基に好ましくは9位に直接結合している化合物を意味すると解釈される。芳香族アントラセンジアミンは、2つのジアリールアミノ基がアントラセン基に好ましくは9,10位に直接結合している化合物を意味すると解釈される。芳香族ピレンアミン、ピレンジアミン、クリセンアミン及びクリセンジアミンは、それと同様に定義される(ここで、ピレン上のジアリールアミノ基は、好ましくは1位又は1,6位に結合している)。
【0113】
さらなる好ましい蛍光ドーパントは、例えば、国際公開第2006/122630号によるインデノフルオレンアミン及びインデノフルオレンジアミン、例えば、国際公開第2008/006449号によるベンゾインデノフルオレンアミン及びベンゾインデノフルオレンジアミン並びに、例えば、国際公開第2007/140847号によるジベンゾインデノフルオレンアミン及びジベンゾインデノフルオレンジアミンである。
【0114】
スチリルアミンのクラスのドーパントの例は、置換若しくは無置換トリスチルベンアミン又は国際公開第2006/000388号、国際公開第2006/058737号、国際公開第2006/000389号、国際公開第2007/065549号及び国際公開第2007/115610号に記載されているドーパントである。さらなるスチリルアミンは、米国特許出願公開第2007/0122656号A1に見いだされる。
【0115】
特に好ましいスチリルアミンドーパント及びトリアリールアミンドーパントは、式(53)〜(58)の化合物並びに米国特許第7250532号B2、独国特許第102005058557号A1、中国特許第1583691号A、特開08053397A、米国特許第6251531号B1及び米国特許出願公開第2006/210830号Aに開示されている通りである。
【化15】
【0116】
さらなる好ましい蛍光ドーパントは、欧州特許第1957606号A1及び米国特許出願公開第2008/0113101号A1に開示されているようなトリアリールアミンの群から選択される。
【0117】
さらなる好ましい蛍光ドーパントは、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、ペリフランテン、インデノペリレン、フェナントレン、ペリレン(米国特許出願公開第2007/0252517号A1)、ピレン、クリセン、デカシクレン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、フルオレン、スピロフルオレン、ルブレン、クマリン(米国特許第4769292号、米国特許第6020078号、米国特許出願公開第2007/0252517号A1)、ピラン、オキサゾン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ピラジン、ケイ皮酸エステル、ジケトピロロピロール、アクリドン及びキナクリドン(米国特許出願公開第2007/0252517号A1)の誘導体から選択される。
【0118】
アントラセン化合物のうち、例えば、9,10−ジフェニルアントラセン及び9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセンなどの9,10−置換アントラセンが好ましい。1,4−ビス(9’−エチニルアントラセニル)ベンゼンも好ましいドーパントである。
【0119】
本発明によるQD−LECは、4つ、好ましくは3つ、特に好ましくは2つ、極めて特に好ましくは蛍光エミッタ(複数可)を含む。1つのEIMを含むQD−LECが好ましい。本発明によるQD−LECは、発光層の全量に対して好ましくは少なくとも0.1重量%、特に好ましくは少なくとも0.5重量%、極めて特に好ましくは少なくとも3重量%の濃度の蛍光エミッタを含む。
【0120】
好ましい実施形態において、前記QD−LECは、少なくとも1種の小分子有機リン光エミッタを含む。したがって、本発明はまた、少なくとも1種の小分子有機機能材料がリン光エミッタから選択されることを特徴とする前記QD−LECに関する。
【0121】
原理上、当業者に公知のあらゆるリン光エミッタを本発明の目的のために用いることができる。
【0122】
少なくとも1種の小分子有機機能材料がリン光エミッタから選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のQD−LEC。
【0123】
リン光エミッタの例は、国際公開第00/70655号、国際公開第01/41512号、国際公開第02/02714号、国際公開第02/15645号、欧州特許第1191613号、欧州特許第1191612号、欧州特許第1191614号及び国際公開第2005/033244号に開示されている。一般的に、従来技術により使用されている、及び有機エレクトロルミネッセンスの分野の技術者に公知であるすべてのリン光錯体は、適しており、当業者は、さらなるリン光錯体を発明ステップを用いずに使用することができる。
【0124】
リン光エミッタは、好ましくは式M(L)
Zを有する金属錯体であり得、式中、Mは、金属原子であり、Lは、互いに独立に出現する毎に1つ、2つ以上の位置を介してMと結合又は配位結合している有機配位子であり、zは、1以上、好ましくは1、2、3、4、5又は6であり、式中、場合によって、これらの基は、1つ以上、好ましくは1つ、2つ又は3つの位置を介して、好ましくは配位子Lを介してポリマーに結合している。
【0125】
Mは、特に、遷移金属から選択される、好ましくはVII族の又はランタノイド又はアクチニドの遷移金属から選択される、特に好ましくはRh、Os、Ir、Pt、Pd、Au、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Re、Cu、Zn、W、Mo、Pd、Ag又はRuから選択される、極めて特に好ましくはOs、Ir、Ru、Rh、Re、Pd又はPtから選択される金属原子である。Mは、Znでもあり得る。
【0126】
好ましい配位子は、2フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2(2−チエニル)ピリジン誘導体、2(1−ナフチル)ピリジン誘導体又は2フェニルキノリン誘導体である。すべてのこれらの化合物は、例えば、青色のためのフルオロ又はトリフルオロメチル置換基により置換されていてもよい。補助配位子は、好ましくはアセチルアセトネート又はピクリン酸である。
【0127】
特に、米国特許出願公開第2007/0087219号A1に開示されている式(59)の四座配位子を有するPt又はPdの錯体(式中、R
1〜R
14及びZ
1〜Z
5は、参考文献に定義されている通りである)、拡大環系を有するPtポルフィリン錯体(米国特許出願公開第2009/0061681号A1)及びIr錯体が適している(例えば、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン−Pt(II)、テトラフェニル−Pt(II)−テトラベンゾポルフィリン(米国特許出願公開第2009/0061681号A1)、シス−ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)Pt(II)、シス−ビス(2−(2’−チエニル)ピリジナト−N,C3’)Pt(II)、シス−ビス(2−(2’−チエニル)キノリナト−N,C5’)Pt(II)、(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’)Pt(II)アセチルアセトネート又はトリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)Ir(III)(Ir(ppy)
3、緑色)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2)Ir(III)アセチルアセトネート(Ir(ppy)
2アセチルアセトネート、緑色、米国特許出願公開第2001/0053462号A1、Baldo、Thompsonら、Nature、403巻、(2000年)、750〜753頁)、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)、ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C3’)イリジウム(III)アセチルアセトネート、ビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)ピコリネート(Firpic、青色)、ビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’)Ir(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート、トリス(2−(ビフェニル−3−イル)−4−tert−ブチルピリジン)イリジウム(III)、(ppz)
2Ir(5phdpym)(米国特許出願公開第2009/0061681号A1)、(45ooppz)
2Ir(5phdpym)(米国特許出願公開第2009/0061681号A1)、例えば、イリジウム(III)ビス(2−フェニルキノリル−N,C2’)アセチルアセトネート(PQIr)、トリス(2−フェニルイソキノリナト−N,C)Ir(III)(赤色)、ビス(2−(2’−ベンゾ[4,5−a]チエニル)ピリジナト−N,C3)Irアセチルアセトネート([Btp2Ir(acac)]、赤色(Adachiら、Appl. Phys. Lett.、78巻(2001年)、1622〜1624頁)などの2フェニルピリジン−Ir錯体の誘導体)。
【化16】
【0128】
例えば、Tb
3+及びEu
3+などの三価ランタニドの錯体(J. Kidoら、Appl. Phys. Lett.、65巻(1994年)、2124頁、Kidoら、Chem. Lett.、657頁、1990年、米国特許出願公開第2007/0252517号A1)又はPt(II)、Ir(I)、Rh(I)とマレオニトリルジチオレートとのリン光錯体(Johnsonら、JACS、105巻、1983年、1795頁)、Re(I)トリカルボニルジイミン錯体(Wrighton、JACS、96巻、1974年、とりわけ998頁)、シアノ配位子及びビピリジル又はフェナントロリン配位子を有するOs(II)錯体(Maら、Synth. Metals、94巻、1998年、245頁)も適している。
【0129】
三座配位子を有するさらなるリン光エミッタは、米国特許第6824895号及び米国特許第7029766号に記載されている。赤色発光リン光錯体は、米国特許第6835469号及び米国特許第6830828号に記載されている。
【0130】
特に好ましいリン光ドーパントは、式(60)を有する化合物及び例えば、米国特許出願公開第2001/0053462号A1に開示されているさらなる化合物である。
【0131】
特に好ましいリン光ドーパントは、式(61)を有する化合物及び例えば、国際公開第2007/095118号A1に開示されているさらなる化合物である。
【化17】
【0132】
さらなる誘導体は、米国特許第7378162号B2、米国特許第6835469号B2及び特開2003/253145Aに記載されている。
【0133】
有機金属錯体から選択される有機エレクトロルミネッセンス化合物が特に好ましい。
【0134】
エレクトロルミネッセンス化合物という用語は、電圧を印加することによりエネルギーを受けたときに、放射崩壊を受けて光を放射する物質を意味する。
【0135】
本明細書における他所で述べた金属錯体に加えて、本発明による適切な金属錯体は、遷移金属から選択することができ、希土類元素、ランタニド及びアクチニドも本発明の対象である。好ましくは、金属は、Ir、Ru、Os、Eu、Au、Pt、Cu、Zn、Mo、W、Rh、Pd又はAgから選択される。
【0136】
好ましい実施形態において、小有機機能材料は、紫外(UV)範囲で放射する。適切なUVエミッタ材料は、最高占有分子軌道(HOMO)と最低非占有分子軌道(LUMO)との間の広いギャップを含み、小π共役系を有する有機化合物から選択することができる。そのようなUVエミッタは、好ましくは、カルバゾール、インデノカルバゾール、インドロカルバゾール、シラン、フルオレン、トリアジン、チオフェン、ジベンゾチオフェン、フラン、ジベンゾフラン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、アミン、トリアリールアミン及びそれらの誘導体を含む小分子化合物から選択することができる。
【0137】
本発明によるQD−LECは、4つ、好ましくは3つ、特に好ましくは2つ、極めて特に好ましくは蛍光エミッタを含む。1つのEIMを含むQD−LECが好ましい。
【0138】
本発明によるQD−LECは、発光層の全量に対して好ましくは少なくとも1重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%、極めて特に好ましくは少なくとも10重量%の濃度の蛍光エミッタを含む。
【0139】
本発明によるQD−LECは、
(1)第1の電極と、
(2)第2の電極と、
(3)第1の電極と第2の電極との間に配置された、少なくとも1つの量子ドット、少なくとも1種のイオン化合物及び少なくとも1種の小有機機能材料を含む発光層(EML)とを含む。
【0140】
本出願書における他所で概説したように、QD−LECは、光療法及びPDTにおける適用に特に適している。それらは、構造及び製造に関してかなり簡単であり、これが生産費用を低減する。OLEC、特にQD−LEC(複数可)のさらなる利点は、本発明において既に述べた。OLECは、好ましくは少なくとも2つの電極、特に好ましくは2つの電極、すなわちカソードとアノードを含む。両電極は、EMLを介して接続されている。
【0141】
QD−LECに用いられる電極の好ましい材料は、金属から選択され、特に好ましくはAl、Cu、Au、Ag、Mg、Fe、Co、Ni、Mn、Zn、Cr、V、Pd、Pt、Ga、In及びそれらの合金、伝導性酸化物、例えば、ITO、AZO、ZnO並びにポリ(エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSSH)、ポリアニリン(PANI)などを含む伝導性有機薄膜から選択される。さらなる適切な伝導性ポリマーは、例えば、「Self-doped Conducting Polymers」、John Willey & Sons, Ltd.、2007年におけるMichael S. Freund及びBhavana Deoreにより編集された総説に見いだすことができた。
【0142】
好ましくは、QD−LECは、柔軟性の基材上で調製される。適切な基材は、好ましくはポリマー又はプラスチックに基づくフィルム又はフォイルから選択される。ポリマー又はプラスチックの主な選択基準は、1)衛生的特性及び2)ガラス転移温度である。ポリマーのガラス温度(Tg)は、一般的ハンドブック、例えば、「Polymer Handbook」、J. Brandrup、E. H. Immergut及びE. A. Grulke編、John Willey & Sons, Ltd.、1999年、VI/193〜VI/276に見いだすことができる。好ましくは、ポリマーのTgは、100℃超、特に好ましくは150℃超、極めて特に好ましくは180℃超である。極めて好ましい基材は、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)及びポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)である。
【0143】
酸素及び水分によって引き起こされる分解を避け、またデバイスにおける活性物質、例えば、イオン化合物及び有機エレクトロルミネッセンス化合物が処置する対象と接触することを予防するために、前記デバイスの適切な封入は、治療的処置及び美容的状態への適用の前提条件である。
【0144】
本発明によるデバイスの封入に適する多くの技術が存在する。一般的に、有機発光ダイオード(OLED)、有機太陽電池、有機色素増感太陽電池、有機電界効果トランジスタ(OFET)、薄膜電池、微小電気機械システム(MEMS)及び電子ペーパー用に開発されているすべての封入技術を、本発明によるデバイスを封入するために適用することができる。
【0145】
好ましい実施形態において、本発明のデバイスを薄膜封入を用いて封入する。一般的に、薄膜封入は、無機/有機積み重ねの多交互層からなる(ここで、無機層は、十分なバリア性能を達成するために、有機層は、無機層の不可避の欠陥をなくすために用いる)。無機層に用いる材料は、金属、金属酸化物又は混合酸化物、例えば、Ag、SiO
x、SiN
x、AlO
x、ZrO
x、ZnO
x、HfO
x、TiO
x及びインジウムスズ酸化物などから選択することができる。いくつかの例は、Graff G. L.ら(J. Appl. Phys.、2004年、96巻、1840頁)により報告された真空蒸着アクリレートポリマー/AlO
xの交互多層、Young Gu Leeら(Org. Electron.、2009年、10巻、1352頁及びDig. Tech. Pap.-Soc. Inf. Disp. Int. Symp.、2008年、39巻、2011頁)により報告されたAl
2O
3/ポリ尿素層、Han、 Jin Wooら(Jpn. J. Appl. Phys.、Part 1、2006年、45巻、9203頁)により報告されたPET基材上SiON/SiO
2/パリレン、及びWang Li Duoら(Chin. Phys. Lett.、2005年、22巻、2684頁)により報告されたポリアクリレート(20μm)−Ag(200nm)である。
【0146】
先進的堆積技術、例えば、原子層堆積法(ALD)、プラズマ援用パルスレーザー堆積法(PAPLD)及びプラズマ増殖型化学気相成長法(PECVD)を用いることにより、すべての無機層を用いることができるように無機層における欠陥を著しく減少させることができる(例えば、Chang Chih Yuら(Org. Electron.、2009年、10巻、1300頁)により報告されたALDによるAl
2O
3/HfO
2ナノ積層フィルム及びLi C. Y.ら(IEEE Electron. Compon. Technol. Conf.、2008年、第58次、1819頁)により報告されたSiNx/SiOx層、Shimooka Y.ら(IEEE Electron. Compon. Technol. Conf.、2008年、第58次、824頁)による(PECVD SiO)/ポリベンゾオキサゾール(PBO)、Meyer J.ら(Appl. Phys. Lett.、2009年、94巻、233305/1頁)によるAl
2O
3/ZrO
2のナノ積層交互層及びGorrn Patrickら(J. Phys. Chem.、2009年、113巻、11126頁)により報告されたPAPLDによるAl
2O
3/ZrO
2のナノ積層体及びWeidner W. K.ら(Annu. Tech. Conf. Proc - Soc. Vac. Coaters、2005年、第48次、158頁)により報告されたPECVDによるSiC層、Lifka H.ら(Dig. Tech. Pap.-Soc. Inf. Disp. Int. Symp.、2004年、35巻、1384頁)により報告されたPECVDによる窒化ケイ素−酸化ケイ素−窒化ケイ素酸化ケイ素−窒化ケイ素(NONON)の多層積層体及びPark Sang-Hee Koら(ETRI Journal、2005年、545頁)により報告されたポリエーテルスルホン(PES)/ALD AlO
x)。CVD及びALDによる薄膜封入に関する総説は、Stoldt Conrad Rら(J. Phys. D: Appl. Phys.、2006年、39巻、163頁)により示されている。
【0147】
さらなる単層封入も開発された。単一バリア層の例は、Granstrom J.ら(Appl. Phys. Lett.、2008年、93巻、193304/1頁)により報告されたペルフルオロポリマー(Cytop)(これは、OLED上に容易にスピンコーティングすることができる)及びHuang L. T.ら(Thin Solif Films、2009年、517巻、4207頁)により報告された反応性高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを用いることによるオキシ窒化アルミニウム(AlO
xN
y)からなる単層、Rusu Cristinaら(J. Microelectromech. Syst.、2003年、12巻、816頁)により報告されたPECVDによる単一ポリSiGe層である。
【0148】
封入のための材料及び方法に関するさらなる詳細は、例えば、国際公開第2009/089417号、国際公開第2009/089417号、国際公開第2009/042154号、国際公開第2009/042052号、米国特許出願公開第2009/081356号、米国特許出願公開第2009/079328号、国際公開第2008/140313号、国際公開第2008/012460号、欧州特許第1868256号、韓国特許出願公開第2006/084743号、韓国特許出願公開第2005/023685号、米国特許出願公開第2005/179379号、米国特許出願公開第2005/023974号、韓国特許出願公開第2003/089749号、米国特許出願公開第2004/170927号、米国特許出願公開第2004/024105号、国際公開第2003/070625号及び国際公開第2001/082390号に開示されている。
【0149】
他の好ましい実施形態において、本発明のデバイスは、硬化性樹脂をキャップと一緒に用いることにより封入する(この場合、キャップは、少なくとも発光部を覆い、硬化性樹脂は、基材とキャップとの間に塗布する)。キャップ材料は、プレート又はフォイルの形態の金属及びプラスチック並びにガラスキャップから選択することができる。好ましくは、キャップは、柔軟性であり、好ましくは金属フォイル、プラスチックフォイル又は金属化プラスチックフォイルから選択される。金属は、Al、Cu、Fe、Ag、Au、Niから選択することができ、それによって、Alが特に好ましい。プラスチックの選択基準は、1)衛生面、2)ガラス転移温度(Tg)(これは、十分に高いと推定される)である。ポリマーのTgは、適切なハンドブック、例えば、「Polymer Handbook」、J. Brandrup、E. H. Immergut及びE. A. Grulke編、John Willey & Sons, Inc.、1999年、VI/193〜VI/276に見いだすことができる。好ましくは、キャップ材料に適するポリマーは、60℃超、好ましくは70℃超、特に好ましくは100℃超、極めて特に好ましくは120℃超のTgを有する。本発明に用いるキャップは、ポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)である。
【0150】
適切な樹脂は、熱硬化させることができるか、又はUV硬化性である。好ましくは、樹脂は、UV硬化性であり、これは、加熱により場合によって持続又は促進される。一般的な樹脂は、エポキシベースの樹脂であり、これは、例えば、Nagase & Co.,LTD及びDELO Industrie Klebstoffeにおいて商業的に入手できる。樹脂は、発光部の全面又は発光部が下にない縁に塗布することができる。
【0151】
好ましくは、QD−LECを柔軟性基材上に調製する。適切な基材は、好ましくは、ポリマー又はプラスチックに基づくフィルム又はフォイルから選択される。ポリマー又はプラスチックの選択基準は、1)衛生的特性、2)ガラス転移温度である。ポリマーのガラス温度(Tg)は、適切なハンドブック、例えば、「Polymer Handbook」、J. Brandrup、E. H. Immergut及びE. A. Grulke編、John Willey & Sons, Inc.、1999年、VI/193〜VI/276に見いだすことができる。好ましくは、ポリマーのTgは、100℃超、極めて好ましくは150℃超、特に180℃超である。極めて好ましい基材は、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)及びポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)である。
【0152】
QD−LECは、電荷の輸送が、OLEDに認められる電子及び正孔の純粋な輸送ではなく、荷電種の輸送により起こることを特徴とする。したがって、QD−LECは、一般的にイオン種を含む。一般的なイオン種(イオン性物質とも呼ばれ、本発明によるQD−LECに適している)は、一般式K
+A
-を有し、ここで、K
+及びA
-は、それぞれカチオン及びアニオンを表す。
【0153】
好ましくは、イオン性物質は、有機発光材料と同じ溶媒に溶ける。これにより、前記エミッタ材料(複数可)及びイオン性物質(複数可)を含む混合物の調製が容易となる。一般的に有機発光材料は、トルエン、アニソール、クロロホルムなどの一般的有機溶媒に溶ける。
【0154】
好ましくは、前記イオン性物質は、室温で固体であり、特に好ましくは、前記イオン性物質は、室温で固体であり、30〜37℃でより柔らかくなる。
【0155】
カチオンは、有機又は無機であり得る。適切な無機カチオンK
+は、例えば、K
+(カリウム)及びNa
+から選択することができる。適切な有機カチオンK
+は、式(62)〜(66)に示すようなアンモニウム、ホスホニウム、チオウロニウム、グアニジニウムカチオン又は式(67)〜(94)に示すようなヘテロ環式カチオンから選択することができる。
【化18】
【0156】
式中、
R
1〜R
6は、それぞれ独立に、1〜20個のC原子による直鎖状又は多分岐のアルキル、2〜20個のC原子及び1以上の非共役二重結合による直鎖状又は多分岐のアルケニル、2〜20個のC原子及び1以上の非共役三重結合による直鎖状又は多分岐のアルキニル、3〜7個のC原子を有する飽和、部分的に飽和又は完全に飽和したシクロアルキル(これらは、1〜6個のC原子を有するアルキル基でさらに置換することができる)(ここで、1以上の置換基Rは、ハロゲン、特に−F及び/若しくは−Clで部分的若しくは完全に置換されていてよいか又は−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’
2、−SO
2NR’
2、−SO
2OH、−SO
2X、−NO
2で部分的に置換されていてもよい)、ここで、R
1〜R
6の1個又は2個の非隣接及び非α炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO
2−、−N
+R’
2-、−C(O)NR’−、−SO
2NR’−及び−P(O)R’−から選択される基で置換することができる(ここで、R’=H、無置換、部分的又は完全に−Fで置換されたC1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル、無置換又は置換フェニルであり、X=ハロゲンである)から選択することができる。
【0157】
式(62)において、R
1〜R
4は、Hであってよく、ただし、残りのR
1〜R
4の少なくとも1つは、Hでない。式(63)において、R
1〜R
4は、H及びNR’
2であり得る(ここで、R’は上記のように定義される)。式(64)において、R
1〜R
5は、Hであり得る。式(65)において、R
1〜R
5は、H、CN及びNR’
2であり得る(ここで、R’は上記のように定義される)。
【化19】
【化20】
【化21】
【0158】
式中、置換基R
1’〜R
4’は、互いに独立に、H、CN、1〜20個のC原子による直鎖状及び分岐アルキル、2〜20個のC原子及び1以上の非共役二重結合による直鎖状又は分岐アルケニル、2〜20個のC原子及び1以上の非共役三重結合による直鎖状又は分岐アルキニル、3〜7個のC原子による部分的又は完全非飽和のシクロアルキル(これは1〜6個のC原子によるアルキルで置換することができる)、飽和及び部分的又は完全不飽和のヘテロアリール、ヘテロアリール−C
1〜C
6アルキル又はアルキル−C
1〜C
6アルキル、ここで、R
1’、R
2’、R
3’及び/又はR
4’は、一緒に環を形成し得る、ここで、置換基R
1’〜R
4’の1以上は、ハロゲン、特に−F及び/又は−Cl並びに−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’
2、−SO
2NR’
2、−C(O)X、−SO
2OH、−SO
2X、−NO
2で部分的又は完全に置換することができる、ここで、置換基R
1’及びR
4’は、ハロゲンで同時に置換されない、ここで、置換基R
1’及びR
2’(これらは、非隣接であるか又はヘテロ原子に結合している)は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO
2−、−N
+R’2−、−C(O)NR’−、−SO
2NR’−及び−P(O)R’−から選択される基により置換することができる(ここで、R’=H、1〜6個のC原子を有する、無置換、部分的又は完全に−Fで置換されたアルキル、3〜7個のC原子を有するシクロアルキル、無置換又は置換フェニルであり、X=ハロゲンである)から選択される。
【0159】
−OR’、−NR’
2、−C(O)OH、−C(O)NR’
2、−SO
2N’
2、−SO
2OH、−SO
2X及び−NO
2から選択されるR
2’が好ましい。
【0160】
さらなる好ましいイオン性物質は、例えば、米国特許出願公開第2007/0262694号A1に開示されている。
【0161】
さらに特に好ましいイオン性物質は、式(95)により表される構造を有するカチオンを含む。それらは、N,N,N−トリメチルブチルアンモニウムイオン、N−エチルN,N−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N−エチルN,N−ジメチルブチルアンモニウムイオン、N,N−ジメチル−N−プロピルブチルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルエチルアンモニウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3,4−トリメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3,5−トリメチルイミダゾリウムイオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−sec−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N-(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N-(2−エトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピプリジニウムイオン、N−sec−ブチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオン及びN−(2−エトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオンを含む。
【化22】
【0162】
極めて特に好ましいものは、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムである。
【0163】
特に好ましいイオン性物質は、メチルトリオクチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート(MATS)、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムオクチルスルフェート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムオクチルスルフェート、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1,1−ジプロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムビス(1,2−ベンゼンジオラト(2−)−O,O’)ボレート及びN,N,N’,N’,N’,N’−ペンタメチル−N’−プロピルグアニジニウムトリフルオロメタンスルホネートからなるイオン化合物の群(これらは、トルエン、アニソール及びクロロホルムなどの一般的有機溶媒に溶ける)から選択される化合物である。
【0164】
さらなる好ましいカチオンは、一般式(96)〜(101)の1つの化合物から選択される。
【化23】
【0165】
式中、R
1〜R
4は、式(62)、(63)及び(67)におけるように定義され、R
1’及びR
4’は、式(68)、(82)及び(77)における通りである。
【0166】
本発明によるQD−LECに適するさらなる好ましいイオン性物質は、K
+又はA
-の1つがポリマー主鎖に共有結合している化合物である。
【0167】
本発明によるQD−LECに適するさらなる好ましいイオン性物質は、K
+又はA
-の1つが有機発光物質(これは、本発明における他所で述べた小分子及びポリマー発光物質から選択することができる)である化合物から選択される。
【0168】
適切なアニオンA
-は、[HSO
4]
-、[SO
4]
2-、[NO
3]
-、[BF
4]
-、[(R
F)BF3]
-、[(R
F)
2BF
2]
-、[(R
F)
3BF]
-、[(R
F)
4B]
-、[B(CN)
4]
-、[PO
4]
3-、[HPO
4]
2-、[H
2PO
4]
-、[アルキル−OPO
3]
2-、[(アルキル−O)
2PO
2]
-、[アルキル−PO
3]
2-、[R
FPO
3]
2-、[(アルキル)
2PO
2]
-、[(R
F)
2PO
2]
-、[R
FSO
3]
-、[HOSO
2(CF
2)
nSO
2O]
-、[OSO
2(CF
2)
nSO
2O]
2-、[アルキル−SO
3]
-、[HOSO
2(CH
2)
nSO
2O]
-、[OSO
2(CH
2)
nSO
2O]
2-、[アルキル−OSO
3]
-、[アルキル−C(O)O]
-、[HO(O)C(CH
2)
nC(O)O]
-、[R
FC(O)O]
-、[HO(O)C(CF
2)
nC(O)O]
-、[O(O)C(CF
2)
nC(O)O]
2-、[(R
FSO
2)
2N]
-、[(FSO
2)
2N]
-、[((R
F)
2P(O))
2N]
-、[(R
FSO
2)
3C]
-、[(FSO
2)
3C]
-、Cl
-及び/又はBr
-から選択することができる。
【0169】
式中、
n=1〜8
R
Fは、m=1〜12及びx=0〜7(ここで、m=1でx=0〜2)である式(C
mF
2m-x+1H
x)のフッ素化アルキル及び/又はフッ素化(また過フッ素化)アリール若しくはアルキルアリールである。
【0170】
上述のアルキル基は、1〜20個のC原子を有する、好ましくは1〜14個のC原子を有する、特に好ましくは1〜4個のC原子を有する直鎖状又は多分岐アルキル基から選択することができる。好ましくは、R
Fは、CF
3、C
2F
5、C
3F
7又はC
4F
9を意味する。
【0171】
好ましいアニオンは、PF
6-、[PF
3(C
2F
5)
3]
-、[PF
3(CF
3)
3]
-、BF
4-、[BF
2(CF
3)
2]
-、[BF
2(C
2F
5)
2]
-、[BF
3(CF
3)]
-、[BF
3(C
2F
5)]
-、[B(COOCOO)
2)
-(BOB
-)、CF
3SO
3-(Tf)、C
4F
9SO
3(Nf)、[(CF
3SO
2)
2N]
-(TFSI
-)、[(C
2F
5SO
2)
2N]
-(BETI
-)、[(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)N]
-、[(CN)
2N]
-(DCA
-)、[CF
3SO
2]
3C]
-及び[(CN)
3C]
-から選択される。
【0172】
本発明によるQD−LECに適するさらなる好ましいイオン性物質は、式(K
n+)
a(A
m-)
b(式中、n、m、a及びbは、1〜3の整数であり、n×a−m×b=0である)を有する化合物から選択され、ここで、K
n+又はA
m-の1つは、有機発光物質(これは、本発明における他所で概説した小分子又はポリマーエミッタの群を含む化合物から選択することができる)である。好ましくは、n、m、a、bは、1である。
【0173】
好ましい実施形態において、(K
n+)
a(A
m-)
bの形態の前記化合物において、K
n+又はA
m-の1つは、発光金属錯体であり、特に好ましくはK
n+は、発光金属錯体であり、ここで、金属は、遷移金属、好ましくはVIII族元素の遷移金属、ランタニド及びアクチニドから選択、特に好ましくはRh、Os、Ir、Pt、Au、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Re、Cu、W、Mo、Pd、Ag、Ruから選択、極めて特に好ましくはRu、Os、Ir、Reから選択することができる。K
n+のいくつかの非限定的な例は、[Ir(ppy)
2(bpy)]
+、[Ir(ppy)
2(dpp)]
+、[Ir(ppy)
2(phen)]
+、[Ru(bpy)
3]
2+、[Os(bpy)
2L]
2+(L=シス−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エチレン)である。
【0174】
本発明のさらなる実施形態において、前記QD−LECは、式(K
n+)
a(A
m-)
bを有する化合物を含み、ここで、K
n+又はA
m-の1つは、発光(emissive)一重項エミッタであり、特に好ましくはK
n+が発光一重項エミッタである。そのような種類の化合物は、荷電レーザー色素、例えば、p−クアテルフェニル−4,4’’’−ジスルホン酸二ナトリウム塩(ポリフェニル1)、p−クアテルフェニル−4,4’’’−ジスルホン酸二カリウム塩(ポリフェニル2)、2−(4−ビフェニリル)−6−フェニルベンゾオキサゾテトラスルホン酸カリウム塩(フラン2)、[1,1’−ビフェニル]−4−スルホン酸、4’,4”−1,2−エテンジルビス二カリウム塩(スチルベン1)、2,2’([1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルジ−2,1−エテンジイル)−ビスベンゼンスルホン酸二ナトリウム塩(スチルベン3)、ベンゾフラン−2,2’−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル−ビステトラスルホン酸(四ナトリウム塩)(フラン1)、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−ピリジルメチルヨウ化物(DASPI)、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−ベンゾチアゾリルエチルヨウ化物(DASBTI)、3,3’−ジエチルオキサカルボシアニンヨウ化物(DOCI)、4,4−ジフルオロ−1,3,5,7,8−ペンタメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメタンジフルオロボレート錯体(ピロメテン546)、3,3’−ジメチル−9−エチルチアカルボシアニンヨウ化物(DMETCI)、二ナトリウム−1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメタン−2,6−ジスルホネート−ジフルオロボレート錯体(ピロメテン556)、4,4−ジフルオロ−2,6−ジエチル−1,3,5,7,8−ペンタメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン2,6−ジエチル−1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメタンジフルオロボレート錯体(ピロメテン567)、o−(6−アミノ−3−イミノ−3H−キサンテン−9−イル)−安息香酸(ローダミン110)、安息香酸、2−[6−(エチルアミノ)−3−(エチルアミノ)−2,7−ジメチル−3H−キサンテン−9−イル]、ペルクロレート(ローダミン19)、4,4−ジフルオロ−2,6−ジ−n−ブチル−1,3,5,7,8−ペンタメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン2,6−ジ−n−ブチル−1,3,5,7,8−ペンタメチルピロメタンジフルオロボレート錯体(ピロメタン580)、安息香酸、及び2−[6−エチルアミノ)−3−(エチルアミノ)−2,7−ジメチル−3H−キサンテン−9−イル]−エチルエステル、モノヒドロクロリド(ローダミン6G)(これは、Lambda Physik AG、Goettingen、Germanyにおいて商業的に入手できる)から選択することができる。
【0175】
本発明の他の対象は、K
n+又はA
m-の1つが発光一重項エミッタであることを特徴とする、式(K
n+)
a(A
m-)
bの少なくとも1つの化合物を含む前記QD−LECである。
【0176】
極めて好ましくは、K
n+が発光一重項エミッタである。K
n+は、好ましくは上で定義した群から選択される。
【0177】
好ましくは、発光デバイスは、エレクトロルミネッセンスデバイスである。3つ、特に好ましくは2つ、極めて特に好ましくは1つの前記式(K
n+)
a(A
m-)
bの化合物を含む前記QD−LECが好ましい。
【0178】
実際に、イオン種自体が発光物質である場合、それは、本明細書で定義した有機機能材料とみなされる。この場合、前記QD−LECについてさらなる小機能材料は必要でない可能性がある。
【0179】
原理上、当業者に公知のあらゆる量子ドット(QD)を本発明によるQD−LECに用いることができる。
【0180】
300〜2000nmの範囲、好ましくは350〜1500nmの範囲に発光極大を有する量子ドットが好ましい。発光波長は、適切な有機半導体を選択することにより、及び/又は適切な量子ドットを選択することにより、及び/又は量子ドットのサイズにより容易に調整することができる(これは、ひいては合成により正確に調整することができる)。発光の強度も、前記QD−LECに用いる特別にサイズを調整した量子ドットの濃度により適応させることができる。
【0181】
好ましくは、本発明によるQD−LECは、II−VI族、III−V族、IV−VI族及びIV族半導体、好ましくはZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb及びそれらの組合せから選択される量子ドットを含む。
【0182】
量子ドットに組み込むことができる適切な半導体材料は、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnO、ZnS、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe及びCdZnSeなどのそれらの合金などのII−VI族、InAs、InP、GaAs、GaP、InN、GaN、InSb、GaSb、AlP、AlAs、AlSb及びInAsP、CdSeTe、ZnCdSe、InGaAsなどの合金などのIII−V族、PbSe、PbTe及びPbS並びにそれらの合金などのIV−VI族、InSe、InTe、InS、GaSe及びInGaSe、InSeSなどの合金などのIII−VI族の元素、そのSi及びGe合金などのIV族半導体並びに複合構造におけるそれらの組合せから選択される。
【0183】
さらなる適切な半導体材料は、米国特許出願第10/796,832号に開示されたものを含み、II−VI族、III−V族、IV−VI族及びIV族半導体を含むあらゆる種類の半導体を含む。適切な半導体材料は、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C(ダイヤモンドを含む)、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlS、AlSb、BaS、BaSe、BaTe、CaS、CaSe、CaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si
3N
4、Ge
3N
4、Al
2O
3、(Al,Ga,In)
2(S,Se,Te)
3、Al
2CO及び2以上のそのような半導体の適切な組合せを含むが、これらに限定されない。
【0184】
好ましくは、量子ドットは、II−VI族、III−V族、IV−VI族及びIV族半導体、特に好ましくはZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb及びそれらの組合せから選択される。
【0185】
いくつかの実施形態において、量子ドットは、p型ドーパント又はn型ドーパントからなる群からのドーパントを含み得る。ドープ量子ドットの特性及び合成は、Moonsub Shim及びPhilippe Guyot-Sionnest、Nature、407巻(2000年)、981頁による「n-type colloidal semiconductor nanocrystals」並びにNorrisら、Science、319巻(2008年)、1776頁による「Doped Nanocrystals」を参照することができる。本発明の量子ドットは、II−VI又はIII−V半導体も含み得る。II−VI又はIII−V半導体ナノ結晶の例は、周期表のZn、Cd及びHgなどのII族の元素とS、Se、Te、PoなどのVI族の任意の元素との任意の組合せ、並びに周期表のB、Al、Ga、In及びTlなどのIII族の元素とN、P、As、Sb及びBiなどのV族の任意の元素との任意の組合せを含む。
【0186】
量子ドットにおいて、光ルミネッセンス及びエレクトロルミネッセンスは、ナノ結晶のバンド端状態から生ずる。X. Pengら、J. Am. Chem. Soc.、119巻、7019〜7029頁(1997年)により報告されたように、ナノ結晶からの放射性バンド端発光は、表面電子状態が起源である無放射減衰チャンネルと競合する。したがって、ダングリングボンドのような表面欠陥の存在は、非発光再結合中心及びより低い発光効率をもたらす。表面トラップ状態を不動態化し、除去する効果的な方法は、X. Pengら、J. Am. Chem. Soc.、119巻、7019〜7029頁(1997年)により開示されたように、ナノ結晶の表面上の無機シェル物質をエピタキシャル成長させることである。シェル物質は、電子レベルがコア物質に関してI型である(例えば、電子及び正孔をコアに局在化する可能なステップを可能にするためにより大きいバンドギャップを有する)ように選択することができる。結果として、非発光性再結合の可能性を低くすることができる。
【0187】
コア・シェル構造は、シェル物質を含有する有機金属前駆体をコアナノ結晶を含有する反応混合物に加えることによって得られる。この場合、核生成事象とそれに続く成長でなく、コアが核としての役割を果たし、シェルがそれらの表面から成長する。シェル物質のナノ結晶の独立の核生成を妨げると同時に、反応の温度をコア表面へのシェル物質モノマーの付加を有利にするように低く維持する。反応混合物中の界面活性剤は、シェル物質の制御成長を導き、溶解性を確保するために存在する。2つの物質の間に低い格子不整合がある場合に、均一及びエピタキシャル成長シェルが得られる。さらに、球形状は、大きい曲率半径による界面ひずみエネルギーを最小限にするように作用し、それにより、ナノ結晶系の光学的特性を低下させる可能性がある転位の形成を妨げる。
【0188】
好ましい実施形態において、ZnSは、当業者に周知の合成法を用いてシェル物質として用いることができる。
【0189】
特に好ましい実施形態において、本発明の量子ドットは、II−VI族半導体、それらの合金及びそれらから調製されるコア/シェル構造から選択される半導体材料を含む。さらなる実施形態において、II−VI族半導体は、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnTe、それらの合金、それらの組合せ及びそのコア/シェル、コア多シェル層状構造体である。
【0190】
いくつかの実施形態において、本発明による量子ドットは、それらの表面に結合した(conjugated)、共同した(cooperated)、会合した(associated)又は付着した(attached)さらなる配位子を含む。適切な配位子は、米国特許出願公開第10/656910号及び米国特許出願第60/578236号に開示されているものを含む、当業者に公知の任意の基を含む。そのような配位子の使用により、様々な溶媒及びポリマーを含むマトリックス材料に混入する量子ドットの能力が増大され得る。さらなる好ましい配位子は、米国特許出願公開第2007/0034833号A1に開示されているような「頭−体−尾」構造を有しており、ここで、さらに好ましくは「体」は、米国特許出願公開第20050109989号A1に開示されているように、電子又は正孔輸送機能を有する。
【0191】
量子ドットという用語は、サイズが実質的に単分散性であるナノ結晶を意味する。量子ドットは、約500nm未満、約1nm未満程度に至るまでの寸法の少なくとも1つの領域又は特性寸法を有する。単分散性という用語は、サイズ分布が表示値の±10%以内にあることを意味する。例えば、直径が100nmの単分散性ナノ結晶は、90nm以上から110nm以下までのサイズの範囲を含む。
【0192】
QD、特にコア・シェルQDのサイズが有限であるため、それらは、それらのバルク対応物と比べて特異な光学的特性を示す。発光スペクトルは、バンド端発光から生ずる、単一ガウスピークによって特徴づけられる。発光ピーク位置は、量子閉じ込め効果の直接的結果としてコア粒子径によって決定される。電子的及び光学的特性は、Annu. Rev. Mater. Sci.、2000年、30巻、475〜521頁においてAI. L. Efros及びM. Rosenにより述べられている。さらに、発光強度は、上で概説したように、前記QD−LECに用いられる濃度により調整することができる。
【0193】
本発明によるQD−LECは、本発明における他所で概説したように、少なくとも1つのイオン種を含む。
【0194】
好ましくは、少なくとも1つのイオン種は、イオン結合型遷移金属錯体(iTMC)から選択される。
【0195】
1つの一般的なiTMC材料は、例えば、Rudmannら、J. Am. Chem. Soc.、2002年、124巻、4918〜4921頁及びRotheら、Adv. Func. Mater.、2009年、19巻、2038〜2044頁により報告されている。発光層(EML)におけるiTMCの濃度は、発光層に対して1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜30重量%、極めて特に好ましくは10〜20重量%であり得る。
【0196】
前記QD−LECは、好ましくはさらなるイオン電導性材料及び/又は中性マトリックス材料(これらは、層の全量に対して1〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは20〜70重量%、極めて特に好ましくは30〜70重量%の濃度を有し得る)を含む。
【0197】
請求項1から10までの1以上の項に記載のQD−LECは、量子ドットの少なくとも1つがイオン種であることを特徴とする。
【0198】
1つの好ましい実施形態において、本発明によるQD−LECは、それ自体イオン化合物である、QDを含む。
【0199】
適切なイオン性QDは、少なくとも1つのイオン性配位子(又はキャップ)を含むQDから選択される。この実施形態のための適切な配位子は、好ましくは一般式(102)及び(103)に従って選択することができる。
【0200】
[K
+][A
-−B−D] 式(102)
[A
+][K
-−B−D] 式(103)
ここで、Dは、アンカー基(これは、QD表面上に静止する)、例えば、チオール基であり、Bは、単結合又は好ましくはアルキル、アルコキシ基から選択されるスペーサーであり、K
+/-及びA
-/+は、上述のようなカチオン及びアニオンを表す。
【0201】
式(102)又は(103)による少なくとも1つのイオン性配位子を含む量子ドットは、例えば、Denis Dorokhinら(Nanotechnology、2010年、21巻、285703頁)により報告されたように配位子交換により合成することができる。配位子は、例えば、以下の式(104)を有し得る。
【化24】
【0202】
配位子交換は、窒素流中で、例えば、40℃での加熱を用いてトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)被覆コア・シェルCdSe/ZnS QDのトルエン溶液と式(104)の配位子のトルエン溶液とを混合することによって実現することができる。反応時間を制御することにより、TOPOと式(104)におけるアニオンとの間の種々の程度の配位子交換を得ることができる。好ましい実施形態において、部分的交換のみが望まれ、したがって、反応時間は、好ましくは短く、例えば、24時間より短い。
【0203】
発光層(EML)が少なくとも1つのイオン性量子ドット並びにホスト材料、蛍光エミッタ、リン光エミッタ、正孔輸送材料(HTM)、正孔注入材料(HIM)、電子輸送材料(ETM)及び電子注入材料(EIM)から選択される少なくとも1つの小有機機能分子を含むことを特徴とするQD−LECが好ましい。電気的に中性である、小有機機能材料は、本発明における他所で概説したのと同じである。
【0204】
EMLが2つ、極めて特に好ましくは1つのイオン性量子ドット(複数可)を含む前記QD−LECが特に好ましい。
【0205】
さらに他の好ましい実施形態において、QD−LECのEMLは、1つのイオン性量子ドット並びにホスト及び/又はリン光エミッタから選択される1種の小有機機能材料を含む。EMLにおける構成要素の濃度は、量子ドットについて1〜20重量%、ホストについて50〜98重量%、リン光エミッタについて1〜20重量%であり得る。
【0206】
1つのさらなる好ましい実施形態において、QD−LECのEMLは、1つのイオン性量子ドット並びにホスト及び/又は蛍光エミッタから選択される1種の小有機機能材料を含む。EMLにおける構成要素の濃度は、量子ドットについて1〜20重量%、ホストについて50〜98重量%、蛍光エミッタについて1〜20重量%であり得る。
【0207】
QD−LECのEMLは、小分子又はポリマーであり得る、さらなる有機機能材料を含み得る。
【0208】
本発明はまた、式(102)又は(103)による少なくとも1つのイオン性配位子を含むことを特徴とするイオン性量子ドットに関する。
【0209】
本発明はさらに、少なくとも1つの量子ドット並びに少なくとも1種のイオン化合物及び少なくとも小有機機能材料を含む、本明細書で述べた実施形態で、また実施形態により使用される混合物に関する。
【0210】
好ましい実施形態において、前記混合物は、少なくとも1つのQD、少なくとも1種のイオン化合物、少なくとも1つのホスト材料及び少なくとも1つのエミッタ(これは、リン光エミッタ又は蛍光エミッタから選択することができる)を含む。
【0211】
他の好ましい実施形態において、前記混合物は、少なくとも1つのイオン性QD、少なくとも1つのホスト材料及び少なくとも1つのエミッタ(これは、リン光エミッタ又は蛍光エミッタから選択することができる)を含む。
【0212】
さらに他の好ましい実施形態において、前記混合物は、少なくとも1つのQD、少なくとも1つのホスト材料及び少なくとも1つのイオン性エミッタ(これは、リン光エミッタ又は蛍光エミッタから選択することができる)を含む。好ましくは、前記イオン性エミッタは、iTMCから選択される。
【0213】
さらなる好ましい実施形態において、混合物は、少なくともイオン伝導性材料を含み、これらは、例えば、Li
+用のポリエチレンオキシド(PEO)から選択することができる。
【0214】
前記混合物において、それは、他の有機機能材料をさらに含んでいてもよく、これは、小分子又はポリマー又はオリゴマー又はデンドリマーの形であり得、ホスト、エミッタ、HIM、HTM、ETM、EIM及び金属錯体から選択することができる。
【0215】
本明細書で述べたいずれかの実施形態による混合物において、QDは、II−VI族、III−V族、IV−VI族及びIV族半導体、好ましくはZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb及び2以上のそのような半導体の適切な組合せから選択される少なくとも1つの元素を含み、及び/又はそれらのコア/シェル、コア多シェル層状構造を有し得る。
【0216】
本明細書で述べたいずれかの実施形態による混合物は、QDの濃度が好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%、極めて特に好ましくは5〜15重量%であることを特徴とし得る。
【0217】
本明細書で述べたいずれかの実施形態による混合物は、少なくともさらなる1つのエミッタを含んでいてもよい。本明細書で述べたいずれかの実施形態による混合物において、量子ドットの発光スペクトルは、さらなるエミッタの吸収と重複し得る。それにより、フェルスターエネルギー移動を実現することができる。本明細書で述べたいずれかの実施形態による混合物において、さらなるエミッタは、有機化合物又は他の量子ドットから選択することができる。
【0218】
さらなる実施形態によれば、電子デバイスは、本明細書で述べたいずれかの実施形態による混合物又は本明細書で述べたいずれかの実施形態によるイオン性量子ドットを含む。電子デバイスは、少なくとも1つのアノード、1つのカソード及びアノードとカソードとの間の機能層を含み得、ここで、機能層は、混合物又は量子ドットを含む。電子デバイスは、デバイスが、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、有機発光電気化学セル、有機電界効果トランジスタ(OFET)、薄膜トランジスタ(TFT)、有機太陽電池(O−SC)、有機レーザーダイオード(O−laser)、有機集積回路(O−IC)、高周波識別(RFID)タグ、光検出器、センサー、論理回路、記憶素子、キャパシタ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、伝導性基板又はパターン、光伝導体、電子写真素子、有機発光トランジスタ(OLET)、有機スピントロニックデバイス及び有機プラズモン発光デバイス(OPED)から選択される、好ましくは有機発光ダイオードから選択される発光、光変換、光捕集又は光センサーデバイスであることを特徴とし得る。
【0219】
本発明の他の態様は、本明細書で述べたいずれかの実施形態による混合物又はイオン性量子ドット及び1以上の有機溶媒を含む製剤、好ましくは溶液に関する。
【0220】
適切で、好ましい有機溶媒の例は、制限なしに、ジクロロメタン、トリクロロメタン、モノクロロべンゼン、o−ジクロロべンゼン、テトラヒドロフラン、アニソール、モルホリン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、エチルアセトン、酢酸n−ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラリン、デカリン、インダン及び/又はそれらの混合物を含む。溶液中の混合物の濃度は、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%である。場合によって、溶液は、国際公開第2005/055248号A1に記載されているように、レオロジー特性を調整するための1以上の結合剤も含む。
【0221】
適切混合及び熟成の後、溶液を次のカテゴリーの1つとして評価する。すなわち、完全な溶液、境界型溶液又は不溶性。溶解性と不溶性とを分ける溶解度パラメーター−水素結合限界の輪郭を描くために等高線を描く。溶解性の領域内に入る「完全」溶媒は、「Crowley J. D.、Teague G. S. Jr.及びLowe J. W. Jr.、Journal of Paint Technology、38巻、496号、296頁(1966年)」に公表されているような文献値から選択することができる。溶媒混合物も用いることができ、「Solvents、W.H. Ellis、Federation of Societies for Coatings Technology、9〜10頁、1986年」に記載されているように識別することができる。混合物中に少なくとも1つの真の溶媒を有することが望ましいが、そのような手順により、混合物を溶解する「非」溶媒の混合物が結果として導かれる可能性がある。
【0222】
本発明による製剤の他の好ましい形は、エマルション、極めて好ましくはミニエマルション(これらは、1つの相の安定なナノ小滴が第2の連続相中に分散している、特別に調合された異相系である)である。本発明は、混合物の各種成分が同じ相又は異なる相に存在するミニエマルションに関する。好ましい分布は以下の通りである。
【0223】
1) ナノ小滴(不連続相)中にQD及び有機機能材料の大部分又はすべて、並びに連続相中にイオン化合物の大部分又はすべて;
2) ナノ小滴(不連続相)中に有機機能材料の大部分又はすべて、並びに連続相中にQD及びイオン化合物の大部分又はすべて;
連続相が極性相であるミニエマルション及び連続相が非極性相である逆ミニエマルションの両方を本発明に用いることができた。好ましい形は、ミニエマルションである。エマルションの動力学的安定性を増大させるために、界面活性剤(複数可)を加えることができた。2相の溶媒及び界面活性剤の選択並びに安定なミニエマルションを調製するための処理は、当業者に周知であるか、又は種々の刊行物、例えば、Landfesterら(Annu. Rev. Master. Res.、2006年、36巻、231頁)に言及されている。
【0224】
電子又は光電子デバイスにおける薄層としての使用のために、本発明の混合物又はそれらの製剤は、任意の適切な方法により堆積させることができる。発光デバイスなどのデバイスの液体コーティングは、真空蒸着法より望ましい。溶液堆積法は、特に好ましい。好ましい堆積法は、制限なしに、浸漬コーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、活版印刷、スクリーン印刷、ドクターブレードコーティング、ローラー印刷、逆ローラー印刷、オフセットリソグラフィー印刷、フレキソグラフ印刷、ウェブ(web)印刷、噴霧コーティング、刷毛塗り又はパッド印刷、スロットダイコーティングを含む。インクジェット印刷は、高解像度ディスプレイを調製することが可能となるので、特に好ましい。
【0225】
本発明の選択される溶液は、インクジェット印刷又はマイクロディスペンシングにより作製済みデバイス基板(prefabricated device substrates)に塗布することができる。好ましくは、例えば、Aprion、Hitachi−Koki、InkJet Technology、On Target Technology、Picojet、Spectra、Trident、Xaarにより供給されるものであるが、これらに限定されない工業用圧電式プリントヘッドを用いて、有機半導体層を基板に塗布することができる。さらに、Brother、Epson、Konica、Seiko Instruments、Toshiba TECにより製造されたものなどの半工業用ヘッド又はMicrodrop及びMicrofabにより製造されたものなどのシングルノズルマイクロディスペンサを用いることができる。
【0226】
インクジェット印刷又はマイクロディスペンシングにより塗布するために、本発明の混合物は、最初に適切な溶媒に溶解すべきである。溶媒は、上述の要件を満たさなければならず、選択されるプリントヘッドに対して有害な影響を及ぼしてはならない。さらに、溶媒は、プリントヘッド内部の溶液の乾燥によって引き起こされる操作性の問題を防ぐために100℃を超える、好ましくは140℃を超える、より好ましくは150℃を超える沸点を有するべきである。上述の溶媒に加えて、適切な溶媒は、置換及び無置換キシレン誘導体、ジ−C
1-2アルキルホルムアミド、置換及び無置換アニソール及び他のフェノールエーテル誘導体、置換ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピロリジノンなどの置換ヘテロ環、置換及び無置換N,N−ジ−C
1-2アルキルアニリン並びに他のフッ素化又は塩素化芳香族化合物などである。
【0227】
インクジェット印刷により本発明の混合物を堆積させるための好ましい溶媒は、1以上の置換基における炭素原子の総数が少なくとも3である1以上の置換基により置換されたベンゼン環を有するベンゼン誘導体を含む。例えば、ベンゼン誘導体は、プロピル基又は3つのメチル基で置換されていてもよく、いずれの場合にも、合計で少なくとも3個の炭素原子が存在する。そのような溶媒は、溶媒とポリマーを含むインクジェット液が形成されることを可能にし、これが噴射中のジェットの閉塞及び成分の分離を低減又は妨げる。溶媒(複数可)は、次の例のリストから選択されるものを含み得る。すなわち、ドデシルベンゼン、1−メチル−4−tert−ブチルベンゼン、テルピネオールリモネン、イソデュレン、テルピノレン、シメン、ジエチルベンゼン。溶媒は、溶媒混合物、すなわち2以上の溶媒の組合せであってもよく、各溶媒は、好ましくは100℃を超える、より好ましくは140℃を超える沸点を有する。そのような溶媒(複数可)はまた、堆積層における膜形成を促進し、層における欠陥を低減する。
【0228】
インクジェット液(すなわち、溶媒、結合剤及び混合物の混合物)は、好ましくは1〜100mPas、特に好ましくは1〜50mPas、極めて特に好ましくは1〜30mPasの20℃における粘度を有する。
【0229】
本発明による混合物又はそれらの製剤は、例えば、界面活性剤、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水剤、接着剤、流動改善剤、消泡剤、脱気剤、反応性又は非反応性であり得る希釈剤、助剤、着色剤、染料又は顔料、増感剤、安定剤又は阻害剤のような1以上のさらなる化合物をさらに含み得る。
【0230】
他の実施形態において、本明細書で述べた他の実施形態の製剤は、光電子デバイス、好ましくはエレクトロルミネッセンスデバイスの製造に用いることができる。
【0231】
本発明によるQD−LECは、デバイスに組み込むことができる。デバイスは、さらなる機能を果たす又はデバイスの各種構成要素の相互作用を可能にするために必要であり得る。前記QD−LEC(複数可)を含むデバイスは、ディスプレイ、一般照明、ディスプレイ用バックライト並びに光療法及び/又はPDTなどの種々の応用分野に用いることができる。したがって、本発明はまた、本発明による少なくとも1つのQD−LECを含むデバイスに関する。
【0232】
デバイスは、あらゆる形状を有し、堅い又は柔軟性のあるものであり得る。デバイスは、なんらかの形のエネルギー供給を必要とする。エネルギー供給は、デバイスに直接付属するか、又は例えば、ケーブルによって分離され得る。治療を受ける対象にとって快適で、完全に自己完結型の携帯式ユニットを構成するデバイスを提供するために、バッテリー、特に印刷可能(printable)バッテリーをデバイスに取り付けることができる。したがって、照射は、治療を受ける対象の習慣又は日常生活を妨げることなく、時と場所を選ばずに起こり得る。本発明によるデバイスの在宅使用が特に好ましい。デバイスは、自己接着性及び脱着性であり得る。デバイスは、身体の平面的若しくは非平面的部分に適合し、又は埋め込み型プローブであり得る。
【0233】
デバイスは、インタラクティブステアリングユニットを含み得る。ステアリングユニットは、連続照射からパルス照射への切替えを可能にし得る。それはまた、照射強度及び/又は発光波長の精密な適応を可能にし得る。ステアリングユニットは、デバイスに直接付属させることができる。それは、永久的又は一時的な連結を介して分離することもできる。デバイスは、ディスポーザブルとすることができ、病院内又は病院外での使用に適している。
【0234】
いかなる場合でも本発明によるデバイスは、携帯用の軽量デバイスとして適している。しかし、固定式デバイスも調製することができる。デバイスは、通院治療(ambulatory treatment)、すなわち、対象が自由に動き回ることができる治療を可能にするのに十分に持ち運ぶことができる。ほぼどこでもいつでも治療を行うことができるように、デバイスをその後にヒト対象自身の時間に取り外すことができる。これにより、より簡便になり、より低価格となる(病院での外来又は入院を回避することにより)。
【0235】
PDTの場合、治療は、しばしば痛みを伴う。本発明による携帯型デバイスは、より低い光レベルで用いることができる。その理由は、曝露がより長期間にわたり起こり得るからである。これにより、病院で使用される従来の光源からの高い放射照度により一部の患者において引き起こされる痛みの問題が克服される。さらに、より低い放射照度は、光薬剤の光漂白の程度が低いためPDTにおいてより有効である。
【0236】
デバイスには存在する光化学及び/又は光医薬製剤を備えることができる。これは、ゲル剤、軟膏剤又はクリーム剤の形であり得る。その代わりに又はそれに加えて、デバイスに光薬剤を含浸した薄膜を付属させることができる。一般的に、光医薬製剤は、光源と接触する層として提供される。光医薬製剤が刺激光の周波数に対して透明又は十分に透過性であるならば、光薬剤を患者に塗布する別個のステップなしに、得られるデバイスを直ちに適用することができる。光を散乱するようなクリーム剤は、光源にスイッチを入れる前にクリーム剤が吸収される場合には、それにもかかわらず用いることができる。光薬剤層は、シリコーン裏打ちシートなどの可剥性放出媒体で被覆することができる。光医薬製剤は、インビボで活性化合物に代謝される不活性化合物を含んでいてもよい。光医薬製剤の送達は、イオン導入法により促進することができる。
【0237】
有機発光半導体からの光の出力は、パルスにすることができ、このパルシング及び/又は治療する部位の曝露(複数可)の持続時間及び放射光の強度などのデバイスの機能の他の側面を制御するために電子制御回路又はマイクロプロセッサを備えることができる。パルス式デバイスには、光漂白性である又はインビボで光漂白性化学種に代謝される光化学及び/又は光医薬製物質の製剤を備えてもよい。
【0238】
デバイスの出力は、パルスの列の形をとってもよく、好ましくはパルスの列においてパルスの持続時間は、連続パルス間の間隔と実質的に同じである。パルス列の期間は、例えば、前記物質の光漂白特性によって、20m秒から2000秒の範囲にあり得る。
【0239】
好ましくは、取付け手段は、デバイスを患者に取り付けることを可能にするための接着性表面を含む。
【0240】
好ましくは、携帯型デバイスに、存在する光化学及び/又は光医薬製剤を備える。製剤及びその送達の好ましい特徴は、上記の通りである。特に、光化学及び/又は光医薬物質は、光漂白性であり得るか、又はインビボで光漂白性化学種に代謝され得る。光源を活性化及び不活性化する手段は、治療する部位の曝露(複数可)の持続時間及び放射光の強度などのデバイスの機能の他の側面を制御し得る。
【0241】
制御手段は、本発明の第1の態様によるデバイスにより発生させるパルス列の好ましい特徴の1以上を有するパルス列を放射する光源をカバーするように有利に作動可能であり得る。
【0242】
本発明による適切なデバイスは、スリーブ、包帯、パッド、プラスター、埋め込み型プローブ、経鼻胃チューブ、胸部ドレーン、ステント、衣服様デバイス、ブランケット、寝袋、口内の1以上の歯に適合するデバイス及びパッチから選択される。
【0243】
デバイスは、食道内で用いるステント、例えば、半径1.25〜2.25cm、長さ10〜12cmの管として用いることができる。
【0244】
デバイスは、例えば、乳児の黄疸を治療するためにブランケット又は寝袋であり得る。現在のところ、黄疸に罹患している乳児は、両親から引き離し、保育器内で目隠しして照射を受ける。これは、乳児と親の両方にとって不快な状況である。さらに、乳児は、成人ほど容易に体温を調節することができず、保育器内の過熱は、重大な問題である。柔軟性のあるブランケット及び寝袋は、これらの問題を伴うことなく乳児を治療する方法を提供する。ブランケット及び寝袋により覆われた乳児は、その親の腕に抱かれながら照射を受けることができ、乳児の体の過熱は、伝統的な療法と比較して重大でない。これは、本発明によるデバイスがより少ない電力を必要とし、ひいてはより少ない熱を発生するという事実に起因する。
【0245】
乾癬患者において、プラークが身体のひだにしばしば認められる。従来の光療法は、光源による放射される光が身体のひだにおけるプラークに到達しないという事実に起因する問題を提示している。OLEDは、理論的には身体のひだにおける乾癬皮膚と直接接触する光源を設計する機会を提供する。上で概説したように、曲面は、OLEDを製造する場合に技術的困難をもたらす。しかし、この問題は、QD−LECにより解決することができる。QD−LECは、身体のひだに見いだされる乾癬並びに他の疾患及び/又は状態を治療するために身体のひだの中に適合するように設計することができる。
【0246】
デバイスは、治療に要求される形態に概して個別にあつらえることができる。
【0247】
デバイス自体は、治療中に制御された形で放出される治療薬を含み得る。
【0248】
好ましくは、前記デバイスは、上述のようなプラスチックイオン性材料(これは、25〜45℃の範囲のガラス転移温度T
g又は融点を有する)を含む。したがって、デバイスは、皮膚とのより十分な接触を得るために皮膚に取り付けた場合により柔軟になる。
【0249】
さらなる好ましい実施形態において、本発明によるデバイスは、携帯型デバイスである。
【0250】
本発明はまた、デバイスを患者に取り付けるための取付け手段を含むことを特徴とする、デバイスに関する。
【0251】
デバイスは、自己接着性であり得る、又は接着剤ストリップなどの補助物質を用いて作用の側で一時的に固定することができる。前記デバイスは、プラスター、包帯、ブランケット、寝袋、スリーブ、埋め込み型プローブ、経鼻胃チューブ、胸部ドレーン、パッド、ステント及びパッチであり得ることを特徴とする。デバイスの種類及び形状は、治療の個別の必要性に従い、また治療を受ける対象の体質に従って調整することができる。
【0252】
本発明はまた、デバイスが電源ユニット又は外部電源用インターフェースを含むことを特徴とする、本発明によるデバイスに関する。上で概説したように、電源は、デバイスに直接取り付けることができる。これにより、例えば、治療を受ける対象を困惑させることなく衣服の下で用いることができる超薄デバイスの設計が可能となる。電源は、電力を供給するためにあらゆる可能な方法でデバイスに接続されるより分離されたユニットでもあり得る。
【0253】
本発明によるデバイスは、対象の一部分を照射することを目的とする。デバイスは、動物及びヒトにおける治療上及び/又は美容的疾患及び状態の治療及び/又は予防に用いることを特徴とする。
【0254】
本発明によるデバイスは、一部分の前記治療及び/又は予防をもたらすための電磁線を放射する(ここで、QD−LEC(複数可)は、少なくとも0.5cm
2の範囲を有する)。QD−LECは、連続的又は断続的であり得る。QD−LEC(複数可)及びその照射範囲は、治療に適する形状をとり得る。これは、特に治療的状態において、治療が必要でない対象の一部分の照射による副作用を予防し得る。
【0255】
さらなる好ましい実施形態において、本発明のデバイスは、0.5cm
2から100000cm
2まで、特に好ましくは0.5cm
2から50000cm
2までの範囲を有する。
【0256】
本発明によるQD−LEC及び/又はデバイスは、医学的及び/又は美容状態を治療するのに用いることができる。したがって、本発明の他の対象は、疾患及び/又は美容状態の治療及び/又は予防及び/又は診断のための前記QD−LEC及び/又はそれを含むデバイスの使用である。
【0257】
これによって、あらゆる治療戦略が含まれる。すなわち、光による対象の治療は、他の治療アプローチと併用して又は併用せずに実施することができる。例えば、治療は、本発明のQD−LEC(複数可)を含む1以上のデバイスにおける1以上の波長を用いて行うことができる。さらに、前記QD−LECを含むデバイスに加えて、LED、OLED及びレーザーなどの異なる技術を用いたさらなる光源を治療に用いることができる。さらに、前記QD−LEC及び/又はそれらを含むデバイスによる治療は、薬物及び化粧品を用いる公知の治療戦略と併用することができる。
【0258】
光療法を薬物及び/又は化粧品などの化合物による治療と併用する場合、光は、化合物の(光)化学反応又は活性化を開始させるために用いることができ、これは、光線力学療法(PDT)と呼ばれている。本発明による光療法は、光化学反応又は活性化を開始させずに化合物とともに用いることもできる。治療上の疾患の治療の有効性及び安全性に関する相乗効果は、光療法と薬物及び/又は化粧品の両方による連続、並行及び重複治療により生じ得る。薬物(複数可)又は化粧品化合物(複数可)を、例えば、特定の期間にわたり最初に投与した後、本発明によるQD−LEC又はそれらを含むデバイスを用いる光療法を適用することができる。両療法の間の時間ギャップも、薬物、その光反応性、対象の個別の状況及び個別の疾患又は状態によって異なり得る。両療法はまた、折よく部分的又は完全に重複し得る。的確な治療戦略は、個別の状況及び疾患又は状態の重症度に依存する。
【0259】
併用療法は、相乗効果を有し得、伝統的治療戦略の副作用(例えば、テトラサイクリンの副作用)を低減し得る。これは、少なくとも一部は、本明細書で概説したような併用アプローチに従った場合に薬物のより低い用量が必要であり得るという事実に起因する。
【0260】
多くの診断用デバイスは、照射のみのための、又は診断自体のため、例えば、酸素などの血液パラメーターの測定のための機能的構成要素としての光源を含む。したがって、本発明はまた、診断目的のための前記QD−LECに関する。診断目的のための前記QD−LECを含む光源の使用も本発明の対象である。本発明の教示に基づいて、当業者は、前記QD−LECを含む光源が必要である診断用デバイスを開発するための問題を有さない。
【0261】
治療は、前記QD−LECの放射線への対象の曝露である。治療は、対象とQD−LEC(複数可)を含むデバイスとの直接的接触により、又はそれらの間の直接的接触なしに実施することができる。治療は、対象の外部又は内部であり得る。対象の外部の治療は、例えば、皮膚、創傷、眼、歯肉、粘膜、舌、毛、爪床及び爪の治療であり得る。対象の内部治療は、例えば、対象の血管、心臓、胸部、肺又は他の臓器の治療であり得る。対象の内部での大部分の適用のために特定のデバイスが必要である。1つのそのような例は、本発明による1以上のQD−LECを含むステントであり得る。前記対象は、好ましくはヒト又は動物であり得る。美容という用語は、審美応用も含む。
【0262】
いかなる種類の電子デバイスに組み込んだ場合にもQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射される光の波長は、QD−LECの適切な構成要素の選択により精密に調整することができる。これは、上で概説したように、量子ドットの個別の設計及び異なるエミッタ又は色フィルター及び色コンバータの使用を含む。QD−LEC(複数可)の応用分野によって、各治療又は美容処置は、多かれ少なかれ定義された、放射される波長又は波長のスペクトルを必要とする。
【0263】
QD−LEC(複数可)は、好ましくは200〜1000nm、好ましくは300〜1000nm、特に好ましくは300〜950nm、極めて特に好ましくは400〜900nmの範囲の光又は放射線を放射する。
【0264】
上で概説したように、光療法の1つの効果は、ミトコンドリアにおける代謝の刺激である。光療法の後に、細胞は、代謝の亢進を示し、より十分に伝達し、より良い方法でストレスの多い条件を乗り切って生き残る。
【0265】
前記QD−LEC(複数可)及び/又はそれらを含む前記デバイスは、細胞刺激のために用いることができる。細胞刺激のための好ましい波長又は波長の範囲は、600〜900nm、特に好ましくは620〜880nm、極めて特に好ましくは650〜870nmの範囲にある。細胞刺激のための特に好ましい波長の例は、683.7、667.5、772.3、750.7、846及び812.5nmである。
【0266】
光療法によりアプローチ可能な治療上の疾患及び/又は美容上の状態は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び前記デバイスにより治療することができる。これらの疾患及び/又は状態は、例えば、皮膚疾患、並びに皮膚老化及びセルライト、毛孔の拡大、油性肌、毛嚢炎、前癌状態日光性角化症、皮膚病変、老化、しわの多い日焼けで傷んだ肌、目尻のしわ、皮膚潰瘍(糖尿病性、圧迫性、静脈うっ滞性)、酒さ病変、セルライトを含む皮膚関連状態;皮脂腺及び周囲組織の光モジュレーション、しわの減少(reducing wrinkles)、ざ瘡瘢痕及びざ瘡細菌、炎症、疼痛、創傷、心理学及び神経学関連疾患及び状態、浮腫、パジェット病、原発性及び転移性腫瘍、結合組織疾患、哺乳類組織におけるコラーゲン、線維芽細胞及び線維芽細胞由来細胞レベルの操作、網膜、腫瘍性、新生血管及び肥大性疾患の照射(illuminating)、炎症及びアレルギー反応、エクリン(汗)及びアポクリン腺からの蒸散、発汗及び発汗過多、黄疸、白斑、眼新生血管疾患、神経性過食症、ヘルペス、季節性感情障害、気分、睡眠障害、皮膚癌、クリグラーナジャー、アトピー性皮膚炎、糖尿病性皮膚潰瘍、褥瘡、膀胱感染、筋痛、疼痛、関節の硬直の軽減、細菌、歯肉炎の低減、歯のホワイトニング、口内の歯及び組織の治療、創傷治癒を含む。
【0267】
美容上の状態は、好ましくはざ瘡、皮膚若返り及び皮膚のしわ、セルライト及び白斑から選択される。多くの治療処置は、美容要素も有する。例えば、乾癬は、軽度、軽度から中等度、中等度、中等度から重度及び重度であり得る。これらのカテゴリーのいずれかは、美容要素を有し、これが罹患患者の高度な心理的問題の原因となり得る。
【0268】
好ましくは、前記QD−LEC(複数可)をヒト及び/又は動物の治療及び/又は予防に用いる。好ましくは、本発明によるQD−LEC(複数可)をヒトの治療及び/又は予防に用いる。
【0269】
本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスによる照射により処置するのに適するさらなる対象は、植物、微生物、細菌、真菌及び液体である。微生物は、細菌及び古細菌などの原核生物並びに原生生物、動物、真菌及び植物などの真核生物を含むが、これらに限定されない。好ましい液体は、飲料、特に好ましくは水である。
【0270】
皮膚疾患及び/又は美容上の皮膚状態の治療及び/又は予防及び/又は診断のためのQD−LEC及び/又はそれを含むデバイスの使用が好ましい。
【0271】
本明細書で用いる皮膚は、毛、うろこ、羽毛及び爪を含む外皮系の最大の器官と定義される。皮膚という用語は、舌、粘膜及び歯肉も含む。
【0272】
既に述べたように、光療法によりアプローチ可能である主として治療上及び美容上の状態が本発明によりカバーされる。治療上及び美容上という用語の間の区別は、上で概説したように、個別の状況、状態の重症度及び医師の評価に依存する。本発明において概説したように、多くの治療上の状態は、治療上の疾患の重症度に無関係に、美容効果に関連する。
【0273】
皮膚疾患及び皮膚関連状態は、ざ瘡状発疹、自己炎症性皮膚疾患又は状態、慢性水疱形成、粘膜の状態、皮膚付属器の状態、皮下脂肪の状態、結合組織疾患、皮膚線維及び弾性組織の異常、皮膚及び皮下増殖、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、湿疹、膿疱性皮膚炎、脂漏性皮膚炎及び湿疹、色素沈着の障害、薬疹、内分泌系疾患及び状態、表皮母斑疾患及び状態、腫瘍、嚢胞、紅斑、遺伝性皮膚症、感染関連疾患及び状態、細菌関連疾患及び状態、マイコバクテリア疾患及び状態、真菌症関連疾患及び状態、寄生虫繁殖、刺創及び咬傷、ウイルス関連疾患及び状態、苔癬様発疹、リンパ関連疾患及び状態、メラノサイト母斑及び新生物、単球及びマクロファージ関連疾患及び状態、ムチン沈着症、神経皮膚、非感染性免疫不全関連疾患及び状態、栄養関連疾患及び状態、丘疹落屑性角質増殖関連疾患及び状態、痒み関連疾患及び状態、乾癬(軽度、軽度から重度及び重度)、反応性好中球性疾患及び状態、難治性掌蹠発疹、代謝異常に起因する疾患及び状態、物理的因子に起因する疾患及び状態、蕁麻疹及び血管性浮腫、血管関連疾患及び状態、並びに歯周炎及び歯肉の他の疾患及び状態を含むが、これらに限定されない。
【0274】
皮膚関連疾患及び状態はまた、皮膚腫瘍、前癌状態の腫瘍、悪性腫瘍、細胞癌、二次性転移、放射線皮膚障害及び角化症を含む。
【0275】
創傷の治癒も皮膚疾患及び皮膚関連状態に割り当てることができる。創傷治癒は、これにより、治療を受ける対象の外面で、その内部で、皮膚、眼、爪又は爪床において、対象の口内の表面で、及び粘膜、歯肉、血管系の上皮表面又は対象の身体の他の部位で起こり得る。
【0276】
ざ瘡、乾癬、湿疹、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性湿疹、浮腫、白斑、皮膚老化、皮膚のしわ、皮膚脱感作、ボーエン病、腫瘍、前癌状態腫瘍、悪性腫瘍、基底細胞癌、扁平上皮癌、二次性転移、皮膚T細胞リンパ腫、日光性角化症、ヒ素角化症、放射線皮膚障害、皮膚発赤、面皰及びセルライトから選択される皮膚疾患及び/又は美容皮膚状態の治療及び/又は予防及び/又は診断が好ましい。
【0277】
本発明によるQD−LEC(複数可)及びデバイスは、スキンケア及び皮膚修復用に化粧品に例えば、光プラスターとして用いることができる。前記QD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射される波長又は波長の範囲は、400〜800nm、好ましくは450〜750nm、特に好ましくは500〜700nm、極めて特に好ましくは580〜640nmである。
【0278】
好ましい皮膚疾患及び皮膚関連状態は、ざ瘡、乾癬、湿疹、浮腫、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、白斑、ボーエン病、腫瘍、前癌状態腫瘍、悪性腫瘍、基底細胞癌、扁平上皮癌、二次性転移、皮膚T細胞リンパ腫、日光性角化症、ヒ素角化症、放射線皮膚障害及びセルライトから選択される。
【0279】
さらなる好ましい皮膚疾患及び皮膚関連状態は、乾癬、多形性光線疹、日光蕁麻疹、光線性類細網症、アトピー性湿疹、白斑、掻痒、扁平苔癬、初期皮膚T細胞リンパ腫、皮膚描記症及び苔癬状糀糠症から選択される。好ましくは、これらの疾患及び状態は、200〜500nm、特に好ましくは250〜400nm、極めて特に好ましくは270〜350nmの波長又は波長の範囲を有する光で治療する。
【0280】
前記QD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、PUVA療法に用いることができる。PUVA療法は、ソラレン(7H−フロ[3,2−g]クロメン−7−オン)及びその誘導体をUV−A光とともに治療に適用することに由来する。PUVAは、過剰増殖状態によって特徴づけられる皮膚疾患の治療に用いることができる。ソラレンは、天然産物のファミリーにおける特許化合物である。ソラレンは、クマリンと構造的に関連しており、好ましくは乾癬、湿疹、白斑、キノコ状真菌症、皮膚T細胞リンパ腫及びその他の自己免疫疾患の治療に用いることができる。PUVAにより、アトピー性湿疹、扁平苔癬、色素性蕁麻疹、多形性光線症及び円形脱毛症も治療することができる。
【0281】
ソラレンは、皮膚に経口又は局所投与することができる。好ましい化合物は、ソラレン、8−メトキシソラレン(8−MOP)、5−メトキシソラレン(5−MOP)及び4,5’,8−トリメチルソラレン(TMP)である。8−MOPの経口投与後に、患者は、UV−Aに対して、したがって、光化学療法治療に対して徐々に反応性になる。患者は、薬物摂取の2〜3時間後に最大に反応性であり、この期間中に照射を行う。
【0282】
白斑の場合、ソラレンの代わりにケリンを用いることができる。光とケリンとの併用療法は、しばしばKUVAと呼ばれる。
【0283】
本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、循環光療法にも用いることができる。循環光療法は、末梢血を体外フローシステムに曝露して5−MOPを光活性化する方法であり、異常なTリンパ球によって引き起こされる障害の療法である。それは、進行皮膚T細胞リンパ腫、尋常性天疱瘡及び進行性全身性硬化症(強皮症)に対する療法である。それを使用して自己免疫性疾患を治療することができる。治療することができるさらなる疾患は、多発性硬化症、臓器移植拒絶反応、慢性関節リウマチ及びAIDSなどである。
【0284】
本発明は、ざ瘡状発疹の治療について本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスを特に引き合いに出す。ざ瘡状発疹という用語は、尋常性ざ瘡、酒さ、毛嚢炎及び口周皮膚炎を含む皮膚症の群を意味する。ざ瘡状発疹は、一般的に言えば、毛嚢脂腺ユニットの変化によって引き起こされ、夏季ざ瘡(マヨルカざ瘡)、集簇性ざ瘡、化粧品ざ瘡、劇症ざ瘡(急性熱性潰瘍性ざ瘡)、ケロイドざ瘡(頂部ケロイドざ瘡)、頭部乳頭状皮膚炎、ケロイド毛嚢炎、頂部ケロイド毛嚢炎、頂部ケロイドざ瘡)、機械的ざ瘡、薬物性ざ瘡、粟粒状壊死性ざ瘡(痘瘡性ざ瘡)、尋常性ざ瘡、顔面浮腫を伴うざ瘡(固形顔面浮腫)、ざ瘡状発疹、眼瞼腫瘍、紅斑毛細血管拡張性酒さ(erythrotelangiectatic rosacea)(erthemaotelangiectatic rosacea)、擦創性ざ瘡(若年性女子表皮剥離性ざ瘡、ピッケルざ瘡)、腺性酒さ、顎瘤腫、グラム陰性酒さ、肉芽腫性顔面皮膚炎、肉芽腫性口周皮膚炎、ハロゲンざ瘡、化膿性汗腺炎(hidradenitis suppurativa)(acne inversa、ベルネーユ病)、特発性顔面無菌性肉芽腫、乳児ざ瘡、類狼瘡酒さ(肉芽腫性酒さ、小乳頭類結核、レワンドウスキイの酒さ様結核)、前頭瘤腫、新生児ざ瘡(乳児ざ瘡、新生児ざ瘡)、職業性ざ瘡、眼性酒さ(ophthalmic rosacea)(ocular rosacea、ophthalmorosacea)、耳瘤腫、酒さの持続性浮腫(慢性上部顔面紅斑性浮腫、モルビハン病、酒さ性リンパ浮腫)、ポマードざ瘡、丘疹膿疱性酒さ、膿瘍性穿堀性頭部毛嚢周囲炎(perifolliculitis capitis abscedens et suffodiens)(dissecting perifolliculitis of the scalp、dissecting folliculitis、perifolliculitis capitis abscedens et suffodiens of Hoffman)、口周囲皮膚炎、眼窩周囲皮膚炎(眼周囲皮膚炎)、顔面膿皮症(劇症性酒さ)、鼻瘤、酒さ(酒さ性ざ瘡)、集簇性酒さ、劇症性酒さ、SAPHO症候群、ステロイド酒さ、熱帯性ざ瘡から選択される。
【0285】
尋常性ざ瘡(一般的にざ瘡と呼ばれる)は、アンドロゲン刺激による毛嚢脂腺ユニット、毛包及びその関連脂腺からなる皮膚構造の変化によって引き起こされた一般的な皮膚状態である。それは、非炎症性毛包性丘疹又は面皰によって、また炎症性丘疹、膿疱及びそのより重度の形の小結節によって特徴づけられる。尋常性ざ瘡は、脂腺毛嚢の最も密集した集団を有する皮膚の領域を罹患させるものであり、これらの領域は、顔面、胸部の上部及び背部を含む。重度のざ瘡は、炎症性であるが、ざ瘡は、非炎症性の形でも発現し得る。ざ瘡病変は、一般的ににきび、吹き出物、あばた、にきび又は単にざ瘡と呼ばれている。
【0286】
ざ瘡は、最も一般的には青年期に起こり、十代の89%以上を罹患させ、しばしば成人期まで持続する。青年期において、ざ瘡は、通常男性ホルモンの増加(これは、思春期に男女で生ずる)によって引き起こされる。ほとんどの人では、ざ瘡は、時とともに減少し、消失する傾向があり、或いは、二十代の初期に達した後に少なくとも減少する。しかし、完全に消失するのにはどれほどの期間を要するのかを予測しようがなく、一部の人は、三十代、四十代に、またそれを越えて持ち越す。
【0287】
顔面及び上部頸部が最も一般的に罹るが、胸部、背部及び肩にもざ瘡を有し得る。上腕もざ瘡を有し得るが、そこに認められる病変は、しばしば毛孔性角化症である。一般的なざ瘡病変は、面皰、炎症性丘疹、膿疱及び小結節である。大きな小結節の一部は、嚢胞とも呼ばれ、結節性嚢腫という用語が炎症性ざ瘡の重症例を記述するために用いられている。
【0288】
瘢痕化は別にして、その主な影響は、自尊心の低下及び場合によって、うつ状態又は自殺などの心理的なものである。ざ瘡は、人が既に社会的に最も不安定である青年期に通常出現する。したがって、個人への全体的な影響を軽減するために早期かつ攻撃的な治療が一部により推奨されている。
【0289】
光曝露は、ざ瘡の療法として用いることができる。週2回の使用で、これがざ瘡病変の数を約64%減少させることが示され、毎日適用する場合、より有効である。その機序は、420nm及びより短い波長の光により照射された場合、プロピオニバクテリウム・アクネス(P.acnes)内で産生されたポルフィリン(Coproporphyrin III)がフリーラジカルを発生することであると思われる。特に、数日間にわたって適用した場合、これらのフリーラジカルが最終的に細菌を殺す。ポルフィリンは、他の場合には皮膚に存在しないので、UV光は用いず、安全であると思われる。
【0290】
紫色/青色光と赤色可視光(例えば、660nm)との混合で用いる場合、当療法は明らかにより十分に機能し、患者の80%について毎日治療して3カ月後に病変の76%の減少がもたらされ、全体的なクリアランスは、ベンゾイルペルオキシドと同様か、又はそれより良好である。大部分の他の療法と異なり、あるとしても少数のマイナスの副作用が一般的に経験され、療法に対する細菌の抵抗性の発生は、極めてあり得ないと思われる。治療後、クリアランスは、抗生物質の局所又は経口投与で一般的であるよりも長く持続させることができ、数カ月はまれではない。さらに、皮膚科医による基礎的な科学及び臨床研究で、特にプロピオニバクテリウム・アクネス(P.acnes)を、ポルフィリンの産生を増加させるデルタ−アミノレブリン酸(ALA)で前処理した場合に、強い青色/紫色光(405〜425nm)が4週間の治療で炎症性ざ瘡病変の数を60〜70%減少させることができるという証拠が得られた。
【0291】
したがって、本発明はまた、治療上の疾患及び/又は美容上の状態の治療のための前記QD−LEC(複数可)又は前記デバイスと活性薬物又は有効成分との併用に関する。特に、本発明は、前記QD−LEC(複数可)とざ瘡の治療に用いられる薬物との併用に関する。薬物は、抗生物質(局所及び/又は経口)、ホルモン療法薬、局所レチノイド、局所殺菌剤、硫黄などのざ瘡を治療するために一般的に用いられる薬物から選択することができる。適切な局所殺菌剤は、例えば、過酸化ベンゾイル、トリクロサン及びグルコン酸クロルヘキシジンである。適切な局所抗生物質は、例えば、エリスロマイシン、クリンダマイシン及びテトラサイクリンである。適切な経口抗生物質は、例えば、エリスロマイシン、テトラサイクリン抗生物質(例えば、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン又はリメサイクリン)、トリメトプリム及びミノサイクリンである。
【0292】
適切なホルモンは、例えば、エストロゲン、プロゲストロン、エストロゲンとプロゲストゲンの配合剤、シプロテロン、エストロゲン、シプロテロンとエストロゲンの配合剤、ドロスピレノン、スピロノラクトン及びコルチゾンから選択される。適切な経口レチノイドは、例えば、イソトレチノイン(例えば、Accutane、Amnesteem、Sotret、Claravis、Clarus)などのビタミンA誘導体である。適切な局所レチノイドは、例えば、トレチノン(例えば、Retin−A)、アダパレン(例えば、Diffein)、タザロテン(例えば、Tazorac)、イソトレチノン及びレチノールである。さらなる適切な薬物は、例えば、抗炎症薬から選択される。
【0293】
本発明によるQD−LEC(複数可)及びそれらを含むデバイスは、ざ瘡を治療又は予防するために皮膚剥離術と組み合わせて用いることもできる。皮膚剥離術は、皮膚の表面を表皮剥離(サンディング)により除去する美容医療手技である。
【0294】
これにより、あらゆる治療戦略が含められる。例えば、薬物を最初に特定の期間にわたり投与した後、本発明によるQD−LEC(複数可)又は前記デバイスを用いた光療法を適用することができる。両療法の間の時間ギャップも、薬物、その光反応性、対象の個別の状況及び個別の疾患又は状態によって異なり得る。両療法はまた、折よく部分的又は完全に重複し得る。的確な治療戦略は、個別の状況及び疾患又は状態の重症度に依存する。
【0295】
併用療法は、相乗効果を有し得、伝統的治療戦略の副作用(例えば、テトラサイクリンの副作用)を低減し得る。これは、本明細書で概説したような併用アプローチに従った場合に薬物のより低い用量が必要であり得るという事実に起因する。
【0296】
面皰(ブラックヘッド(blackhead)とも呼ばれる)も本発明によるQD−LEC(複数可)又はデバイスを用いた光療法により治療することができる。面皰は、皮膚上の黄色又は黒みがかった瘤又はプラグである。実際には、それは、尋常性ざ瘡の一種である。面皰は、脂腺の管に蓄積した過剰な油によって引き起こされる。これらの瘤に認められる物質は、ケラチンと酸化されたとき薄黒くなる修飾皮脂から主としてなっている。閉塞した毛包(ここでブラックヘッドがしばしば起こる)は、光を不規則に反射して面皰を生ずる。このような理由のため、閉塞物は、孔から抜き出したときに必ずしも黒く見えないが、そのメラニンの含有量の結果としてより黄褐色を有し得る。
【0297】
これと対照的に、いわゆるホワイトヘッド(whitehead)(閉鎖面皰とも呼ばれる)は、同じ物質、すなわち皮脂で満たされているが、皮膚表面への顕微鏡的開口部を有する毛包である。空気が毛包に達しないので、物質は、酸化されず、白色のままである。
【0298】
ざ瘡の治療に用いる本発明によるQD−LEC(複数可)又はデバイスは、好ましくは、350〜900nm、好ましくは380〜850nm、特に好ましくは400〜850nm、極めて特に好ましくは400〜800nmの範囲の光を放射する少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセンス化合物を含む。
【0299】
ざ瘡の治療のためのさらなる特に好ましい光は、青色光である。好ましい青色光は、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429及び430nmであるざ瘡の治療のための発光波長を有する。例えば、414及び415nmは、プロピオニバクテリウム・アクネス(P.acnes)細菌を殺し、存在するにきびを治療する助けとし、さらなる突発を防ぐために特に適している。
【0300】
ざ瘡を治療するための光療法の適用に関する試験で、異なる波長又は波長の範囲の組合せがざ瘡を効果的に治療するために特に適していることが明らかになった。したがって、ざ瘡を治療するのに赤色光と青色光の組合せが特に好ましい。前記赤色光は、好ましくは、590〜750nm、特に好ましくは600〜720nm、極めて特に好ましくは620〜700nmの範囲から選択される。ざ瘡の治療のための2つのさらなる好ましい波長は、633及び660nmである。青色光は、上述のような波長から選択することができる。
【0301】
面皰の場合、500nmの波長を有する光又は500〜700nmの範囲の波長を有する光を放射する発光化合物(複数可)を含むQD−LEC(複数可)が特に好ましい。
【0302】
セルライトは、ほとんどの女性において発生するとされ、下肢、腹部及び骨盤部の皮膚がくぼんだ状態になる状態を言う。セルライトの原因は、十分には理解されておらず、女性に特異的な二形性の皮膚構造、結合組織構造の変化、血管の変化及び炎症性過程などの代謝及び生理の変化に関連している可能性がある。2種の療法がセルライトを予防又は治療するために適用される。熱及び血流の増加が2つの一般的な手法である。したがって、光療法は、セルライトに罹患している人に有益であると考えられる。本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、セルライトの治療及び/又は予防に適している。PTDもセルライトの治療及び/又は予防に適している。
【0303】
本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射されるセルライトの治療及び/又は予防のための波長は、400〜1000nmの範囲、好ましくは400〜900nmの範囲、特に好ましくは450〜900nm、極めて特に好ましくは500〜850nmの範囲にある。より一般的な用語である皮膚老化は、しわの形成と過剰色素沈着の両方を意味する。内因及び外因の皮膚に対する作用に起因するヒト皮膚の老化の徴候は、しわ及び小じわの出現により、しなびた外観を生じさせる皮膚の黄変並びに色素沈着染みにより、一般的に角質層及び表皮の肥厚と真皮の菲薄化をもたらす皮膚の厚さの変化により、弾性、柔軟性及び堅さの喪失をもたらすエラスチン及びコラーゲン線維の分裂により、毛細血管拡張の出現により定義される。
【0304】
これらの徴候の一部は、いわば年齢に関連する「正常な」老化による内因性又は生理的老化であるが、他は、いわば一般的に環境により引き起こされる老化である外因性老化により特有なものであり、そのような老化は、とりわけ日光への曝露に起因する光老化である。皮膚の老化を引き起こす他の因子は、大気汚染、創傷、感染、外傷性傷害、無酸素症、喫煙、ホルモン状態、神経ペプチド、電磁場、重力、ライフスタイル(例えば、アルコールの過度の消費)、反復顔貌(repetitive facial expression)、睡眠時体位及び精神的ストレッサーである。
【0305】
内因性老化に起因して起こる皮膚の変化は、内因性因子に関係する遺伝的にプログラムされた因果連鎖の結果である。この内因性老化は、特に皮膚細胞の再生を遅らせ、これが、皮下脂肪組織の減少などの臨床的障害の出現及び小じわ又は小さなしわの出現に、弾性線維の数と厚さの増加、弾性組織膜からの垂直線維の喪失並びにこの弾性組織の細胞における大きな不規則線維芽細胞の存在などの組織病理学的変化に本質的に反映される。
【0306】
これと対照的に、外因性老化は、深いしわ及びたるみ、日焼けした皮膚などの臨床的障害を、また上部真皮における弾性物質の過度の蓄積及びコラーゲン線維の変性などの組織病理学的変化をもたらす。
【0307】
皮膚の老化の原因となる種々の生物学的及び分子的機序が存在し、その過程は、現在のところ十分には理解されていない。しかし、皮膚の老化の内因及び外因の両方が共通の機序を共有していることが認められた[P. U. Giacomoniら、Biogerontology、2004年、2巻、219〜229頁]。これらの因子は、皮膚老化をもたらす皮膚における障害の蓄積につながる過程を誘発する。その理由は、細胞接着分子の発現が循環免疫細胞の動員及び血管外遊出を誘発し、免疫細胞が、コラゲナーゼ、ミエロペルオキシダーゼ及び活性酸素種を分泌することによって細胞外マトリックス(ECM)を消化するからである。
【0308】
これらの溶解過程の活性化がこれらの常在細胞のランダム損傷を引き起こし、これらが次にプロスタグランジン及びロイコトリエンを分泌する。これらのシグナル伝達分子は、オータコイドヒスタミン及びサイトカインTNFアルファを放出し、それにより、P−セレクチンを放出する隣接毛細血管の内層を構成する内皮細胞を活性化する常在マスト細胞の脱顆粒及びE−セレクチン及びICAM−1などの細胞接着分子の合成を誘発する。これは、自己維持マイクロ炎症性サイクルを閉じ、これがECM損傷の蓄積、すなわち、皮膚老化をもたらす。
【0309】
皮膚老化の治療及び予防のための新規な戦略の強い美容上及び治療上の必要性がある。とりわけ皮膚の老化を予防又は治療することを意図した様々な美容及び治療構成内容(スキンケアを含む)は、公知である。レチノイン酸及びその誘導体は、特に米国特許第4603146号においてスキンケア、美容又は皮膚科学構成内容における老化防止剤と記載された。乳酸、グリコール又は代わりとなるものとしてクエン酸などのヒドロキシ酸も、この同じ応用について公知であり、これらの酸は、多くの特許及び刊行物(例えば、欧州特許出願公開第413528号)に記載され、市場における多くのスキンケア、美容又は皮膚科学構成内容に導入された。サリチル酸などの芳香族オルトヒドロキシ酸も提案された(例えば、国際公開第93/10756号及び国際公開第93/10755号)。
【0310】
これらの化合物のすべては、落屑、すなわち、角質層の表面における死細胞の除去によって皮膚の老化に対抗して作用する。この落屑は、角質溶解特性とも呼ばれる。しかし、これらの化合物は、使用者が不快を認める刺痛感及び発赤からなる副作用も有する。したがって、公知の化合物と少なくとも同様に有効であるが、それらの欠点を示さない老化防止法が依然として必要である。皮膚老化を治療又は予防するための確立された戦略と異なり、セレクチン機能を調節することは、非常に早期にマイクロ炎症カスケードに介入する新規な概念であり、本発明により内因性及び外因性皮膚老化を治療し、予防することは、他の戦略で公知の欠点のない戦略である。
【0311】
光療法は、皮膚の老化を治療する新たな方法を提供する。したがって、本発明の他の対象は、皮膚の老化の治療及び/又は予防のための本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスの使用である。これは、本発明がとりわけ皮膚の若返りのため及びしわの形成を低減又は予防するための解決策を提供することを意味する。
【0312】
本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射させるべき皮膚老化の治療のための波長は、400〜950nmの範囲にある。好ましくは波長は、550〜900nm、特に好ましくは550〜860nmの範囲にある。
【0313】
本発明のQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、本発明の他の実施形態に対しても適用される異なる波長又は波長範囲の光も放射し得る。
【0314】
本発明の他の好ましい実施形態において、皮膚老化の治療に用いるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、600〜650nmの範囲、特に好ましくは620〜650nmの範囲の光を放射する。
【0315】
皮膚老化の治療及び/又は予防に用いる本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、好ましくは350〜950nm、好ましくは380〜900nm、特に好ましくは400〜900nmの範囲の光を放射する少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセンス化合物を含む。
【0316】
皮膚老化の治療及び/又は予防のためのさらなる特に好ましい光は、青色光である。好ましい青色光は、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429及び430nmである皮膚老化の治療及び/又は予防のための発光波長を有する。例えば、415nmが特に適している。
【0317】
皮膚老化の治療及び/又は予防のためのさらなる特に好ましい光は、400〜900nmの波長を有する。
【0318】
皮膚の若返りも830nm又は当値のわずかに下又は上の波長の光で達成することができる。したがって、700〜1000nm、好ましくは750〜900nm、特に好ましくは750〜860nm、極めて特に好ましくは800〜850nmの範囲の光を放射する本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスも本発明の対象である。
【0319】
対象の皮膚の発赤は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療することができる。本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射させるべき発赤の治療及び/又は予防のための波長は、460〜660nmの範囲にある。好ましくは波長は、500〜620nm、特に好ましくは540〜580nmの範囲にある。この目的のための1つの特に好ましい波長は、560nmである。対象の皮膚炎は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療することができる。本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射させるべき皮膚炎の治療及び/又は予防のための波長は、470〜670nmの範囲にある。好ましくは波長は、490〜650nm、特に好ましくは530〜610nmの範囲にある。この目的のための2つの特に好ましい波長は、550nm及び590nmである。
【0320】
対象のアトピー性湿疹は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療することができる。本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射させるべきアトピー性湿疹の治療及び/又は予防のための波長は、470〜670nmの範囲にある。好ましくは波長は、490〜650nm、特に好ましくは530〜610nmの範囲にある。この目的のための1つの特に好ましい波長は、320nmである。
【0321】
乾癬は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療することができる。本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射させるべき乾癬の治療及び/又は予防のための波長は、240〜500nmの範囲にある。好ましくは波長は、290〜400nm、特に好ましくは300〜330nmの範囲にある。この目的のための2つの特に好ましい波長は、311nm及び320nmである。
【0322】
白斑は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療することができる。本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射させるべき白斑の治療及び/又は予防のための波長は、240〜500nmの範囲にある。好ましくは波長は、290〜400nm、特に好ましくは300〜330nmの範囲にある。この目的のための1つの特に好ましい波長は、311nmである。
【0323】
標的光療法は、健常皮膚の曝露を最小限にしながら特定の皮膚症への紫外光の治療的投与を可能にした。具体的には、紫外Bの範囲内の光の308nmの波長は、白斑、乾癬並びに瘢痕、白線及びCO
2レーザーリサーフェシング後に関連するような白斑を含む多くの皮膚症に特に有効であると示された。
【0324】
本発明のQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、浮腫の治療にも用いることができる。以前には水症(dropsy)又は水症(hydropsy)として公知の浮腫は、皮膚の下又は身体の1以上の腔における体液の異常な蓄積である。一般的に、間質液の量は、体液の恒常性のバランスによって決定され、間隙内への体液の分泌の増加又はこの体液の除去の障害が浮腫の原因であり得る。次の5つの要因が浮腫の形成に寄与し得る。すなわち、(1)それが静水圧の増加若しくは血管内の腫脹圧力の低下により促進される可能性がある又は(2)炎症におけるような血管壁の透過性の増大による又は(4)リンパによる体液クリアランスの妨害による又は(5)組織自体の水保持特性の変化による。静水圧の増加は、腎臓による水及びナトリウムの保持をしばしば反映する。
【0325】
浮腫の治療に用いる本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、好ましくは760〜940nm、好ましくは780〜920nm、特に好ましくは800〜900nm、極めて特に好ましくは820〜880nmの範囲の光を放射する。
【0326】
浮腫の治療のための1つのさらなる特に好ましい発光波長は、850nmである。
【0327】
本発明の他の対象は、感染及び炎症性、神経性及び精神の疾患及び/又は状態の治療及び/又は予防のための本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスに関する。
【0328】
多くの炎症性疾患、障害及び状態は、光療法により治療することができる。炎症性障害の治療及び/又は予防のための本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスも本発明の対象である。炎症性疾患及び状態は、広範囲の徴候を含む。見たところでは炎症に無関係である多くの疾患又は状態は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療することができる炎症構成要素を有する。本発明において言及した皮膚疾患及び状態はすべて、ざ瘡、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹などの炎症構成要素を有する。本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療することができるさらなる炎症性疾患の非限定的な選択は、関節炎、炎症性腸疾患、歯肉炎症、粘膜の炎症、爪床の炎症、動脈硬化症及び血管系の炎症である。
【0329】
炎症の治療及び/又は予防のための好ましい波長は、350〜900nm、特に好ましくは380〜900nm、極めて特に好ましくは400〜860nmの範囲にある。炎症の治療及び/又は予防のためのさらなる好ましい波長は、405、420及び850nmである。
【0330】
前記QD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、感染の治療及び/又は予防に用いることができる。感染は、細菌及びウイルスによって引き起こされ得る。光は、感染に対するいくつかの好ましい効果を有する。光は、例えば、本発明における他所で概説したように組織の刺激による抗炎症効果を有する。
【0331】
本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスによる光療法は、創傷を治療するために用いることが有益である。創傷治癒は、しばしば炎症を伴う。したがって、炎症の治療及び/又は予防について概説したのと同じ波長及び波長の範囲を適用することができる。光療法による創傷の治療は、瘢痕の形成も予防する。創傷及び/又は瘢痕の治療及び/又は予防のための特に好ましい波長は、600〜950nm、極めて特に好ましくは650〜900nmの範囲にある。創傷及び瘢痕の治療及び/又は予防のためのさらなる好ましい波長は、660、720及び880nmである。
【0332】
本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより効果的に治療することができる他の感染は、細菌により引き起こされる。
【0333】
本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより効果的に治療することができるさらなる感染は、ウイルスにより引き起こされる。本発明の好ましい実施形態は、サイトメガロウイルス(CMV)、脳心筋炎ウイルス(EMCV)、ポリオウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザ呼吸器インフルエンザウイルス、RSウイルス、日本脳炎ウイルス、デング熱ウイルス、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、F型肝炎ウイルス(HEV)、G型肝炎ウイルス(HGV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)、水疱−帯状疱疹ウイルス、単純疱疹ウイルス、特に、単純疱疹ウイルス1型(HSV−1)、単純疱疹ウイルス2型(HSV−2)又はヒトヘルペスウイルス1、2、3、4、7若しくは8、カポシ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、ロタウイルス、乳頭腫ウイルス、及びヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、特に1、2、3、4、5、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19〜29、31、32、34、36〜38、46〜50、56若しくは58型のHPVウイルスにより特に引き起こされるウイルス感染の治療及び/又は予防のための前記QD−LEC(複数可)及び/又はデバイスの使用である。
【0334】
特に、パピローマウイルスにより引き起こされる性器いぼ、皮膚及び/又は粘膜の良性腫瘍、特に足底いぼ、尋常性いぼ、青年性扁平いぼ、いぼ状表皮異形成、尖圭コンジローム、扁平コンジローム、ボウエノイド丘疹症、喉頭及び口腔粘膜上の乳頭腫、限局性上皮過形成、口唇、水痘及び帯状ヘルペスなどのウイルス性皮膚疾患及び/又は腫瘍障害は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療することができる。
【0335】
本発明の特に好ましい実施形態において、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、いぼの治療及び/又は予防のために用いることができる。パルス光療法は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスによりいぼを治療する1つの方法である可能性がある。
【0336】
神経又は精神疾患及び/又は状態の治療及び/又は予防のための本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスも本発明の対象である。
【0337】
本発明による好ましい神経疾患は、パーキンソン病(MB)である。光が特定の強度レベルに達するとき、それがメラトニンを阻害し、これがひいてはドーパミンの産生を制限する。制限することにより、メラトニンが脳内のドーパミンのより十分な産生及び使用をもたらすと推測される。高輝度光療法を必要とするMB患者における光療法の最近の症例試験で好ましい結果が得られ、90分間曝露したにすぎなかったが、ほとんどの患者で運動緩慢及び固縮が顕著に改善した。
【0338】
本発明によるさらなる好ましい神経及び精神疾患及び/又は状態は、気分及び睡眠関連である。光は、多くの状況において気分に対して有益であることが周知である。光療法は、うつ病、季節性感情障害(SAD)、非季節性うつ病、概日リズム睡眠障害(慢性概日リズム睡眠障害(CRSD)、状況性CRSD)を治療するためにも用いることができる。
【0339】
米国国立医学図書館(US National Library of Medicine)は、一部の人は季節が変わるときに重篤な気分の変化を経験することに言及している。彼らは、過度に睡眠し、ほとんどエネルギーを持たず、甘いもの及びでんぷん食物を切望する可能性がある。彼らは、うつ状態も感ずる。症状は重度であり得るが、通常治癒する。夏における状態は、しばしば逆季節性感情障害(Reverse Seasonal Affective Disorder)と呼ばれ、不安の高まりも含み得る。米国における成人の1.5〜9%がSADを経験していると推定された。
【0340】
高輝度光による光療法、抗うつ薬療法、認知行動療法、イオン化空気投与及びメラトニンホルモンの注意深く時間制限を設けた補足などの、古典的(冬季)季節性感情障害に対する種々の療法が存在する。
【0341】
前記QD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射させるべきこれらの神経及び精神疾患及び/又は状態の治療及び/又は予防のための波長は、350〜600nmの範囲にある。好ましくは波長は、400〜550nm、特に好ましくは440〜500nmの範囲にある。この目的のための2つの特定の好ましい波長は、460及び480nmである。
【0342】
本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、疼痛の治療及び/又は予防のためにも用いることができる。光療法による疼痛の軽減は、周知である。次の状態は、光療法により成功裏に治療することができる疼痛を生じさせる。すなわち、手根管症候群、慢性創傷、上顆炎、頭痛、片頭痛、足底筋膜炎、腱炎及び滑液包炎、頸痛、背痛、筋痛、三叉神経痛及びむち打ち関連損傷。
【0343】
好ましくは、筋痛を赤色又は赤外光を放射するQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療する。
【0344】
円形脱毛症は、ヒトを罹患させる状態であり、身体の一部又は全領域から、通常頭皮から毛が失われる。それは、特に第1のステージにおいて頭皮上の禿げた部分を生じさせるため、時として部分禿げと呼ばれる。症例の1〜2%において、状態は、頭皮全体(全頭脱毛)又は表皮全体(汎脱毛症)まで広がり得る。円形脱毛症と類似し、同様の原因を有する状態は、他の種においても起こる。
【0345】
円形脱毛症(自己免疫性脱毛)は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療することができる。本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射させるべき円形脱毛症の治療及び/又は予防のための波長は、240〜500nmの範囲にある。好ましくは波長は、290〜400nm、特に好ましくは300〜330nmの範囲にある。この目的のための1つの特定の好ましい波長は、311nmである。
【0346】
飲料及び栄養物の消毒及び/又は滅菌及び/又は保存のために用いる前記QD−LEC(複数可)及び/又はデバイスも本発明の対象である。
【0347】
消毒及び/又は滅菌及び/又は保存の目的のための光の使用は、周知である。本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、この目的のために用いることができる。これにより、どのような種類の消毒及び/又は滅菌及び/又は保存も、制限なしに、創傷、栄養物並びに化粧品、医療機器、手術及び飲料に用いられるデバイスのような固体及び液体物の消毒を意味し、含む。
【0348】
飲料、好ましくは水、特に好ましくは飲料水の消毒及び/又は滅菌及び/又は保存のためのQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスが好ましい。汚染水は、全世界で多くの感染を引き起こし、しばしば個体の重症疾患又は死亡をもたらす。
【0349】
営利供給業者の水ろ過システムは、イオン交換技術を利用している。しかし、フィルターは、微生物に汚染される傾向があり、ひいては水の微生物による汚染がもたらされる可能性がある。1つの解決策は、毒性学的見地から問題となり得る銀塩を加えることである。本発明のQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、この問題の解決策を提供する。微生物汚染の程度の低い水を供給する安全、有効、低費用の方法を提供するために、それらを水ろ過システムに組み込んで用いることができる。当光源は、ろ過の前後の水又はフィルターカートリッジ自体を照射することができる。好ましくは、QD−LEC(複数可)を含む光源がフィルターカートリッジ及び既にろ過済みの水を照射する。
【0350】
上で概説した水の消毒及び/又は滅菌及び/又は保存の手順は、他の液体、特に飲料にも、基本的に同様に適用することができる。
【0351】
したがって、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスは、ヒト及び動物用の飲料及び栄養物の消毒及び/又は保存のために用いることができる。
【0352】
本発明による消毒及び/又は滅菌及び/又は保存のための波長は、200〜600nm、好ましくは250〜500nm、極めて特に好ましくは280〜450nmの範囲にある。
【0353】
他の実施形態において、本発明は、光線力学療法(PDT)における適用のための前記QD−LEC(複数可)及び/又はデバイスに関する。
【0354】
本発明によるPDTに要求される波長は、300〜700nm、好ましくは400〜700nm、極めて特に好ましくは500〜700nmの範囲にある。4つのさらなる好ましい波長は、595、600、630及び660nmである。
【0355】
PDTとして公知の療法は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイス並びにそれらを含むデバイスにより治療することができる。特に本発明において概説したPDTは、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療することができる。正常組織より腫瘍組織に多量に蓄積する多環式炭化水素型化学構造を有する染料の特性は、周知である。染料は、アクリジン、キサンテン、ソラレン及びポルフィリンを含む。後者の染料、特に、ヘマトポルフィリン(Hp)及びいくつかのその化学的誘導体(例えば、HpD、ここでHpDは、Hp誘導体の混合物である)は、優れた腫瘍局在化特性を有し、これが、薬物の全身投与後のあらかじめ決定した時間における赤色光照射による腫瘍の光療法による治療の根拠である。
【0356】
PDTに用いる薬物は、好ましくはアミノレブルリン酸/アミノレブルリン酸メチル、エファプロキシラルポルフィリン誘導体(ポルフィマーナトリウム、タラポルフィン、テモポルフィン、ベルテポルフィン)から選択される。
【0357】
さらなる実施形態において、本発明は、黄疸及びクリグラーナジャー、好ましくは黄疸の治療及び/又は予防のための前記QD−LEC(複数可)及び/又はデバイスに関する。
【0358】
黄疸(icterus(黄疸)としても公知である)は、皮膚、強膜上の結膜(眼の白い部分)及び他の粘膜の帯黄変色である。変色は、高ビリルビン血症(血液中のビリルビンのレベルの増加)により引き起こされる。この高ビリルビン血症は、その後、細胞外液中のビリルビンのレベルの増加を引き起こす。黄疸は、肝前性(溶血性)黄疸、肝性(肝細胞性)黄疸及び肝後性(閉塞性)黄疸の3群に分類される。
【0359】
肝前性黄疸は、溶血の率の増加をもたらすもの、すなわち、赤血球の破壊によって引き起こされる。熱帯諸国では、マラリアがこの仕方で黄疸を引き起こし得る。鎌状赤血球貧血、球状赤血球症及びグルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ欠乏などの特定の遺伝病は、赤血球の溶解の増加と、したがって溶血性黄疸をもたらし得る。一般的に、溶血性尿毒症性症候群などの腎臓の疾患も着色をもたらし得る。ビリルビン代謝の欠損も黄疸として現れる。黄疸は、通常高熱を伴う。ラット熱(rat fever)(レプトスピラ症)も黄疸をもたらし得る。
【0360】
肝性黄疸の原因は、急性肝炎、肝毒性及びアルコール性肝疾患などであり、それにより、細胞壊死がビリルビンを代謝し、排泄する肝臓の能力を低下させ、これが血液中の蓄積をもたらす。さほど一般的でない原因は、原発性胆汁性肝硬変、ギルバート症候群(軽度黄疸をもたらし得るビリルビン代謝の遺伝性障害、これは、集団の約5%に認められる)、クリグラー−ナジャー症候群、転移性癌及びニーマン−ピック病C型などである。新生児黄疸として公知である新生児に認められる黄疸は、一般的であり、ほぼすべての新生児で起こる。その理由は、ビリルビンの抱合及び排泄のための肝臓の機構が約2週齢まで十分に成熟しないからである。
【0361】
肝後性黄疸(閉塞性黄疸とも呼ばれる)は、胆管系における胆汁の排液の障害によって引き起こされる。最も一般的な原因は、総胆管における胆石及び膵臓の頂部における膵臓癌である。また、「肝吸虫」として公知の寄生虫の群は、総胆管中で生存して、閉塞性黄疸を引き起こし得る。他の原因は、総胆管の狭窄、胆道閉鎖、胆管癌、膵臓炎及び膵偽嚢胞などである。閉塞性黄疸のまれな原因は、ミリッチー症候群である。
【0362】
黄疸、特に新生児黄疸は、適切に治療しない場合、重大な医学的結果につながり得る。ビリルビンの濃度の増加は、重大な一生涯の障害につながる核黄疸として公知の脳損傷状態をもたらし得る。新生児高ビリルビン血症の不十分な検出及び治療のために、この状態が近年増加しているという問題がある。初期の治療は、しばしば多少隔離された保育器中で集中的な光療法に乳児を曝露することからなる。この療法は、乳児と親の両方に感情的又は精神的に困難な状況をしばしばもたらす。ブランケットのような柔軟性のある携帯型デバイスを提供するために本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスを用いることができる。したがって、乳児は、その親の腕に抱かれながら治療を受けることができる。伝統的な療法は、乳児の過熱も容易にもたらすが、これも本発明のQD−LEC(複数可)及び/又はデバイス並びにそれらを含むデバイスにより著しく減少させることができる。
【0363】
好ましくは、本発明は、新生児黄疸の治療用のQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスに関する。
【0364】
対象の黄疸は、本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより治療することができる。本発明によるQD−LEC(複数可)及び/又はデバイスにより放射させるべき黄疸の治療及び/又は予防のための波長は、300〜700nmの範囲にある。好ましくは波長は、350〜600nm、特に好ましくは370〜580nmの範囲にある。さらなる好ましい波長は、400〜550nmの範囲にある。特に好ましい波長は、410〜470nmの範囲にある。この目的のための2つの特に好ましい波長は、450及び466nmである。
【0365】
他の実施形態において、本発明は、治療上の疾患及び/又は美容上の状態の治療及び/又は予防のためのデバイスの調製のためのQD−LEC(複数可)の使用に関する。治療上の疾患及び状態は、本発明における他所で述べたものと同じである。
【0366】
本発明の前述の実施形態の変形は、本発明の範囲内にありながら行うことができることは、十分に理解されるであろう。本明細書において開示した各特徴は、特に断らない限り、同じ、同等又は類似の目的を果たす代わりの特徴に置きかえることができる。したがって、特に断らない限り、開示した各特徴は、一般的な一連の同等又は類似の特徴の一例にすぎない。
【0367】
本明細書において開示した特徴のすべては、任意の組合せで組み合わせることができ、ただし、そのような特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除く。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明のすべての態様に適用でき、任意の組合せで用いることができる。同様に、本質的でない組合せで記述された特徴は、独立して(組み合わせずに)用いることができる。
【0368】
好ましい実施形態の特に上述の特徴の多くは、本来的に発明によるものであって、本発明の実施形態の一部としてではないことは、十分に理解されるであろう。今回特許請求する発明に加えて又はそれの代わりとなるこれらの特徴について独立した保護を求めることができる。
【0369】
ここで開示した教示は、要約し、開示された他の例と組み合わせることができる。
【0370】
本発明の他の特徴は、本発明の説明のために示し、それを限定することを意図しない、例となる実施形態及び図面の以下の説明の過程において明らかになる。
【0371】
[実施例]
例1
材料
以下の材料は、本発明において例として用いる。
【0372】
量子ドット(QD1)は、エピタキシャルZnSシェルによりキャップされたCdSe球状コアを有するPlasmachem GmbH、Berlin、Germanyによるコア−シェル型の量子ドットである。QD1は、主としてトリオクチルホスフィンオキシドを含む疎水性表面層を有する。QD1の光ルミネッセンス量子効率(PLQE)は、ローダミン6Gを対照標準として用いて測定し、約30%であることが見いだされている。
【0373】
三重項緑色エミッタTEG1:
【化25】
【0374】
三重項マトリックス材料TMM1
【化26】
【0375】
三重項マトリックス材料TMM2
【化27】
【0376】
一重項システムSMB1のマトリックス
【化28】
【0377】
一重項青色エミッタSEB1
【化29】
【0378】
ポリエチレンオキシド(PEO、M
W=5×10
6g/モル、Aldrich)をイオン伝導体として、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(LiTrf、99.995%金属ベース;Aldrich)をイオン源として用いる。
【0379】
HIL−012は、正孔輸送及び電子遮断材料であり、中間層(IL)として用いる。
【0380】
例2
溶液からのQD−LECの調製
図1に示す構造カソード/EML/中間層/HIL/ITOを有するQD−LECを以下の手順に従って調製する。
【0381】
1.スピンコーティングによるITO被覆ガラス基板上への正孔注入層(HIL)としての80nmのPEDOT(Baytron P AI4083)の堆積、
2.グローブボックス内での0.5重量%/lの濃度を有するHIL−012のトルエン溶液からのスピンコーティングによる20nmの中間層の堆積、
3.グローブボックス内で中間層を180℃で1時間加熱する、
4.ドクターブレード法(或いは浸漬コーティングも用いることができる)を用いることによる250nmの厚さへのクロロベンゼン溶液からの発光層(EML)の堆積;EMLの材料、対応する溶液及びEMLの厚さは、表1に示す。スピンコーティングは、EMLを被覆するための最適な方法ではない。これは、量子ドットが他の有機化合物と比較してはるかに高い分子量を有し、スピンコーティング時にそれらの大部分が遠心力によって失われる可能性があるためである。
【0382】
5.残留溶媒を除去するためにデバイスを加熱する;両デバイスの加熱条件は、60℃で30分である。熱処理は、EML中の再結晶化をもたらすべきでない。
【0383】
6.真空熱蒸発によりEML上にカソード(150nm Al)を堆積する、
7.UV硬化(UV-curved)エポキシ樹脂(UV樹脂、T−470/UR7114、Nagase Chemtex Corporation)及びガラスキャップを用いたデバイスの封入。
【表1】
【0384】
例3
測定及び結果の比較
QD−LECは、次の特性の測定により特徴づけられる。すなわち、VIL特性、ELスペクトル及び色座標、効率、駆動電圧。
【0385】
QD−LECの性能を表2に要約する。ここで、Uonは、順方向電圧であり、U(100)は、100ニトにおける電圧である。
【表2】
【0386】
例4
柔軟性赤色QD−LEC
QD−LEC1と同じEMLを有する柔軟性発光デバイスQD−LEC3及びQD−LEC2と同じEMLを有するQD−LEC4の調製は、以下の通りであり、
図2に示す。
【0387】
1.
図2に示すように、150nmのITOをマスクを用いてPEN上にスパッタリングする。基板(PEN)及び発光部の寸法は、それぞれ3×3cm及び2×2cmである。
【0388】
2.例2におけるステップ2を参照
3.例2におけるステップ3を参照
4.例2におけるステップ4を参照
5.例2におけるステップ5を参照
6.デバイス封入する。発光デバイスの封入は、
図2のステップ4に示すように、UV硬化樹脂(UV樹脂T−470/UR7114(Nagase Chemtex Corporation))及びPENキャップ(これは、接触パッドを自由にするために基板より小さい)を用いて達成される。UV樹脂を最初にピクセルの縁に塗布し、次にキャップをそれらの上に配置する。次に、デバイスをUV光に30秒間曝露する。これらステップはすべて、グローブボックス内で実施する。
【0389】
例5
治療及び/又は美容応用向けのデバイス
治療及び美容応用分野に用いる最終デバイスは、例えば、QD−LECデバイスをプラスターに取り付けることにより実現することができる。外部電源は、接触パッドを介して加えることができる。
【0390】
バッテリーは、デバイス用の好ましい電源であり、特に好ましいものは、軽量のためにプリント薄膜バッテリーである。プリント薄膜バッテリー(
図3に示すような)は、例えば、Fraunhofer Instituteから入手することができる。
【0391】
ある種の治療において、デバイスをパルスモードで駆動するべきである。したがって、パルス駆動用のコントローラ、特にポケットポータブル型のものを用いることができる。これは、市販のフラッシャーユニット又はブリンカーユニットを用いることにより、実現することができる。さらなるそのようなフラッシャーユニットは、例えば、Fachkunde Elektrotechnik、Verlag Europa-Lehrmittel、Nourney、Vollmer GmbH & Co.、5657 Haan-Gruiten、227に示されているように、一般的トリガー回路の原理に従って電源ユニットに組み込むことができる。
【0392】
例6
目尻のしわの治療
QD−LEC1をしわの治療及び/又は予防のために用いる。電源としてプリントバッテリーを有するプラスターを例5に従って調製する。各プラスター上のバッテリーは、30分の照射時間にわたりエネルギーを供給する。
【0393】
年齢が30から40歳までの15例のヒト女性対象の22週間のパイロット試験を当業者に周知の標準的方法に従って実施する。試験に含めるための主な選択基準の1つは、顔面の両側、すなわち、左及び右眼の近傍におけるほぼ同等の徴候を有する目尻のしわの存在である。各対象の右手側をQD−LEC1を含むプラスターで22週間にわたり隔日に30分間治療する。左眼及び右眼の近傍における皮膚の比較により、治療側の皮膚の有意な改善が明らかになる。目尻のしわは、より短く、さほど深くない。QD−LECデバイスにより放射された光により治療した皮膚は、無処置の皮膚と比べてより滑らかに見える。