(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882327
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】穿孔グラフェンによる脱イオンまたは脱塩
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20160225BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20160225BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20160225BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
B01D71/02
C02F1/44 G
C02F1/44 A
B01D69/10
B01D61/58
【請求項の数】23
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-525970(P2013-525970)
(86)(22)【出願日】2011年8月15日
(65)【公表番号】特表2013-536077(P2013-536077A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】US2011047800
(87)【国際公開番号】WO2012027148
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年7月25日
(31)【優先権主張番号】12/868,150
(32)【優先日】2010年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596134851
【氏名又は名称】ロッキード・マーチン・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ビー.ステットソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン、マーキュリオ
(72)【発明者】
【氏名】アラン、ローゼンウィンケル
(72)【発明者】
【氏名】ピーター、ブイ.ベッドワース
(72)【発明者】
【氏名】アーロン、エル.ウェストマン
【審査官】
長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−188393(JP,A)
【文献】
特開2001−232158(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/129984(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/001674(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不要なイオンを含有する水を脱イオン化するための方法であって、前記方法が、
水分子を透過させ、前記不要なイオンのうちの選択された1つを透過させないように選択された複数の開口部をグラフェンのシートに提供し、それによって穿孔グラフェンを作製する工程と、
前記不要なイオンを含有する水を加圧し、それによって加圧水を作り出す工程と、
前記加圧水を、前記穿孔グラフェンの第一の表面に適用し、それによって、水分子を、イオンに対して優先的に、前記穿孔グラフェンシートの第二の側へと流す工程と、
前記水分子を、前記グラフェンシートの前記第二の側から回収する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記イオンのうちの前記選択された1つが、塩素であり、前記塩素イオンを透過させない前記開口部が、0.9ナノメートルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記開口部が、1.5ナノメートルの間隔である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオンのうちの前記選択された1つが、ナトリウムであり、前記ナトリウムイオンを透過させない前記開口部が、0.6ナノメートルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記開口部が、1.5ナノメートルの間隔である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記イオンのうちの前記選択された1つが、塩素であり、前記塩素イオンを透過させない前記開口部が、0.9ナノメートルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記開口部が、1.5ナノメートルの間隔である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記穿孔グラフェンのシートを補強する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記補強工程が、裏張りを行う工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記裏張り工程が、グリッドで裏張りを行う工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記グリッドの材料が、ポリテトラフルオロエチレンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
水分子を透過させ、前記不要なイオンのうちの選択された1つを透過させないように選択された複数の開口部をグラフェンのシートに提供する前記工程が、
前記グラフェンのシートの少なくとも一部に酸化剤を適用し、それによって前記開口部を作り出す工程、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化剤を適用する工程の前に、前記開口部が所望されない前記グラフェンの部分にマスキングを行う工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
不要なイオンを含有する水を脱イオン化するための方法であって、前記方法が、
前記不要なイオンのうちの選択された第一のイオンを透過させず、前記不要なイオンのうちの選択された第二のイオンを含む水分子を透過させるように選択された径の複数の開口部が穿孔されたグラフェンの第一のシートを提供する工程と、
水分子を透過させ、前記不要なイオンのうちの前記選択された第二のイオンを透過させないように選択された複数の開口部が穿孔されたグラフェンの第二のシートを提供する工程であって、グラフェンの前記第二のシートの前記開口部が、穿孔グラフェンの前記第一のシートの前記開口部よりも小さい径を有する、工程と
穿孔グラフェンの前記第一および第二のシートを並列配置し、それによって、穿孔グラフェンの前記第一のシートによって定められる第一の側、穿孔グラフェンの前記第二のシートによって定められる第二の側、およびその間の液体流のための経路を有する並列シートを形成する工程と、
不要なイオンを含有する前記水を、前記並列シートの前記第一の側に適用し、それによって、水分子が、イオンに対して優先して、前記並列シートおよび前記経路を通って、前記並列シートの前記第二の側へ流れることにより、脱イオン水を生成する工程と、
前記脱イオン水分子を、前記並列シートの前記第二の側から回収する工程と、を含む、方法。
【請求項15】
穿孔グラフェンの第一のシートを提供する前記工程、および穿孔グラフェンの第二のシートを提供する前記工程が、いずれも、未穿孔グラフェンシートの表面へ酸化剤を適用する工程を含む、請求項14に記載の水を脱イオン化するための方法。
【請求項16】
水分子を流すが、特定の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔されたグラフェンシートと、
前記特定の種類のイオンを含有する水の供給源と、
前記特定の種類のイオンを含有する前記水が、開口部が穿孔された前記グラフェンシート通って流れるための経路と、
を含む水脱イオン装置。
【請求項17】
前記流れの方向を開口部が穿孔された前記グラフェンシートからそらせるためのパージ機構を、前記流れのための前記経路と連結させてさらに含む、請求項16に記載の脱イオン装置。
【請求項18】
分離装置であって、
水分子を流すが、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシートと、
水分子を流すが、第二の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第二のグラフェンシートであって、前記第二の種類の前記イオンが、前記第一の種類の前記イオンよりも小さい、第二のグラフェンシートと、
前記第一および第二の種類のイオンを含有する水の供給源と、
前記第一および第二の種類のイオンを含有する前記水の流れを、前記第一の種類の前記イオンを流さない寸法の開口部が穿孔された前記第一のグラフェンシートへ適用するための経路であって、(a)前記第一の種類のイオンが、前記第一の種類の前記イオンを流さない寸法の開口部が穿孔された前記第一のグラフェンシートの上流側に蓄積し、(b)前記第二の種類のイオンを含有する水が、前記第一の種類の前記イオンを流さない寸法の開口部が穿孔された前記第一のグラフェンシートを通って、前記第一の種類の前記イオンを流さない寸法の開口部が穿孔された前記第一のグラフェンシートの下流側へと流れる、経路と、
前記第二の種類のイオンを含有する前記水の流れを、前記第一の種類の前記イオンを流さない寸法の開口部が穿孔された前記グラフェンシートの上流側へ適用するための経路であって、(a)前記第二の種類のイオンが、前記第二の種類の前記イオンを流さない寸法の開口部が穿孔された前記第二のグラフェンシートの上流側に蓄積し、(b)前記第一および第二の種類の前記イオンを含有しない水が、前記第二の種類の前記イオンを流さない寸法の開口部が穿孔された前記第二のグラフェンシートを通って流れる、経路と、
前記第一および第二の種類の前記イオンを含有しない前記水を受けるために連結された回収機構と、
を含む、分離装置。
【請求項19】
前記第一の種類の前記イオンおよび前記第二の種類の前記イオンのうちの一方の前記蓄積物を受けるために連結されたイオン回収機構をさらに含む、請求項18に記載の分離装置。
【請求項20】
0.2ナノメートルの厚さの前記グラフェンシートを提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
0.2ナノメートルの厚さの各前記グラフェンシートを提供する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記グラフェンシートが、0.2ナノメートルの厚さを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
各前記グラフェンシートが、0.2ナノメートルの厚さを有する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その主題がその全てにおいて参照により本明細書に組み込まれる、2010年8月25日出願、発明の名称が「PERFORATED GRAPHENE DEIONIZATION OR DESALINATION」である米国特許出願第12/868,150号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
淡水源がますます不足しつつあることから、塩によって汚染された水、最も注目すべきは海水を、清浄な飲用水へ変換することができる解決策が、多くの国々によって求められている。
【0003】
水の脱塩のための既存技術は、大きく分けて4つの種類、すなわち、蒸留、イオンプロセス、膜プロセス、および結晶化、に分類される。これらの技術の中で最も効率的であり、最も用いられているものは、多段フラッシュ蒸留(MSF)、多重効用蒸発(MEE)、および逆浸透(RO)である。エネルギーおよび設備のコストがいずれも大きいものであるこれらのプロセスのすべてにおいて、コストはその推進因子である。ROおよびMSF/MEEはいずれも、十分に発達した技術である。現在、最良の脱塩法は、単純な水の蒸発によって確立された理論的なエネルギー下限の2から4倍のエネルギーが必要であり、それは、3から7kJ/kgの範囲である。蒸留脱塩法としては、多段フラッシュ蒸発、多重効用蒸留、蒸気圧縮、太陽給湿(solar humidification)、および地熱脱塩(geothermal desalination)が挙げられる。これらの方法は、共通の手法を共有しており、それは、水の状態を変化させることで脱塩を行うということである。これらの手法は、熱伝導および/または真空圧を用いて塩水溶液を蒸発させる。次に、水蒸気が凝縮され、淡水として回収される。イオンプロセス脱塩法は、溶液中のイオンとの化学的および電気的相互作用に着目している。イオンプロセス脱塩法の例としては、イオン交換、電気透析、および容量脱イオン(capacitive deionization)が挙げられる。イオン交換では、固体のポリマーまたは無機イオン交換体が塩水溶液中へ導入される。イオン交換体は、溶液中の所望されるイオンと結合し、それによってそれらを容易にろ過除去することができる。電気透析は、カチオンおよびアニオン選択性膜および電圧電位を用いて、淡水および塩水溶液の交互チャネルを作り出すプロセスである。容量脱イオンは、電圧電位を用いて溶液から荷電イオンを引き付け、水分子を透過させて、イオンを捕捉するものである。膜脱塩プロセスは、ろ過および圧力を用いて溶液からイオンを除去する。逆浸透(RO)は、広く用いられている脱塩技術であり、イオン溶液の浸透圧を上回る圧力を塩水溶液に適用するものである。この圧力によって水分子が押され、多孔性膜を通って淡水コンパートメント内に入り、一方イオンは閉じ込められて、高濃度塩水溶液が作られる。このような手法では、圧力は、淡水を捕捉するために浸透圧を上回る必要があるため、圧力が推進コスト因子である。結晶化脱塩は、結晶が、イオンを含有せずに選択的に形成されるという現象に基づいている。氷またはメチルハイドレートのいずれかとして結晶化水を作り出すことにより、溶解したイオンから純水を単離することができる。単純な凍結の場合、水がその凍結点未満まで冷却されることで氷が作り出される。次にこの氷を溶融して、純水が形成される。メチルハイドレート結晶化プロセスは、メタンガスを、塩水溶液を通してパーコレートすることでメタンハイドレートが形成されることを用いており、それは、水が凍結する温度よりも低い温度で発生する。このメチルハイドレートは、浮かび上がり、容易に分離され、次にこれを加温して、メタンと脱塩水とに分解する。脱塩水を回収し、メタンは再利用される。
【0004】
脱塩のための蒸発および凝縮は、一般的に、エネルギー効率が良いと見なされるが、集中的な熱源が必要である。大スケールで行われる場合、脱塩のための蒸発および凝縮は、一般的に、発電プラントと併設され、立地上の分布およびサイズが制限される傾向にある。
【0005】
容量脱イオンは、容量電極が除去塩による付着汚染を起こして頻繁なメンテナンスが必要である傾向にあることを恐らくは理由として、広く用いられているものではない。必要な電圧は、プレートの間隔および流速に依存する傾向にあり、電圧は、危険要因となり得る。
【0006】
逆浸透(RO)フィルターは、水の浄化に広く用いられている。ROフィルターは、通常は酢酸セルロースまたはポリイミド薄層コンポジットから作られる、通常は厚さが1mmである多孔性または半透過性膜を用いる。これらの材料は、親水性である。膜は、多くの場合、取り扱いの容易さおよび膜支持のために、らせん巻きにより管状形態とされる。膜は、サイズがランダムな開口部の分布を示し、ここで、最大サイズの開口部は、水分子を透過させるが、水に溶解している塩などのイオンの透過は起こさせないか、またはこれを阻止するのに十分小さい。1ミリメートル(1mm)厚さの典型的なRO膜であっても、ROに固有のランダム構造により、膜を通って流れる水のための長く、曲がりくねった、または蛇行した経路が定められ、このような経路の長さは、1ミリメートルよりも遥かに長い場合がある。経路の長さおよびランダムな構成により、表面にてイオンから水分子を分離し、その水分子を浸透圧に対抗して膜を通して移動させるためには、大きな圧力が必要となる。従って、ROフィルターは、エネルギー効率が良くない傾向にある。
【0007】
図1は、RO膜10の断面の概念図である。
図1において、膜10は、上流イオン水溶液16に面する上流表面12および下流表面14を定める。上流側に示されるイオンは、+電荷を有するナトリウム(Na)および−電荷を有する塩素(Cl)として選択される。ナトリウムは、4つの溶媒和水分子(H
2O)と会合しているものとして示される。各水分子は、1つの酸素原子と2つの水素(H)原子を含む。
図1のRO膜10中の水の流れのための経路の1つ20は、上流表面12上の開口部20uから下流表面14上の開口部20dへ伸びるものとして示される。経路20は、回旋状として示されるが、典型的な経路の実際の蛇行状態を示すことは不可能である。また、20として示される経路は、複数の上流開口部および複数の下流開口部と相互接続されていると考えてよい。RO膜を通る(1もしくは複数の)経路20は、回旋状であるだけでなく、開口部の一部が不可避の砕片によって閉塞されるため、時間と共に変化し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
代替的な水の脱塩または脱イオンが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
分離機構により、塩素、ナトリウム、およびその他のイオンが、水から単離される。イオン含有水が、水分子を透過するが、該当する最小のイオンを透過しない寸法の開口部が穿孔された少なくとも1つのグラフェンシートに適用される。穿孔グラフェンシートを透過して流れる脱イオン水が回収される。透過しないイオンはパージすることができる。別の実施形態では、イオン含有水が、塩素イオンを阻止する寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシートに適用され、ナトリウムイオンを阻止する寸法の開口部が穿孔された第二のグラフェンシートに通される。第一および第二の穿孔グラフェンシートに蓄積した濃縮された塩素およびナトリウムイオンを、別々に回収することができる
【0010】
不要なイオンを含有する水を脱イオン化するための方法は、水分子を透過させ、不要なイオンのうちの選択された1つを透過させないように選択された複数の開口部でグラフェンのシートを穿孔し、それによって穿孔グラフェンを作製する工程を含む。別の選択肢として、そのように穿孔されたグラフェンのシートを提供してもよい。不要なイオンを含有する水は加圧され、それによって加圧水が作り出される。加圧水は、穿孔グラフェンの第一の表面に適用され、それによって、水分子は、イオンに対して優先的に、穿孔グラフェンシートの第二の側へと流される。水分子は、グラフェンシートの第二の側から回収される。本方法の1つのモードでは、イオンのうちの選択された1つは塩素であり、塩素イオンを透過させない開口部は、名目上の直径が0.9ナノメートルであり、開口部の間隔は、名目上
1.5ナノメートルである。本方法の別のモードでは、イオンのうちの選択された1つはナトリウムであり、ナトリウムイオンを透過させない開口部は、名目上の直径が0.6ナノメートルであり、開口部の間隔は、名目上
1.5ナノメートルである。方法は、ポリテトラフルオロエチレングリッドの裏張りで穿孔グラフェンシートを補強する工程を含んでよい。
【0011】
不要なイオンを含有する水を脱イオン化するための方法は、不要なイオンのうちの選択された第一のイオンを透過させず、不要なイオンのうちの選択された第二のイオンを含む水分子を透過させるように選択された径の複数の開口部でグラフェンの第一のシートを穿孔し、それによって穿孔グラフェンの第一のシートを作製する工程を含む。グラフェンの第二のシートは、水分子を透過させ、不要なイオンのうちの選択された第二のイオンを透過させないように選択された複数の開口部が穿孔され、それによって、穿孔グラフェンの第一のシートの開口部よりも小さい径である開口部を有する穿孔グラフェンの第二のシートが作製される。穿孔グラフェンの第一および第二のシートは、並列配置され、それによって、穿孔グラフェンの第一のシートによって定められる第一の側、穿孔グラフェンの第二のシートによって定められる第二の側、およびその間の液体流のための経路を有する並列シートが形成される。不要なイオンを含有する水が、並列シートの第一の側に適用され、それによって、水分子が、イオンに対して優先して、並列シートおよび経路を通って並列シートの第二の側への流れることにより、名目上の脱イオン水が生成される。名目上の脱イオン水分子は、並列シートの第二の側から回収される。
【0012】
水脱イオン装置は、水分子を流すが、特定の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔されたグラフェンシートを含む。特定の種類のイオンを含有する水の供給源が提供される。特定の種類のイオンを含有する水が、開口部が穿孔されたグラフェンシート通って流れるための経路が提供される。この脱イオン装置の特定の実施形態では、流れの方向を開口部が穿孔されたグラフェンシートからそらせるためのパージ機構が、流れのための経路と連結される。
【0013】
分離装置は、水分子を流すが、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシート、および水分子を流すが、第二の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第二のグラフェンシートを含み、ここで、第二の種類のイオンは、第一の種類のイオンよりも小さい。第一および第二の種類のイオンを含有する水の供給源が提供される。第一および第二の種類のイオンを含有する水の流れを、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシートへ適用するための経路が提供される。その結果、(a)第一の種類のイオンが、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシートの上流側に蓄積し、(b)第二の種類のイオンを含有する水は、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシートを通って、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシートの下流側へと流れる。分離装置は、第二の種類のイオンを含有する水の流れを、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔されたグラフェンシートの上流側へ適用するための経路もさらに含む。その結果、(a)第二の種類のイオンが、第二の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第二のグラフェンシートの上流側に蓄積し、(b)第一および第二の種類のイオンを含有しない水は、第二の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第二のグラフェンシートを通って流れる。第一および第二の種類のイオンを含有しない水を受けるための回収機構が連結される。イオンの蓄積物を別々に回収するためのさらなる回収機構も提供されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、先行技術の逆浸透(RO)フィルター膜の概念断面図である。
【
図2】
図2は、穿孔グラフェンシートを用いる、本開示の態様に従う水フィルターの概念図である。
【
図3】
図3は、
図2の機構に用いてよい穿孔グラフェンシートの平面図であり、複数の開口部のうちの1つの形状を示す。
【
図4】
図4は、穿孔グラフェンシートの平面図であり、
0.6ナノメートル径の穿孔部または開口部、および穿孔部間の寸法を示す。
【
図5】
図5は、
図2の穿孔グラフェンシートと合わせて用いてよい裏張りシートの平面図である。
【
図6】
図6は、濃縮イオンの分離のための複数の穿孔グラフェンシートを用いる、本開示の態様に従う水脱イオンフィルターの概念図である。
【
図7】
図7は、全体として
図6の機構に対応する配管構成を単純化して示す図であり、ここで、穿孔グラフェンシートは、らせん状に巻かれ、シリンダー内に収納される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、本開示の代表的な実施形態または態様に従う基本的な脱塩、脱塩化、または脱イオン装置200の概念図である。
図2において、チャネル210は、イオン含有水を、支持チャンバー214内に搭載されたフィルター膜212へと運ぶ。イオン含有水は、例えば、海水または汽水であってよい。1つの代表的な実施形態では、フィルター膜212は、公知の方法によってらせん状に巻かれてよい。
図2のチャネル210を通って流れるイオン含有水の流力(flow impetus)または圧力は、タンク216からの重力により、またはポンプ218から提供されてよい。バルブ236および238により、イオン含有水源の選択が可能である。装置または機構200において、フィルター膜212は、穿孔グラフェンシートである。グラフェンは、炭素原子の単原子層厚さの層であり、
図3に示すように、一緒に結合されてシート310を定める。単一のグラフェンシートの厚さは、およそ
0.2ナノメートル(nm)である。これよりも厚い、複数のグラフェンシートを形成してもよい。
図3のグラフェンシート310の炭素原子は、6個の炭素原子から構築される六角形環構造(ベンゼン環)の繰り返しパターンを定め、それは、炭素原子のハニカム格子を形成する。格子間開口部308は、シートの各6炭素原子環構造によって形成され、この格子間開口部は、直径1ナノメートル未満である。この寸法は、非常に小さく、水またはイオンのいずれも通さない。
図3に示すように、
図2の穿孔グラフェンシート212を形成するために、1つ以上の穿孔部が作られる。代表的な、概略的にまたは名目的に円形状である開口部312は、グラフェンシート310を貫通して定められる。開口部312は、名目上の直径が約0.6ナノメートルである。0.6ナノメートルの寸法は、塩水または汽水中に存在することが通常考えられるイオンのうちの最小のものを阻止するように選択されており、それはナトリウムイオンである。開口部312の概略的な円形状は、開口部の端部がグラフェンシート310の六角形炭素環構造によって部分的に定められるという事と関係する。
【0016】
開口部312は、選択的酸化によって作り出すことができ、それは、酸化剤に選択された時間曝露することを意味する。開口部312はまた、レーザー穿孔によって作り出すこともできると考えられる。刊行物、Nano Lett. 2008, Vol.8, no.7, pg 1965-1970に記載のように、最も簡単な穿孔方法は、グラフェンフィルムを、高温にてアルゴン中の希酸素で処理することである。そこに記載されるように、1気圧(atm)アルゴン中350ミリトルの酸素を500℃にて2時間用いることで、20から180nm範囲の貫通開口部または孔部がエッチング形成された。この論文は、孔部の数はグラフェンシートの欠陥と関連し、孔部のサイズは滞留時間と関連することを合理的に示唆している。これは、グラフェン構造に所望される穿孔部を作り出すための好ましい方法であると考えられる。構造は、グラフェンナノプレートレットおよびグラフェンナノリボンであってよい。従って、所望される範囲の開口部は、より短い酸化時間によって形成することができる。DOI: 10.1021 /n19032318 Nano Lett. XXXX, xxx, 000-000]に記載の別のより複雑な方法は、反応性イオンエッチングを用いるパターン化に適するマスクを作り出す自己組織化ポリマーを利用している。P(S‐ブロックMMA)ブロックコポリマーは、再現像後にRIEのためのバイアを形成するPMMAカラムのアレイを形成する。孔部のパターンは、非常に密である。孔部の数およびサイズは、PMMAブロックの分子量およびP(S‐MMA)中のPMMAの重量分率によって制御される。いずれの方法も、穿孔グラフェンシートを作製できる可能性を有する。
【0017】
述べたように、
図3のグラフェンシート310は、僅かに単一原子分の厚さを有する。従って、シートは柔軟である傾向にある。グラフェンシートの柔軟性は、シート212に裏張り構造を適用することによって改良することができる。
図2において、穿孔グラフェンシート212の裏張り構造は、220として示される。本実施形態における裏張り構造220は、ポリテトラフルオロエタンとして知られる場合もあるポリテトラフルオロエチレンの穿孔されたシートである。裏張りシートの厚さは、例えば、1ミリメートル(mm)であってよい。
【0018】
図2の装置または機構において、経路210を通して穿孔膜212に適用されるイオン含有水の圧力は、タンク216からの重力によって提供することができ、それによって装置200の態様の1つが強調されることに留意されたい。すなわち、RO膜とは異なり、穿孔膜212を形成する穿孔グラフェンシート312は、疎水性であり、貫通された開口部(
図3Aの312)を通される水は、濡れの原因である引力によって妨害されることはない。また、述べたように、グラフェンシート310の開口部312を通る流路の長さは、シートの厚さと等しく、約2nmである。この長さは、RO膜を通して伸びるランダム経路の長さと比較して非常に短い。その結果、液流を提供するのにほとんど圧力を必要としないか、または逆に言うと、任意の圧力での流れが、穿孔グラフェンシート310の方が非常に大きい。そしてこれは、イオン分離に必要とされるエネルギーが少ないと解釈される。RO膜において浸透圧に対抗して水を膜に強制的に通すために要する圧力は、摩擦成分を含み、これは膜の加熱をもたらす。その結果、RO膜に適用しなければならない圧力の一部は、浸透圧を上回る方向へは行かず、その代わりに、熱へと向かってしまう。シミュレーションの結果から、穿孔グラフェンシートは、必要とされる圧力を少なくとも5分の1に低下させることが示される。従って、RO膜では、特定のイオン濃度での脱イオン水の特定の流れを発生させるのに、上流側において1平方インチあたり40ポンド(PSI)の圧力が必要であり得るのに対し、穿孔グラフェンシートの場合、同じ流速に対して必要であるのは、8PSI以下であり得る。
【0019】
述べたように、
図2のグラフェンシート212(または、同等に、
図3のグラフェンシート310)における穿孔部312は、源水中で考えられる最小のイオンを透過させない寸法である。従って、最小のものとサイズが等しいか、またはそれよりも大きいいかなるイオンも、穿孔グラフェンシート212を透過せず、そのようなイオンは、グラフェンシート支持チャンバー214の上流側226に蓄積すると考えることができる。上流「チャンバー」226におけるイオンのこの蓄積は、本明細書にて、「スラッジ」と称され、最終的には、穿孔グラフェンンシート212を通る水の流れを低下させ、それによって、それを脱イオン化に対して非効果的とする傾向にある。
図2に示すように、スラッジのパージまたは排出を可能とするために、さらなる経路230が、排出バルブ232と共に提供される。従って、
図2の装置または機構200の運転は、「バッチ」モードであってよい。バッチ運転の第一のモードは、排出バルブ232を閉じて流れを止めた状態で、経路210を通してイオン含有水を流すことで行われる。イオン含有水は、支持チャンバー214の上流側226を満たす。水分子は、
図2の穿孔グラフェンシート212および裏張りシート220を通して、支持チャンバー214の下流側227へ流される。従って、脱イオン水は、ある時間、下流部分227に蓄積し、タンク224として示される捕捉容器への経路222を通しての引き抜きに供される。最終的には、支持チャンバーの上流部分226におけるイオンの蓄積または濃縮は、穿孔グラフェンシート212を通しての水の流れを低下させる傾向にある。上流チャンバーまたは上流側226の上、またはその中に蓄積した濃縮イオン/水混合物をパージするために、バルブ232が開けられ、それによって、濃縮イオン/水混合物のパージが可能となり、同時に上流部分226は、タンク216またはポンプ218からのイオン含有水で満たされる。次にバルブ232が閉じられ、別のろ過サイクルが開始する。この結果、脱イオン水が生成され、この脱イオン水は、容器224に蓄積される。
【0020】
図4は、
図3のものなどの穿孔部を複数有するグラフェンシートの図である。
図4のシートは、[3、4、または5個の]開口部を定めている。原理上、流速は、開口部密度に比例する。開口部密度が増加するに従って、開口部を通る流れは「乱流」となる場合があり、これは、任意の圧力における流れに悪影響を及ぼし得る。また、開口部密度が増加するに従って、下にあるグラフェンシートの強度が局所的に低下し得る。そのような強度の低下は、ある条件下では、膜の破れを起こし得る。開口部の中心間距離は、0.6ナノメートルの開口部に対して、
1.5ナノメートルの値が最適に近いものと考えられる。
【0021】
図5は、
図2のグラフェンシートと共に用いてよい裏張りシートの構造の簡略図である。
図5において、裏張りシート220は、ポリテトラフルオロエタンとしても知られるポリテトラフルオロエチレンのフィラメント520から作られており、長方形グリッドに配置されて互いの交差点にて結合または融合されている。穿孔グラフェンシートと同様に、裏張りシートの寸法は、十分な強度に対応した最大流れのために可能な限り大きいものであるべきである。同じ方向に配向された互いに隣接するフィラメント520の間の間隔は、名目上100nmであってよく、フィラメントは、名目上の直径40nmを有していてよい。グラフェンシートの引張強度は大きいため、裏張りシートの比較的大きな未支持領域は問題を起こさないはずである。
【0022】
図6は、本開示の別の実施形態または態様に従う脱イオンまたは脱塩装置600の概念図であり、ここで、異なって穿孔されたグラフェンシートの多層が用いられる。
図6において、
図2の要素に対応する要素は、同様の英数字符号で示される。
図6の支持チャンバー614内にて、それぞれ上流および下流の穿孔グラフェンシート612aおよび612bは、チャンバーを3つの体積または部分に分けており、すなわち、上流部分またはチャンバー626a、下流部分またはチャンバー626b、および中間部分またはチャンバー629である。各穿孔グラフェンシート612aおよび612bは、裏張りシートを伴っている。より詳細には、穿孔グラフェンシート612aは、シート620aによって裏張りされており、穿孔グラフェンシート612bは、シート620bによって裏張りされている。穿孔グラフェンシート612aおよび612bの穿孔部は、互いに異なっている。より詳細には、上流グラフェンシート612aは、塩素イオンを流さないか、またはその流れを不可とし、ナトリウムイオンを含有する水の流れは可能とするように選択された開口部612acが穿孔されており;これらの開口部は、名目上の直径が
0.9ナノメートルである。従って、有効径が
0.9ナノメートルよりも大きい塩素イオンは、穿孔グラフェンシート612aを透過することはできず、上流部分またはチャンバー626a中に残される。ナトリウムイオン含有水は、穿孔グラフェンシート612aを通って、中間チャンバー629へと流れることができる。下流穿孔グラフェンシート612bは、ナトリウムイオンを流さないか、その流れは不可とし、水分子の流れは可能とするように選択された開口部
652bsが穿孔されており;これらの開口部は、名目上の直径が
0.6ナノメートルである。従って、有効径が
0.9ナノメートルよりも大きい塩素イオンは、穿孔グラフェンシート612aの開口部612acを透過することはできないが、ナトリウムイオン含有水は、穿孔グラフェンシート612aの開口部612acを通って、中間チャンバー629へと流れることができる。ナトリウムイオンは、下流穿孔グラフェンシート612bを透過することができず、従って、中間部分もしくはチャンバー629中に残されるか、または蓄積する。少なくとも塩素およびナトリウムイオンを伴わない水分子(H
2O)は、中間部分またはチャンバー629から、穿孔グラフェンシート612bの開口部
652bsを通って、下流部分またはチャンバー627aへと流れることができ、そこから、脱イオン水を、経路222および回収容器224によって回収することができる。
【0023】
図2の脱イオン機構200の場合と同様に、
図6の装置または機構は、脱イオン化運転の間にイオンを蓄積または濃縮する。しかし、
図2の装置または機構とは異なり、脱イオン装置600は、少なくとも部分的に分離されたイオンの濃縮物を生成する。より詳細には、塩素およびナトリウムイオンを含有する水の流れにより、装置600の上流部分またはチャンバー626aは、主として塩素イオンから成るスラッジ濃縮物を蓄積し、中間部分またはチャンバー629は、主としてナトリウムイオンの濃縮物を蓄積する。これらの濃縮イオンは、パージ接続部630aおよび630b、ならびにそれらのそれぞれのパージバルブ632aおよび632bを選択的に制御することによって、別々に抽出することができる。より詳細には、バルブ632aを開けて、濃縮塩素イオンを上流部分またはチャンバー626aからタンク634aとして示される回収容器へ流してよく、ならびにバルブ632bを開けて、濃縮ナトリウムイオンを中間部分またはチャンバー629からタンク634bとして示される回収容器へ流してよい。パージバルブ632aを閉めた後に、中間部分またはタンク629のパージが開始されることが理想的であり、それによって、穿孔グラフェンシート612a全体にわたってある程度の圧力が維持されて、穿孔グラフェンシート612aを通る水の流れが提供され、ナトリウムイオンリッチスラッジの中間チャンバー629からのフラッシングが補助される。パージバルブ632aおよび632bは、脱イオンを進行させる前に閉じられる。パージされ、回収された濃縮イオンは、ナトリウムの場合は固体形態への、または塩素の場合は気体形態への変換に関して、経済的な価値を有する。海水は、著しい量のベリリウム塩を含有しており、これらの塩は、選択的に濃縮された場合、製薬業界にとって触媒としての価値を有することには留意されたい。
【0024】
図6にはまた、流路658と、上流部分またはチャンバー626aと、および中間部分またはチャンバー626bとをそれぞれ繋いでいる中間クロスフローバルブ654aおよび654bが示される。イオンを多く含有する未ろ過水201が、バルブ652を開けることによって流路658へ送られてよく、または脱イオン水202が、ポンプ660を運転することによってタンク224から提供されてよい。ポンプ660から、脱イオン水は、チェックバルブ656を通って経路658へ流れる。クロスフローバルブ654aおよび654bは、チャンバーからのスラッジのパージを補助するために、それぞれパージバルブ632aおよび632bと同時に開閉される。
【0025】
図7は、本開示の態様に従う脱イオンまたはイオン分離機構の単純化された図である。
図6の要素に対応する
図7の要素は、類似の英数字符号で示される。
図7において、穿孔グラフェンシート612aおよび612bは、RO膜技術から公知であるように、巻かれるか、またはらせん状に巻かれて円筒形状とされ、712aおよび712bとして示される筐体にそれぞれ挿入される。
【0026】
当業者であれば、選択的に穿孔されたグラフェンシートによって、塩素およびナトリウム以外のイオンを水から除去することができることは理解されるであろう。
【0027】
不要なイオンを含有する水(201)を脱イオン化するための方法は、水分子を透過させ、不要なイオンのうちの選択された1つ(例えば、Na)を透過させないように選択された複数の開口部(312など)でグラフェンのシート(310)を穿孔し、それによって穿孔グラフェン(212)を作製する工程を含む。別の選択肢として、そのように穿孔されたグラフェンシートを提供してもよい。不要なイオンを含有する水(201)は加圧され(216、218)、それによって加圧水が作り出される。加圧水は、穿孔グラフェン(212)の第一(212u)の表面に適用され、それによって、水分子は、イオンに対して優先的に、穿孔グラフェンシートの第二の側(212d)へと流される。水分子(202)は、グラフェンシートの第二の側(212d)にて回収される。本方法の1つのモードでは、イオンのうちの選択された1つは塩素であり、塩素イオンを透過させない開口部は、名目上の直径が0.9ナノメートルであり、開口部の間隔は、名目上
1.5ナノメートルである。本方法の別のモードでは、イオンのうちの選択された1つはナトリウムであり、ナトリウムイオンを透過させない開口部は、名目上の直径が0.6ナノメートルであり、開口部の間隔は、名目上
1.5ナノメートルである。方法は、ポリテトラフルオロエチレングリッド(520)であってよい裏張り(220)で穿孔グラフェンのシート(212)を補強する工程を含んでよい。
【0028】
不要なイオンを含有する水(201)を脱イオン化するための方法は、不要なイオンのうちの選択された第一のイオン(例えば、塩素)を透過させず、不要なイオンのうちの選択された第二のイオン(例えば、ナトリウム)を含む水分子を透過させるように選択された径の複数の開口部(312)でグラフェンの第一のシート(612a)を穿孔し、それによって穿孔グラフェンの第一のシート(612a)を作製する工程を含む。グラフェンの第二のシート(612b)は、水分子を透過させ、不要なイオンのうちの選択された第二のイオンを透過させないように選択された複数の開口部が穿孔され、それによって、穿孔グラフェンの第一のシート(612a)の開口部よりも小さい径である開口部を有する穿孔グラフェンの第二のシート(612b)が作製される。穿孔グラフェンの第一(612a)および第二(612b)のシートは、並列配置され、それによって、穿孔グラフェンの第一のシート(612a)によって定められる第一の側、穿孔グラフェンの第二のシート(612b)によって定められる第二の側、およびその間の液体流のための経路(629)を有する並列シートが形成される。不要なイオンを含有する水が、並列シートの第一の側(612a)に適用され、それによって、水分子が、イオンに対して優先して、並列シート(612a)および経路(629)を通って、並列シートの第二の側へ流れることにより、名目上の脱イオン水が生成される。名目上の脱イオン水分子は、並列シートの第二の側(612b)から回収される。
【0029】
水脱イオン装置は、水分子を流すが、特定の種類のイオン(例えば、ナトリウム)を流さない寸法の開口部(312)が穿孔されたグラフェンシート(212)を含む。特定の種類のイオンを含有する水の供給源が提供される。特定の種類のイオンを含有する水が、開口部が穿孔されたグラフェンシート(212)通って流れるための経路(210、226、227)が提供される。この脱イオン装置の特定の実施形態では、流れの方向を開口部が穿孔されたグラフェンシート(212)からそらせるためのパージ機構(220、232)が、流れのための経路と連結される。
【0030】
分離装置(600)は、水分子を流すが、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシート(612a)、および水分子を流すが、第二の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第二のグラフェンシート(612b)を含み、ここで、第二の種類のイオン(Na)は、第一の種類のイオン(Cl)よりも小さい。第一および第二の種類のイオンを含有する水(201)の供給源(210、216、218)が提供される。第一および第二の種類のイオンを含有する水(201)の流れを、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシート(612a)へ適用するための経路(210、626a)が提供される。その結果、(a)第一の種類のイオン(Cl)が、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシート(626a)の上流側(626a)に蓄積し、(b)第二の種類のイオン(Na)を含有する水は、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシート(626a)を通って、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第一のグラフェンシート(612a)の下流側(629)へと流れる。分離装置(600)はさらに、第二の種類のイオンを含有する水の流れを、第一の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔されたグラフェンシート(612b)の上流側へ適用するための経路(629)も含む。その結果、(a)第二の種類のイオンが、第二の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第二のグラフェンシート(612b)の上流側(629)に蓄積し、(b)第一および第二の種類のイオンを含有しない水は、第二の種類のイオンを流さない寸法の開口部が穿孔された第二のグラフェンシート(612b)を通って流れる。第一および第二の種類のイオンを含有しない水(202)を受けるための回収機構(222、224)が連結される。イオンの蓄積物を別々に回収するためのさらなる回収機構(630a、632a、634a;630b、632b、634b)も提供されてよい。