【文献】
Hildebrand DC, Schroth MN.,beta-Glucosidase Activity in Phytopathogenic Bacteria. ,Appl Microbiol.,1964年11月,12(6),p.487-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
β−グルコシダーゼ基質が、アリザリン−β−グルコシド、マゼンタ−β−グルコシド(5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル−β−グルコシド)、DHF−β−グルコシド、3HF−β−グルコシド、およびCHE−β−グルコシド(3,4−シクロヘキセノエスクレチン−β−グルコシド)、ならびに、ALDOL(商標)β−グルコシドからなる群から選択される、請求項1から3の何れか一項に記載の反応培地。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の詳細な説明の前に、本発明をよりよく理解できるように、以下の定義を示す。それらの定義は、決して限定するものではない。
【0011】
反応培地とは、代謝の発現、および/または微生物の増殖に必要な要素のすべてを含む培地であると理解する。反応培地は、固体、半固体、または液体であってもよい。固体培地とは、ゲル状培地であると理解する。寒天は、微生物を培養するための、微生物学における従来のゲル化剤であるが、ゼラチン、アガロース、または他の天然もしくは人工のゲル化剤を使用することが可能である。例えば、コロンビア寒天培地、トリプケースソイ寒天培地、マッコンキー寒天培地、サブロー寒天培地、または、より一般的には、Handbook of Microbiological Media(CRC Press)に記載されているものなどの、多くの調製物が市販されている。本発明による反応培地は、C.difficileの増殖を可能にしなければならない。
【0012】
反応培地は、アミノ酸、ペプトン、炭水化物、ヌクレオチド、ミネラル、ビタミンなどの1つまたは複数の要素を組み合わせて含むことができる。培地はまた、着色剤も含むことができる。例示として、エバンスブルー、ニュートラルレッド、ヒツジの血液、ウマの血液、酸化チタンなどの乳白剤、ニトロアニリン、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、1種または複数の代謝指示薬、1種または複数の代謝調節剤などを、着色剤として挙げることができる。
【0013】
反応培地は、検出培地(revealing medium)、または培養および検出培地であってもよい。前者の場合、微生物の培養は、接種前に行われ、後者の場合、検出および/または同定培地も、培養培地を構成する。
【0014】
当業者はまた、バイプレートを使用することができ、バイプレートにより、同一の生物学的試料が置かれた異なる基質、または異なる選択的混合物を含む、2つの培地を容易に比較することが可能になる。
【0015】
反応培地は、C.difficile株の1種または複数の増殖活性剤を含むことができる。増殖活性剤とは、微生物の増殖を刺激する、化合物または一群の化合物であると理解する。特に、血液、血清、および卵黄を挙げることができる。限定されないが、0.1〜10%の間の濃度が、本発明に特に適している。
【0016】
反応培地は、1種または複数の還元剤を含むことができる。還元剤とは、培地に存在する溶解した酸素を中和することにより、嫌気性菌の増殖を容易にする、化合物または一群の化合物であると理解する。特に、システイン、ピルビン酸塩、オキシラーゼ、亜硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸塩、ヒスチジン、および硫化第一鉄を挙げることができる。限定されないが、0.05〜50g/lの間、好ましくは0.1〜2g/lの間の濃度が、本発明に特に適している。
【0017】
反応培地は、1種または複数のC.difficile芽胞発芽誘導剤を含むことができる。芽胞発芽誘導剤とは、C.difficileの芽胞状態から成長状態への変化を促進する、化合物または一群の化合物であると理解する。特に、タウロコール酸ナトリウムを挙げることができる。
【0018】
限定されないが、0.1〜10g/lの間、好ましくは1〜5g/lの間の濃度が、本発明に特に適している。
【0019】
反応培地は、1種または複数の選択剤を含むことができる。選択剤とは、標的微生物を除く微生物の増殖を妨げるか、遅らせる任意の化合物であると理解する。限定されないが、5mg/l〜5g/lの間の濃度が、本発明に特に適している。
【0020】
抗生物質および抗真菌剤を、選択剤として挙げることができる。抗生物質とは、細菌の増殖を妨げるか、遅らせることができる任意の化合物として理解すべきである。特に、それらは、抗生物質はセファロスポリン、アミノグリコシド、ポリペプチド、スルファミドおよびキノロンの群に属する。例示として、特に、抗生物質のセフォタキシム、セフタジジム、セフォキシチン、セフトリアキソン、セフポドキシム、アズトレオナム、ゲンタマイシン、トリメトプリム、トブラマイシン、モキサラクタム、ホスホマイシン、D−サイクロセリン、ポリミキシン、コリスチン、および、ナリジクス酸などのキノロンを挙げることが可能である。
【0021】
抗真菌剤とは、酵母菌またはカビの増殖を妨げるか、遅らせることができる任意の化合物であると理解すべきである。例示として、特に、アンホテリシンB、フルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、およびシクロヘキシミドを挙げることが可能である。
【0022】
一般に、反応培地は、直接的または間接的に検出できるシグナルにより、標的微生物の酵素活性または代謝活性を検出することを可能にする基質を、さらに含有することができる。直接的な検出の場合、この基質は、蛍光性または発色性マーカーとして作用する部分と結合させることができる。間接的な検出の場合、本発明による反応培地は、基質の消費から生じ、かつ、標的微生物の増殖を明らかにするpH変動に敏感なpH指示薬を、さらに含むことができる。前記pH指示薬は、発色団、または発蛍光団であり得る。ニュートラルレッド、アニリンブルー、およびブロモクレゾールブルーを、発色団の例として挙げることができる。発蛍光団は、例えば、4−メチルウンベリフェロン、ヒドロキシクマリン誘導体、またはレゾルフィン誘導体を含む。
【0023】
C.difficileを同定できるβ−グルコシダーゼ基質とは、適切な増殖条件下で、C.difficileの呈色をもたらす基質であると理解する。特に、2−ヒドロキシフェニル−β−グルコシド(カテコール−β−グルコシド);マゼンタ−β−グルコシド(5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル−β−グルコシド);DHF−β−グルコシド(ジヒドロキシフラボン−β−グルコシド);エスクリン(エスクレチン−β−グルコシド);CHE−β−グルコシド(3,4−シクロヘキセノエスクレチン−β−グルコシド);8−ヒドロキシキノリン−β−グルコシド;X−β−グルコシド(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−β−グルコシド);ローズ(rose)−β−グルコシド(6−クロロ−3−インドキシル−β−グルコシド;6−ブロモ−3−インドキシル−β−グルコシド;ブルー−β−グルコシド(5−ブロモ−3−インドキシル−β−グルコシド);6−フルオロ−3−インドキシル−β−グルコシド;アリザリン−β−グルコシド;(P)−ニトロフェニル−β−グルコシド;4−メチルウンベリフェリル−β−グルコシド、ナフトールベンゼイン−β−グルコシド、インドキシル−N−メチル−β−グルコシド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−N−メチル−β−グルコシド、ナフチル−β−グルコシド;アミノフェニル−β−グルコシド;ジクロロアミノフェニル−β−グルコシド、Aldol(商標)−β−グルコシド(BIOSYNTH、Lukas M.Wick、Alexander Bayer、Christophe Weymuth、Gunter Schabert、Vanessa Pfister、Aysel Aslan、Urs P.Spitz、「Novel Chromogenic Enzyme Substrates」、ASM General Meeting、2009、Philadelphia、I−091/285)を挙げることができる。
【0024】
反応培地は、酵素活性化剤をさらに含むことができる。酵素活性化剤とは、酵素消化プロセスを活性化するために、言い換えれば、酵素活性を明らかにするためのインキュベーションの時間を短縮するために、および/または前記酵素活性を高めるために作用する化合物であると理解する。
【0025】
本発明によるβ−グルコシダーゼ活性化剤は、一般式として、Ar−β−D−グルコシド(式中、Ar−は、芳香族環を表す)を有する。本発明者らは、「芳香族環」で、不飽和化合物、すなわち、二重結合を有し、また、1つまたは複数の隣接したホモ原子環またはヘテロ原子環(各環が5〜7個の頂点を有する)を含むものを指して述べている。非限定的に、アルブチン(ヒドロキノン−β−D−グルコシド)、4−メチルウンベリフェリル−β−グルコシド、4−アミノフェニル−β−グルコシド、サリシン(2−(ヒドロキシメチル)−フェニル−β−D−グルコシド)、およびエスクリン(6,7−ジヒドロキシ−クマリン−β−グルコシド)を挙げることができる。これらの化合物のいくつかは、β−グルコシダーゼ基質である。本発明に観点から、それらを、活性化剤とみなす。なぜなら、それらは、基質として使用される化合物の加水分解の検出に必要な、インキュベーションの時間を短縮することを可能にし、あるいはこの加水分解を高めることを可能にするからである。したがって、驚くべきことに、酵素基質と本発明による活性化剤との組み合わせにより、これらの化合物を別々に使用した場合よりも、酵素活性を早期に、および/または強力に検出することが可能になる。
【0026】
活性化剤の基質を、組み合わせにおける、基質のモル濃度と活性化剤のモル濃度との合計に少なくとも等しいモル濃度で使用するだけの場合よりも、前記化合物と基質との組み合わせの方が、早期の、および/または強力な検出を可能にするならば、化合物の活性化力は、遅い、および/または弱いβ−グルコシダーゼ活性を有する、C.difficileのある種の菌株について、顕著に示される可能性がある。
【0027】
生物学的試料とは、分析のために、物から単離された、小さな部分または少ない量のものを意味することを意図する。これは、生体液標本から得られた臨床試料、または、任意の種類の食物から得られた食物試料であり得る。したがって、この試料は、液体または固体であってもよい。非限定的に、全血、血清、血漿、尿もしくは糞便試料、鼻、喉、皮膚、外傷、または濃脊髄液の臨床試料、水、牛乳や果汁などの飲料、ヨーグルト、肉、卵、野菜、マヨネーズ、チーズ、魚などからの食物試料、特に、骨粉から得られた試料などの、動物飼料から得られた食物試料を挙げることができる。この標本は、そのまま使用することもできるし、分析前に、当業者に既知の方法に従って、富化、抽出、濃縮、または精製タイプの調製を受けることもできる。
【0028】
試料を接触させた後、反応培地は、一般に20〜50℃の間、好ましくは30℃〜40℃の間の適切な温度でインキュベートされる。好ましくは、インキュベーションは、当業者に既知の技術に従って、嫌気状態、言い換えれば、酸素の非存在下で行われる。
【0029】
したがって、本発明は、少なくとも1種のβ−グルコシダーゼ基質と、前記基質と異なる、5g/l未満の濃度の、一般式Ar−β−D−グルコシド(式中、Ar−は、芳香族化合物を表す)の化合物とを含む反応培地に関する。
【0030】
化合物Ar−β−D−グルコシドは、好ましくは、0.3〜1.5g/lの間の濃度である。
【0031】
式Ar−β−D−グルコシドの化合物は、好ましくは、アルブチン、すなわち、ヒドロキノン−β−グルコシド、4−メチルウンベリフェリル−β−グルコシド、4−アミノフェニル−グルコシド、サリシン、すなわち、2−(ヒドロキシメチル)フェニル−β−D−グルコシド、エスクリン、すなわち、6,7−ジヒドロキシ−クマリン−β−グルコシドの中から選択される。
【0032】
化合物Ar−β−D−グルコシドは、好ましくは、アルブチンである。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、β−グルコシダーゼ基質は、アリザリン−β−グルコシド、マゼンタ−β−グルコシド(5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル−β−グルコシド)、DHF−β−グルコシド、3HF−β−グルコシド、およびCHE−β−グルコシド(3,4−シクロヘキセノエスクレチン−β−グルコシド)、ならびに、BIOSYNTH社によるALDOL(商標)β−グルコシド(Wickら、2009、ASM General meeting−Philadelphia(PA、USA))の中から選択される。前記β−グルコシダーゼ基質は、25〜1,000mg/lの間、好ましくは50〜400mg/lの間の濃度である。
【0034】
本発明によれば、酵素活性化剤は、加水分解生成物が、酵素基質の加水分解生成物と異なる酵素基質である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、酵素活性化剤は、生成物が、肉眼で、反応培地において検出できないが、酵素基質の加水分解生成物が検出できる酵素基質である。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、反応培地は、0.1〜10.0g/lの間、好ましくは1.0〜5.0g/lの間の濃度のC.difficile芽胞発芽活性剤、好ましくは、タウロコール酸ナトリウムをさらに含む。
【0037】
本発明は、C.difficileを検出および/または同定する方法であって、
a)C.difficileを含有している可能性の高い試料を、少なくとも1種のβ−グルコシダーゼ基質と、前記基質と異なる、一般式Ar−β−D−グルコシド(式中、Ar−は、芳香族化合物を表す)の化合物とを含む反応培地と接触させるステップと、
b)インキュベートするステップと、
c)C.difficileの存在を示す、β−グルコシダーゼ基質の加水分解を検出するステップと
を含む方法に関する。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による方法は、ステップa)において、上で定義したような培地を用いる。
【0039】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明による方法のステップb)において用いられるインキュベーションは、嫌気状態で行われる。
【0040】
本発明は、反応培地における、β−グルコシダーゼ活性化剤としての一般式Ar−β−D−グルコシドの化合物の使用に関する。
【0041】
好ましくは、前記化合物は、5g/l未満、好ましくは0.3〜1.5g/lの間の濃度である。
【0042】
好ましくは、前記化合物は、アルブチン、すなわち、ヒドロキノン−β−グルコシド、4−メチルウンベリフェリル−β−グルコシド、4−アミノフェニル−β−グルコシド、サリシン、すなわち、2−(ヒドロキシメチル)フェニル−β−D−グルコシド、エスクリン、すなわち、6,7−ジヒドロキシ−クマリン−β−グルコシドから選択される。より好ましくは、前記化合物は、アルブチンである。
【0043】
好ましくは、前記培地は、C.difficileを検出および/または同定するための培地である。
【0044】
以下に実施例は、説明として示すものであり、決して限定するものではない。それらによって、本発明をよりよく理解することが可能になるであろう。
【実施例1】
【0045】
β−グルコシダーゼ基質でのアルブチンの活性化効果の実証。
1.培地および微生物
本出願人の収集物からのClostridium difficileの8つの菌株を、CHE−β−グルコシドが存在するまたは存在しない、異なる濃度のアルブチンを含む培地で試験した。次いで、24時間で、ディッシュの読み取りを行う。培地は、以下の通りに構成される。
【0046】
C.difficile ChromID(登録商標)ベースは、すべての培地に共通する。
【0047】
【表1】
【0048】
次いで、培地に応じて、アルブチンおよび/またはCHE−β−グルコシドを添加する。
【0049】
【表2】
【0050】
試験した菌株の整理番号および各リボタイプを、以下の表に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
2.試験
培地を、ペトリ皿に分配する。
【0053】
嫌気状態における、37℃での、48時間の前培養から、接種を行う。
【0054】
生理食塩水中での、0.5McFの懸濁を行い、次いで、菌株を、10μlの定量白金耳(calibrated loop)で接種する。
【0055】
嫌気状態における、37℃での24時間のインキュベーション後に、読み取りを行う。
【0056】
3.結果
酵素活性/呈色の読み取り尺度
・0=活性なし
・0.5=非常に薄い呈色
・1=明瞭な低強度の呈色
・2=明確な中強度の呈色
・3=濃い呈色の存在
・4=非常に濃い呈色の存在。
【0057】
この基質で得られた呈色は、強度1までで灰色であり、その他の値について、黒色である。
【0058】
【表4】
【0059】
24時間のインキュベーション後、本発明者らは、異なる培地で、黒色に着色された菌株の数について以下のものを得た。
【0060】
【表5】
【0061】
4.解釈
基質の非存在下では、呈色が観察されない。
【0062】
アルブチンだけでも、コロニーの呈色を得ることはできない。
【0063】
逆に言えば、CHE−β−グルコシドの存在下で、アルブチンを添加すると、β−グルコシダーゼの活性化が示され、それは、呈色の強まり(灰色から黒色)により表される。
【0064】
5.結論
アルブチンは、Clostridium difficile株で、β−グルコシダーゼ活性化剤として作用する。
【実施例2】
【0065】
異なるC.difficile株でのアルブチンの最適濃度の試験。
1.培地および微生物
本出願人の収集物からのClostridium difficileの24個の菌株を、それぞれ異なるアルブチン濃度である、5つの培地で試験した。次いで、24時間で、ディッシュの読み取りを行う。使用する培地を、上記の実施例1に示したC.difficile ChromID(登録商標)培地に基づいて調製し、それに、0.016g/lのセフォタキシム、0.005g/lのファンギゾン、および0.25g/l(最終濃度)のD−サイクロセリン、ならびに、以下の表に従って、アルブチンを加える。
【0066】
【表6】
【0067】
試験した菌株の整理番号および各リボタイプを、以下の表に示す。
【0068】
【表7】
【0069】
2.試験
培地を、ペトリ皿に分配する。
【0070】
嫌気状態における、37℃での、48時間の前培養から、接種を行う。
【0071】
生理食塩水中での、0.5McFの懸濁を行い、次いで、菌株を、10μlの定量白金耳で接種する。
【0072】
嫌気状態における、24時間のインキュベーション後に、読み取りを行う。
【0073】
3.結果
酵素活性/呈色の読み取り尺度
・0=活性なし
・0.5=非常に薄い呈色
・1=明瞭な低強度の呈色
・2=明確な中強度の呈色
・3=濃い呈色の存在
・4=非常に濃い呈色の存在。
【0074】
この基質で得られた呈色は、強度1までで灰色であり、その他の値について、黒色である。
【0075】
ここに示す、異なる培地での結果は、嫌気状態における、37℃での24時間のインキュベーション後に得られた。
【0076】
【表8】
【0077】
24時間のインキュベーション後、本発明者らは、異なる培地で、黒色に着色された菌株の数について以下のものを得た。
【0078】
【表9】
【0079】
4.解釈
培地にアルブチンを加えると、呈色が、明らかに強まる。24時間で、アルブチンを含まない培地では、24個のうちの12個の菌株しか、1以上の呈色を有しなかったが、750mg/Lのアルブチンの存在下で、24個のうちの24個の菌株が、最低限度の強度1で着色される。
【0080】
対照で、強い呈色をすでに有する菌株は、1g/Lを超えない限り、アルブチンの存在により、ほとんど、または全く影響を受けないように思われる。その他、ある菌株について、呈色強度のわずかな低下が示される。
【0081】
5.結論
式中、アルブチンは、確実に、β−グルコシダーゼ活性化剤として作用し、また、その作用は、Clostridium difficileの早期検出、特に、リボタイプ027について重要であると思われる。
【実施例3】
【0082】
異なるβ−グルコシダーゼ基質でのアルブチンの活性化効果についての試験。
1.培地および微生物
実施例1で試験したClostridium difficileの8個の菌株を、DHF−β−グルコシド(培地A)、アリザリン−β−グルコシド(培地B)、または3HF−β−グルコシド(培地C)を含み、かつ、アルブチン濃度が高くなっていく培地で試験した。
【0083】
次いで、24時間および48時間で、ディッシュの読み込みを行う。
【0084】
使用する培地を、上記の実施例1に示したC.difficile ChromID(登録商標)培地に基づいて調製し、それに、以下の表に従って、アルブチンを加える。
【0085】
【表10】
【0086】
したがって、基質に応じて、培地は、以下の通りとなる:
・400mg/LのDHF−β−グルコシド(培地TA、1A、2Aおよび3A)
・50mg/Lのアリザリン−β−グルコシド(培地TB、1B、2Bおよび3B)
・300mg/Lの3HF−β−グルコシド(培地TC、1C、2Cおよび3C)
【0087】
2.試験
培地を、ペトリ皿に分配する。
【0088】
嫌気状態における、37℃での、48時間の前培養から、接種を行う。
【0089】
生理食塩水中での、0.5McFの懸濁を行い、次いで、菌株を、10μlの定量白金耳で接種する。
【0090】
嫌気状態における、37℃での24時間および48時間のインキュベーション後に、読み取りを行う。
【0091】
3.結果
酵素活性/呈色の読み取り尺度
・0=活性なし
・0.5=非常に薄い呈色
・1=明瞭な低強度の呈色
・2=明確な中強度の呈色
・3=濃い呈色の存在
・4=非常に濃い呈色の存在。
【0092】
コロニーの色:
培地A:茶色
培地B:藤色
培地C:茶色
【0093】
【表11】
【0094】
4.解釈
アルブチンの存在下では、使用する基質に関係なく、呈色強度の向上が示される。この向上は、24時間以降、主に1g/lのアルブチンの存在下で、DHF−β−グルコシドを使用する間でとりわけ明白である。アリザリン−β−グルコシドの場合、向上は、24時間では、明確ではないが、48時間では、アルブチンを含有するすべての培地で、より明瞭である。最後に、3HF−β−グルコシドの場合、この化合物の効果は、48時間で明白であるにすぎないが、使用した濃度に関係なく、また、菌株が何であるかに関係なく、β−グルコシダーゼ活性の実際の活性化が示される。
【0095】
しかし、理想の濃度は、使用する基質に応じて異なり、DHF−β−グルコシドおよび3HF−β−グルコシドならば、約1g/l、アリザリン−β−グルコシドならば、500mg/lであろう。
【0096】
5.結論
この試験は、Clostridium difficileの菌株におけるβ−グルコシダーゼ活性の活性化に対する、アルブチンの重要性を実証している。
【実施例4】
【0097】
β−グルコシダーゼ活性へのAr−β−グルコシド化合物の活性化効果についての試験。
1.培地および微生物
Clostridium difficileの6個の菌株を、これらの菌株において、β−グルコシダーゼ活性化剤として作用し得る化合物を含む培地で試験した。これらの菌株のリボタイプを、上記の表に示している。整理番号0801091を有する菌株のリボタイプは、056である。β−グルコシダーゼ活性化剤として試験した化合物は、以下の通りである:
・アルブチン、
・O−メチル−β−グルコシド、
・セロビオース、
・サリシン、
・4−アミノフェニル−β−グルコシド、
・4−メチル−ウンベリフェロン−β−グルコシド、
・エスクリン。
【0098】
それらを、各化合物について同じモル濃度を有することが可能になる濃度で試験した。
【0099】
使用する培地を、上記の実施例1に示したC.difficile ChromID(登録商標)培地に基づいて調製し、それに、0.3g/lのCHE−β−グルコシド基質、および、以下の表に従って、化合物の1つをそれぞれを加える。
【0100】
【表12】
【0101】
2.試験
培地を、ペトリ皿に分配する。
【0102】
嫌気状態における、37℃での、48時間の前培養から、接種を行う。
【0103】
生理食塩水中での、0.5McFの懸濁を行い、次いで、菌株を、10μlの定量白金耳で接種する。
【0104】
嫌気状態における、37℃での24時間のインキュベーション後に、読み取りを行う。
【0105】
3.結果
酵素活性/呈色の読み取り尺度
・0=活性なし
・0.5=非常に薄い呈色
・1=明瞭な低強度の呈色
・2=明確な中強度の呈色
・3=濃い呈色の存在
・4=非常に濃い呈色の存在。
【0106】
この基質で得られた呈色は、強度1までで灰色であり、その他の値について、黒色である。
【0107】
【表13】
【0108】
4.解釈
O−メチル−β−グルコシドおよびセロビオースは、Clostridium difficileのβ−グルコシダーゼに活性化効果を与えない。それどころか、対照で呈色を示している菌株で、呈色の低下が示される。
【0109】
逆に、アルブチンに関しては、β−グルコシダーゼの活性化が観察され、ひいては、サリシン、4−アミノフェニル−β−グルコシド、4−メチル−ウンベリフェロン、またはエスクリンの存在下でコロニーの呈色が強まる。これらのうちの1つの化合物の存在下で、不均一な菌株について、呈色の均一化も示される。エスクリンを含有する培地について、寒天において、黒色呈色の強い拡散が示され、それにより、培地を読み取ることが困難になることもある。
【0110】
5.結論
この試験は、アルブチン、サリシン、4−アミノフェニル−β−グルコシド、4−メチル−ウンベリフェロン、またはエスクリンなどの、少なくとも1つの芳香族環を有する化合物による、C.difficileのβ−グルコシダーゼの活性化効果を実証している。
【実施例5】
【0111】
ALDOL(商標)[ALDOL(商標)455−β−グルコシド、およびALDOL(商標)484−β−グルコシド(BIOSYNTH)]に基づく、β−グルコシダーゼの2つの基質の試験。
1.培地および微生物
Clostridium difficileの8個の菌株を、4つの異なる培地、すなわち、対照の増殖培地(T)、75mg/LのALDOL(商標)455−β−グルコシドを含有する培地(1)、75mg/LのALDOL(商標)484−β−グルコシドを含有する培地(2)、および、300mg/LのレベルのCHE−β−グルコシドと、クエン酸鉄アンモニウム(300mg/L)とを含有する培地(3)それぞれで試験した。
【0112】
すべての培地に共通した栄養ベースの組成を以下に示す。それは、クエン酸鉄アンモニウムを含まないが、1g/Lのアルブチンを補給したC.difficile chromID(登録商標)ベースである。
【0113】
【表14】
【0114】
寒天が溶けた後、このベースを、4×80mLに分け、フラスコT、1、2、および3に分配する。300mg/LのCHE−β−グルコシド、および300mg/Lのクエン酸鉄アンモニウムを、前もって、秤量してフラスコ3に入れていたであろう。オートクレーブサイクルにより、培地が滅菌される。培地を過冷却に戻した後、ALDOL(商標)に基づく基質を、濃縮ストック溶液から、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの溶媒に可溶化した添加物として加える。
【0115】
2.試験
培地を、ペトリ皿に分配する。
【0116】
嫌気状態における、37℃での、48時間の前培養から、接種を行う。
【0117】
生理食塩水中での、0.5McFの懸濁を行い、次いで、菌株を、10μlの定量白金耳で接種する。
【0118】
嫌気状態における、37℃での24時間のインキュベーション後に、読み取りを行う。結果を以下に列挙する。
【0119】
3.結果
C.difficileの菌株による、異なる基質の酵素加水分解の後、培地1、2および3で得られた単離コロニーの呈色は、それぞれ、黄色、オレンジ色、および茶色である。
【0120】
酵素活性の発現の読み取り尺度(呈色強度)
・0=活性なし
・0.5=非常に薄い呈色
・1=明瞭な低強度の呈色
・2=明確な中強度の呈色
・3=濃い呈色の存在
・4=非常に濃い呈色の存在。
【0121】
【表15】
【0122】
4.解釈
ALDOL(商標)455−β−グルコシド、およびALDOL(商標)484−β−グルコシド(BIOSYNTH)の基質は、C.difficileの優れた検出を可能にする。24時間のインキュベーションからの得られた呈色強度(それぞれ、黄色およびオレンジ色)は高い。これら2つの基質により得られた成果は、CHE−β−グルコシドにより得られた成果と実質的に同一である。