特許第5882362号(P5882362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882362
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】恥骨上安全カニューレ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   A61B17/34
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-550848(P2013-550848)
(86)(22)【出願日】2012年1月23日
(65)【公表番号】特表2014-510556(P2014-510556A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】EP2012050966
(87)【国際公開番号】WO2012101089
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年10月15日
(31)【優先権主張番号】102011009482.2
(32)【優先日】2011年1月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506261442
【氏名又は名称】ハンス ハインドル
【氏名又は名称原語表記】Hans Haindl
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ハインドル
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−158870(JP,A)
【文献】 特開2001−238947(JP,A)
【文献】 仏国特許発明第2129116(FR,A5)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0276288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61M 25/01
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔に穿刺するための恥骨上カニューレ(1)であって、近位及び遠位端(4、5)を有する外側及び内側の長手方向に切れ目のあるスリーブ(2、3)と、その近位端(5)に2つのハンドル部(8a、8b;18a、18b)とを備え、第1の回転位置で、前記内側スリーブの前記長手方向の切れ目(7)が前記外側スリーブ(2)により覆われ、且つ第2の回転位置で、前記内側及び前記外側スリーブの前記長手方向の切れ目(6、7)が、重なり合って配置されるように、前記内側スリーブ(3)が、前記外側スリーブ(2)内で長手方向に移動可能であり、且つ回転可能であるように前記外側スリーブ(2)内で構成され、前記内側スリーブ(3)が、前記第2の回転位置にある場合、前記外側スリーブ(2)の中に完全に後退可能な穿刺先端(9)をその遠位端(4)に備えており、また前記内側及び外側スリーブ(2、3)、並びに/または前記2つのハンドル部(8a、8b;18a、18b)が、前記第2の位置で相互にロックされる、恥骨上カニューレ(1)。
【請求項2】
前記内側及び前記外側スリーブ(2、3)、並びに/または前記2つのハンドル部(8a、8b;18a、18b)が、前記第2の位置で分離できないように相互にロックされる、請求項1に記載のカニューレ。
【請求項3】
前記内側スリーブ(3)の前記穿刺先端(9)が既に前記外側スリーブ(2)の中に完全に後退していた場合、該内側スリーブ(3)は、前記第2の位置へと回転できるだけである、請求項1または2に記載のカニューレ。
【請求項4】
前記内側スリーブの前記穿刺先端(9)が前記外側スリーブ(2)から遠位方向に延びている限り、前記2つのハンドル部(8a、8b;18a、18b)は、該内側スリーブ(3)が回転するのを阻止する、請求項1から3のいずれかに記載のカニューレ。
【請求項5】
第1のハンドル部(8a;18a)が、前記内側スリーブ(3)に接続され、また第2のハンドル部(8b;18b)が、前記外側スリーブ(2)に接続される、請求項1から4のいずれかに記載のカニューレ。
【請求項6】
前記内側スリーブ(3)が前記第2の位置へと回転すると、該内側スリーブ(3)の前記穿刺先端(9)が、前記外側スリーブ(2)の中に完全に後退する、請求項1に記載のカニューレ。
【請求項7】
前記スリーブの各近位端が、拡大させた直径の領域を有し、また該スリーブの回転及びシフト動作が、拡大させた直径を有するこれらの部分のねじ(10)により結合される、請求項6に記載のカニューレ。
【請求項8】
前記カニューレ(1)の前記近位端(5)が、前記内側スリーブ(3)に接続された第1のハンドル部(18a)と、前記外側スリーブ(2)に接続された第2のハンドル部(18b)とを備え、該ハンドル部が互いに対して回転動作をすると、前記内側スリーブの前記穿刺先端(9)が、前記外側スリーブ(2)の中に完全に後退し、且つ前記長手方向の切れ目(6、7)が、重なり合って配置される、請求項6または7に記載のカニューレ。
【請求項9】
前記外側スリーブの前記遠位端(4)が、本質的に鋭利ではない、請求項1から8のいずれかに記載のカニューレ。
【請求項10】
前記内側スリーブ(3)が、前記第2の位置から前記第1の位置へと完全に逆戻りすることが阻止されるように構成される、請求項1から9のいずれかに記載のカニューレ。
【請求項11】
前記内側スリーブ(3)が、前記第1の位置に逆戻りしないように、前記第2の位置で拡大する、請求項10に記載のカニューレ。
【請求項12】
前記外側スリーブ(2)の前記内側表面の前記遠位端(4)が、穿刺中に前記内側スリーブ(3)を安定化させる2つの安定化要素(14)を備える、請求項1から11のいずれかに記載のカニューレ。
【請求項13】
前記第1の回転位置と第2の回転位置の間に、前記穿刺先端(9)が、既に前記外側スリーブ()の中に完全に後退しているが、前記内側及び外側スリーブの前記長手方向の切れ目(6、7)がまだ重なり合って配置されていない第3の回転位置が提供される、請求項1から12のいずれかに記載のカニューレ。
【請求項14】
前記内側スリーブ(3)が前記第3の位置から前記第1の位置へと完全に逆戻りすることが阻止されるように構成される、請求項13に記載のカニューレ。
【請求項15】
前記内側スリーブ(3)が前記第3の位置へと回転すると、該内側スリーブ(3)の前記穿刺先端(9)が、前記外側スリーブ(2)の中に完全に後退することができる、請求項13に記載のカニューレ。
【請求項16】
前記カニューレ(1)の前記近位端(5)が、前記内側スリーブ(3)に接続された第1のハンドル部(18a)と、前記外側スリーブ(2)に接続された第2のハンドル部(18b)とを備え、互いに対して該ハンドル部が回転動作をすると、前記第3の回転位置で、前記内側スリーブの前記穿刺先端(9)が、前記外側スリーブ(2)の中へと完全に後退し、且つ前記第2の回転位置で、前記内側及び外側スリーブの前記長手方向の切れ目(6、7)が、重なり合って配置される、請求項14に記載のカニューレ。
【請求項17】
前記ハンドル部(18a、18b)が、互いに対する前記スリーブの前記回転動作とシフト動作を結合するねじ(10)を備える、請求項16に記載のカニューレ。
【請求項18】
前記外側スリーブ(2)及び前記第2のハンドル部(18b)が、1つのプラスチック部品から製作される、請求項8または17に記載のカニューレ。
【請求項19】
前記内側スリーブ(3)に接続された前記ハンドル部(8a;18a)が、圧力プレートを備える、請求項5、8、17、及び18のいずれかに記載のカニューレ。
【請求項20】
請求項1から19のいずれかに記載のカニューレ(1)と、該カニューレ(1)の前記内側スリーブ(3)内に受け入れることのできるカテーテル(11)とを備え、該カテーテル(11)が、重なり合って配置された前記スリーブ(2、3)の前記長手方向の切れ目(6、7)により、前記カニューレの前記第2の位置で、前記カニューレ(1)から取り外すことができる、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全カニューレに関し、より詳細には、例えば、恥骨上安全カニューレ等、体腔に穿刺するための安全カニューレに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の様々な分野で、カニューレを通して体腔中にカテーテルを挿入すると、恒久的に接続されたカテーテルの首部を介してカニューレを取り外すことがもはやできなくなるという問題に直面している。当技術分野では、この問題に対する様々な解決策が知られている。例えば、中心静脈カテーテルでは、カテーテルが損傷するのを阻止し、且つ患者若しくは操作者が傷つかないようにするために、カニューレ上に保護用プラスチック袋を取り付けている。
【0003】
前述の問題はまた、泌尿器科学の分野でも知られている。膀胱の恥骨上穿刺(すなわち、腹壁を通る)は、恒久的な尿路変更を可能にするための確立された方法となっている。この目的のために、いわゆる恥骨上カテーテルが使用されるが、それは、尿道を通して挿入されるカテーテルよりも低い感染率を示す。カテーテルが挿入され、カニューレがカテーテルから再度取り外されるとき、カニューレをカテーテルの首部を介して取り外すことがもはやできない問題は、恥骨上カテーテルでも生ずる。しかし、カニューレは、容易にカテーテルに損傷を与え、且つ/または患者に傷害を与えるおそれがあるので、カテーテル上に留めておくことはできない。
【0004】
カテーテルからカニューレを取外し可能にするために、使用時にカニューレを分割することが知られている。操作者は、例えば、2つのハンドルで反対方向に引っ張り、カニューレを長手方向に2つに分割する。2つになったカニューレの半分は、次いで、簡単にカテーテルから取り外すことができる。このようなカニューレは、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4で知られている。分割可能なカニューレの例には、一方の側に開放間隙を有するが他方の側は強度を弱くした巻いたカニューレ、両側を機械的に弱めたカニューレ、及びレーザでミシン目を入れたカニューレがある。
【0005】
しかし、分割するプロセスは、極度に力を必要とし、且つ操作者が傷害を受ける高い危険性を含んでいる。カニューレの分割端は、触ると切り傷を生ずる可能性のある鋭利な隆起部で覆われることが多い。
【0006】
カニューレの分割を必要としない従来技術の知られた代替形態は、カテーテルを横方向に取り外すことのできるいわゆるトラフカニューレである。このようなトラフカニューレの例は、特許文献5及び特許文献6で開示される。特許文献7並びに特許文献8は、2つの長手方向の切れ目、部分的に重なるスリーブからなるカニューレを開示している。
【0007】
特許文献9は、互いに摺動可能な内側及び外側シースを有するカニューレを開示する。しかし、内側シースのカニューレ先端を、引き抜かれた安全位置に固定することができず、従って、カニューレの先端が外に出ることが阻止されずに傷をつける可能性がある。更に、特許文献9で述べられたねじは、技術的に実現可能なものではなく、あるいは非常な努力を行うことにより実現可能であるに過ぎない。
【0008】
後者の参考文献は、鋭利な隆起部を有する分割縁が形成されない点で、傷害を与える危険を低減するとしても、そこで提案される手法は、カニューレの極度に鋭利な穿刺先端により、傷をつける危険をなくすことはなく、感染する可能性がある。事故予防規則TRBA250によれば、病院の管理者は、傷害を受ける危険を含まないカニューレシステムをその従業員に提供するように義務づけられている。例えば、泌尿器科学の分野では、いまのところ、恥骨上膀胱穿刺を行うために利用できる傷害の危険のないシステムは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許発明第4316793号明細書
【特許文献2】独国特許発明第2104211号明細書
【特許文献3】独国特許発明第69837667号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102005015556号明細書
【特許文献5】欧州特許第0499147号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第4103977号明細書
【特許文献7】米国特許第3545443号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第3347150号明細書
【特許文献9】米国特許第7708721号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、安全なカニューレを提供することであり、詳細には、知られているシステムが含んでいる傷害及び感染の危険を更に最小化する体腔に穿刺するための安全なカニューレを提供することである。この目的は、請求項1によるカニューレにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、近位端及び遠位端をそれぞれが有する外側及び内側の長手方向に切れ目のあるスリーブを備える、体腔に穿刺するためのカニューレを提供する。内側スリーブは、外側スリーブの内側に配置され、外側スリーブ内で、長手方向に移動可能である。更に、内側スリーブ及び外側スリーブは、互いに対して回転することができ、従って、第1の回転位置で、内側スリーブの長手方向の切れ目は、外側スリーブにより完全に覆われているが、第2の回転位置で、内側スリーブ及び外側スリーブの長手方向の切れ目は、重なり合って配置される。第1の回転位置では、2つのスリーブは、体腔を穿刺するのに適した完全に閉じたカニューレを形成する。第2の位置では、スリーブの2つの長手方向の切れ目が、位置合せするように配置され、従って、内側スリーブ内のカテーテルまたはカテーテル管を、これらの長手方向の切れ目を通して取り外すことができる。本発明は、内側スリーブだけが鋭利な穿刺先端を備えており、外側スリーブの遠位端は、傷害を与えることができないように構成され、且つカニューレがカテーテルまたはカテーテル管から取り外されるとき、内側スリーブのこの鋭利な穿刺先端が、外側スリーブによって完全に保護されるという考えに基づいている。従って、本発明の内側スリーブは、第2の回転位置にあるとき、外側スリーブの中に完全に後退可能な、または後退する穿刺先端をその遠位端に備える。
【0012】
従って、カニューレがカテーテルまたはカテーテル管から取り外されるとき、鋭利な穿刺先端が、操作者または病院のスタッフにもはや接触できないことが分かる。従って、穿刺先端による傷害及び可能性のある感染は、有効に回避される。本発明によれば、この安全機構の2つの好ましい実施形態が開示される。
【0013】
第1の好ましい実施形態によれば、内側スリーブの穿刺先端が、既に外側スリーブの中に完全に後退している場合、内側スリーブは、第2の位置へと回転できるに過ぎない。従って、カニューレは、2つの段階により開くことができる。まず内側スリーブを、内側スリーブの穿刺先端が、外側スリーブにより完全に覆われる、または保護される程度まで、外側スリーブ内に後退させる必要がある。この位置においてのみ、本発明によるカニューレは、2つのスリーブの第2の位置への互いに対する回転が可能になり、その位置で、2つのスリーブの長手方向の切れ目は、重なり合って配置される。好ましくは、2つの動作は、ハンドル若しくは同様のものにより行われるが、まず互いに対して長手方向に移動させる必要があり、次に、それらは互いに回転することが可能になる。
【0014】
従って、カニューレは、その近位端に、内側スリーブの穿刺先端が外側スリーブから遠位方向に延びる限り、内側スリーブを回転しないようにする2つのハンドル部若しくはウィングを備えることが好ましい。第1のハンドル部若しくはウィングは、内側スリーブに接続され、また第2のハンドル部若しくはウィングは、外側スリーブに接続されることが好ましい。
【0015】
第2の好ましい実施形態によれば、内側スリーブを第2の位置へと回転させたとき、内側スリーブの穿刺先端が、外側スリーブの中に完全に後退する。言い換えると、この実施形態では、2つの動作、すなわち、一方で長手方向にシフトし、他方でスリーブが互いに回転することが結合され、従って、逆も同様であるが、スリーブの互いに対する回転が、スリーブの長手方向シフトと同時に行われるようになる。スリーブの回転及びシフトは、十分なピッチのねじにより結合されることが好ましいが、他の結合選択肢もまた、本発明に従って適用可能である。ねじは、カニューレよりも大きな直径を有するハンドル部に、または他の近位部分に設けることが好ましい。従って、カニューレの内側及び外側表面にねじを切る必要がある場合よりも、ねじ加工は簡単であり、費用もかからない。
【0016】
好ましくは、スリーブは、取り付けられたハンドル部若しくはウィングにより互いに回転する。従って、カニューレの近位端は、内側スリーブに接続された第1のハンドル部と、外側スリーブに接続された第2のハンドル部とを備えることが好ましい。互いに対するハンドル部の回転動作は、外側スリーブの中に内側スリーブの穿刺先端を完全に後退させ、且つ内側及び外側スリーブの長手方向の切れ目を重なり合って配置させる。
【0017】
両方の実施形態の場合、外側スリーブの遠位端は、本質的に鋭利ではないことが好ましい。具体的には、外側スリーブの遠位端は、外側スリーブでの傷害が回避されるように構成される。
【0018】
更に、内側及び外側スリーブ、並びに/または2つのハンドル部は、第2の位置で相互にロックされる。これは、カニューレがカテーテルから取り外されるとき(またはその後に)、2つのスリーブが互いに対して逆戻りする、またはシフトして、内側スリーブの穿刺先端が露出されるのを回避するためである。その係合は分離することができず、従って、カニューレが、使い捨てカニューレとして使用できるだけであることが好ましい。
【0019】
内側スリーブは、第2の位置から第1の位置へと完全に逆戻りすることが阻止されることが更に好ましい。これは、例えば、内側スリーブ(わずかに事前に応力を加えることができる)が第2の位置で拡大し、従って、拡大した場合、内側スリーブを外側スリーブによりもはや収容することができなくなるので、第1の位置に逆戻りすることが、不可能になることで達成されうる。
【0020】
更に、外側スリーブの内側表面の遠位端は、穿刺中に、何らかの圧縮力またはねじり力に対して、内側スリーブを安定化させる2つ以上の安定化要素を備えることが好ましい。安定化要素は、外側スリーブの内側表面における刻み目、継ぎ目、または突起とすることができる。
【0021】
更なる好ましい実施形態によれば、第3の回転位置が、第1と第2の回転位置の間に設けられる。この第3の回転位置では、穿刺先端は、既に完全に後退可能である、または完全に後退しているが、内側及び外側スリーブの長手方向の切れ目は、まだ重なり合って配置されていない。内側スリーブが、第3の位置から第1の位置へと完全に逆戻りしないようにすることが好ましい。
【0022】
第2の位置を参照して述べたすべての特徴は、更に、または代替的に、第3の位置に対しても提供することができる。第3の位置への内側スリーブの回転は、例えば、内側スリーブの穿刺先端を外側スリーブの中に完全に後退させる。
【0023】
スリーブの回転動作及びシフト動作は、ねじにより結合されることが好ましい。カニューレは、その近位端で、内側スリーブに接続された第1のハンドル部と、外側スリーブに接続された第2のハンドル部とを備えることが好ましい。互いに対するハンドル部の回転動作は、まず、第3の回転位置にある穿刺先端を外側スリーブの中へと完全に後退させるが、その場合、内側及び外側スリーブの長手方向の切れ目が、第2の位置で重なり合って配置される。ねじは、カニューレよりも大きい直径を有するハンドル部または他の近位部分に設けられることが好ましい。従って、ねじ加工は、カニューレの内側及び外側にねじを切る必要がある場合よりも簡単であり、且つ費用もかからない。
【0024】
外側スリーブ及びそれに接続されたハンドル部は、プラスチックから、好ましくは一体に製作されることが更に好ましい。ハンドル部のねじ構造をプラスチックで製作することは特に簡単である。
【0025】
好ましい実施形態によれば、内側スリーブに接続されたハンドル部は、圧力プレートを備える。この圧力プレートは、操作者が、例えば、穿刺中に大きな表面積に対して自分の手のひらまたは親指で、圧力を加えることを可能にする。こうすることにより、操作者に対して穿刺をより容易にし、従って、操作を安全にする。内側スリーブは、任意のカテーテル若しくは同様のものを受け入れることができる必要があるため、圧力プレートは、カテーテルのためのスロットまたはガイドを備えることが好ましく、従って、穿刺中に、カテーテルが、例えば、圧力プレートと手のひら若しくは親指との間で動かなくなる、または挟まれることを阻止できる。
【0026】
本発明は、更に、上記で述べたカニューレと、カニューレの内側スリーブ内に収容できるカテーテルとを備えるキットに関し、カテーテルは、重なり合って配置されたスリーブの長手方向の切れ目により、第2のカニューレ位置にあるカニューレから取り外すことができる。このために、スリーブの長手方向の切れ目の寸法を、好ましくは、カテーテルの直径に適合させるべきである。比較的硬質材料のカテーテルの場合、長手方向の切れ目は、好ましくは、少なくともカテーテルの直径と同じ大きさにすべきである。しかし、カテーテル材料が、比較的軟質である場合、カテーテルはまた、カテーテルの弾性を利用して、カテーテルの直径よりも小さなスロットを介して取り外すこともできる。
【0027】
本説明は、例示的に恥骨上カニューレを参照しているが、本発明の主題は、決してそれに限定されるものではない。本明細書で述べる安全性の特徴のすべては、任意の他のカニューレ、特に穿刺カニューレに対しても適用可能であることは、当業者であれば明らかである。
【0028】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して以下で述べるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1a】内側及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、本発明の第1の実施形態によるカニューレの斜視図である。
図1b】内側及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、本発明の第1の実施形態によるカニューレの断面図である。
図2a】内側及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、本発明の第1の実施形態によるカニューレの斜視図である。
図2b】内側及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、本発明の第1の実施形態によるカニューレの断面図である。
図3a】内側及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、本発明の第1の実施形態によるカニューレの斜視図である。
図3b】内側及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、本発明の第1の実施形態によるカニューレの断面図である。
図4a】内側及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、本発明の第1の実施形態によるカニューレの斜視図である。
図4b】内側及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、本発明の第1の実施形態によるカニューレの断面図である。
図5a】内側及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、本発明の第1の実施形態によるカニューレの斜視図である。
図5b】内側及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、本発明の第1の実施形態によるカニューレの断面図である。
図6a】内側スリーブ及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、図1〜5の実施形態の詳細図である。
図6b】内側スリーブ及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、図1図5の実施形態の詳細図である。
図6c】内側スリーブ及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、図1図5の実施形態の詳細図である。
図6d】内側スリーブ及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、図1図5の実施形態の詳細図である。
図6e】内側スリーブ及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、図1図5の実施形態の詳細図である。
図6f】内側スリーブ及び外側スリーブが互いに対して様々な位置にある、図1図5の実施形態の詳細図である。
図7a】本発明の第2の実施形態によるカニューレの斜視図である。
図7b】本発明の第2の実施形態によるカニューレの断面図である。
図8a】本発明の第2の実施形態によるカニューレの斜視図である。
図8b】本発明の第2の実施形態によるカニューレの断面図である。
図9a】本発明の第2の実施形態によるカニューレの斜視図である。
図9b】本発明の第2の実施形態によるカニューレの断面図である。
図10a】本発明の第2の実施形態によるカニューレの斜視図である。
図10b】本発明の第2の実施形態によるカニューレの断面図である。
図11a】本発明によるカニューレの機能的な原理を示す図である。
図11b】本発明によるカニューレの機能的な原理を示す図である。
図11c】本発明によるカニューレの機能的な原理を示す図である。
図11d】本発明によるカニューレの機能的な原理を示す図である。
図11e】本発明によるカニューレの機能的な原理を示す図である。
図11f】本発明によるカニューレの機能的な原理を示す図である。
図12a】好ましい実施形態によるカニューレスリーブの動作モードを示す図である。
図12b】好ましい実施形態によるカニューレスリーブの動作モードを示す図である。
図12c】好ましい実施形態によるカニューレスリーブの動作モードを示す図である。
図12d】好ましい実施形態によるカニューレスリーブの動作モードを示す図である。
図13a】本発明によるカニューレ先端の本発明の細部の断面図である。
図13b】本発明によるカニューレ先端の本発明の細部の斜視図である。
図14】本発明によるカニューレの第3の実施形態を示す図である。
図15a】第1の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図15b】第1の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図15c】第3の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図15d】第3の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図15e】第2の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図15f】第2の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図16a】第1の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図16b】第1の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図16c】第3の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図16d】第3の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図16e】第2の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図16f】第2の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図17】取付け前の図14によるカニューレを示す図である。
図18】取付け後であるが使用前の図14によるカニューレを示す図である。
図18a】取付け後であるが使用前の図14によるカニューレを示す図である。
図19a】第1の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図19b】第3の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図19c】第3の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図19d】第2の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図19e】第2の回転位置にある図14によるカニューレを示す図である。
図20a図14によるカニューレの第1のハンドル部を示す図である。
図20b図14によるカニューレの第1のハンドル部を示す図である。
図20c図14によるカニューレの第1のハンドル部を示す図である。
図20d】取付け前の位置における図14によるカニューレを示す図である。
図20e】第1の回転位置における図14によるカニューレを示す図である。
図20f】第1の回転位置における図14によるカニューレを示す図である。
図21a】本発明によるカニューレの第4の実施形態を示す図である。
図21b】本発明によるカニューレの第4の実施形態を示す図である。
図21c】本発明によるカニューレの第4の実施形態を示す図である。
図22a】本発明によるカニューレの第5の実施形態を示す図である。
図22b】本発明によるカニューレの第5の実施形態を示す図である。
図22c】本発明によるカニューレの第5の実施形態を示す図である。
図22d】本発明によるカニューレの第5の実施形態を示す図である。
図22e】本発明によるカニューレの第5の実施形態を示す図である。
図22f】本発明によるカニューレの第5の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1図5は、本発明のカニューレの第1の実施形態を示す。図1は、第1の回転位置にあるカニューレを示し、また図5は、第2の回転位置にあるカニューレを示している。図2図4は、第1と第2の回転位置の間の動作過程を示す。体腔に穿刺するためのカニューレ1は、長手方向の切れ目6を有する外側スリーブ2と、長手方向の切れ目7を有する内側スリーブ3とを備える(図1bを参照)。各スリーブは、近位端5及び遠位端4を備える。内側スリーブ3は、中で長手方向に移動可能できるように、外側スリーブ2の中に配置され、且つ外側スリーブ2内で回転することができ、従って、図1a及び図1bで示すように、内側スリーブ3の長手方向の切れ目7は、第1の回転位置で外側スリーブ2によって完全に覆われる。図1bは、外側スリーブと内側スリーブの2つの長手方向の切れ目6及び7がオフセットされていることを明確に示している。図示された位置では、穿刺先端9は、内側スリーブ3の遠位端4で、外側スリーブ2から遠位方向に延びている。この鋭利な穿刺先端9を用いて、膀胱等の体腔に穿刺することができる。第1の実施形態によるカニューレ1の近位端5は、2つのハンドル部若しくはウィング8a及び8bを備えており、内側スリーブ3の穿刺先端9が、外側スリーブから遠位方向に延びている限り、内側スリーブ3を回転しないようにする。
【0031】
図5a及び図5bで示すように、2つのスリーブの長手方向の切れ目6及び7が、重なり合って配置されるように、2つのスリーブを互いに回転させることを可能にするために、内側スリーブ3を、まず外側スリーブ2に対して近位方向に後退させる必要がある。これは、図2及び図3で示すように、内側スリーブ3に接続された第1のハンドル部8aを、外側スリーブ2に接続された第2のハンドル部8bに対して近位方向にシフトさせることで達成することができる。図3aで示す位置では、2つのハンドル部若しくはウィング8a及び8bは、もはや互いに妨害しておらず、従って、それらは互いに回転することができる(図4a及び図4bを参照)。2つのウィング8a及び8bを互いに回転させることにより、内側スリーブ3はまた、外側スリーブ2に対して回転する(図4bを参照)。図5で示す第2の回転位置では、2つのスリーブ2及び3を、その長手方向の切れ目6及び7が円周方向で位置合せされ、従って、重なり合って配置される程度にまで、互いに回転させる。図5bで示すように、カニューレ中に収容されたカテーテルは、この位置で、カニューレから、横方向に(すなわち、図5bの下に向けて)取り外すことができる。
【0032】
ハンドル部若しくはウィングの更なる詳細は、図6a〜図6fの詳細図で示される。
【0033】
図7図10は、本発明のカニューレの第2の好ましい実施形態に対する図1図5のシーケンスを示している。この実施形態では、2つのウィング8a及び8bは、2つのハンドル部若しくは調整ホイール18a及び18bで置き換えられており、それは、高いピッチを有するねじ等、ねじ10を介して互いに接続されている。このねじ構造により、内側及び外側スリーブを互いに回転させると、同時に、且つ自動的にスリーブの長手方向シフトが生ずる。従って、第1の実施形態に必要な2つの動作部分は、単一の動作部分に結合される。
【0034】
図7a及び図7bは、第1の回転位置にある第2の実施形態のカニューレを示しており、その場合、内側スリーブ3の長手方向の切れ目7は、外側スリーブ2により完全に覆われている(図7bの断面図を参照)。2つのハンドル部18a及び18bを互いに回転させた場合(図8及び図9を参照)、内側スリーブ3は、同様に外側スリーブ2に対して回転するだけではなく(図8b及び図9bを参照)、内側スリーブ3は同時に、外側スリーブ2の中へと近位方向に後退する(図8a及び図9aを参照)。2つのスリーブ2及び3の長手方向の切れ目6及び7が位置合せされる、または重なり合って配置されるように、第2の回転位置に達した場合(図10a及び図10bを参照)、内側スリーブ3の穿刺先端9は、穿刺先端が、外側スリーブ2により覆われ、且つ保護される程度まで、外側スリーブ2の中に同時に後退する(図10aを参照)。図10aで示される第2の回転位置で、操作者は、傷害及び感染から有効に保護される。
【0035】
図11aから図11fは、より詳細に、本発明によるカニューレの動作モードを示している。参照数字13は、概略的に示した腹壁12の下にある膀胱等の体腔に関連する。カテーテル11を体腔13の中に導入するために、カテーテルは、本発明によるカニューレ1に挿入されるが、その場合、カニューレ1は、穿刺先端9を用いてカテーテル11と共に、腹壁12を通り体腔13の中に挿入される(図11bを参照)。穿刺されると、カニューレ1はもはや必要ではなく、従って、カテーテル11を介して後退させる(図11cを参照)。しかし、首部11aが、カテーテル11をカニューレ1から完全に取り外すのを妨げる。従って、図11cで示す位置において、カニューレ1の2つのスリーブ2及び3を、図10a及び図10bで示すように、その長手方向の切れ目が重なり合って配置されるまで、互いに対して回転させる。スリーブを互いに回転させることにより、内側スリーブのカニューレ先端若しくは穿刺先端9は、上記で述べたように、外側スリーブの中へと同時に後退する。カテーテル11は、次に、重なり合って配置されたスリーブの2つの長手方向の切れ目を通して横方向に取り外すことができる、またはカニューレをカテーテルから取り外すことができる(図11d〜図11fを参照)。穿刺先端9は、外側スリーブ2により完全に覆われている、または保護されているので、カテーテル11への損傷、または操作者の傷害が生じることはない。
【0036】
本発明によれば、内側スリーブと外側スリーブ、並びに/または2つのハンドル部若しくはウィングは、第2の位置で相互にロックすることが好ましい。それにより、カニューレ1がカテーテル11から取り外されるとき、内側スリーブ3の穿刺先端9は、外側スリーブ2内に確実に保持されることが保証される(図11d〜図11fを参照)。この目的のために、例えば、容易に係合を解除できない係合フック等、固定または係止させるための適切な保持具を設けることが好ましい。係合を解除できない固定または係止は、カニューレを使い捨てカニューレとしてのみ使用できるので好ましい。代替的に、または更に、カニューレは、内側スリーブが第2の位置から第1の位置へと完全に逆戻りしないように構成することができる。これは例えば、外側スリーブ内で内側スリーブに事前に応力が加えられていると達成することができる。カニューレが、次いで、2つのスリーブを互いに対して回転させることにより開放されたとき(図12a〜図12cを参照)、内側スリーブの直径は、事前に加えられた応力のため拡大する。内側スリーブの拡大した直径は、次いで、図12dで示すように、内側スリーブ3を外側スリーブ2の中へと完全に回転させようとしたとき、回転動作を妨害する。
【0037】
本発明によれば、鋭利な穿刺先端は内側スリーブに設けられるだけであり、外側スリーブの遠位端は鋭利ではなく、且つ/またはこの遠位端で生ずる傷害を可能な限り回避するように構成される。従って、尖らせた内側スリーブだけを用いて穿刺が行われる。言い換えると、穿刺を行うために必要な力は、内側スリーブの穿刺先端から組織へと移動する。ここで内側スリーブを安定して格納することが有利である。従って、本発明によれば、外側スリーブの内側表面の遠位端が、穿刺中に内側スリーブを安定化させる2つの安定化要素を備えることが好ましい。このような安定化は、例えば、図13a及び図13bで示すように、2つの突起若しくは突出部14により達成することができる。外側スリーブの内側表面に設けられるこれらの2つの突起部14は、穿刺中に内側スリーブのための位置決め点として働く。従って、内側カニューレは、穿刺中の何らかの圧縮またはねじり力に対して安定化される。内側スリーブは、従って、外側スリーブ内でスプリングバックすることが阻止され、それにより穿刺中の操作者の感触を向上させる。
【0038】
図14は、高いピッチを有するねじ等、ねじ10を介して相互に接続された2つのハンドル部18a及び18bを備える本発明によるカニューレの第3の実施形態を示す。このねじ構造により、内側及び外側スリーブの互いに対する回転は、第2の実施形態のようなスリーブの長手方向シフトを同時に、且つ自動的に生ずる。
【0039】
図15a及び図15bは、第1の回転位置における第3の実施形態のカニューレを示しており、その場合、内側スリーブ3の長手方向の切れ目7は、外側スリーブ2により完全に覆われている(図15b及び図16bの断面図を参照)。この回転位置で、例えば、穿刺を行うことが可能である。2つのハンドル部18a及び18bを、次に互いに対して回転させた場合(図15c及び図15eを参照)、内側スリーブ3は、外側スリーブ2に対して同様に回転するだけではなく(図15d、図15f、図16d、及び図16fを参照)、同時に、内側スリーブ3を、外側スリーブ2の中へと近位方向に後退させる(図16a、図16c、及び図16eを参照)。図15c、図15d、図16c、及び図16dで示す第3の位置では、内側スリーブ3の穿刺先端9は、既に、外側スリーブ2の中に深く後退しており(図16cを参照)、穿刺先端は、外側スリーブ2で覆われ、且つ保護されている。図15cで示す第3の回転位置では、従って、操作者は、傷害及び感染から有効に保護される。第2の回転位置に達した場合(図15e、図15f、図16e、及び図16f))、2つのスリーブ2及び3の長手方向の切れ目6及び7が、重なり合って配置される、すなわち、位置合せされる。
【0040】
図17は、取り付ける前の、第3の実施形態によるカニューレを示す。従って、2つのハンドル部18a及び18bがどのように適合し、相互作用するかがはっきりと分かる。図18及び図18aは、使用前であるが取付け時のカニューレを示しており、従って、ハンドル部18aは、ハンドル部18bの中へと両方の部分が係合する深さまで挿入される。カニューレ先端9はこのように外側スリーブ2内に格納され、且つ保護される。図19aで示すように、穿刺位置に限って、カニューレ先端が、穿刺を行うために露出される。2つのハンドル部は、例えば、第1のハンドル部18aに、第2のハンドル部18b内の留め具(図示せず)が係合する係合開口部10cを設けることにより係合することができる(図20dを参照)。従って、カニューレは、図18で示す状態に配置され、且つ保持される。
【0041】
カニューレを図18で示す取付け位置から図19aで示す穿刺位置へと移動するために、操作者は、第1のハンドル部18aを第2のハンドル部18bへと遠位方向にシフトする、または押す必要がある。留め具は、それにより係合開口部10cから開放されるが、その場合、留め具は、係合開口部10bが溝10dよりも深いため、係合開口部10bと不可逆的に係合する前に、溝10dを通って近位方向に摺動する。従って、カニューレ先端は、図19aで示すように安全に配置され、穿刺中に摺動してスリーブ2の中に戻ることはできない。
【0042】
内側スリーブ3が、2つのハンドル部18a及び18bをねじることにより、カニューレ先端9と共に外側スリーブ2の中に後退した場合(図19b〜図19dを参照)、留め具は、更なる係合開口部10a(図20bを参照)に達するまで、ねじ10を通って摺動し(図20d及び図20bを参照)、留め具は係合開口部10aと係合して、カニューレが第2の回転位置に配置または固定される。必要に応じて、更なる係合位置を設けることもできるが、ハンドル部及び/またはスリーブが、少なくとも第1及び第2の回転位置で相互にロックされることが好ましい。
【0043】
図21a〜図21cは、本発明の第4の実施形態によるカニューレを示す。この実施形態では、内側スリーブ3に接続されたハンドル部18aは、圧力プレートとして構成される。この圧力プレートを用いると、操作者は、例えば、自分の手のひらまたは親指で、穿刺中に大きな表面積にわたって圧力を加えることができる。こうすることにより、操作者が容易に穿刺を行い、且つ安全な動作モードが保証される。必要に応じて、内側スリーブ3は、カテーテル11を受け入れることができる必要があるので、圧力プレートは、穿刺中にカテーテルが、例えば、圧力プレートと手のひら若しくは親指との間で挟まる、または固定されることがないように、カテーテル11のためのスロットまたはガイド19を備えることが好ましい。図21cで示すように、カテーテル11は、ガイド19の複数の留め具により、圧力プレート18aの平面内の水平移動で、圧力プレート18aの中心へと案内され、そこからカテーテル11は、内側スリーブ3内へと延びる。
【0044】
外側スリーブ2、並びに/またはハンドル部18a及び/または18bは、プラスチックから製作されることが好ましい。適切なプラスチック材料は、特に、ポリアミド、ポリスルホン、及び例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の高性能樹脂である。外側プラスチックスリーブは、後退させたカニューレ先端に対して特に有効な保護手段であるが、それは、このようなプラスチックスリーブは、破断し難く、且つ傷害を生ずる可能性のある鋭利な縁部をその遠位先端に有していないためである。
【0045】
外側スリーブ2、及びそれに接続されたハンドル部18bをプラスチックで一体に製作することは特に好ましい。こうすることにより、製作を容易にし、且つ費用効果が高くなる。このような実施形態が、図22a〜図22fで例示的に示されている。ここでは、外側スリーブ2及びハンドル部18bは、簡単で、且つ費用効果のある方法で、プラスチックから(射出)成型されうるように構成されている。従って、図示されていないハンドル部18b内の留め具もまた、容易に製作することができる。本発明による安全カニューレは、従来の穿刺カニューレ、特に分割可能なカニューレと比較して使用中に傷害を受け、感染する危険を低減する。本発明による安全カニューレは、低コストで製作することができ、使用するのが簡単である。安全機構は自動的な機構であり、何らかの特定の要員を訓練する必要がない。更に、本安全カニューレの概念は、使用において多様性があり、特に、様々な穿刺カニューレ及び様々なカテーテルと共に使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 カニューレ
2 外側スリーブ
3 内側スリーブ
4 遠位端
5 近位端
6 長手方向の切れ目
7 長手方向の切れ目
8a ハンドル部若しくはウィング
8b ハンドル部若しくはウィング
9 穿刺先端
10 ねじ
10a 係合開口部
10b 係合開口部
10c 係合開口部
10d 溝
11 カテーテル
11a 首部
12 腹壁
13 体腔
14 突出部
18a ハンドル部若しくは調整ホイール、圧力プレート
18b ハンドル部若しくは調整ホイール
19 ガイド
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
図11f
図12a
図12b
図12c
図12d
図13a
図13b
図14
図15a
図15b
図15c
図15d
図15e
図15f
図16a
図16b
図16c
図16d
図16e
図16f
図17
図18
図18a
図19a
図19b
図19c
図19d
図19e
図20a
図20b
図20c
図20d
図20e
図20f
図21a
図21b
図21c
図22a
図22b
図22c
図22d
図22e
図22f