(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882408
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】エンジン駆動電機の負荷装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/023 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
F01N3/023 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-141623(P2014-141623)
(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公開番号】特開2016-17486(P2016-17486A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109819
【氏名又は名称】デンヨー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100077609
【弁理士】
【氏名又は名称】玉真 正美
(72)【発明者】
【氏名】藤 田 忠 宏
【審査官】
菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−195024(JP,A)
【文献】
特開2013−108433(JP,A)
【文献】
特開2013−241936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DPFが設けられたエンジン駆動電機の、前記DPFを再生処理するために前記エンジン駆動電機に負荷を懸ける負荷装置において、
平面状に並置された抵抗体からなる発熱性のダミー負荷を有し、前記ダミー負荷の並置面が前記エンジン駆動電機の排風路に配置された
ことを特徴とするエンジン駆動電機の負荷装置。
【請求項2】
請求項1記載のエンジン駆動電機の負荷装置において、
前記エンジン駆動電機は、排風カバーを上部に持ったケーシング内に収容され、
前記ダミー負荷は、前記ケーシングにおける前記排風カバーの内側に、ダミー負荷カバーで覆われて前記ダミー負荷の並置面が前記エンジン駆動電機の排風路に実質的に直交するように配置された
ことを特徴とするエンジン駆動電機の負荷装置。
【請求項3】
請求項2記載のエンジン駆動電機の負荷装置において、
前記ケーシングにおける前記排風カバーの外側に排風ダクトをそなえたことを特徴とするエンジン駆動電機の負荷装置。
【請求項4】
請求項3記載のエンジン駆動電機の負荷装置において、
前記排風ダクトの何れかの端部に通気性カバーをそなえたことを特徴とするエンジン駆動電機の負荷装置。
【請求項5】
DPFが設けられたエンジン駆動電機の、前記DPFを再生処理するために前記エンジン駆動電機に負荷を与える負荷装置において、
前記エンジン駆動電機のエンジンを冷却するエンジンファンとは別に、外気を取り入れて前記エンジンの冷却用熱交換器を冷却する電動ファンを有し、
前記負荷装置は、平面状に並置された抵抗体からなる発熱性のダミー負荷を有し、前記ダミー負荷の並置面が前記電動ファンによる冷却風流路に配置された
ことを特徴とするエンジン駆動電機の負荷装置。
【請求項6】
請求項5記載のエンジン駆動電機の負荷装置において、
前記負荷装置は、前記ダミー負荷を有し、前記ダミー負荷の並置面が前記電動ファンによる冷却風流路に対して実質的に直交するように配置された
ことを特徴とするエンジン駆動電機の負荷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)装置をそなえたエンジン駆動電機の負荷装置に係わり、とくにエンジンで発生した微粒子をDPF装置で燃焼させるようにエンジンにダミー負荷を懸けて運転するための負荷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン駆動電機の一例であるエンジン駆動発電機は、一般に
図10に示すように構成され、発電機GがディーゼルエンジンEで駆動され、出力端子OUTから負荷(図示せず)に給電し、このとき発生するディーゼルエンジンEの排気ガスはDPFを通って大気中に排出される。
【0003】
ただし、DPFはPM捕集量に限度があるため、ある程度微粒子が溜まると何らかの方法で燃焼させる等して除去し、DPFを再生させる必要がある。そのために、微粒子量および排気ガス温度を計測してエンジンEを制御することにより微粒子を燃焼することが行われている。
【0004】
すなわち、DPFに設けた微粒子量計測手段PMDにより微粒子量を計測するとともに、同じく温度検出手段TDにより排気ガス温度を計測し、これら計測手段の計測結果に基づいてエンジン制御ユニットECUがエンジンEとの信号授受によりエンジンEの制御を行い、適時に排気ガス温度を上昇させて微粒子を燃焼させることによりDPFの再生を行うこととしている。
【0005】
ここで、エンジン制御ユニットECUは例えば自動車用ディーゼルエンジンEに付属する制御装置であり、エンジン制御付加ユニットG−ECUは発電機Gを制御するために付加した制御装置である。
【0006】
そして特許文献1は、DPFをそなえたエンジン駆動電機の一例を示しており、エンジン負荷を増大させてDPFの再生を行う方式を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-127534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1におけるエンジン駆動電機は、発電電動機におけるDPF再生方式を提示するものではあるが、実際の運用場面でのメンテナンスとか取り扱いまで配慮したものではなく、具体的構造としては種々の補修が必要である。
【0009】
本発明は、上述の点を考慮してなされたもので、ダミー負荷を懸けてDPFを再生させるエンジン駆動電機用の負荷装置であって、機器メンテナンスに適しており、かつ取り扱いが容易化された負荷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的達成のため、本発明では、
DPFが設けられたエンジン駆動電機の、前記DPFを再生処理するために前記エンジン駆動電機に負荷を懸ける負荷装置において、
平面状に並置された
抵抗体からなる発熱性のダミー負荷を有し、前記ダミー負荷の並置面が前記エンジン駆動電機の排風路に配置された
ことを特徴とするエンジン駆動電機の負荷装置、および
DPFが設けられたエンジン駆動電機の、前記DPFを再生処理するために前記エンジン駆動電機に負荷を与える負荷装置において、
前記エンジン駆動電機のエンジンを冷却するエンジンファンとは別に、外気を取り入れて前記エンジンの冷却用熱交換器を冷却する電動ファンを有し、
前記負荷装置は、平面状に並置された
抵抗体からなる発熱性のダミー負荷を有し、前記ダミー負荷の並置面が前記電動ファンによる冷却風流路に配置された
ことを特徴とするエンジン駆動電機の負荷装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように、ダミー負荷をエンジンの排風路または電動ファンの冷却風流路に直交するように配置したため、エンジン駆動電機に負荷を懸けるために通電されて発熱したダミー負荷を適度に冷却することができるとともに、メンテナンスおよび取り扱いが容易な負荷装置を提供することができ、エンジン駆動電機と好適に協働する負荷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るエンジン駆動電機の負荷制御回路を示す説明図。
【
図3】
図2に示した実施例に用いられるダミー負荷の構成を示すもので、
図3(a)は平面図、
図3(b)は左側面図、
図3(c)は下面図。
【
図5】
図4に示した排風カバーの構造を示したもので、
図5(a)は平面図、
図5(b)は左側面図、
図5(c)は下面図。
【
図6】
図5に示した排風カバーに組み合わされるダミー負荷カバーの、網目部の平面図。
【
図7】
図4に示した排風カバーに組み合わされる端子保護板の構造を示したもので、
図7(a)は平面図、
図7(b)は左側面図、
図7(c)は上面図。
【
図8】
図2に示した排風ダクトの構造を示したもので、
図8(a)は
図2と同じ方向からみた外観図、
図8(b)はその左側面図、
図8(c)はその上面図。
【
図10】従来のDPF再生装置の回路構成を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明のDPF再生方式における回路構成を示すブロック図である。この
図1に示すように、発電機Gの出力側にダミー負荷L、ならびにその投入および解除を行う接触器MCを設け、接触器MCのオン、オフによって所要時に発電機Gにダミー負荷Lを接続してエンジンEの出力を増すように運転させる。ダミー負荷Lは、抵抗器である。またFは、エンジンEに設けられ、エンジンEおよび発電機Gを冷却するファンである。
【0015】
接触器MCは、微粒子量計測手段PMDおよび温度計測手段TDの計測結果に基づき、エンジン制御ユニットECUにCAN(Controller Area Network)を介して接続されたエンジン制御付加ユニットG−ECUにより制御される。
【0016】
すなわち、エンジン制御ユニットECUによるエンジン制御に合わせて、エンジン制御付加ユニットG−ECUが接触器MCをオン、オフしてダミー負荷Lの投入、遮断を制御する。
【0017】
これにより、所要時に、発電機Gにダミー負荷Lを接続しエンジンEの出力を増して排気ガス温度を上昇させ、DPF内の微粒子を燃焼させて除去し、DPFを再生するようにしている。
【0018】
ここで、エンジン制御ユニットECUは、例えば自動車用ディーゼルエンジンEに付属する制御装置であり、エンジン制御付加ユニットG−ECUは、エンジンEの運転に合わせてダミー負荷Lの投入、遮断を行うために接触器MCを制御する目的で付加した制御装置である。
【0019】
図2は、本発明の一実施例の側断面を示したものである。この
図2に示すように、ダミー負荷Lは、エンジン駆動電機のケーシング11におけるエンジン排風路12内に配されている。
【0020】
エンジン排風路12は、エンジンEの図示左端に配されたファンFの送風側から燃料タンク15の上部に沿うようにケーシング11内を上方に向かって設けられており、その何れかの箇所で排風がダミー負荷Lの配置面、つまり複数のダミー負荷Lとしての抵抗体が平行配置されて形成する面と実質的に直交するように、ダミー負荷Lを取り付ける。
図2では、ケーシング11の上方に水平となる状態、45度程度傾いた状態、および垂直に近い状態の3つの状態が示されている。
【0021】
これによりダミー負荷Lは、エンジンファンFから送り出された排風が当たって空冷される。排風は、エンジンファンFに吸い込まれる前に、図示しない電機(例えば発電機G)およびエンジンEの周囲を通り、また一部はエンジン用熱交換器Rを通ってくるからある程度吸熱した状態ではあるが、ダミー負荷Lを十分空冷する程度に低温である。
【0022】
このようにダミー負荷Lが適当な温度に冷却される結果、エンジン駆動電機の操作者等がケーシング周りに近付き、さらに触れることがあっても、不意に高温の風とか物体に接するという事態にはならない。したがって、エンジン駆動電機の取り扱いがし易く、安全性も高くすることができる。
【0023】
ダミー負荷Lを通った排風は、ケーシング11の上部に設けられた排風出口から排風カバー13を経てケーシング11の外部に排出される。排風カバー13の一部に排風ダクト14を配して、雨露がケーシング11内に侵入してダミー負荷Lを損傷することがない構造とすることもできる。
【0024】
図3(a)、(b)、(c)は、ダミー負荷Lの構造例を示したものである。ここでは、6本の抵抗体L1が
図3(a)に示すように平面状に並置、つまり抵抗体L1が1本ずつ
図3(b)における図示上下の端子L2、L2間に平行配列されるように掛け渡されたものとして構成され、かつ
図3(c)に示すように端子L2同士を接続板L3によって接続することにより相互に直列接続されている。抵抗体L1は発熱性であり、エンジン駆動電機のダミー負荷として利用され、その際に発熱した抵抗体L1をエンジンの排風で冷却する。
【0025】
その冷却を良好にするために、抵抗体L1は、できるだけ排風に接し易くかつ通気し易いように、抵抗体同士の間、および抵抗体を構成する線の間に適度の隙間が設けられている。
図3では、単純な螺旋コイル状に構成されたものとして描いているが、冷却風との接触面積を増すために、より複雑に屈曲させて乱麻状コイルとしてもよい。
【0026】
図4A(a)、
図4B(b)、
図4B(c)は、エンジン駆動電機のケーシング11におけるダミー負荷L周辺の要素を示したものである。
図4A(a)は、ケーシング11におけるダミー負荷Lの上方に配される排風カバー13の構成を示しており、排風カバー13は,DPFの排風を排出するための開口を一部に持った格子部131、およびダミー負荷Lを保護しつつ空冷した排風を逃がす網目部132を備えている。
【0027】
図4B(b)は、
図4A(a)を左側面から見た図であり、手前にダミー負荷Lが、またその背後にDPFが配されている。そして、
図4B(c)は
図4A(a)の下面を示しており、図示のように図示左側にダミー負荷Lが、右側にDPFが配されている。
【0028】
DPFの排気管は、
図4A(a)に示した格子部131の開口に繋がるものであるが、排気管の端部が上方を向く結果、排気管の上端部から雨露滴が管内に入ることを考慮し、その逃がし口(図示せず)を設けるために途中に垂れ下がった部分が設けられている。
【0029】
図5(a)、(b)、(c)は、
図4に示した排風カバー13から網目部132を取り外した状態を示している。この
図5から分かるように、排風カバー13は、格子部開口131aおよび網目部開口131bを有する。
【0030】
格子部開口131aは排風カバー13の板材を打ち抜いて開口が設けられているが、網目部開口131bは大きな開口を網目部材で覆うように構成されている。
【0031】
そして、この大きな開口の長手方向両端には折曲板131cを配して、ダミー負荷Lの端子が、雨露への曝露とか飛来物の衝突等によって損傷することがないように保護している。折曲板131cは、ダミー負荷Lの端子部の内側を保護するように構成されている。
【0032】
図6は、
図4に示した排風カバー13の網目部132に取り付けられる網板の構造を示している。この網板は、枠材にラス網1321をスポット溶接点1322で固定して一体化したものである。
【0033】
この網板により、ダミー負荷Lの上方が全面的に覆われてダミー負荷Lが通気性を保った状態で保護される。
【0034】
図7(a)、(b)、(c)は、ダミー負荷L周辺の一端側(
図4B(b))に設けられる端子保護板133の構造を示している。この端子保護板133は、図示のようにほぼ矩形状であり、一方の長辺が直角に折り曲げられて立ち上げられ、短辺側から見た側面形状(
図7(b))がL字状となるように構成されている。
【0035】
これにより、ダミー負荷Lの外側端子は、雨露滴の浸入、付着により劣化損傷することを防止するように保護される。
【0036】
図8(a)、(b)、(c)は、排風ダクト14(
図2)の構造を示したものである。排風ダクト14は、ダミー負荷Lの上部を覆うように設けられるもので、ダミー負荷Lの上方に横向きの排風路を形成する。すなわち、排風ダクト14はいわば頭巾状の形状であり、下端にダミー負荷Lを取り囲んだフランジ面141を有し、図示左側面が開口していて、この開口にラス網142が設けられている。
【0037】
この排風ダクト14は必要に応じて設けられるもので、設ける場合は、排風カバー13の網目部132を設けなくてよい。
【実施例2】
【0038】
図9は、電動空冷式熱交換器を持つエンジンに適用する本発明のもう一つの実施例を示したものである。このエンジンEでは、エンジンEのファンFからの排風路は燃料タンク15の上に設けられており、ファンFの排風はDPFを冷却したのちに電動ファンEFの排風路とは隔離された排風路から外部に排出される(破線図示)。ここで、熱交換器Rを主として冷却するのは電動ファンEFであるから、エンジンEのファンFは小型のものでよい。
【0039】
熱交換器Rは、電動ファンEFが取り入れた外気により主に冷却され、熱交換器Rを通った排風がダミー負荷Lに与えられる。したがって、熱交換器Rおよびダミー負荷Lを効率よく冷却することができる。
【0040】
上記実施例では、エンジン駆動電機としてエンジン駆動発電機の例を示したが、エンジン駆動溶接機も同様に負荷を懸けてDPFの再生を行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
E エンジン、G 発電機、F ファン、
DPF ディーゼル・パティキュレート・フィルタ、DOC 酸化触媒、
TD 温度計測手段、PMD 微粒子量計測手段、
ECU エンジン制御ユニット、G−ECU エンジン制御付加ユニット、
MC 接触器、L ダミー負荷、EF 電動ファン。
11 ケーシング、12 排風路、13 排風カバー、131 格子部、
131a 格子部開口、131b 網目部開口、131c 折曲板、
132 網目部、1321 ラス網、1322 スポット溶接点、
133 端子保護板、14 排風ダクト、141 フランジ面、
142 ラス網、15 燃料タンク。