(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体ポンプ用の流入弁(101;601)であって、流体流入開口(1703)を閉鎖するための運動可能に支承されたプランジャ(103;609)と、該プランジャ(103;609)を移動させるためのアクチュエータ(105;625,617,613)とを有する、流体ポンプ用の流入弁(101;601)において、前記アクチュエータ(105;625,617,613)と前記プランジャ(103;609)とが、互いに分離されて形成されていて、前記プランジャ(103;609)にアクチュエータ駆動力を伝達するためのカップリングエレメント(107;611)によって互いに連結可能であり、該カップリングエレメント(107;611)は、前記プランジャ(103;609)に結合されたブシュ(611)であり、前記プランジャ(103;609)の上側の端部に、前記プランジャ(103;609)を開放位置に保持するためのばね(619)が設けられており、前記プランジャ(103;609)の、前記ばね(619)とは反対の側に、前記プランジャ(103;609)を案内するためのシリンダ(603)が設けられており、該シリンダ(603)の上方に前記プランジャ(103;609)のためのガイド(607)が設けられており、前記ばね(619)が、そのばね力によって前記プランジャ(103;609)を前記シリンダ(603)の方向に押圧し、こうして前記プランジャ(103;609)を開放位置に押圧しており、前記アクチュエータ(105;625,617,613)は、前記カップリングエレメント(107;611)にアクチュエータ駆動力を伝達するための磁気アーマチュア(613)を有しており、該磁気アーマチュア(613)を同心的に取り囲むように、コイル(617)が配置されており、該コイル(617)は、相応する通電時に磁界を発生させることができ、前記磁気アーマチュア(613)は、この磁気アーマチュア(613)が前記シリンダ(603)から離れる方向での運動時に前記ブシュ(611)を押圧し、こうして前記プランジャ(609)を前記シリンダ(603)から離れる方向に移動させることができるように配置されていることを特徴とする、流体ポンプ用の流入弁(101;601)。
前記カップリングエレメント(107;611)は、前記プランジャ(103)の長手方向軸線に対して直交する横方向に作用するアクチュエータ力を前記プランジャ(103;609)から遮断するように形成されている、請求項1記載の流入弁(101;601)。
前記シリンダ(603)は、前記アクチュエータ(105;625,617,613)を案内するためのガイド孔(615)を有する、請求項1または2記載の流入弁(101;601)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ポンプ用の流入弁に関する。さらに本発明は、流体ポンプ用の流入弁のための組付け法に関する。
【0002】
ガソリンポンプ用またはディーゼルポンプ用の流入弁自体は公知である。このような弁は一般に燃料流入開口と、この流入開口を閉鎖することのできるプランジャとを有する。さらに、通常ではアクチュエータが設けられており、このアクチュエータはプランジャを往復運動させることができる。公知の弁では、アクチュエータとプランジャとが互いに固く結合されている。
【0003】
このような構造において不都合となるのは、特にプランジャの長手方向軸線に対して直交する横方向の成分(分力)を有するアクチュエータ運動により、プランジャ自体も横方向運動を実施してしまうことである。このことは特に、プランジャが流入開口をもはや完全に閉鎖し得なくなることを招く恐れがある。なぜならば、プランジャは対応する弁座内に斜めに座着するからである。このことは、漏れ量増大を招く恐れがある。
【0004】
したがって、本発明の根底を成す課題は、公知の不都合を克服しかつ漏れを回避するような流体ポンプ用の流入弁を提供することにある。
【0005】
さらに、本発明の根底を成す課題は、流体ポンプ用の流入弁のための、相応する組付け法を提供することにもある。
【0006】
上記課題は、独立請求項の形の請求項の各対象により解決される。有利な実施態様は、それぞれ従属請求項の対象である。
【0007】
本発明によれば、流体ポンプ用の流入弁であって、流体流入開口を閉鎖するための運動可能に支承されたプランジャと、該プランジャを移動させるためのアクチュエータとを有する、流体ポンプ用の流入弁において、アクチュエータとプランジャとが、互いに分離されて形成されていて、プランジャにアクチュエータ駆動力を伝達するためのカップリングエレメントによって互いに連結可能であることを特徴とする、流体ポンプ用の流入弁が提供される。
【0008】
さらに本発明によれば、流体ポンプ用の流入弁のための組付け法であって、流体流入開口を閉鎖するためのプランジャを運動可能に支承し、該プランジャを移動させるためのアクチュエータを設ける、流体ポンプ用の流入弁のための組付け法において、アクチュエータとプランジャとを互いに分離して形成し、プランジャにアクチュエータ駆動力を伝達するための、前記アクチュエータと前記プランジャとを互いに連結することのできるカップリングエレメントを設けることを特徴とする、流体ポンプ用の流入弁のための組付け法が提供される。
【0009】
アクチュエータとプランジャとが互いに分離されて形成されていることにより、プランジャとアクチュエータとが互いに連結されていないときには、特にプランジャの長手方向軸線に対して直交する横方向の成分もしくは分力を有するアクチュエータ運動が、プランジャの相応する横方向運動を生ぜしめることはない。したがって、この望ましくない横方向運動に基づいたプランジャの摩耗を回避することができるので有利である。プランジャは、「制御ピン」と呼ぶこともできる。
【0010】
流体ポンプは燃料ポンプ、特にガソリンポンプまたはディーゼルポンプであると有利である。その場合、流体は相応して燃料、特にガソリンまたはディーゼルである。流入弁は特にデジタル式にコントロール可能な流入弁であってよい。たとえば流入弁は、組み込まれた、デジタル式にコントロール可能な流入弁であってもよい。「組み込まれた」とはこの場合特に、流入弁が流体ポンプ、特にガソリンポンプまたはディーゼルポンプのシリンダに組み込まれていることを意味する。流入弁は特に流体量もしくは流体容量を制御することができるので、この限りでは流入弁は、噴射システム、特にコモンレールシステムへの通流量を制御することもできる。この意味では、流入弁を「容量制御弁」と呼ぶこともできる。特に流入弁は、無電流状態で開くようにデジタル式に切り換えられる弁として形成されていてよい。「無電流状態で開く」とは特に、流入弁に電圧が印加されないと、プランジャもしくは制御ピンが開放位置に位置して、流体流入開口が閉じられていないことを意味する。
【0011】
1構成では、流入弁が、無電流状態で開く弁(SO弁)として形成されていてよい。「無電流状態で開く」とは特に、流入弁に電流または電圧が印加されないと、プランジャもしくは制御ピンが開放位置に位置して、流体流入開口が閉じられていないことを意味する。
【0012】
別の構成では、流入弁が、無電流状態で閉じた弁(SG弁)として形成されていてよい。「無電流状態で閉じた」とは特に、流入弁に電流または電圧が印加されないと、プランジャもしくは制御ピンが閉鎖位置に位置して、流体流入開口が閉じられていることを意味する。
【0013】
本発明の有利な構成では、カップリングエレメントは、プランジャの長手方向軸線に対して直交する横方向に作用するアクチュエータ力をプランジャから遮断するように形成されている。「長手方向軸線」とはこの場合、プランジャの最大延在長さの方向に沿って形成されている軸線として定義されている。この構成は特に次のような利点を提供する。すなわち、アクチュエータに作用する横方向力はプランジャに伝達されないか、またはほとんど伝達されず、しかもこのことは、アクチュエータとプランジャとがカップリングエレメントによって互いに連結されている場合にも云える。この横方向力は、プランジャに関しては、特にこの横方向力がプランジャを、流体流入開口を閉鎖するための弁座内に斜めに押圧してしまい、弁の閉鎖が困難となるか、もしくは全く不可能となるので、漏れや摩耗が生じる恐れがあるという理由から望ましくないものである。さらに、この構成には特に次のような利点がある。すなわち、軸方向の力だけが、すなわちプランジャの長手方向軸線の方向における力だけが、アクチュエータによってプランジャに伝達される。これにより、特に直線的なプランジャ案内が可能になり、このことはさらに摩耗を減少させるか、もしくはそれどころか摩耗を回避するので有利である。すなわち、この有利な構成では、プランジャとアクチュエータとが半径方向で互いに分離されている。「半径方向」とはこの場合特に、プランジャの長手方向軸線に対して相対的に直交する横方向に関する。
【0014】
別の有利な構成では、カップリングエレメントが、プランジャに結合されたブシュである。流入弁が作動させられると、アクチュエータは特にこのブシュを押圧し、ひいてはプランジャを移動させる。すなわち、ブシュは特にアクチュエータからプランジャへの力伝達を可能にする。さらに、ブシュを設けることにより、プランジャストロークの簡単な調節が可能になる。特にプランジャはプレス嵌めによってブシュに結合されていてよい。ブシュとプランジャとの間の特に強固な結合は、特にクリンプ結合によって可能となる。
【0015】
さらに別の有利な構成では、プランジャを案内するためのシリンダが設けられている。このためには、このシリンダがその長手方向軸線に沿って孔、特に貫通孔を有する。これにより特に、プランジャ運動の簡単でかつ正確な案内が可能になるので有利である。前記シリンダは、アクチュエータを案内するためのガイド孔を有すると有利である。これにより、アクチュエータ運動の簡単でかつ正確な案内が可能になるので有利である。特に、シリンダはプランジャを案内するための第1のガイド孔と、アクチュエータを案内するための第2のガイド孔とを有する。この構成には特に次のような利点がある。すなわち、両ガイドが互いに独立していることに基づき、アクチュエータガイドにおけるガイドクリアランス(案内遊び)が小さく保持され得るので、シリンダに対するアクチュエータの偏心率も小さく保持され得る。これにより、横方向力は摩擦力よりも小さくなるので有利である。さらにこれにより、流入弁の一層安定した切換時間も可能となる。アクチュエータは有利にはその内周面に沿って、または特にその外周面に沿って案内され得る。特に内周面に沿った案内の構成により、特に正確でかつ直線的な案内が可能になるという利点が提供される。
【0016】
さらに別の有利な構成では、プランジャを開放位置に保持するためのばねが設けられている。すなわち、このばねは、特にプランジャを、流体流入開口が閉じられていない位置へ押圧する。特にプランジャにアクチュエータ駆動力が作用していない場合には、プランジャが開放位置に保持される。このことには次のような利点がある。すなわち、たとえば流入弁にアクチュエータを作動させるための電圧が印加されていない場合には流入弁が開いている。アクチュエータが作動させられると、アクチュエータはカップリングエレメントを介してプランジャをばね力に抗して閉鎖位置に押圧し、この閉鎖位置においてプランジャは流体流入開口を閉鎖している。この場合、特にプランジャは弁座内へ押圧される。ただし、弁座の存在は前記構成に限定されるものではなく、一般に全ての構成において設けられていてよい。
【0017】
さらに別の構成では、アクチュエータが、前記カップリングエレメントにアクチュエータ駆動力を伝達するための磁気アーマチュアを有する。磁気アーマチュアはシリンダに設けられたガイド孔内に案内されると有利である。アクチュエータはコイル装置を有すると有利である。コイル装置は特に、相応する通電時に、特に場合によっては存在するばね力に抗して、磁気アーマチュアを吸引することのできる相応する磁界を形成するように調整されているので、磁気アーマチュアの運動が可能となる。たとえば磁気影響因子に基づいて生ぜしめられる恐れのある、磁気アーマチュアに作用する横方向力は、アクチュエータとプランジャとの分離に基づき、プランジャに伝達されないか、もしくはほとんど伝達されず、したがって無視し得る程度にしか伝達されない。
【0018】
さらに別の構成では、プランジャが、たとえば材料100Cr6から形成されている。アーマチュアは、磁性のステンレス鋼から形成されていると有利である。特にシリンダは材料100Cr6から形成されている。ブシュは、非磁性のステンレス鋼から形成されていると有利である。
【0019】
組付け法の有利な実施態様では、特に、それぞれ個々の組付けステップの前および/または後に、流入弁の機能テストを実施することができる。このような機能テストは、特にシールテストであり、シールテストは特に流入弁のシール性を検査する。すなわち、特にシール特性が検査され、特にプランジャが流体流入開口を十分に閉鎖しているかどうかが検査される。特にシール特性は直接にニューマチック式に検査することもできる。有利には、各組付けステップの前、間および/または後に、流入弁がテストコイルによって切り換えられ、これにより切換電流および/または切換時間が測定され得るので有利である。次いで、測定された切換電流および切換時間に相応して、たとえば別の調節プロセス、たとえばばね力の調節またはコイル枠体のコイルの向きの調節を実施することができる。テストコイルによって特に、弁パラメータ、たとえば通流量、漏れまたは切換時間を検査することが可能になる。
【0020】
前記組付け法と関連して、アクチュエータとプランジャとを互いに分離して形成するという思想には、次のような利点がある。すなわち、特にテスト結果が満足し得るものではなかった場合に流入弁を簡単に再び分解することができ、個々の部分、たとえばアクチュエータまたはプランジャを交換するか、もしくは再使用することができる。したがって、材料が節約されるので有利である。
【0021】
以下に、本発明の有利な実施形態を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】流体ポンプ用の流入弁のための組付け法の概略的なフローチャートである。
【
図3】コモンレール噴射システムに組み込まれた流体ポンプ用の流入弁を示す概略図である。
【
図4】ピストン位置とカム回転角度との関係を示す線図である。
【
図5】流体ポンプ用の流入弁の別の実施形態を示す断面図である。
【
図6a】流体ポンプ用の流入弁のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【
図6b】
図6aに示した流入弁の一部を拡大して示す図である。
【
図8】
図6に示した流入弁の、組付け法の実施中の中間組付け状態を示す概略図である。
【
図9】
図6に示した流入弁の、組付け法の実施中の別の中間組付け状態を示す概略図である。
【
図10】
図6に示した流入弁の、組付け法の実施中のさらに別の中間組付け状態を示す概略図である。
【
図11】
図6に示した流入弁の、組付け法の実施中のさらに別の中間組付け状態を示す概略図である。
【
図12】
図6に示した流入弁の、組付け法の実施中のさらに別の中間組付け状態を示す概略図である。
【
図13】
図6に示した流入弁の、組付け法の実施中のさらに別の中間組付け状態を示す概略図である。
【
図14】
図8〜
図13に示した流入弁を、組付けの完了した状態で示す概略図である。
【
図15】
図14に示した流入弁を斜め上から見た斜視図である。
【
図18】流体ポンプ用の流入弁のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【0023】
以下において、同一の特徴に対しては同じ符号を使用する。
【0024】
図1には、流体ポンプ(図示しない)用の流入弁101が示されている。流体ポンプは、有利にはガソリンポンプまたはディーゼルポンプである。流入弁101はプランジャ103を有する。このプランジャ103は運動可能に支承されていて、流体流入開口(図示しない)を閉じることができる。流入弁101はさらに、アクチュエータ105を有する。このアクチュエータ105はプランジャ103を移動させることができる。このためには、アクチュエータ105が特にアクチュエータ駆動力を提供する。プランジャ103とアクチュエータ105とは、互いに分離されて形成されている。プランジャ103にアクチュエータ駆動力が伝達され得るようにするためには、カップリングエレメント107が設けられている。このカップリングエレメント107によって、アクチュエータ105とプランジャ103とは互いに連結可能となる。
【0025】
図示されていない実施形態では、カップリングエレメント107がさらに、プランジャ103の長手方向軸線に対して直交する横方向に作用するアクチュエータ力、特に横方向のアクチュエータ駆動力をプランジャ103から遮断するために形成されている。このような半径方向の遮断(「半径方向」とは、プランジャ103の長手方向軸線に対して直交する横方向に関する)に基づき、アクチュエータ105によって軸方向のアクチュエータ力、すなわち長手方向軸線の方向に作用するアクチュエータ力、特に軸方向のアクチュエータ駆動力しかプランジャ103に伝達されない。横方向力はプランジャ103には伝達されないので、プランジャ103は流体流入開口を信頼性良くかつ確実に閉鎖することができるので有利である。これにより、特に漏れが減じられるか、もしくは回避されるので有利である。さらに、プランジャ103の材料摩耗も低減される。
【0026】
図2には、流体ポンプ用の流入弁のための組付け法のフローチャートが示されている。ステップ201において、流体流入開口を閉鎖するためのプランジャと、プランジャを移動させるためのアクチュエータとが設けられ、この場合、プランジャは運動可能に支承される。ステップ203において、アクチュエータとプランジャとが互いに分離されて形成され、この場合、ステップ205においてカップリングエレメントが設けられる。このカップリングエレメントはプランジャにアクチュエータ駆動力を伝達することができる。このカップリングエレメントによって、特にアクチュエータとプランジャとの連結が可能となる。
【0027】
図示されていない実施形態では、前記ステップ201,203,205の前および/または後および/または間に、検査方法もしくは検査ステップが設定されていてよい。この検査方法もしくは検査ステップにおいては、ちょうど組み込まれたコンポーネントの具体的な機能が検査される。特にこの場合、シール特性をニューマチック式に、特に直接ニューマチック式に検査することができる。
【0028】
図3には、流体ポンプ、特にガソリンポンプまたはディーゼルポンプの流入弁301が示されている。この流入弁301はピストン302を有し、このピストン302はシリンダ303内に案内される。ピストン302はカム305に結合されていて、このカム305と協働する。流入弁301は、特にコモンレール噴射システムへの燃料通流量、たとえばガソリン通流量またはディーゼル通流量を制御する。
図3には、コモンレール噴射システムの高圧接続部307が図示されている。この場合、流入弁301はコモンレール噴射システムの低圧接続部310と高圧接続部307との間の燃料容量を制御する。
【0029】
符号311を有する矢印は、カム305の回転方向を示している。符号313を有する矢印は、燃料が吸い込まれる際のカム305の運動位相を示している。符号315を有する矢印は、燃料が圧縮される際のカム305の運動位相を示している。この場合、90°の位相シフトによって吸込み位相と圧縮位相とが交互する。
【0030】
符号317aおよび符号317bを有する両矢印は、それぞれ1つの圧縮位相および1つの吸込み位相にわたるカム運動を示している。
【0031】
流入弁301は、SO弁(stromlos offen-Ventil)、つまり「無電流状態で開いた弁」として形成されている。すなわち、制御電流が印加されていない場合、流入弁301は開放位置をとる。図示されていない構成では、流入弁301が、SG弁(stromlos geschlossen-Ventil)、つまり「無電流状態で閉じた弁」として形成されている。すなわち、制御電流が印加されていない場合、流入弁301は閉鎖位置をとる。
【0032】
図4には、線図が示されており、この場合、左側の縦座標軸にはピストン位置(mm)が示されている。右側の縦座標軸には、電圧信号(V)が示されており、この電圧信号は流入弁301の操作の目的でPWM電流制御のために使用される。「PWM」とは、英語の専門用語「Puls-width modulation」(パルス幅変調)を意味する。ドイツ語の表記では、通常、「Pulsweitenmodulation」、「Pulsbreitenmodulation」または「Pulsdauermodulation」が使用される。横座標軸には、カム305の回転角度(°)が示されている。電圧信号とカム回転角度との関係は、符号401を有する曲線によって表されている。ピストン位置とカム回転角度との関係は、符号403を有する曲線によって表されている。両曲線401,403の間の位相差が、例示的にΔφによって示されている。個々の物理的な量の、曲線で表された関係は、流入弁301が、SG弁(無電流状態で閉じた弁)として形成されている場合に、
図3に示した構造にとって典型的である。
【0033】
符号405を有する範囲では、低圧接続部310によって燃料が吸い込まれる。これらの範囲405は、横座標軸に関して0°から45°まで、45°から90°まで、180°から225°まで、225°から270°まで延びている。
【0034】
符号407を有する範囲では、低圧接続部310に向かう燃料流が生ぜしめられる。これらの範囲407は、横座標軸に関して90°から135°まで、135°から145°まで、270°から315°まで、315°から325°まで延びている。
【0035】
符号409を有する範囲では、高圧接続部307の方向への燃料流が生ぜしめられる。これらの範囲409は、横座標軸に関して145°から180°まで、325°から360°まで延びている。
【0036】
図5には、流入弁301の詳細図が示されている。この場合、流入弁301は、SG弁、すなわち無電流状態で閉じた弁として形成されている。図面から判るように、ピストン302はシリンダ303に設けられた案内孔内に案内される。流入弁301はプランジャ503を有し、このプランジャ503は閉鎖位置において弁座505に座着している。これにより、低圧接続部310の流入開口507が閉じられるので、流入弁301を通って燃料が流れることはない。
【0037】
プランジャ503が下方に向かってピストン302の方向に運動させられると、これにより流入開口507が開き、燃料は低圧接続部310から高圧接続部307へ流れることができる。
【0038】
プランジャ503を操作するためには、アーマチュア509が形成されている。このアーマチュア509は磁性材料を有する。さらにコイル511が設けられており、このコイル511は、相応する通電時に磁界を発生させる。これにより、アーマチュア509はプランジャ503の長手方向軸線の方向でピストン302の方向に、すなわちピストン302に接近する方向に移動させられる。コイル511とアーマチュア509とはこの場合、プランジャ503を移動させるためのアクチュエータを形成している。
【0039】
さらに、中間プランジャ513が設けられている。この中間プランジャ513はプランジャ503に固く結合されている。中間プランジャ513を備えたプランジャ503は、アーマチュア509とは分離されて形成されている。コイル511が作動させられると、磁気アーマチュア509は中間プランジャ513を押圧し、こうしてプランジャ503をピストン302の方向に下方へ向かって押圧するので、流体流入開口507が開放される。中間プランジャ513はこの場合には、アクチュエータ駆動力をプランジャ503に伝達するためのカップリングエレメントを形成しており、この場合、中間プランジャ513は磁気アーマチュア509をプランジャ503と連結させる。
【0040】
流入弁301の上端部(流入弁301の下端部はカム305の方向に向けられている)には、ばね515が形成されている。このばね515は中間プランジャ513を下方へ向かってピストン302の方向に押圧する。さらに、別のばね517が形成されており、このばね517は、前記ばね515よりも大きなばね定数を有する。したがって、この別のばね517は、前記ばね515よりも大きなばね力を発生させる。その意味では、この別のばね517は「強いばね」とみなすこともできる。ばね515はその意味では「弱いばね」とみなすこともできる。アーマチュア509は、弱いばね515と強いばね517との間に配置されているので、コイル511が通電されていない場合には、アーマチュア509は操作されず、強いばね517はアーマチュア509を上方に向かってピストン302から離れる方向で上側の位置へ押圧する。流入弁301はこの場合には閉じられている。
【0041】
アーマチュア509が操作されると、すなわちコイル511が通電されると、アーマチュア509は中間プランジャ513を押圧し、ひいてはプランジャ503を押圧し、これにより流入開口507は開く。
【0042】
さらに、磁気コア521も形成されている。この磁気コア521は同じくアクチュエータによって包含されている。さらに、コイル511とアーマチュア509と磁気コア521とをプレスするためのヨークリング523が設けられている。さらに、スリーブ525が設けられている。このスリーブ525は流入弁301のカバーとして働くので、流入弁301は外側周辺部からシールされているので有利である。さらに、流入弁301もしくはスリーブ525と磁気コア521とをシールするための2つのOリング519が設けられている。
【0043】
さらに、流入弁301には2つのねじ527が配置されている。これらのねじ527によって流入弁301はガソリンポンプまたはディーゼルポンプへの取付けの目的でねじ締結され得る。
【0044】
図6aには、別の流入弁601が示されている。この流入弁601は、SO弁、すなわち無電流状態で開いた弁として形成されている。
図6aにおいて「B」で示した範囲が、
図6bに拡大されて描かれている。
【0045】
流入弁601はシリンダ603を有する。このシリンダ603内でピストン605を往復運動させることができる。ピストン605は、
図5に示した実施形態と同様にカム(図示しない)と協働する。
【0046】
シリンダ603の上方には、プランジャ609のためのガイド607が形成されている。プランジャ609は有利には材料100Cr6から形成されている。プランジャ609はブシュ611に固く結合されている。
【0047】
プランジャ609を同心的に取り囲むように、磁性材料から成るアーマチュア613が形成されており、このアーマチュア613はブシュ611およびプランジャ609とは分離されてアーマチュアガイド615内に形成されている。磁気アーマチュア613を同心的に取り囲むように、コイル617が配置されている。このコイル617は、相応する通電時に磁界を発生させることができる。したがって、磁気アーマチュア613をプランジャ609の長手方向軸線の方向に移動させることが可能になるので有利である。この場合、磁気アーマチュア613は、この磁気アーマチュア613がシリンダ603から離れる方向での運動時にブシュ611を押圧し、こうしてプランジャ609をシリンダ603から離れる方向に移動させることができるように配置されている。ブシュ611はこの場合には、プランジャ609にアーマチュア駆動力を伝達するためのカップリングエレメントを形成する。
【0048】
プランジャ609の、図平面で見て上側の端部には、ばね619が形成されている。このばね619はそのばね力によってプランジャ609をシリンダ603の方向に押圧する。すなわち、アーマチュア613が作動されないと、ばね619はプランジャ609を開放位置に押圧する。この開放位置ではプランジャ609が、流体流入開口(図示しない)を閉鎖していない。この意味では、流入弁601は、無電流状態で「開」に切り換えられる流入弁として形成されている。
【0049】
さらに、流入弁601はスリーブ621と、磁気コア625のプレスもしくはシールのためのヨークリング623とを有する。磁気コア625は磁気アーマチュア613およびコイル617と共に、プランジャ609を移動させるためのアクチュエータを形成する。スリーブ621は特に、肉薄のブシュとして形成されていてよく、特に上側で磁気コア625にプレス嵌めにより押し被され、次いで有利には引き続き溶接され得る。この場合、たとえばスリーブ621は下側でOリング703に押し被され、特に引き続きシリンダ603と溶接されるようになっていてよい。したがって、アーマチュア室のシールを生ぜしめることができるので有利である。
【0050】
さらに、流入弁601は、コイル617のための制御ケーブルを接続するためのコイルコネクタ627を有する。
【0051】
さらに、
図6aでは、寸法が「ミリメートル」単位で、角度値が「°」で書き込まれているが、これらの値は例示的なものであるに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0052】
図7には、
図6aに示した流入弁601の分解図が示されている。この分解図により、流入弁601の別の構成要素が良く見えるようになっている。これらの構成要素とは、たとえばOリング703、非磁性のディスク705、コイル617が内蔵されているコイル枠体707およびヨークリング623に設けられているカバーハウジング709である。カバーハウジング709は特にコイルコネクタ627を有する。
【0053】
図8〜
図14には、流入弁601のための組付け法におけるそれぞれ種々の中間組付け状態が示されている。
図8〜
図14では、それぞれ左側の図面が、流入弁601の側面図であり、右側の図面が、左側の図面に書き込まれた、それぞれA−A、B−B、D−D、E−E、C−CおよびF−Fで示された切断線に沿った断面図である。
【0054】
図面を見易くするために、全ての構成要素は常に相応する符号を用いて示されている。
【0055】
図8に示した組付けステップでは、押込み工具801によって、非磁性のディスク705がシリンダ603に被せられて、プレス嵌め式に押し込まれる。押込みはこの場合、矢印F1によって示されている。
【0056】
図9には、ブシュ611がどのように押し被せられるのかが示されている。この場合、調節ディスク901が設けられており、この調節ディスク901はブシュ611とアーマチュア613との間の間隔を調節することができる。プランジャ609へのブシュ611のプレス嵌め式の押被せは、相応する押被せ工具903,905によって実施される。押被せ自体は、矢印F2によって示されている。さらに、シリンダ603のための支承部907が設けられている。さらに、プランジャ609のための支承部909も設けられている。両支承部907,909によって、シリンダ603とプランジャ609とを特に簡単かつ確実に保持することができるので、個々の組付けステップを簡単かつ確実に実施することができる。
【0057】
さらに、流入弁601の弁ストロークが調節される。この場合、プランジャ609は対応するシリンダシートに押圧される。次いで、アーマチュア613と磁気コア625との間に調節ディスク901が押し込まれる。アーマチュア613はストッパに当接するまで下方へ押圧される。続いて、調節ディスク901が除去されるので、弁ストロークが調節されているので有利である。さらに、磁気コア625とアーマチュア613との間にエアギャップが形成されている。このエアギャップは「残留エアギャップ」とも呼ぶことができる。これにより、プランジャ609が、対応するシリンダシート内でシールされることが可能になるので有利である。
【0058】
図10には、ブシュ611のかしめ締結が示されている。このことは、矢印F3でシンボリックに示されている。かしめ締結のためには、特に位置調整ピン1001が設けられている。この位置調整ピン1001は円錐部を備えた押圧コーン1003と六角ボルト1005とを有する。
図10からは、工具ばね1007aのためのばねワッシャ1007も良く判る。ばね619のためのばねガイド1009も同じく良く判る。
図10からはさらに、かしめ締結ピンばね1013を備えたかしめ締結ピン1011も良く判る。特にこのようなかしめ締結ピンが合計3つ設けられており、この場合、図面を見易くするために、1つのかしめ締結ピンしか図示されていない。上方から力F3を用いて位置調整ピン1001を押圧すると、これによって3つのかしめ締結ピン1011は内方に向かって変位されるか、もしくは運動させられ、こうしてブシュ611を押圧する。これにより、ブシュ611は3個所でプランジャ609とかしめ締結されると有利である。
【0059】
六角ボルト1005のためのガイドは符号1008で示されている。
図10に書き込まれた寸法は「ミリメートル」単位であるが、この場合にも、これらの寸法は例示的なものであるに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0060】
図11には、スリーブ621内への磁気コア625のプレス嵌め式の押込みがどのように実施され得るのかが示されている。このプレス嵌め式の押込みは矢印F4によってシンボリックに示されている。磁気コア625内のスリーブ621のためのガイドは符号1101で示されている。内側のガイドは符号1103で示されている。
【0061】
図12には、磁気コア625とスリーブ621とがシリンダ603にどのようにしてプレス嵌め式に押し被されるのかが示されている。この押被せは矢印F5によってシンボリックに示されている。
【0062】
さらに
図12には、どのようにして正味ばね力(Nettofederkraft)が調節されかつ残留エアギャップ1201が調節されるのかが示されている。
図12に書き込まれた、残留エアギャップ1201のための相応する寸法は、例示的なものであるに過ぎず、本発明を制限するものではない。この場合、アーマチュア613とばね619とスリーブ621とが組み付けられる。ばね力を調節するためには、特にスリーブ621が、種々のステップにおいて下方に向かって押しずらされる。各ステップ毎に、流入弁601がテストコイルによって切り換えられ、切換電流および/または切換時間が測定される。所望の切換電流または切換時間が達成されると、調節プロセスは終了され得る。次いでテストコイルが特に除去され、スリーブ621が磁気コア625に溶接される。有利には、スリーブ621をシリンダ603にもクリップ式に固定することもできる。このためには、特にシリンダ603に溝が設けられている。結合スリーブは磁気コアシールされているので、調節プロセスはOリングを用いてハイドロリック式に行うことができる。特に溶接の前に、テストコイルによって弁パラメータ、たとえば流量、漏れまたは切換時間を検査することが可能になる。テスト結果が満足し得るものではないか、もしくは整然としていない場合には、特にシリンダ603を再び使用するために、流入弁601を簡単に再び分解することができる。この場合、磁気コア625はシリンダ603のスリーブ621とねじ留めされる。次いで上側でプランジャ609を押圧すると、個々の部分を簡単に取り外すことができる。
【0063】
図13には、コイル617と、コイルコネクタ627を備えたカバーハウジング709との押被せが、矢印F6でシンボリックに示されている。このためには、コイル617を押し被せるための工具としてプレスリング1301が使用される。図示されていない実施形態では、コイルコネクタ627が、コイル617の上側に配置されていてもよい。
【0064】
図14には、組付けの完了した流入弁601が示されている。最後の組付けステップにおいて、コイル617が組み付けられると有利である。この場合、コイル617は向き調整されて、シリンダ603に押し被せられ、その後で、相応して適当な点においてもう一度側方でかしめ締結される。
【0065】
図15および
図16には、流入弁601を種々の方向から見た図が示されている。
【0066】
図17には、流体ポンプ(図示しない)用の別の流入弁1701が示されている。この別の流入弁1701は開口1703を有し、この開口1703はケーニックエキスパンダ(図示しない;Koenig-Expander)によって閉鎖される。さらに、流入弁1701は流体流入開口1704を有し、この流体流入開口1704はプランジャ609によって閉鎖され得る。プランジャ609はガイド1705内に案内される。このガイド1705はシリンダ603にガイド孔として形成されている。磁気アーマチュア613は別のガイド1707内に案内される。この別のガイド1707はシリンダ603に別のガイド孔として形成されている。
【0067】
コイル617が作動させられると、アーマチュア613がばね619のばね力に抗して上方に向かってピストン605から離れる方向に運動し、この場合に磁気アーマチュア613はブシュ611を押圧する。ブシュ611はプランジャ609に固く結合されている。すなわち、コイル617の作動時にプランジャ609は、シリンダ603に設けられた弁座1709に当接するまで運動する。
【0068】
この場合、プランジャ609はセンタリングされていて、ガイド孔1705内に案内されている。アーマチュア613はシリンダ603に設けられた別のガイド孔1707内に案内されている。
【0069】
アーマチュア613はブシュ11を押圧し、この場合にはほとんど軸方向の力だけをプランジャ609に伝達することができる。すなわち、アーマチュア613への半径方向の力、特に半径方向の磁力は、プランジャ609には伝達されない。これにより、一般に「制御ピン」と呼ぶこともできるプランジャ609が、弁座1709から押し離されることはない。このことは流入弁1701のシール性を保証するので有利である。
【0070】
図17に示したミリメートル単位での寸法はこの場合も、例示的なものであるに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0071】
図18には、流体ポンプ用のさらに別の流入弁1801が示されている。この場合、
図17に示した流入弁1701とは異なり、アーマチュア613はその内周面に沿って案内される。アーマチュア613の内周面の案内は、符号1803を有する2つの矢印によって示されている。
【0072】
これにより、アーマチュア613の一層良好な案内が可能になるので有利である。アーマチュア613の外径における相応する遊びは、符号1805によって示されている。
【0073】
図示されていない実施形態では、磁気コアが、シリンダとは異なる材料から製造されている。特にシリンダのためには、良付着性の材料が選択される。特に磁気コアのためには、良好な磁気特性および/または良好な溶接特性を備えた材料が選択される。
【0074】
アーマチュアとプランジャもしくは制御ピンとの間の、本発明における半径方向の分離に基づき、流入弁は高い圧力によって負荷されなくなる。ディーゼル使用時では、このような高い圧力は一般に2000バールを超える。この高い圧力は一般にプランジャにしか作用せず、この場合、このプランジャはシリンダによって保持もしくは案内されるので有利である。相応するねじ込み弁においては、より大きな面がこの圧力で負荷される。
【0075】
さらに、これによって有利には流入弁のストローク、ひいては流入弁の通流量が特に簡単に調節可能となる。正味ばね力が、特にスリーブの移動により調節可能であり、それゆえに電気的な切換電流または切換時間を「ハイドロリック式」に調節することができるので有利である。
【0076】
シリーズコイルの組付け前に、シリンダを損傷させることなしに流入弁を完全にかつ簡単に分解することができるので有利である。特に、流入弁は、シリンダを損傷させることなしに、シリンダにおけるスリーブの溶接前に完全にかつ簡単に分解され得る。流入弁がテストコイルによって「整然とした状態ではない」と判定された場合、一般に高価な(なぜならば通常、焼入れされかつ研削加工されるからである)シリンダは、損傷なしに再び使用され得る。このことは材料を節約するので有利である。
【0077】
アーマチュアとプランジャとが互いに分離されていることにより、すなわちアーマチュアとプランジャとが固く結合されていないことにより、アーマチュアへの横方向力およびアーマチュアの傾斜位置が、プランジャとシリンダもしくは弁座との間の良好なシールに不都合な影響を及ぼすことはない。プランジャはこの場合、シリンダ内に案内される。弁座とガイドとが、1つの共通の加工ステップにおいて製造され得るので有利である。このことは特に漏れを最小限に抑える。