(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882457
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】電気的な接続部材を備えた複層ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20160225BHJP
H02S 40/34 20140101ALI20160225BHJP
H02S 30/00 20140101ALI20160225BHJP
【FI】
C03C27/06 101J
H02S40/34
H02S30/00
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-515138(P2014-515138)
(86)(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公表番号】特表2014-525885(P2014-525885A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】EP2012060758
(87)【国際公開番号】WO2012171844
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2014年2月21日
(31)【優先権主張番号】11169821.3
(32)【優先日】2011年6月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】カール−ハインツ パッフェン
(72)【発明者】
【氏名】リノ メセール
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ギリッセン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クラインケ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ グローテ
(72)【発明者】
【氏名】マークス ホッペ
【審査官】
相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−098856(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/059907(WO,A1)
【文献】
特表2007−516147(JP,A)
【文献】
特開2005−194864(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3058802(JP,U)
【文献】
特開平11−054781(JP,A)
【文献】
国際公開第00/058580(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第1529922(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00〜29/00
H01L 31/04〜31/078,51/42〜51/48
H02S 30/00〜99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な接続部材を備えた絶縁複層ガラスであって、
a.第1の板ガラス(1)と、第2の板ガラス(2)と、
b.前記第1の板ガラス(1)と前記第2の板ガラス(2)との間にある、周囲を囲んでいるスペーサー(3)と、
c.前記スペーサー(3)と前記第1の板ガラス(1)との間および前記スペーサー(3)と前記第2の板ガラス(2)との間にある内側絶縁部(4)と、
d.前記第1の板ガラス(1)と、前記スペーサー(3)と、前記第2の板ガラス(2)との間の外側縁部空間(6)内にある外側絶縁部(5)と、
e.結合されたプラグ接続装置(7)と、
を有しており、ここで前記プラグ接続装置(7)は、前記第1の板ガラス(1)と前記第2の板ガラス(2)との間にある内側のプラグ接続(8)と、前記スペーサー(3)内にある中央のプラグ接続(9)と、外側のプラグ接続(10)とを含んでおり、ここで、
前記中央のプラグ接続(9)は左側の係合部(9a)と、電気を通すコンタクト部材(12)を備えた中央部(9b)と、右側の係合部(9c)とを含んでおり、前記コンタクト部材(12)は、内側のプラグ接続(8)並びに外側のプラグ接続(10)に対する電気的な接続を形成し、前記第1の板ガラス(1)と前記第2の板ガラス(2)との間にLEDスリット(24)が配置されており、前記LEDスリット(24)は前記内側のプラグ接続(8)と電気的に接続されている、
ことを特徴とする、電気的な接続部材を備えた絶縁複層ガラス。
【請求項2】
前記コンタクト部材(12)は、1〜12個のプラグコンタクト(14)を有している、
請求項1記載の絶縁複層ガラス。
【請求項3】
前記中央のプラグ接続(9)は、60mm〜200mmの長さを有している、
請求項1または2記載の絶縁複層ガラス。
【請求項4】
前記中央のプラグ接続(9)は、8mm〜20mmの幅を有している、
請求項1から3までのいずれか1項記載の絶縁複層ガラス。
【請求項5】
前記左側の係合部(9a)および/または右側の係合部(9c)は、接着部(13)によって包囲されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の絶縁複層ガラス。
【請求項6】
前記左側の係合部(9a)および/または前記右側の係合部(9c)は、突っ張り(21)を含んでいる、
請求項1から5までのいずれか1項記載の絶縁複層ガラス。
【請求項7】
前記内側のプラグ接続(8)および/または前記中央のプラグ接続(9)および/または外側のプラグ接続(10)は、プラグ、ジャック、結合部またはソケットを含んでいる、
請求項1から6までのいずれか1項記載の絶縁複層ガラス。
【請求項8】
前記コンタクト部材(12)は、前記外側のプラグ接続(10)の方向に突出し、前記プラグコンタクト(14)を包囲して、前記プラグコンタクト(14)が汚れるのを阻止するための突出部分(11)を含んでいる、
請求項2記載の絶縁複層ガラス。
【請求項9】
前記突出部分(11)は、15mm〜30mmの深さを有している、
請求項8記載の絶縁複層ガラス。
【請求項10】
前記外側のプラグ接続(10)は、屈折しているケーブルガイド(16)を有している、
請求項1から9までのいずれか1項記載の絶縁複層ガラス。
【請求項11】
前記第1の板ガラス(1)および/または前記第2の板ガラス(2)はエレクトロクロミックコーティング(17)を有しており、前記エレクトロクロミックコーティング(17)は前記内側のプラグ接続(8)と電気的に接続されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の絶縁複層ガラス。
【請求項12】
前記第1の板ガラス(1)および/または前記第2の板ガラス(2)は、太陽光発電モジュール(18)または太陽光発電コーティング(19)を有しており、前記太陽光発電モジュール(18)または前記太陽光発電コーティング(19)は前記内側のプラグ接続(8)と電気的に接続されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の絶縁複層ガラス。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の、電気的な接続部材を備えた絶縁複層ガラスの製造方法であって、
a.LEDスリット(24)、エレクトロクロミックコーティング(17)、太陽光発電モジュール(18)および太陽光発電コーティング(19)を含む電気的な負荷(15)を第1の板ガラス(1)上に配置し、
b.中央のプラグ接続(9)を、周囲のスペーサー(3)内にはめ込み、
c.前記電気的な負荷(15)を内側のプラグ接続(8)を介して前記中央のプラグ接続(9)と接続し、
d.前記スペーサー(3)を、内側絶縁部(4)とともに、前記第1の板ガラス(1)と第2の板ガラス(2)との間に配置し、かつ外側絶縁部(5)とともに、絶縁複層ガラス(I)に配置し、
e.前記中央のプラグ接続(9)を外側のプラグ接続(10)と接続する、
ことを特徴とする、絶縁複層ガラスの製造方法。
【請求項14】
照明されるガラス、エレクトロクロミックガラスおよび/または太陽光発電モジュールとしての、請求項1から12までのいずれか1項記載の絶縁複層ガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な接続部材を備えた複層ガラス、複層ガラスの製造方法および複層ガラスの使用を含む。
【0002】
複層ガラスは、近年の建物において、なくてはならないものであり、外側を向いているガラスのより多くの部分を占めるようになっている。複層ガラスは、通常、少なくとも2つの、ガラスまたはポリマー材料から成る板(以降で板ガラスとする)を含んでいる。これらの板は、間隔保持部(スペーサー)によって規定されたガス空間または真空空間を介して相互に隔てられている。複層ガラスの断熱効果は、単板ガラスよりも格段に高く、三層ガラスにおいて、または、特別なコーティングがされる場合にはさらに断熱効果が高くなり、改善される。重要な断熱特性の他に、建物のガラスの領域では、光学的および美的な特徴も重要な役割を担うようになってきている。これに対する例は、照明される板ガラス装置である。この装置は板ガラスと、縁部または板ガラス内に取り付けられている照明手段とを含んでいる。板ガラス表面上に被着された反射部材によって、板ガラス面が照明される。従って、内部空間も建物外部のファサードも、極めて均一に照明される。照明される板ガラス装置には、建物および車両の内外で、多くの用途がある。スタンドランプまたは天井ランプ等の点光源とは異なり、照明される板ガラス装置によって、極めて均一な、面状の光が形成される。使用されている光源および駆動制御エレクトロニクスに依存して、種々の照明効果も得られる。有色LEDを使用する場合には、殊に種々の色効果が組み合わされる。従って、個々のLEDを意図したように駆動および消灯することによって、変動する光の効果が得られる。この場合に観察者には、光が色の波で拡がるように見える。この際に、複数の色の波が重なると、さらなる作用、例えば色のマーブリング、いわゆるモアレ作用が生じる。このような光の効果および色の効果は、広告面にも利用される、または芸術的および建築上の効果をもたらすために利用される。
【0003】
別の例は、エレクトロクロミックコーティングが施された複層ガラスである。このエレクトロクロミックコーティングは、電圧の印加によって、板ガラスの透過率を迅速に変えることができる。これによって、建物内への入射光量が極めて迅速かつ柔軟に変えられる。電極はカソード、例えば酸化タングステンWO
3として、またはアノード、例えば酸化ニッケルNiO
xH
y、NiO
x、または酸化イリジウムIrO
xとして形成され得る。ここでこの順番は可変である。電解質は少なくとも1つの電気的絶縁性層、例えば酸化タンタル水和物Ta
2O
5*nH
2O、酸化アンチモンSb
2O
3、二酸化ジルコニウムZrO
2および/または二酸化チタンTiO
2を含有している。抑制されたエレクトロクロミック層は、例えば、酸化タングステン水和物WO
3*nH
2O、酸化ニオブNb
2O
3、Nb
2O
3*nH
2O、酸化すずSnO
2、SnO
2*nH
2Oおよび/または酸化ビスマスBi
2O
3、Bi
2O
3*nH
2Oを含んでいる。三層のサンドウィッチ状層構造、例えば、Ta
2O
5*nH
2O/WO
3*nH
2O/Ta
2O
5*nH
2Oも可能である。相応するエレクトロクロミックコーティングの例は、US6277523B1号に開示されている。このエレクトロクロミックコーティングは、基板表面によって封じられる。これは、外側の板ガラスまたは内側の板ガラスであり得る。電圧を印加することによって、上述したように、板ガラスの透過率が可逆的に低減される。
【0004】
照明される板ガラス装置も、エレクトロクロミックガラスも、外部の電圧供給部および相応する接続端子およびケーブルを必要とする。しかし、殊にケーブルは、複層ガラスの自動化されたおよび機械的な製造を困難にする。さらに、外に吊されたケーブルは、製造時、積層時、格納時または搬送時に破損する恐れがある。このようなケーブル破損によって多くの場合には、複層ガラス全体を交換しなければならなくなる。さらに、ケーブル接続部分によって、長期の気密性が低減されてしまう。
【0005】
US6277523B1号は、エレクトロクロミックコーティングの構造様式および機能を開示している。ここでは、種々の波長の光の透光率は、電気的な負荷の印加によって開ループ制御および閉ループ制御される。
【0006】
US6185883B1号は、装飾的な化粧部材を備えた窓を開示している。この窓枠は、中央板ガラス内に装飾的な部材を有している三層の複層ガラスを含んでいる。
【0007】
EP1346178B1号は、サンドウィッチ状のプレート部材を開示している。2つのプレートは実質的に光を通す。プレートの間隙内にまたはプレートに、太陽電池部材が取り付けられている。光源は端面で、少なくとも1つのプレートに配置されており、付加的な照明を実現する。
【0008】
DE102005061855A1は、長い残光作用を有するファサード部分としてのガラス部材を開示している。長い残光部材は、マトリクスで、長い残光ピグメントを有している。
【0009】
DE102005036869A1号は、建物または建物部分の内側または外側を装飾するための多層の結合構造を開示している。この結合構造は少なくとも1つの透光性の剛性の層、複数の導光性のファイバーおよび、導光性のファイバーを光源と接続するための1つまたは複数の接続部を含んでいる。
【0010】
DE102005050545A1号は、2つのガラスプレートの間に配置された負荷のためのコンタクト部材を開示している。これは例えば、液晶フィルムである。これは、プレート間隙内に突出しているコンタクト面と接続されており、このコンタクト面は、プレート縁部に配置されているプラスチックケーシングによって、導電性の手段と接続されている。
【0011】
本発明の課題は、内部に電気端子を有する複層ガラスを提供することである。これは外に吊されているケーブルを伴わずに搬送および配置される。
【0012】
このような複層ガラスを製造する方法および複層ガラスの本発明の使用は、別の独立請求項に記載されている。
【0013】
電気的な接続部材を備えた本発明の複層ガラスは、第1の板ガラスと第2の板ガラスを含んでいる。これら2つの板ガラスは、第1の板ガラスと第2の板ガラスの間の、包囲しているスペーサー(間隔保持部)によって分断されている。スペーサーの中空空間は、有利には乾燥剤、特に有利にはシリカゲル、CaCl
2、Na
2SO
4、活性炭、ケイ酸塩、ベントナイト、ゼオライトおよび/または上記のものの混合物を含んでいる。有利には、複層ガラス内部の空気とのガス交換および湿気交換が可能であるが、材料が飛散せず、固定されるように、乾燥剤が配置される。これは有利には、空気と湿気を通すポリマーフィルムまたは目の細かい網の中に乾燥剤を入れることによって行われる。省エネ手段を利用しつくすために、複層ガラスを、希ガス、有利にはアルゴンまたはクリプトンによって満たすことができる。これは、複層ガラス間隙内の熱伝導値を低減させる。
【0014】
第1の板ガラスの寸法と第2の板ガラスの寸法は有利には同じであり、第1の板ガラスの厚さと第2の板ガラスの厚さは有利には同じである。これらの板ガラスは、有利には85%を上回る透光率を有している。これらの板ガラスは有利には、ガラスおよび/またはポリマー、有利にはフラットなガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、石灰−ナトロン−ガラス、ポリメチルメタクリラートおよび/またはこれらの混合物を含んでいる。択一的な実施形態では、第1の板ガラスまたは第2の板ガラスは、結合ガラスプレートとして構成され得る。本発明の複層ガラスはこの場合に三層ガラスを構成する。内側の絶縁がスペーサーと外側の板ガラスとの間並びにスペーサーと内側の板ガラスとの間に配置される。外側の絶縁は、第1の板ガラス、第2の板ガラスおよびスペーサーとの間の縁部空間内に設けられる。内側の絶縁および/または外側の絶縁は、有利にはポリマーまたはシラン改質されたポリマー、特に有利には有機ポリ硫化物、シリコーン、RTV(室温加硫)シリコーンゴム、HTV(高温加硫)シリコーンゴム、パーオキサイド加硫シリコーンゴム、および/または付加加硫シリコーンゴム、ポリウレタン、ブチルゴムおよび/またはポリアクリレートを含有している。結合された差し込み接続装置が部分的にこのスペーサー内に組み込まれている。この差し込み接続装置は、内側のプラグ接続を、第1の板ガラスと第2の板ガラスの間に含んでおり、中央のプラグ接続をスペーサー内に含んでおり、外側のプラグ接続を複層ガラスの外側に有している。中央のプラグ接続は、左側の係合部と、電気を通すコンタクト部材を備えた中央部と、右側の係合部とを有している。コンタクト部材は、部分領域または中央部の上置き部分および/またははめ込み部分を構成する。これは、電気的(および機械的な)接続を、内側のプラグ接続並びに外側のプラグ接続に対して形成する。内側のプラグ接続および外側のプラグ接続との電気的な接触接続を、有利には、コンタクト部材内の貫通している電気的なプラグコンタクトを介して行う。中央のプラグ接続装置は、スペーサーの一部またはスペーサー内に組み込み可能な中央部、有利には外側へ、および内側へ閉鎖されているスペーサー部分を形成する。左側の係合部および右側の係合部によって、中央のプラグ接続装置をスペーサー内に差し込むことが可能になり、これは有利には、接着剤、例えばアクリラート接着剤、メチルメタクリラート接着剤、シアンアクリラート接着剤、ポリエポキシド、シリコーン接着剤および/またはシラン加硫−ポリマー接着剤並びに、これらの混合物および/またはコポリマーまたはシーリング材料によって包囲されている。表現「係合部」は本発明では、プロファイルおよび歯の無い機械的なプラグも含んでいる。これは、スペーサーに対する接続およびスペーサー内の接続を可能にする。内側のプラグ接続、中央のプラグ接続および/または外側のプラグ接続は有利にはポリマーおよび/または金属を含む。中央のプラグ接続は、次のように構成されている。すなわち、板ガラス間の間隙が有利には気密性に封鎖されるように構成されている。これは、載置された金属フィルムまたは金属コーティングを介して行われる。従って、注入されたガスは、それほど迅速に再び抜けることがなく、同時に、湿気が侵入することがない。そうでないとこの湿気によって、板ガラスの金具に達する、または、電気的コンタクトの短絡を生じさせることがある。
【0015】
コンタクト部材は有利には1〜12個、特に有利には4〜10個の電気的なプラグコンタクトを有する。これらのコンタクト部材は、本発明では、雄型出力部または雌型出力部を備えたプラグコンタクトを含んでいる。この接続は有利には、半田付けされて、または圧接端子を介して行われる。
【0016】
中央のプラグ接続は有利には、60mm〜200mmの長さを有しており、特に有利には80mm〜150mmの長さを有している。
【0017】
中央のプラグ接続は有利には、8mm〜20mmの幅を有しており、有利には10mm〜15mmの幅を有している。この寸法は複層ガラスの寸法に相応して変化可能である。
【0018】
左側の係合部および右側の係合部は、有利には接着部によって包囲されている。この接着部は、スペーサー内での係合部の確実な保持を保証する。この係合部は密閉材料の供給にも用いられる。これは有利にはブチルゴムまたはシラン改質されたポリマーである。密閉材料は、係合部の湿気および気体を通さないシーリングを可能にする。密閉材料はさらに、スペーサー内の、温度によって生じる応力と機械的な応力の補償を可能にする。
【0019】
内側のプラグ接続、中央のプラグ接続および/または外側のプラグ接続は有利には、プラグ、ジャック、結合部またはソケットを含んでいる。これらのプラグ接続は、個々のプラグ接続の確実かつ可逆的に取り外し可能な接続を可能にする。
【0020】
コンタクト部材は有利には、上置き部分を、有利には外側プラグ接続の方向に有している。この上置き部分は射出成形による被覆、ひいては、外側の絶縁部分による中央のプラグ接続のさらなる密閉を可能にする。この上置き部分は、有利には15mm〜30mmの深さを有している。スペーサー内に中央のプラグ接続を最終的に取り付けた後に、この上置き部分を再び外すことができる。択一的に、閉鎖された上置き部分は、外側のプラグ接続の最終的な取り付けまで、コンタクト部材が汚れるのを阻止することができる。
【0021】
左側の係合部および/または右側の係合部は有利には、かえしまたは突っ張りを含む。これによって、スペーサー内の安定した、かつ耐スリップ性の固定が可能になり、かつ、スペーサー内で係合が外れるのが阻止される。
【0022】
プラグコンタクトおよび/またはコンタクト部材は有利には銀、銅、すず、金、アルミニウム、鉄、チタン、タングステン、クロムおよび/またはそれらの合金および/または導電性の有機ポリマーを含んでいる。
【0023】
外側のプラグ接続は有利には、屈折したケーブルガイドを有している。この屈折したケーブルガイドによって、複層ガラスから離れている外側の電子部分を省スペースに組み立てることが可能になる。湾曲したケーブル供給は、複層ガラスに取り付けられているケーブル被覆部および電子回路被覆部の大きさおよび延在を格段に低減させることができる。
【0024】
第1の板ガラスと第2の板ガラスとの間に、有利には、LEDスリットが配置されている。このLEDは有利には複数のLED(発光ダイオード)および/または複数のOLED(有機発光ダイオード)を含んでいる。このLEDスリットは、内側のプラグ接続と電気的に接続されている。このLEDスリットは少なくとも1つのLEDと、このLEDに固定されているLEDプリント回路基板(PCB:プリント回路基板)と、このLEDプリント回路基板に固定されている電気端子とを含んでいる。LEDプリント回路基板は、市販されているプリント回路基板および/またはボードを含んでいる。これは電気的絶縁性の材料から成り、その上に、電気的な接続が取り付けられている。絶縁材料の例は、非導電性のポリマー、例えばエポキシ樹脂がしみ込まされたガラスファイバー、テフロン、セラミックおよび/またはポリエステルフィルムである。電気的な接続、例えば線路ワイヤーは、有利には銅、鉄、すず、ニッケル、金、銀および/またはそれらの合金を含んでいる。LEDプリント回路基板上には複数のLEDが固定されており、これらの電気的な接続を介して接触接続される。電気端子は、内側のプラグ接続、中央のプラグ接続および外側のプラグ接続から成る装置を介して、電源への接続を形成する。有利には、外側のプラグ接続の電気端子と電源との間にさらに制御装置を配置することができる。この制御装置によって、個々のLEDを意図したように照明することができる。様々な色のLEDをLEDプリント回路基板上に配置することによって、カラーの光効果を形成することができる。
【0025】
第1の板ガラスおよび/または第2の板ガラスは、有利にはエレクトロクロミックコーティングを有している。このエレクトロクロミックコーティングは、内側のプラグ接続と電気的に接続されている。
【0026】
第1の板ガラスおよび/または第2の板ガラスは有利には、太陽光発電モジュールまたは太陽光発電層を有している。この太陽光発電モジュールまたは太陽光発電層は、内側のプラグ接続と電気的に接続されている。
【0027】
本発明はさらに、電気的な接続部材を有している複層ガラスの製造方法を含んでいる。第1のステップでは、電気的な負荷が、後の複層ガラスの第1の板ガラス上に配置される。次に、またはその前に、中央のプラグ接続が、周りのスペーサー内に組み込まれる。次のステップにおいて、電気的な負荷が、内側のプラグ接続を介して中央のプラグ接続と導電性に接続される。次のステップでは、内側の絶縁部によって包囲されているスペーサーが、第1の板ガラスと第2の板ガラスとの間に配置され、外側の絶縁部とともに、複層ガラスへと合成される。外側の絶縁部を載置する前に、中央のプラグ接続上に、外側を向いている側に、有利には保護キャップが載置される。外側絶縁部の硬化後に、この保護キャップを取り外すことができる。最後に、中央のプラグ接続が、外側のプラグ接続と接続される。
【0028】
本発明はさらに、照明されるガラス、エレクトロクロミックガラスおよび/または太陽光発電モジュールとしての複層ガラスの使用を含んでいる。
【0029】
以降で、本発明を図面に基づいてより詳細に説明する。これらの図面は、単なる概略図であり、縮尺通りではない。これは本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1a】電気的な接続部材を備えた複層ガラスの横断面を示す図
【実施例】
【0031】
図1aは、電気的なプラグ接続装置(7)を有する複層ガラスの横断面を示している。鎖線は、想定される中央の水平軸を示している。第1の板ガラス(1)と第2の板ガラス(2)とスペーサー(3)と外側絶縁部(5)は、複層ガラスの基本構造を形成している。スペーサー(3)内に組み込まれている中央のプラグ接続(9)は、複層ガラスの内部から、内側のプラグ接続(8)と接触接続されており、複層ガラスの外部から、外側のプラグ接続(10)と接触接続されている。中央のプラグ接続(9)は有利には、複層ガラスの内部空間に向けられた側に、金属製の表面またはコーティング(27)を有している。この金属製の表面またはコーティング(27)は、複層ガラスの内部空間を、中央のプラグ接続(9)の領域において付加的に密閉している。スペーサー(3)は、第1の板ガラス(1)および第2の板ガラス(2)に対するコンタクト面で、内側絶縁部(4)によって覆われている。この内側絶縁部(4)が選択的に、外側絶縁部(5)まで、または、外側絶縁部(5)内に達していてもよい。この内側絶縁部(4)は、第1の板ガラス(1)および第2の板ガラス(2)に対するスペーサー(3)のコンタクト面を、湿気を通さないおよび気体を通さないように密閉する。外側絶縁部(5)は第1の板ガラス(1)と、スペーサー(3)と、第2の板ガラス(2)との間の外側の縁部空間(6、破線の矢印)を完全に充填している。内側のプラグ接続(8)は、ケーブル(20)を介して、電気的な負荷(15)、例えばLEDスリット(24)、エレクトロクロミックコーティング(17)、太陽光発電モジュール(18)または太陽光発電層(19)の電気的な接触接続を可能にする。屈折しているケーブルガイド(16)、外側のプラグ接続(10)および中央のプラグ接続(9)から成る装置を介して、内側のプラグ接続(8)に電流が供給される。屈折しているケーブルガイド(16)は、複層ガラスに取り付けられている、図示されてないケーブル被覆部および電子回路被覆部の大きさおよび拡がりを格段に低減させる。有利には、外側のプラグ接続(10)並びに屈折しているケーブルガイド(16)から成る装置と、電流源との間に、さらに、図示されていない制御装置が配置される。この制御装置は、個々のLEDを所期のように照明することを可能にする。LEDプリント回路基板上に、様々な色のLEDを配置することによって、有色の光効果が形成される。
【0032】
図1bは、スペーサー(3)と電気的な接続部材と、外側のプラグ接続(10)と、中央のプラグ接続(9)と内側のプラグ接続(8)の、
図1における想定された中央水平軸(鎖線)に沿った平面図を示している。スペーサー(3)は、フレームの形態で、図示されていない第1の板ガラス(1)と第2の板ガラス(2)並びに内側絶縁部(4)と外側絶縁部(5)との間に、サンドウィッチ状に配置されている。中央のプラグ接続(9)、外側のプラグ接続(10)および屈折しているケーブルガイド(16)から成る装置を介して、内側のプラグ接続(8)に電流が供給される。ケーブル(20)は、電気的な負荷(15)、ひいては例えば択一的にLEDスリット(24)、エレクトロクロミックコーティング(17)、太陽光発電モジュール(18)または太陽光発電層(19)に電圧を供給する。
【0033】
図2は、中央のプラグ接続(9)の平面図を示している。中央のプラグ接続(9)は、左側の係合部(9a)と、中央部(9b)と、電気を通すコンタクト部材(12)を備えている右側の係合部(9c)とを有している。右側の係合部(9c)と左側の係合部(9a)は、等しく構成されていても、異なって構成されていてもよい。左側の係合部(9a)と、中央部(9b)と、右側の係合部(9c)は、有利には、金属またはポリマーから成る構成部分を形成する。中央のプラグ接続(9)は、スペーサー(3)の一部またはスペーサー(3)内に組み込み可能な中央部分、有利には外部および内部へ気体を通さないおよび湿気を通さないように閉鎖されている、スペーサー(3)の部分を形成する。左側の係合部(9a)と右側の係合部(9c)は、中央のプラグ接続(9)をスペーサー(3)内に差し込むことを可能にし、有利には図示されていない接着材によって、または、シーリング材によって包囲されている。電気的な接触接続が、コンタクト部材(12)内のプラグコンタクト(14)を介して行われる。コンタクト部材(12)が択一的に、中央のプラグ接続(9)内の接続されている複数の電気的なコンタクトから形成されていてもよい。これは全体的に、内側のプラグ接続(8)から外側のプラグ接続(10)への連続した電気的な接続を可能にする。
【0034】
図3は、中央のプラグ接続(9)の、拡大された平面図を示している。左側の係合部(9a)と、電気を通すコンタクト部材(12)を備えている中央部(9b)と、右側の係合部(9c)は、
図2に示されているものに相応する。コンタクト部材(12)は有利には、上置き部分(11)を含んでいる。この上置き部分は、上置き部分の高さ(26)によって定められている。上置き部分(11)は、有利には、外側のプラグ接続(10)(図示されていない)の方向に配置されている。上置き部分(11)および/または中央のプラグ接続(9)は有利には、電気的に使用されるプラグコンタクト(14)に対して中断された金属製の表面(27)を有している。この金属製の表面は、第1の板ガラス(1)と第2の板ガラス(2)との間の間隙からガスが損失するのを低減し、同時に湿気が侵入するのを阻止する。ねじ接続部(22)は、
図1に示されたプラグ接続装置(7)を固定するために用いられる。これは、内側のプラグ接続(8)と、中央のプラグ接続(9)と外側のプラグ接続(10)とから成る。シーリング材料(28)、有利にはブチルゴムまたはシラン改質されたポリマーが、プラグ接続(9)の上に、左側の係合(9a)および/または右側の係合(9c)と中央部(9b)との間の移行部において被着される。接着部(13)と、左側の係合部(9a)と右側の係合部(9c)上の突っ張り/かえし(21)は、スペーサー(3)内の中央のプラグ接続(9)の確実な保持のために用いられる。接着部(13)は有利には(図示されていない)、左側係合部(9a)および右側係合部(9c)の全体領域において、被着される。
【0035】
図4は、外側のプラグ接続(10)の平面図を示している。電気的な接触接続は、プラグコンタクト(25)を介して行われる。固定は有利には、ねじ接続部(22)を介して行われる。外側のプラグ接続(10)は有利には、屈折したケーブルガイド(16)を有している。屈折したケーブルガイド(16)内に鎖線によって示された角度αは有利には10°〜70°であり、特に有利には30°〜60°である。ケーブル接続部(23)を有する、屈折したケーブルガイド(16)によって、外側のプラグ接続(10)、ひいては全体的な本発明の複層ガラスを省スペースに取り付けることが可能になる。
【0036】
図5は、本発明による方法のフローチャートを示している。第1のステップでは、電気的な負荷、例えばLEDスリット(24)が、後の複層ガラスの第1の板ガラス(1)上に配置される。これに続いて、または、その前に、中央のプラグ接続(9)が、周りを囲んでいるスペーサー(3)内にはめ込まれる。次のステップにおいて、電気的な負荷(15)が内側のプラグ接続(8)を介して、中央のプラグ接続(9)と導電性接続される。次のステップでは、内側絶縁部(4)によって覆われているスペーサー(3)が、第1の板ガラス(1)と第2の板ガラス(2)との間に配置され、外側絶縁部(5)とともに複層ガラスを成す。外側絶縁部(5)、例えば有機ポリ硫化物を、中央のプラグ接続(9)上に、外側を向いている側に被着する前に、有利には上置き部分(11)上に保護キャップが載せられる。外側絶縁部(5)の硬化後に、保護キャップは除去される。この保護キャップは、外側絶縁部(5)の部分によって、中央のプラグ接続(9)におけるプラグコンタクト(14)が目詰まりをするまたは塞がるのを阻止する。最終に、中央のプラグ接続(9)が、外側のプラグ接続(10)と接続される。
【符号の説明】
【0037】
(1) 第1の板ガラス、 (2) 第2の板ガラス、 (3) スペーサー、 (4) 内側絶縁部、 (5) 外側絶縁部、 (6) 縁部空間、 (7) プラグ接続装置(8、9、10)、 (8) 内側のプラグ接続、 (9) 中央のプラグ接続、 (9a) 左側の係合部、 (9b) 中央部、 (9c) 右側の係合部、 (10) 外側のプラグ接続、 (11) 上置き部分、 (12) コンタクト部材、 (13) 接着部、 (14) プラグコンタクト、 (15) 電気的な負荷、 (16) 屈折しているケーブルガイド/外部ケーブル、 (17) エレクトロクロミックコーティング、 (18) 太陽光発電モジュール、 (19) 太陽光発電層、 (20) ケーブル、 (21) 突っ張り/かえし、 (22) ねじ接続、 (23) ケーブル接続、 (24) LEDスリット、 (25) プラグコンタクト(外部プラグ接続)、 (26) 上置き部分の高さ、 (27) 中央表面/金属フィルム/金属コーティング、 (28) シーリング材料