特許第5882486号(P5882486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882486
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】格子パターンレーザ治療及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   A61F9/008 120F
【請求項の数】16
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2014-537278(P2014-537278)
(86)(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公表番号】特表2014-534011(P2014-534011A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】US2012060979
(87)【国際公開番号】WO2013059564
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2014年6月24日
(31)【優先権主張番号】61/549,036
(32)【優先日】2011年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507280631
【氏名又は名称】イリデックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】イー キングマン
(72)【発明者】
【氏名】ブザワ デイヴ
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−158331(JP,A)
【文献】 特開2000−060893(JP,A)
【文献】 特開昭58−163361(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0051116(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/008 − A61F 9/011
A61N 5/06
A61B 18/20 − A61B 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療処置を患者の眼に提供するシステムであって、前記システムは、
第1のビームを第1のビーム経路に沿って送るよう構成された第1のビーム源と、
第2のビームを第2のビーム経路に沿って送るよう構成された第2のビーム源と、
前記第1及び前記第2のビーム経路に沿って設けられていて、前記第1のビーム及び前記第2のビームを前記患者の眼の網膜に沿って走査するよう構成された照準合わせ装置と、
前記照準合わせ装置に結合されたプロセッサとを含み、前記プロセッサは、
前記第1のビームにより前記網膜の領域を第1の野及び第2の野に分離する治療境界を画定すると共に、
前記第2のビームを前記第1のビームにより定められた第1の野内において前記網膜上に差し向けて前記治療処置を前記患者の眼の前記網膜組織に送出するよう構成されており、
前記第1のビームは前記第2のビームの発火中、オフに切り替えられ、前記第2のビームは前記第1のビームの発火中、オフに切り替えられ、前記第2のビームの次の発火との間に網膜組織上の境界を再び定めるために、前記第1のビームは、前記第2のビームの次の発火との間にオンに切り替えられ、前記第1のビームは、結果的に得られる視覚的効果が、網膜組織上の連続的且つ接続した幾何学的形状の連続した中実の境界になるように、網膜組織に投射される、システム。
【請求項2】
治療ビーム源及びオフサルミック画像化器械に結合可能なアダプタ装置であって、前記治療ビーム源は、治療ビームを治療ビーム出力から送るよう構成され、前記オフサルミック画像化器械は、患者の眼の網膜を観察するよう構成可能な画像化システムを有し、前記アダプタ装置は、
前記治療ビームを受け取るよう前記治療ビーム源の前記治療ビーム出力に結合するよう構成された第1のインターフェースと、
前記第1のインターフェースからの治療ビーム経路に沿うと共に照準合わせビーム源からの照準合わせビーム経路に沿って設けられた照準合わせ装置とを有し、前記照準合わせ装置は、前記照準合わせビーム源からの前記照準合わせビームを、前記網膜を横切って走査させてユーザが前記画像化システムにより前記網膜を観察しているとき、治療野を指示すると共に前記治療ビームを前記治療野上で走査させるよう構成されており、
前記照準合わせビームは前記治療ビームの発火中、オフに切り替えられ、前記治療ビームは前記照準合わせビームの発火中、オフに切り替えられ、前記治療ビームの次の発火との間に網膜組織上の境界を再び定めるために、前記照準合わせビームは、前記治療ビームの次の発火との間にオンに切り替えられ、前記照準合わせビームは、結果的に得られる視覚的効果が、網膜組織上の連続的且つ接続した幾何学的形状の連続した中実の境界になるように、網膜組織に投射される、アダプタ装置。
【請求項3】
前記照準合わせビームは、前記治療ビーム源からの前記治療ビーム経路に沿って送られ、前記治療ビーム源は、照準合わせビーム源を更に含み、前記アダプタ装置の前記照準合わせビーム経路は、前記治療ビーム経路と同軸である、請求項2記載のアダプタ装置。
【請求項4】
前記アダプタ装置を前記オフサルミック画像化器械に解除可能に結合するよう構成された取り付け部材を更に有する、請求項2記載のアダプタ装置。
【請求項5】
前記アダプタ装置は、前記照準合わせビームを提供する前記照準合わせビーム源を更に有する、請求項2記載のアダプタ装置。
【請求項6】
前記照準合わせビーム源は、約600ナノメートル〜約700ナノメートルの波長を有する照準合わせレーザビームを提供するレーザダイオードから成る、請求項5記載のアダプタ装置。
【請求項7】
前記治療ビーム源は、約400ナノメートル〜約600ナノメートルの波長を有する治療レーザビームを提供する、請求項2記載のアダプタ装置。
【請求項8】
前記治療ビーム源は、前記治療ビームの送出を制御する外部コンピュータ処理装置と通信可能に結合され、前記外部コンピュータ処理装置も又、前記照準合わせビームの送出を制御するよう前記アダプタ装置に通信可能に結合される、請求項2記載のアダプタ装置。
【請求項9】
前記アダプタ装置は、前記網膜組織上における前記治療ビームの断面又は入射スポットを選択可能に変化させるよう構成された拡大機構体を更に有する、請求項2記載のアダプタ装置。
【請求項10】
前記画像化システムは、ユーザが前記網膜及び治療野を視認することができるようにするよう構成された双眼鏡を含む、請求項2記載のアダプタ装置。
【請求項11】
前記治療ビーム経路は、前記照準合わせビーム経路との合体に先立って前記照準合わせビーム経路を横切り、前記治療ビーム経路と前記照準合わせビーム経路は、合体後、実質的に同軸である、請求項2記載のアダプタ装置。
【請求項12】
前記オフサルミック画像化器械は、スリットランプから成る、請求項2記載のアダプタ装置。
【請求項13】
前記治療野は、
スポットのアレイ、
複数個の正方形を有する格子、
複数個の長方形を有する格子、
半円形パターン、及び、
六角形パターンから成る群から選択された1つ又は2つ以上含む、請求項2記載のアダプタ装置。
【請求項14】
アダプタ装置であって、
ハウジングを有し、前記ハウジングは、
照準合わせビームを提供する照準合わせビーム源と、
治療ビーム源の治療ビーム出力と結合して前記治療ビームを受け入れるよう構成されたインターフェースと、
前記アダプタ装置をオフサルミック画像化器械に解除可能に結合するよう構成された取り付け部材と、
前記第1のインターフェースからの治療ビーム経路に沿うと共に前記照準合わせビーム源からの照準合わせビーム経路に沿って設けられた照準合わせ装置とを有し、前記照準合わせ装置は、前記照準合わせビームを、前記網膜を横切って走査させてユーザが前記画像化システムにより前記網膜を観察しているときに治療野を指示すると共に前記治療ビームを前記治療野上で走査させるよう構成されており、
前記照準合わせビームは前記治療ビームの発火中、オフに切り替えられ、前記治療ビームは前記照準合わせビームの発火中、オフに切り替えられ、前記治療ビームの次の発火との間に網膜組織上の境界を再び定めるために、前記照準合わせビームは、前記治療ビームの次の発火との間にオンに切り替えられ、前記照準合わせビームは、結果的に得られる視覚的効果が、網膜組織上の連続的且つ接続した幾何学的形状の連続した中実の境界になるように、網膜組織に投射される、アダプタ装置。
【請求項15】
治療処置を患者の眼に提供するシステムであって、前記システムは、
照準合わせビームを照準合わせビーム経路に沿って送るよう構成された照準合わせビーム源と、
治療ビームを治療ビーム経路に沿って送るよう構成された治療ビーム源と、
前記照準合わせビーム経路及び前記治療ビーム経路に沿って設けられていて、前記患者の眼の網膜に沿って前記照準合わせビーム及び治療ビームを走査するよう構成された走査装置と、
前記走査装置に結合されたプロセッサとを含み、前記プロセッサは、
前記照準合わせビームを前記網膜上に差し向けて第1の治療位置及び第2の治療位置を定め、
一連のパルスを前記網膜組織に送出しながら前記治療ビームを前記第1の位置と前記第2の位置との間で走査するよう構成されており、各位置における前記一連のパルスは、前記網膜組織の伝統的な光凝固の引き起こしを回避する一方で前記網膜組織への治療による治癒の光活性化を引き起こすのに十分に短い持続時間のものであり、
前記照準合わせビームは前記治療ビームの発火中、オフに切り替えられ、前記治療ビームは前記照準合わせビームの発火中、オフに切り替えられ、前記治療ビームの次の発火との間に網膜組織上の境界を再び定めるために、前記照準合わせビームは、前記治療ビームの次の発火との間にオンに切り替えられ、前記照準合わせビームは、結果的に得られる視覚的効果が、網膜組織上の連続的且つ接続した幾何学的形状の連続した中実の境界になるように、網膜組織に投射される、システム。
【請求項16】
患者の眼を治療するシステムであって、前記システムは、
治療ビームを治療ビーム経路に沿って送るよう構成された治療ビーム源と、
前記治療ビーム経路に沿って設けられていて、前記治療ビームを前記患者の眼の網膜に沿って走査するよう構成された走査装置と、
前記網膜の画像を捕捉するよう差し向けられた画像捕捉装置と、
前記画像捕捉装置に結合されたディスプレイと、
前記走査装置及び前記ディスプレイに結合されたプロセッサとを含み、前記プロセッサは、
前記ディスプレイに示された前記画像捕捉装置からの前記網膜の画像上に前記網膜の所望の場所で治療処置の標識を重ね合わせ、
前記治療ビームにより前記治療処置を前記所望の場所で前記網膜の前記組織に送出するよう構成されており、
前記プロセッサは、更に、照準合わせビーム源からの照準合わせビームを前記網膜の前記所望の場所上に差し向けて前記標識に対して前記網膜上の所望の治療を施すよう構成されており
前記照準合わせビームは前記治療ビームの発火中、オフに切り替えられ、前記治療ビームは前記照準合わせビームの発火中、オフに切り替えられ、前記治療ビームの次の発火との間に網膜組織上の境界を再び定めるために、前記照準合わせビームは、前記治療ビームの次の発火との間にオンに切り替えられ、前記照準合わせビームは、結果的に得られる視覚的効果が、網膜組織上の連続的且つ接続した幾何学的形状の連続した中実の境界になるように、網膜組織に投射される、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
〔関連出願の説明〕
本願は、2011年10月19日に出願された米国特許仮出願第61/549,036号(発明の名称:Grid Pattern Therapeutic Treatment)の優先権主張出願であり、この米国特許仮出願を全ての目的について参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0002】
治療レーザは、眼の種々の病態を治療するために用いられる場合が多い。例えば、かかるレーザで治療できる特定形式の病態は、糖尿病性網膜症である。糖尿病性網膜症は、糖尿病の合併症に起因した網膜の損傷である。治療しない状態のままでいた場合、糖尿病性網膜症は、最終的には、失明に至らせる場合がある。糖尿病性網膜症は、典型的には、微小血管網膜変化に起因している。例えば、糖尿病に引き起こされる効果により、眼の組織が損傷する場合があり、これは、血液網膜バリヤの形成を変化させて網膜血管が透過性になるようにする場合がある。かかる病態の治療にあたり、1本又は2本以上の光ビームを眼内に且つ/或いは網膜組織に差し向けて組織の光凝固を生じさせ、それにより眼内血管を微細に焼灼すると共に/或いは血管成長を阻止して種々の治療上の利点をもたらすことができる。レーザ光凝固は、一般に、網膜症の早期の段階に用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、レーザ光凝固治療を提供する際、眼の敏感な組織、例えば窩、黄斑等の損傷を回避することが重要である。或る特定の場合、これらの野(領域(area))に対する損傷を回避するようにした状態でこれら野のうちの1つ又は2つ以上の近くに位置する組織を治療することが望ましい場合がある。従来のレーザ光凝固技術は、かかる組織に対する損傷が回避され又は大幅に軽減されるようにしながらかかる敏感な組織の近くに位置する野の治療に対して最適な解決策を提供するものではない。したがって、当該技術分野において、眼の種々の病態、例えば糖尿病性網膜症を治療するための改良型レーザ光凝固方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書において説明する本発明の実施形態は、患者の眼の網膜及び/又は他の野を治療するシステム及び方法を提供する。これらの手技は、1本又は2本以上の治療ビーム(例えば、レーザ)を用いて光凝固を引き起こして眼内血管を微細に焼灼すると共に/或いは血管成長を阻止して1つ又は2つ以上の治療上のメリットを生じさせる手技を含むのが良い。かかる手技を用いると糖尿病性網膜症、黄斑浮腫及び/又は眼の他の病態を治療することができる。一観点によれば、患者の眼を治療する方法が提供される。この方法は、第1のビームを患者の眼の網膜組織に投射するステップを含むのが良い。第1のビームにより網膜組織を第1の野及び第2の野に対して分離する境界を画定するのが良い。第2のビームを第1の野内の患者の眼の網膜組織に選択的に差し向けることによって第2のビームにより患者の眼の網膜組織に治療処置を送出するのが良い。
【0005】
一実施形態によれば、本方法は、境界を患者の眼の識別された領域に隣接して位置決めして識別された領域が第2の野内に位置するようにするステップを更に含むのが良い。識別された領域は、治療処置で治療されるべきではない組織を含む又は決定する。第2のビームを第1の野内に差し向けて識別された領域の組織への治療処置の送出を回避するのが良い。境界は、各々が治療処置を送出するために第2のビームが差し向けられる野を画定する幾何学的形状のパターンを含むのが良く、第2のビームは、幾何学的形状の各々内に差し向けられるのが良い。
【0006】
幾何学的形状のパターンは、走査装置により網膜組織における第1のビームの投射場所を(例えば、走査装置により)制御して第1のビームが網膜組織における幾何学的形状のパターンの輪郭を描くようにすることによって眼の網膜組織上に画定されるのが良い。第1のビームの投射場所は、複数個のパルスの各々相互間で調節される。幾何学的形状のパターンとしては、複数個の正方形を有する格子、複数個の長方形を有する格子、半円形パターン、円形パターン及び六角形パターン等が挙げられる。幾何学的形状の各々の幾何学的中心上に第2のビームを差し向けるのが良い。網膜組織に入射する第2のビームのスポットは、全体が、第1のビームにより形成される幾何学的形状の周囲内に位置するのが良い。
【0007】
幾つかの実施形態では、第1のビームは、第2のビームのパルスが送出されるときは送出されないのが良く、又この逆の関係が成り立ち、即ち、第2のビームは、第1のビームのパルスが送出されるときは送出されないのが良い。幾つかの実施形態では、第2のビームの複数個のパルスを境界内に送出して治療処置を施すのが良い。幾つかの実施形態では、治療レーザ処置の提供に先立って又はこれと同時に境界の規模若しくは境界の向き又はこれら両方を調節するのが良い。幾つかの実施形態では、境界を画定するステップは、第1のビームを境界の周囲に沿って差し向けるステップを含むのが良い。第1のビームは、第2のビームのスポットサイズよりも小さい網膜上の可視スポットサイズを有するのが良い。治療処置を送出するステップは、網膜組織の光凝固を引き起こすステップを含むのが良い。幾つかの実施形態では、第2のビームを十分に短い持続時間の一連のパルスの状態で送出して網膜組織の伝統的な光凝固の引き起こしを回避する一方で、治療による治癒応答の光活性化を引き起こすのが良い。
【0008】
別の実施形態では、患者の眼に治療処置を提供する方法が提供される。この方法は、治療パターンを患者の眼の網膜上に投射するステップを含むのが良い。治療パターンは、網膜組織の第1の野及び網膜組織の第2の野を画定するのが良い。治療ビームを第1の野内に選択的に差し向けることによって(治療ビームにより)治療処置を第1の野の網膜組織に送出するのが良い。
【0009】
幾つかの実施形態では、治療パターンは、幾何学的形状のパターンを含むのが良く、各幾何学的形状は、治療ビームが差し向けられる治療野を定めるのが良い。治療ビームは、順次、幾何学的形状の各々内に差し向けられるのが良い。治療パターンは、複数の行及び列を有する格子を含み又は定めるのが良い。治療ビームは、治療ビームを網膜組織に、好ましくはこれら幾何学的形状の各々の幾何学的中心内に又はその近傍に送出するよう複数の行及び列に沿って、好ましくはこれらの中で順次走査されるのが良い。
【0010】
格子は、直線パターン又は半円形パターンに配列された正方形又は長方形のM×Nアレイを含むのが良い。幾つかの実施形態では、本方法は、第2の治療パターンを治療を受けなかった場所において網膜上に投射するステップを更に含むのが良い。第2の治療パターンは、網膜組織の第3の野及び網膜組織の第4の野を画定するのが良い。治療ビームを第3の野内に選択的に差し向けることによって治療ビームにより治療処置を第3の野の網膜組織に送出するのが良い。
【0011】
別の観点によれば、治療処置を患者の眼に提供するシステムが提供される。このシステムは、とりわけ、第1のビーム源と、第2のビーム源と、照準合わせ装置と、プロセッサとを含む。第1のビーム源は、第1のビームを第1のビーム経路に沿って送るよう構成されているのが良い。第2のビーム源は、第2のビームを第2のビーム経路に沿って送るよう構成されているのが良い。照準合わせ装置は、第1及び第2のビーム経路に沿って設けられているのが良く、この照準合わせ装置は、第1のビーム及び第2のビームを患者の眼の網膜に沿って走査するよう構成されているのが良い。プロセッサは、照準合わせ装置に結合されているのが良く、このプロセッサは、第1のビームにより網膜の領域を第1の野及び第2の野に分離する治療境界を画定すると共に第2のビームを第1のビームにより定められた第1の野内において網膜上に差し向けて治療処置を患者の眼の網膜組織に送出するよう構成されている。
【0012】
別の観点によれば、患者の眼を治療する方法が提供される。この方法は、照準合わせビームを患者の眼の網膜組織に差し向けるステップと、第1の標的位置及び第2の標的位置を(例えば、照準合わせビームにより)定めるステップとを含むのが良い。この方法は、一連のパルスを(例えば、治療ビームにより)第1及び第2の標的位置のところで網膜組織に送出して網膜組織を治療するステップを更に含むのが良い。各パルスの持続時間は、網膜組織の伝統的な光凝固の引き起こしを回避するのに十分短いのが良いが、或る位置又は各位置のところでの治療による治癒の光活性化を引き起こすのに十分であるのが良い。
【0013】
幾つかの実施形態では、治療ビームは、各パルス相互間の投射場所相互間を走査するのが良い。別の実施形態によれば、治療ビームは、第2の一連のパルスを送出するために第2の標的位置に動く前に第1の標的位置のところに第1の一連のパルスを送出するのが良い。幾つかの実施形態では、治療ビームは、治療ビーム軸線を網膜組織を横切って走査すると共に一連のパルスを送出しているとき、網膜組織に円形の入射光輪郭を生じさせるよう構成された楕円形又は長円形断面を有するのが良い。例えば、入射光輪郭は、円形断面治療ビームにより生じる入射光輪郭よりも円形であるのが良い。
【0014】
幾つかの実施形態では、本方法は、治療ビームを照準合わせビームによって識別された第1の野内で第1の標的位置から第2の標的位置まで走査するステップと、一連のパルスを第1の標的位置と第2の標的位置との間で送出して各パルスが第1の位置と第2の位置との間の別の位置に送出されるようにするステップとを更に含むのが良い。幾つかの実施形態では、本方法は、治療ビームを第1の野内で第1の標的位置から第2の標的位置まで再走査するステップと、先の一連のパルスを送出しているときに追加の一連のパルスを第1の標的位置と第2の標的位置との間でほぼ同一の位置に送出するステップとを更に含むのが良い。幾つかの実施形態では、この走査及び再走査プロセスは、各々、治療サイクルを含むのが良く、このプロセスは、第1の野内で眼の網膜組織を治療するよう約10回〜約10,000回の治療サイクルを提供するよう繰り返されるのが良い。
【0015】
幾つかの実施形態では、少なくとも9個のパルスが第1の標的位置と第2の標的位置との間で送出されるのが良い。同様に、第1の標的位置から第2の標的位置までの走査は、約0.5ミリ秒〜約1.5ミリ秒の走査時間で完了するのが良い。別の実施形態では、第1の標的位置から第2の標的位置までの走査は、約0.9ミリ秒〜約1.1ミリ秒の走査時間で完了するのが良い。治療ビームの走査は、ラスタ走査パターンを辿るのが良い。
【0016】
幾つかの実施形態によれば、各パルスの持続時間は、内部網膜温度が凝固による損傷のしきい値を下回ったままであるように十分に短いのが良い。各パルスの持続時間は、約5マイクロ秒〜約15マイクロ秒であるのが良く、別の実施形態では、各パルスの持続時間は、約9マイクロ秒〜約11マイクロ秒であっても良い。
【0017】
別の観点では、患者の眼を治療する方法が提供される。この方法は、照準合わせビームを前記患者の眼の網膜組織に差し向けるステップと、網膜組織を第1の野及び第2の野に分離する治療境界を(例えば、照準合わせビームにより)画定するステップとを含むのが良い。この方法は、第1の野内の治療ビームの軸線を走査するステップと、治療ビーム軸線を第1の野内で走査しているときに一連のパルスを(例えば、治療ビームにより)第1の野内で網膜組織に送出するステップとを更に含むのが良い。一連のパルスは、網膜組織の伝統的な光凝固の引き起こしを回避する一方で、治療による治癒の光活性化を引き起こすよう十分に短い持続時間の間送出されるのが良い。
【0018】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、第1の野内での治療ビーム軸線の第1の走査中、第1の一連のパルスを第1の野内の複数の場所に送出するステップと、第1の野内の治療ビーム軸線の第2の走査中、少なくとも1つの追加の一連のパルスを第1の野内の複数の場所の各々に送出するステップとを更に含むのが良い。別の実施形態では、この方法は、第1の一連のパルスを第1の野内の第1の場所に(例えば、治療ビームにより)送出するステップと、この第1の一連のパルスの送出に続き、少なくとも1つの追加の一連のパルスを第1の野内の第2の場所に(例えば、治療ビームにより)送出するステップとを更に含むのが良い。
【0019】
一実施形態によれば、各パルスの持続時間は、内部網膜温度が凝固による損傷のしきい値を下回ったままであるように約5マイクロ秒〜約15マイクロ秒であるのが良い。一実施形態では、本方法は、一連のパルスを各パルス相互間の指定された間隔で送出してパルス送出場所相互間の所定の間隔をもたらすステップを更に含むのが良い。かかる実施形態では、治療境界は、幾何学的形状のアレイを有する治療パターンを含み、所定の間隔は、パルスの各々が幾何学的形状のうちの1つの中に送出されるようなものであるのが良い。
【0020】
別の観点によれば、治療処置を患者の眼に提供するシステムが提供される。このシステムは、とりわけ、照準合わせビーム源と、治療ビーム源と、走査装置と、プロセッサとを含むのが良い。照準合わせビーム源は、照準合わせビームを照準合わせビーム経路に沿って送るよう構成されるのが良い。治療ビーム源は、治療ビームを治療ビーム経路に沿って送るよう構成されるのが良い。走査装置は、照準合わせビーム経路及び治療ビーム経路に沿って設けられていて、患者の眼の網膜に沿って照準合わせビーム及び治療ビームを走査するよう構成されるのが良い。プロセッサは、走査装置に結合されるのが良く、プロセッサは、照準合わせビームを網膜上に差し向けて第1の治療位置及び第2の治療位置を定めると共に一連のパルスを網膜組織に送出しながら治療ビームを第1の位置と第2の位置との間で走査するよう構成されるのが良い。各位置における一連のパルスは、網膜組織の伝統的な光凝固の引き起こしを回避する一方で網膜組織への治療による治癒の光活性化を引き起こすのに十分に短い持続時間のものであるのが良い。
【0021】
幾つかの実施形態によれば、走査装置は、オフサルミック測定器械に取り外し可能に結合可能であり且つ光ビーム源に光学的に結合可能なアダプタ装置内に配置されるのが良い。アダプタ装置は、光ビーム源からの光ビームを受け取ってこの光ビームを患者の眼の網膜又は他の組織に差し向けることができる。幾つかの実施形態では、アダプタ装置は、照準合わせビーム源を更に有するのが良い。
【0022】
別の観点によれば、治療ビーム源及びオフサルミック画像化器械に結合可能なアダプタ装置が提供される。治療ビーム源は、治療ビームを治療ビーム出力から送るよう構成されるのが良く、オフサルミック画像化器械は、患者の眼の網膜を観察するよう構成可能な画像化システムを有するのが良い。アダプタ装置は、治療ビームを受け取るよう治療ビーム源の治療ビーム出力に結合するよう構成された第1のインターフェースを有するのが良い。アダプタ装置は、第1のインターフェースからの治療ビーム経路に沿うと共に照準合わせビーム源からの照準合わせビーム経路に沿って設けられた照準合わせ装置を更に有するのが良い。照準合わせ装置は、照準合わせビーム源からの照準合わせビームを、網膜を横切って走査させてユーザが画像化システムにより網膜を観察しているとき、治療野を指示すると共に治療ビームを治療野上で走査させるよう構成されるのが良い。
【0023】
照準合わせビームは、治療ビーム源からの治療ビーム経路に沿って送られるのが良く、治療ビーム源は、照準合わせビーム源を更に含むのが良い。かかる実施形態では、アダプタ装置の照準合わせビーム経路は、治療ビーム経路と同軸であるのが良い。アダプタ装置は、アダプタ装置をオフサルミック画像化器械に解除可能に結合するよう構成された取り付け部材を更に有するのが良い。幾つかの実施形態によれば、アダプタ装置は、照準合わせビームを提供する照準合わせビーム源を更に有するのが良い。照準合わせビーム源は、約600ナノメートル〜約700ナノメートルの波長を有する照準合わせレーザビームを提供するレーザダイオードを含むのが良い。
【0024】
幾つかの実施形態によれば、治療ビーム源は、約400ナノメートル〜約600ナノメートルの波長を有する治療レーザビームを提供するのが良い。幾つかの実施形態によれば、治療ビーム源は、治療ビームの送出を制御する外部コンピュータ処理装置と通信可能に結合されるのが良い。外部コンピュータ処理装置も又、照準合わせビームの送出を制御するようアダプタ装置に通信可能に結合されるのが良い。
【0025】
幾つかの実施形態によれば、アダプタ装置は、網膜組織上における治療ビームの断面又は入射スポットを選択可能に変化させるよう構成された拡大機構体を更に有するのが良い。幾つかの実施形態によれば、画像化システムは、ユーザが網膜及び治療野を視認することができるようにするよう構成された双眼鏡を含むのが良い。幾つかの実施形態によれば、治療ビーム経路は、照準合わせビーム経路との合体に先立って照準合わせビーム経路を横切るのが良い。かかる実施形態では、治療ビーム経路と照準合わせビーム経路は、合体後、実質的に同軸であるのが良い。幾つかの実施形態によれば、オフサルミック画像化器械は、スリットランプであるのが良い。幾つかの実施形態によれば、治療野は、スポットのアレイ、複数個の正方形を有する格子、複数個の長方形を有する格子、半円形パターン及び六角形パターン等であるのが良く又はこれらを含むのが良い。
【0026】
別の観点によれば、アダプタ装置が提供される。アダプタ装置は、照準合わせビームを提供する照準合わせビーム源を含むハウジングを有するのが良い。ハウジングは、治療ビーム源の治療ビーム出力と結合して治療ビームを受け入れるよう構成されたインターフェースを更に含むのが良い。ハウジングは、アダプタ装置をオフサルミック画像化器械に解除可能に結合するよう構成された取り付け部材を更に含むのが良い。アダプタ装置は、第1のインターフェースからの治療ビーム経路に沿うと共に照準合わせビーム源からの照準合わせビーム経路に沿って設けられた照準合わせ装置を更に含むのが良い。照準合わせ装置は、照準合わせビームを、網膜を横切って走査させてユーザがオフサルミック画像化システムにより網膜を観察しているときに治療野を指示すると共に治療ビームを治療野上で走査させるよう構成されるのが良い。
【0027】
治療ビーム源は、治療ビームの送出を制御する外部コンピュータ処理装置に通信可能に結合されるのが良い。同様に、アダプタ装置は、照準合わせビームの送出を制御するよう外部コンピュータ処理装置に通信可能に結合されるのが良い。治療ビーム経路は、照準合わせビーム経路との合体に先立って照準合わせビーム経路を横切るのが良く、治療ビーム経路と照準合わせビーム経路は、合体後、実質的に同軸であるのが良い。幾つかの実施形態によれば、オフサルミック画像化器械は、スリットランプであるのが良い。
【0028】
別の観点によれば、眼の網膜を治療する方法が提供される。この方法は、アダプタ装置を用意するステップと、アダプタ装置を治療ビーム源に結合するステップとを含むのが良い。この方法は、観察ビームを(例えば、アダプタ装置により)網膜の方へ差し向けて治療野を画定するステップを更に含むのが良い。この方法は、治療ビームを(例えば、アダプタ装置により)観察ビームによって定められた治療野内において網膜上に差し向けるステップを更に含むのが良い。
【0029】
幾つかの実施形態によれば、この方法は、治療ビームの送出及び観察ビームの送出を外部コンピュータ処理装置によって制御するよう治療ビーム源及びアダプタ装置を外部コンピュータ処理装置に通信可能に結合するステップを更に有するのが良い。幾つかの実施形態では、外部コンピュータ処理装置のためのユーザ入力を治療ビーム源から外部コンピュータ処理装置に送るのが良い。ユーザ入力を治療ビーム源を介して表示される制御部から受け取るのが良く、そしてユーザ入力を用いて治療野及び/又は治療ビームの1つ又は2つ以上のパラメータを定めるのが良い。幾つかの実施形態によれば、アダプタ装置は、観察ビームを提供する観察ビーム源を更に有するのが良い。この方法は、アダプタ装置をオフサルミック画像化器械に結合するステップを更に含むのが良い。
【0030】
別の観点によれば、患者の眼を治療する方法が提供される。この方法は、患者の眼の網膜画像を用意するステップと、網膜画像を参照することによって網膜の第1の治療野及び第2の治療野を決定して治療処置により治療を行うステップとを含むのが良い。網膜画像を参照することによってビームを網膜の第1の決定された治療野の方へ差し向けて第1の治療野について治療処置を生じさせるのが良い。治療処置の標識を第1の治療野に対応した第1の場所で網膜画像上に重ね合わせるのが良い。重ね合わされた標識と共に網膜画像を参照することによってビームを網膜の第2の決定された治療野上に差し向けて第2の治療野について治療処置を生じさせるのが良い。
【0031】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、治療処置の標識を第2の治療野に対応した第2の場所で網膜画像上に重ね合わせるステップと、重ね合わされた標識と共に網膜画像を記憶して患者が受ける治療を追跡するステップとを更に含むのが良い。本方法は、患者に提供された又は提供されるべき複数の治療処置を網膜画像上に重ね合わせるステップを更に含むのが良い。
【0032】
幾つかの実施形態によれば、患者の眼の運動を突き止め又は決定し、運動に応答して、ビームの位置を調節して運動を補償するのが良い。ビームの位置を調節するステップは、眼の第2の網膜画像を捕捉するステップ及び網膜画像の網膜特徴を第2の網膜画像の網膜特徴と比較するステップを含むのが良い。
【0033】
幾つかの実施形態によれば、第1の治療野を決定するステップは、網膜組織を第1の野及び第2の野に分離する治療境界を決定するステップを含むのが良い。かかる実施形態では、本方法は、ビームを治療境界内に選択的に差し向けることによって治療処置を第1の治療野に送出するステップを更に含むのが良い。加うるに、追加のビームを網膜組織に差し向けて網膜組織に治療境界を画定し又は重ね合わせるのが良い。本方法は、治療境界を網膜画像上に重ね合わせて第1の治療野について治療処置を表示するステップを更に含むのが良い。加うるに、治療境界の特性を調節するためのユーザ入力を受け取るよう構成された表示装置上に網膜画像及び重ね合わされた治療境界を表示するのが良い。調節されるのが良い特性は、境界形状、境界サイズ及び境界向き等を含むのが良い。
【0034】
別の観点によれば、患者の眼を治療する方法が提供される。この方法は、患者の眼の網膜画像を用意するステップと、ビームを網膜の第1の治療野の方へ差し向けて第1の治療野について治療処置を生じさせるステップと、治療処置の標識を第1の治療野に対応した第1の場所で網膜画像上に重ね合わせるステップとを含むのが良い。
【0035】
幾つかの実施形態によれば、本方法は、ビームを網膜の少なくとも1つの追加の治療野上に差し向けて少なくとも1つの追加の治療野について治療処置を生じさせるステップと、治療処置の標識を少なくとも1つの追加の治療野に対応した1つ又は2つ以上の場所で網膜画像上に重ね合わせるステップとを更に含むのが良い。本方法は、重ね合わされた標識と共に網膜画像を記憶して患者が受ける治療を追跡するステップを更に含むのが良い。患者に提供されるべき1つ又は2つ以上の追加の治療処置も又、網膜画像上に重ね合わされるのが良い。
【0036】
幾つかの実施形態によれば、この方法は、第1の治療野のための治療境界を決定するステップを更に含むのが良い。治療境界は、治療処置が提供されるべき網膜組織の領域を画定する。かかる実施形態では、この方法は、ビームを治療境界内に選択的に差し向けることによって治療処置を第1の治療野に送出するステップを更に含むのが良い。幾つかの実施形態では、照準合わせビームを網膜組織に差し向けて網膜組織上に治療境界を画定するのが良い。
【0037】
別の観点によれば、患者の眼を治療するシステムが提供される。このシステムは、治療ビーム源と、走査装置と、画像捕捉装置と、ディスプレイと、プロセッサとを含むのが良い。治療ビーム源は、治療ビームを治療ビーム経路に沿って送るよう構成されるのが良い。走査装置は、治療ビーム経路に沿って設けられるのが良く、走査装置は、治療ビームを患者の眼の網膜に沿って走査するよう構成されるのが良い。画像捕捉装置は、網膜の画像を捕捉するよう差し向けられるのが良く、ディスプレイは、画像捕捉装置に結合されるのが良い。プロセッサは、走査装置及びディスプレイに結合されるのが良く、プロセッサは、ディスプレイに示された画像捕捉装置からの網膜の画像上に網膜の所望の場所で治療処置の標識を重ね合わせ、治療処置を(例えば、治療ビームにより)所望の場所で網膜の組織に送出するよう構成されるのが良い。
【0038】
幾つかの実施形態によれば、プロセッサは、更に、照準合わせビーム源からの照準合わせビームを網膜の所望の場所上に差し向けて標識に対して網膜上の所望の治療を施すよう構成されるのが良い。幾つかの実施形態によれば、走査装置、画像捕捉装置及び/又はプロセッサは、オフサルミック画像化器械に取り外し可能に結合可能であり且つ治療ビーム源に光学的に結合可能なアダプタ装置内に設けられるのが良い。
【0039】
幾つかの実施形態によれば、システムは、患者が受ける1回又は2回以上の治療を追跡するよう重ね合わされた標識と共に網膜画像を記憶するよう構成された記憶装置を更に含むのが良い。記憶装置は、更に、網膜画像上に重ね合わされる追加の治療処置を記憶するよう構成されるのが良い。追加の治療処置は、次の治療の際に患者に提供されるべき治療であるのが良い。幾つかの実施形態では、追加の治療処置を重ね合わせるステップは、網膜画像上に、治療処置が提供されるべき網膜組織の領域を画定するステップを含む。
【0040】
添付の図面と関連して本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A】オフサルミック画像化器械が境界が定められた治療処置を提供することができるようオフサルミック画像化器械に結合可能なアダプタの1つの斜視図である。
図1B】オフサルミック画像化器械が境界が定められた治療処置を提供することができるようオフサルミック画像化器械に結合可能なアダプタの別の斜視図である。
図1C】オフサルミック画像化器械が境界が定められた治療処置を提供することができるようオフサルミック画像化器械に結合可能なアダプタの別の斜視図である。
図1D】オフサルミック画像化器械が境界が定められた治療処置を提供することができるようオフサルミック画像化器械に結合可能なアダプタの別の斜視図である。
図1E】オフサルミック画像化器械が境界が定められた治療処置を提供することができるようオフサルミック画像化器械に結合可能なアダプタの別の斜視図である。
図1F】オフサルミック画像化器械が境界が定められた治療処置を提供することができるようオフサルミック画像化器械に結合可能なアダプタの別の斜視図である。
図1G】オフサルミック画像化器械が境界が定められた治療処置を提供することができるようオフサルミック画像化器械に結合可能なアダプタの別の斜視図である。
図2A】オフサルミック画像化器械に結合された図1A図1Gのアダプタの1つの図である。
図2B】オフサルミック画像化器械に結合された図1A図1Gのアダプタの別の図である。
図2C】オフサルミック画像化器械に結合された図1A図1Gのアダプタの別の図である。
図2D】オフサルミック画像化器械に結合された図1A図1Gのアダプタの別の図である。
図2E】オフサルミック画像化器械に結合された図1A図1Gのアダプタの別の図である。
図3】本発明の実施形態に従って治療処置を提供するシステムのブロック図である。
図4A図3のシステムに使用可能なディスプレイインターフェースのブロック図である。
図4B図3のシステムに使用可能なディスプレイインターフェースのブロック図である。
図4C図3のシステムに使用可能なディスプレイインターフェースのブロック図である。
図5A】境界が定められた治療処置に使用できる1つの治療境界及び/又は治療パターンを示す図である。
図5B】境界が定められた治療処置に使用できる別の治療境界及び/又は治療パターンを示す図である。
図5C】境界が定められた治療処置に使用できる別の治療境界及び/又は治療パターンを示す図である。
図5D】境界が定められた治療処置に使用できる別の治療境界及び/又は治療パターンを示す図である。
図5E】境界が定められた治療処置に使用できる別の治療境界及び/又は治療パターンを示す図である。
図5F】境界が定められた治療処置に使用できる別の治療境界及び/又は治療パターンを示す図である。
図6A図5Aの治療境界及び/又は治療パターン内に又はこれらに対して送出されているレーザ光を示す図である。
図6B図5Bの治療境界及び/又は治療パターン内に又はこれらに対して送出されているレーザ光を示す図である。
図6C図5Cの治療境界及び/又は治療パターン内に又はこれらに対して送出されているレーザ光を示す図である。
図6D図5Dの治療境界及び/又は治療パターン内に又はこれらに対して送出されているレーザ光を示す図である。
図6E図5Eの治療境界及び/又は治療パターン内に又はこれらに対して送出されているレーザ光を示す図である。
図6F図5Fの治療境界及び/又は治療パターン内に又はこれらに対して送出されているレーザ光を示す図である。
図7A】治療パターン内にレーザ光を順次送出するプロセスを示す図である。
図7B】治療パターン内にレーザ光を順次送出するプロセスを示す図である。
図7C】治療パターン内にレーザ光を順次送出するプロセスを示す図である。
図7D】治療パターン内にレーザ光を順次送出するプロセスを示す図である。
図7E】治療パターン内にレーザ光を順次送出するプロセスを示す図である。
図7F】治療パターン内にレーザ光を順次送出するプロセスを示す図である。
図8】患者の網膜の特徴部又は組織に隣接して配置された治療パターンを示す図である。
図9A】治療手技中、治療レーザの連続運動を補償するよう使用できる治療レーザの長円形又は楕円形断面輪郭を示す図である。
図9B】治療手技中、治療レーザの連続運動を補償するよう使用できる治療レーザの長円形又は楕円形断面輪郭を示す図である。
図9C】治療手技中、治療レーザの連続運動を補償するよう使用できる治療レーザの長円形又は楕円形断面輪郭を示す図である。
図10A】治療処置手技で使用できる網膜画像、輪郭形状又はマップを示す図である。
図10B】治療処置手技で使用できる網膜画像、輪郭形状又はマップを示す図である。
図10C】治療処置手技で使用できる網膜画像、輪郭形状又はマップを示す図である。
図11A】本発明の実施形態に従って視神経から放射状に延びる太い血管を有する網膜の種々の図である。
図11B】本発明の実施形態に従って視神経から放射状に延びる太い血管を有する網膜の種々の図である。
図12A】本発明の実施形態に従って部分画像がどこでトリミングされて網膜画像から取り出されているかの場所を示す網膜画像及びこの網膜画像上の長方形外形を示す図である。
図12B】本発明の実施形態に従ってトリミングされてそれぞれの網膜画像から取り出された7つの部分画像を示す図である。
図13】本発明の実施形態に従ってアルゴリズムにより存在場所が突き止められて網膜画像上に重ね合わされた7つの長方形スリット画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
添付の図において、類似のコンポーネント及び/又は特徴部は、同一の参照符号の表示を有する場合がある。さらに、同じ形式の種々のコンポーネントは、参照符号の表示に続いて位置し、類似のコンポーネント及び/又は特徴部を識別する文字によって識別される場合がある。第1の参照符号の表示が明細書中に用いられる場合、この説明は、接尾語としての文字とは無関係に同じ第1の参照符号を有する類似のコンポーネント及び/又は特徴部のうちの任意の1つに適用できる。
【0043】
以下の説明は、例示の実施形態に関するに過ぎず、本発明の範囲、利用性又は形態を制限するものではない。それどころか、例示の実施形態についての以下の説明は、1つ又は2つ以上の例示の実施形態の実施をする上で可能な程度の説明を当業者に与えるものである。理解されるべきこととして、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく要素の機能及び構成について種々の変更を行うことができる。
【0044】
本発明の実施形態は、患者の眼の網膜及び/又は他の野を治療するシステム及び方法を提供する。手技は、1本又は2本以上の光ビーム(例えば、レーザ)を用いて光凝固を引き起こして眼内血管を微細に焼灼すると共に/或いは血管成長を阻止して1つ又は2つ以上の治療上のメリットを生じさせる手技を含むのが良い。かかる手技を用いると糖尿病性網膜症、黄斑浮腫及び/又は眼の他の病態を治療することができる。幾つかの実施形態では、光凝固の結果として、網膜中に見える一連の可視スポットを生じさせることができる。他の実施形態では、一連の短い持続時間(例えば、5〜15マイクロ秒)の光パルスを、各パルス相互間に熱的弛緩時間を置いた状態で、網膜組織に送出して標的網膜組織の温度上昇を制限し、それにより熱的効果を網膜色素上皮層に限定するのが良い。イリデックスコーポレイションにより販売されているレーザー治療システム及び装置であるマイクロパルス(登録商標)のような短い持続時間のパルス治療以下、短持続時間パルス治療又は手技、という)の結果として、可視スポットが網膜上には見えない場合があり、全体的な組織損傷の度合いを小さくすることができる。
【0045】
網膜組織を治療すると共に/或いは凝固させるよう送出された治療光(即ち、レーザ光)を繰り返し並ぶ幾何学的形状のパターンを含むのが良い定められた治療境界内に治療レベルで送出するのが良い。治療境界は、治療光を治療レベルで差し向ける野を画定することができ、この野の外側には、治療光が実質的に差し向けられることはなく又は反射光、入射光等の場合、部分治療レベルで提供される。かくして、治療境界は、治療処置が提供される野を画定することができ、そしてこの野の外側には、治療処置が提供されず又は提供されても最小限に抑えられる。治療境界及び/又はパターンを患者の眼の網膜表面上に投射すると共に/或いは定めて治療されるべき野を表示することができる。治療境界が治療処置を受け入れることがなく又は受け入れても最小限に抑えられる網膜の野を定め又は識別することができるので、治療境界の周縁を網膜の敏感な組織に隣接して且つ/或いは治療処置が望ましくない任意の場所に位置決めすることができ、それにより、敏感な組織又は野が治療処置を受けることがなく又は受けても最小限であるようにすることができる。実現されるべきこととして、治療光の中には反射、光散乱等に起因して治療境界の外側に位置する組織に入射する場合があるが、かかる光は、最小限に抑えられており、治療境界の外側に位置する組織に与える影響が最小限に抑えられる見込みである。かくして、本発明の実施形態は、治療処置を受ける網膜の野及び治療を受けない野を決定するための正確な制御をもたらす。
【0046】
治療境界の周縁は、治療境界の残部と一緒に、ユーザインターフェース、マップ又は網膜の画像上に且つ/或いは網膜それ自体の上に定められると共に表示され、その結果、治療処置を施し医師又はユーザは、治療野の外側境界を知るようになる。治療野の外側境界が表示されるので、医師は、治療野を敏感な組織及び/或いは任意他の野の近くに密接して当て又は配置することができる一方で、敏感な組織又は他の野が治療の影響を受けず又は治療の影響を受けても最小限であるようにする。
【0047】
幾つかの実施形態では、治療パターンは、包囲された境界又はパターンに代えて又はこれに加えて照準合わせスポットのアレイを含む。照準合わせスポットのアレイは、本明細書において説明するように患者の網膜上に定められるのが良く、治療ビームは、照準合わせスポットのうちの1つ又は2つ以上に関して同軸に発火され又は送出されるのが良い。
【0048】
治療境界及び/又は治療パターンは、1本又は2本以上の照準合わせビームを用いて網膜表面上に定められると共に/或いは投射されるのが良い。照準合わせビームは、レーザビーム又は任意他の形式の光ビーム(例えば、高出力発光ダイオード(LED)に生じるビーム)であるのが良い。照準合わせビームは、一般に、本明細書においては照準合わせレーザと呼ばれる場合がある。ただし、レーザ以外の光ビームを用いることができるということが認識されるべきである。照準合わせビームは、網膜組織を損傷させない低強度レーザ光ビームであるのが良い。幾つかの実施形態では、照準合わせビームは、約600nm(ナノメートル)〜約700nmの波長を有し、より一般的には、約650nmの波長を有する。照準合わせビームは、レーザダイオードによって得られるのが良く、かかる照準合わせビームは、網膜組織を治療するために用いられる治療レーザの入射スポットよりも実質的に小さい網膜組織上の入射スポット又は断面を有するのが良い。変形例として、幾つかの実施形態では、照準合わせビームは、照準合わせレーザに代えて又はこれに加えて高出力発光ダイオード(LED)によって提供されても良い。照準合わせビームを患者の網膜上で又は表示インターフェース若しくは網膜の画像上で走査して治療境界及び/又は治療パターンをトレースし又はその外形を描き、それにより治療境界及び/又はパターンを医師に視覚的に表示するのが良い。網膜表面上に定められ又は投射された治療境界及び/又はパターンをカメラによって捕捉してディスプレイインターフェース上で医師又は他のユーザに表示するのが良い。
【0049】
1つ又は2つ以上の治療ビームパルス又は投与量を治療境界及び/又はパターン内に送出して網膜組織を治療するのが良い。治療ビームは、一般に、本明細書においては、治療レーザと呼ばれる場合がある。ただし、照準合わせビームと同様、他の光ビーム、例えば高出力発光ダイオード(LED)からの高強度光ビームを用いても良いことが認識されるべきである。治療パルス又は投与量を走査装置が治療境界内の治療ビームの軸線を連続的に走査しているときに送り出すのが良く且つ/或いは走査装置が治療境界内の指定された場所相互間で治療ビーム軸線を順次動かしているときに送出するのが良い。繰り返し並んでいる幾何学的形状を有する治療パターンを含む実施形態では、1つ又は2つ以上の治療ビームパルスを幾何学的形状のうちの幾つか又は各々内に送出するのが良い。特定の実施形態では、単一の治療ビームパルスを実質的に幾何学的形状の各々の幾何学的中心に送出するのが良い。入射ビーム光(例えば、レーザビームスポット)の断面は、幾何学的形状に関してサイズがほぼ同じであるのが良い。幾つかの実施形態では、治療ビーム(例えば、レーザビーム)は、約400nm〜600nm、より一般的には約520nm〜560nmの波長を有するのが良い。
【0050】
治療処置(本明細書においては、境界画定治療処置とも呼ばれる)は、既存のオフサルミック画像化器械、例えばスリットランプに取り付けられてこれと共に動作するよう構成されたアダプタを介して提供されるのが良い。アダプタは又、既存の治療ビーム源、例えばレーザ送出器械と共に動作するのが良い。外部コントローラ又はコンピュータシステムをアダプタ及びレーザ送出器械に通信可能に結合して網膜組織上に治療境界及び/又はパターンを定めて治療ビームを治療境界/パターン内に送出するのが良い。アダプタ及び/又はコントローラにより、既存のスリットランプ及びレーザ送出器械は、本明細書において説明する境界画定治療処置を提供することができ、もしそうでなければ、スリットランプ及びレーザ送出器械は、送出を行うことができない。
【0051】
本発明の実施形態は又、本明細書において説明する治療処置(例えば、境界画定治療処置)又は別の治療処置を提供するために網膜画像化及び/又は追跡を利用する方法及び装置を提供する。治療処置及び/又は治療境界をプログラムすると共に/或いは患者の網膜の網膜画像又はモデルを参照して記録に残すことができる。治療処置を実施するシステムは、網膜画像又はモデル及びプログラムされた治療処置又は治療境界を参照して患者の網膜の存在場所又は野を決定して治療処置を提供することができる。次に、このシステムは、治療処置を自動的に開始し又は治療境界/パターン及び対応の網膜治療野を医師に表示して綿密な調査、調節及び/又は認可が得られるようにすることができる。複数回のかかる治療処置をシステム中にプログラムするのが良く、その結果、このシステムは、現在の又は先の治療の完了直後に追加の治療処置の実施を迅速且つ好都合に開始することができるようになる。提供される治療を医師又はユーザによる同時又は次の再検討のために記録に残し又は網膜画像上に記録することができる。例えば、治療スポット又は他の標識を治療ビームのパルス又は投与量が受け取られる各場所又は位置について網膜画像上に重ね合わせるのが良い。重ね合わされたスポット又は標識は、治療処置が提供された網膜の野を記録に残すことができる。これは、例えば短持続時間パルス手技において、治療処置の目に見えない効果が網膜組織上に存在する場合に特に有用であると言える。
【0052】
また、治療処置及び/又は治療境界手技を網膜画像又はモデルに対して参照することにより、システムは、手技中における患者の眼の運動(眼球運動)を補償することができる。例えば、網膜追跡により、カメラは、網膜の実質的に滑らかな画像を捕捉することができると共に/或いはシステムは、患者の眼の運動に合わせて調節を行い、そして引き続き治療処置を実質的に同一の場所に送出することができる。本発明の幾つかの実施形態を概略的に説明したが、図を参照すると、追加の観点が明らかになろう。
【0053】
治療処置ハードウェア及びコンポーネントの実施形態
【0054】
図1A図1Gは、アダプタの実施形態の斜視図であり、このアダプタは、オフサルミック画像化器械、例えばスリットランプと結合されて、本明細書において説明する境界が定められた(境界画定)治療処置を提供するようオフサルミック画像化器械を適合させることができる。図2A図2Eは、スリットランプ200に結合されたアダプタ100を示している。図1A図1Cは、アダプタ100の種々の斜視図である。図1D図1Gも又、アダプタ100内に収容された種々のコンポーネントを示すためにアダプタの前側カバーが取り外された状態のアダプタ100の斜視図である。アダプタ100は、互いに結合された前側カバー及び後側カバーを備えたハウジング102を有する。アダプタ100は、アダプタ100をオフサルミック画像化器械(例えば、スリットランプ200)に解除可能に結合する取り付け部材104を更に有する。アダプタ100は、アダプタ100をオフサルミック画像化器械200に結合するのを容易にする適合コンポーネント105を更に有する。コンポーネント105は、取り付け部材104をオフサルミック画像化器械の取り付け特徴部(図示せず)にしっかりと圧接する回転可能な取り付けノブ103を含むのが良い。コンポーネント105は、アダプタ100から送出された光を反射して患者の眼の方へ向けると共に幾分かの光をカメラ(例えば、カメラ360)に送り戻すよう透明であり又は半透明であるのが良い鏡106及び/又は双眼鏡(例えば、双眼鏡210)又は他の接眼レンズに結合する双眼鏡アダプタ152を更に含む。コンポーネント105は、アダプタ100及び/又はオフサルミック画像化器械200の回転調節を可能にするアジャスターバー135を更に含むのが良い。
【0055】
アダプタ100は、外部レーザ送出器械(例えば、レーザ送出器械310)の光ファイバケーブルに結合するインターフェース又はポート110を更に有する。外部レーザ送出器械の光ファイバケーブルは、治療レーザ112をアダプタ100に提供し又は送出する。アダプタ100は、治療レーザ112を反射して照準合わせ装置130(本明細書において、走査型装置又はシステムとも呼ばれる)の方へ差し向ける鏡136を有する。鏡136は、有孔鏡、半透鏡(ハーフミラー)、ダイクロイックミラー等であるのが良く、かかる鏡は、レンズホルダに取り付けられるのが良い。照準合わせ装置130は、ケンブリッジ・テクノロジー(Cambridge Technology(登録商標))により製造されているガルバノメータ利用スキャナ(「ガルボス(galvos)」と通称されている)であるのが良い。照準合わせ装置130は、モータの上に取り付けられた1対の回転可能な要素又は鏡132,134を有し、モータは、これら要素又は鏡132,134を直交軸線回りに回転させる。各鏡132,134は、1‐Dビーム偏向をもたらすことができ、その結果、1対の鏡が2‐Dビーム偏向をもたらすようになる。照準合わせ装置130は、眼に対して治療レーザ112及び/又は他のレーザ(例えば、照準合わせレーザ122)を走査するよう用いられ、その結果、レーザを眼の上の所望の場所又は眼内に照準合わせして発火することができる。例えば、照準合わせ装置130は、照準合わせレーザ122を走査して網膜組織上に治療境界及び/又は治療パターンを定めると共に治療境界/パターン内に治療レーザ112のビームを走査して境界画定治療処置を施すようになっているのが良い。
【0056】
照準合わせレーザ122は、鏡136を通って照準合わせ装置130に至る。幾つかの実施形態では、アダプタ100は、外部レーザ送出器械又は源(図示せず)からの照準合わせレーザ122を受け取る別のインターフェース又はポート(図示せず)を有するのが良く、この外部レーザ送出器械又は源は、治療レーザ112を送出するのと同一のレーザ送出器械であっても良く、或いはこれとは異なるユニットであっても良い。他の実施形態では、アダプタ100は、ハウジング102内に設けられたレーザ送出器械又は源120を有する。例えば、レーザ送出器械120は、レーザダイオード124を有するのが良く、或いは変形例として、照準合わせレーザ122を提供する高出力LEDであっても良い。レーザ送出器械120は、照準合わせレーザ122の送出を制御するよう外部コントローラ(例えばコントローラ330及び/又は310)と通信可能に結合するコンピュータ処理装置126、例えば記憶装置及び/又はプロセッサを更に有するのが良い。
【0057】
一実施形態では、照準合わせレーザ122は、治療レーザ112のレーザ経路と実質的に直交したレーザ経路に沿って提供されるのが良い。しかしながら、照準合わせレーザ122及び治療レーザ112のレーザ経路は、照準合わせレーザ122が鏡136を通過した後は互いに整列し又は実質的に同軸であるのが良い。例えば、レーザ経路128は、照準合わせ装置130から送出されて鏡106で反射されて患者の眼に差し向けられているレーザの経路を示している。レーザ経路128は、照準合わせレーザ122と治療レーザ112のうちのいずれか一方又は両方に対応しているのが良く、というのは、この時点において、レーザ経路は、同軸に整列している場合があるからである。
【0058】
照準合わせレーザ122は、網膜上の治療境界及び/又はパターンの視認性を向上させるよう可視スペクトル内で選択された波長を有するのが良い。例えば、幾つかの実施形態では、照準合わせレーザ122は、約600nm〜約700nmの波長を有し、より一般的には約650nmの波長を有する。照準合わせレーザ122は、眼の網膜及び/又は他の組織を損傷させない低強度ビームであるのが良い。照準合わせレーザ122は又、治療レーザ112の入射スポットよりも実質的に小さい入射スポット又は断面を有するのが良い。幾つかの実施形態では、治療レーザ112は、可視スペクトル内で選択された波長を更に有するのが良い。ただし、非可視波長も又使用できる。特定の実施形態では、治療レーザ112は、約400nm〜600nm、より一般的には約520nm〜560nmの波長を有する。治療レーザ112は、眼の網膜及び/又は他の組織を凝固させると共に/或いは他の治療による治癒をもたらすよう使用可能である。
【0059】
アダプタ100は、治療レーザ112及び/又は照準合わせレーザ122の断面又は入射スポットを増大させるよう使用できる拡大機構体140を更に有する。拡大機構体140は、照準合わせ装置130の遠位側でレーザ経路(例えば、レーザ経路128)に沿って配置されている。拡大機構体140は、回転可能なレンズホルダ144に取り付けられた複数個のレンズ142を含む。各レンズは、治療レーザ112及び/又は照準合わせレーザ122の断面又は入射スポットを増減する指定された光パワーを有する。レンズホルダ144を回転させて所望のレンズがレーザ経路128に沿って配置されるようにすることができる。幾つかの実施形態では、レンズホルダ144は、ハウジング102の外面上に設けられた操作ノブ146を回すことによっても回される。ただし、幾つかの実施形態では、レンズホルダ144を電子的に回転させることができる。
【0060】
図2A図2Eは、スリットランプ200と共に設けられたアダプタ100の種々の斜視図であり、このスリットランプ200は、通常用いられるスリットランプであればどのようなものであっても良く、例えば、ハーグストライト・インターナショナル(Haag-Streit International(登録商標))、カール・ツワイス(Carl Zeiss(登録商標))等によって製造されたスリットランプであって良い。スリットランプ200は、患者の眼の立体視をもたらす双眼鏡210を有する。双眼鏡210は、双眼鏡アダプタ152に結合されるのが良い。スリットランプ200は、垂直フレーム部材222、顎のせ224及び頭支え226を備えた患者のせフレーム220を更に有する。図示されていないが、スリットランプ200は、種々のスリットランプのコンポーネント及び/又は操作の機能的制御をもたらすと共に/或いは治療処置ビームを送出するために使用できるジョイスティック及びフットペダルを更に有するのが良い。スリットランプ200及び/又は顎のせ224は、種々の体格の患者に適合するよう垂直方向に調節可能である。
【0061】
図3は、本明細書において説明する治療処置を提供するために使用できる種々の制御部の実施形態を示している。具体的に説明すると、図3は、光ファイバ324を介して外部レーザ送出器械310に結合されたアダプタ100を示している。光ファイバ324は、ポート110に結合して治療レーザ112をアダプタ100に送出する。光ファイバ324は、レーザ送出器械又は源310に設けられた複数個の光ファイバポート322のうちの1つに結合されるのが良い。光ファイバポート322により、2本の光ファイバ324をレーザ送出器械310に接続することができる。レーザ送出器械310は、図4A図4Cに示されているように提供されるべき治療処置のための設定値及び制御値を表示するディスプレイインターフェース320(例えば、タッチスクリーンインターフェース)を更に有する。レーザ送出器械310は、ユーザがレーザ送出器械の種々の設定値を遠隔操作して調節することができるようにするリモートコントロールユニット326(ワイヤレス又はワイヤード)を更に有するのが良い。同様に、レーザ送出器械310は、治療処置を行うと共に/或いは治療レーザ112を送出するよう操作されるフットペダル340を有するのが良い。フットペダル340は、レーザ送出器械310にワイヤレス結合されるのが良い。レーザ送出器械310の例としては、IRIDEXコーポレーション(IRIDEX Corp(登録商標))により製造されるIQ532、IQ577、Oculight TX等が挙げられる。
【0062】
レーザ送出器械310は、境界画定治療処置をその従来状態では提供することができない従来型ユニットであっても良い。レーザ送出器械310がこの治療又は治療を提供することができるようにするためには、コンピュータシステム330をレーザ送出器械310及び/又はアダプタ100と通信可能に結合するのが良い。コンピュータシステム330は、レーザ送出器械310と通信するようレーザ送出器械310の1つ又は2つ以上のポートにプラグ接続する別個のセットトップボックスであるのが良い。加うるに、コンピュータシステム330は、コンピュータシステム330が治療処置を行うよう種々の他のシステム又はユニットとインターフェースすることができるようにする1つ又は2つ以上のプロセッサ及び記憶装置を含むのが良い。情報をコンピュータシステム330とレーザ送出器械310のコンピュータシステム又はプロセッサとの間で情報を送ることができ、その結果、コンピュータシステム330は、ディスプレイインターフェース320を介するユーザへの治療レーザ112及び図形表示情報の送出を制御するようになっている。例えば、コンピュータシステム330は、レーザ送出器械310の制御部(例えば、タッチスクリーン制御部、リモートコントロール326、フットペダル340等)とインターフェースすることができ、その結果、レーザ送出器械310の制御部の調節によりコンピュータシステム330の設定値及びパラメータを構成し又は調節するようになっている。図4A図4Cに示されているように、コンピュータシステム330は、境界治療処置の種々の設定値及び/又は操作、例えば投射されている特定の治療境界/パターンの形状、向き、規模、幾何学的パターン、レーザ強度等を表示するようディスプレイインターフェース320を制御するのが良い。コンピュータシステム330は、治療レーザ112の投与量を指定された箇所に且つ指定された時刻に送出するようレーザ送出器械310を(1つ又は2つ以上の命令により)制御するのが良い。例えば、コンピュータシステム330は、治療レーザ112のビーム又は投与量を以下に説明するように規定された治療境界、治療パターン及び/又は規定された幾何学的形状の範囲内に送出するようレーザ送出器械310を制御するのが良い。同様に、コンピュータシステム330は、送出された治療レーザ112が眼の網膜組織を凝固させ又は以下に説明するようにパルス相互間に指定された弛緩間隔を置いた状態で外傷性の低い一連の短い持続時間のパルス(例えば、短持続時間パルス治療)を提供するようレーザ送出器械310を制御するのが良い。
【0063】
本質的には、コンピュータシステム330は、レーザ送出器械310と通信可能に結合されるのが良く、その結果、レーザ送出器械310は、医師又はユーザがコンピュータシステム330とインターフェースすると共に治療処置の種々のパラメータを調節することができるようにするコンピュータシステム330のためのパススルー入力及びインターフェース装置として機能するようになる。コンピュータシステム330は又、治療レーザ112をアダプタ100に送出するようレーザ送出器械310の既存の制御部(例えば、フットペダル340、内部ハードウェアコンポーネント等)と共に機能する。
【0064】
コンピュータシステム330は又、種々の照準合わせ又は他の機能を実施するようアダプタ100に通信可能に結合される。例えば、コンピュータシステム330は、治療レーザ112及び照準合わせレーザ122を網膜の指定された野に照準合わせし又は走査するよう照準合わせ又は走査装置130及び/又はレーザ送出器械120を制御するのが良い。コンピュータシステム330は、治療処置手技中、治療レーザ112及び照準合わせレーザ122をインターリーブするのが良い。コンピュータ処理装置330は、照準合わせレーザ122の送出を制御すると共に治療境界又は治療パターンを網膜上に定め又は投射するよう走査装置130を制御する。
【0065】
幾つかの実施形態では、制御ユニット330は、治療レーザ112が治療境界を画定するようオフに切り替えられている間、照準合わせレーザ122をオンに切り替える。次に、制御ユニット330は、照準合わせレーザ122をオフに切り替え、その間、治療レーザ112は、治療境界内で標的組織に発火される。治療レーザ112のその後の発火相互間で、制御ユニット330は、照準合わせレーザ122をオンに切り替えて治療境界又はパターンを再び定め又はこれを網膜上に投射するのが良い。図7A図7Fに示されているように、結果的に得られる観察者への視覚的効果は、治療境界又はパターンのほぼ連続した外観であるのが良く、他方、治療レーザからの治療スポットは、次に、発火され、治療境界又はパターン内の標的組織上で観察される。幾つかの実施形態では、例えば、短持続時間パルスの送出において、照準合わせ装置130は、連続的に走査されるのが良く、その間、治療レーザ112は、治療境界内に発火される。
【0066】
別々のユニットとして示されているが、幾つかの実施形態では、レーザ送出器械310とコンピュータシステム330は、単一ユニットの状態に組み合わされて実質的に全ての制御及び操作が単一ユニットから提供されるようになっている。さらに、以下に詳細に説明するように、コンピュータシステム330は、以下に説明する網膜画像化及び追跡特徴を提供すると共に治療境界及び/又はパターンをディスプレイ装置上に、例えばディスプレイインターフェース320上に表示するようカメラ360(例えば、CCDカメラ等)に結合されるのが良い。
【0067】
コンピュータシステム330は、ハードウェア及び/又はソフトウェアを含むのが良く、かかるハードウェア及び/又はソフトウェアとしては、本明細書において説明する方法のうちの幾つか、全て又は1つ又は2つ以上を実施するための機械可読プログラム命令又はコードを実行する1つ又は2つ以上のプログラム可能プロセッサユニットが挙げられる場合が多い。コードは、手に触れることができる媒体、例えばメモリ(オプションとして、読み取り専用記憶装置、読み取り書き込み記憶装置、非揮発性メモリ等)及び/又は記録媒体(例えば、フロッピディスク、ハードドライブ、CD、DVD、メモリスティック等)の状態に具体化される場合が多いであろう。
【0068】
図4A図4Cは、ディスプレイインターフェース320上に表示できる種々のディスプレイを示している。ディスプレイ410は、9つの治療野又は場所の正方形格子を含む治療パターン406を表示した状態で示されており、この正方形格子内に、治療光が治療レーザ112を介して網膜組織上に送出される。格子は、格子が治療ボックス又は場所の3×3アレイ、治療場所の4×4アレイ、治療場所の5×5アレイ又は治療場所のユーザにより定められたアレイを含むよう制御部404を用いて調節可能である。ディスプレイ410は、種々の設定値、制御値及び/又はパラメータを設定し又は調節するために使用できる制御部402A〜402Cを更に有する。例えば、制御部402Aは、治療場所の各々内に送出される治療スポットの中心相互間の間隔を制御し又は換言すると治療パターンの規模を定めるために用いられるのが良い。制御部402Bは、網膜に対する治療場所のアレイの向きを制御するために用いられるのが良い。制御部402Cは、所望ならばアレイの円弧角及び/又は曲率半径を制御するために使用されるのが良い。図4Aは、円弧角又は曲率半径のない治療パターン406を示している。図4Cは、治療スポットの3つの行及び6つの列を含む弓形又は湾曲した治療パターン436を有するディスプレイ430を示している。治療パターン436は、治療パターン436を湾曲させるよう非ゼロである円弧角(例えば、360°)及び曲率半径(例えば、2000マイクロメートル)を有する。ディスプレイ430は、同様に、操作ボタン432A〜432C及び434を有する。図4Bは、治療レーザ112の及び/又は照準合わせレーザ122の種々のパラメータを調節し又は設定するために使用できるディスプレイ420を示している。例えば、ディスプレイ420の制御部(タッチスクリーン制御部を含むのが良い)は、治療レーザ112の発火持続時間422(例えば、マイクロ秒間隔で表される)を調節し、治療レーザ112の出力レベル424(例えば、マイクロワットで表される)を調節すると共に次の治療レーザ発火相互間の間隔426(例えば、マイクロ秒で表される)を調節するために使用されるのが良い。
【0069】
ディスプレイ420は、伝統的な光凝固手技と短持続時間パルス手技との間の治療レーザ112を調節するために使用できる。ディスプレイ420は、他の制御部428、例えば光ファイバ324が接続するポート(例えば、322)を選択する制御部を更に有するのが良い。上述したように、ディスプレイ320の制御部は、タッチスクリーン制御部であるのが良く又は回転可能又は選択可能なタブ又はボタンを含んでも良い。
【0070】
治療境界及び/又はパターンの実施形態
【0071】
図5A図5Fは、本明細書において説明する治療処置に使用できる治療境界及び/又はパターンの種々の実施形態を示している。これら治療境界/パターンを照準合わせ又は走査レーザ122により患者の網膜上に投射し又は画定するのが良い。投射され又は画定された境界又はパターンをカメラで捕捉してユーザ又は医師にディスプレイ装置、例えばディスプレイインターフェース320上に表示するのが良い。治療境界/パターンは、治療処置が提供される野を定め、この野の外側には治療処置が提供されない。本明細書において説明する治療境界プロセスの一利点は、治療野の境界が明確に定められ、それにより医師又はユーザが治療処置が提供される場所及び提供されない場所を正確に知り又は確認することができるということにある。
【0072】
図5Aは、単一の治療野512を包囲した正方形又は長方形の治療境界510を示しており、1つ又は2つ以上の治療レーザパルス又は投与量をこの単一の治療野内で発火することができる。図5Bは、複数個のサイズの等しい治療正方形又は長方形522の格子又はアレイを含む治療パターン520を示している。治療パターン520は、周縁524及び内部線526によって画定されている。図5Bは、3×3アレイを示しているが、M×Nアレイを用いることができる。図5Cは、複数個の4辺付き幾何学的形状532のアレイを含む弓形又は湾曲治療パターン530を示している。各形状532は、互いに反対側の直線の辺536及び互いに反対側の弧状の辺534を有する。治療パターン530は、曲率半径を有するのが良く、直線状の互いに反対側の辺536は、各々、中点から放射状に突き出るのが良い。図5Dは、ハニカムパターンに配列された複数個の六角形の形状542を有する治療パターン540を示している。図5Eは、治療レーザパルス又は投与量が送出される場所を定める照準合わせスポット552の正方形又は長方形アレイを有する治療パターン550を示している。図5Fは、治療レーザパルス又は投与量が送出される場所を定める照準合わせスポット562の半円形アレイを有する治療パターン560を示している。
【0073】
走査又は照準合わせ装置により照準合わせレーザ(例えば、照準合わせレーザ122)の位置を制御することによって治療境界、パターン及び/又は幾何学的形状を網膜上に投射し又は画定するのが良く、その結果、照準合わせレーザは、網膜組織上に治療境界、パターン及び/又は幾何学的形状の外形を描き又は画定すると共に/或いはディスプレイ装置又はインターフェース上に治療パターンを表示するようになる。照準合わせレーザの位置を複数個のパルスの各々相互間で調節して網膜上に治療境界、パターン及び/又は幾何学的形状を画定し又はこれらの外形を描くのが良い。結果的に得られる視覚的効果は、図5A図5Dに示されているように網膜上に画定される中実、半中実又はパルス状治療境界、パターン及び/又は幾何学的形状であるのが良い。
【0074】
認識されるべきこととして、図5A図5Dは、説明目的のためにのみ与えられており、治療境界/パターンは、繰り返しパターンを含む場合があり又はこれらを含まない場合のある幾何学的形状の種々の他のアレイを含む場合がある。
【0075】
図6A図6Fは、治療境界又はパターン内に発火され又は送出され或いはこれらと同軸に送出されている治療レーザを表す治療スポットを示している。治療スポットは、例えば伝統的な光凝固手技において治療レーザを発火したときに生じる目に見える組織の損傷を表していると言え又は例えば短持続時間パルス手技において組織損傷は例え目に見えない場合であっても治療レーザを発火した場所を表していると言える。図6Aは、複数個の治療スポット612を示し、これら治療スポットは、治療レーザ(例えば、治療レーザ112)を発火した又は発火すべき治療境界510内の場所を表している。同様に、図6Bは、治療パターン520の各治療正方形又は長方形522内で発火されている治療スポット622を示している。図6Cは、実質的に治療パターン530の各幾何学的形状532の中心内で発火されている治療スポット632を示し、図6Dは、治療パターン540の各六角形の形状542の実質的中心内で発火されている治療スポット642を示している。図6Cは、弧状治療処置が提供される実施形態を示し、図6Dは、治療スポットがより緊密に又は密接して配置された実施形態を示している。図6Dの治療スポットは、隣り合う行及び/又は列の状態で治療スポットとオーバーラップするのが良い。図6E及び図6Fは、それぞれ治療パターン550,560の照準合わせスポット552,562に対して実質的に同軸に送出されている治療スポット652,662を示している。別の実施形態では、大きな円652,662は、画定された治療パターンを表していると言え、これよりも小さいスポット552,562は、各治療パターンの実質的中心内に発火され又は送出された治療レーザを表していると言える。幾つかの実施形態は、画定された治療パターン又は境界が互いに触れ合う隣接の幾何学的形状を有する必要はないことを示している。これとは異なり、幾何学的形状のうちの幾つか又は全ては、1つ又は2つ以上の隣接の幾何学的形状から隔離されるのが良い。
【0076】
図6B図6Dは、幾何学的形状の各々内に送出されている単一の治療スポットを示しているが、幾つかの実施形態では、多数の(例えば、2つ、3つ、4つ又は5つ以上)のスポットを幾何学的形状のうちの1つ又は2つ以上内に送出しても良い。同様に、各幾何学的形状内に送出される治療スポットの数は、追加の治療処置の融通性をもたらすよう様々であって良い。
【0077】
図8は、治療処置が望まれない網膜の組織820に隣接して配置された治療パターン又は境界810を示している。治療パターン810は、組織820が治療パターン又は境界の外側に位置するよう組織820に隣接して配置されている。組織820は、敏感な組織、眼の特徴部(例えば、眼窩、黄斑等)及び/又は治療処置が望まれない任意他の組織であるのが良い。上述したように、治療パターン810は、医師又はユーザが治療パターン810の外縁又は周囲を組織820に隣接して位置決めすることができるよう網膜上に投射され又は画定されるのが良い。網膜上への治療パターン810の投射又は画定により、医師又はユーザは、組織820が治療されないようにした状態で所望に応じて組織820の近くに又はこれから離れて治療パターンを配置することができる。また、図8に示されているように、治療処置(即ち、治療スポット830)は、組織820が治療処置を受けることがないようにするために治療パターン810内に閉じ込められている。治療パターン810の形状及び/又は治療パターン810のパラメータ(例えば、間隔、半径、行又は列の数等)を変更すると、眼の種々の特徴に合わせることができる。例えば、図5Cの半円形パターンを用いると、組織820の一部分又は窩を包囲することができる。同様に、図5Dのハニカムパターンを用いると、治療スポットを治療野内に密に詰め込むことができる。
【0078】
治療処置手技の実施形態
【0079】
幾つかの実施形態では、治療レーザを、実質的に図6B図6Dに示されているように幾何学的形状の各々の幾何学的中心内で発火するのが良い。網膜に入射する治療レーザの治療スポットサイズは、幾何学的形状とサイズが実質的に同じであっても良く又はこれよりも僅かに小さくても良い。さらに、上述したように、照準合わせレーザを治療レーザの発火中、オフに切り替えるのが良く、治療レーザを照準合わせビームが治療境界又はパターンを画定し又はその外形を描いているときにオフに切り替えられるのが良い。
【0080】
治療処置パルス又は投与量(例えば、図6A図6Dに示されたスポット)は、治療境界又はパターンを介して治療レーザビーム(又はより適切には治療レーザビームの軸線)の連続走査中送出されるのが良く、或いは、治療レーザビームは、次に各標的部位まで移動されるのが良く、そして治療レーザを一時的に停止させている間に治療レーザを発火させるのが良い。連続走査手順は、治療レーザと関連した開始及び停止時間を最小限に抑え、それにより手技時間全体を最小限に抑えるようマイクロパルス手技にとって特に有用であると言える。治療レーザビーム(即ち、治療レーザの軸線)は、治療境界/パターンを介して行ごとに且つ/或いは列ごとに連続的に走査されるのが良く(例えば、ラスタ走査パターンと同様)、ついには、治療レーザビームは、指定された端点に達すると共に/或いは治療境界又はパターン全体を走査するようになる。治療レーザを治療レーザが各指定された標的部位に近づいているときに連続走査中、規定された期間の間、順次又は繰り返し発火されるのが良い。治療レーザビームを走査及び連続走査の開始点のところに再位置決めするのが良く、そして発火プロセスを繰り返し実施して追加の治療処置が先に治療された網膜組織のうちの幾つか又は全てに提供されるようにするのが良い(例えば、追加の治療処置は、幾つかの又は各標的部位のところに提供される)。別の実施形態では、治療レーザを各治療場所のところで停止させ又は一時停止させ、そして治療レーザを治療場所で繰り返し発火させるのが良く、ついには、十分な治療が提供される。
【0081】
短持続時間パルス手技では、同じ標的部位のところでの治療処置パルス又は投与量相互間の間隔は、治療中の網膜組織が十分に弛緩し、組織の温度が凝固による損傷のしきい値を下回ったままであるように十分に長いのが良く、それにより組織損傷を最小限に抑える。短持続時間パルス手順の熱的効果は、網膜色素上皮層だけに限局されるのが良い。幾つかの実施形態では、この弛緩間隔又は熱弛緩時間の遅延は、約190マイクロ秒以上であるのが良い。同様に、幾つかの実施形態では、治療レーザの発火持続時間(即ち、治療パルス又は投与持続時間)は、約5〜15マイクロ秒であり、より一般的には約10マイクロ秒である。
【0082】
各走査及び発火プロセス(即ち、規定された開始点と終了点との間)は、短持続時間パルス手技のサイクルを構成すると言える。短持続時間パルス手技は、約10〜10,000サイクルを含む場合がある。幾つかの実施形態では、治療レーザは、走査の各サイクル中、9個又は10個以上の治療部位で発火され、各短持続時間パルスサイクルは、約0.5〜1.5ミリ秒、より一般的には約1ミリ秒で完了する。ただし、認識されるべきこととして、治療レーザを任意数の治療部位で発火しても良く、各サイクルは、これよりも短い又は長いサイクル持続時間を有することができる。さらに、治療境界/パターンが所与の場合の治療処置手技は、単一の連続走査又は各々が互いに異なる開始点及び終了点を有する数個の連続走査を含む場合がある。
【0083】
変形実施形態では、治療レーザは、順次、各標的部位のところに配置されるのが良く、一連の短持続時間パルスは、次の治療部位への移動前にその標的部位に送出されるのが良い。各パルスは、指定された持続時間(例えば、約5〜15マイクロ秒、より一般的には約10マイクロ秒)の間発火されるのが良く、各パルスは、標的部位のところの網膜組織が十分に弛緩し、組織の温度が凝固温度を下回ったままであるほど十分に長い弛緩間隔(例えば、約190ミリ秒以上)を有するのが良く、それにより組織の損傷を最小限に抑える。短い持続時間のパルスは、短持続時間パルス手技で一般的に知られているように治療による治癒の光活性化を引き起こし又は提供するのに十分であると言える。前者の短持続時間パルス実施形態は、治療レーザを弛緩間隔中、他の治療部位のところに発火することができ、それにより全体的治療時間を最小限に抑えるという利点をもたらす。
【0084】
また、短持続時間パルス手技では、治療レーザビーム(即ち、治療レーザの軸線)が隣り合う治療スポット相互間の所定の間隔を提供するよう各レーザパルス又は投与相互間の指定された時間間隔で連続的に走査しているときに一連のパルスを送出するのが良い。かかる手技は、例えば図5B図5Dに示された幾何学的形状のアレイを有する治療パターンが用いられると共に/或いは例えば図5E及び図5Fに示された照準合わせスポットのアレイが用いられる場合に有益であると言える。指定された時間間隔及びその結果として得られる間隔は、各パルスが幾何学的形状のうちの1つの中に、実質的に各形状の幾何学的中心内に且つ/或いは照準合わせスポットのうちの1つ又は2つ以上にわたって送出されるようなものであるのが良い。
【0085】
治療処置手技では、治療処置を網膜の1つの野に送り出し、次いで、治療処置を網膜の1つ又は2つ以上の野に送出するのが良い。例えば、照準合わせ装置(例えば、照準合わせ装置130)は、網膜の第1の野上に第1の治療境界又はパターンを画定し、治療処置を画定した第1の治療境界又はパターン内に送出し、その後に網膜の第2の野上に第2の治療境界又はパターン(即ち、同一の境界/パターン又は異なる境界/パターンのうちのいずれか)を画定し、そして治療処置を規定された第2の治療境界又はパターン内に送出するのが良い。このプロセスは、治療処置を提供するよう所望に応じて多くの回数にわたって繰り返されるのが良い。
【0086】
図9Aは、連続走査プロセス中に治療レーザの発火に起因して生じた細長い治療スポット900を示している。図9Aに対応した治療レーザの治療スポットは、実質的に円形の断面を有するのが良い。細長いスポットは、治療レーザが発火プロセス中に連続して動いているので生じることができる。したがって、短持続時間パルス発火持続時間が短い(例えば、約10マイクロ秒)場合であっても、治療レーザの連続運動に起因して幾分かの伸びが生じる場合がある。連続して運動する治療レーザの効果を最小限に抑えるため、組織に入射する治療スポットの断面は、図9Bに示されているように治療レーザ経路と直交した方向に楕円形をなし又は長円形をなすのが良い。図9Cに示されているように、楕円形又は長円形の治療スポット910は、治療レーザビーム又はより適切に言えば治療レーザビームの軸線を網膜の端から端まで且つ送出される一連のパルスを横切って走査しているときに網膜に対する円形の治療スポット930又は入射光輪郭を生じさせるのを容易にすることができる。
【0087】
網膜マッピング/追跡の実施形態
【0088】
図10A図10Cは、例えば本明細書において説明している治療処置プロセスで利用できる網膜マップ、輪郭又は画像を含む実施形態を示している。図10Aは、スリットランプ又は他のオフサルミック画像化器械の1つ又は2つ以上のカメラ(例えば、カメラ360)を用いて捕捉可能な患者の網膜の網膜マップ又は画像1000を示している。上述したように、コンピュータシステム330は、網膜マッピング、画像化及び/又は追跡を可能にするようカメラ360と通信可能に結合されるのが良い。コンピュータシステム330は、網膜1012の画像1000を生じさせると共に治療と治療により治療すべき1つ又は複数の治療野及び/又は1つ又は複数の治療パターンを決定するのに役に立つ情報を提供することができる測定装置を含むのが良い。網膜画像1000を参照することによって、ビーム、例えば治療ビーム112を網膜の治療野の方へ差し向けるのが良い。ビームは、本明細書において説明する治療処置を行うことができる。標識、例えば治療スポットを治療野に対応した場所で網膜画像1000上に重ね合わせて提供される治療処置の記録を残し又は記録するのが良い。例えば、治療スポット又は他の標識をビームが発火される各場所のところで網膜画像1000上に重ね合わせるのが良い。複数個の重ね合わされた治療スポットは、提供される治療処置を表示することができる。次に、網膜画像を参照することによってビームを網膜の別の治療野に再位置決めし、そして第2の治療処置を提供すると共に/或いは上述した仕方で重ね合わせ状態の治療スポットに関して記録を残すのが良い。
【0089】
幾つかの実施形態では、画像1000について治療野、境界及び/又はパターン1020を参照し又は追跡して治療野、境界及び/又はパターン1020の存在場所と画像1000のデータの関係を確立することができるようにする。治療野、境界及び/又はパターン1020を網膜1012上の特徴又は基準場所1010にリンクさせるのが良く、この特徴又は基準場所1010、例えば種々の静脈、動脈、視神経円板、黄斑、網膜ランドマーク又は特徴部等を画像1000中で識別することができる。治療野、境界及び/又はパターン1020の存在場所の突き止め及び/又は決定と共に、測定装置(例えば、コンピュータシステム330)は、治療処置送出システム、例えばアダプタ100及びスリットランプ200により使用されるべき1組の治療命令を計算することができるプロセッサシステムの少なくとも一部分を更に有するのが良い。
【0090】
測定装置(例えば、コンピュータシステム330)及び/又は治療処置システム(例えば、アダプタ100及びスリットランプ200)は、メモリに格納したソフトウェア及び患者の網膜撮像及び患者の網膜に対する治療処置(例えば、治療レーザ112)の送出並びに画像化組立体の1本又は2本以上の光軸に対する患者の眼の存在場所又は位置(オプションとして、x方向、y方向、z方向における並進及びねじり回転を含む)等を制御するために使用できるハードウェアを有するのが良い。例示の実施形態では、他の機能のうちで、コンピュータシステム330(例えば、測定装置)は、カメラ360を用いて撮影した画像に基づいて治療野、境界及び/又はパターン1020を計算し、2つの画像内における患者の眼相互間のずれを測定するようプログラム可能である。加うるに、コンピュータシステム330は、コンピュータシステム330が患者の眼のリアルタイム位置上に所望の治療野、境界及び/又はパターン1020を位置合わせし又は整列させることができるようレーザビーム(例えば、治療レーザ112及び/又は照準合わせレーザ122)の光軸に対する患者の眼/網膜の運動又は位置x(t),y(t),z(t)及び回転向きを効果的にリアルタイムで測定し又は追跡するようプログラムされているのが良い。
治療中、患者の眼の所望の治療野、境界及び/又はパターン1020を位置合わせするため、カメラ360によって撮られた患者の網膜からの画像は、共通の座標系を共有すべきである。共通座標系は、瞳孔又は内側虹彩境界の中心、外側虹彩境界の中心、種々の静脈又は動脈の中心、視神経円板又は黄斑の中心、他の網膜ランドマーク又は特徴部の中心又は眼の任意他の適当な特徴部に基づくのが良い。
【0091】
図10Bに示されているように、治療処置で治療されるべき1つ又は2つ以上の所望の野をカメラ360によって捕捉されると共に/或いは先に得られてコンピュータシステム330に入力された第1の網膜画像1000と関連した診断データを参照して決定するのが良い。次に、治療野、それぞれの各治療野について用いられる境界及び/又はパターン1020を決定するのが良い。これらの決定は、コンピュータシステム330の助けを借りて又はかかる助けなしで医師により行われても良く、或いは、幾つかの実施形態では、コンピュータシステム330によって自動的に行われても良い。各治療野、境界及び/又はパターン1020は、同一であっても良く、異なっていても良い。
【0092】
幾つかの実施形態では、次に、1つ又は2つ以上の所望治療野、境界及び/又はパターン1020をコンピュータシステム330にプログラムするのが良い。コンピュータシステム330は、患者の網膜と網膜画像1000を比較することによってプラグラムされた治療野に対応した患者の網膜1012の野を突き止めるようカメラ360と一緒に動作することができる。幾つかの実施形態では、眼の第2の画像を例えば治療処置手技の実施直前にカメラ360によって捕捉し、2つの画像を処理し又は比較して網膜治療場所に関する情報を生じさせ、次に、この情報を第2の画像に参照させるのが良い。治療野、境界及び/又はパターンを患者の網膜上に重ね合わせると共に/或いは治療処置手技の実施に先立ってディスプレイインターフェース(例えば、タッチスクリーンディスプレイ320)上に表示するのが良く、その目的は、提供される治療処置及びかかる治療処置を受ける野を表示することにある。医師又はユーザは、治療処置を評価するのが良く、そして所望ならば、治療処置のうちの1つ又は2つ以上の特性(例えば、向き、規模、境界、パターン等)を修正し又は調節するのが良い。
【0093】
幾つかの実施形態では、コンピュータシステム330は、網膜1012上の治療境界及び/又はパターン1020を画定するために照準合わせレーザビーム(例えば、照準合わせレーザ122)を網膜1012の所定の治療野上に発火するようアダプタ100又は治療処置システムの他のコンポーネントに命令を出すのが良い。他の実施形態では、治療境界及び/又はパターンを網膜上に画定しない場合があり、かくして照準合わせレーザが必要ではない場合がある。
【0094】
コンピュータシステム330は又、治療野内において且つ/或いは照準合わせレーザビームによって画定された治療境界及び/又はパターン1020内において治療レーザビーム(例えば、治療レーザ112)を網膜1012に差し向けるようレーザ送出器械310又は他の治療処置システムコンポーネントに命令を出すのが良い。第2のレーザビーム(例えば、治療レーザ112)は、所望の治療処置パルス又は投与1030(例えば、短持続時間パルス又は他の治療)を図10Cに示されているように画定された治療野及び/又は治療境界及び/又はパターン1020内の網膜組織に送出するのが良い。
【0095】
網膜画像1000は、すぐに参照できるよう又は将来参照できるよう記憶装置及び/又はデータベース内に記憶されるのが良い。上記において概述したように、網膜組織1012に提供された治療処置1030を網膜画像1000について文書化し又は記録するのが良く、その目的は、患者が受ける1種類又は複数種類の治療を追跡することにある。提供される治療処置の文書化/記録では、網膜画像1000に対する治療レーザビーム112の位置(即ち、レーザビーム軸線の位置)をモニタし、治療レーザ112を発火したときの治療レーザの各位置を記録するのが良い。個々の治療スポット又は場所を網膜画像1000上で記録して治療を受けた野を表示するのが良い。かかるマッピング及び文書化/記録手順は、治療処置の目に見える効果が存在しない短持続時間パルス治療処置手技で特に有用な場合があり、もしそうでなければ、先の短持続時間パルス治療は、未知である場合がある。
【0096】
同様に、1回又は2回以上の治療処置セッションにわたり患者に提供される複数の治療処置を網膜画像1000上にマップし又は画像化するのが良い。次に提供される各治療処置を網膜画像1000又は第2の網膜画像について文書化し又は記録するのが良く、その結果、提供される実際の治療処置をマップされ又は画像化された治療処置と比較して患者の全体的治療処置状態を追跡し又は治療の進展及びかかる治療に対する患者の応答を判定することができるようにするのが良い。
【0097】
コンピュータシステム330及びカメラ360は又、患者の眼の運動に応答して治療処置システム(例えば、治療レーザ112及び/又は照準合わせレーザ122)を調節するために使用できる。例えば、コンピュータシステム330は、網膜画像1000をカメラ360により提供される1つ又は2つ以上の他の画像と合わせて参照すると、患者の眼が動いたかどうかを判定することができる。眼の運動に応答して、照準合わせレーザ122の位置を調節して投射され又は画定された治療境界/パターンが網膜に対して正確な向きを維持するようにする。同様に、治療レーザ112の位置も又調節して眼の運動を補償し、それにより治療レーザ112が調節後の治療野、境界及び/又はパターン内で発火されるようにするのが良い。調節を行うには、眼の網膜特徴部(例えば、静脈、動脈、黄斑等)の新たな位置を求め、網膜特徴部の新たな位置に基づいて治療境界/パターンの新たな位置を求め、そしてそれに応じて照準合わせ装置130を調節するのが良い。カメラ360によって捕捉された画像をコンピュータシステム330に提供するのが良く、そして網膜画像1000とリアルタイムで比較すると、眼の運動に基づく治療処置のリアルタイム追跡及び調節を行うことができる。
【0098】
例示の網膜マッピング/追跡
【0099】
以下において、ビーム治療位置を自動的に精確に突き止め、治療位置を記録し、そして治療位置を基準網膜画像上に正確に配置するために利用できる方法について説明する。マシンビジョン技術が網膜マッピングシステムを作る上で現在利用できる。網膜は、空間及びパターン基準として役立つために利用できる特徴部(例えば、血管等)を有する。これら血管及び他の特徴部は、これらが背景に対して持つ特性が互いに異なっているために背景とは異なって見える。これらの差により、マシンビジョンアルゴリズムによって使用できるコントラストが得られる。一実施形態では、網膜画像化/マッピングアルゴリズムは、以下の機能、即ち、1)全体的網膜画像を得て基準、治療計画等を決定する機能、2)レーザパルスと同期される画像を得る機能、3)画像全体上に同期された画像を配置する機能、4)同期された画像の存在場所を表示する機能を実行することができる。
【0100】
別の実施形態では、アルゴリズムは、特に、網膜画像化/マッピングアルゴリズムにおいて、次の操作、即ち、次の操作を実行することができる。1)網膜画像化/マッピング中においてランドマークとして用いるために視神経の存在場所を突き止める。2)それと同時に画像及び治療/レーザスポットを捕捉する操作を実施するのが良い。画像の中心は、代表的には、レーザスポットの存在場所である。捕捉した画像の照明は、眼窩又は網膜画像と同じ波長であるのが良い(即ち、網膜全体の「治療前捕捉」)。捕捉した画像は、異なるコントラスト、サイズ等を有する場合がある。捕捉した画像は、網膜画像とほぼ同じ倍率を有するのが良い。3)治療スポット画像を全体的網膜画像(眼窩)上に配置する。治療スポットの中心は、捕捉した画像の中心であるのが良い。幾つかの実施形態では、精度は、約1μmから約10μmの範囲内にあり、平均精度は、約3μmであるのが良いが、システムは、精度を増大させるよう最適化されるのが良い。システムの最適化としては、光学的歪曲の減少又は視神経整合基準の補償及び/又は厳格化が挙げられる。
【0101】
全体的網膜画像及び視神経関心領域治療前
【0102】
視神経領域は、特徴部の含有量が高いので、その場所を整合させるパターンは、比較的容易な場合がある。図11Aに示されている眼窩画像を考察する。網膜は、視神経から放射状に延びる太い血管及び視覚検査により容易に突き止めることができる視神経の中心を有する。上述したアルゴリズムは、あらゆる場合において、視神経の存在場所を精確に且つ迅速に突き止めることができ、視神経の特徴が豊富でありしかも視神経の存在場所を容易に突き止められるということを示している。このアルゴリズムによって用いられる実際の視神経関心領域(region of interest:ROI)パターンが図11Bに示されている。同じ網膜の次の全ての画像では、視神経の存在場所は、視神経の特徴が豊富であるという性質により迅速且つ容易に突き止められた。したがって、アルゴリズムは、視神経の存在場所を突き止める上で例外的に良好に役立つ。
【0103】
較正
【0104】
各治療ショット中に捕捉される画像を同期させると共に/或いはパルスに対してタイムスタンプする(時刻と日付を押す)のが良い。捕捉された部分画像又はスリット内の治療スポットを較正時に「あらかじめ決定する」のが良いので、スリット画像に対する治療スポットの存在場所及び治療マップに対するその関係は、代表的には既知である。次に、多数の部分画像(スリット)画像についてこのプロセスを繰り返すことにより、治療後マップが得られる。
【0105】
スリット画像存在場所マッピング技術
【0106】
スリット画像存在場所マッピング技術の一例として、7つの互いに異なる網膜画像から7個のスリット画像を得て単一の基準網膜画像上に整合させた。7つのスリット画像を7個の全体的網膜画像からトリミングした。図12Aには、部分画像又はスリット画像をトリミングしてその画像から抽出した長方形の外形を備えた網膜画像が示されている。この長方形部分画像の中心は、治療ショットの存在場所である。他の6つのスリット画像を同様な仕方でそれぞれの網膜画像から得た。図12Bは、網膜画像のそれぞれから抽出された7個のスリット画像を示している。図12Bに示されているように、各画像は、異なるサイズ及び/又はアスペクト比を有するのが良い。
【0107】
スリット画像をパターン整合アルゴリズムに移し又は提供し、このパターン整合アルゴリズムは、ランダムな全体的網膜画像上の位置を突き止めるために用いられた。図13は、アルゴリズムによって存在場所が突き止められると共に網膜画像上に重ね合わされた7個の長方形のスリット画像を示している。
【0108】
アルゴリズムの存在場所突き止め機能の精度の検査
【0109】
視神経からスリット画像までの距離の相対的測定は、整合アルゴリズム精度を実証する。視神経は、代表的には、アルゴリズム、治療計画者、治療それ自体及び/又は治療後分析によって用いられる基準箇所として機能する。スリット画像のそれぞれの中心及び視神経の中心からの距離が図13のX,Y座標によって示されているように計算した。測定を2回実施して、当初、基準を提供するよう元の画像に対して測定を実施し、次に、追跡のために別の画像について再び実施した。2つの測定値が同一である完全な整合の結果として、ゼロのデルタが得られる。数学的表現して、これらの位置は、次の通りであり、即ち、
原位置(x,y)=スリット中心位置(x,y)−視神経位置(x,y)
パターン化された整合位置(x,y)=基準画像上のスリット中心位置(x,y)−視神経位置(x,y)
【0110】
以下の表1は、測定結果を示している。
【0111】
表1:画素座標における精度計算。「基準欄」は、精度基準を提供するよう同一の画像内に得られるスリットの存在場所を意味している。「パターン化整合」欄は、異なる網膜画像上の同一の長方形の中心相互間の距離である。「デルタ」欄は、パターン化整合位置と基準位置との差である。ゼロのデルタは、完全な整合に等しい。
【0112】
上述したように、完全な整合は、ゼロのデルタを生じさせる。各画素は、約10μmであり、従って、最も大きな誤差は、約0.1mmである(即ち、表1の第5行目のデルタ0)。アルゴリズムを最適化することによって上述の誤差を減少させることができる。アルゴリズムは、1秒未満で7つ全ての長方形を検出した。
【0113】
治療計画者
【0114】
治療計画者は、医師に網膜画像上のあらかじめ決定された治療位置を提供し、実際の網膜上のこれらの場所を扱う。代表的には、これを行うにはスキャナが必要である。使用できると考えられるアルゴリズムとしては、1)視神経に対する座標の状態の治療を提供するアルゴリズム及び/又は2)アクティブなパターン整合を用いて網膜上の治療スポットの存在場所を突き止めるアルゴリズムが挙げられる。アルゴリズム1は、画像処理をそれほど必要としないが、大きなスキャナダイナミックレンジを必要とし、これに対し、アルゴリズム2は、より大きな画像処理パワーを必要とする場合がある。
【0115】
追加の画像処理概念
【0116】
幾つかの実施形態では、検出に先立って網膜画像をあらかじめ処理することが有益な場合がある。例えば、画像レベリング後のしきい値処理は、明るい暗視野画像と明視野画像の両方について良好な血管又は他の特徴部の識別をもたらすことができる。以下の画像については、以下の操作が行われた。幾つかの実施形態では、上述のアルゴリズムを実施するハードウェアは、既存のスリットランプ上に「重畳」されるのが良く又は違ったやり方でこれに結合されるのが良い。他の実施形態では、ユーザフレンドリースタンドアローン型装置をテーブルトップモデルと一体化するのが良い。自蔵式屈折計を地図作成システムの設計を開始するための考えられるプラットホームとして使用できる。特別に網膜画像用として設計されていないが、最新式の屈折計は、代表的には、前方及び後方セグメントのディジタル画像を観察して捕捉する画像化光学系を有する。これら装置は、専用のカメラを必要とせず、これとは異なり、標準型のNTSC又はPALカメラを用いることができる。カメラの選択は、照明波長で決まる場合がある。
【0117】
システムは、治療計画、治療及び治療分析プラットホームであるのが良い。幾つかの実施形態では、画像化カメラは、光路を医師の視野と共有するのが良い。画像をレーザパルスと同期して捕捉するのが良い。装置は、治療スポットをディスプレイ上にリアルタイムで表示することができ又はコストを減少させるため又は種々の他の理由で治療後に治療スポットを表示することができる。全ての治療情報を節約して事後処理し、それにより線量測定を計算実施するのが良い。幾つかの実施形態では、同一のソフトウェアを利用すると、治療を計画して効率を分析することができる。
【0118】
幾つかの実施形態では、治療強度を有するビームを送るのではなく、診断ツールは、「ビジョン」ビームを特定の場所に送り、患者がこのビームを見ることができるかどうかを患者に尋ねる。診断ツールは、ビームの場所を知ることができ、「イエス」という答えは、網膜野が働いていることを示唆していると言える。幾つかの実施形態では、パターン整合アルゴリズムの効率は、画像の品質で決まる場合がある。この分析で用いられる画像は、一般に、極めて良好なコントラストを有し、良好な焦点合わせ状態にある。パターン整合アルゴリズムは、代表的には、はっきりとした高頻度数情報が利用できる場合、物体の存在場所を突き止める時間があまりかからない。同様に、追跡精度を空間カウントに関連付け、従って、ある形式のオートフォーカスが一般に推奨される。低周波で内容画像を追跡することを実施することができるが、視野内の大きな物体を追跡することによって低い分解能で実施することができる。
【0119】
幾つかの実施形態を説明したが、当業者によって認識されるように、本発明の範囲から逸脱することなく種々の改造例、変形構成例及び均等例を利用できる。加うるに、本発明の内容を不必要にぼかすのを避けるために多くの周知のプロセス及び要素については説明しなかった。したがって、上述の説明は、本発明の範囲を限定するものと解されてはならない。
【0120】
値の範囲(値域)が提供されている場合、内容上、明示の別段の指定がなければ、その範囲の上限と下限との間で下限の単位の小数点第1位までの中間の各値も又、具体的に開示されているものとする。記載した範囲内の任意の記載された値又は中間の値とその記載された範囲中の任意他の記載された又は中間の値との間の狭い範囲が各々含まれる。これらの狭い範囲の上限と下限は、その範囲内に別個独立に含まれる場合又は含まれない場合があり、その狭い範囲中に下限又は上限のうちのいずれかが含まれ、いずれも含まれず又は両方が含まれるような各範囲も又、記載された範囲内の具体的に排除される限度次第で、本発明の範囲内に含まれる。記載された範囲が上限及び下限のうちの一方又は両方を含む場合、これら含まれた限度のうちのいずれか一方又は両方を排除した範囲も又含まれる。
【0121】
原文明細書及び特許請求の範囲に記載されている単数形“a”、“an”及び“the”は、内容上明示の別段の指定がなければ、複数形を含む。かくして、例えば、「プロセス」といった場合、これは、複数のかかるプロセスを含み、「装置」といった場合、これは、1つ又は2つ以上の数値及び当業者に知られているその均等例等を含む。
【0122】
また、“comprise”(翻訳文では、「〜を有する」としている場合が多い)、“comprising”、“include”(翻訳文では、「〜を含む」としている場合が多い)、“including”及び“includes”という用語は、原文明細書及び原文特許請求の範囲に用いられる場合、記載された特徴、整数、コンポーネント又はステップの存在を特定するようになっているが、1つ又は2つ以上の他の特徴、整数、コンポーネント、ステップ、行為又は群の存在又は追加を排除するものではない。
なお、好ましい構成態様として、本発明を次のように構成することもできる。
1. 患者の眼を治療する方法であって、
第1のビームを前記患者の眼の網膜組織に投射するステップと、
前記第1のビームにより前記網膜組織を第1の野及び第2の野に対して分離する境界を画定するステップと、
第2のビームを前記第1の野内の前記患者の眼の前記網膜組織に選択的に差し向けることによって前記第2のビームにより前記患者の眼の前記網膜組織に治療処置を送出するステップとを含む、方法。
2. 前記境界を前記患者の眼の識別された領域に隣接して位置決めして前記識別された領域が前記第2の野内に位置するようにするステップを更に含み、前記識別された領域は、前記治療処置で治療されるべきではない組織を含み、
前記第2のビームを前記第1の野内に差し向けて前記識別された領域の前記組織への治療処置の送出を回避するステップを更に含む、上記1記載の方法。
3. 前記境界は、各々が前記治療処置を送出するために前記第2のビームが差し向けられる野を画定する幾何学的形状のパターンを含み、前記第2のビームは、前記幾何学的形状の各々内に差し向けられる、上記1記載の方法。
4. 前記幾何学的形状のパターンは、走査装置により前記網膜組織における前記第1のビームの投射場所を制御して前記第1のビームが前記網膜組織における前記幾何学的形状のパターンの輪郭を描くようにすることによって前記眼の前記網膜組織上に画定される、上記3記載の方法。
5. 前記第1のビームの前記投射場所は、複数個のパルスの各々相互間で調節される、上記4記載の方法。
6. 前記幾何学的形状のパターンは、次のもの、即ち、
複数個の正方形を有する格子、
複数個の長方形を有する格子、
半円形パターン、及び、
六角形パターンのうちの1つ又は2つ以上を含む、上記3記載の方法。
7. 前記幾何学的形状の各々の幾何学的中心上に前記第2のビームを差し向けるステップを更に含む、上記3記載の方法。
8. 前記網膜組織に入射する前記第2のビームのスポットは、全体が、前記第1のビームにより形成される前記幾何学的形状の周囲内に位置する、上記7記載の方法。
9. 前記第1のビームは、前記第2のビームのパルスが送出されるときは送出されず、又この逆の関係が成り立ち、即ち、前記第2のビームは、前記第1のビームのパルスが送出されるときは送出されない、上記1記載の方法。
10. 前記第2のビームの複数個のパルスを前記境界内に送出して前記治療処置を施すステップを更に含む、上記1記載の方法。
11. 前記境界の規模及び前記境界の向きのうちのいずれか一方又はこれら両方を調節するステップを更に含む、上記1記載の方法。
12. 前記境界を画定する前記ステップは、前記第1のビームを前記境界の周囲に沿って差し向けるステップを含む、上記1記載の方法。
13. 前記第1のビームは、前記第2のビームのスポットサイズよりも小さい前記網膜上の可視スポットサイズを有する、上記12記載の方法。
14. 前記治療処置を送出するステップは、前記網膜組織の光凝固を引き起こすステップを含む、上記1記載の方法。
15. 前記第2のビームを十分に短い持続時間の一連のパルスの状態で送出して前記網膜組織の伝統的な光凝固の引き起こしを回避する一方で、治療による治癒応答の光活性化を引き起こすステップを更に含む、上記1記載の方法。
16. 患者の眼に治療処置を提供する方法であって、前記方法は、
治療パターンを前記患者の眼の網膜上に投射するステップを含み、前記治療パターンは、網膜組織の第1の野及び網膜組織の第2の野を画定し、
治療ビームを前記第1の野内に選択的に差し向けることによって前記治療ビームにより治療処置を前記第1の野の網膜組織に送出するステップを含む、方法。
17. 前記治療パターンは、幾何学的形状のパターンを含み、各幾何学的形状は、前記治療ビームが差し向けられる治療野を定め、前記治療ビームは、順次、前記幾何学的形状の各々内に差し向けられる、上記16記載の方法。
18. 前記治療パターンは、複数の行及び列を有する格子を含み、前記治療ビームは、前記治療ビームを前記網膜組織に送出するよう前記複数の行及び列に沿って順次走査される、上記17記載の方法。
19. 前記格子は、直線パターン又は半円形パターンに配列された正方形又は長方形の3×3アレイから成る、上記18記載の方法。
20. 第2の治療パターンを前記治療を受けなかった場所において前記網膜上に投射するステップを更に含み、前記第2の治療パターンは、網膜組織の第3の野及び網膜組織の第4の野を画定し、
前記治療ビームを前記第3の野内に選択的に差し向けることによって前記治療ビームにより前記治療処置を前記第3の野の網膜組織に送出するステップを更に含む、上記16記載の方法。
21. 治療処置を患者の眼に提供するシステムであって、前記システムは、
第1のビームを第1のビーム経路に沿って送るよう構成された第1のビーム源と、
第2のビームを第2のビーム経路に沿って送るよう構成された第2のビーム源と、
前記第1及び前記第2のビーム経路に沿って設けられていて、前記第1のビーム及び前記第2のビームを前記患者の眼の網膜に沿って走査するよう構成された照準合わせ装置と、
前記照準合わせ装置に結合されたプロセッサとを含み、前記プロセッサは、
前記第1のビームにより前記網膜の領域を第1の野及び第2の野に分離する治療境界を画定すると共に、
前記第2のビームを前記第1のビームにより定められた第1の野内において前記網膜上に差し向けて前記治療処置を前記患者の眼の前記網膜組織に送出するよう構成されている、システム。
22. 治療ビーム源及びオフサルミック画像化器械に結合可能なアダプタ装置であって、前記治療ビーム源は、治療ビームを治療ビーム出力から送るよう構成され、前記オフサルミック画像化器械は、患者の眼の網膜を観察するよう構成可能な画像化システムを有し、前記アダプタ装置は、
前記治療ビームを受け取るよう前記治療ビーム源の前記治療ビーム出力に結合するよう構成された第1のインターフェースと、
前記第1のインターフェースからの治療ビーム経路に沿うと共に照準合わせビーム源からの照準合わせビーム経路に沿って設けられた照準合わせ装置とを有し、前記照準合わせ装置は、前記照準合わせビーム源からの前記照準合わせビームを、前記網膜を横切って走査させてユーザが前記画像化システムにより前記網膜を観察しているとき、治療野を指示すると共に前記治療ビームを前記治療野上で走査させるよう構成されている、アダプタ装置。
23. 前記照準合わせビームは、前記治療ビーム源からの前記治療ビーム経路に沿って送られ、前記治療ビーム源は、照準合わせビーム源を更に含み、前記アダプタ装置の前記照準合わせビーム経路は、前記治療ビーム経路と同軸である、上記22記載のアダプタ装置。
24. 前記アダプタ装置を前記オフサルミック画像化器械に解除可能に結合するよう構成された取り付け部材を更に有する、上記22記載のアダプタ装置。
25. 前記アダプタ装置は、前記照準合わせビームを提供する前記照準合わせビーム源を更に有する、上記22記載のアダプタ装置。
26. 前記照準合わせビーム源は、約600ナノメートル〜約700ナノメートルの波長を有する照準合わせレーザビームを提供するレーザダイオードから成る、上記25記載のアダプタ装置。
27. 前記治療ビーム源は、約400ナノメートル〜約600ナノメートルの波長を有する治療レーザビームを提供する、上記22記載のアダプタ装置。
28. 前記治療ビーム源は、前記治療ビームの送出を制御する外部コンピュータ処理装置と通信可能に結合され、前記外部コンピュータ処理装置も又、前記照準合わせビームの送出を制御するよう前記アダプタ装置に通信可能に結合される、上記22記載のアダプタ装置。
29. 前記アダプタ装置は、前記網膜組織上における前記治療ビームの断面又は入射スポットを選択可能に変化させるよう構成された拡大機構体を更に有する、上記22記載のアダプタ装置。
30. 前記画像化システムは、ユーザが前記網膜及び治療野を視認することができるようにするよう構成された双眼鏡を含む、上記22記載のアダプタ装置。
31. 前記治療ビーム経路は、前記照準合わせビーム経路との合体に先立って前記照準合わせビーム経路を横切り、前記治療ビーム経路と前記照準合わせビーム経路は、合体後、実質的に同軸である、上記22記載のアダプタ装置。
32. 前記オフサルミック画像化器械は、スリットランプから成る、上記22記載のアダプタ装置。
33. 前記治療野は、
スポットのアレイ、
複数個の正方形を有する格子、
複数個の長方形を有する格子、
半円形パターン、及び、
六角形パターンから成る群から選択された1つ又は2つ以上含む、上記22記載のアダプタ装置。
34. アダプタ装置であって、
ハウジングを有し、前記ハウジングは、
照準合わせビームを提供する照準合わせビーム源と、
治療ビーム源の治療ビーム出力と結合して前記治療ビームを受け入れるよう構成されたインターフェースと、
前記アダプタ装置をオフサルミック画像化器械に解除可能に結合するよう構成された取り付け部材と、
前記第1のインターフェースからの治療ビーム経路に沿うと共に前記照準合わせビーム源からの照準合わせビーム経路に沿って設けられた照準合わせ装置とを有し、前記照準合わせ装置は、前記照準合わせビームを、前記網膜を横切って走査させてユーザが前記画像化システムにより前記網膜を観察しているときに治療野を指示すると共に前記治療ビームを前記治療野上で走査させるよう構成されている、アダプタ装置。
35. 眼の網膜を治療する方法であって、前記方法は、
アダプタ装置を用意するステップと、
前記アダプタ装置を治療ビーム源に結合するステップと、
前記アダプタ装置により観察ビームを前記網膜の方へ差し向けて治療野を画定するステップと、
前記アダプタ装置により前記治療ビームを前記観察ビームによって定められた前記治療野内において前記網膜上に差し向けるステップとを含む、方法。
36. 患者の眼を治療する方法であって、
照準合わせビームを前記患者の眼の網膜組織に差し向けるステップと、
前記照準合わせビームにより第1の標的位置及び第2の標的位置を定めるステップと、
治療ビームにより一連のパルスを前記第1及び前記第2の標的位置のところで前記網膜組織に送出して前記網膜組織を治療するステップとを含み、各パルスの持続時間は、前記網膜組織の伝統的な光凝固の引き起こしを回避するほど十分短く、各標的位置に差し向けられた前記一連のパルスは、該位置のところでの治療による治癒の光活性化を引き起こすのに十分であり、前記治療ビームは、前記一連のパルス相互間の送出場所相互間を走査する、方法。
37. 前記治療ビームは、前記治療ビーム軸線を前記網膜組織を横切って走査すると共に前記一連のパルスを送出しているとき、前記網膜組織に円形の入射光輪郭を生じさせるよう構成された楕円形又は長円形断面を有し、前記入射光輪郭は、円形断面治療ビームにより生じる入射光輪郭よりも円形である、上記36記載の方法。
38. 前記治療ビームを前記照準合わせビームによって識別された第1の野内で前記第1の位置から前記第2の位置まで走査するステップと、
前記一連のパルスを前記第1の位置と前記第2の位置との間で送出して各パルスが前記第1の位置と前記第2の位置との間の別の位置に送出されるようにするステップとを更に含む、上記36記載の方法。
39. 前記治療ビームを前記第1の野内で前記第1の位置から前記第2の位置まで再走査するステップと、
先の一連のパルスを送出しているときに追加の一連のパルスを前記第1の位置と前記第2の位置との間でほぼ同一の位置に送出するステップとを更に含む、上記38記載の方法。
40. 前記走査及びパルス送出プロセスは、第1の治療サイクルを含み、前記再走査及びパルス再送出プロセスは、第2の治療サイクルを含み、前記方法は、約10回〜約10,000回の治療サイクルを提供して前記第1の野内における前記眼の前記網膜組織を治療するステップを更に含む、上記39記載の方法。
41. 少なくとも9個のパルスが前記第1の位置と前記第2の位置との間で送出される、上記38記載の方法。
42. 前記第1の位置から前記第2の位置までの前記走査は、約0.5ミリ秒〜約1.5ミリ秒の走査時間で完了する、上記38記載の方法。
43. 前記第1の位置から前記第2の位置までの前記走査は、約0.9ミリ秒〜約1.1ミリ秒の走査時間で完了する、上記42記載の方法。
44. 前記走査は、ラスタ走査パターンを含む、上記38記載の方法。
45. 各パルスの持続時間は、内部網膜温度が凝固による損傷のしきい値を下回ったままであるように十分に短い、上記36記載の方法。
46. 各パルスの持続時間は、約5マイクロ秒〜約15マイクロ秒である、上記36記載の方法。
47. 各パルスの持続時間は、約9マイクロ秒〜約11マイクロ秒である、上記46記載の方法。
48. 患者の眼を治療する方法であって、
照準合わせビームを前記患者の眼の網膜組織に差し向けるステップと、
前記照準合わせビームにより前記網膜組織を第1の野及び第2の野に分離する治療境界を画定するステップと、
前記第1の野内の治療ビームの軸線を走査するステップと、
前記治療ビーム軸線を前記第1の野内で走査しているときに前記治療ビームにより一連のパルスを前記第1の野内で前記網膜組織に送出するステップとを含み、前記一連のパルスは、前記網膜組織の伝統的な光凝固の引き起こしを回避する一方で、治療による治癒の光活性化を引き起こすよう指定された持続時間の間送出される、方法。
49. 一連のパルスを各パルス相互間の指定された間隔で送出してパルス送出場所相互間の所定の間隔をもたらすステップを更に含む、上記48記載の方法。
50. 前記治療境界は、幾何学的形状のアレイを有する治療パターンを含み、前記所定の間隔は、前記パルスの各々が前記幾何学的形状のうちの1つの中に送出されるようなものである、上記49記載の方法。
51. 治療処置を患者の眼に提供するシステムであって、前記システムは、
照準合わせビームを照準合わせビーム経路に沿って送るよう構成された照準合わせビーム源と、
治療ビームを治療ビーム経路に沿って送るよう構成された治療ビーム源と、
前記照準合わせビーム経路及び前記治療ビーム経路に沿って設けられていて、前記患者の眼の網膜に沿って前記照準合わせビーム及び治療ビームを走査するよう構成された走査装置と、
前記走査装置に結合されたプロセッサとを含み、前記プロセッサは、
前記照準合わせビームを前記網膜上に差し向けて第1の治療位置及び第2の治療位置を定め、
一連のパルスを前記網膜組織に送出しながら前記治療ビームを前記第1の位置と前記第2の位置との間で走査するよう構成されており、各位置における前記一連のパルスは、前記網膜組織の伝統的な光凝固の引き起こしを回避する一方で前記網膜組織への治療による治癒の光活性化を引き起こすのに十分に短い持続時間のものである、システム。
52. 患者の眼を治療する方法であって、
前記患者の眼の網膜画像を用意するステップと、
前記網膜画像を参照することによって網膜の第1の治療野及び第2の治療野を決定して治療処置により治療を行うステップと、
前記網膜画像を参照することによってビームを前記網膜の前記第1の決定された治療野の方へ差し向けて前記第1の治療野について前記治療処置を生じさせるステップと、
前記治療処置の標識を前記第1の治療野に対応した第1の場所で前記網膜画像上に重ね合わせるステップと、
前記重ね合わされた標識と共に前記網膜画像を参照することによって前記ビームを前記網膜の前記第2の決定された治療野上に差し向けて前記第2の治療野について前記治療処置を生じさせるステップとを含む、方法。
53. 前記治療処置の標識を前記第2の治療野に対応した第2の場所で前記網膜画像上に重ね合わせるステップと、
前記重ね合わされた標識と共に前記網膜画像を記憶して前記患者が受ける治療を追跡するステップとを更に含む、上記52記載の方法。
54. 患者に提供されるべき複数の治療処置を前記網膜画像上に重ね合わせるステップを更に含む、上記52記載の方法。
55. 前記患者の眼の運動を突き止めるステップと、
前記運動に応答して、前記ビームの位置を調節して前記運動を補償するステップとを更に含む、上記52記載の方法。
56. 前記ビームの位置を調節するステップは、前記眼の第2の網膜画像を捕捉するステップ及び前記網膜画像の網膜特徴を前記第2の網膜画像の網膜特徴と比較するステップを含む、上記55記載の方法。
57. 第1の治療野を決定する前記ステップは、網膜組織を第1の野及び第2の野に分離する治療境界を決定するステップを含み、前記方法は、
前記ビームを前記治療境界内に選択的に差し向けることによって前記治療処置を前記第1の治療野に送出するステップを更に含む、上記52記載の方法。
58. 追加のビームを網膜組織に差し向けて前記網膜組織に前記治療境界を画定するステップを更に含む、上記57記載の方法。
59. 前記治療境界を前記網膜画像上に重ね合わせて前記第1の治療について前記治療処置を表示するステップを更に含む、上記57記載の方法。
60. 前記治療境界の特性を調節するためのユーザ入力を受け取るよう構成された表示装置上に前記網膜画像及び重ね合わされた治療境界を表示するステップを更に含む、上記59記載の方法。
61. 特性を調節する前記ステップは、境界形状、境界サイズ及び境界向きから成る群から選択された1つ又は2つ以上の特性を調節するステップを含む、上記60記載の方法。
62. 患者の眼を治療するシステムであって、前記システムは、
治療ビームを治療ビーム経路に沿って送るよう構成された治療ビーム源と、
前記治療ビーム経路に沿って設けられていて、前記治療ビームを前記患者の眼の網膜に沿って走査するよう構成された走査装置と、
前記網膜の画像を捕捉するよう差し向けられた画像捕捉装置と、
前記画像捕捉装置に結合されたディスプレイと、
前記走査装置及び前記ディスプレイに結合されたプロセッサとを含み、前記プロセッサは、
前記ディスプレイに示された前記画像捕捉装置からの前記網膜の画像上に前記網膜の所望の場所で治療処置の標識を重ね合わせ、
前記治療ビームにより前記治療処置を前記所望の場所で前記網膜の前記組織に送出するよう構成されている、システム。
63. 前記プロセッサは、更に、照準合わせビーム源からの照準合わせビームを前記網膜の前記所望の場所上に差し向けて前記標識に対して前記網膜上の所望の治療を施すよう構成されている、上記62記載のシステム。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A-4C】
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図13