(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
1.ビルの最上階の床面(屋上)等を防水する場合には、アスファルト防水、シート防水、ウレタン塗膜防水などの方法がとられて、以下のような長所・短所があった。
【0003】
(1) アスファルト防水
この工法は、2〜3枚のアスファルトルーフィング(シート状の基材にアスファルトを浸透させた材料)を熱融解させたアスファルトで交互に重ねながら防水層を形成する工法で、歴史と実績がある工法である。防水材料がアスファルトであるために、水密性が高く、アスファルトルーフィングの種類や重ねる枚数を調節することにより、様々な仕様に対応できる利点がある。また、作業者の熟練度により精度にバラツキがあるが、重ねることにより、精度の平均化が可能となっていた。
他方、この工法は、アスファルトを使用するために防水層が温度の変化に敏感であり、夏は垂れやすく、冬は硬化して破断しやすく、周縁部などの納まりが良くない短所もあった。また、施工中に高温のアスファルトを使用するために作業者の安全を確保しつつ作業をする必要があり、さらに煙や臭いが近隣に悪影響を与える問題点もあった。
【0004】
(2) ゴムシート防水
この工法は厚さ1〜2mm程度のゴム材料からなる防水シートを接着剤で相互に貼り合わせて防水層を形成する工法である。この工法は、防水シートが工場で成型されるために品質が安定している利点があり、また、ゴムシートによる場合には、伸張性に富み、下地がひび割れなどを生じてもこれに追随することができた。
他方、この工法では、防水シートをジョイントした部分で施工不良があると剥離しやすい短所があり、ゴムシートによる場合には、加えて、下地に凸部が存在する場合や、鋭利な飛来物により傷つきやすい短所もあった。
【0005】
(3) ウレタン塗膜防水
この工法は、2液成分の液体材料を施工時に混合撹拌したものを生成して、下地に吹き付け等により塗布して、反応固化させて、防水層を形成する工法である。
液状の材料を塗布するために、狭い場所や、設備用基礎が多くある屋上など平面が複雑な形状であっても納まりやすく容易に施工できる利点があり、またジョイントが無く、ジョイント部分で施工不良を防止できる利点があった。また、重ねて塗布することにより防水性能を高められるため、改修時には塗り重ねれば良く、低コストで防水層の改修が可能となる利点があった。更に、液体材料の選択により耐摩擦・耐衝撃を高めるなど種々の用途の仕様に対応することもでき、例えば、スポーツ用のグランドでの使用も可能であった。
他方、液状材料を塗布するため、水平に広がりやすく、下地面に不陸があると均一な厚みに施工できず、膜厚の確保が難しい短所があった。また、2液を現場で撹拌混合するために、撹拌混合が不十分であると未硬化など品質にバラツキを生じる短所もあった。
【0006】
(4) 塩化ビニルシート床
この工法は、集合住宅の開放廊下・階段およびベランダの簡易防水と意匠性とすべり防止を目的に塩化ビニル性の防水シートをウレタンおよびエポキシ樹脂系接着材で貼り付ける工法である。
その際、防水シートを施工しない溝や立ち上がり部分には、ウレタン防水材等を10cmラップする範囲まで先行して施工し、その上から塩化ビニル等の防水シートを施工する。防水シートは、接着材塗布直後に貼り付け可能で貼り付けたシートの上は、接着材の硬化を待たずに歩行が可能となるため、開放廊下・階段等の共有部分でも通行止めにする期間が短く、居住者の生活に支障が少ない。
但し、塩化ビニルシート防水材と同様に経年劣化により、シート中の可塑剤揮発によって硬くなると共に収縮が発生する。それによって、端部の浮きやジョイント部シールの切れが発生する。また、表層も色褪せて意匠性が低下する。そのため、改修にあたっては、既存の防水シート床材を接着材と併せて撤去し、再施工する必要があった。
【0007】
上記(1)〜(4)のいずれの方法を採用しても、現場周囲に飛散防止養生が必要であり、また各段階で最低1日の硬化養生期間が必要であり、工期は1〜2週間を要する場合もあり、工期の長期化をまねいていた。
【0008】
2.屋上緑化に使用する保水用パッドでは、発泡ウレタンを使用し、目地をテープで塞ぐ工法も提案されている(特許文献1)。
更に、ブチルゴムシートAの表面で、中央側に小さなサイズのウレタンシートBを貼り、周囲に織布又は不織布のテープを貼ったウレタンマットが提案され、また、このウレタンマットを機器の下に敷いて防水する施工方法が提案されている(特許文献2)。
【0009】
3.また、防水シートに連続するドレン配管部分では、例えば、上端にフランジ状シートを設けた蛇腹状の樹脂製のフレシキブルホースを使用して、ドレン管内にフレキシブルホースを入れて、フランジ状シートを防水シートに連結していた(特許文献3)。
また、防水シートの端部がめくれ上がらないように、コンクリート床面に固定する為には、防水シート上面からコンクリート躯体にアンカーを打っていた。すなわち、アンカーは防水シートを貫通して、コンクリート躯体に打ち込まれていた。この場合、アンカーは、鋼製であった。
また、これらの場合で、防水シートや防水皮膜の端部の処理については、経年変化を考慮した適正な処理方法が確立していなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、従来のアスファルト防水、シート防水、ウレタン塗膜防水、塩ビシート床等を使用した在来工法の問題点を解決して、現場での養生期間を短縮して、かつ均一な防水層を形成し、これを使用することを目的とする。
【0012】
特許文献1では、防水性を考慮しておらず、人の歩行など摩擦や部分的な加圧を考慮していないので、特許文献1の防水パッドをそのまま屋根などの床面に適用することはできなかった。
また、特許文献2では、施工時に床面との接着剤として予めブチルゴムシートAを使用するものであるが、ウレタンマットBはブチルゴムシートAより小さなサイズであるので、各ウレタンマットで隣接するウレタンマットBの周囲を後から防水施工する必要があり、ウレタンマットを載せただけで全面の防水性能を発揮させることはできない。
【0013】
また、特許文献2のドレン管周りの処理では、フレキシブル管が必須であり、フレキシブル管の最小内径はドレン管の内径より著しく小径となり、雨水の排水能力を著しく落とすおそれがあった。従って、近年のゲリラ豪雨と称するような局地的な大雨が多発する事態を考慮した時、排水能力を落とさない処理方法が求められていた。
また、防水シートの端部処理に、アンカーを使用する場合には、金属であるアンカーがコンクリート内に圧入されるので、コンクリートに割れが生じるおそれもあった。また、通常樹脂製の防水シートを金属製のアンカーが貫通するので、追随性が無く、防水シートの貫通した部分で変形が生じるおそれがあった。従って、いずれの場合も、例えば20年30年などの長期の防水層の保障ができなかった。とりわけ、垂直面や傾斜面で顕著であった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、型枠を使用して、求める機能でウレタン系の防水材層の防水シートを予め工場で製造して、現場で貼るので、工期短縮をはじめとする前記問題点を解決した。
【0015】
すなわちこの発明は、
ウレア樹脂系の防水性能を有するウレタン防水剤からなる防水ベース層および前記防水ベース層の上面に紫外線防止機能を有する材料であるトップコート層が積層された防水シートで、前記防水ベース層の周縁部とトップコート層の周縁部とを略一致させたウレア樹脂系の防水性能を有する
高品質のウレタン防水剤からなる防水シートを
予め、施工現場外で、成型型枠の平坦面で、離型剤を塗り、その後、トップコート剤を塗装し、トップコート層を形成し、トップコート層が乾いたならば、通常の2液性の基剤と硬化剤を衝突混合して、スプレーするタイプのウレタン防水剤を吹き付けて成型し、施工現場の床面に、
ウレタン系であるプライマーを塗布し、
続いてウレタン系の材質である接着剤層を形成し、続いて、前記接着剤層上に、前記防水シートを敷き詰めて、
防水シートの端縁の接合は、防水シート端面を突き合わせて、床面上に貼り、付け合わせた両防水シート端面を跨いで、表面側から補強材を接着することで前記床面上に防水層を形成すること、もしくは防水シートを突き合わせた際に、両防水シートが当接した隙間に接着剤を充填してなることで前記床面上に防水層を形成することを要旨とするものである。
【0016】
前記における「床面」は、通常は屋根面を表し、略水平の床面の他、周囲の立ち上げ部分、設備機器用のコンクリート基礎がある場合には、そのコンクリート基礎の立ち上げ部分を含む。
【0017】
また、前記における「床面」は、屋根面に限らず、同様の防水が必要な水平面であれば、ベランダの水平面、渡り廊下の水平面、あるいは室内の床面も指す。また、同様の防水機能が求められる面であれば、水平面に限らず、傾斜面や垂直面、あるいは階段状の面に対しても適用することができる。
【0018】
また、前記における「トップコート層」は防水層の防水性能を長持ちさせるための保護層で、紫外線防止、衝撃吸収、など様々な機能を有する。とりわけ、ウレタン系の防水樹脂材料を使用した場合には、紫外線による劣化を防ぐことが、防水性能を維持する上で重要になるので、トップコート層の役割が必要である。
【0019】
また、前記における「接着剤層」は、ウレタン系の材質が望ましい。また、前記におけるプライマーもウレタン系が望ましい。
【0020】
また、前記における「高品質ウレタン防水層」には、ウレア樹脂系の防水性能を有する材料を含む。
【0021】
また、前記における「一般用防水樹脂材料」とは、従来の防水性能を有する樹脂材料で、使用部位において、必要な防水性能を具備していれば足りる。
【0022】
また、前記における「機能性部材」とは、従来から現場で形成する防水層の周辺などにおいて、防水層と一体に形成される部材、あるいは予めシート状に成形する防水シートであるために必要となった部材であり、例えば、以下のような部材をいう。
・シートの端部に設けてシートをコンクリート面に固定させるための部分、
・シートの端部に設けてシートをコンクリート面に固定させると共に水切りの役割をする部分
・シートの端部又は中間部にドレン配管に接続して、ドレン配管の内側に添って挿入される漏斗状の部材
・シートの端部又は中間部に設けて、シートを貼った面とその面の対向面との間の空間を塞ぐパッキン(ファスナー)のような部材
【0023】
また、前記における「機能性部材」は防水シートが第1防水層、第2防水層から構成される場合には、機能性部材の部分も両防水層の2層で形成することが望ましいが、一方の防水層のみで成形することもできる。
【発明の効果】
【0024】
この発明は、凹凸成型枠を使用して予め工場などで、現場に合わせて、樹脂防水シートを製造して、現場で貼り合わせるので安定した品質確保のための準備ができ、更に、現場周囲への飛散防止用の養生、硬化を待つ養生期間など、現場作業を大幅に軽減できる効果がある。
【0025】
また、樹脂防水シートは一定の厚さで形成できるので、必要な防水性能に合わせて、無駄なく最適量の防水材料を使用でき、凹凸状成形枠の底面に各種の凹凸模様を形成して、様々な機能を有する防水シートを構成することもできる。
【0026】
また、樹脂防水シートにトップコート層を形成する場合にも、予め凹凸状成形枠で、樹脂防水シートの表面に、任意の仕上げ色模様、任意な表面模様や多少の凹凸模様を形成できるので、任意の機能・装飾を施すことができる効果がある。更に、高品質のウレタン防水層は経年変化がほとんど無い為、改修時に撤去する必要がなく塗り重ね(オーバーレイ)する事ができ、この事によって廃材の発生を防ぐ効果もある。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.この発明の防水シート10は、全面にわたって複数層が形成される構成である(
図3)。
【0029】
(1) ウレタン防水層を二層として、表面11から裏面12に順に
トップコート層30
高品質ウレタン防水層31
一般用ウレタン防水層32
の三層を含む構成とした防水シート10Aとすることが望ましい(
図3(a))。ここで、防水シート10Aの四周で、トップコート層30の端縁30a、高品質ウレタン防水層31の端縁31a、一般用ウレタン防水層32の端縁32aがほぼ一致するように、揃えて形成される。また、この場合、一般用ウレタン防水層32を省略して、
トップコート層30
高品質ウレタン防水層31
の二層を含む構成として防水シート10Aとすることもできる(
図3(b))。
【0030】
(2) また、求める防水性能によっては、トップコート層30を省略して、
高品質ウレタン防水層31
一般用ウレタン防水層32
の二層を含む構成とした防水シート10Bとすることもできる(
図3(c)。ここで、防水シート10Bの四周で、高品質ウレタン防水層31の端縁31a、一般用ウレタン防水層32の端縁32aがほぼ一致するように、揃えて形成される。この場合には、現場で、トップコート層47を形成し、またはトップコート層47を省略する。
【0031】
(3) 前記におけるトップコート層30は、ウレタン防水層に紫外線が当たることを防止し、あるいは各種の色や模様(平面模様、凹凸模様)を付加するために形成する。また、高品質ウレタン防水層31はウレタン系防水樹脂以外に増量成分を含まない防水性能が高い層である。また、一般用ウレタン防水層32は、ウレタン系防水樹脂に各種の増量成分を加えて、防止性能は劣るが、防水層の厚さを確保するための層である。
【0032】
(4) 防水シート10(10A、10B)は、成型用の凹部23を有する凹状型枠20内に、各層を順に塗って製造する(
図4)。また、防水シート10の製造は、工場や施工現場の敷地内の空き地、敷地内の下階の空き部屋など、実際に施工する現場の床とは異なる場所で予め製造される。
【0033】
2.この発明の防水方法は、以下のように行う。
【0034】
(1) 防水シート10Aを使用して、屋上床面1(
図1)に施工する場合には、防水処理が必要な面に、プライマー層41、接着剤層43を通常の方法で形成する(
図2(a))。続いて、屋上床面1の中央側(排水用溝やパラペット3等の立ち上げ部分を除く)に防水シート10A、10Aを、隣接する防水シート10A、10Aとの間に隙間無く敷く(
図2(b)、
図1)。
続いて、防水シート10A、10Aを敷いていない排水用溝やパラペット3等の立ち上げ部分に、従来の方法でウレタン防水剤を塗布して、現場防水層45を形成し(
図2(c))、続いてトップコート層47を形成する(
図2(d))。
以上で、防水工事が完了する。
なお、ここで、トップコート層30を形成していない防水シート10Bを使用することもできる(図示していない)。とりわけ、直射日光が当たらないなど紫外線照射の少ない現場で、コストを下げられるので有効である。
【0035】
(2) 防水シート10Bを使用して、ベランダ床面4(
図5)に施工する場合には、防水処理が必要な面に、プライマー層41、接着剤層43を通常の方法で形成する(
図6(a))。続いて、ベランダ床面4の中央側(排水用溝6やパラペット3等の立ち上げ部分、室内側立ち上げ部分7を除く)に防水シート10B、10Bを隣接する防水シートの間に隙間無く敷く(
図6(b)、
図5)。
続いて、防水シート10B、10Bを敷いていない排水用溝やパラペット3等の立ち上げ部分、室内側立ち上げ部分7に、従来の方法でウレタン防水剤を塗布して、現場防水層45を形成する(
図6(c))。続いて、防水シート10B、10B、排水用溝やパラペット3等の立ち上げ部分、室内側立ち上げ部分7など、防水層を形成した範囲(防水シート10Bやウレタン防水剤が表れた面)に、トップコート層47を形成する(
図6(d))。
以上で、防水工事が完了する。なお、紫外線による影響が少なく、また防水性能がそれほど要求されない場合には、トップコート層47を省略することもできる(図示していない)。
また、高い防水性能が要求される場合には、前記同様にトップコート層30を形成した防水シート10Aを使用することもできる(図示していない)。
【0036】
(3) 前記防水シート10(10A、10B)で、パラペットの立ち上げ部分(機能性部材)を予め防水シート10(10A、10B)の上方に突出させて一体に成形すれば(図示していない。工場などで)、現場作業を省略して、境目での防水性能も高めることができる。同様に、防水処理が必要な平面に排水用配管がある場合には、配管の内面に添って接着できる形状で、下方に向けて突出した漏斗状の部分(機能性部材)を防水シート10(10A、10B)と一体に成形することもできる(図示していない)。
【実施例1】
【0037】
図面に基づきこの発明の実施例を説明する。この実施例は、予めトップコート層30を形成した防水シート10Aを使用する(
図3(a)(b))。
【0038】
1.防水シート10Aの製造
【0039】
(1) 防水シート10Aを製造する凹状型枠20は、板状の基部21の上面(平坦面)22で、枠状に桟材25、25を配置して、防水シート10Aの形状に合わせた凹部23を形成する(
図4(a))。桟材25は、製造する防水シート10Aの厚さに応じた長方形又は正方形の断面形状で形成されている。
【0040】
(2) 凹部23の底24(基部21の上面22。平坦面)は、使用する防水シート10Aの表面11に合わせて凹凸模様を形成してある。この場合、凹凸模様は、溜まった水をパラペット3、3側へ掃き出し易い模様や、滑りにくい模様、撥水性を発揮できる模様、蒸発を促す模様など従来からある各種機能の凹凸模様や、単に装飾を目的とした模様など、目的に応じて自由に形成できる。
【0041】
(3) 予め工場で、凹部23の平面L
1×L
2、凹部23の高さ(厚さ)tの凹状型枠20、20を用意して、先ず凹部23内に離型剤を塗り、その後、凹部23内にトップコート剤を塗装し、トップコート層30を形成する(
図4(b))。この状態で、トップコート層30の表面(上を向いた面)はほぼ均一な膜厚で形成される。ここで使用するトップコート剤は、使用時にウレタン防水剤の経年劣化を防止することを主な機能として、例えば紫外線防止機能を有する材料(例えば、ユープレックス株式会社の「コスミック・トップUV」)を使用する。また、トップコート層30の色や平面模様も自由に形成することもできる。
【0042】
続いて、トップコート層30が乾いたならば、トップコート層30の表面に、高品質のウレタン防水剤を吹き付け、高品質ウレタン防水層31を形成する(
図4(c))。注入する高品質のウレタン防水剤は、通常の2液性の基剤と硬化剤を衝突混合して、スプレーするタイプである。高品質のウレタン防水剤として、例えば、ユープレックス株式会社の「コスミックRIM S200」(登録商標)を使用する。高品質のウレタン防水剤は、ある程度の流動性を有するので、噴霧後に平面を保って硬化する。
【0043】
続いて、高品質ウレタン防水層31が乾いたならば、高品質ウレタン防水層31の表面側に、ウレタン基材に各種増量成分を混入した汎用のウレタン防水剤を流し込み、一般用ウレタン防水層32を形成する(
図4(d))。汎用のウレタン防水剤としては、例えば、ユープレックス株式会社の「コスミックPRO12」を使用する。汎用のウレタン防水剤は、セルフレベリングで平面を保った状態で硬化する。
【0044】
(4) 続いて、一般用ウレタン防水層32が乾いたならば、脱型して、凹部23内への充填物(トップコート層30、高品質ウレタン防水層31及び一般用ウレタン防水層32の積層体)を上下逆にすれば、使用時の表面11上から裏面12に向けて、
トップコート層30 厚さt
1=0.2〜0.3mm(凹凸)
高品質ウレタン防水層31 厚さt
2=1〜3mm
一般用ウレタン防水層32 厚さt
3=1〜5mm
全面にわたって(各層の端縁20a、31a、32aがそろっている)三層に形成されたウレタン防水シート10Aを構成する(
図4(e)、
図3(a))。
【0045】
(5) 防水シート10の他の実施例
【0046】
前記において、正方形又は長方形断面の桟材25を使用したが、台形など斜めに形成した桟材を使用して凹部23の周囲で、底24より開口が広がるように、桟材25の内側面25aに傾斜面を形成することもできる(
図4(a)参照)。また、同様に逆の傾斜面も可能である。
【0047】
また、前記において、使用時に表面11(最上面)に位置するトップコート層30から形成したが(
図4)、凹部23内の底24から順に、一般用ウレタン防水層32、高品質ウレタン防水層31、トップコート層30を積層して、脱型することもできる(図示していない)。この場合に、トップコート層30に各種凹凸模様を形成する場合には、まだ固まらないトップコート層30の表面に転圧などにより模様を形成することもできる。
【0048】
また、前記において、定型凹状型枠20は、1つの凹部23が形成された構造とすることもでき(
図2(a))、あるいは、複数(2個、4個、12個など)の凹部23、23が形成された構造とすることもできる(図示していない)。
【0049】
また、前記において、防水シート10は一辺L
1×L
2(例えば、L
1=1m、L
2=2m)の長方形としたが、正方形や三角形、六角形など連続して並べることができれば、形状は任意である(図示していない)。
【0050】
また、前記において、高品質ウレタン防水層31、一般用ウレタン防水層32の2層から防水層を形成したが、いずれか1層から防水層を形成することもでき(
図3(b))、この場合には、高品質ウレタン防水層31を形成することが望ましい。
【0051】
また、前記実施例において、凹部23の底24に材料を流し込んで各層30、31、32等を形成したが、桟材25、25を省略して、ある程度広い平面(底24のみを有する)に材料を流し込んで、同様に各層30、31、32等を積層して、周縁部(桟材25、25が形成されるであろう位置)を切断して、所定厚さの防水シート10A、10B等を製造することもできる(図示していない)。なお、周縁部は、ある程度揃っていれば、切断も不要である。
【0052】
2.防水設計
【0053】
(1) 施工予定の屋上(施工現場)は、隅にペントハウス(塔屋)2が形成され、一部が欠けた長方形の平面で、周囲にパラペット3、3が形成されている(
図1)。
従って、この現場では、パラペット3、3とペントハウス2に囲まれた屋上床面1を防水施工する。
【0054】
(2) 長さL
1×L
2の防水シート10の配置を表す割付表を造っておく(
図1)。
図1の現場では、6枚の防水シート10を用意する(
図1)。
【0055】
3.現場での施工
【0056】
(1) 割付け表に基づき、施工現場の屋上床面1に割付線5、5を描き、あるいは立ち上げ部分に各種補助マークをする(
図1)。
【0057】
(2) 割付線5等を残すように、屋上床面1の全体(必要なパラペット3の立ち上げ面、ペントハウス2の立ち上げ面、排水溝6を含む)に、通常のプライマーを塗布し、プライマー層41を形成する(
図2(a))。塗布は、スプレーやローラーなど通常の方法で塗布する。
【0058】
(3) 割付線5等を残すように、プライマー層41の上に、ウレタン樹脂系の接着剤を塗布し、接着剤層43を形成する(
図2(a))。塗布は、スプレーやローラーなど通常の方法で塗布する。
【0059】
(4) 描いた割付線5等に基づき、屋上床面1の中央側に、防水シート10A、10Aを敷き詰めて貼り、防水シート10A、10群Aを構成する(
図2(b))。防水シート10Aの周縁(31a、32a、33a)で、各層が一致しているので、端縁は密着して、防水のための処理は不要であるが、必要ならば隣接する防水シート10A、10Aの当接部分15、15に、ウレタン樹脂系のシーリング剤(接着剤)を塗布することもできる(
図3(a))。
【0060】
(5) 続いて、防水シート10A、10A群の周囲(排水溝6を含む)とパラペット3、3及びペントハウス2の間に、従来のウレタン防水剤を塗布して、現場防水層45を形成する(
図3(c))。現場防水層45で使用するウレタン防水剤は、通常の2液性の基剤と固化剤を衝突混合して、スプレーするタイプであり、例えば、ユープレックス株式会社の「コスミックRIM S200」を使用するが、求める性能により各種材料を選定して使用することができる。
【0061】
(6) 続いて、必要ならば、現場防水層45の表面に、従来使用される紫外線防止用のトップコート層47を形成する(
図2(d))。以上のようにして、防水工事が完了する。トップコート層47を形成すれば、メンテナンス時には、現場防水層45はそのままで、トップコート層45を上塗りすればよいので、メンテナンス作業が大幅に軽減できる。また、防水シート10Aには予めトップコート層30が形成されているので、同様の効果がある。
【0062】
(7) 他の施工手順
【0063】
前記において、屋根上面1の全体にプライマー層41、接着剤層43を形成したが、防水シート10A、10Aを貼る部分(中央側)のみにまず、プライマー層41、接着剤層43を形成して、防水シート10、10を貼った後に、現場防水層45部分のプライマー層41、接着剤層43を形成することもできる(図示していない)。
【0064】
また、前記において、先に、防水シート10、10を貼った後で、現場防水層45を形成したが、逆に先に、現場防水層45を形成した後で(または同時進行で)、防水シート10A、10Aを貼ることもできる(図示していない)。
【0065】
また、前記実施例において、防水シート10A、10A群の周囲に現場防水層45を形成したが、現場防水層45の全部又は一部を、予め工場で特殊形状防水シートとして、防水シート10Aと同様に成型して現場で、貼り付けることもできる(図示していない)この場合には、防水工事をさらに簡略化できる。この場合、特殊形状防水シート部分(機能性部材)を防水シート10Aの端縁に連続して一体に成形することもできる(図示していない)。
【実施例2】
【0066】
図面に基づきこの発明の実施例を説明する。この実施例は、トップコート層30を形成しない防水シート10Bを使用する。
【0067】
1.防水シート10の製造
【0068】
(1) 実施例1と同様に、板状の基部21の上面(平坦面)22で、桟材25、25を配置して、防水シート10の形状に合わせた凹部23を形成する(
図4(a)参照)。
【0069】
(2) 予め工場で、凹部23の平面L
1×L
2、凹部23の高さ(厚さ)tの凹状型枠20、20を用意して、先ず凹部23内に離型剤を塗り、その後、凹部23の底24(基部21の上面22。平坦面)内に高品質のウレタン防水剤を吹き付け、高品質ウレタン防水層30を形成する。注入する高品質のウレタン防水剤は、前記実施例と同様である。
続いて、高品質ウレタン防水層30が乾いたならば、高品質ウレタン防水層30の表面側に、ウレタン基材に各種増量成分を混入した汎用のウレタン防水剤を塗り、一般用ウレタン防水層31を形成する。汎用のウレタン防水剤は前記実施例と同様である。(
図4(d)参照)。
【0070】
(3) 続いて、一般用ウレタン防水層32が乾いたならば、脱型して、凹部23内への充填物(高品質ウレタン防水層31及び一般用ウレタン防水層32の積層体)を上下逆にすれば、表面11から裏面12に向けて、
高品質ウレタン防水層31 厚さt
2=1〜3mm
一般用ウレタン防水層32 厚さt
3=1〜5mm
が全面にわたって二層に形成された防水シート10Bを構成する(
図3(c))。従って、四周で、高品質ウレタン防水層31の縁と一般用ウレタン防水層32の縁とが略一致する。
【0071】
(4) 他の防水シート10の構成は、前記実施例1と同様である。
【0072】
2.現場での施工
【0073】
(1) 前記実施例1と同様に、割付け表に基づき、施工現場の屋上床面に割付線5、5を描き、あるいは立ち上げ部分に各種補助マークをする(
図1参照)。
【0074】
(2) 前記実施例と同様に、プライマー層41を形成し、プライマー層41の上に、接着剤層43を形成し(
図2(a)参照)、屋上床面1の中央側に、割付け表に基づき、防水シート10、10を敷き詰めて貼り、防水シート10B、10B群を構成する(
図3(c)、
図2(b)参照)。
【0075】
(3) 続いて、防水シート10B、10B群の周囲とパラペット3、3及びペントハウス2の間に、前記実施例1と同様に、現場防水層47を形成する(
図2(c)参照)。
【0076】
(4) 続いて、屋根の上面の全体(防水シート10、10の表面及び現場防水層45の表面)に、従来使用される紫外線防止用のトップコート層47を形成する(
図3(c))。以上のようにして、防水工事が完了する。なお、トップコート層47を形成する前に、工場で又は現場で、防水シート10Bの表面(高品質ウレタン防水層31の表面)に付着した離型剤を除去しておく。
【0077】
(5) 前記実施例における他の施工方法は前記実施例1と同様である。
【0078】
3.防水シート10、10の端縁10a、10a同士の接合(図
7)
【0079】
次ぎに、防水シート10の端縁10aを接合する場合について説明する。この発明の防水シート10A、10Bでは、特に、長尺のシートを形成できるので、この接合が適する。尚、各実施例で、防水シート10A、10Bのいずれも適用可能であり、従来の他の防水シート10に適用させることもできる。
【0080】
(1) 水平方向の接合例を説明する。粗ウレタン層32、密ウレタン層31、トップコート層30からなる実施例1の防水シート10A、10Aを端面10a、10aを突き合わせて、床面1上に貼る。付け合わせた両防水シート10A、10Aを端面10a、10aを跨いで、裏面側からビニロンメッシュなどからなる下補強材69、表面側からエポキシリボンなどからなる上補強材68を接着する(
図7(a))。
この際、下補強材69又は上補強材68の一方は省略することもできる。
【0081】
(2) 垂直方向の接合例を説明する。床面(水平面)1とパラペットや壁などの垂直面8(3c)の隅部で接合する際には、垂直面8に縦に貼った防水シート10Aの表面に横に貼った防水シート10Aの端面10aを突き合わせる(
図7(b))。必要ならば、接合した隅部70にエポキシ樹脂などを塗布することもできる(図示していない)。
【0082】
(3) また、他の水平方向の接合例を説明する。粗ウレタン層32の端縁32aより、密ウレタン層31及びトップコート層30の端縁31a、30aを短く形成した防水シート10Aを、必要な処理をした床面1に貼る。続いて、粗ウレタン層32の端縁32aを、密ウレタン層31及びトップコート層30の端縁31a、30aより短く形成した防水シート10Aを上方から貼る(
図7(c))。この際、一方の粗ウレタン層32の露出面と他方の密ウレタン層31の露出面とが互いに密着し、各端縁30a、31a、32aが突き合わされて密着するようにする。この場合、必要ならば両防水シート10A、10Aの当接面に接着剤を塗布する。すなわち、防水シートが複数層からなる場合に、一方の層の端縁を他方の層の端縁よりも短く形成し、各端縁が突き合わされて一方の露出面と他方の露出面とを互いに密着するようにした。
【0083】
(4) また、他の水平方向の接合例を説明する。
図7(a)のように、防水シート10A、10Aを突き合わせた際に、両防水シート10A、10Aで、粗ウレタン層32の端縁32a、32aが当接して、密ウレタン層31及びトップコート層30で、端縁31aと端縁31aの間、端縁30aと端縁30aの間に、隙間71を生じるように、防水シート10A、10Aを形成してある(
図7(d)。この状態で、両防水シート10A、10Aを床面1に貼り、隙間71にエポキシ樹脂などの接着剤を充填して、必要ならばトップコート層を処理する(図示していない)。隙間71の形状は任意である。
【0084】
(5) また、他の水平方向の接合例を説明する。
図7(a)のように、防水シート10B、10Bを突き合わせた際に、両防水シート10B、10Bで、粗ウレタン層32、32の端縁32a、32aが当接して、密ウレタン層31、31の端縁31aと端縁31aの間に、隙間71を生じるように、防水シート10B、10Bを形成してある(
図7(e)。この状態で、両防水シート10B、10Bを床面1に貼り、隙間71にエポキシ樹脂などの接着剤を充填して、必要ならばトップコート層を処理する(図示していない)。隙間71の形状は任意である。