【実施例】
【0040】
以下では、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0041】
<第1実施例>
先ず、第1実施例に係る通信制御システムの全体構成について、
図1を参照して説明する。ここに
図1は、本実施例に係る通信制御システムの構成を示すブロック図である。
【0042】
図1において、本実施例に係る通信制御システム100は、例えばバスやタクシー等の移動体に搭載される電子広告システムとして構成されており、コンテンツサーバ300から配信されるコンテンツを表示可能である。
【0043】
本実施例に係る通信制御システム100は、第1無線通信部101と、第2無線通信部102と、データ再構成部103と、コンテンツリスト解析部104と、回線特性格納部105と、回線特性取得部106と、通信制御部107と、コンテンツ格納部108と、コンテンツ表示部109とを備えて構成されている。
【0044】
第1無線通信部101及び第2無線通信部102は、基地局201及び202、並びに通信網Nを経由して、コンテンツサーバ300とデータの送受信が可能とされている。尚、第1無線通信部101及び第2無線通信部102は、互いに異なる通信網を経由してデータを送受信する。具体的には、例えば第1無線通信部101は、Wi−Fiを用いてデータを送受信可能とされ、第2無線通信部は3Gを用いてデータを送受信可能とされる。
【0045】
データ再構成部103は、第1無線通信部101及び第2無線通信部102によって受信したデータをファイルとして再構成する。データ再構成部103は、受信したデータのうち、コンテンツファイルをコンテンツ格納部108へと送り、コンテンツリストをコンテンツリスト解析部104へと送る。
【0046】
コンテンツリスト解析部104は、本発明の「第2取得手段」の一例であり、コンテンツサーバ300から受信したコンテンツリストを解析し、ダウンロードすべきコンテンツのサイズ及びダウンロード期限情報を取得する。ここで取得された情報は、通信制御部107へと送られる。
【0047】
回線特性格納部105は、第1無線通信部101及び第2無線通信部102に用いられる各回線の通信速度及び通信コスト情報を格納している。
【0048】
回線特性取得部106は、本発明の「第1取得手段」の一例であり、回線特性格納部から第1無線通信部101及び第2無線通信部102に用いられる各回線の通信速度及び通信コスト情報を取得する。ここで取得された情報は、通信制御部107へと送られる。
【0049】
通信制御部107は、本発明の「制御手段」の一例であり、コンテンツリスト解析部104で取得されたダウンロードすべきコンテンツのサイズ及びダウンロード期限情報、並びに回線特性取得部106で取得された各回線の通信速度及び通信コスト情報に基づいて、コンテンツのダウンロードを各回線に割り当てる。尚、具体的な割り当て方法については、後に詳述する。
【0050】
コンテンツ格納部108は、データ再構成部103において構成されたコンテンツファイルを一時的に格納し、コンテンツ表示部109へと出力する。
【0051】
コンテンツ表示部109は、例えばモニタ等を含んで構成されており、コンテンツ格納部108から出力されたコンテンツファイルを表示する。
【0052】
次に、第1実施例に係る通信制御システムによるコンテンツのダウンロード処理について、
図2を参照して説明する。ここに
図2は、第1実施例に係る通信制御システムによるコンテンツのダウンロード処理を示すフローチャートである。
【0053】
図2において、第1実施例に係る通信制御システムの動作時には、先ず通信制御部107によって、ダウンロードすべきコンテンツが存在するか否かが判定される(ステップS101)。ダウンロードすべきコンテンツが存在するか否かは、コンテンツリスト解析部104によるコンテンツリストの解析結果から判定することができる。
【0054】
ダウンロードすべきコンテンツが存在する場合(ステップS101:YES)、通信制御部107によって、回線スケジューリング(即ち、コンテンツの各回線への割り当て)が行われる(ステップS102)。回線スケジューリングは、コンテンツリスト解析部104で取得されたダウンロードすべきコンテンツのサイズ及びダウンロード期限情報、並びに回線特性取得部106で取得された各回線の通信速度及び通信コスト情報に基づいて行われる。回線スケジューリングの具体的な方法については、後に詳述する。
【0055】
回線スケジューリングが終了すると、スケジューリングに基づき通信が行われる(ステップS103)。即ち、回線スケジューリングで割り当てられた回線を用いて、実際にコンテンツのダウンロードが行われる。
【0056】
コンテンツのダウンロード時間は監視されており、ダウンロード開始から所定期間が経過すると(ステップS104:YES)、再びステップS101からの処理が行われる。即ち、回線スケジューリングが再び行われる。このように、所定期間毎に回線スケジューリングを行うようにすれば、各回線の通信速度及び通信コストが変動した場合であっても、適切なダウンロードを実現することができる。
【0057】
上述したように回線スケジューリング及びダウンロードが繰り返し行われ、全てのコンテンツのダウンロードが完了すると(ステップS101:NO)、第1実施例に係る通信制御システムによる一連の処理は終了する。
【0058】
次に、第1実施例に係る通信制御システムによる回線スケジューリング処理について、
図3を参照して説明する。ここに
図3は、第1実施例に係る通信制御システムによる回線スケジューリング処理を示すフローチャートである。
【0059】
図3において、回線スケジューリング処理では、先ず通信制御部107によって、未スケジュールのコンテンツが存在するか否かが判定される(ステップS201)。具体的には、ダウンロードすべきコンテンツであって、回線スケジューリングが行われていないものが存在するか否かが判定される。
【0060】
未スケジュールのコンテンツが存在する場合(ステップS201:YES)、ダウンロードすべきコンテンツのうち、ダウンロード期限が最も近いコンテンツが1つ選択される(ステップS202)。続いて、第1無線通信部101及び第2無線通信部102で利用可能な回線及び時間帯の組(以下、スロットと呼ぶ)から、選択されたコンテンツのダウンロード期限より前の時間帯で、最も低コストであるスロットが選択される(ステップS203)。
【0061】
選択されたスロットには、ダウンロード期限が最も近いコンテンツとして選択されたコンテンツが割り当てられる(ステップS204)。続いて、データサイズを全て満たすように割り当てられたか否かが判定される(ステップS205)。即ち、割り当てられたスロットによって、コンテンツを全てダウンロードできるか否かが判定される。
【0062】
コンテンツのデータサイズを全て割り当てられなかった場合(ステップS205:NO)、再びステップS203から処理が行われる。これにより、選択されたスロットでダウンロードしきれなかったコンテンツの残りが、他のスロットに割り当てられることになる。一方、コンテンツのデータサイズを全て割り当てられた場合(ステップS205:YES)、再びステップS201から処理が行われる。これにより、割り当て済みとなったコンテンツの次にダウンロード期限が近いコンテンツに対するスケジューリングが行われることになる。
【0063】
上述したようにコンテンツの選択及び割り当てるスロットの選択が繰り返し行われ、全てのコンテンツの割り当てが完了すると(ステップS201:NO)、回線スケジューリング処理は終了する。
【0064】
以下では、上述した回線スケジューリング処理の具体例について、
図4から
図6を参照して説明する。ここに
図4は、回線特性情報の一例を示すリスト図であり、
図5は、コンテンツリストの一例を示すリスト図である。また
図6は、ダウンロードすべきコンテンツの各回線への割り当て結果を示す概念図である。
【0065】
図4に示すように、コンテンツのダウンロードに利用可能な回線として回線X及び回線Yの2つがあるとする。回線X及び回線Yの1時間当たりの平均通信速度は、回線Xが5MB/h、回線Yが20MB/hであり、それぞれ固定である。また、回線Xの1時間当たりの通信コストは0円で固定である。一方、回線Yの1時間当たりの通信コストは時間帯によって変動し、1時間目が110円、2時間目が80円、3時間目が50円、4時間目が70円、5時間目が100円である。
【0066】
図5に示すように、コンテンツリストにおいて、ダウンロードすべきコンテンツがコンテンツA、コンテンツB、コンテンツCの3つ存在するとする。コンテンツAのデータサイズは40MBであり、ダウンロード期限は5時間以内である。コンテンツBのデータサイズ30MBであり、ダウンロード期限は3時間以内である。コンテンツCのデータサイズは18MBであり、ダウンロード期限は2時間以内である。
【0067】
以上の条件で回線スケジューリングを行う場合、先ずダウンロード期限が最も近いコンテンツは、ダウンロード期限が2時間以内のコンテンツCであるため、割り当て対象のコンテンツとして最初にコンテンツCが選択される。一方で、2時間以内に利用可能で通信コストの低いスロットは、通信コストが0円である回線Xの1時間目及び2時間目であるので、コンテンツCの割り当て先として、まずこれらが選択される。
【0068】
図6に示すように、選択された回線Xには、割り当て対象であるコンテンツCが、1時間目と2時間目に夫々割り当てられる。但し、回線Xは通信速度が5MB/hであるため、これら2スロット分を全て割り当てても、コンテンツCのデータサイズである18MBを全て割り当てることができない。よって、割り当て切れなかったコンテンツCの残りの8MBは、他のスロットへ割り当てられることになる。
【0069】
ここで、2時間以内に利用可能な残りのスロットは回線Yの1時間目及び2時間目であるが、通信コストを見た場合、2時間目の通信コストの方が低い。よって、コンテンツCの残りの8MBは、回線Yの2時間目に割り当てられることになる。これにより、コンテンツCの割り当ては完了する。
【0070】
続いて、割り当て済みのコンテンツCの次にダウンロード期限が最も近いコンテンツは、ダウンロード期限が3時間以内のコンテンツBであるため、割り当て対象のコンテンツとしてコンテンツBが選択される。一方で、通信コストの低い回線は、通信コストが0円である回線Xであるが、回線Xの1時間目及び2時間目は既にコンテンツCに割り当てられているため、利用可能なのは3時間目のスロットのみである。従って、コンテンツBにはまずこのスロットが割り当てられる。
【0071】
ここで再び、割り当て可能な5MBを全てコンテンツBに割り当てても、コンテンツBのデータサイズである30MBを全て割り当てることができない。よって、割り当て切れなかったコンテンツBの残りの25MBは、他のスロットへと割り当てられることになる。
【0072】
ここで、3時間以内に利用可能な残りスロットである、回線Yの1時間目、2時間目及び3時間目の通信コストを見た場合、3時間目の通信コストが最も低い。よって、コンテンツCは、回線Yの3時間目に割り当てられる。但し、回線Yは通信速度が20MB/hであるため、割り当て可能な20MBを全て割り当てても、コンテンツBの残りである25MBを全て割り当てることができない。よって、残りの5MBは、3時間目の次に回線コストの低い2時間目に割り当てられることになる。これにより、コンテンツBの割り当ては完了する。
【0073】
最後に、ダウンロード期限が5時間であるコンテンツAが、割り当て対象のコンテンツとして選択される。コンテンツAに対しては、利用可能なスロットの内、まず通信コストの低い回線Xの4時間目及び5時間目が割り当てられる。ここで再び、これら2つのスロットだけではコンテンツAのデータサイズである40MBを全て割り当てることはできない。よって、割り当て切れなかったコンテンツAの残りの30MBは、回線Yへと割り当てられることになる。
【0074】
ここで、回線Yの1から5時間目の通信コストを見た場合、帯域を全て割り当て済みの3時間目を除いて、4時間目の通信コストが最も低い。よって、コンテンツAは、回線Yの4時間目に割り当てられる。しかしながら、割り当て可能な20MBを全て割り当てても、コンテンツAの残りである30MBを全て割り当てることができない。よって、残りの10MBは、4時間目の次に回線コストの低い2時間目に割り当てられることになる。しかし2時間目においても、割り当て可能な7MB(即ち、コンテンツCの8MB及びコンテンツBの5MBが割り当てられた残りの帯域)を全て割り当てても、コンテンツAの残りである10MBを全て割り当てることができない。よって、残りの3MBは、2時間目の次に回線コストの低い5時間目に割り当てられることになる。これにより、コンテンツAの割り当ては完了する。
【0075】
以上説明したように、第1実施例に係る通信制御システム100によれば、ダウンロード期限内にダウンロードが完了できる範囲で、できるだけ通信コストが低くなるような回線の組み合わせが選択される。このような回線スケジューリングによれば、コンテンツのダウンロード期限を遵守しつつ、可能な限り通信コストを低減することが可能である。
【0076】
<第2実施形態>
続いて、第2実施例に係る通信制御システムについて、
図7を参照して説明する。ここに
図7は、第2実施例に係る通信制御システムの構成を示すブロック図である。尚、第2実施例に係る通信制御システムは、上述した第1実施例に係る通信制御システムと比べて一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の点については概ね同様である。このため、以下では第1実施例と異なる部分について詳細に説明し、重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0077】
図7において、第2実施例に係る通信制御システム100は、第1無線通信部101と、第2無線通信部102と、データ再構成部103と、コンテンツリスト解析部104と、回線特性取得部106と、通信制御部107と、コンテンツ格納部108と、コンテンツ表示部109と、移動体の外部に設けられる回線特性管理部400とを備えて構成されている。
【0078】
回線特性管理部400は、例えば複数の移動体に対応するサーバとして設けられており、
図1で示した回線特性格納部105と同様に、第1無線通信部101及び第2無線通信部102に用いられる各回線の通信速度及び通信コスト情報を格納している。
【0079】
第2実施例では特に、回線特性取得部106が各回線の通信速度及び通信コスト情報を取得する際に、通信網Nを経由した回線特性管理部400との通信が行われる。即ち、各回線の通信速度及び通信コスト情報は、通信網Nを経由して回線特性管理部400から取得される。このようにすれば、複数の移動体で取得される通信速度及び通信コスト情報を、回線特性管理部400において一括管理することができるため、好適にシステムを管理することが可能となる。
【0080】
また、第2実施例に係る回線特性取得部106は特に、データのダウンロード速度の実測値に基づいて、各回線の通信速度情報を得ることもできる。即ち、回線特性取得部106は、本発明の「算出手段」としての機能も有している。このようにすれば、通信速度情報の正確性を高めることができるたね、より適切な回線スケジューリングを行うことが可能となる。
【0081】
尚、実測値に基づいて得られた各回線の通信速度情報を回線特性管理部400にアップロードすれば、他の移動体に搭載される通信制御システムにおいても、上述した効果を享受できる。
【0082】
以上説明したように、第1実施例に係る通信制御システム100によれば、回線特性管理部400が外部に設けられると共に、回線特性取得部106がダウンロードの実測値を各回線の速度情報として取得できるため、より好適にコンテンツのダウンロードを行うことが可能である。
【0083】
<第3実施形態>
続いて、第3実施例に係る通信制御システムについて、
図8を参照して説明する。ここに
図8は、第3実施例に係る通信制御システムの構成を示すブロック図である。尚、第3実施例に係る通信制御システムは、上述した第1実施例に係る通信制御システムと比べて一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の点については概ね同様である。このため、以下では第1実施例と異なる部分について詳細に説明し、重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0084】
図8において、第3実施例に係る通信制御システム100は、第1無線通信部101と、第2無線通信部102と、データ再構成部103と、コンテンツリスト解析部104と、回線特性格納部105と、回線特性取得部106と、通信制御部107と、コンテンツ格納部108と、コンテンツ表示部109と、位置検出部110とを備えて構成されている。
【0085】
位置検出部110は、本発明の「位置検出手段」の一例であり、GPS機能を用いて移動体の現在位置を検出できる。検出された位置情報は、回線特性取得部106へと送られる。
【0086】
第3実施例では特に、回線特性格納部105が、各回線の通信速度及び通信コスト情報をエリア単位で記憶している。そして、回線特性取得部106が各回線の通信速度及び通信コスト情報を取得する際には、位置検出部110で検出された位置に対応するエリアの各回線の通信速度及び通信コスト情報が、取得される。このようにすれば、例えば地域の通信事情等に即した、より細かなダウンロード制御を行うことが可能となる。
【0087】
尚、第3実施例についても、第2実施例のような回線特性管理部400を移動体外部に備えるシステム構成を適用することが可能である。
【0088】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う通信制御システム及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。