(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882736
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】軸線方向磁束機についての巻線の絶縁配置
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20160225BHJP
H02K 3/46 20060101ALI20160225BHJP
H02K 15/10 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
H02K3/34 B
H02K3/46 B
H02K15/10
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-528142(P2011-528142)
(86)(22)【出願日】2009年9月29日
(65)【公表番号】特表2012-504385(P2012-504385A)
(43)【公表日】2012年2月16日
(86)【国際出願番号】AU2009001290
(87)【国際公開番号】WO2010034082
(87)【国際公開日】20100401
【審査請求日】2012年9月6日
(31)【優先権主張番号】2008905057
(32)【優先日】2008年9月29日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】509303730
【氏名又は名称】イン モーション テクノロジーズ プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】ラングフォード,チャールズ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】カミレリ,スティーブン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ローザ,ラファル
【審査官】
服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−028855(JP,A)
【文献】
特開2008−118833(JP,A)
【文献】
特開2004−282989(JP,A)
【文献】
国際公開第2003/047069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/34
H02K 3/46
H02K 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向磁束機についての固定子であって、
使用時に前記磁束機の回転軸線周りに垂直に配列される背面と、該背面から軸線方向に延在し且つ該背面の反対側に自由端を含む複数の歯とを有する固定子コアであって、複数の巻線受容スロットが近接した歯の間に画成される、固定子コアと、
複数のコイルを含む電気巻線であって、各コイルが前記複数の固定子歯のうちの一つの固定子歯の周りに配設され且つ絶縁形成体によって前記固定子歯から電気的に絶縁され、前記絶縁形成体が前記固定子歯の形状に密接に適合する形状を有し、且つ、前記コイルを少なくとも部分的に取り囲み且つ近接した歯の側壁及び/又は近接したコイルから前記コイルを電気的に絶縁するように構成された側面カバーを含み、各絶縁形成体がスリーブであって当該スリーブを通して歯受容孔を有するスリーブと、該スリーブから外側に且つ前記背面から軸方向に間隔をあけて延在する一対のフランジであって前記スリーブの各端部に一つのフランジが配設される一対のフランジとを含み、前記コイルが前記フランジ間に巻かれ、当該電気巻線を形成すべく相互接続される電気巻線と
を含む、固定子。
【請求項2】
各固定子歯がほぼ台形の形状を有し、且つ各巻線受容スロットがほぼ平行な側壁を有する、請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
各スリーブの歯受容孔が、当該歯受容孔が配設される前記固定子歯の形状に密接に適合するように、ほぼ台形の形状を有する、請求項2に記載の固定子。
【請求項4】
各絶縁形成体の長さが、該各絶縁形成体の自由端が前記背面に対して平行な平面において前記固定子歯の自由端とほぼ整列するように、前記固定子歯の長さにほぼ等しい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固定子。
【請求項5】
各絶縁形成体が、前記背面に面する端部に、該背面に当該絶縁形成体を繋止すべく配置される固定具を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固定子。
【請求項6】
前記コイルの相互接続を促進するために、各絶縁形成体が該各絶縁形成体の径方向外側に少なくとも一つの配線チャネルを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固定子。
【請求項7】
前記磁束機が多相機であり、且つ、各絶縁形成体が、同相の一連のコイルの間で導線を案内し且つ他相のコイル及び前記固定子コアから前記同相の一連のコイルを電気的に絶縁するように配置された複数の配線チャネルを含む、請求項6に記載の固定子。
【請求項8】
各側面カバーが、前記絶縁形成体に設けられた凹部と協働するよう構成された保持クリップを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固定子。
【請求項9】
前記コイルが前記固定子コアの歯に一つ置きに設けられ、且つ、絶縁スリーブが、介在する歯の側壁から前記コイルを電気的に絶縁するように前記介在する歯を包囲する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の固定子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項において画成されるような固定子を有する、軸線方向磁束モータ。
【請求項11】
軸線方向磁束機のための固定子を構築する方法であって、
固定子コアであって、該コアが背面と複数の歯とを有し、該背面が使用時に前記磁束機の回転軸線周りに垂直に配列され、前記複数の歯が近接した歯の間に巻線受容スロットを画成するように前記背面から軸線方向に延在し、且つ、前記複数の歯のそれぞれが前記背面に第1端部を含み且つ該背面の反対側に第2端部を含む、固定子コアを提供することと、
複数の絶縁形成体であって、各形成体が、その中に画成された孔を含み且つ前記固定子歯の形状に密接に適合するように構成され、且つ、スリーブであって当該スリーブを通して歯受容孔を有するスリーブと、該スリーブから外側に且つ前記背面から軸方向に間隔をあけて延在する一対のフランジであって前記スリーブの各端部に一つのフランジが配設される一対のフランジとを含む、絶縁形成体を提供することと、
各形成体の周り且つ前記フランジ間にコイルを巻くことと、
各絶縁形成体の側面カバーで前記コイルを少なくとも部分的に取り囲むことにより、近接した歯の側壁及び/又は近接したコイルから前記コイルを電気的に絶縁することと、
前記複数の歯のうちの一つの歯の前記第2端部を各形成体の孔内に摺動させることと、
電気巻線を形成すべく前記コイルを互いに接続することと
を含む、方法。
【請求項12】
当該方法が、前記歯を前記孔内に摺動させる前に、該絶縁形成体に前記側面カバーを連結することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記絶縁形成体と、関連したコイルとが前記固定子コアの歯に一つ置きに設置され、当該方法が、介在する歯から前記コイルを電気的に絶縁するように、前記介在する歯の上に絶縁スリーブを摺動させることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記背面に対して平行な平面に沿った、各固定子歯の断面が前記背面から前記各固定子歯の自由端にかけてほぼ一様である、請求項1に記載の固定子。
【請求項15】
各固定子歯の前記自由端が少なくとも部分的に前記歯受容孔を通って延在するように構成される、請求項3に記載の固定子。
【請求項16】
前記絶縁形成体の周りに巻かれたコイルが一体型固定子コアに挿入される、請求項1に記載の固定子。
【請求項17】
前記一対のフランジが、該スリーブの第1端部における第1フランジと、該スリーブの第2端部における第2フランジとを含み、該第1フランジ及び第2フランジが前記絶縁形成体に構造的な支持を提供する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の歯のうちの一つの歯の上に各形成体を摺動させる前に、背面から軸線方向に延在する複数の歯を含む固定子コアを提供することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電気モータ及び発電器のような電気機械に関する。特に、本発明は、スロットを有するコアを備えた軸線方向磁束機における、電気巻線についての絶縁配置に関する。軸線方向磁束モータが絶縁配置についての最も一般的な用途であるだろうから、軸線方向磁束モータに関して本発明を記述するのが都合良いが、本発明が軸線方向磁束発生器にも等しく適用できることが理解されるべきである。
【背景技術】
【0002】
モータ固定子は、エナメル加工された銅線から典型的には製造される導電性巻線の挿入を可能とするためのスロットを備えた、積層構造の電気鋼を典型的には含む。固定子の鋼がそれ自体完全に導電性を有するので、銅の巻線と鋼の固定子との間で電流が流れるのを防ぐために、典型的には、絶縁材料がライニングとして固定子のスロットに加えられる。絶縁材料は、典型的にはポリエステルフィルムのシートであり、例えばデュポン帝人フィルムによって生産されるマイラー(登録商標)であり、恐らくは、インビスタテクノロジーによって生産されるダクロン(登録商標)のような他の材料とのサンドイッチ構造である。この材料は、固定子から巻線を電気的に絶縁するような態様で形成されなければならない。また、銅と鋼との間の最小の空間距離が満たされることを確実なものとするために、大抵の場合、絶縁材料はその端部で折り返される(又は「カフス部が付けられる」)。また、典型的には、厚手のマイラー製のウェッジ(wedge)を用いて、銅の巻線は所定位置に保持され、ウェッジは、銅が挿入された時点でスロットの上端部に入れられる。固定子から突出する銅の巻線の「エンドターン」部分は、その部分が糸で縛られることによって所定位置に保持される。
【0003】
添付の図面の
図1において、この従来技術の固定子配置の典型例が部分的に示される。この例では、モータ固定子1が、積層固定子コア3と、固定子コア3の歯の周りに巻かれた巻線コイル5とを含む。巻線コイル5は絶縁材料7の層によって固定子コア3から電気的に絶縁される。この材料は、電気絶縁の完全性を維持するように、固定子コアの歯の各端部にカフス部9を備えて形成される。
【0004】
「配線ルール」(例えばオーストラリアにおける家庭用途のモータについてのAS60335.1)では、「非絶縁の」銅線の表面と、鋼の固定子コアの表面(配線ルールでは、銅線上の通常のエナメルコーティングは絶縁体として見なされない)との間に所定の最小空間距離が維持されることが規定される。この結果、この例では、空間距離11が、「非絶縁の」銅線の表面と、鋼の固定子コアの表面との間に必要とされるこの最小距離を確立すべく設けられる。
【0005】
このことは、電線が、反転して固定子コア3の別のスロットに向かう前に、スロットを通って真っ直ぐに進んで、絶縁体7のカフス部分9を通した直線に続くのに実際に必要な長さよりも巻線コイル5が長いことを意味する。この結果、最小空間距離の要件を確実に満たすために、巻線コイル5は拡大される。
【0006】
この従来の巻線/絶縁体配置のいくつかの不利な点は以下の通りである。
・配置が複雑である。各スロットはうまく定置された(場合によってはカフス部の端部を備えた)スロットライナ及びスロットウェッジを有しなければならない。また、典型的には、巻線を所定位置に保持するために、巻線は糸で固定子に「縛られる」であろう。
・良好な結果を得るのが難しい。作業がしっかりと管理されなければならない。すなわち、例えば、単一の電線が絶縁体の下で滑る問題と、ウェッジが巻線を適切に保持することができない問題と、カフス部分が、許容される空間距離の範囲内において巻線を正確に配設することができない問題とが起きる場合がある。
・巻線作業が、なければならない多くの作業ステップ及び点検のせいで高コストである。
・最小空間距離の要件を満たすのに必要とされる追加の材料のせいで、モータ効率を犠牲にしていくつかの巻線材料が余計に含まれる。
【0007】
前述の内容を考慮すると、より便利であり、組立を容易にし、無駄を減らし、且つ従来技術の配置と比較して電気機械の効率を改善する、軸線方向磁束機についての絶縁配置に対する要求が、依然として存在する。
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明の一つの態様では、軸線方向磁束機のための固定子が提供される。固定子は、
使用時に前記磁束機の回転軸線周りに垂直に配列される背面と、巻線受容スロットを近接した歯の間に形成するように背面から軸線方向に延在する複数の歯とを有する固定子コアと、
複数のコイルを含む電気巻線であって、各コイルが固定子コアの歯の周りに配設され且つ絶縁形成体によって固定子歯から電気的に絶縁され、絶縁形成体が固定子歯の形状に密接に適合する形状を有し、コイルが巻線を形成すべく相互接続される電気巻線と
を含む。
【0009】
絶縁形成体を使用することは、従来技術の配置において維持されなければならない空間距離の必要性を回避するのに役立つ。この目的のために、絶縁形成体は、巻線コイルのターンの平均長さが減少せしめられるように、固定子歯の形状に密接に適合する。このことは、巻線の抵抗を減少させ、材料の使用(及びコスト)を減少させ、且つ磁束機の効率を改善する。
【0010】
本発明の文脈では、「密接に適合する」という表現は、絶縁形成体が、歯と形成体との間に最小の隙間がある状態で、固定子コアの歯を覆って嵌合し、且つ固定子の歯と銅の巻線との間の形成体の厚みが最小化されることを意味することが意図されている。好ましくは、各固定子コアの歯はほぼ台形の形状を有し、各巻線受容スロットはほぼ平行な側壁を有する。この態様では、巻線コイルは歯の間のスロットをほぼ充填し、高い効率さえももたらされ且つ全体的なコストが減少せしめられる。
【0011】
好ましい実施形態では、各絶縁形成体は、スリーブであって当該スリーブを通して歯受容孔を有するスリーブと、スリーブから外側に延在する一対のフランジとを含む。一つのフランジがスリーブの各端部に配設され、コイルはフランジ間に巻かれる。この態様では、電気巻線の各コイルは、固定子コアの歯の上に設置される前に、絶縁形成体の周りに巻かれることができる。この技術は磁束機の固定子の組立を著しく支援する。
【0012】
各スリーブの歯受容孔が、それが配設される歯の台形の形状に密接に適合するように、ほぼ台形の形状を有することは有利である。また、スリーブの側壁は、物理的剛性及び電気絶縁の要件に従って、巻線コイルの平均ターン長さをできるだけ減少させるようにできるだけ薄く製造されるべきである。
【0013】
好ましくは、各絶縁形成体の長さは固定子歯の長さにほぼ等しくされる。この態様では、絶縁形成体の自由端が、背面に対して平行な平面にほぼ整列するであろう。
【0014】
一つの実施形態では、各絶縁形成体は、固定子コアの背面に面する端部に、背面に絶縁形成体を繋止するように構成された可撓クリップを含む。
【0015】
コイルの相互接続を促進するために、絶縁形成体はその径方向外側に配線チャネルも含むことができる。多相磁束機では、各絶縁形成体は、同相の一連のコイルの間で導線を案内し且つ他相のコイル及び固定子コアから同相の一連のコイルを電気的に絶縁するように配置された複数の配線チャネルを含むことができる。
【0016】
好ましい実施形態では、各絶縁形成体は、コイルを少なくとも部分的に取り囲み且つ近接した側壁及び/又は近接したコイルから電気的に絶縁するように構成された側面カバーを含む。側面カバーは、一旦巻かれたコイルを覆ってスナップ留めで閉じられる保持クリップ(retaining clip)を含むことができる。代替的に又は加えて、側面カバーは絶縁形成体のフランジにヒンジ連結されてもよい。
【0017】
代替的な実施形態では、(絶縁形成体を備えた)巻線コイルは固定子コアの歯に一つ置きに提供され、且つ、絶縁スリーブは、介在する歯の側壁からコイルを電気的に絶縁するように、介在する歯を包囲する。
【0018】
本発明の別の態様では、上述されたような固定子を有する軸線方向磁束モータが提供される。
【0019】
本発明の更なる態様では、軸線方向磁束機のための固定子を構築する方法が提供される。この方法は、
固定子コアであって、コアが背面と複数の歯とを有し、背面が使用時に磁束機の回転軸線周りに垂直に配列され、且つ、複数の歯が近接した歯の間に巻線受容スロットを形成するように背面から軸線方向に延在する、固定子コアを提供するステップと、
複数の絶縁形成体であって、各形成体が固定子歯の形状に密接に適合するように構成される絶縁形成体を提供するステップと、
各形成体の周りにコイルを巻くステップと、
固定子コアの歯の上に各形成体を摺動させるステップと、
電気巻線を形成すべくコイルを互いに接続するステップと
を含む。
【0020】
本発明の更なる理解を補助するために、以下、好ましい実施形態を示す添付の図面を参照する。これら実施形態が単なる例示によって与えられ且つ本発明がこの例示によって限定されるものではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、電気機械のための従来技術の固定子の一部分の図式的表示である。
【
図2】
図2は、本発明の好ましい実施形態に係る軸線方向磁束モータのための固定子の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の固定子に使用されるような二部品型の絶縁形成体(その上に巻かれたコイルを備える)の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示される(コイルなしの)絶縁形成体の本体部分の斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の代替的な実施形態に係る軸線方向磁束モータのための別の固定子の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の固定子に使用されるような絶縁形成体の図である。
【
図7】
図7は、
図5の固定子に使用されるような絶縁形成体の図である。
【
図8】
図8は、
図5の固定子に使用されるような絶縁形成体の図である。
【
図9】
図9は、本発明の更なる代替的な実施形態に係る軸線方向磁束モータのための別の固定子の斜視図である。
【
図10】
図10は、
図9の固定子に使用されるような(コイルを備えた)絶縁形成体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図を参照すると、
図2は、本発明の好ましい実施形態に係る軸線方向磁束モータのための、部分的に組み立てられた固定子を示す。固定子20が固定子コア22を含み、固定子コア22は、背面24と、背面24から延在する複数の歯26とを有する。使用時に、背面24は電気モータの回転軸線周りに垂直に配列され、歯26は背面24から軸線方向に延在し且つ歯26の間に巻線受容スロット28を形成する。また、固定子20は、複数のコイル32から成る電気巻線30も含み、ここで、各コイルは固定子コア22の歯26の周りに配設される。コイル32のそれぞれは、絶縁形成体34によって各固定子歯26から電気的に絶縁される。図に見られるように、絶縁形成体34の内部形状は固定子歯26の外部形状に密接に適合する。
図2では具体的に示されないが、コイル32のそれぞれは電気巻線30全体を形成すべく相互接続される。
【0023】
示される実施形態において、固定子コア22の歯26は巻線コイル32を一つ置きに含む。この結果、各スロット28は、巻線の単一コイル32に属する導線でほぼ完全に充填される。しかしながら、代替的な実施形態(図示せず)では、固定子コアの全ての歯が包囲コイルを含むことができる。この実施形態では、スロットのそれぞれは、近接した歯を包囲する二つのコイルのそれぞれに属する導線を含むであろう。
【0024】
図2に見られるように、各歯26は、径方向の内縁及び径方向の外縁が実際には少し湾曲しているが、断面がほぼ台形である。各スロット28はほぼ平行な側壁を有する。また、各絶縁形成体34の長さは、各絶縁形成体の自由端(
図2に示される方向における各絶縁形成体の上端)が背面24に対して平行な平面にほぼ整列するように、歯26の長さにほぼ等しい。使用時に、この平面は軸線方向磁束モータの回転子に面する。
【0025】
次に
図3を見ると、
図2の固定子に使用されるような絶縁形成体の分解斜視図が示される。この絶縁形成体は、本体部分36と、二つの側面カバー38とを含む二部品型の形成体である。この実施形態では、側面カバー38は、コイル32を部分的に取り囲み且つ近接する歯26の側壁及び/又は近接するコイル32からコイル32を電気的に絶縁するように構成される。また、側面カバー38は保持クリップ40を含み、保持クリップ40は、絶縁形成体の本体部分36に設けられた整合凹部(matching recess)42と協働する。
【0026】
図4は、所定位置にコイル32がない絶縁形成体34の本体部分36を示す。絶縁形成体34が、スリーブ44であって当該スリーブ44を通して歯受容孔46を有するスリーブ44を含むことがこの図から理解されるであろう。この孔46は、歯26の台形の形状に密接に適合するように台形断面を有する。また、絶縁形成体34は一対のフランジ48、50も含み、一対のフランジ48、50はスリーブ44から外側に延在し、(絶縁形成体が、
図4に示される方向にある状態で)一方のフランジ48はスリーブ44の上端にあり且つ他方のフランジ50はスリーブ44の下端にある。
【0027】
次に
図5を見ると、本発明の代替的な実施形態に係る軸線方向磁束モータのための別の固定子120が示される。この図及びこれに続く全ての図において、
図1〜
図3に示される特徴と同一の又は同様の特徴を示すのに同様の参照番号が用いられる。この結果、これら特徴は、同様であるとき、詳細には記述されない。
【0028】
この実施形態では、固定子120が、
図2に示される固定子コアと同一の固定子コアを再び含む。また、固定子は、相互接続される複数のコイル32から成る電気巻線も含む。この実施形態では、モータが三相モータであるため、コイル32が二つ置きに接続される。例えば、コイル32’が同相のコイル32”に接続され、且つ介在する二つのコイルがこの相について迂回される。代わりに、これら二つのコイルは三相モータの他の二つの相に属する。
【0029】
巻線コイル32の相互接続を促進するために、各絶縁形成体はその径方向外側に三つの配線チャネル152を含む。これらチャネルは、同相の一連のコイル間で、相互接続する導線154を案内し且つ他相のコイル及び固定子コアから電気的に絶縁するように配置される。
図5では示されないが、巻線の他のコイルも同様に相互接続される。
【0030】
図6〜
図8は、
図5の固定子に使用されるタイプの絶縁形成体を示す。特に、
図6は上方且つ径方向内側の位置からの斜視図を示し、
図7は上方且つ径方向外側の位置からの斜視図を示し、且つ
図8は下方からの斜視図を示す。各図において、絶縁形成体134が、外側に延在するフランジ48、50を備えたスリーブ44を含むことが見られ、各端部に一つのフランジが設けられる。三つの配線チャネル152は、フランジ50から(
図6及び
図7に示される方向において)下向きに延在し且つ絶縁形成体134の径方向外側にある。
【0031】
図6及び
図8において最もよく見られるように、絶縁形成体134は、固定子コアの背面24に面する端部に、可撓クリップ156も含み、可撓クリップ156は絶縁形成体134を背面24に繋止するように配置される。このクリップ156によって、固定子コアに絶縁形成体134を繋止するために任意の更なる手段が必要とされることを回避することができる。
【0032】
図5を再び参照すると、巻線コイル32を含まない一つ置きの各固定子コアの歯26が、歯26の側壁から各コイル32を電気的に絶縁するように、(黒色の表面によって表される)絶縁テープで包まれることが見られる。しかしながら、
図3に示されるタイプの側面カバーが代替的に提供されても良いことが理解されるべきである。
【0033】
以下、
図9を参照すると、本発明の更なる代替的な実施形態に係る軸線方向磁束モータのための別の固定子220が示される。再度、同様の参照番号が、先の図面に示される特徴と同様の特徴を示すのに用いられる。
【0034】
介在する歯が絶縁テープに包まれる代わりに絶縁スリーブ160が提供されることを除いて、この実施形態は、
図5に示される実施形態といくらか類似する。歯26は巻線コイル32を一つ置きに含み、且つ介在する歯は絶縁スリーブ160で覆われる。これらスリーブは、介在する歯の側壁からコイル32の外面を電気的に絶縁するのに役立つ。
【0035】
最後に、
図10は、
図9の固定子220に使用されるような(巻線コイルを含む)絶縁形成体を示し、また、
図11は、その固定子において使用されるような絶縁スリーブを示す。
【0036】
巻線コイルの平均ターン長さを減少させるために、各絶縁形成体のスリーブ44が、強度及び絶縁の要件によって決められる最小厚みに従って、できるだけ薄く製造されるべきであることが理解されるであろう。このように述べたが、発明者は、絶縁形成体の強度の大部分が実際にはスリーブ44よりもむしろ端フランジ48及び50によって提供されることを発見してきた。このことは、スリーブが、比較的薄く、例えば0.2〜0.5mmの範囲で製造されることができ、それでもなお十分な強度を提供できることを意味する。また、必要な電気絶縁要件を満たすのに必要とされる厚みは、使用される特定の材料と、固定子が使用されるべき地理的範囲における配線ルールの要件とに依存するであろう。従来のポリエステル材料が適切であることを発明者が発見したが、特定の電気モータについて適切な材料を選択することは、当業者の能力の範囲内においてなされると考えられる。
【0037】
本発明に係る軸線方向磁束モータのための固定子を構築するために、上述されたタイプの固定子コアが最初に提供される。斯かるコアは、近接した歯の間に、巻線受容スロットを形成するように、背面と、背面から延在する複数の歯とを有する。側面カバーを備えた又は側面カバーなしの、上述されたタイプの絶縁形成体が提供されて、コイルが各絶縁形成体に巻かれる。「一続きのコイル」が生成されるように、いくつかのコイルを続けて巻くことも可能である。その後、各形成体は、そのコイルと共に、固定子コアの各歯の上に軸線方向に摺動される。最後に、全てのコイルは電気巻線を形成すべく互いに接続される。
【0038】
前述されたことに基づいて、本発明の好ましい実施形態によって提供されるいくつかの利点が以下の通りであることが理解されるであろう。
・巻線コイルのターンの平均長さを減少させることによって、使用される銅の量の劇的な減少が可能となる。
・組立が簡易化される。
・故障についての多くの項目が減少するので、信頼性を改善することができる。
・(従来技術の配置の場合のように)巻線が糸で「縛られる」必要がもはや無い。絶縁形成体は所定位置にコイル全体を保持する。
・(従来技術の配置の場合のように)巻線が所定位置にウェッジで保持される必要がもはや無い。絶縁形成体はその端部に可撓クリップを含み、可撓クリップは固定子の背面上にスナップ留めされて、絶縁形成体は所定位置に繋止される。
・巻線のコイル同士の相互接続部が、固定子の外周で配線チャネルを通ることができる。
・固定子の全直径を減少又は最小化することができる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態が本明細書において詳細に記述されてきたが、本発明の思想又は添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本発明の好ましい実施形態に対して変更がなされることが当業者によって理解されるであろう。