(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882740
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】補強された熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/08 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
F28F3/08 301Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-541356(P2011-541356)
(86)(22)【出願日】2009年12月11日
(65)【公表番号】特表2012-512381(P2012-512381A)
(43)【公表日】2012年5月31日
(86)【国際出願番号】EP2009066931
(87)【国際公開番号】WO2010069874
(87)【国際公開日】20100624
【審査請求日】2012年11月27日
【審判番号】不服2014-19675(P2014-19675/J1)
【審判請求日】2014年10月1日
(31)【優先権主張番号】0802595-9
(32)【優先日】2008年12月17日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502298310
【氏名又は名称】スウェップ インターナショナル アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】アンデルソン スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ホベルク スヴァンテ
(72)【発明者】
【氏名】ダウルベルク トマス
【合議体】
【審判長】
田村 嘉章
【審判官】
永石 哲也
【審判官】
窪田 治彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−514576(JP,A)
【文献】
実開昭54−163359(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換する媒体のための流体チャネルが、隣接するプレートの間に形成されるように配置されるプレスされたパターンの隆起部および溝が設けられる複数の熱交換プレート(100)を備える、ろう付けした熱交換器(HE)であって、前記プレートはさらに、前記流体チャネルと選択的に連通するポート開口部と、互いに重なる隣接するプレート(100)のスカート(130)によって形成される周囲端部とが設けられ、前記スカート(130)の外側に補強部(140)が延び、前記補強部(140)は、シートメタルを用いて形成されており、
前記補強部(140)は、上側領域(145)および下側領域(150)を備えるプレス成形部であり、
前記上側領域(145)および前記下側領域(150)は、第1の熱交換プレートの前記上側領域(145)の最上面が第1の熱交換プレートの上部に積み重ねられた熱交換プレートの前記下側領域(150)の最下面と接触するように配置され、
前記補強部(140)は、前記スカート(130)から直接延びることを特徴とする、ろう付けした熱交換器。
【請求項2】
熱交換する媒体のための流体チャネルが、隣接するプレートの間に形成されるように配置されるプレスされたパターンの隆起部および溝が設けられる複数の熱交換プレート(310)を備える、ろう付けした熱交換器(300)であって、前記プレートはさらに、前記流体チャネルと選択的に連通するポート開口部と、互いに重なる隣接するプレート(310)のスカート(330)によって形成される周囲端部とが設けられ、前記スカート(330)の外側に補強部(340)が延び、前記補強部(340)は、シートメタルを用いて形成されており、
前記補強部(340)は、上側領域(350)および下側領域(360)を備えるプレス成形部であり、
前記上側領域(350)と前記下側領域(360)とは、前記熱交換プレート(310)が積み重ねられる方向にそれぞれ一列に並ぶように配置されることを特徴とする、ろう付けした熱交換器。
【請求項3】
前記補強部は、前記熱交換プレートの平面上に延びる、請求項1または2に記載のろう付けした熱交換器。
【請求項4】
前記補強部は、前記熱交換プレートの周囲全体に延びる、請求項1〜3のいずれかに記載のろう付けした熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換する媒体のための流体チャネルが、隣接するプレートの間に形成されるように配置されるプレスされたパターンの隆起部および溝が設けられる複数の熱交換プレートを備える、ろう付けした熱交換器であって、そのプレートはさらに、前記流体チャネルと連通するポート開口部と、隣接するプレートのスカートと重なるスカートによって形成される周囲端部と、が設けられる、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
ろう付けした熱交換器は、多数の熱交換用途に使用される。他の種類の熱交換器と比較して、ろう付けした熱交換器は費用効率がよく、コンパクトである。
【0003】
ろう付けした熱交換器は、
複数のプレートを備え、複数のプレートには、それらが互いに積み重ねられたときに熱交換する媒体のための流体チャネルが隣接するプレートの間で形成されるように配置されるプレスされた隆起部および溝のパターンが設けられる。ポート開口部が、流体チャネルと選択的な液体連通を提供するように配置される。
【0004】
通常、プレートには、
熱交換プレートの平面Pに対する垂直方向からわずかにオフセットする角度でプレートの周囲に沿って延びるスカートが設けられる。2つの隣接するプレートのスカートは互いに重なり、プレートの周囲に延びるろう付けした端部を形成し、その端部はプレートによって形成される流体チャネルを密封する。
スカートは、熱交換プレートが積み重ねられて熱交換器を形成するときに、隣接するプレートのスカートが互いに重なって接触するように配置される。重なる部分は、互いにろう付けされ、従って熱交換器の周囲で端部の密封を作り出す。
【0005】
プレートの表面に与えられるろう付け材料を用いて、プレートが互いに積み重ねられた後、熱交換器全体は、一緒に完全にろう付けされるように炉に入れられる。隣接するプレートのプレスされたパターンは、一緒にろう付けされる接触点を与える。
【0006】
ろう付けした熱交換器が高圧に持ちこたえるようにするために、これまでは、上方または下方に曲がるかまたは動かないようにするために剛性のプレートで熱交換器を囲む必要性があった。このような剛性のプレートは主に、特に高圧に起因して損傷を受けやすいポート開口部周囲の領域を補強する。なぜなら、ポートホールに作用する圧力は、ポート開口部の底部からポート開口部の上部まで移動されなければならない力を生じるからである。剛性のプレートがなければ、全体の力は、プレートのプレスされたパターンの隆起部と溝との間に形成されるろう付け点に移動されなければならない。明白な理由のために、かかる点の密度はポート開口部の領域において低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、剛性のプレートが設けられる熱交換器は、端部周囲、すなわち重なるスカートによって与えられる密封を破壊する傾向がある。本発明は、ろう付けした熱交換器の端部の強度を増加させることを目的とする。
【0008】
また、製造技術に関する周知の問題は、ろう付け操作の間の熱交換器の「収縮」の積み重ねである。収縮は、ろう付けの間に溶融するろう付け材料の結果である。従って、積み重ねられた熱交換プレートが互いにより近接し得るような空間になる。収縮はポート開口部の近接で最も激しい。
【0009】
本発明による、スカートの少なくとも一部の外側に延びる補強部(この補強部はシートメタルのリボンを含む)によって、上記および他の問題が解決されるか、または軽減される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、これ
らの問題は、スカートの少なくとも一部の外側に延びる補強部によって解決または軽減され、前記補強部はシートメタルのリボンを含む。
【0011】
本発明の一実施形態において、補強部は、上面および下面を備えるプレスされたパターンが設けられる。上面および下面は、第1の熱交換プレートの補強部の上面が、第1の熱交換器の上部に積み重ねられた熱交換プレートの補強部の下面と接触するように配置され得る。
【0012】
本発明の別の実施形態において、上面および下面は、隣接するプレートの上面および下面が一列に並ぶように配置され得る。
【0013】
補強部は、熱交換プレートの平面において延び得る。
【0014】
できるだけ強力な熱交換器を得るために、補強部は、熱交換プレートの周囲全体に沿って延びてもよい。
【0015】
補強部は、その補強部の少なくとも一部が、リボンおよびスカートがV型を形成するような方向において延びるようにプレスされてもよい。
【0016】
以下において、本発明は添付の図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による端部補強部が設けられている熱交換プレートの概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態による端部補強部が設けられている熱交換プレートの概略的な部分断面斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態を示す、概略的な部分断面図である。
【
図4】
図4は、
図1による熱交換プレートから製造された熱交換器を示す、概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、本発明の第1の実施形態による熱交換プレート100が示される。プレート100は面全体に延び、隆起部110aおよび溝110bのプレスされたパターンが設けられる。さらに、プレート100には、ポート開口部120a〜d(ポート開口部120aおよび120bのみを示す)が設けられ、隣接する開口部は異なる高さで設けられ、示した図において、ポート開口部120bは隆起部110aの高さと等しい高さで設けられるが、ポート開口部120aは溝110bの高さで設けられる。
【0019】
スカート130が、平面Pに対して基本的に垂直方向に設けられる。スカート130は、隆起部110aおよび溝110bおよびポート開口部120a〜dが設けられる領域を囲み、隣接するプレートのスカートは互いに重なるように適合され、プレート間の密封が達成される。プレスされたパターンおよびポート開口部
と反対側のスカートの端部に、補強部140が設けられる。補強部は、平面P全体に平行な外側方向に延びる。
【0020】
第1の実施形態の補強部140には、上側領域145および下側領域150を備えるプレスされたパターンが設けられる。本発明の第1の態様において、第1のプレート100の上側領域145は、隣接する上側プレート100の下側領域150と接触するように配置され、一方、第1のプレートの補強部140の下側領域150は、隣接する下側プレートの補強部140の上側領域145と接触するように配置される。
【0021】
第1の実施形態による熱交換プレートを製造するために、熱交換プレート100を互いに積み重ねて、熱交換プレートの積層体を形成させる。ろう付け材料はプレート間に提供される。ろう付け材料は、任意の適切なろう付け材料、例えば、液体抑制剤(例えばシリカ、ホウ素)と混合した銅、スズ、鉛、銀、またはステンレス鋼あるいはそれらの混合物であってもよい。ステンレス鋼の熱交換プレートを使用する場合、ステンレス鋼のろう付け材料が特に適切である。
【0022】
一部の場合において、熱交換プレートの積層体全体について同一の熱交換プレートを使用することも可能である。そのような場合、1つおきの熱交換プレートは、その隣接するプレートに対して180°回転される。この回転により、隣接するプレートのポート領域120a、bが相互作用し、1つのポート開口部から見て、1つおきの流体チャネルがポートに対して開口し、1つおきの流体チャネルが閉じる。この製造方法は、ろう付け熱交換器の分野の当業者に周知である。
【0023】
第1の態様によれば、第1のプレートの補強部140の上側領域145は、隣接する上側プレートの補強部140の下側領域150と接触するように配置される。これは、補強作用の他に、ろう付けの間に、熱交換プレート積層体、特にポート開口部120a〜d付近の収縮が有意に減少するという有益な作用を与える。第1の態様による熱交換プレート100から製造される熱交換器を
図4に示す。
【0024】
第2の態様によれば、第1のプレートの補強部140の上側領域145は、その隣接するプレートの上側領域145と一列に並ぶように配置され、次いで隣接するプレートの補強部140は、上側領域145と下側領域150との間の領域に沿って互いに接触する。第2の態様は、隣接する補強パターンの間の接続が互いにより強く接続されるという点で有益であるが、収縮に対する好ましい効果は第1の態様と比べて小さい。第2の態様は、図
2を参照して以下により詳細に記載する。
【0025】
図2に示すように、本発明の第2の
態様は、熱交換する媒体のための流体チャネルの形成下で互いから離間して熱交換プレートを保持するように配置されるプレスされたパターンの隆起部210および溝220が設けられる複数の熱交換プレート200を備える。熱交換プレートは、さらに、ポート開口部230(
図2に1つのみ部分的に示す)が設けられる。流体チャネルを密封するために、スカート240が、熱交換プレートの端部に沿って配置され、かかるスカート240は、第1の熱交換プレートのスカートの上側が、第1のプレートに積み重ねられる第2の熱交換プレートのスカートの下側と接触するように配置される。
【0026】
スカート240の外側に、補強リボン250が設けられる。補強リボンは、外面260が、スカート240に対して、先端を切り取ったV型を形成するように延びるようにプレスされる。
【0027】
好ましくは、1つの熱交換器の外面260は、隣接するプレートのスカートと同じように、隣接するプレートの外面260と協動する。
【0028】
したがって、スカート240も外面260も、熱交換プレート200の平面Pに対して垂直に設けられなくてもよく、その場合、互いに熱交換プレートを積み重ねることは不可能である。実際に、スカートと平面P、および外面と平面Pとの間に特定の角度が存在しなければならない。
スカートと平面Pの角度と、外面と平面Pの角度とは、同じである。
【0029】
その結果として、隣接するプレートの外面260は、隣接するプレートのスカートが互いに接触するのと同じように互いに接触する。端部の増加した補強を除いて、これは、漏出に対する付加的な保険を与える。隣接するプレートのスカート240の間の接続が漏出する場合、外面260が密封を与える可能性が依然として存在する。
【0030】
図3において、上記の第2の態様と同等の本発明の第3の実施形態による熱交換器300を示す。熱交換器は、複数の熱交換プレート310を備え、その全てに、熱交換器に対する媒体の流体チャネルを形成するための隆起部320および溝330と、ポート開口部(図示せず)と、熱交換プレートを囲むスカート335とが設けられ、隣接するプレート300のスカート335の間を接触することによって流体チャネルのための密封を与える。
【0031】
さらに、第3の実施形態による熱交換プレート300は補強部340を備え、プレスされた隆起部350および溝360を備えるという点で第1の実施形態による熱交換プレートの補強領域140と同様である。しかしながら、第3の実施形態の隆起部および溝は、第3の実施形態の熱交換プレートの隆起部350および溝360が、隣接するプレートの隆起部350および溝360と一列に並んだ位置になるように配置されるという点で第1の実施形態の隆起部および溝と異なる。従って、第3の実施形態の熱交換プレートの隆起部および溝は互いに接触しない。
【0032】
実際に、隣接する熱交換プレートの補強部340の間の接触は、前記隆起部および溝を接続する壁370の間で生じる。
【0033】
図4において、第1の実施形態による熱交換プレートを備える熱交換器HEを示す。ここで、隣接するプレートの補強部140の上側領域145と下側領域150との間の相互作用を明確に示す。
【0034】
本発明のさらに別の実施形態において、補強部は、ポート領域の周囲に延びるのみである。すなわち、熱交換プレートの長手方向に沿ってではない。この実施形態はポートを補強し、さらに熱交換プレート積層体の収縮を低減させることができる。しかし、側部の補強の増加はほとんど与えられない。上記のように、ポート周囲の領域は特に壊れやすい傾向がある。
【0035】
当業者は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱せずに本発明の範囲内で可能な多くの改変が存在することを認識するだろう。