特許第5882765号(P5882765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882765
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】光コネクタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   G02B6/36
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-21103(P2012-21103)
(22)【出願日】2012年2月2日
(65)【公開番号】特開2013-160854(P2013-160854A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 知弘
(72)【発明者】
【氏名】池谷 謙一
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−162537(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/162327(WO,A1)
【文献】 特開2012−013149(JP,A)
【文献】 特開平10−319274(JP,A)
【文献】 実公昭07−006355(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルの光ファイバ先端部に接続されたフェルールを収容するハウジングと、
光ファイバが内方に挿通されると共に前記ハウジング内に収容されるスリーブ本体部と、前記光ファイバが内方に挿通されると共に前記スリーブ本体部から後方に向けて突設されて前記ハウジングの後方開口から導出される筒部とを備える加締めスリーブと、
前記筒部の外周に被せられた前記光ファイバケーブルの外被を固定する加締め部材と、
前記光ファイバケーブル及び前記加締め部材の外周を覆う保護部と、前記保護部に連設されて前記ハウジングの後方開口を覆うフランジ部とを有するブーツと、を備え、
前記フランジ部のハウジング内方側に突設されたT字状突起の首部が、前記加締めスリーブにおける前記スリーブ本体部の外側部に形成されて前記ハウジングの側壁内面により開口端が閉塞されるブーツ係止用切欠部に挿入され
前記加締めスリーブが、前記ハウジングの後方開口から挿入されると共に、前記加締めスリーブの前記ハウジング内からの抜脱を阻止するための係止機構が、前記スリーブ本体部の外側部における前記ブーツ係止用切欠部より前方側の位置に設けられることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記ブーツ係止用切欠部と前記T字状突起とが、前記筒部を挟んで一対設けられることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用LAN等において、光ファイバ相互の接続に使用される光コネクタが知られている(例えば特許文献1参照)。図7に示すように、この種の光コネクタ501は、貫通孔503が形成され、貫通孔503内に光ファイバ505を配置してなるストップリング507と、光ファイバケーブル509の周囲に配置され、ストップリング507及び光ファイバケーブル509を加締める加締めリング511と、光ファイバケーブル509における光ファイバ先端部に配置されるフェルール513と、フェルール513とストップリング507との間に配置されるスプリング(図示せず)と、ストップリング507に嵌め合わされるプラグフレーム517と、プラグフレーム517に嵌め合わされる摘み519と、加締めリング511及び光ファイバケーブル509の一部を覆うブーツ521と、を備えている。
【0003】
光コネクタ501の組立工程では、光ファイバケーブル509に、ブーツ521、加締めリング511、ストップリング507が順に通される。光ファイバケーブル509は、外被523や抗張力体525が除去されて露出した光ファイバ505にフェルール513が固定される。加締めリング511をストップリング507及び光ファイバケーブル509に加締める工程は、ストップリング507と加締めリング511との間に抗張力体525を挟み込みつつ圧着工具等を用いて周囲から圧力を加えることでストップリング507を加締める。そして、摘み519をプラグフレーム517と嵌め合わせると共に、ブーツ521をストップリング507の一部、加締めリング511、光ファイバケーブル509の一部を覆うように配置し、光コネクタ付きの光ファイバケーブル509として完成させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−266830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の光コネクタ501では、ブーツ521が、加締め後の加締めリング511に対して、圧入や接着剤により固定されていた。このため、圧入による固定では、不慮のブーツ引っ張りや、ケーブル屈曲による緩みによって脱落が懸念される。また、接着剤による固定では、接着作業工数や材料費等のコスト増大に加え、圧入固定と同様の懸念がある。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、不慮のブーツ引っ張りや光ファイバケーブル屈曲の緩みによるブーツ脱落を、作業工数や材料費を増大させずに防止することができる光コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成(1)〜()により達成される。
(1) 光ファイバケーブルの光ファイバ先端部に接続されたフェルールを収容するハウジングと、光ファイバが内方に挿通されると共に前記ハウジング内に収容されるスリーブ本体部と、光ファイバが内方に挿通されると共に前記スリーブ本体部から後方に向けて突設されて前記ハウジングの後方開口から導出される筒部とを備える加締めスリーブと、前記筒部の外周に被せられた前記光ファイバケーブルの外被を固定する加締め部材と、前記光ファイバケーブル及び前記加締め部材の外周を覆う保護部と、前記保護部に連設されて前記ハウジングの後方開口を覆うフランジ部とを有するブーツと、を備え、前記フランジ部のハウジング内方側に突設されたT字状突起の首部が、前記加締めスリーブにおける前記スリーブ本体部の外側部に形成されて前記ハウジングの側壁内面により開口端が閉塞されるブーツ係止用切欠部に挿入され、前記加締めスリーブが、前記ハウジングの後方開口から挿入されると共に、前記加締めスリーブの前記ハウジング内からの抜脱を阻止するための係止機構が、前記スリーブ本体部の外側部における前記ブーツ係止用切欠部より前方側の位置に設けられることを特徴とする光コネクタ。
【0008】
上記構成(1)の光コネクタによれば、ブーツにおけるT字状突起は、フランジ部からハウジング内方側に突出する首部の先端が膨出部となる。つまり、突出方向に垂直な横断面形状は、首部よりも膨出部の方が大きい。通常、合成ゴム等の軟質材によって形成されるT字状突起は、首部が弾性変形することにより膨出部が全周方向に傾いて撓む。そこで、首部が加締めスリーブの外側部に形成されるブーツ係止用切欠部に外側(首部の軸線に直交する方向)から挿入されることで、T字状突起の膨出部は、ブーツ係止用切欠部を挟む一対の切欠形成片に当たり、光ファイバケーブルの導出方向への抜けが阻止される。この際、ハウジング内に収容されていない加締めスリーブのブーツ係止用切欠部には、開口端よりT字状突起の首部を容易に挿入できる。一方、T字状突起の首部が挿入された加締めスリーブのブーツ係止用切欠部は、ハウジング内に収容されると、開口端がハウジングの側壁内面により閉塞されるので、T字状突起はブーツ係止用切欠部から抜けることができない。
更に、外被が剥かれて露出した光ファイバ側から順に、ブーツ、加締め部材、加締めスリーブが光ファイバケーブルに通され、その後、光ファイバにはフェルールが接続される。外被が加締め部材によって筒部に固定された後、加締め部材がブーツの保護部に覆われる。加締め部材を覆ったブーツは、ハウジング内方側のフランジ部から前方に突出するT字状突起が、加締めスリーブに係止される。そして最後に、ブーツを係止した加締めスリーブが、ハウジングの後方開口から装着される。つまり、加締めスリーブにブーツを組み付ける仮組み付けと、加締めスリーブとハウジングを組み付ける本組付けの全てが、光ファイバケーブルの軸線に沿う同一組立方向となり、組立が容易となる。
【0009】
(2) 上記構成(1)の光コネクタであって、前記ブーツ係止用切欠部と前記T字状突起とが、前記筒部を挟んで一対設けられることを特徴とする光コネクタ。
【0010】
上記構成(2)の光コネクタによれば、ブーツのフランジ部を貫通する光ファイバを挟んで、フランジ部の両側に一対のT字状突起が設けられる。これにより、ブーツに作用する抜け方向の力が、光ファイバケーブルの軸線を挟むフランジ部の両側で均等に支持され、ブーツのフランジ部が安定的に係止される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光コネクタによれば、不慮のブーツ引っ張りや光ファイバケーブル屈曲の緩みによるブーツ脱落を、作業工数や材料費を増大させずに防止できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る光コネクタの分解斜視図である。
図2図1に示したハウジングにブーツを装着した加締めスリーブが組み付けられる前の分解斜視図である。
図3図2に示した加締めスリーブの全体斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る光コネクタの光ファイバに沿う方向の断面図である。
図5図2に示したブーツの全体斜視図である。
図6図1に示した加締め部材の変形例を示す要部斜視図である。
図7】従来の光コネクタの一部を破断して拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る光コネクタを詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る光コネクタ13は、ハウジング19と、フェルール21と、加締めスリーブ23と、加締めリング(加締め部材)25と、ブーツ27と、を主要な構成部材とし、不図示の相手光コネクタと結合することで光ファイバケーブル15の芯線である光ファイバ芯線17の先端を突き合わせた状態に接続する。これにより、例えば自動車用等における光ファイバ相互を接続する。
【0017】
図2に示すように、合成樹脂製のハウジング19は、図示しない相手光コネクタとの一対の結合開口部29を前方に有する。ハウジング19は、結合開口部29の奥側に、一対のフェルール21(図1参照)を収容する。フェルール21は、光ファイバケーブル15の光ファイバ先端部に接続される。即ち、それぞれのフェルール21には、光ファイバケーブル15から外被33や図示しない抗張力体が除去されて露出した光ファイバ芯線17が挿入固定される。より具体的には、光ファイバ芯線17の光ファイバ35(図1参照)がフェルール21に挿入固定される。これらフェルール21は、ハウジング内において軸線方向に移動自在に収容され、ハウジング19に収容されるコイルバネ37の前端によって前方へ弾性付勢されている。このコイルバネ37の後端は、加締めスリーブ23の前面に凹設されたバネ座部39に当接される。なお、本明細書中において、光コネクタ13は、結合開口部29を前、後方開口41を後ろとして説明する。
【0018】
コイルバネ37によって前方へ弾性付勢されるフェルール21は、フェルール収納穴43(図4参照)の前壁突当部45にフェルール大径部47が当接することで、それ以上の前方への移動が防止される。フェルール大径部47(図4参照)からはフェルール細径部49が前方に連なった状態に接続して設けられ(連設され)る。フェルール細径部49は、前壁突当部45の前壁貫通孔51を貫通して結合開口部29に突出する。フェルール細径部49には、光ファイバ芯線17から更に被覆の除去された裸の光ファイバ35が接着剤等によって挿入固定され、光ファイバ35の先端はフェルール細径部49の先端面に配置される。フェルール21は、相手光コネクタの相手フェルールと、フェルール細径部49の接合端面53を以って突き合わせ接続される。これにより、フェルール21によってコネクタ接続可能に成端された光ファイバ芯線17が相手光コネクタの光線路と接続される。
【0019】
フェルール21は、相手光コネクタとの突き合わせ時にコイルバネ37の弾性変形範囲内で、接続方向後方へ若干押し込むことが可能であるから、これにより、極度の応力集中による光ファイバ35の破損等が防止される。そして、コイルバネ37の付勢力がフェルール同士間の突き合わせ力として作用して、目的の接続損失が安定に得られるように構成されている。
【0020】
図2に示すように、ハウジング19の後方には、後方開口41が形成される。後方開口41からは、フェルール21に接続した光ファイバ35が内方に挿通される加締めスリーブ23の筒部63が導出される(図4参照)。この後方開口41から、加締めスリーブ23がハウジング19内に挿入される。
【0021】
図3に示すように、加締めスリーブ23は硬質樹脂材料よりなり、光ファイバ芯線17が内方に挿通される扁平な略直方体状のスリーブ本体部55を有する。スリーブ本体部55には前後に貫通する貫通空間57が形成され、貫通空間57は中央に形成される隔壁部59によって左右の光ファイバ挿通路61に仕切られている。また、スリーブ本体部55には、後方に向けて筒部63が突設されている。筒部63の内方には、隔壁部59及び光ファイバ挿通路61が延在する(図4参照)。加締めスリーブ23は、光ファイバ芯線17が内方の光ファイバ挿通路61に挿通された状態で、ハウジング19内に収容されると共に、ハウジング19の後方開口41から筒部63が導出される。
【0022】
スリーブ本体部55の両側の外側部65には、弾性係止片67が設けられる。弾性係止片67は、先端側がスリーブ本体部55に接続し、後端側が徐々に離間した自由端となっている。つまり、平面視でハ字状に開脚する(図4参照)。この自由端の先端は、係止爪69として形成される。弾性係止片67は、係止爪69が外側部65に接近離反する方向に弾性変形可能となっている。後述するように、この係止爪69は、ハウジング19の内方に係止される。
【0023】
図4に示すように、ハウジング19の内方にはスリーブ収容空間71が形成され、スリーブ収容空間71は後方がハウジング19の後端で上記後方開口41となって開口する。このスリーブ収容空間71には、加締めスリーブ23のスリーブ本体部55が収容される。スリーブ収容空間71にスリーブ本体部55が収容された加締めスリーブ23は、筒部63が後方開口41から突出した状態でハウジング19に装着される。スリーブ収容空間71には、後方開口41よりも側壁内面73を外側に削った凹状部75が形成される。凹状部75と側壁内面73との間には係止段部77が形成され、この係止段部77には前方より弾性係止片67の係止爪69が当接して係止される。
【0024】
即ち、加締めスリーブ23は、筒部63を後方にしてハウジング19の後方開口41から挿入される。後方開口41に挿入された加締めスリーブ23は、両側一対の弾性係止片67が側壁内面73によって相互に接近する方向に撓ませられる。弾性係止片67が撓んだ加締めスリーブ23は、更にスリーブ収容空間71へ挿入されると、弾性係止片67の係止爪69が凹状部75に達する。凹状部75に達した一対の係止爪69は、弾性係止片67が弾性復元力によって開くことで、係止段部77に係止されて、加締めスリーブ23のハウジング19からの後方抜けを阻止する。
【0025】
光ファイバケーブル15は、光ファイバ芯線17が加締めスリーブ23の筒部63から導出される一方、筒部63の外周に外被33が被せられる。筒部63に被せられた外被33は、その外側から楕円筒状の加締めリング25が加締められることで、筒部63に固定される。これにより、光ファイバケーブル15と加締めスリーブ23とは一体的に固定される。光ファイバケーブル15が後方に引っ張られると、係止爪69が係止段部77に当接して加締めスリーブ23の抜けが規制されるように構成されている。即ち、これら後方開口41、凹状部75、係止段部77、弾性係止片67、及び係止爪69は、加締めスリーブ23がハウジング19の後方開口41から挿入し且つハウジング19内からの抜脱を阻止する係止機構79を構成する。
【0026】
ところで、この加締めスリーブ23の外側部65における後方端には、図3に示すブーツ係止用切欠部81が形成されている。ブーツ係止用切欠部81は、スリーブ本体部55の後方端のそれぞれの外側部65から外側に向かって垂直に突出する一対の切欠形成片83の間に形成される。従って、ブーツ係止用切欠部81は、切欠形成片83同士の先端間隙が開口端85となって開放する。ブーツ係止用切欠部81は、加締めスリーブ23がハウジング19のスリーブ収容空間71に挿入されることで、開口端85がハウジング19の側壁内面73により閉塞される(図4参照)。つまり、開放されていたブーツ係止用切欠部81は、側壁内面73によって開口端85が閉じた穴状となる。このブーツ係止用切欠部81は、ブーツ27の抜けを阻止するための部位となる。
【0027】
図5に示すように、ブーツ27は、合成ゴム等の軟質材からなり、光ファイバケーブル15及び金属製の加締めリング25の外周を覆う保護部87を有する。保護部87の基端側には筒部収容穴89が形成され、筒部収容穴89は光ファイバケーブル15の外被33を筒部63に加締め固定した加締めリング25を外周側から覆う。保護部87の周囲には、保護部87に適宜な屈曲性を付与する複数の周溝91が形成される。ブーツ27は、保護部87に連設されてハウジング19の後方開口41を覆う矩形状のフランジ部93を有する。保護部87とフランジ部93との間には、周方向に長い左右一対の曲穴95が形成され、フランジ部93と保護部87とは、上下一対の連結部97によって接続されている。
【0028】
連結部97を介して保護部87に接続されたフランジ部93の中央には、筒部収容穴89が開口する。筒部収容穴89を挟むフランジ部93の両側には、前方(ハウジング内方側)に向かってT字状突起99が突設されている。上述したブーツ係止用切欠部81と、このT字状突起99とは、筒部63を挟んで左右一対設けられる。T字状突起99は、フランジ部93から垂直に突出する首部101の先端が膨出部103となる。本実施形態では、膨出部103は、首部101に直交する方向の柱状に形成される。この他、膨出部103は、底辺側が首部101に接続される三角板状、直径側が首部101に接続される半円板状等に形成されてもよい。
【0029】
T字状突起99は、フランジ部93と一体に成形されて可撓性を有している。この可撓性により、T字状突起99は膨出部103が外側に変位するように開脚自在となる。そこで、T字状突起99は、首部101がブーツ係止用切欠部81の開口端85(図3参照)から挿入可能となる。首部101がブーツ係止用切欠部81に挿入されたT字状突起99は、膨出部103が切欠形成片83に当たって後方への抜けが阻止される。T字状突起99は、加締めスリーブ23がハウジング19に装着されていない状態では、首部101が開口端85から離脱可能となる。一方、加締めスリーブ23がハウジング19に装着されると、開口端85が側壁内面73によって閉鎖されるので、首部101は開口端85から抜けなくなる。これにより、T字状突起99がブーツ係止用切欠部81から確実に抜けなくなり、これらハウジング19、加締めスリーブ23、ブーツ27が一体に固定されて組み付けられる。
【0030】
次に、上記構成を有する光コネクタ13の作用を説明する。
本実施形態の光コネクタ13では、ブーツ27が、合成ゴム等の軟質材によって、保護部87、フランジ部93、T字状突起99を備えて形成される。T字状突起99は、フランジ部93からハウジング19内方側に突出する首部101の先端が膨出部103となる。つまり、突出方向に垂直な横断面形状は、首部101よりも膨出部103の方が大きい。T字状突起99は、首部101が弾性変形することにより膨出部103が全周方向に傾いて撓む。これにより、後述するように、ブーツ係止用切欠部81への容易な挿入が可能となる。
【0031】
本実施形態に係るブーツ27は、T字状突起99の首部101が、加締めスリーブ23の外側部65に形成されるブーツ係止用切欠部81に外側(首部101の軸線に直交する方向)から撓ませながら挿入されることで、T字状突起99の膨出部103がブーツ係止用切欠部81を挟む一対の切欠形成片83に当たり、光ファイバケーブル15の導出方向への抜けが阻止される。この際、ハウジング19内に収容されていない加締めスリーブ23のブーツ係止用切欠部81には、開口端85よりT字状突起99の首部101を弾性変形させて容易に挿入できる。つまり、ブーツ27と加締めスリーブ23との仮組み付けが容易に行える。
【0032】
一方、ハウジング19、加締めスリーブ23、ブーツ27を一体にする本組付けでは、T字状突起99をブーツ係止用切欠部81に係止した加締めスリーブ23が、ハウジング19の後方開口41から挿入される。T字状突起99の首部101が挿入されたブーツ係止用切欠部81は、ハウジング19内に収容されると、開口端85がハウジング19の側壁内面73により閉塞される。これにより、T字状突起99は、ブーツ係止用切欠部81から抜けが確実に阻止されることになる。
【0033】
また、本実施形態の光コネクタ13では、外被33が剥かれて露出した光ファイバ35側から順に、ブーツ27、加締めリング25、加締めスリーブ23が光ファイバケーブル15に通され、その後、光ファイバ35にはフェルール21が接続される。外被33が加締めリング25によって筒部63に固定された後、加締めリング25がブーツ27の保護部87に覆われる。加締めリング25を覆ったブーツ27は、ハウジング19内方側のフランジ部93から前方に突出するT字状突起99が、加締めスリーブ23に係止される。そして最後に、ブーツ27を係止した加締めスリーブ23が、ハウジング19の後方開口41から装着される。つまり、加締めスリーブ23にブーツ27を組み付ける仮組み付けと、加締めスリーブ23とハウジング19を組み付ける本組付けの全てが、光ファイバケーブル15の軸線に沿う同一組立方向となり、組立が容易となる。即ち、組立自動化への対応も容易となる。
【0034】
さらに、本実施形態の光コネクタ13によれば、ブーツ27のフランジ部93を貫通する光ファイバ35を挟んで、フランジ部93の両側に一対のT字状突起99が設けられる。これにより、ブーツ27に作用する抜け方向の力が、光ファイバケーブル15の軸線を挟むフランジ部93の両側で均等に支持され、ブーツ27のフランジ部93が安定的に係止される。
【0035】
従って、本実施形態に係る光コネクタ13によれば、不慮のブーツ引っ張りや光ファイバケーブル屈曲の緩みによるブーツ脱落を、作業工数や材料費を増大させずに防止できる。
なお、本発明の光コネクタは、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、上記実施形態おいては、加締めスリーブ23の筒部63の外周に被せられた光ファイバケーブル15の外被33を固定する加締め部材として、楕円筒状の加締めリング25を用いたが、本発明はこれに限定するものではなく、図6に示すように、略楕円筒状の加締めプレート26を用いることもできる。矩形の金属板を折り曲げ形成して略楕円筒状に形成された加締めプレート26は、光ファイバケーブル15の軸線に沿うスリット26aを備え、光ファイバケーブル15の外被33を筒部63に加締め固定する。
【符号の説明】
【0036】
13…光コネクタ
15…光ファイバケーブル
17…光ファイバ芯線
19…ハウジング
21…フェルール
23…加締めスリーブ
25…加締めリング(加締め部材)
27…ブーツ
33…外被
35…光ファイバ
41…後方開口
63…筒部
65…外側部
73…側壁内面
79…係止機構
81…ブーツ係止用切欠部
85…開口端
87…保護部
93…フランジ部
99…T字状突起
101…首部
103…膨出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7