特許第5882821号(P5882821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

特許5882821発見情報の配信装置、モビリティ管理装置及びプログラム
<>
  • 特許5882821-発見情報の配信装置、モビリティ管理装置及びプログラム 図000002
  • 特許5882821-発見情報の配信装置、モビリティ管理装置及びプログラム 図000003
  • 特許5882821-発見情報の配信装置、モビリティ管理装置及びプログラム 図000004
  • 特許5882821-発見情報の配信装置、モビリティ管理装置及びプログラム 図000005
  • 特許5882821-発見情報の配信装置、モビリティ管理装置及びプログラム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882821
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】発見情報の配信装置、モビリティ管理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/08 20090101AFI20160225BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20160225BHJP
   H04W 48/18 20090101ALI20160225BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20160225BHJP
【FI】
   H04W28/08
   H04W48/16 135
   H04W48/18 113
   H04W88/06
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-97058(P2012-97058)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-225771(P2013-225771A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】金 大善
(72)【発明者】
【氏名】横田 英俊
(72)【発明者】
【氏名】北辻 佳憲
(72)【発明者】
【氏名】野一色 裕人
【審査官】 田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−531089(JP,A)
【文献】 特表2011−521549(JP,A)
【文献】 特表2012−533240(JP,A)
【文献】 特表2013−516929(JP,A)
【文献】 特表2015−501104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信ネットワークの配信装置であって、
前記移動通信ネットワークの基地局とは異なる無線インタフェースでユーザ装置と通信するアクセス・ポイントと、当該アクセス・ポイントが設置されている前記移動通信ネットワークのセルとの対応関係を示す情報を保持する保持手段と、
前記移動通信ネットワークのセルを特定する情報が入力されると、前記特定されたセルを示す情報を含む要求メッセージをモビリティ管理装置に送信し、前記要求メッセージの応答として、前記特定されたセルに在圏し、前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立しているユーザ装置のリストを受信すると、前記リストに含まれるユーザ装置のそれぞれに、当該ユーザ装置が在圏しているセル内のアクセス・ポイントを示す情報を含む発見情報を送信する送信手段と、
を備えていることを特徴とする配信装置。
【請求項2】
前記リストには、前記リストに含まれるユーザ装置が過去所定の期間に前記移動通信ネットワークとの間で送信、受信、又は、送受信したデータ量に対応する情報が含まれており、
前記送信手段は、前記データ量が第1の閾値より多いユーザ装置に前記発見情報を送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の配信装置。
【請求項3】
前記特定されたセルを特定する情報が再度入力されると、前記送信手段は、前記データ量が第2の閾値より多いユーザ装置に前記発見情報を送信し、
前記第2の閾値は、前記第1の閾値より小さい、
ことを特徴とする請求項2に記載の配信装置。
【請求項4】
前記入力されるセルは、トラフィック量が所定量を超えているセルである、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の配信装置。
【請求項5】
移動通信ネットワークの配信装置であって、
前記移動通信ネットワークの基地局とは異なる無線インタフェースでユーザ装置と通信するアクセス・ポイントと、当該アクセス・ポイントが設置されている前記移動通信ネットワークのセルとの対応関係を示す情報を保持する保持手段と、
モビリティ管理装置を特定する情報が入力されると、要求メッセージを前記モビリティ管理装置に送信し、前記要求メッセージの応答として、前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立しているユーザ装置のリストを受信すると、前記リストに含まれるユーザ装置のそれぞれに、当該ユーザ装置が在圏しているセル内のアクセス・ポイントを示す情報を含む発見情報を送信する送信手段と、
を備えていることを特徴とする配信装置。
【請求項6】
前記リストには、前記リストに含まれるユーザ装置が過去所定の期間に前記移動通信ネットワークとの間で送信、受信、又は、送受信したデータ量に対応する情報が含まれており、
前記送信手段は、前記データ量が第1の閾値より多いユーザ装置に前記発見情報を送信する、
ことを特徴とする請求項5に記載の配信装置。
【請求項7】
前記モビリティ管理装置を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の配信装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の配信装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
移動通信ネットワークのモビリティ管理装置であって、
前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立してユーザ装置を管理する管理手段と、
配信装置から要求メッセージを受信すると、前記要求メッセージで指定されたセルに在圏し前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立しているユーザ装置を含むリスト、或いは、前記モビリティ管理装置が管轄するセルに在圏し前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立しているユーザ装置を含むリストを前記配信装置に送信する送信手段と、
を備えていることを特徴とするモビリティ管理装置。
【請求項10】
前記送信手段は、前記要求メッセージで指定されたセルに在圏し前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立しているユーザ装置、或いは、前記モビリティ管理装置が管轄するセルに在圏し前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立しているユーザ装置が過去所定の期間に前記移動通信ネットワークとの間で送信、受信、又は、送受信したデータ量に対応する情報を、前記移動通信ネットワーク内のユーザ装置のトラフィックを管理している装置から取得し、前記取得したデータ量に対応する情報を前記リストに含める、
ことを特徴とする請求項9に記載のモビリティ管理装置。
【請求項11】
前記送信手段は、前記取得したデータ量が第1の閾値より多いユーザ装置のみを前記リストに含める、
ことを特徴とする請求項10に記載のモビリティ管理装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載のモビリティ管理装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信ネットワークにおいて、ユーザ装置が利用可能なアクセス・ネットワークに関する情報、より詳しくは基地局又はアクセス・ポイントに関する情報を含む発見情報をユーザ装置に配信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、3GPP(第3世代パートナーシップ・プロジェクト)規格に従う移動通信ネットワークが、通信事業者により提供されている。これら移動通信ネットワークにおいては、従来の音声による電話サービスに加えて、IPプロトコルに基づくデータ通信サービスが提供されており、これにより、ユーザ装置は、インターネット上の装置と通信できる様になっている。しかしながら、近年、移動通信ネットワークにおいては、データ・トラフィック量が急増しており、通信事業者は、このトラフィックに対処することが求められている。
【0003】
ここでスマートフォン等のユーザ装置は、移動通信ネットワークの基地局と通信するための3GPP規格に従う無線インタフェースに加えて、例えば、無線LAN(Local Area Network)やWiMax(Worldwide Interoperability for Microwave Access)といった他の規格に従う無線インタフェースを有することが多く、これらのインタフェースを使用することで、例えば、移動通信ネットワークのアクセス・ネットワークを経由することなく、移動通信ネットワークのコア・ネットワークにアクセスすることや、移動通信ネットワークを経由することなくインターネット等にアクセスすることが可能になる。
【0004】
この、所謂、非3GPPアクセスを利用するために、非特許文献1及び2は、アクセス・ネットワーク発見及び選択機能(ANDSF)を開示している。具体的には、ユーザ装置が位置情報を取得し、ANDSF機能を有する装置は、ユーザ装置が取得した位置情報を受信し、受信した位置情報に基づき発見(ディスカバリ)情報、モビリティ・ポリシー及びルーティング・ポリシーを当該ユーザ装置に通知するというものである。ここで、発見情報は、当該ユーザ装置の現在位置において通信可能なアクセス・システムのアクセス・ポイント/基地局に関する情報を含み、アクセス・システムは、無線LANや、WiMaxといった非3GPPアクセス・システムに加えて、EUTRAN(発展型UMTS地上波アクセス・ネットワーク)等の3GPPの規格によるアクセス・システムを含んでいる。また、モビリティ・ポリシーは、ユーザ装置がアクセス・ポイント/基地局を選択するための基準となる情報や、ハンドオーバ先のアクセス・システムを選択するための基準となる情報を含み、ルーティング・ポリシーは、例えば、ユーザ装置が複数のアクセス・システムを同時に利用できる場合に、データの送信に使用するアクセス・ポイントをフロー毎に選択するための基準となる情報を含んでいる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TS 23.402 V10.7.0,"Architecture enhancements for non−3GPP accesses ",2012年3月
【非特許文献2】3GPP TS 24.312 V10.5.0,"Access Network Discovery and Selection Function (ANDSF) Management Object (MO)",2012年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ユーザ装置は、ANDSF機能を有する装置から取得した発見情報に基づき通信可能なアクセス・ポイント/基地局を判定し、例えば、無線LANが利用可能であると、データ量の多い通信については無線LANを利用するといった選択をすることができる。
【0007】
非特許文献1及び2において、ユーザ装置は、位置情報を取得し、ANDSF機能を有する装置にその位置情報を送信して、発見情報を受信する。ここで、位置情報を取得するためには、例えば、GPS(Global Positioning System)等を利用することができるが、GPS機能を頻繁に利用すると、ユーザ装置の電池の消耗を加速させることになる。また、無線LANやWiMax等のアクセス・ポイント/基地局が設定されていない地域においても、位置情報の送信と発見情報の受信を行うことは無駄である。したがって、効率よくユーザ装置に発見情報を送信する仕組みが求められている。
【0008】
本発明は、ユーザ装置に位置情報の取得及び送信を行わせることなく、適切な発見情報をユーザ装置に配信することを可能にする配信装置、モビリティ管理装置及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、移動通信ネットワークの配信装置であって、前記移動通信ネットワークの基地局とは異なる無線インタフェースでユーザ装置と通信するアクセス・ポイントと、当該アクセス・ポイントが設置されている前記移動通信ネットワークのセルとの対応関係を示す情報を保持する保持手段と、前記移動通信ネットワークのセルを特定する情報が入力されると、前記特定されたセルを示す情報を含む要求メッセージをモビリティ管理装置に送信し、前記要求メッセージの応答として、前記特定されたセルに在圏し、前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立しているユーザ装置のリストを受信すると、前記リストに含まれるユーザ装置のそれぞれに、当該ユーザ装置が在圏しているセル内のアクセス・ポイントを示す情報を含む発見情報を送信する送信手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様によると、移動通信ネットワークの配信装置であって、前記移動通信ネットワークの基地局とは異なる無線インタフェースでユーザ装置と通信するアクセス・ポイントと、当該アクセス・ポイントが設置されている前記移動通信ネットワークのセルとの対応関係を示す情報を保持する保持手段と、モビリティ管理装置を特定する情報が入力されると、要求メッセージを前記モビリティ管理装置に送信し、前記要求メッセージの応答として、前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立しているユーザ装置のリストを受信すると、前記リストに含まれるユーザ装置のそれぞれに、当該ユーザ装置が在圏しているセル内のアクセス・ポイントを示す情報を含む発見情報を送信する送信手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様によると、移動通信ネットワークのモビリティ管理装置であって、前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立してユーザ装置を管理する管理手段と、配信装置から要求メッセージを受信すると、前記要求メッセージで指定されたセルに在圏し前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立しているユーザ装置を含むリスト、或いは、前記モビリティ管理装置が管轄するセルに在圏し前記モビリティ管理装置と制御用のリンクを確立しているユーザ装置を含むリストを前記配信装置に送信する送信手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
ユーザ装置に位置情報の取得及び送信を行わせることなく、適切な発見情報をユーザ装置に配信することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ユーザ装置の状態遷移図。
図2】一実施形態によるシステム構成図。
図3】一実施形態による配信装置及びモビリティ管理装置の構成図。
図4】一実施形態によるセル、モビリティ管理装置及びユーザ装置を示す図。
図5】一実施形態による発見情報配信のためのシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。なお、以下の説明において、3GPP規格に従う無線信号でユーザ装置(UE)と通信する装置を基地局と呼び、無線LAN又はWiMaxに従う無線信号でユーザ装置と通信する装置をアクセス・ポイントと呼ぶが、単なる呼称の違いであり、ユーザ装置と無線信号により通信して、ユーザ装置が送受する情報の中継を行う装置という意味では同じである。また、以下の説明は、3GPP規格の内の所謂LTE(Long Term Evolution)を使用して行うが、本発明をLTEに限定する趣旨ではない。
【0015】
図1は、本発明の3GPP規格に従う移動通信ネットワークにおけるユーザ装置の管理状態を示す図である。なお、図1に示す状態は、移動通信ネットワークのコア・ネットワーク内に配置され、モビリティ管理機能を有するモビリティ管理装置(MME)が管理する。
【0016】
図1に示す様に、モビリティ管理機能は、EMM(EPS Mobility Management)状態とECM(EPS Connection Management)状態の2つの状態を管理している。EMM状態は、"EMM登録"状態と"EMM非登録"状態の2つの状態をとり、"EMM登録"状態とは、ユーザ装置が移動通信ネットワークにアタッチし、IPアドレスが当該ユーザ装置に割り当てられている状態である。これに対して、"EMM非登録"状態とは、ユーザ装置が移動通信ネットワークにアタッチしていない状態である。
【0017】
また、ECM状態は、"ECMアイドル"状態と"ECM接続"状態の2つの状態をとる。"ECM接続"状態とは、モビリティ管理装置とユーザ装置との間でNAS(Non Access Stratum)シグナリング接続、つまり、制御情報を送受信するための制御用のリンクが確立され、モビリティ管理装置とユーザ装置との間で制御情報の送受信が可能な状態であり、"ECMアイドル"状態とは、NASシグナリング接続が確立されていない状態である。なお、NASシグナリング接続、つまり、モビリティ管理装置とユーザ装置間の制御用のリンクは、ユーザ装置と基地局間のリンクであるRRC(Radio Resource Cotrol)リンクと、基地局とモビリティ管理装置間のS1シグナリング・リンクとに分けられる。図1に示す様に、"EMM非登録"状態の場合には、常に、"ECMアイドル"状態である。これに対して、"EMM登録"状態の場合には、ユーザ装置が通信を行っているか否かに応じ、"ECM接続"と"ECMアイドル"のいずれかの状態となる。
【0018】
具体的には、"EMM登録"状態で、かつ、"ECMアイドル"状態とは、ユーザ装置は移動通信ネットワークにアタッチしているが、通信を行っていない状態に対応し、モビリティ管理装置は、ユーザ装置が現在どのセルに在圏しているかについての情報を保持してはいない。これに対して、"EMM登録"状態で、かつ、"ECM接続"状態とは、ユーザ装置とモビリティ管理装置が基地局経由で制御用のリンクを確立している状態であり、モビリティ管理装置は、ユーザ装置が現在どの基地局と制御用のリンクを確立しているか、つまり、ユーザ装置がどのセルに在圏しているかについての情報を保持している。
【0019】
図1に示す様に、"EMM登録"状態における、"ECM接続"状態から"ECMアイドル"状態への遷移は、モビリティ管理装置が、ユーザ装置が非活性化、つまり、通信を停止したと判定したときや、トラッキング・エリア更新処理が終了したときに生じる。一方、"EMM登録"状態における、"ECMアイドル"状態から"ECM接続"状態への遷移は、ユーザ装置が通信を開始したときや、トラッキング・エリア更新処理を開始するときに生じる。また、"EMM非登録"状態から、ユーザ装置がアタッチ処理を行うと、当該ユーザ装置の状態は、"EMM登録"状態、かつ、"ECM接続"状態に遷移する。なお、"EMM登録"状態から"EMM非登録"状態への遷移は、本発明の理解には必要ないため説明は省略する。
【0020】
図2は、本実施形態における通信システムを示している。例えば、3GPP等の規格に従う移動通信ネットワークのコア・ネットワーク1は、配信装置7と、上述したモビリティ管理装置(MME)8と、ユーザ管理装置9と、を含み、移動通信ネットワークの基地局21、22及び23と接続している。基地局21は、点線6で囲む範囲(セル)をカバーしている。なお、各基地局には、例えば、ECGI(E−UTRAN Cell Global Identifier)といったセル識別子が割り当てられている。図2において、ユーザ装置5はセル6内に位置し、基地局21経由で、コア・ネットワーク1にアクセスすることができる。また、セル6内には、無線LAN又はWiMaxのアクセス・ポイント41、42が設置されており、ユーザ装置5は、これらアクセス・ポイント41、42と通信するための無線インタフェースを有している。なお、点線61で囲む範囲は、アクセス・ポイント41のカバレッジ、つまり、アクセス・ポイント41と通信可能な範囲である。
【0021】
また、移動通信ネットワークのコア・ネットワーク1はIPネットワーク3と接続し、IPネットワーク3は、アクセス・ポイント41、42と接続している。IPネットワーク3は、例えば、インターネットであり、ユーザ装置5は、基地局21と通信している場合には、基地局21及びコア・ネットワーク1経由でインターネットであるIPネットワーク3にアクセスすることができ、アクセス・ポイント41又は42と通信している場合には、アクセス・ポイント41又は42経由でインターネットであるIPネットワーク3にアクセスすることができる。また、IPネットワーク3は、例えば、コア・ネットワーク3を運用している通信事業者のネットワークであり、ユーザ装置5は、基地局21と通信している場合には、基地局21経由でコア・ネットワーク1にアクセスすることができ、アクセス・ポイント41又は42と通信している場合には、アクセス・ポイント41/42及びIPネットワーク3経由でコア・ネットワーク1にアクセスすることができる。
【0022】
また、配信装置7はANDSF機能を有し、必要に応じてユーザ装置に発見情報等を送信する。モビリティ管理装置8は、図1にて説明した様にユーザ装置5の状態を管理する。また、ユーザ管理装置9は、ユーザ装置が過去所定の期間内に送信及び/又は受信したデータ量を閾値判定して複数の段階で表した情報である使用量情報を保持している。以下の説明においては、2つの閾値を用いて、送信及び/又は受信したデータ量を高、中、低の3段階で表すものとするが、段階数は例示である。ユーザ管理装置9は、後述する様に、モビリティ管理装置8からの要求に応じて、使用量情報をモビリティ管理装置8に通知する。ユーザ管理装置9は、ユーザ装置5が送受信するデータ量に関係する情報を取得する装置、例えば、ホーム加入者サーバ(HSS)や、ポリシー及び課金ルール機能(PCRF)を有する装置や、課金処理システムに実装され得る。また、ユーザ管理装置9は、HSS、PCRFを含む装置や、課金処理システムからユーザ装置5の送受信データ量を取得して使用量情報として保存する装置であっても良い。以下、図3を用いて、配信装置7と、モビリティ管理装置8の構成について説明する。
【0023】
図3(A)は、本実施形態による配信装置7の概略的な構成図である。アクセス・ポイント情報保持部71は、各アクセス・ポイントについて、アクセス・ポイント識別子と、アクセス・ポイントの設置位置と、アクセス・ポイントが設置されているセルとの対応関係を示す情報を保持している。例えば、図2のアクセス・ポイント41、42に対応するセルはセル6である。なお、セルは、ECGIといったセル識別子で特定することができる。また、アクセス・ポイント識別子とは、アクセス・ポイントを特定するために、アクセス・ポイントが報知している情報であり、例えば、無線LANのSSID(サービス・セット識別子)や、WiMaxのBS−ID(基地局識別子)である。また、設置位置は、例えば、緯度及び経度を含む情報である。
【0024】
さらに、アクセス・ポイント情報保持部71は、各アクセス・ポイントについて、アクセス・ポイントのカバレッジ内において、当該アクセス・ポイントが設置されているセルに対応する基地局からの無線信号の強度範囲(電力範囲)を示す強度範囲情報を保持している。例えば、図2に示す構成において、アクセス・ポイント41の無線信号強度範囲情報は、点線61で示す領域において、ユーザ装置5が基地局21から受信する無線信号の強度の範囲を示す情報となる。なお、配信装置7がユーザ装置5に配信する発見情報は、ユーザ装置5が在圏するセル、つまり、ユーザ装置5がモビリティ管理装置8と確立している制御用のリンクが経由する基地局に対応するセル内の各アクセス・ポイントについてのアクセス・ポイント識別子と、設置位置と、無線信号強度範囲を示す情報を含んでいる。
【0025】
ユーザ装置5は、配信装置7から発見情報を受信した場合、例えば、基地局21からの無線信号強度が、発見情報に含まれるアクセス・ポイントの情報の一つである無線信号強度範囲の範囲内であれば、当該アクセス・ポイントと通信するためのインタフェースを起動(活性化)し、当該アクセス・ポイントと通信可能か否かを判定することができる。もちろん、ユーザ装置5は、GPS機能を一時的に起動させて取得する位置情報と、発見情報に含まれるアクセス・ポイントの位置情報から、アクセス・ポイントと通信可能であると判定すると、アクセス・ポイントと通信するためのインタフェースを起動して、当該アクセス・ポイントの走査を開始することもできる。さらに、取得する位置情報と、基地局装置21からの無線信号強度の両方により、アクセス・ポイントと通信可能か否かを判定することができる。
【0026】
図3に戻り、ポリシー保持部72は、モビリティ・ポリシー及びルーティング・ポリシーを保持している。ここで、モビリティ・ポリシーは、ユーザ装置5がアクセス・ポイント/基地局を選択するための基準となる情報や、ハンドオーバ先のアクセス・システムを選択するための基準となる情報を含んでいる。また、ルーティング・ポリシーは、例えば、ユーザ装置5が複数のアクセス・システムを同時に利用できる場合に、データの送信に使用するアクセス・ポイントをフロー毎に選択するための基準となる情報を含んでいる。なお、これらモビリティ・ポリシー及びルーティング・ポリシーは、総てのユーザ装置5に共通して適用するものであっても、ユーザ装置5毎に異なるものであっても良い。また、ネットワーク状態に応じて適用するモビリティ・ポリシー及びルーティング・ポリシーを変更することもできる。
【0027】
処理部73は、トラフィック量が所定量を超えているセルを特定する情報と、これらトラフィック量が所定量を超えているセルを管轄するモビリティ管理装置8を特定する情報を、例えば、通信事業者の運用者が配信装置7に入力すると、入力されたモビリティ管理装置8に対して、入力されたセルを示す情報を含むユーザ装置リスト要求メッセージを送信する。なお、トラフィック量が多いセルのみを運用者が入力し、セルを管轄するモビリティ管理装置8については、予め設定されたモビリティ管理装置8とセルの対応関係を示す情報に基づき処理部73が判定する構成であっても良い。処理部73は、ユーザ装置リスト要求メッセージの応答として、モビリティ管理装置8から、ユーザ装置リストを受信する。ユーザ装置リストは、ユーザ装置リスト要求メッセージで指定したセルそれぞれについて、その状態が"ECM接続"状態であるユーザ装置5を示す情報と、それらの使用量情報を含んでいる。処理部73は、ユーザ装置リストに含まれるユーザ装置5のうち、使用量情報が高であるユーザ装置5に、在圏しているセルの発見情報、モビリティ・ポリシー及びルーティング・ポリシーを送信する。
【0028】
図3(B)は、本実施形態によるモビリティ管理装置8の概略的な構成図である。モビリティ管理部81は、図1にて説明した様に、モビリティ管理装置8が管理すべきセル内にいる"EMM登録"状態であるユーザ装置について、"ECM接続"状態であるか、"ECMアイドル"状態であるかを管理している。また、処理部82は、配信装置7からユーザ装置リスト要求メッセージを受信すると、当該メッセージで指定されたセルに在圏し、状態が"ECM接続"であるユーザ装置5の使用量情報をユーザ管理装置9から取得する。つまり、ユーザ装置リスト要求メッセージに含まれるセル内にあり、モビリティ管理部と制御用のリンクを確立しているユーザ装置5の使用量情報をユーザ管理装置9から取得する。その後、処理部82は、ユーザ装置リスト要求メッセージで指定されたセルに属し、"ECM接続"状態であるユーザ装置5を示す情報と、これらユーザ装置5の使用量情報を含むユーザ装置リストを配信装置7に送信する。
【0029】
なお、本実施形態においては、上述した様にユーザ装置5が過去所定の期間に送信及び/又は受信したデータ量を、ユーザ管理装置9が閾値判定して、複数段階の使用量情報を保持するものであった。しかしながら、ユーザ管理装置9は、データ量を保持し、モビリティ管理装置8の処理部82、或いは、配信装置7の処理部73がデータ量を閾値判定する形態とすることもできる。
【0030】
以下、図4及び図5を用いて、本実施形態における発見情報の配信について詳細に説明する。図4は、以下の説明に用いるシステム構成図である。図4においては、セル#1〜#13の計13個のセルが存在し、モビリティ管理装置810は、セル#1〜#3、#5及び#8を管理し、モビリティ管理装置820は、セル#4、#6、#7及び#9を管理し、モビリティ管理装置830は、セル#10〜13を管理している。また、ユーザ装置51がセル#2内にあり、ユーザ装置52がセル#8内にあり、ユーザ装置53がセル#9内にある。なお、ユーザ装置51、52及び53の使用量情報は、それぞれ、"高"、"低"、"高"とする。
【0031】
図5は、図4に示す状態において、配信装置7に対して、セル#1〜セル#8がトラフィクの高いセルとして入力された場合における発見情報配信のためのシーケンスを示している。まず、S1において、配信装置7は、高負荷のセルを示す情報と、これら高負荷のセルを管理するモビリティ管理装置を特定する情報を受信する。配信装置7は、S2において、入力されたセル#1〜#3、#5及び#8を管理するモビリティ管理装置810と、入力されたセル#4、#6及び#7を管理するモビリティ管理装置820にユーザ装置リスト要求メッセージを送信する。ユーザ装置リスト要求メッセージには、それぞれ、高負荷であるセルのセル識別子を示す情報が含まれている。なお、モビリティ管理装置830が管轄するセルは入力されていないため、モビリティ管理装置830にはユーザ装置リスト要求メッセージは送信されない。
【0032】
S3において、モビリティ管理装置810は、ユーザ装置リスト要求メッセージで通知されたセル#1〜#3、#5及び#8にいるユーザ装置5のうち、"ECM接続"状態であるユーザ装置5を示す情報と、これらユーザ装置5の使用量情報を含むユーザ装置リストを配信装置7に送信する。同様に、モビリティ管理装置820は、ユーザ装置リスト要求メッセージで通知された#4、#6及び#7にいるユーザ装置のうち、"ECM接続"状態であるユーザ装置5を示す情報と、これらユーザ装置5の使用量情報を含むユーザ装置リストを配信装置7に送信する。なお、使用量情報は、モビリティ管理装置810及び820がユーザ管理装置9から取得する。
【0033】
S4において、配信装置7は、ユーザ装置リストに含まれる情報に基づき発見情報、モビリティ・ポリシー及びルーティング・ポリシーを送信するユーザ装置を決定する。図4の例においては、ユーザ装置53はセル#9に位置するため、配信装置7が受信するユーザ装置リストにユーザ装置53は含まれない。これに対して、ユーザ装置51はセル#2に位置し、ユーザ装置52はセル#8に位置するため、配信装置7が受信するユーザ装置リストにユーザ装置51及び52は含まれている。しかしながら、ユーザ装置52の使用量情報は"低"であるため、配信装置7は、ユーザ装置52に対して発見情報、モビリティ・ポリシー及びルーティング・ポリシーを送信する必要はないと判定する。これに対して、ユーザ装置51の使用量情報は"高"であるため、配信装置7は、ユーザ装置51に対して発見情報、モビリティ・ポリシー及びルーティング・ポリシーを送信すると判定する。
【0034】
よって、S5において、配信装置7は、ユーザ装置51に対し、セル#2についての発見情報、モビリティ・ポリシー及びルーティング・ポリシーを送信し、ユーザ装置51は、S6において、配信装置7において受信確認を送信する。その後、配信装置7は、発見情報に基づき、例えば、基地局からの無線信号強度を判定して、アクセス・ポイントと通信可能であると判定すると、無線LAN又はWiMaxのインタフェースを起動してアクセス・ポイントの走査を行う。走査によりアクセス・ポイントを発見すると、以後のトラフィックをアクセス・ポイント経由にできる。また、ユーザ装置51は、アクセス・ポイント経由での通信を開始すると、例えば、移動通信ネットワークに対してディタッチ処理を行い、移動通信ネットワークがユーザ装置51のために確保しているリソースを解放させることができる。なお、上記実施形態においては、発見情報、モビリティ・ポリシー及びルーティング・ポリシーを送信するとしていたが、モビリティ・ポリシー及びルーティング・ポリシーが予めユーザ装置5に設定されている場合等には、発見情報を送信するのみであっても良い。
【0035】
また、上述した実施形態では、S1においてトラフィック量が所定量を超えているセルを通知していた。しかしながら、これらセルを管轄するモビリティ管理装置8を通知する形態とすることもできる。この場合、配信装置7は、通知されたモビリティ管理装置8に対してユーザ装置リスト要求メッセージを送信し、ユーザ装置リスト要求メッセージを受信したモビリティ管理装置8は、自装置の管理する総てのセル内にいる"ECM接続"状態であるユーザ装置5のリストを含むユーザ装置リストを配信装置7に送信する。したがって、図4に示す状態において、モビリティ管理装置810及び820を示す情報が、図5のS1で入力されると、ユーザ装置53も配信装置7が受信するユーザ装置リストに含まれることになる。ユーザ装置53の使用量情報は"高"であるため、配信装置7は、ユーザ装置53にも発見情報等を送信することになる。
【0036】
また、上述した実施形態では、S1において通信事業者の運用者が配信装置7に負荷の高いセル又はそれらを管轄するモビリティ管理装置8を入力するとしていたが、例えば、トラフィック量を監視する監視装置が配信装置7に通知する形態であっても良い。なお、例えば、S5において配信装置7が発見情報を送信しても、負荷が依然高く、既に入力されたセルが再度入力されると、S4においては使用量情報が"中"であるユーザ装置にも発見情報を送信する。このとき、配信装置7は、モビリティ管理装置8にはユーザ装置リスト要求メッセージを新たに送信することなく、前に受信したユーザ装置リストに含まれるユーザ装置に発見情報を送信する構成とすることができる。また、再度、モビリティ管理装置8にユーザ装置リスト要求メッセージを送信して、最新のユーザ装置リストを受信して、使用量情報が"中"であるユーザ装置に発見情報を送信する構成とすることができる。これにより、効果的に高負荷となっているセル内にいるユーザ装置5を、移動通信ネットワークのアクセス・ネットワークを使用しない様にオフロードさせることができる。
【0037】
また、上述した実施形態では、配信装置7が使用量情報に基づき発見情報を送信するユーザ装置を選択していた。しかしながら、モビリティ管理装置8が使用量情報に基づき発見情報を送信するユーザ装置を選択し、選択したユーザ装置のみをユーザ装置リストに含めて配信装置7に通知する構成であっても良い。この場合、配信装置7は、ユーザ装置リストに含まれる総てのユーザ装置5に発見情報を送信する。
【0038】
なお、コア・ネットワーク1の配信装置7、モビリティ管理装置8及びユーザ管理装置9は、それぞれ異なる装置としたが、これらは1つの装置であっても良い。また、配信装置7、モビリティ管理装置8及びユーザ管理装置9の任意の2つの装置を1つの装置とすることもできる。
【0039】
さらに、上記配信装置7、モビリティ管理装置8及びユーザ管理装置9は、コンピュータを上記装置として動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
図1
図2
図3
図4
図5