(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、血液バッグ等に接続されたチューブは、使用前(包材にしまわれている段階)においては折り重なった状態で収納されていることから、チューブに折れ癖や曲がり癖(以下、折れ癖等という。)が付いてしまっていることがある。そのような折れ癖等の付いたチューブを複数のチューブシール部に挿入すると、折れ癖等の付いている部分において検知部がチューブの挿入を検知しない場合がある。その場合、従来の医療用チューブシール装置においては、1か所でも検知部がチューブの挿入を検知しないと、複数のチューブシール部全体としてシール動作を行わないように制御されているため、複数のチューブシール部全体にチューブが挿入されているように装置使用者(以下、単に使用者という。)の目には見えていたとしても、一向にシール動作が開始されないというケースが起こりうる。
【0007】
また、一向にシール動作が開始されないことを不審に感じた使用者が、例えば複数のチューブシール部からチューブを外そうとした際、チューブの挿入を検知していなかった検知部において偶然チューブが検知されてしまうケースも考えられる。その場合、意図しないタイミングで全体のシール動作が行われてしまうことから、シール動作とチューブを外す動作とが重なることによってチューブが破断してしまったり、チューブの一部においてシール不足が発生したりする等、シール不良が発生しかねない。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、使用者の意図しないタイミングでシール溶着されてしまうことを防ぐことができ、シール不良の発生を抑制することが可能な医療用チューブシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、上記した目的を達成するため、折れ癖等の付いたチューブをチューブシール部に挿入したときの、当該チューブと、一対の電極の両脇に配設された検知部(2つの検知部)との位置関係について徹底的に調査した。その結果、折れ癖等の付いたチューブをチューブシール部に挿入した場合、2つの検知部のうち一方の検知部では検知部によって検知されない位置(検知不可位置)にチューブが位置したとしても、他方の検知部では検知可能な位置にチューブが位置するという知見を得た。すなわち、折れ癖等の付いたチューブをチューブシール部に挿入した場合、2つの検知部の両方ともに検知されない位置にチューブが位置するのではなく、片方の検知部においては検知可能な位置にチューブが位置するのである。
【0010】
本発明の発明者は、以上の知見に基づき、一対の電極の両脇に1つずつ検知部が配設された医療用チューブシール装置において、いずれか一方の検知部がチューブの挿入を検知したことに基づいて複数のチューブシール部全体のシール動作がなされるように構成すれば、上記した問題を解決することができることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の医療用チューブシール装置は、装置本体と、前記装置本体に設けられ、直線状に配列された複数のチューブシール部と、装置各部を統括制御する主制御部とを備え、前記複数のチューブシール部のそれぞれは、前記複数のチューブシール部の配列方向と直交して配置される一対の電極と、前記一対の電極間に医療用チューブが挿入されたことを検知するための検知部とを有し、前記主制御部は、前記複数のチューブシール部のすべてにおいて、前記一対の電極間に医療用チューブが挿入されたか否かを判定するチューブ挿入状態判定部と、前記チューブ挿入状態判定部による判定結果に基づいて、前記複数のチューブシール部のすべてにおいて前記一対の電極間に医療用チューブが挿入されていると判定されたときにシール動作を行うよう、前記複数のチューブシール部を制御するシール動作制御部とを少なくとも有し、前記検知部は、前記複数のチューブシール部の配列方向に沿って、前記一対の電極の両脇に1つずつ配設されており、前記チューブ挿入状態判定部は、各チューブシール部において、2つの前記検知部のうちいずれか一方が医療用チューブの挿入を検知したときに、当該チューブシール部に医療用チューブが挿入されたと判定する。
【0012】
このため、本発明の医療用チューブシール装置によれば、主制御部が上記したチューブ挿入状態判定部を有しているため、各チューブシール部において2つの検知部のうちいずれか一方の検知部がチューブの挿入を検知すると、チューブ挿入状態判定部によって、当該チューブシール部にチューブが挿入されたものと判定されることとなる。また、主制御部が上記したシール動作制御部を有しているため、複数のチューブシール部のすべてにおいてチューブが挿入されていると判定されたときに、複数のチューブシール部全体のシール動作が行われることとなる。つまり、各チューブシール部においていずれか一方の検知部がチューブの挿入を検知したことに基づいて、複数のチューブシール部全体のシール動作がなされることから、折れ癖等の付いたチューブを複数のチューブシール部に挿入した場合において、一向にシール動作が開始されないという問題の発生を極力抑制することが可能となる。その結果、意図しないタイミングで全体のシール動作が行われてしまうこともなくなり、シール不良の発生も抑制することが可能となる。
【0013】
したがって、本発明の医療用チューブシール装置は、使用者の意図しないタイミングでシール溶着されてしまうことを防ぐことができ、シール不良の発生を抑制することが可能な装置となる。
【0014】
本発明の医療用チューブシール装置においては、前記複数のチューブシール部を、前記装置本体の一方側面側に配置され、1個の前記チューブシール部からなる第1群と、前記装置本体の前記一方側面とは反対の他方側面側に配置され、1個の前記チューブシール部からなる第2群と、前記第1群に属する前記チューブシール部と前記第2群に属する前記チューブシール部との間に配置され、少なくとも1個の前記チューブシール部からなる第3群とに分類したとき、前記チューブ挿入状態判定部は、前記第1群に属する前記チューブシール部においては、2つの前記検知部のうち前記一方側面側に配置された前記検知部が医療用チューブの挿入を検知したときに、当該チューブシール部に医療用チューブが挿入されたと判定し、前記第2群に属する前記チューブシール部においては、2つの前記検知部のうち前記他方側面側に配置された前記検知部が医療用チューブの挿入を検知したときに、当該チューブシール部に医療用チューブが挿入されたと判定することが好ましい。
【0015】
折れ癖等の付いたチューブを複数のチューブシール部に挿入したとき、装置本体の両側面に近い位置であればあるほど、チューブにかかるテンション(引張力)によってチューブに付いた折れ癖等の影響が緩和されやすいことから、上記のように構成することにより、チューブシール部にチューブが挿入されたことをより適切に判定することが可能となる。
【0016】
本発明の医療用チューブシール装置においては、前記主制御部は、前記第1群及び前記第2群のうち少なくとも一方に属する前記チューブシール部に医療用チューブが挿入されたと判定されてから、前記第3群に属する前記チューブシール部に医療用チューブが挿入されたと判定されるまでの経過時間を計測する経過時間計測部をさらに有し、前記シール動作制御部は、前記経過時間が所定時間を超えた場合には、前記複数のチューブシール部のすべてにおいてシール動作を行わないよう、前記複数のチューブシール部を制御することが好ましい。
【0017】
このように構成することにより、所定時間を超えた以降においては、使用者が複数のチューブシール部からチューブを外そうとしたとしても、意図しないタイミングで全体のシール動作が行われてしまうこともないため、シール不良の問題の発生を確実に抑制することが可能となる。
【0018】
本発明の医療用チューブシール装置においては、前記所定時間を設定変更可能に構成されていることが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、複数のチューブシール部のすべてにおいてシール動作を行うか否かを判断するのに要する時間を、使用者の好みに応じて自由に調整することが可能となる。
【0020】
本発明の医療用チューブシール装置においては、前記経過時間が所定時間を超えた場合に、前記複数のチューブシール部のすべてにおいてシール動作が行われないことを、使用者に報知する報知手段をさらに備えることが好ましい。
【0021】
このように構成することにより、所定時間を超えた以降においては、複数のチューブシール部のすべてにおいてシール動作が行われないことを使用者が認識することが可能となる。
【0022】
なお、特許請求の範囲に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲に記載された内容を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の医療用チューブシール装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0025】
[実施形態]
まず、実施形態に係る医療用チューブシール装置1の構成について、
図1〜
図7を用いて説明する。
【0026】
図1は、実施形態に係る医療用チューブシール装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図2は、実施形態に係る医療用チューブシール装置1の外観斜視図である。
図3は、実施形態に係る医療用チューブシール装置1の正面図である。なお、
図3において、載置台12の図示を省略している。
図4は、装置本体10の右側面図である。
図5は、チューブシール部20Aの構成を模式的に示す図である。
図6は、一対の電極21A,22Aの周辺部分を拡大して示す図である。
図6(a)はチューブTを挿入する前における一対の電極21A,22Aの周辺部分を拡大して示す図であり、
図6(b)はチューブTを挿入したときの、一対の電極21A,22Aの周辺部分を拡大して示す図である。
図7は、実施形態に係る医療用チューブシール装置1を説明するために示す図である。
図7(a)は装置本体10を正面から見たときのチューブシール部20A〜20Hにおける検知部30A〜30H,35A〜35Hの位置を模式的に示す図であり、
図7(b)はチューブシール部20A〜20HにチューブTを挿入した一例を示す図であり、
図7(c)はチューブシール部20A〜20HにチューブTを挿入した他の例を示す図である。なお、
図7(a)〜
図7(c)においては、本来は装置本体10の正面からは見えない検知部30A〜30H,35A〜35H及び挿入されたチューブTを、発明の理解を容易にするために実線で示している。
【0027】
実施形態に係る医療用チューブシール装置1は、
図1〜
図3に示すように、装置本体10と、装置本体10を載置する載置台12と、装置本体10の正面側に直線状に配列された8つのチューブシール部20A〜20Hと、チューブシール部20A〜20Hの上方位置に設けられた8つの点灯部50A〜50Hと、医療用チューブシール装置1内の各部に電力を供給するための電源部60と、各種情報を記憶する記憶部62と、医療用チューブシール装置1内の各部を統括制御する主制御部70とを備える。
【0028】
なお、以下の説明において、装置本体10の正面とは、装置本体10におけるチューブシール部20A〜20Hが設けられた面のことをいう。装置本体10の右側面(一方側面)とは、装置本体10を正面から見たときの右側の面のことをいう。装置本体10の左側面(他方側面)とは、装置本体10を正面から見たときの左側の面のことをいう。
【0029】
また、8つのチューブシール部20A〜20Hのうち、装置本体10の右側面側に配置されるチューブシール部を、「第1群に属するチューブシール部」といい、装置本体10の左側面側に配置されるチューブシール部を、「第2群に属するチューブシール部」といい、「第1群に属するチューブシール部」と「第2群に属するチューブシール部」との間に配置されるチューブシール部を「第3群に属するチューブシール部」という。
医療用チューブシール装置1を正面から見たときに、最も右側に配置されたチューブシール部20Aが、第1群に属するチューブシール部であり、最も左側に配置されたチューブシール部20Hが、第2群に属するチューブシール部であり、チューブシール部20B〜20Gが、第3群に属するチューブシール部である。
【0030】
装置本体10には、図示による説明は省略するが、例えば外部記録媒体としての外部メモリ(例えはSDカードやコンパクトフラッシュ(登録商標)など)を挿入可能なスロット部が設けられている。
【0031】
チューブシール部20A〜20Hは、例えば高周波でチューブを閉塞(シール)する機能を有する高周波チューブシーラーである。チューブシール部20A〜20Hのうち例えばチューブシール部20Aを例にしてその構造を説明すると、チューブシール部20Aは、
図1〜
図6に示すように、一対の電極21A,22Aと、一対の電極21A,22Aを支持する電極支持部23A,24Aと、一対の電極21A,22Aをカバーするカバー部材25Aと、一対の電極21A,22A間にチューブが挿入されたことを検知するための2つの検知部30A,35Aと、電極支持部23Aに接続された進退機構40Aとを有する。
【0032】
一対の電極21A,22Aのうち電極21Aは可動電極であり、電極22Aは固定電極である。一対の電極21A,22Aは、チューブシール部20A〜20Hの配列方向(装置本体10を正面から見て左右方向)と直交して配置されている。一対の電極21A,22Aは、装置本体10の前面から張り出すように設けられており、カバー部材25Aによってカバーされている。カバー部材25Aは、
図4から分かるように、一対の電極21A,22A間に対して上方よりチューブを挿入可能に設けられている。
【0033】
検知部30A,35Aは、チューブシール部20A〜20Hの配列方向(装置本体10を正面から見て左右方向)に沿って、一対の電極21A,22Aの両脇に1つずつ配設されている。検知部30A,35Aは、
図6(a)に示すように、電極21Aの両脇に配設された発光素子31A,36Aと、電極22Aの両脇に配設された受光素子32A,37Aとからなり、発光素子31A,36Aと受光素子32A,37Aとがそれぞれ対向する位置に配置されている。検知部30A,35Aは、例えば透過型のフォトインタラプタであり、
図6(b)に示すように、一対の電極21A,22A間に挿入されたチューブTによって発光素子31A,36Aからの光が遮断されたことを、受光素子32A,37Aが検知し、当該検知情報を主制御部70に送るように構成されている。
【0034】
進退機構40Aは、例えば電動シリンダからなる。進退機構40Aによる直線運動が電極支持部23Aを介して電極21Aに伝達されることにより、一対の電極21A,22Aを接近又は離隔させる方向に沿って、電極21Aを移動させるように構成されている。
【0035】
なお、他のチューブシール部20B〜20Hについても、基本的に上記したチューブシール部20Aと同様の構成を有する。
【0036】
点灯部50A〜50Hは、例えばLEDからなり、複数の色で発光又は明滅可能に構成されている。
【0037】
電源部60は、外部の商用電源などから電源ケーブル(図示せず。)を介して交流電力を導き、内蔵するAC/DC変換部(図示せず。)で変圧・整流・平滑などの処理を行って、医療用チューブシール装置1の各部に電力を供給する機能を有する。
【0038】
記憶部62には、第1群及び第2群に属するチューブシール部20A,20Hにチューブが挿入されたと判定されてから、第3群に属するチューブシール部20B〜20Gにチューブが挿入されたと判定されるまでの標準となる時間(特許請求の範囲中に記載する「所定時間」に該当するものであり、以下、標準時間という。)に係るデータが少なくとも記憶されている。
【0039】
なお、記憶部62に記憶されている当該標準時間に係るデータは、例えば使用者の操作によってデータ書換え可能に構成されている。
【0040】
主制御部70は、例えばマイクロコンピュータ等から構成されている。主制御部70は、
図1に示すように、チューブ挿入状態判定部72と、チューブシール部20A〜20Hのシール動作を制御するシール動作制御部74と、第1群及び第2群に属するチューブシール部20A,20Hにチューブが挿入されたと判定されてから、第3群に属するチューブシール部20B〜20Gのすべてにチューブが挿入されたと判定されるまでの時間(以下、経過時間という。)を計測する経過時間計測部76と、点灯部50A〜50Hの点灯動作を制御する点灯動作制御部78とを少なくとも有する。
【0041】
チューブ挿入状態判定部72は、チューブシール部20A〜20Hのすべてにおいて、一対の電極間にチューブが挿入されたか否かを判定する機能(第1機能)と、各チューブシール部20A〜20Hにおいて、2つの検知部のうちいずれか一方がチューブの挿入を検知したときに、そのチューブシール部にチューブが挿入されたと判定する機能(第2機能)とを有する。
【0042】
チューブ挿入状態判定部72の第2機能についてさらに説明すると、第1群に属するチューブシール部20Aにおいては、2つの検知部30A,35Aのうち正面右側に配置された検知部30Aがチューブの挿入を検知したときに、「チューブシール部20Aにチューブが挿入された」と判定する。第2群に属するチューブシール部20Hにおいては、2つの検知部30H,35Hのうち正面左側に配置された検知部35Hがチューブの挿入を検知したときに、「チューブシール部20Hにチューブが挿入された」と判定する。第3群に属するチューブシール部20B〜20Gのそれぞれにおいては、2つの検知部30B〜30G,35B〜35Gのうちいずれか一方がチューブの挿入を検知したときに、「そのチューブシール部にチューブが挿入された」と判定する。
【0043】
例えば
図7(b)に示すようにしてチューブシール部20A〜20Hに対してチューブTが挿入された場合、第1群に属するチューブシール部20Aにおいては、検知部30AがチューブTの挿入を検知しているため、チューブ挿入状態判定部72は、「チューブシール部20AにはチューブTが挿入された」と判定する。第2群に属するチューブシール部20Hにおいては、検知部35HがチューブTの挿入を検知しているため、チューブ挿入状態判定部72は、「チューブシール部20HにはチューブTが挿入された」と判定する。第3群に属するチューブシール部20B〜20Gのそれぞれにおいては、2つの検知部のうちいずれか一方がチューブTの挿入を検知しているため、チューブ挿入状態判定部72は、「チューブシール部20B〜20GのそれぞれにはチューブTが挿入された」と判定する。なお、チューブシール部20Cの位置においては、チューブTに折れ癖等が付いていることから、左側に位置する検知部35Cの位置ではチューブTの挿入が検知されていないが、右側に位置する検知部30Cの位置ではチューブTの挿入が検知されている。
【0044】
シール動作制御部74は、チューブ挿入状態判定部72による判定結果に基づいて、チューブシール部20A〜20Hのすべてにおいて一対の電極間にチューブが挿入されていると判定されたときにシール動作を行うよう、チューブシール部20A〜20Hを制御する機能(シール動作制御機能)と、経過時間計測部76によって計測された経過時間が標準時間を超えた場合には、チューブシール部20A〜20Hのすべてにおいてシール動作を行わないよう、チューブシール部20A〜20Hを制御する機能(ロック機能)とを有する。
【0045】
シール動作制御部74のロック機能についてさらに説明すると、シール動作制御部74は、記憶部62に記憶されている標準時間に係るデータを読み出し、経過時間計測部76によって計測された経過時間と当該標準時間とを比較する。経過時間が標準時間を超えた場合には、チューブシール部20A〜20Hのすべてにおいてシール動作を行わないよう、チューブシール部20A〜20Hを制御する。上記したロック機能が働くことによって、仮にチューブシール部20A〜20HからチューブTを外そうとしたときにも、使用者の意図しないタイミングでシール動作が行われることもない。
【0046】
経過時間が標準時間を超えた場合としては、例えば、第1群及び第2群に属するチューブシール部20A,20Hにチューブが挿入されたと判定された後、第3群に属するチューブシール部20B〜20Gのうち少なくとも1つのチューブシール部においてチューブが挿入されたと判定されず、結果として標準時間を経過してしまった場合などが挙げられる。
【0047】
報知手段としての点灯動作制御部78は、経過時間計測部76によって計測された経過時間が記憶部62に記憶されている標準時間を超えた場合、すなわち、シール動作制御部74のロック機能によってチューブシール部20A〜20Hのすべてにおいてシール動作が行われない場合に、点灯部50A〜50Eのうち少なくとも1つを点滅させる機能(ロック状態報知機能)を有する。
【0048】
ロック状態報知機能について具体的に説明すると、例えば
図7(c)に示すようにしてチューブシール部20A〜20Hに対してチューブTが挿入された場合、チューブシール部20Eの位置においてはチューブTが適切に挿入されていないため、チューブシール部20Eの2つの検知部30E,35EはチューブTの挿入を検知しない。この場合、チューブ挿入状態判定部72の第2機能によって、「チューブシール部20A〜20D,20F〜20HにはチューブTが挿入されており、チューブシール部20EにはチューブTが挿入されていない」と判定される。第3群に属するチューブシール部20Eにおいて「チューブTが挿入された」と判定されない状態が続くと、経過時間計測部76によって計測される経過時間が標準時間を上回ってしまう結果、シール動作制御部74のロック機能が発揮され、チューブシール部20A〜20Hのすべてにおいてシール動作が行われないこととなる。このとき、点灯動作制御部78の上記したロック状態報知機能が発揮され、点灯部50A〜50Hのうち、チューブが挿入されていないと判定されたチューブシール部20Eに対応する点灯部50Eが点滅する。この点滅動作により、使用者は、チューブシール部20A〜20Hのすべてにおいてシール動作が行われないことを明確に認識することができるようになる。また、点灯部50A〜50Hのうち点灯部50Eが点滅していることによって、チューブシール部20A〜20Hのうちチューブシール部20Eの位置においてチューブTの挿入状態に何らかの不具合があったことを、使用者が認識することができるようになる。
【0049】
なお、
図7(c)に示す例において、経過時間計測部76によって計測される経過時間が標準時間を上回る前に、仮にチューブTをチューブシール部20A〜20Hから外さない程度で多少ずらした結果、第3群に属するチューブシール部20Eも含めたすべてのチューブシール部20A〜20Hにおいて「チューブTが挿入された」と判定されれば、シール動作制御部74のロック機能が発揮されることはない。
【0050】
以上のように構成された実施形態に係る医療用チューブシール装置1によれば、主制御部70が上記したチューブ挿入状態判定部72を有しているため、各チューブシール部20A〜20Hにおいて2つの検知部のうちいずれか一方の検知部がチューブの挿入を検知すると、チューブ挿入状態判定部72によって、当該チューブシール部にチューブが挿入されたものと判定されることとなる。また、主制御部70が上記したシール動作制御部74を有しているため、チューブシール部20A〜20Hのすべてにおいてチューブが挿入されていると判定されたときに、チューブシール部20A〜20H全体のシール動作が行われることとなる。つまり、各チューブシール部20A〜20Hにおいていずれか一方の検知部がチューブの挿入を検知したことに基づいて、チューブシール部20A〜20H全体のシール動作がなされることから、折れ癖等の付いたチューブをチューブシール部20A〜20Hに挿入した場合において、一向にシール動作が開始されないという問題の発生を極力抑制することが可能となる。その結果、意図しないタイミングで全体のシール動作が行われてしまうこともなくなり、シール不良の発生も抑制することが可能となる。
【0051】
したがって、実施形態に係る医療用チューブシール装置1は、使用者の意図しないタイミングでシール溶着されてしまうことを防ぐことができ、シール不良の発生を抑制することが可能な装置となる。
【0052】
実施形態に係る医療用チューブシール装置1において、チューブ挿入状態判定部72は、第1群に属するチューブシール部20Aにおいては、2つの検知部30A,35Aのうち正面右側に配置された検知部30Aがチューブの挿入を検知したときに、チューブシール部20Aにチューブが挿入されたと判定する。第2群に属するチューブシール部20Hにおいては、2つの検知部30H,35Hのうち正面左側に配置された検知部35Hがチューブの挿入を検知したときに、チューブシール部20Hにチューブが挿入されたと判定する。折れ癖等の付いたチューブを複数のチューブシール部に挿入したとき、装置本体の両側面に近い位置であればあるほど、チューブにかかるテンション(引張力)によってチューブに付いた折れ癖等の影響が緩和されやすいことから、実施形態に係る医療用チューブシール装置1によれば、チューブシール部にチューブが挿入されたことをより適切に判定することが可能となる。
【0053】
実施形態に係る医療用チューブシール装置1においては、主制御部70は、上記した経過時間計測部76をさらに有し、シール動作制御部74が上記したロック機能を有する。これにより、記憶部62に記憶された標準時間を超えた以降においては、使用者がチューブシール部20A〜20Hからチューブを外そうとしたとしても、意図しないタイミングで全体のシール動作が行われてしまうこともないため、シール不良の問題の発生を確実に抑制することが可能となる。
【0054】
実施形態に係る医療用チューブシール装置1においては、記憶部62に記憶された標準時間を設定変更可能に構成されているため、チューブシール部20A〜20Hのすべてにおいてシール動作を行うか否かを判断するのに要する時間を、使用者の好みに応じて自由に調整することが可能となる。
【0055】
実施形態に係る医療用チューブシール装置1においては、主制御部70が点灯動作制御部78を有しているため、上述したように、標準時間を超えた以降においては、チューブシール部20A〜20Hのすべてにおいてシール動作が行われないことを使用者が認識することが可能となる。
【0056】
以上、本発明の医療用チューブシール装置を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
(1)上記実施形態においては、経過時間計測部は、第1群及び第2群に属するチューブシール部20A,20Hにチューブが挿入されたと判定されてから、第3群に属するチューブシール部20B〜20Gにチューブが挿入されたと判定されるまでの経過時間を計測する機能を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。当該機能に代えて、第1群又は第2群に属するチューブシール部20A,20Hにチューブが挿入されたと判定されてから、第3群に属するチューブシール部20B〜20Gにチューブが挿入されたと判定されるまでの経過時間を計測する機能を有していてもよい。すなわち、経過時間の計測開始時点を、第1群及び第2群に属するチューブシール部20A,20Hの両方にチューブが挿入されたと判定されたときとしてもよいし、第1群及び第2群に属するチューブシール部20A,20Hのうちいずれか一方にチューブが挿入されたと判定されたときとしてもよい。
【0058】
(2)上記実施形態においては、点灯動作制御部がロック状態報知機能を発揮したときに、点灯部50A〜50Hのうち、チューブが挿入されていないと判定されたチューブシール部に対応する点灯部のみが点滅する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、点灯動作制御部がロック状態報知機能を発揮したときに、複数の点灯部のすべてが点滅するように構成してもよい。または、点灯部を点滅させるのではなく、例えば、点灯していた点灯部を一時的に消灯させたり、反対に消灯していた点灯部を一時的に点灯させたりするように構成してもよいし、通常とは異なる色で点灯部を発光させるように構成してもよい。
【0059】
(3)上記実施形態においては、報知手段が点灯動作制御部(及び点灯部)であり、複数のチューブシール部のすべてにおいてシール動作が行われないことを、光によって使用者に報知する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、音響発生手段を備えている場合であれば、複数のチューブシール部のすべてにおいてシール動作が行われないことを、音によって使用者に報知するものであってもよいし、液晶ディスプレイ等の画像表示手段を備えている場合であれば、複数のチューブシール部のすべてにおいてシール動作が行われないことを、文字や図形等の画像情報によって使用者に報知するものであってもよい。また、例えば光と音の両方で使用者に報知する等、これらの手段を組み合わせたものであってもよい。
【0060】
(4)上記実施形態においては、例えばチューブシール部20Aにおいて、一対の電極21A,22Aのうち進退機構40A側に位置する電極21Aが動くように構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、進退機構40Aとは反対側に位置する電極22Aが動くように構成されていてもよいし、両方の電極21A,22Aが動くように構成されていてもよい。他のチューブシール部20B〜20Hにおいても同様のことが言える。
【0061】
(5)上記実施形態においては、チューブシール部が、高周波でチューブを閉塞する機能を有する高周波チューブシーラーである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、超音波チューブシーラーや、インパルス加熱式チューブシーラーなどであってもよい。
【0062】
(6)上記実施形態においては、検知部が透過型のフォトインタラプタである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射型のフォトリフレクタであってもよい。
【0063】
(7)上記実施形態においては、進退機構が電動シリンダからなる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ソレノイドの駆動とバネ部材の付勢力を利用して電極を移動させる機構など、他の公知の手段を用いてもよいことは言うまでもない。
【0064】
(8)上記実施形態においては、チューブシール部の数が8つである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。2つから7つ又は9つ以上のチューブシール部を備える医療用チューブシール装置であっても、本発明を適用可能である。なお、チューブシール部の数が2つである場合、第3群に属するチューブシール部は存在しないこととなる。