(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882869
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】発電プラントの運転方法
(51)【国際特許分類】
F01K 9/00 20060101AFI20160225BHJP
F28B 9/00 20060101ALI20160225BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20160225BHJP
B01D 39/04 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
F01K9/00 G
F28B9/00
C02F1/42 B
B01D39/04
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-211415(P2012-211415)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-66169(P2014-66169A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊一
(72)【発明者】
【氏名】福士 一徳
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−027081(JP,A)
【文献】
特開平09−285785(JP,A)
【文献】
特開平09−276862(JP,A)
【文献】
特開昭60−044707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/42
F01K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器と、前記蒸気発生器で発生した蒸気で駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮する復水器と、前記復水器で凝縮された水を前記蒸気発生器に供給する復水系統と、前記復水系統に設けられた脱塩塔とを備えた発電プラントの運転方法において、
前記発電プラントの起動時に、前記脱塩塔にクラッド除去用充填物を充填した状態で通水する第1手順と、
前記脱塩塔の上流側における水中のクラッド濃度を計測する第2手順と、
前記脱塩塔の上流側における水中のクラッド濃度が規定値未満になると、前記脱塩塔にイオン交換樹脂を充填した状態で通水する第3手順とを有することを特徴とする発電プラントの運転方法。
【請求項2】
請求項1記載の発電プラントの運転方法において、
前記脱塩塔から取出したクラッド除去用充填物を洗浄する第4手順と、
前記発電プラントの再起動時に、前記脱塩塔に洗浄後のクラッド除去用充填物を充填した状態で通水する第5手順とを有することを特徴とする発電プラントの運転方法。
【請求項3】
請求項1記載の発電プラントの運転方法において、
前記脱塩塔から取出したクラッド除去用充填物を廃棄する第4手順を有することを特徴とする発電プラントの運転方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の発電プラントの運転方法において、
前記クラッド除去用充填物は、不活性樹脂、又は前記イオン交換樹脂より性能が低いか若しくは劣化したイオン交換樹脂であることを特徴とする発電プラントの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電プラント等の発電プラントに係わり、特に、復水脱塩装置を備えた発電プラントの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラント(又は原子力発電プラント)においては、ボイラ(又は原子炉)で水を加熱して蒸気を発生し、この蒸気で蒸気タービンを駆動し、蒸気タービンから排出された蒸気を復水器で凝縮し、凝縮された水を復水系統(給水系統)を介してボイラ(又は原子炉)に供給するようになっている。そして、通常運転時は、復水系統の水流量が安定しており、水中のクラッド(詳細には、酸化鉄を主成分とする懸濁状物質)の濃度も例えば20〜50μg/L程度と比較的低いレベルで安定している。そのため、復水系統には、クラッド除去処理を主目的とした濾過装置を設置しなくとも、脱塩処理を主目的とした復水脱塩装置(詳細には、イオン交換樹脂が充填された脱塩塔)だけを設置してもよい。これにより、コスト低減を図りながら、水の浄化処理を行うことが可能である。
【0003】
しかし、発電プラントの起動時(初期起動時又は再起動時)は、水流量の急激な変化などにより、系統内に蓄積されていた多量のクラッドが流れて、水中のクラッド濃度が数千μg/Lに達することがある。そして、クラッド濃度が高いまま復水脱塩装置を通水すると、クラッド中の腐食生成物(鉄などの重金属元素の酸化物及び水酸化物)によってイオン交換樹脂が汚染を受けて、イオン交換樹脂の性能が低下する可能性がある。
【0004】
ここで、発電プラントの起動時には、復水系統のクリーンアップ運転を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。このとき、上述したイオン交換樹脂の汚染を防止するため、例えばクラッド濃度に応じて復水脱塩装置への通水を制限する方法が採用されている。詳しく説明すると、復水脱塩装置の上流側から水をサンプリングしてクラッド濃度を測定し、そのクラッド濃度がイオン交換樹脂の通水条件である規定値(詳細には、例えば500μg/L程度)未満となるまで、復水脱塩装置への通水を制限して、復水脱塩装置の上流側から系外に排水(ブロー)する。その後、復水脱塩装置の上流側における水中のクラッド濃度が規定値未満になれば、復水脱塩装置を通水する。そして、復水脱塩装置の下流側から水をサンプリングしてクラッド濃度を測定し、そのクラッド濃度が所定値未満となるまで、ボイラへの給水を制限して、復水脱塩装置の下流側から復水器に排水する。このようにして復水系統を段階的にクリーンアップする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−79509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、復水脱塩装置の上流側における水中のクラッド濃度が、イオン交換樹脂の通水条件である規定値未満となるまで、復水脱塩装置への通水を制限して、復水脱塩装置の上流側から系外に排水している。すなわち、復水脱塩装置の上流側における水中のクラッド濃度が規定値未満となるまで、復水系統のクリーンアップ運転が次の段階に進めない。そのため、復水系統のクリーンアップ時間が助長し、ひいては発電プラントの起動時間が助長していた。
【0007】
本発明の目的は、発電プラントの起動時間の短縮を図ることができる発電プラントの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、蒸気発生器と、前記蒸気発生器で発生した蒸気で駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮する復水器と、前記復水器で凝縮された水を前記蒸気発生器に供給する復水系統と、前記復水系統に設けられた脱塩塔とを備えた発電プラントの運転方法において、前記発電プラントの起動時に、前記脱塩塔にクラッド除去用充填物を充填した状態で通水する第1手順と、前記脱塩塔の上流側における水中のクラッド濃度を計測する第2手順と、前記脱塩塔の上流側における水中のクラッド濃度が規定値未満になると、前記脱塩塔にイオン交換樹脂を充填した状態で通水する第3手順とを有する。
【0009】
本発明においては、まず、脱塩塔にクラッド除去用充填物を充填するので、例えばイオン交換樹脂を充填する場合と比べ、脱塩塔の通水条件を緩和することができる。これにより、発電プラントの起動時に、脱塩塔の上流側における水中のクラッド濃度が規定値(イオン交換樹脂の通水条件)以上であっても、脱塩塔を通水することができる。したがって、例えば脱塩塔への通水を制限する場合よりも、復水系統のクリーンアップ時間の短縮を図ることができる。また、脱塩塔にクラッド除去用充填物を充填した状態で通水するので、例えば脱塩塔にクラッド除去用充填物を充填しない状態で通水したり、脱塩塔をバイパスしたりする場合よりも、復水系統における水中のクラッド濃度の低減を促進することができる。したがって、このような観点からも、復水系統のクリーンアップ時間の短縮を図ることができる。その結果、発電プラントの起動時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発電プラントの起動時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態における火力発電プラントの構成を表す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態における復水脱塩装置の構成を関連設備とともに表す概略図であり、通常運転中の動作状態を示す。
【
図3】本発明の一実施形態における復水脱塩装置の構成を関連設備とともに表す概略図であり、イオン交換樹脂を再生する場合の動作状態を示す。
【
図4】本発明の一実施形態における復水脱塩装置の構成を関連設備とともに表す概略図であり、イオン交換樹脂を再生する場合の動作状態を示す。
【
図5】本発明の一実施形態における発電プラントの運転方法を表すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態における復水脱塩装置の構成を関連設備とともに表す概略図であり、発電プラントの起動時の動作状態を示す。
【
図7】本発明の一実施形態における復水脱塩装置の構成を関連設備とともに表す概略図であり、発電プラントの起動時の動作状態を示す。
【
図8】本発明の一実施形態における発電プラントの起動時のクラッド濃度の経時変化を表す図である。
【
図9】本発明の一変形例における発電プラントの運転方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、火力発電プラントに適用した場合を例にとり、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における火力発電プラントの構成を表す概略図である。
図2〜
図4は、本実施形態における復水脱塩装置の構成を関連設備とともに表す概略図であり、
図2は通常運転中の動作状態を示し、
図3及び
図4は、イオン交換樹脂を再生する場合の動作状態を示す。なお、図中の黒塗りの弁は閉弁状態を示し、図中の白抜きの弁は閉弁状態を示している。
【0014】
図1で示すように、火力発電プラントは、ボイラ1、高圧蒸気タービン2、中圧蒸気タービン3、低圧蒸気タービン4、発電機5、及び復水器6を備えている。蒸気タービン2,3,4及び発電機5は、それらの回転軸が互いに連結されている。ボイラ1で発生した蒸気は、例えば高圧蒸気タービン2、中圧蒸気タービン3、及び低圧蒸気タービン4の順に流通して、蒸気タービン2,3,4を駆動させる。すなわち、蒸気タービン2,3,4は、流体エネルギーを機械エネルギーに変換する。発電機5は、蒸気タービン2,3,4で発生した機械エネルギーを電気エネルギーに変換する(すなわち、電気を発生する)。
【0015】
復水器6は、低圧蒸気タービン4から排出された蒸気を冷却して凝縮する。復水器6で凝縮された水は、復水系統(給水系統)7を介してボイラ1に供給される。復水系統7には、流れ方向に沿う順序で、復水ポンプ8、復水脱塩装置9、復水ブースタポンプ10、低圧給水加熱器11、脱気器12、給水ポンプ13、及び高圧給水加熱器14が設けられている。
【0016】
復水ポンプ8は、復水器6からの水を復水脱塩装置9へ送る。復水脱塩装置9は、
図2等で示すように、複数の(図中では代表して1つのみ示す)脱塩塔15Aと、予備である1つの脱塩塔15Bとを備えている。これら脱塩塔15A,15Bは、復水ポンプ8と復水ブースタポンプ10との間で、互いに並列となるように配管接続されている。そして、発電プラントの通常運転中は、例えば
図2で示すように複数の脱塩塔15Aにイオン交換樹脂A(詳細には、カチオン樹脂A1及びアニオン樹脂A2を混合したもの)を充填し、複数の入口弁16A及び複数の出口弁17Aを開いて複数の脱塩塔15Aに通水する。これにより、イオン交換樹脂Aによる水の浄化処理を(詳細には、主として脱塩処理であるが、クラッド除去処理も)行うようになっている。
【0017】
復水脱塩装置9で浄化された水は、復水ブースタポンプ10で加圧され、低圧給水加熱器11で加熱される。脱気器12は、低圧給水加熱器11からの水を加熱して脱気する。脱気器12で脱気された水は、給水ポンプ13で加圧され、高圧給水加熱器14で加熱される。
【0018】
図2等で示すように、脱塩塔15A,15Bとカチオン再生塔18の間には配管が接続されており、イオン交換樹脂A(又は後述するクラッド除去用充填物B)を移送可能としている。カチオン再生塔18は、脱塩塔15A又は15Bから取出したイオン交換樹脂Aを逆洗可能とし、比重差によってカチオン樹脂A1とアニオン樹脂A2に分離可能としている。また、カチオン再生塔18とアニオン再生塔19の間には配管が接続されており、アニオン樹脂A2を移送可能としている。
【0019】
次に、使用されたイオン交換樹脂Aを再生する場合の動作手順を説明する。例えば複数の脱塩塔15Aのうちのいずれか1つの脱塩塔15A内のイオン交換樹脂Aを再生する場合、まず、1つの脱塩塔15Aの通水を、予備の脱塩塔15Bの通水に切替える。すなわち、
図3で示すように、入口弁16B及び出口弁17Bを開いて脱塩塔15Bを通水し、その後、1組の入口弁16A及び出口弁17Aを閉じて1つの脱塩塔15Aの通水を停止する。そして、対応する樹脂出口弁20Aを開いて、通水停止状態の脱塩塔15Aからカチオン再生塔18へイオン交換樹脂Aを移送する。そして、洗浄弁21を開き、カチオン再生塔18内に水及び空気を供給して、イオン交換樹脂Aを洗浄(逆洗)する。その後、
図3で示すように、洗浄弁21を閉じ、比重差によってカチオン樹脂A1とアニオン樹脂A2に分離する。そして、アニオン入口弁22を開いて、カチオン再生塔18からアニオン再生塔19へアニオン交換樹脂A2を移送する。そして、
図4で示すように、カチオン再生弁23を開き、ディストリビュータ24を介してカチオン再生塔18内に再生剤(例えば硫酸)を供給して、カチオン交換樹脂A1を再生する。また、アニオン再生弁25を開き、ディストリビュータ26を介してアニオン再生塔19内に再生剤(例えば苛性ソーダ)を供給してアニオン交換樹脂A2を再生する。その後、アニオン出口弁27を開いて、アニオン再生塔19からカチオン再生塔18へ再生後のアニオン交換樹脂A2を移送する。そして、洗浄弁21を開き、カチオン再生塔18内に水及び空気を供給して、カチオン交換樹脂A1及びアニオン交換樹脂A2を洗浄するとともに、混合する。その後、カチオン出口弁28、切替弁29、及び対応する樹脂入口弁30Aを開いて、カチオン再生塔18から脱塩塔15Aへ再生後のイオン交換樹脂Aを戻す。
【0020】
ここで、本実施形態の特徴の一つとして、クラッド除去用充填物B(詳細には、例えば不活性樹脂、又は正規のイオン交換樹脂Aより性能が低いか若しくは劣化したイオン交換樹脂)を保管する複数の保管槽31A及び1つの保管槽31Bを備えており、これら保管槽31A,31Bは、脱塩塔15A,15B及びカチオン再生塔18に対して配管接続されている。複数の保管槽31Aは、複数の脱塩塔15Aにそれぞれ対応するものであり、脱塩塔15Aとの間でイオン交換樹脂Aとクラッド除去用充填物Bを入れ替え可能としている。同様に、保管槽31Bは、脱塩塔15Bに対応するものであり、脱塩塔15Bとの間でイオン交換樹脂Aとクラッド除去用充填物Bを入れ替え可能としている。
【0021】
そして、本実施形態の最も大きな特徴として、発電プラントの起動時は、まず、複数の脱塩塔15Aにクラッド除去用充填物Bを充填した状態で通水する。このような発電プラントの運転方法を、
図5〜
図7を用いて説明する。
図5は、本実施形態における発電プラントの運転方法を表すフローチャートである。
【0022】
この
図5において、まず、ステップ100にて、発電プラントの起動を開始する。このとき、
図6で示すように、複数の脱塩塔15Aにはクラッド除去用充填物Bが予め充填され、複数の保管槽31Aにはイオン交換樹脂Aが保管されている。なお、予備の脱塩塔15Bにはイオン交換樹脂Aが予め充填され、保管槽31Bにはクラッド除去用充填物Bが保管されている。そして、ステップ110にて、複数の入口弁16A及び出口弁16Bを開いて、複数の脱塩塔15Aを通水する。
【0023】
その後、ステップ120に進み、復水系統7における復水脱塩装置9の上流側のサンプリングポイント(水質監視ポイント)32A又は32B(前述の
図1参照)にて水をサンプリングし、水中のクラッド濃度等を計測する。そして、ステップ130に進み、クラッド濃度が規定値(詳細には、イオン交換樹脂Aの通水条件であって、例えば500μg/L程度)未満であるかどうかを判定する。例えばクラッド濃度が規定値以上である場合は、ステップ130の判定が満たされず、前述のステップ120に戻って上記同様の手順を繰り返す。すなわち、例えば所定時間の経過後に、サンプリングポイント31A又は31Bにて水を再サンプリングし、水中のクラッド濃度等を計測する。そして、例えばクラッド濃度が規定値未満になれば、ステップ130の判定が満たされ、ステップ140に移る。
【0024】
ステップ140では、複数の脱塩塔内にイオン交換樹脂Aを充填して通水する。
【0025】
詳しく説明すると、まず、クラッド除去用充填物Bが充填された1つの脱塩塔15Aの通水を、イオン交換樹脂Aが充填された予備の脱塩塔15Bの通水に切替える。すなわち、入口弁16B及び出口弁17Bを開いて脱塩塔15Bを通水し、その後、1組の入口弁16A及び出口弁17Aを閉じて1つの脱塩塔15Aの通水を停止する。そして、対応する樹脂出口弁20Aを開いて、通水停止状態の脱塩塔15Aからカチオン再生塔18へクラッド除去用充填物Bを移送する。そして、
図7で示すように、洗浄弁21を開き、カチオン再生塔18に水及び空気を供給して、クラッド除去用充填物Bを洗浄(逆洗)する。その一方で、1つの保管出口弁33A、切替弁34、及び対応する樹脂入口弁30Aを開いて、1つの保管槽31Aから脱塩塔15Aへイオン交換樹脂Aを移送する。その後、カチオン出口弁28及び保管入口弁35Aを開いて、カチオン再生塔18から保管槽31Aへ洗浄後のクラッド除去用充填物Bを移送する。
【0026】
その後、同様の手順により、クラッド除去用充填物Bが充填された1つの脱塩塔15Aの通水を、イオン交換樹脂Aが充填された脱塩塔15Aの通水に順次切替える。また、脱塩塔15Aから順次取出したクラッド除去用充填物Bをカチオン再生塔18で洗浄して、保管槽31Aで保管する。
【0027】
そして、ステップ150にて、発電プラントを停止すると、ステップ160に進み、脱塩塔15Aからイオン交換樹脂Aを順次取出すとともに、脱塩塔15Aにクラッド除去用充填物Bを順次充填する。すなわち、発電プラントの再起動に備え、
図6で示す状態に戻す。その後、ステップ100に進み、発電プラントを再起動すると、ステップ110に進み、複数の入口弁16A及び出口弁16Bを開いて、複数の脱塩塔15Aを通水する。
【0028】
以上のように本実施形態においては、まず、複数の脱塩塔15Aにクラッド除去用充填物Bを充填するので、例えばイオン交換樹脂Aを充填する場合と比べ、脱塩塔15Aの通水条件を緩和することができる。これにより、発電プラントの起動時に、脱塩復水装置9の上流側における水中のクラッド濃度が規定値(イオン交換樹脂Aの通水条件)以上であっても、脱塩塔15Aを通水することができる。したがって、例えば脱塩塔15Aへの通水を制限する場合(詳細には、復水脱塩装置9の上流側のブローポイント36(前述の
図1参照)から系外に排水する場合)よりも、復水系統7のクリーンアップ時間の短縮を図ることができる。また、脱塩塔15Aにクラッド除去用充填物Bを充填した状態で通水するので、例えば脱塩塔15Aにクラッド除去用充填物Bを充填しない状態で通水したり、脱塩塔15Aをバイパスしたりする場合よりも、復水系統7における水中のクラッド濃度の低減を促進することができる(
図8参照)。したがって、このような観点からも、復水系統7のクリーンアップ時間の短縮を図ることができる。その結果、発電プラントの起動時間の短縮を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態においては、クラッド除去用充填物Bは、不活性樹脂、又は正規のイオン交換樹脂Aより性能が低いか若しくは劣化したイオン交換樹脂を用いる。すなわち、イオン交換樹脂Aと類似のものを用いる。これにより、イオン交換樹脂Aを対象とした再生塔18,19及び配管を利用することができる。
【0030】
なお、上記一実施形態においては、使用後のクラッド除去用充填物Bを再生塔18に移送して洗浄し、洗浄後のクラッド除去用充填物Bを保管槽31A,31Bで保管し、発電プラントの再起動時に再使用する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば
図9で示す変形例のように、使用後のクラッド除去用充填物Bを系外に取出して廃棄してもよい。このような変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 蒸気発生器
2 高圧蒸気タービン
3 中圧蒸気タービン
4 低圧蒸気タービン
6 復水器
7 復水系統
15A,15B 脱塩塔
A イオン交換樹脂
B クラッド除去用充填物