特許第5882881号(P5882881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5882881-噴霧型消臭組成物及び消臭製剤 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882881
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】噴霧型消臭組成物及び消臭製剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/14 20060101AFI20160225BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20160225BHJP
   A01N 43/80 20060101ALI20160225BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20160225BHJP
   A01N 25/06 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   A61L9/14
   A61L9/01 M
   A61L9/01 V
   A01N43/80 102
   A01P3/00
   A01N25/06
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-260921(P2012-260921)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-104255(P2014-104255A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜井 孔明
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−075791(JP,A)
【文献】 特開平09−108311(JP,A)
【文献】 特開昭60−119950(JP,A)
【文献】 特開平02−058589(JP,A)
【文献】 特開2013−155136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/14
A01N 25/06
A01N 43/80
A01P 3/00
A61L 9/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤としてチアゾリン系化合物を0.1〜10質量%、
香料を0.01〜10質量%、
変成ポリアルキレンオキサイド、アクリル酸重合物部分ナトリウム塩化物、カルボキシビニルポリマーから選ばれる高分子化合物の1種若しくは2種以上である増粘剤、および 水を含有する組成物であって、
当該組成物の25℃ずり速度0.1[1/s]における粘度が300mPa・s以上であり、ずり速度10,000[1/s]における粘度が20mPa・s以下であることを特徴とする生ごみ用噴霧型消臭組成物。
【請求項2】
増粘剤の含有量が0.1〜10質量%である請求項1記載の生ごみ用噴霧型消臭組成物。
【請求項3】
更に界面活性剤を含有する請求項1項記載の生ごみ用噴霧型消臭組成物。
【請求項4】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項記載の生ごみ用噴霧型消臭組成物。
【請求項5】
請求項1ないし項の何れかの項記載の生ごみ用噴霧型消臭組成物を噴霧機器に充填してなる消臭製剤。
【請求項6】
噴霧機器が機械式噴霧器、電気式噴霧器、ポンプ式スプレー、トリガー式スプレー若しくはエアゾールである請求項記載の消臭製剤。
【請求項7】
請求項1ないし4項の何れかの項記載の生ごみ用噴霧型消臭組成物を、生ごみまたはシンクの表面に噴霧することを特徴とする消臭方法。
【請求項8】
噴霧を機械式噴霧器、電気式噴霧器、ポンプ式スプレー、トリガー式スプレー若しくはエアゾールで行う請求項7記載の消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴミ等の悪臭発生源に有効な噴霧型消臭組成物及び消臭製剤に関し、詳しくは長期間にわたって悪臭発生抑制効果が持続する噴霧型消臭剤組成物及び消臭製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に家庭内で生じる悪臭としては、トイレ、居間などでのタバコ臭、台所の調理臭、生ゴミから発生する腐敗臭などがあるが、特に近年は、住まいの環境変化による空間の密閉性向上により、悪臭に対するケアがより重要になってきている。
【0003】
このような悪臭を消す方法には、従来、芳香剤による悪臭のマスキングや、酸性物質又はアルカリ性物質による中和法、換気や活性炭に吸着させる物理的除去法などが行われており、それぞれの方法に基づく多種多様な消臭剤が市販されている。
【0004】
一方、生ゴミや、例えばシンク内の三角コーナーなどの台所周りの悪臭は、主に生ゴミや台所周りに存在する微生物の代謝物に由来するものであるが、これに対しては、腐敗を生起する微生物を殺菌し、悪臭の発生を防止する生物的消臭法も行われている。
【0005】
このような生物的消臭法の例としては、植物からの抽出物を主成分とする消臭基材、消臭効果を有する香料、エタノール及び界面活性剤を含有してなり、表面張力が40mN/m以下となるように調整された消臭剤組成物が報告されている(特許文献1)。
【0006】
また、植物精油、植物エキス、活性炭、ハイドロキシアパタイト、ゼオライト、活性な金属酸化物よりなる群から選ばれた一つまたは二つ以上のものを含有する消臭剤と、アルコール系消毒剤、ヨウ素系消毒剤、塩素系消毒剤、第四級アンモニウム塩系消毒剤よりなる群から選ばれた一つまたは二つ以上の消毒剤とを混合してなる防臭組成物等も提案されている(特許文献2)。
【0007】
これらは、いずれも少量の悪臭源から発生するニオイを短時間抑えるのには有効であるが、例えば、ゴミ容器中に堆積した生ゴミや、シンク内の三角コーナーなど微生物が多く存在する場所に対しては、噴霧ないし散布の直後は悪臭発生の抑制効果が認められるものの、短時間で微生物がまた増殖し、悪臭が発生してしまうため、効果の持続性の点で問題があった。
【0008】
このような問題に対しては、微生物と薬剤の接触時間を長くし、十分な殺菌作用を得るために、組成物の粘度を上げることが考えられるが、増粘された組成物は、これを容器から噴霧して使用する場合には、組成物が霧状に噴霧できなくなったり、更に、ノズル等が詰まるという問題があることが知られており、簡単に採用できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−178806号公報
【特許文献2】特開平9−239012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、容器から噴霧することができ、しかも長期間にわたって腐敗を生起する微生物の増殖を阻害し、悪臭の発生を抑制する消臭剤組成物についての開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ポンプスプレーなどから噴霧した場合に霧状となり、かつ噴霧後は生ゴミ等の表面に長く留まるような消臭組成物を得べく鋭意研究を行った結果、所定の粘度条件範囲の組成物は、上記条件を満たすことができることを知った。
【0012】
そして、抗菌剤と増粘剤を、上記粘度条件範囲となるように組み合わせた消臭剤組成物は、長期間にわたって腐敗を生起する微生物の増殖を阻害し、悪臭の発生を抑制することを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち本発明は、抗菌剤、増粘剤および水を含有する組成物であって、当該組成物の25℃ずり速度0.1[1/s]における粘度が300mPa・s以上であり、ずり速度10,000[1/s]における粘度が20mPa・s以下であることを特徴とする噴霧型消臭組成物である。
【0014】
また本発明は、上記噴霧型消臭組成物を噴霧容器に充填してなる消臭製剤である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の噴霧型消臭剤組成物は、その粘度が高いため、生ゴミなどの噴霧対象の表面や、その内部において流れ落ちてしまうことが少なく、長期間にわたって留まるため、腐敗を生起する微生物の増殖を阻害し、悪臭の発生を有効に抑制するものである。
【0016】
また、上記組成物を、機械式噴霧器、電気式噴霧器、ポンプ式スプレー、トリガー式スプレー、エアゾール等の噴霧器で噴霧できる形態とした消臭製剤は、簡単に広い範囲に散布できるものであるため使い勝手の良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例において使用するトリガー式スプレーである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の噴霧型消臭組成物(以下、「消臭組成物」という)は、成分として抗菌剤、増粘剤および水を含有するものであり、25℃ずり速度0.1[1/s]における粘度が300mPa・s以上であり、ずり速度10,000[1/s]における粘度が20mPa・s以下であるという粘度条件範囲(以下、「特定粘度条件」ということがある)に含まれるものである。また、好ましくは、25℃ずり速度0.1[1/s]における粘度が500mPa・s以上であり、ずり速度10,000[1/s]における粘度が15mPa・s以下であるという粘度条件範囲に含まれるものである。ここでいう25℃の粘度とは、回転粘度計を用い、コーン・プレート型(コーン回転型)で測定した粘度を意味する。
【0019】
本発明の消臭組成物においては、上記特定粘度条件を満たすことが必須であり、上記抗菌剤、増粘剤および水以外のものを配合する場合であっても、これは変わらない。これに対し、ずり速度0.1[1/s]における粘度が300mPa・s未満となる場合は、噴霧された消臭剤組成物がすぐに流れ落ちてしまい、悪臭発生抑制効果が低くなるとともに消臭効果が発揮されにくくなってしまうという問題がある。また、ずり速度10,000[1/s]における粘度が20mPa・s以上の場合は、噴霧して使用することが非常に困難となり、また、ノズル等に詰まるという問題が生じることがある。
【0020】
本発明の消臭組成物中には、必須成分として生ゴミに発生した悪臭を発生させる微生物、例えば、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌等に対して効果を有する抗菌剤が配合される。この抗菌剤としては、組成物に含有される他の成分と安定に均一に混合できるものであるならば、無機化合物、有機化合物いずれのものも適用することができる。
【0021】
このような抗菌剤としては、例えば、2,2,3−トリヨードアリルアルコール類、2,2,3−トリヨードアリルエーテル類、2,2,3−トリヨードアリルアゾール類、3−ヨード−2−プロパギルブチルカルバミン酸、4−クロロフェニル(3−ヨードプロパギル)ホルマール、ヨードプロパギルアゾール類、ジヨード−パラ−トリスルホン、ポピドンヨード、ベンジルヨード酢酸エステル及びパラニトロベンジルヨード酢酸エステル等の有機ヨウ素系化合物;4,5−ジクロロ−1,2−ジチオラン−3−オン、5−クロロ−4−フェニル−1,2−ジチオラン−3−オン等の有機硫黄系化合物;2−メトキシカルボニルベンゾイミダゾール等のイミダゾール系化合物;2,3,5,6−テトラクロロ−4−メタンスルホニルピリジン等のピリジン系化合物;N−メチルピロリドン等の有機窒素系化合物;2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−3−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−チオシアノメチルベンゾチアゾール等のチアゾリン系化合物;2,2−ジチオ−ビス−(ピリジン−1−オキサイド)、フェニル−(2−シアノ−2−クロロビニル)スルホン、メチレンビスチオシアネート等の有機窒素硫黄系化合物;2,2−ジブロモ−2−エタノール、2−ブロモ−4’−ヒドロキシアセトフェノン、ジブロモニトリルプロピオンアミド、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)、4,4′−(テトラメチレンジアミノ) ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)等の有機臭素系化合物を挙げることができる。
【0022】
また、別の抗菌剤の例としては、オルトフェニルフェノール、ジフェニル、2−イソプロピル−5−メチルフェノール等のフェノール系化合物;パラクロロメタキシレノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム塩;塩酸クロルへキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン等のビグアニド系化合物;ビグアニド化合物を高分子化したポリヘキサメチレンビグアニドメチレンビスチオシアネート;2−ピリジンチオール−1−オキシド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム等のピリジンチオール系化合物;グルタルアルデヒド、環状ペプチド、ポリアニオン、パラヒドロキシ安息香酸n−ブチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸メチル等を挙げることができる。
【0023】
また、さらに別の抗菌剤の例としては抗菌香料を挙げることができる。抗菌香料としてジヒドロファルネソール、イソカンフィルシクロヘキサノール、レボサンドール、バクダノール、サンタリノール、メチルアトラレート、1−ウンデセノール、2−メチルウンデカナール、サンダロール、ドデカナール、ブラマノール、ネロリドール、o−メソキシシンナミックアルデヒド、メチルサンデフロール、9−デセノール、3−ドデセナール、アセチルセドレン、ヌートカトン、シンナミックアルデヒドジメチルアセタール(DMA)、リリアール、2−メチルデカナール、ペリラアルコール、ノニルアルコール、ウンデカナール、トランス−2−ウンデセナール、ジヒドロオイゲノール、ヘリオナール、イソブチルキノリン、3−メンソキシプロパン−1,2−ジオール、フェニルアセトアルデヒド、カシュメラン、シクロヘキサデセノン、アンブロキサン、セドロール、酢酸セドリル、シクロペンタデカノン、エチレンドデカンジオエート、シクロペンタデカノリド、ファントリド、トナリド等を挙げることができる。
【0024】
これら抗菌剤のうち、特に他の必須成分である増粘剤に影響を与えにくい点で有機化合物系が望ましく、さらにpHの値からは中性から弱酸性のものが望ましい。具体的には、フェノール系化合物、ピリジン系化合物、チアゾリン系化合物、イミダゾール系化合物が好ましく、特に2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、パラクロメタキシレノール等が好ましい。
【0025】
本発明の消臭組成物中への抗菌剤の配合量としては、特に制約はないが、0.1〜10質量%(以下、「%」という)
とすることが好ましい。抗菌剤の配合量が0.1%より少ない場合は、微生物に対する効果が低くなり、悪臭の発生を十分に抑制できないことがある。一方、10%より多く配合しても効果は変わらず、むしろ安全性に問題がでてきてしまうおそれがある。なお、本発明の消臭組成物においては、抗菌剤を1種もしくは2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0026】
一方、別の必須成分である増粘剤は、これを水と組み合わせ、本発明の消臭組成物中に配合した時に、組成物全体の粘度を、前記特定粘度条件とすることができるものである。
【0027】
このような増粘剤の例としては、変性ポリアルキレンオキサイド、アクリル酸重合物部分ナトリウム塩化物、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシビニルポリマー、酸化セルロースナトリウム塩、ポリエーテル化合物、脂肪酸ポリアマイド系ワックス、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ゼラチン、ペクチン、でんぷん、キチン、ローカストビーンガム、グアーガム等の有機系の増粘剤、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、シリカ、タルク、マイカ、カオリナイト、パイロフィライト、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ベイデライト、ノントロナイト、サポナイト、及びこれらを表面処理したものや、これらに交換性カチオンが含まれる場合は、そのカチオンをアルキルトリメチルアンモニウムイオン、ポリオキシエチレントリアルキルアンモニウムイオン又はポリオキシプロピレントリアルキルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオンに交換したもの等の無機系の増粘剤が挙げられ、有機系の増粘剤では、例えば、商品名ディスパロン6500、ディスパロン6700、アクペックHU C2002、アクペックMG、アクペックHV−501、HEC SZ−25Fなどが挙げられ、無機系の増粘剤では、例えば、商品名アエロジル200、アエロジル300、アエロジル380など等が挙げられる。
【0028】
これらの増粘剤のうち、好ましいものとしては、変性ポリアルキレンオキサイド、アクリル酸重合物部分ナトリウム塩化物、カルボキシビニルポリマー、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムが挙げられる。
【0029】
更に、消臭組成物の外観を透明性とする場合には、変性ポリアルキレンオキサイドを使用することがさらに好ましい。
【0030】
消臭組成物中での上記増粘剤の配合量は、前記した増粘剤の配合目的から、消臭組成物全体としての粘度が前記特定粘度条件を満たすようにすることが必要であり、使用する増粘剤により異なる。従って、実験的に前記特定粘度条件を満たす増粘剤の配合量を個別に決定する必要がある。
【0031】
本発明の消臭組成物は、上記のように必須成分である抗菌剤、増粘剤および水を適宜、組み合わせ、前記特定粘度条件となるようにすることで調製できるが、その目的および用途によっては、他の公知の添加剤、例えば、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、他種消臭剤などの公知の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲において、適宜添加してもよい。
【0032】
上記の公知成分のうち、香料は、悪臭の発生をマスキングするために配合させることが好ましい。すなわち、本発明の消臭組成物を生ゴミに適用すると、後述するように、粘度の高い消臭組成物が生ゴミの表面に覆うようにとどまるため、これが生ゴミ中の悪臭源を遮蔽し、悪臭の揮散を抑制するとともに、香料が有する香りによりマスキング効果が期待できるのである。本発明の消臭組成物に香料を配合する場合の配合量は、使用する香料の種類等によっても相違するが、組成物中、0.01〜10%程度とすることが好ましい。
【0033】
そして、上記のように香料を消臭組成物中に配合する際には、当該香料を可溶化ないし分散させる目的で各種界面活性剤や溶剤を配合することができる。
【0034】
上記目的で用いられる界面活性剤としては、例えば、石鹸類、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高分子系界面活性剤などが挙げられ、好ましくは、ノニオン系界面活性剤が挙げられる。この界面活性剤の配合量は、配合される香料が可溶化ないし分散できる量であれば良い。
【0035】
また、上記目的で用いられる溶剤としては、例えば、ヘキサン等の直鎖炭化水素系化合物、ベンゼン等の芳香族炭化水素系化合物;リモネン等のテルペン系炭化水素系化合物;エタノール、cis−3−ヘキセノール、オイゲノール等のアルコール類;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物;フェノール等のフェノール系化合物;ジエチルエーテル等のエーテル系化合物;アセトン等のケトン系化合物;酢酸等の脂肪酸系化合物;酢酸エステル等のエステル系化合物;エチレングリコール等のグリコール系化合物;3−メチル−3−メトキシブタノール等のグリコールエーテル系化合物等が挙げられる。これら溶媒は1種もしくは2種以上を混合して用いることも可能である。これら溶媒の配合量も、香料を可溶化ないし分散できる量であれば良い。
【0036】
このようにして得られる本発明の消臭組成物は、生ゴミを収納するゴミ容器、三角コーナー、ストレイナー等の台所周り等の微生物による悪臭が発生する場所(以下、「悪臭発生源」という)に散布する方法で使用しても良いが、より好ましい方法は、これを機械式噴霧器、電気式噴霧器、ポンプ式スプレー、トリガー式スプレー、エアゾール等の公知の噴霧器(以下、「噴霧機器」という)に充填し、悪臭発生源に噴霧ないしスプレーする方法である。
【0037】
後者の噴霧機器による方法で消臭組成物を噴霧ないしスプレーすると、スプレーされた消臭組成物自体がある程度の高い粘度を有するため、このものが悪臭発生源にある程度の時間留まり、組成物に含まれる抗菌剤が微生物に長く作用する。従って、粘度の低い消臭組成物に比べ、長期間にわたり、有効に悪臭の発生を抑制することができる。
【0038】
そして、噴霧された粘度の高い消臭組成物は、生ゴミや三角コーナーといった悪臭源の表面を広く覆うため、悪臭の発生を防止するとともに既に発生している悪臭の揮発を抑制することができる。更に、香料が配合されている消臭組成物を用いることにより、周囲に良い香りを発散し、悪臭をマスキングすることもできる。
【実施例】
【0039】
次に実施例を挙げ、更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0040】
実 施 例 1
表1に示す処方により、本発明品1〜4および比較品1および2の消臭組成物を作成した。得られた消臭組成物について、下記方法でその粘度および消臭持続性、スプレー性、透明性および消臭官能試験を行った。なお、比較品3として商品名「ルックキッチン用生ゴミ消臭&防臭」(ライオン(株)製)、比較品4として「ゴミサワデー消臭スプレー」(小林製薬(株)製)についても試験した。この結果を表2に示す。
【0041】
< 処 方 >
【表1】
【0042】
< 性能評価 >
(1)粘度
粘弾性測定装置を用い、25℃の粘度を下記の条件で測定した。
粘弾性測定装置: AR 2000ex(TA instrument社)
※ Geometry: 60mm 1°Aluminum cone
※ Steady Rate Sweep 1 to 10000 1/s
※ Measurement temperature: 25℃
【0043】
(2)消臭持続性試験
(i) 擬似生ゴミの作成
以下の手順で擬似生ゴミを作成した。
トリメチルアミン−N−オキサイド0.2gを滅菌済生理食塩水80gに加え、更にこれに緑膿菌(NBRC 13275)を1白金耳くわえた。次いでこれを滅菌生理食塩水で2倍に希釈し、懸濁液を作成した。
【0044】
標準寒天培地40gを約5mm角に砕いたものに、上記の懸濁液15gを混合してよくかき混ぜた。さらにこれに標準寒天培地を約5mm角に砕いたもの45gを混合しよくかき混ぜ、擬似生ゴミを作成した。
【0045】
(ii) 消臭持続性の評価
各消臭組成物をそれぞれ図1のトリガー式スプレー容器に充填し、消臭製剤とした。上記(i)で得た擬似生ゴミ100gを、たて23cm、横6cm、高さ5cmの上面開口のプラスチック容器に入れ、これに各消臭製剤を3ストローク噴霧し、消臭製剤で処理した。
【0046】
各消臭組成物で処理された、擬似生ゴミが入った容器を10Lのテドラーバックにいれ、無臭空気でバック内を満たした後40℃で放置した。1日毎のアミン類の濃度を検知管(ガステック検知管No.180)で測定した。測定でのブランク1として、本発明品をスプレーしていないもの、ブランク2として、水をスプレーしたものを用いた。
【0047】
(3)スプレー性
上記(2)(ii)で調製した消臭製剤について、モニターが、10ストローク噴霧し、その噴霧状況を下記基準で評価した。結果はその平均値で示す
( 評価基準 )
◎:霧状に噴射できる
△:噴射できるが霧状にならない。
×:全く噴射できない
【0048】
(4)透明性
各消臭組成物を1cmの厚みの容器に充填し、U−3210形自記分光光度計((株)日立製作所製)にて600nmの波長の光を照射し、その透過率(%T)の測定値を透明性とした。
【0049】
(5)消臭官能試験
擬似生ゴミ臭としてメチルメルカプタンを用い、フローライトにメチルメルカプタンを十分に吸着させこれを悪臭発生源とした。各消臭組成物をそれぞれ市販のトリガー式スプレーに充填してそれぞれ消臭製剤を調製し、この悪臭発生源に各3ストローク噴霧した。噴霧後の悪臭発生源をポリカップ内に入れ、5分放置したあと、アルミホイルで蓋をした。
【0050】
蓋をしてから5分後に、10名の専門パネラーが下記の基準により、悪臭強度及び快・不快について、評価した。結果は、その平均値で示した。
【0051】
( 評価基準 )
悪臭強度 :
0:悪臭を感じない
1:やっと悪臭を感知できる
2:弱く悪臭を感じる
3:らくに悪臭を感知できる
4:強く悪臭を感じる
5:強烈に悪臭を感じる
【0052】
快・不快:
−4:極端に不快
−3:非常に不快
−2:不快
−1:やや不快
0:快でも不快でもない
1:やや快
2:快
3:非常に快
4:極端に快
【0053】
なお、本試験では、ブランク1として、本発明品をスプレーしていないもの、ブランク2としては水をスプレーしたものを用いた。
【0054】
< 結 果 >
【表2】
【0055】
以上のように本発明品は生ゴミの悪臭の発生を6日間抑制することができた。一方比較品3および4は初期には抑制効果があったものの、抑制の持続性については短いものであった。
【0056】
また、スプレー性については、本発明品は比較品と比べてスプレー性に問題はなかった。なお比較品2はスプレーすることができなかった。
【0057】
更に透明性については、本発明品1及び2の透明性は、他の比較品と比べても十分であり、商品性としては高いものであった。また、官能消臭試験においては、本発明品はいずれも比較品に比べ高い消臭効果を発揮した。
【0058】
処 方 例 1
オレンジ香料(高砂香料工業株式会社製)0.2g、界面活性剤としてポリオキシエチレン(9)第二級アルキル(C1214)エーテル0.4g、溶剤としてエタノール4gを配合したものに水94.3gを加え、ざらに抗菌剤として、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、0.1gおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン0.1gを加えた。これに、攪拌しながら増粘剤として合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム1.5gを入れて十分攪拌し、本発明の噴霧型消臭組成物を作成した。このものの粘度を実施例1と同様の測定方法にて測定したところ、25℃ずり速度0.1[1/s]における粘度が2930mPa・sであり、ずり速度10,000[1/s]における粘度が20mPa・sであった。
【0059】
この噴霧型消臭組成物を図1のトリガー式スプレー容器に充填し、ストレイナーの生ゴミに対しスプレーしたところ、霧状に噴射することができ、生ゴミの悪臭を消臭できるものであった。
【0060】
処 方 例 2
オレンジ香料(高砂香料工業株式会社製)0.2g、界面活性剤としてポリオキシエチレン(9)第二級アルキル(C1214)エーテル0.4g、抗菌剤として抗菌香料0.15g(O−メソキシシンナミックアルデヒド0.05g、リリアール0.05g、ウンデカナール0.05gおよび溶剤としてエタノール4g配合したものに水94.35gを加えた。これに、攪拌しながら増粘剤として変成ポリアルキレンオキサイド(アクペックHU C2002:住友精化株式会社製)0.9gを入れて十分攪拌し、本発明の噴霧型消臭組成物を作成した。このものの粘度を実施例1と同様の測定方法にて測定したところ、25℃ずり速度0.1[1/s]における粘度が300mPa・sであり、ずり速度10,000[1/s]における粘度が10mPa・sであった。
【0061】
この噴霧型消臭組成物を図1のトリガー式スプレー容器に充填し、ストレイナーの生ゴミに対しスプレーしたところ、霧状に噴射することができ、生ゴミの悪臭を消臭できるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
成分として抗菌剤、増粘剤および水を含有し、25℃ずり速度0.1[1/s]における粘度が300mPa・s以上であり、ずり速度10,000[1/s]における粘度が20mPa・s以下であるという粘度条件範囲を満たす本発明の消臭組成物は、機械式噴霧器、電気式噴霧器、ポンプ式スプレー、トリガー式スプレー、エアゾール等の噴霧器で問題なく噴霧することができるものである。そして、このように噴霧された上記組成物は、生ゴミの表面ないしは内部でとどまり、下部に流れ落ちてしまうことはなく、また早期に水分等が揮発してしまうことはないため、短時間で消臭効果が消失してしまうことがないものである。
【0063】
従って本発明の消臭組成物およびこれを噴霧容器に充填した消臭製剤は、悪臭の発生に微生物が関係している分野、例えば生ゴミ容器、台所周りなどで有効に利用することができるものである。
【符号の説明】
【0064】
1……トリガー式スプレー容器
2……容器部
3……トリガー部
4……ノズル部
5……キャップ部
6……吸い上げ管
7……吐出機構
8……消臭組成物
図1