特許第5882882号(P5882882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローブライド株式会社の特許一覧

特許5882882マンドレルを用いて製造された複数のゴルフクラブを有するゴルフクラブセット
<>
  • 特許5882882-マンドレルを用いて製造された複数のゴルフクラブを有するゴルフクラブセット 図000002
  • 特許5882882-マンドレルを用いて製造された複数のゴルフクラブを有するゴルフクラブセット 図000003
  • 特許5882882-マンドレルを用いて製造された複数のゴルフクラブを有するゴルフクラブセット 図000004
  • 特許5882882-マンドレルを用いて製造された複数のゴルフクラブを有するゴルフクラブセット 図000005
  • 特許5882882-マンドレルを用いて製造された複数のゴルフクラブを有するゴルフクラブセット 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882882
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】マンドレルを用いて製造された複数のゴルフクラブを有するゴルフクラブセット
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/10 20150101AFI20160225BHJP
   A63B 53/00 20150101ALI20160225BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20160225BHJP
【FI】
   A63B53/10 A
   A63B53/00 A
   A63B102:32
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-262774(P2012-262774)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-108151(P2014-108151A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100125195
【弁理士】
【氏名又は名称】尾畑 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100126262
【弁理士】
【氏名又は名称】栗下 清治
(72)【発明者】
【氏名】楠本 晴信
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−213654(JP,A)
【文献】 特開2001−95952(JP,A)
【文献】 特開2001−95953(JP,A)
【文献】 特開2012−90730(JP,A)
【文献】 特開平02−224770(JP,A)
【文献】 特開2000−126338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00−53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
番手の異なる複数のゴルフクラブを有するゴルフクラブセットであって、
強化繊維の方向が軸方向に対して傾斜を有するバイアスシートを含む1又は複数のシートを巻回して中空に第1の長さで形成され、手元端における肉厚が第1の厚さであると共に当該手元端における外径が所定の手元端外径であり、当該手元端から先端方向に所定の範囲でグリップ部を有するシャフトを備える第1のゴルフクラブと、
前記バイアスシートを含む1又は複数のシートを巻回して中空に前記第1の長さよりも短い第2の長さで形成され、手元端における肉厚が前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さであると共に当該手元端における外径が前記所定の手元端外径であり、前記所定の範囲で前記グリップ部を有するシャフトを備え、前記第1のゴルフクラブよりも番手の大きい第2のゴルフクラブと、
を備え、
前記第1のゴルフクラブ及び前記第2のゴルフクラブが有するシャフトは、前記グリップ部の先端側端部から当該シャフトの先端へ外径が小さくなる第1のテーパ形状を有し、当該グリップ部は、前記バイアスシートによって形成された層の肉厚が当該グリップ部の手元端から先端側端部に近づくほど厚くなる傾向で形成され、当該第1のテーパ形状よりも勾配が緩やかな手元端から当該先端側端部へ外径が小さくなる第2のテーパ形状、又は、略円柱状で形成されてなる、
ゴルフクラブセット。
【請求項2】
前記第1のゴルフクラブ及び前記第2のゴルフクラブが有するシャフトは、前記バイアスシートの外側に前記強化繊維の方向が軸方向に対して略平行なストレートシートを巻回して形成されてなる請求項1記載のゴルフクラブセット。
【請求項3】
前記第1のゴルフクラブ及び前記第2のゴルフクラブが有するシャフトは、前記グリップ部において、前記ストレートシートの肉厚が略同一の厚さで形成されてなる請求項2記載のゴルフクラブセット。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか記載のゴルフクラブセットであって、
前記第1のゴルフクラブが有するシャフトは、先端部に所定の補強用シートが巻回されてなり、
前記第2のゴルフクラブが有するシャフトは、先端部に前記所定の補強用シートが巻回されてなる、
ゴルフクラブセット。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載のゴルフクラブセットであって、
前記第1のゴルフクラブが有するシャフトは、先端における肉厚が所定の先端肉厚であると共に当該先端における外径が所定の先端外径であり、
前記第2のゴルフクラブが有するシャフトは、先端における肉厚が前記所定の先端肉厚であると共に当該先端における外径が前記所定の先端外径である、
ゴルフクラブセット。
【請求項6】
番手の異なる複数のゴルフクラブのシャフトを有するシャフトセットであって、
強化繊維の方向が軸方向に対して傾斜を有するバイアスシートを含む1又は複数のシートを巻回して中空に第1の長さで形成され、手元端における肉厚が第1の厚さであると共に当該手元端における外径が所定の手元端外径であり、当該手元端から先端方向に所定の範囲でグリップ部を有する第1のシャフトと、
前記バイアスシートを含む1又は複数のシートを巻回して中空に前記第1の長さよりも短い第2の長さで形成され、手元端における肉厚が前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さであると共に当該手元端における外径が前記所定の手元端外径であり、前記所定の範囲で前記グリップ部を有する第2のシャフトと、
を備え、
前記第1のシャフト及び前記第2のシャフトは、前記グリップ部の先端側端部から当該シャフトの先端へ外径が小さくなる第1のテーパ形状を有し、当該グリップ部は、前記バイアスシートによって形成された層の肉厚が当該グリップ部の手元端から先端側端部に近づくほど厚くなる傾向で形成され、当該第1のテーパ形状よりも勾配が緩やかな手元端から当該先端側端部へ外径が小さくなる第2のテーパ形状、又は、略円柱状で形成されてなる、
シャフトセット。
【請求項7】
番手の異なる複数のゴルフクラブ用のシャフトの製造方法であって、
(a)手元側から先端側へ外径が小さくなるテーパ形状を有するマンドレルを準備する工程と、
(b)強化繊維の方向が軸方向に対して傾斜を有するバイアスシートであって前記マンドレルの軸方向に第1の長さで形成された第1のシートを含むシートを、当該マンドレルの先端側の所定の先端位置がシャフトの先端となると共に当該シャフトの手元端における外径が所定の手元端外径となるように当該マンドレルに巻回して第1のゴルフクラブ用のシャフトを作製する工程と、
(c)前記バイアスシートであって前記マンドレルの軸方向に前記第1の長さよりも短い第2の長さで形成された第2のシートを含むシートを、当該マンドレルの前記所定の先端位置がシャフトの先端となると共に当該シャフトの手元端における外径が前記所定の手元端外径となるように当該マンドレルに巻回して前記第1のゴルフクラブよりも番手の大きい第2のゴルフクラブ用のシャフトを作製する工程と、
を備え、
前記第1のシート及び前記第2のシートは、前記マンドレルの軸方向に対応する略直線状の1つの長辺を有し、当該マンドレルの円周方向に対応するシート幅が、先端から所定の位置まで増加すると共に当該所定の位置から手元端まで減少するように形成されてなる、
製造方法。
【請求項8】
前記第2のシートは、手元端における前記マンドレルの円周方向に対応するシート幅が前記第1のシートよりも大きく形成されてなる請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記第2のシートは、前記所定の位置における前記シート幅が前記第1のシートよりも大きく形成されてなる請求項7又は8記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブセット、シャフトセット及びゴルフクラブ用のシャフトを製造する方法に関し、詳しくは、番手の異なる複数のゴルフクラブを有するゴルフクラブセット、シャフトセット及びこうしたゴルフクラブ用のシャフトを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、番手の異なる複数のゴルフクラブからなるゴルフクラブセットにおいては、番手に応じて適切な硬度、重量等の設計が要求されている。例えば、番手が大きくなるに従ってシャフトの長さは短くなるが、ロングアイアン用に適正化されたシャフトを切断してショートアイアンに用いる場合には、軟らか過ぎ、且つ、軽過ぎるものとなり、ショートアイアンに求められる安定した打球精度という要求を満たすことが難しい。また、クラブヘッドの取付の容易性やグリップ感の統一のためには、シャフトの先端及び手元端における外径を番手にかかわらず共通化するのが望ましいが、ロングアイアン用に適正化されたシャフトを切断してショートアイアンに用いる場合、少なくとも手元端における外径は番手毎に異なると共にグリップ部がテーパー形状となり、統一的で良好なグリップ感を実現するのが困難である。
【0003】
こうした課題の一つの解決方法として、番手毎に用意したマンドレルを用いて番手毎に最適な設計を行うものが提案されているが(例えば、特許文献1参照)、番手毎にマンドレルを用意することは製造設備のコスト高をもたらし製造工程の複雑化を招いてしまう。そこで、同一のマンドレルを用いて製造するゴルフクラブセットも提案されている(例えば、特許文献2参照)。このゴルフクラブセットでは、小さい番手のゴルフクラブシャフト用のマンドレルを用いて番手共通のシャフト素管を作製し、この作製したシャフト素管を切断、研磨加工することによって各番手の特性に適合するゴルフクラブシャフトを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−224771号公報
【特許文献2】特開平7−213654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この製造方法では、番手共通のシャフト素管を研磨加工することによって各番手に適したシャフトを作製するから、肉厚に作製したシャフト素管を大量に研磨することとなり、工数の増大をもたらすと共に材料コスト面で不利である。また、各番手に適したシャフトを研磨加工によって実現するには、非常に精密な研磨加工処理が必要となるから、製造設備のコスト高の要因となる共に最終製品の精度が不十分になってしまう恐れが生じる。
【0006】
そこで、本発明の様々な実施形態は、各番手の特性に適合するゴルフクラブをより簡便に提供することを目的の一つとする。本発明の様々な実施形態の他の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るゴルフクラブセットは、番手の異なる複数のゴルフクラブを有するゴルフクラブセットであって、強化繊維の方向が軸方向に対して傾斜を有するバイアスシートを含む1又は複数のシートを巻回して中空に第1の長さで形成され、手元端における肉厚が第1の厚さであると共に当該手元端における外径が所定の手元端外径であり、当該手元端から先端方向に所定の範囲でグリップ部を有するシャフトを備える第1のゴルフクラブと、前記バイアスシートを含む1又は複数のシートを巻回して中空に前記第1の長さよりも短い第2の長さで形成され、手元端における肉厚が前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さであると共に当該手元端における外径が前記所定の手元端外径であり、前記所定の範囲で前記グリップ部を有するシャフトを備え、前記第1のゴルフクラブよりも番手の大きい第2のゴルフクラブと、を備え、前記第1のゴルフクラブ及び前記第2のゴルフクラブが有するシャフトは、前記グリップ部の先端側端部から当該シャフトの先端へ外径が小さくなる第1のテーパ形状を有し、当該グリップ部は、当該第1のテーパ形状よりも勾配が緩やかな手元端から当該先端側端部へ外径が小さくなる第2のテーパ形状、又は、略円柱状で形成されてなる。
本発明の一実施形態に係るシャフトセットは、番手の異なる複数のゴルフクラブのシャフトを有するシャフトセットであって、強化繊維の方向が軸方向に対して傾斜を有するバイアスシートを含む1又は複数のシートを巻回して中空に第1の長さで形成され、手元端における肉厚が第1の厚さであると共に当該手元端における外径が所定の手元端外径であり、当該手元端から先端方向に所定の範囲でグリップ部を有する第1のシャフトと、前記バイアスシートを含む1又は複数のシートを巻回して中空に前記第1の長さよりも短い第2の長さで形成され、手元端における肉厚が前記第1の厚さよりも厚い第2の厚さであると共に当該手元端における外径が前記所定の手元端外径であり、前記所定の範囲で前記グリップ部を有する第2のシャフトと、を備え、前記第1のシャフト及び前記第2のシャフトは、前記グリップ部の先端側端部から当該シャフトの先端へ外径が小さくなる第1のテーパ形状を有し、当該グリップ部は、前記バイアスシートの肉厚が当該グリップ部の手元端から先端側端部に近づくほど厚くなる傾向で形成され、当該第1のテーパ形状よりも勾配が緩やかな手元端から当該先端側端部へ外径が小さくなる第2のテーパ形状、又は、略円柱状で形成されてなる。
【0008】
本発明の一実施形態に係るゴルフクラブ用のシャフトの製造方法は、番手の異なる複数のゴルフクラブ用のシャフトの製造方法であって、(a)手元側から先端側へ外径が小さくなるテーパ形状を有するマンドレルを準備する工程と、(b)強化繊維の方向が軸方向に対して傾斜を有するバイアスシートであって前記マンドレルの軸方向に第1の長さで形成された第1のシートを含むシートを、当該マンドレルの先端側の所定の先端位置がシャフトの先端となると共に当該シャフトの手元端における外径が所定の手元端外径となるように当該マンドレルに巻回して第1のゴルフクラブ用のシャフトを作製する工程と、(c)前記バイアスシートであって前記マンドレルの軸方向に前記第1の長さよりも短い第2の長さで形成された第2のシートを含むシートを、当該マンドレルの前記所定の先端位置がシャフトの先端となると共に当該シャフトの手元端における外径が前記所定の手元端外径となるように当該マンドレルに巻回して前記第1のゴルフクラブよりも番手の大きい第2のゴルフクラブ用のシャフトを作製する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の様々な実施形態によって、各番手の特性に適合するゴルフクラブをより簡便に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフクラブセットが有するゴルフクラブのシャフトを模式的に示す模式図。
図2】一実施形態におけるゴルフクラブのシャフトの製造方法を説明するための説明図。
図3】一実施形態におけるゴルフクラブのシャフトの製造方法を説明するための説明図。
図4】一実施形態におけるゴルフクラブのシャフトの断面構造を説明するための説明図。
図5】変形例のゴルフクラブセットが有するゴルフクラブのシャフトの製造方法を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、様々な実施形態を適宜図面を参照して説明する。なお、図面における共通する構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブセットが有するゴルフクラブのうち一部のゴルフクラブのシャフトを模式的に示す模式図である。一実施形態に係るゴルフクラブセットは、番手の異なる複数のゴルフクラブによって構成されており、例えば、3番アイアンから10番アイアンまでのアイアンクラブを含む。図1Aはシャフト10A(例えば、3番アイアン用シャフト)を示し、図1Bは、シャフト10Aのゴルフクラブよりも番手の大きいゴルフクラブ用のシャフト10B(例えば、9番アイアン用シャフト)を示す。シャフト10A,10B(以下、総称してシャフト10ということがある。)は、図示するように、図中右側の手元端から図中左側の先端方向に所定の長さで形成された手元部12と、手元部12の先端側端部からシャフトの先端方向に細くなるテーパ形状を有する中央部14と、先端から手元端方向に所定の長さで形成された先端部16とが一体に形成されている。一実施形態におけるゴルフクラブは、シャフト10の先端部16にホーゼルを介してゴルフクラブヘッドを取り付けると共に、天然ゴムや合成ゴムで形成されたグリップを手元部12に取り付けることによって作製される。
【0013】
一実施形態におけるゴルフクラブセットは、図示するように、シャフト10の手元部12の軸方向長さ及び外径は、番手にかかわらず略同一となっており、例えば、長さが約160mm、外径が約15.5mmとなっている。同様に、シャフト10の先端部16の軸方向長さ及び外径は、番手にかかわらず略同一となっており、例えば、長さが約70mm、外径が約9.4mmとなっている。このように手元部12と先端部16の外径が略同一であり、さらに、番手が大きくなるほどシャフト10の全長は短くなるから、シャフト10の中央部14のテーパ形状は、番手が大きくなるほど急峻な(勾配の大きな)テーパ形状となる。
【0014】
一実施形態において、シャフト10の手元部12は略円柱状となっている。又は、シャフト10の手元部12を、中央部14のテーパ形状よりも勾配の緩やかなテーパ形状としてもよい。例えば、番手毎に異なる中央部14の単位長さ当たりの外径変化を6/1000〜12/1000とし、手元部12の単位長さ当たりの外径変化を0/1000〜4/1000とすることができる。
【0015】
次に、こうした一実施形態におけるゴルフクラブセットが有するゴルフクラブのシャフト10を製造する方法について説明する。図2は、一実施形態におけるシャフト10Aの製造方法を説明するための説明図であり、図3は、一実施形態におけるシャフト10Bの製造方法を説明するための説明図である。一実施形態におけるシャフト10は、番手にかかわらず同一のマンドレル30に、番手毎に長さ等が異なる複数のシートを巻回して形成される。まず、図2を用いてシャフト10Aを製造する方法について説明する。
【0016】
一実施形態においては、図2に示すように、シート31A−34A,35の5枚のシートをマンドレル30に巻回してシャフト10Aの素管が作製される。マンドレル30は、図示するように、図中右側の手元端から図中左側の先端へ細くなるテーパ形状を有し、このテーパ形状によって、シャフト10Aの中央部14における前述したテーパ形状が形成される。
【0017】
シート31A−34A,35は、強化繊維を引き揃え樹脂を含浸させた繊維強化シートであり、強化繊維としては、例えば、炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維等の様々な強化繊維を挙げることができ、含浸させる樹脂としては、例えば、エポキシ、ピスマレイミド、ポリイミド及びフェノール等の熱硬化性樹脂が好ましい。5枚のシートのうち、シート31A,32Aは、強化繊維の方向がマンドレル30の軸方向に対して傾斜するバイアスシートであり、具体的にはマンドレル30の軸方向に対して30〜60°傾斜させればよく、例えば、シート31Aの強化繊維の繊維方向はマンドレル30の軸方向に対して+45°であり、シート32Aの強化繊維の繊維方向はマンドレル30の軸方向に対して−45°である。こうしたバイアスシートによって、シャフト10Aにねじれ剛性が付与される。シート33A,34A,35は、強化繊維の方向がマンドレル30の軸方向に対して略平行なストレートシートであり、こうしたストレートシートは、具体的にはマンドレル30の軸方向に対して0〜20°の範囲とすればよく、シャフト10Aに曲げ剛性が付与される。
【0018】
シート31A,32Aは、図示するように、バイアスシートを五角形の形状に切り出したものであり、相互に同じ形状である。シート31A,32Aは、マンドレル30の軸方向に対応する略直線状の一つの長辺を有し、マンドレル30の円周方向に対応するシート幅が、シートの先端(W11A)から手元端方向の所定位置P(W12A)まで線形に増加し、この所定位置Pから後端(手元端,W13A)まで線形に減少する。即ち、シート幅W11Aよりもシート幅W12Aの方が大きく、シート幅W12Aよりもシート幅W13Aの方が小さい。なお、シート幅W11Aとシート幅W13Aとの大小関係はシャフトの設計に応じて異なり、何れであっても良い。手元端から所定位置Pまでの範囲がグリップ部G(シャフト10Aの手元部12)に相当し、マンドレル30にシート31A,32Aを巻回したときに、グリップ部Gが前述した略円柱状又は緩やかなテーパ形状となるように、シート幅W12A及びシート幅W13Aが設定されている。
【0019】
シート33A,34Aは、図示するように、ストレートシートをシート31A,32Aの形状とは異なる五角形の形状に切り出したものであり、相互に同じ形状である。シート33A,34Aは、マンドレル30の軸方向に対応する略直線状の一つの長辺を有し、シート幅が、先端(W31A)から所定位置P(W32A)まで線形に増加する。また、所定位置Pから手元端までは略同一のシート幅(W32A及びW33A)となっている。さらに、シート33A,34Aの軸方向長さは、シート31A,32Aと略同一である。シート35は、ストレートシートを略直角三角形の形状に切り出したものであり、図示するように、直角三角形を構成する斜辺以外の二辺のうち、一辺をマンドレル30の軸方向に対応させ、他の一辺を軸方向先端側の円周方向に対応させてマンドレル30に巻回される。
【0020】
こうしたシート31A−34A,35を、シート31Aから順にマンドレル30に巻回する。各シートを巻回する際には、マンドレル30の先端付近の先端位置Tに各シートの先端が対応するように位置決めされ、この結果、シート31A−34Aの後端はマンドレル30の手元端側の手元端位置Eに位置する。まず、シート31A,32Aを巻回すると、グリップ部Gにおける手元端側のシート幅W13Aよりも先端側のシート幅W12Aの方が大きいから、グリップ部Gは、先端側の方が肉厚となり、略円柱状、又は、緩やかなテーパー形状に形成される。また、グリップ部Gよりも先端側(所定位置Pよりも先端側)の部分は、略同一の肉厚でマンドレル30のテーパー形状に従った形状となる。なお、シート31Aとシート32Aは、予め半周分ずらして貼り合わせたものを同時に巻きつけても良い。
【0021】
次に、シート31A,32Aの上から重ねてシート33A,34Aを巻回する。このとき、グリップ部Gは、既にシート31A,32Aによって略円柱状、又は、緩やかなテーパ形状となっており、ストレートシートであるシート33A,34Aが略同一の肉厚で巻回される。
【0022】
最後に、シート35を先端部に巻回するとシャフトの素管が完成する。シート35は先端側ほどシート幅が大きいから、先端に近づくほど肉厚となるように巻回され、この結果、シャフト10Aの先端部16に相当する部分が略円柱状となる。こうして作製された素管に対して、テーピング処理、焼成処理、硬化処理、及び、研磨処理等を行うことにより、一実施形態におけるシャフト10Aが完成する。こうした素管に対する処理は、当業者にとって一般的な処理であるから、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0023】
次に、シャフト10Aのゴルフクラブよりも番手の大きいゴルフクラブ用のシャフト10Bの製造方法について、図3を用いて説明する。一実施形態においては、シャフト10Aと同様に、シート31B−34B,35の5枚のシートをマンドレル30に巻回してシャフト10Bの素管が作製される。シート31B−34Bは、シャフト10A用のシート31A−34Aと同じ材料で形成され、類似の形状を有するが、軸方向長さとシート幅が異なる。なお、シート35は、シャフト10A用のシート35と同じ材料で形成され、形状も略同一である。
【0024】
シート31B,32Bは、シャフト10A用のシート31A,32Aよりも軸方向長さが短く形成されている。また、先端のシート幅W11Bは、シート31A,32Aの先端のシート幅W11Aと略同一であり、グリップ部Gの先端側端部である所定位置Pのシート幅W12B及び手元端のシート幅W13Bは、シート31A,32Aの所定位置Pのシート幅W12A及び手元端のシート幅W13Aよりもそれぞれ大きい。また、シート幅W12B,W13Bは、シート幅W12A,W13Aと同様に、マンドレル30にシート31B,32Bを巻回したときに、グリップ部Gが略円柱状又は緩やかなテーパ形状となるように設定されている。
【0025】
シート33B,34Bは、シャフト10A用のシート33A,34Aよりも軸方向長さが短く形成されており、シート31B,32Bと略同一の軸方向長さを有する。また、先端のシート幅W31B、所定位置Pのシート幅W32B及び手元端のシート幅W33Bは、シート33A,34Aの先端のシート幅W31A、所定位置Pのシート幅W32A及び手元端のシート幅W33Aと略同一である。
【0026】
また、シート31B−34Bの総重量は、シート31A−34Aの総重量よりも重くなるように、各シートのサイズは設計されており、例えば、シート31B,32Bの総面積は、シート31A,32Aの総面積よりも大きくなるように設計されている。これにより、同じ材料を用いた場合には、番手の大きなゴルフクラブ用のシャフトであるシャフト10Bの方がシャフト10Aよりも重くすることができる。
【0027】
こうしたシート31B−34B,35を、シート31Bから順にマンドレル30に巻回する。各シートを巻回する際には、マンドレル30の先端付近の先端位置Tに各シートの先端が対応するように位置決めされ、この結果、シート31B−34Bの後端は、シャフト10A用のシート31A−34Aの手元端位置Eよりも先端側に近づく手元端位置E1に位置する。これ以降の手順はシャフト10Aの製造方法と同様であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0028】
図4は、シャフト10A,10Bの素管のグリップ部Gを含む部分の断面構造を説明するための説明図である。この図4は、左右方向をシャフト10の軸方向とし、マンドレル30によって形成される中空部分の上側の断面構造を示しており、シャフト10Aの断面構造を実線で示し、シャフト10Bの断面構造を点線で示している。図示するように、シャフト10A,10Bは、バイアスシートであるシート31A,32A及び31B,32Bの層の上にストレートシートであるシート33A,34A及び33B,34Bの層が形成され、シャフト10Bの手元端はシャフト10Aの手元端よりも先端側に位置する。また、シャフト10A,10Bの両方に、軸方向長さが略同一であって、円柱状又は緩やかなテーパ形状を有するグリップ部Gが形成されている。このグリップ部Gは、シャフト10Aよりもシャフト10Bの方が肉厚が厚くなっており、この結果、グリップ部Gにおける外周面はシャフト10A,10Bで略同一の位置となっている。即ち、シャフト10A,10Bのグリップ部Gの外径は略同一となっている。
【0029】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、番手の異なるゴルフクラブのシャフト10を単一のマンドレル30を用いて作製することができる。また、シャフト10の手元部12を番手にかかわらず略同一の外径及び長さとするから、グリップ感を統一することができる。さらに、手元部12を円柱状又は緩やかなテーパ形状とするから、より良好なグリップ感とすることができる。
【0030】
一実施形態では、5枚のシートを用いてシャフト10を作製したが、さらに、先端部分に補強用シートを巻回するものしても良い。図5は、この変形例のシャフトの製造方法を説明するための説明図である。変形例のシャフトは、図示するように、前述した5枚のシートに加え、ストレートシートを羽根型の四角形に切り抜いた補強用シート36を用いて形成される。この補強用シート36は、先端から所定範囲の部分にバイアスシート31,32の内側に巻回され、番手にかかわらず同じ材料で形成され,略同一の形状を有する。こうした補強用シート36を追加することにより、各番手のキックポイントを良好とすることができ、特に、ショートアイアンが先調子となってしまうのを抑制することができる。なお、こうした補強用シート36を用いる場合、図示するように、マンドレル40の形状を、補強用シート36の巻回後の形状に合わせたものとしてもよい。即ち、補強用シート36が巻回されたマンドレル40が、前述したマンドレル30の形状(手元端から先端方向に均一なテーパー形状)となるように、補強用シート36の手元端側端部に相当する位置からマンドレル40のテーパー形状を段階的に変化させてもよい。
【0031】
一実施形態では、シャフト10を形成するための複数のシートを図2,3を用いて例示したが、例示した以外のシート数、材質、形状とすることができるのは勿論である。例えば、バイアスシートの枚数、形状は、2枚を超え、形状も異なるものでも良く、その場合、総厚みを前述したように構成すればよい。
【0032】
一実施形態では、単一のマンドレル30を用いて番手の異なるゴルフクラブのシャフト10を作製するものとしたが、ゴルフクラブセットが有する複数のゴルフクラブの全てのシャフトを単一のマンドレルを用いて作製する必要はない。ゴルフクラブセットが有する番手の異なる複数のゴルフクラブのうち、第1のゴルフクラブのシャフトと第2のゴルフクラブのシャフトを単一のマンドレルを用いて作製できれば良い。
【0033】
一実施形態では、マンドレル30に各シートを巻回する際に、マンドレル30の先端位置Tに各シートの先端が対応するようにしたが、番手の大きいゴルフクラブのシャフト10Bを作製する際に、先端位置Tよりも先端側に移動した位置に各シートの先端が対応するようにしてもよい。こうすれば、マンドレル30の外径がより小さい部分で各シートを巻回することになるから、シャフト10Bの肉厚をより厚くすることができる。この結果、シャフト10Bの単位長さ当たりの重さをシャフト10Aよりも重くすることができる。
【0034】
一実施形態では、番手の大きなシャフト10B(シート31B−34B)の総重量は、番手の小さいシャフト10A(シート31A−34A)の総重量よりも重くなるようにしたが、番手の特性に対する適合性は若干劣るものの、総重量の大小関係がこのようになっていなくても構わない。
【0035】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する種々の態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
10,10A,10B シャフト
12 手元部
14 中央部
16 先端部
30,40 マンドレル
31A,32A,33A,34A,31B,32B,33B,34B,35,36 繊維強化シート
図1
図2
図3
図4
図5