(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エチレン及び炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種の非極性モノマーと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーの少なくとも一種とを、キレート性配位子と第5〜11族金属とを含む遷移金属触媒の存在下に共重合することで得られる極性基含有オレフィン共重合体であって、前記極性基含有オレフィン共重合体がランダム共重合体であり、下記1)、2)及び3)の要件を満たすことを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体の製造方法。
1) 極性基含有オレフィン共重合体中の極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、0.001〜10mol%である。
2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる重量平均分子量(Mw)が、45,000〜1,000,000である。
3)示差走査型熱量計により測定される吸収曲線の最大ピ−ク位置の温度で表される、融点が50℃〜140℃である。
極性基含有オレフィン共重合体において、分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量より多いことを特徴とする、請求項1に記載された極性基含有オレフィン共重合体の製造方法。
ゲルパーミエイションクロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜3.5の範囲であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載された極性基含有オレフィン共重合体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系重合体は機械強度が高く、耐薬品性や耐腐食性などに優れ、安価で、かつ成形性に優れ、更に環境問題にも適合しているので、産業用資材として重用され、例えば、射出成形、押出成形、吹込成形などによって、フィルム、積層体、容器、ブロー瓶などに成形されて、広範囲な用途に使用されている。
更には、EVOHやアルミニウム箔などのガス遮断性材料などの基材と積層することにより、上記特性に加えてガス遮断性などの性質を付加させることができ、高機能の包装用材料や容器とすることが可能となる。
【0003】
しかし、オレフィン重合体は一般的に非極性であり、積層材料に使用するに際しては、他の合成樹脂、金属、木材などの極性の高い異種材料への接着強度が極めて低いか、接着しないという欠点がある。
【0004】
そこで、極性の高い異種材料との接着性を向上させるために、有機過酸化物を用いて極性基含有モノマーをグラフトする方法が広く行われている(例えば、特許文献1を参照)。
しかし、この方法では、グラフト化反応と並行してオレフィン重合体同士の分子間架橋、及びオレフィン重合体の分子鎖切断などが発生するため、グラフト変性物にポリオレフィンの優れた物性が維持されないという問題が発生する。
例えば、分子間架橋によって不要な長鎖分岐が導入されることで溶融粘度の上昇や分子量分布の広域化が発生し、接着性や成形性に悪影響を及ぼす。また、分子鎖切断によってポリオレフィンの低分子量成分が増加することにより、成形加工時に目ヤニや発煙が発生するといった問題点を呈している。
【0005】
更に、オレフィン共重合中の極性基含有量を高めることにより、極性の高い異種材料との接着性を上昇させられるが、グラフト変性によって多量の極性基含有モノマーをポリオレフィンにグラフトすることは容易ではない。極性基含有モノマーの含有量を増やす方法として、例えば、グラフト変性に供する極性基含有モノマー量、及び有機過酸化物量を増やす方法が考えられる。その方法を用いた場合、オレフィン重合体の更なる分子間架橋や分子鎖切断につながり、ポリオレフィンの物性が損なわれる。また、樹脂中に残留する未反応の極性基含有モノマーや有機過酸化物の分解物の量が増加し、樹脂の劣化を早めたり、不快な臭気を発生させたりするという不具合も発生する。そのため、樹脂中の極性基含有モノマーの含量を高めようとしても、自ずと限界があった。
【0006】
これら、グラフト変性によって発生する問題点を解決する方法として、グラフト変性材料として直鎖状LDPEを用い、グラフト変性物の汚染やグラフト変性時に発生する分子間架橋を少なくし、グラフト効率の高い変性物を得るための製造方法が開示されている(特許文献2を参照)。
しかし、分子間架橋の防止効果やグラフト効率の向上は限定的であり、また、グラフト変性による根本的な弊害である未反応の極性基含有モノマーや有機過酸化物の分解物の残留を無くすことはできず、未だ充分な改良法とはいえない。
【0007】
ところで、オレフィン重合体同士の分子間架橋やゲル化及び分子鎖の切断が無く、オレフィン重合体中に極性基含有モノマーを含量せしめる手段として、高圧ラジカル法重合プロセスを用いてエチレンと極性基含有ビニルモノマーとを共重合させ、極性基含有オレフィン共重合体を得る方法も開示されている(例えば、特許文献3及び特許文献4を参照)。
なお、高圧ラジカル法重合プロセスを用いて極性基を導入したオレフィン共重合体の分子構造例を
図1(a)に示すが、この方法によれば、グラフト変性によって発生する問題点は解決され、オレフィン共重合体中の極性基含有モノマーの含有量をグラフト変性と比較して高めることが可能である。しかし、重合プロセスが高圧ラジカル法であるため、得られた極性基含有オレフィン共重合体は多くの長鎖分岐及び短鎖分岐を不規則に持つ分子構造となる。このために、金属触媒を用いて重合されるオレフィン共重合体と比較して、低弾性率かつ機械物性の低い極性基含有オレフィン共重合体しか得られず、高強度が要求される用途への応用範囲は限定的であった。
【0008】
一方、従来一般に用いられているメタロセン触媒を用いた重合方法においては、エチレンと極性基含有モノマーは触媒重合活性が低下し共重合し難いとされていたが、近年、いわゆるポストメタロセンと称される、後周期遷移金属錯体触媒の存在下で極性基含有オレフィン共重合体を重合する方法が提案されている(特許文献5〜8を参照)。
これらの方法によれば、高圧ラジカル法プロセスで得られるオレフィン共重合体と比較して高い弾性率と機械強度を有し、極性基含有量を高めることが可能だが(なお、遷移金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体の分子構造のイメージ図を
図2(b)及び
図3(c)に示す。)、これらの文献に記載の方法は主にメチルアクリレートやエチルアクリレートといったアクリレート基を含むモノマーや、酢酸ビニルといった特定の極性基含有モノマーとエチレンもしくはα−オレフィンとの共重合体に主眼を置いており、これらの官能基を有する極性基含有ポリオレフィンは極性の高い異種材料との接着性が充分ではない。また、極性の高い異種材料との具体的な接着性能についても触れられておらず、接着性能を目的とした、特定の極性基含有オレフィン共重合体としての使用は開示されていない。
【0009】
更になお、オレフィン共重合体に導入することにより、極性の高い異種材料と優れた接着性を発現することが可能な極性基として、カルボキシル基又はその誘導体が知られている。カルボキシル基又はその誘導体を含んだ極性基含有オレフィン共重合体であって、高圧ラジカル法重合プロセスを用いずに重合されたオレフィン共重合体として、特定のメタロセン系触媒及び充分な量の有機アルミニウムの存在下で(2,7−octadien−1−yl)succinic anhydrideとエチレン、及びα−オレフィンを共重合させた極性基含有オレフィン共重合体が提案されている(特許文献9を参照)。
しかし、この発明によると、極性基含有オレフィン共重合に際し、多量の有機アルミニウムを必要とし、製造コストが高くならざるを得ない。また、多量の有機アルミニウムは不純物として共重合体中に存在し、除去するには更なるコストアップにつながる。更に発明の効果は、主として高い重合活性で極性基含有オレフィン共重合体を製造することであり、極性の高い異種材料との具体的な接着性能について触れられていない。しかもこの特許文献には、極性基含有オレフィン共重合体が極性の高い異種材料と充分な接着性を得るために必要な樹脂物性についても全く触れられておらず、高い接着性能を目的としたオレフィン共重合体としての使用は開示されていない。
【0010】
他の極性基含有オレフィン共重合体としては、特定の構造を持った極性基含有モノマーと、エチレン、α−オレフィン、非共役ジエンに由来する構造単位、とからなる官能基を有するオレフィン共重合体が提案されている(特許文献10を参照)。
しかし、該特許文献によって提案された極性基含有オレフィン共重合体の製造方法は、予め、重合に用いる極性基含有環状オレフィンと有機金属化合物を反応させて極性基をマスキングする必要があり、また、共重合工程の後に脱マスキング処理も行うため、製造工程が煩雑となって製造コストが高くならざるを得ない。更に、マスキングに用いた有機金属化合物が共重合体中に残留し各種樹脂物性に悪影響を与える懸念があり、除去するにしても更なる製造コスト増につながる。
【0011】
別の極性基含有オレフィン共重合体の製造方法として、高分子鎖の片末端、両末端、又は分子鎖内部に二重結合を持ったオレフィン共重合体の二重結合部分を変性することで、分子鎖中に極性基を導入する方法が開示されている(特許文献11〜15を参照)。これら方法によって極性基含有オレフィン共重合体を製造する場合、予め分子鎖中に二重結合を有するオレフィン重合体を重合しておき、その後、オレフィン共重合体中の二重結合部分に極性基含有化合物を反応させるという工程を経る必要があり、極性基含有ビニルモノマーとエチレンもしくはα−オレフィンを直接共重合させて極性基含有オレフィン共重合体を得る場合と比較して、製造工程が煩雑となり、製造コスト増につながる。更に、片末端もしくは両末端に二重結合があるオレフィン共重合体を変性することで極性基含有オレフィン共重合体を得ようとする場合、その方法の原理上、高分子鎖の分子量と極性基含有量を別々に制御することは不可能であり、得られた極性基含有オレフィン共重合体の用途は限定的となってしまう。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下においては、本発明の極性基含有オレフィン共重合体、及びそれを用いた接着材と積層体について、項目毎に具体的かつ詳細に説明する。
【0036】
〔I〕極性基含有オレフィン共重合体について
(1)極性基含有オレフィン共重合体
本発明に係る極性基含有オレフィン共重合体は、エチレン及び炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種の非極性モノマーと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーの少なくとも一種との共重合体である。
【0037】
なお、極性基含有オレフィン共重合体は、グラフト重合や高圧ラジカル法重合その他
前述した重合法において既に公知のものであるが、本発明においては、かかる公知の極性基含有オレフィン共重合体に対して、遷移金属の存在下に重合されたランダム共重合体であるという要件を備えるため、公知のグラフト重合体やラジカル重合体とはポリマーの分子構造が異なる。かつ、格別の接着効果を有する範囲として、後述する、構造単位量の要件1)及び重量平均分子量の要件2)をも備えているから、公知の共重合体と顕著に異なるものである。
【0038】
(2)非極性モノマー
本発明の共重合体に用いられる非極性モノマーとしては、エチレン及び/又はα-オレフィンを用い、α−オレフィンは、炭素数が3〜20、更に好ましくは3〜12のものが好ましく、具体的にはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン、オクテン−1、ドデセン−1、などが挙げられる。エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンの中では、特にエチレンが好ましい。
また、これらのエチレン又はα−オレフィンに由来する構造単位量は、通常90〜99.999mol%、好ましくは95〜99.99mol%の範囲で選択されることが望ましい。
また、用いられるエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンは単独でも良く、2種類以上を合わせて用いても良い。
二種の組み合わせとしては、エチレン−プロピレン、エチレン−1−ブテン、エチレン−1−ヘキセン、エチレン−1−オクテン、プロピレン−1−ブテン、プロピレン−1−ヘキセン、プロピレン−1−オクテンなどが挙げられる。
三種の組み合わせとしては、エチレン−プロピレン−1−ブテン、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン、エチレン−プロピレン−1−オクテン、プロピレン−1−ブテン−ヘキセン、プロピレン−1−ブテン−1−オクテンなどが挙げられる。
【0039】
(3)極性基含有モノマー
本発明における極性基含有オレフィン共重合体の重合に供せられる極性基含有モノマーは、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含有する必要がある。カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を持ったオレフィン共重合体であれば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂鹸化物(EVOH)などの極性の高い熱可塑性樹脂、及びアルミニウム、スチ−ルなどの金属材料の基材と積層接着することが可能となる。
【0040】
本発明に関わる極性基含有モノマーは、モノマー構造中に環状骨格を有し、更に環状骨格中に二重結合を有したものであると、特に好ましくはノルボルネン骨格を有するものであると、高活性での共重合が可能であり、更に好ましい。
極性基含有モノマー中に含まれる官能基がジカルボン酸無水物であると、極性の高い異種材料との接着性の面からより有用である。
【0041】
本発明に関わる極性基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、テトラシクロ[ 6 .2 .1 .1
3 , 6 .0
2 , 7 ] ドデカ−9−エン−4 ,5−ジカルボン酸無水物、2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸無水物などの不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。更に、用いられる極性基含有モノマーは単独でも良く、2種類以上を合わせて用いてもよい。
これらの中で特に、下記化学式で表される2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物などが好ましい。
【0042】
【化1】
2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸無水物
【0043】
【化2】
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物
【0044】
【化3】
3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物
【0045】
極性基含有モノマーとして不飽和ジカルボン酸無水物を含んだモノマーを用いた極性基含有オレフィン共重合体は、含有するジカルボン酸無水物基の一部が空気中などに存在する水や水蒸気と反応して開環し、カルボン酸基となる場合がある。本発明の主旨を逸脱しない範囲においてならば、ジカルボン酸無水物基が開環していてもよい。
【0046】
(4)極性基含有オレフィン共重合体の構造単位
本発明における極性基含有オレフィン共重合体の構造単位と構造単位量について説明する。
エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィン、及び極性基含有モノマー、それぞれ1分子に由来する構造を、極性基含有オレフィン共重合体中の1構造単位と定義する。そして、極性基含有オレフィン共重合体中の各構造単位の比率をmol%で表したものが構造単位量である。極性基含有オレフィン共重合体の分子構造例で説明すると、後述する構造中のA1、A2及びA3の極性基含有モノマーに由来する構造がそれぞれ構造単位であり、それぞれの存在比率が構造単位量となる。
【0047】
(5)極性基含有モノマーの構造単位量
これらの極性基含有モノマーに由来する構造単位量は、通常10〜0.001mol%の範囲、好ましくは5〜0.01mol%の範囲で選択されることが望ましい。もし、この範囲より極性基含有モノマーに由来する構造単位量が少なければ、極性の高い異種材料との接着性が充分ではなく、この範囲より多ければ充分な機械物性が得られない。
【0048】
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体中の分子鎖末端、分子鎖内部の極性基含有モノマー構造単位量、及び極性基の総構造単位量は
13C−NMRスペクトルを用いて求められる。
13C−NMRスペクトルは以下の方法によって測定できる。
極性基含有オレフィン共重合体(A)100mgを、o−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C
6D
5Br)=4/1(体積比)2.4ml及び化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に10mmφのNMR試料管に入れ溶解し、クライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400M型NMR装置を用いて試料温度130℃、パルス角90°、パルス間隔20秒、積算回数を500回以上としてプロトン完全デカップリング法にて測定する。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチル炭素のピークを1.98ppmとして設定し、他の炭素によるピークの化学シフトはこれを基準とする。
【0049】
極性基含有モノマー種が5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物である場合、極性基含有モノマーが分子鎖末端に導入された場合には、下記A1の構造(以下構造A1と記す)を、分子鎖の主鎖内部に導入された場合にはA2の構造(以下構造A2と記す)を持つ。
13C−NMRスペクトルの33.6ppm付近には構造A1の二重結合に隣接するメチレン炭素A1
αのピークが、42.1ppm付近には構造A2のメチン炭素A2
brのピークが検出される。また、29.9ppm付近には主鎖メチレン炭素によるピークが検出される。例えば33.6ppm付近の炭素A1
αのピークの積分強度をI
33.6等と表記した時、構造A1及びA2の含有量は以下の式−1、2より求められる。
【0050】
構造A1の含有量(mol%)
=2×I
33.6×100/(2×I
33.6+I
42.1+I
29.9)・・・式−1
構造A2含有量(mol%)
=I
42.1×100/(2×I
33.6+I
42.1+I
29.9)・・・式−2
極性基の総構造単位量は上記式−1及び2で求めた構造A1含有量と構造A2含有量の和として求めることができる。
【0053】
極性基含有モノマー種が(2,7−オクタジエン−1−イル)コハク酸無水物である場合、極性基含有モノマーが分子鎖の主鎖内部に導入された場合にはA3の構造(以下構造A3と記す)を持つ。この場合、38.0ppm付近に主鎖に結合した構造A3のメチン炭素A3
brのピークが検出される。また、極性基含有モノマーが主鎖内部に導入されても、分子鎖末端に導入されても何れも41.0ppm付近にコハク酸無水物基のメチン炭素A3
CHのピークを生じる。38.0ppm付近の炭素A3
brのピークの積分強度をI
38.0、41.0ppm付近の炭素A3
CHのピーク積分強度をI
41.0等と表記した時、極性基の総構造単位量と構造A3の含有量は式−3、4より求められる。
極性基の総構造単位量(mol%)
=2×I
41.0×100/(2×I
41.0+I
29.9)・・・式−3
構造A3含有量(mol%)
=2×I
38.0×100/(2×I
41.0+I
29.9)・・・式−4
【0055】
本発明の極性基含有オレフィン共重合体においては、分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量より多いことが、分子量を低下させずに極性基含有オレフィン共重合体に充分な量の極性基を導入させるために必須である。分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量より少ない場合、極性基の殆どは分子鎖末端に存在することとなる。分子量が大きくなればなるほど、分子鎖中の極性基含有量が相対的に低下し、充分な接着性が得られなくなってしまう。また、分子鎖中の極性基含有量を上げるためには、分子量を小さくすることが必要となるが、下記で述べる様に、極性の高い異種材料と充分な接着性を有するためには特定範囲の重量平均分子量(Mw)である必要があり、充分な大きさの分子量と極性基含有量を両立することは不可能である。
【0056】
また、分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量は、10〜0.001mol%、好ましくは5〜0.01mol%、更に好ましくは2〜0.03mol%の範囲から選択され、必ず本発明の極性基含有オレフィン共重合体に存在していることが好ましい。
一方、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量は、10mol%以下、好ましくは5mol%以下、更に好ましくは0.1mol%以下の範囲から選択され、0.001mol%程度の極めて微量存在するか又は0mol%であってもよい。
【0057】
本発明における極性基含有オレフィン共重合体は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと極性基含有モノマーの共重合体のランダム共重合体であることが望ましい。
本発明における極性基含有オレフィン共重合体の分子構造例を下記式(i)に示す。ランダム共重合体とは、式(i)に示した分子構造例のA構造単位とB構造単位の、ある任意の分子鎖中の位置においてそれぞれの構造単位を見出す確率が、その隣接する構造単位の種類と無関係な共重合体である。また、極性基含有オレフィン共重合体の分子鎖末端は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンであっても良く、極性基含有モノマーであってもよい。
下記のように、本発明における極性基含有オレフィン共重合体の分子構造(例)は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンとカルボキシル基又はその誘導体を含むモノマーとが、ランダム共重合体を形成している。
【0059】
式(i)において、Aはエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンであり、Bはカルボキシル基又はその誘導体を含むモノマーである。
【0060】
なお、参考までに、グラフト変性によって極性基を導入したオレフィン共重合体の分子構造(例)を下記式(ii)に掲載すると、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンが共重合されたオレフィン共重合体の一部が、カルボキシル基又はその誘導体を含むモノマーにグラフト変性されている。
【0062】
式(ii)において、Aはエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンであり、Bはカルボキシル基又はその誘導体を含むモノマーである。
【0063】
(6)極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)
極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常45,000〜1,000,000、好ましくは45,500〜500,000、更に好ましくは46,000〜300,000の範囲であることが望ましい。
Mwが45,000未満では極性の高い異種材料との接着性が充分ではなく、1,000,000を超えると溶融粘度が非常に高くなり、成形加工が困難となる。
【0064】
極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)が45,000より低い場合に、極性の高い異種材料との接着性が充分でない理由を以下に説明する。
極性の高い異種材料とオレフィン共重合体との接着性能は、JIS K6854−1〜4「接着材−はくり接着強さ試験法」で例示されるような剥離試験により測定される数値で評価される。
実施例に示した接着性評価結果を見ると、極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)が45,000より大きくなると、測定される接着強度が上昇することが分かる。これはおそらく、極性基含有オレフィン共重合体が持つ接着性能が樹脂の凝集力と関係しているためと考えられる。極性基含有オレフィン共重合体の分子鎖がある程度以上長くなると、接着性能を発現するために充分な凝集力を有し、結果として、重量平均分子量(Mw)が45,000より大きくなると充分な接着性を示すものと推察される。
【0065】
極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、通常1.5〜3.5、好ましくは1.6〜3.3、更に好ましくは1.7〜3.0の範囲であることが望ましい。Mw/Mnが1.5未満では積層体の成形を始めとして各種加工性が充分でなく、3.5を超えると接着強度が劣るものとなる。また、(Mw/Mn)を分子量分布パラメーターと表現することがある。
【0066】
本発明に関わる重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnを算出するものである。
【0067】
本発明に関わるGPCの測定方法は以下の通りである。ウォーターズ社製150C型を使用し、下記の条件で測定を行うことによって重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を得た。
カラム:ShowdexHT−G及び同HT−806M×2本 溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB) 温度:140℃ 流量:1.0ml/分
カラムの較正は、昭和電工製単分散ポリスチレンで行った(S−7300,S−3900,S−1950,S−1460,S−1010,S−565,S−152,S−66.0,S−28.5,S−5.05の各0.2mg/ml溶液)。
n−エイコサン及びn−テトラコンタンの測定を行い、溶出時間と分子量の対数値を4次式で近似した。なお、ポリスチレンとポリエチレンの分子量の換算には次式を用いた。 M
PE=0.468×M
PS
【0068】
(7)極性基含有オレフィン共重合体の融点
本発明における極性基含有オレフィン共重合体の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク温度によって示される。
ポリエチレンを想定した場合、融点は50℃〜140℃であることが好ましく、60℃〜138℃であることが更に好ましく、70℃〜135℃が最も好ましい。
この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合は接着性が劣るものとなる。
【0069】
〔II〕極性基含有オレフィン共重合体の製造について
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体の製造方法は、遷移金属触媒を用いてエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含んだ極性基含有モノマーとを共重合させることによって得られる。
【0070】
(1)重合触媒
本発明に関わる重合触媒の種類は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含んだ極性基含有モノマーとを共重合することが可能なものであれば特に限定されないが、例えばキレート性配位子を有する第5〜11族のいずれかに属する遷移金属化合物を触媒として用い、重合する方法がある。
好ましい遷移金属の具体例として、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、白金原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、銅原子などが挙げられる。
これらの中で好ましくは、バナジウム原子、鉄原子、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子、ロジウム原子、であり、特に好ましくは、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子、ロジウム原子である。
特に第10族の元素であることが重合活性の観点から好ましく、好ましくはニッケル原子又はパラジウム原子である。特に価格等の観点から、ニッケル(II)が好ましい。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位( bidentate )又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、その構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
好ましくは、二座アニオン性P,O配位子として例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられ、他に、二座アニオン性N,O配位子として例えば、サリチルアルドイミナ−トやピリジンカルボン酸が挙げられ、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、ジアミド配位子が挙げられる。
【0071】
特に本発明の極性基含有オレフィン系共重合体を得るのに好適な金属錯体の構造は、キレート性配位子として、置換基を有してもよいアリールホスフィン化合物、アリールアルシン化合物又はアリールアンチモン化合物が配位した遷移金属錯体が挙がられ、特にパラジウムまたはニッケル金属に、置換基を有してもよいトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒が挙げられる。
更に該トリアリールホスフィン化合物又はトリアリールアルシン化合物中のアリール基が、少なくとも一つは二級又は三級のアルキル基で置換されたフェニル基であると好ましい。
特に下記構造式(A)及び/又は(B)で表される遷移金属錯体が、重合活性の観点から好ましい。
【0073】
【化10】
(構造式(A)、(B)において、Mは、上述の遷移金属を表す。X
1は、酸素、硫黄、−SO
3−、又は−CO
2−を表す。Y
1は、炭素又はケイ素を表す。nは、0又は1の整数を表す。E
1は、リン、砒素又はアンチモンを表す。R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。R
5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。R
6及びR
7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR
2、CO
2R
2、CO
2M’、C(O)N(R
1)
2、C(O)R
2、SR
2、SO
2R
2、SOR
2、OSO
2R
2、P(O)(OR
2)
2−y(R
1)
y、CN、NHR
2、N(R
2)
2、Si(OR
1)
3−x(R
1)
x、OSi(OR
1)
3−x(R
1)
x、NO
2、SO
3M’、PO
3M’
2、P(O)(OR
2)
2M’又はエポキシ含有基を表す。M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数、yは、0から2までの整数を表す。なお、R
6とR
7が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5〜8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。R
1は、水素又は炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。R
2は、炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。L
1は、Mに配位したリガンドを表す。また、R
3とL
1が互いに結合して環を形成してもよい。)
より好ましくは、下記構造式(C)で表される遷移金属錯体である。
【0074】
【化11】
(構造式(C)において、Mは、上述の遷移金属を表す。X
1は、酸素原子、硫黄、−SO
3−、又は−CO
2−を表す。Y
1は、炭素又はケイ素を表す。nは、0又は1の整数を表す。E
1は、リン、砒素又はアンチモンを表す。R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。R
5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。R
8、R
9、R
10及びR
11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR
2、CO
2R
2、CO
2M’、C(O)N(R
1)
2、C(O)R
2、SR
2、SO
2R
2、SOR
2、OSO
2R
2、P(O)(OR
2)
2−y(R
1)
y、CN、NHR
2、N(R
2)
2、Si(OR
1)
3−x(R
1)
x、OSi(OR
1)
3−x(R
1)
x、NO
2、SO
3M’、PO
3M’
2、P(O)(OR
2)
2M’又はエポキシ含有基を表す。M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数、yは、0から2までの整数を表す。なお、R
8〜R
11から適宜選択された複数の基が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5〜8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。R
1は、水素又は炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。R
2は、炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。L
1は、Mに配位したリガンドを表す。また、R
3とL
1が互いに結合して環を形成してもよい。)
【0075】
ここで、キレート性配位子を有する第5〜10族の遷移金属化合物を触媒としては、代表的に、いわゆる、Shop系及びDrent系と称される触媒が知られている。
Shop系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドが、第9〜11族の遷移金属、好ましくはニッケル金属に配位した触媒である(例えば国際公開2010‐050256号公報を参照)。また、Drent系は、SO
3基を有するアリール基を有するリン系リガンドが、8〜10族の遷移金属、好ましくはパラジウム金属に配位した触媒である(例えば、特開2010−202647号公報を参照)。
【0076】
(2)重合触媒の使用態様
本発明の重合触媒は、単独で用いてもよく、また担体に担持して用いることもできる。使用可能な担体としては、本発明の主旨を損なわない限りにおいて、任意の担体を用いることができる。
一般に、無機酸化物やポリマ−担体が好適に使用できる。具体的には、SiO
2、Al
2O
3、MgO、ZrO
2、TiO
2、B
2O
3、CaO、ZnO、BaO、ThO
2など又はこれらの混合物が挙げられ、SiO
2−Al
2O
3、SiO
2−V
2O
5、SiO
2−TiO
2、SiO
2−MgO、SiO
2−Cr
2O
3などの混合酸化物も使用することができ、無機ケイ酸塩、ポリエチレン担体、ポリプロピレン担体、ポリスチレン担体、ポリアクリル酸担体、ポリメタクリル酸担体、ポリアクリル酸エステル担体、ポリエステル担体、ポリアミド担体、ポリイミド担体などが使用可能である。
これらの担体については、粒径、粒径分布、細孔容積、比表面積などに特に制限はなく、任意のものが使用可能である。
【0077】
触媒成分は、重合槽内で、或は重合槽外でオレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。オレフィンとは炭素間二重結合を少なくとも1個含む炭化水素をいい、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチルブテン−1、スチレン、ジビニルベンゼンなどが例示されるが、特に種類に制限はなく、これらと他のオレフィンとの混合物を用いてもよい。好ましくは炭素数2又は3のオレフィンである。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
【0078】
(3)共重合反応
本発明における共重合反応は、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素溶媒や液化α−オレフィンなどの液体、また、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、安息香酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、ホルミルアミド、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなどのような極性溶媒の存在下或いは非存在下に行われる。また、ここで記載した液体化合物の混合物を溶媒として使用してもよい。なお、高い重合活性や高い分子量を得るうえでは、上述の炭化水素溶媒がより好ましい。
【0079】
本発明における共重合に際して、公知の添加剤の存在下又は非存在下で共重合を行うことができる。添加剤としては、ラジカル重合禁止剤や、生成共重合体を安定化する作用を有する添加剤が好ましい。例えば、キノン誘導体やヒンダードフェノール誘導体などが好ましい添加剤の例として挙げられる。
具体的には、モノメチルエーテルハイドロキノンや、2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノール(BHT)、トリメチルアルミニウムとBHTとの反応生成物、4価チタンのアルコキサイドとBHTとの反応生成物などが使用可能である。
また、添加剤として、無機及び又は有機フィラーを使用し、これらのフィラーの存在下で重合を行ってもよい。
【0080】
(4)重合方法
本発明において、重合方法に特に制限はない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。
また、重合形式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。また、リビング重合であってもよいし、連鎖移動を併発しながら重合を行ってもよい。更に、いわゆるchain shuttling agent(CSA)を併用し、chain shuttling反応や、coordinative chain transfer polymerization(CCTP)を行ってもよい。
具体的な製造プロセス及び条件については、例えば、特開2010−260913号公報、特開2010−202647号公報を参照することができる。
【0081】
共重合温度、共重合圧力及び共重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。
即ち、共重合温度は、通常−20℃から290℃、好ましくは0℃から250℃、共重合圧力は、0.1MPaから100MPa、好ましくは、0.3MPaから90MPa、共重合時間は、0.1分から10時間、好ましくは、0.5分から7時間、更に好ましくは1分から6時間の範囲から選ぶことができる。
本発明において、共重合は、一般に不活性ガス雰囲気下で行われる。例えば、窒素、アルゴン雰囲気が使用でき、窒素雰囲気が好ましく使用される。なお、少量の酸素や空気の混入があってもよい。
【0082】
共重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じて様々な供給法をとることができる。例えばバッチ重合の場合、予め所定量のモノマーを共重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマ−や追加の触媒を共重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を共重合反応器に連続的に、又は間歇的に供給し、共重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
【0083】
共重合体の組成の制御に関しては、複数のモノマーを反応器に供給し、その供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法が挙げられる。
【0084】
共重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。即ち、重合温度を制御して分子量を制御する方法、モノマー濃度を制御して分子量を制御する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法、遷移金属錯体中の配位子構造の制御により分子量を制御するなどが挙げられる。
連鎖移動剤を使用する場合には、従来公知の連鎖移動剤を用いることができる。例えば、水素、メタルアルキルなどを使用することができる。
【0085】
〔III〕添加剤
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体には、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、難燃剤、充填材などの添加剤を配合してもよい。
【0086】
〔IV〕接着材
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、特定の分子構造及び樹脂物性を有することで、他の基材との高い接着性を発現し、工業的に有用な積層体の製造を可能にした。
すなわち、その接着性能は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとを、遷移金属触媒の存在下に共重合することで得られる極性基含有オレフィン共重合体において、下記1)及び2)の要件を満たすことにより、発現されている。
1) 極性基含有オレフィン共重合体中の極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、0.001〜10mol%である。
2)ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる重量平均分子量(Mw)が、45,000〜1,000,000である。
その接着材としての卓越性は、後記の実施例のデータ及び実施例と比較例の対照により実証されている。
【0087】
〔IV〕積層体
(1)積層体の材料
本発明の積層体は、本発明の極性基含有オレフィン共重合体からなる層と基材層とを含む積層体であって、該基材層は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂鹸化物(EVOH)などの極性の高い熱可塑性樹脂、アルミニウム、スチ−ルなどの金属材料、などの基材を例示することができる。
上記基材の具体例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などのポリエチレン系樹脂、アイオノマー、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミドなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、セロハンなどセルロース系ポリマーのようなフィルム形成能を有する熱可塑性樹脂フィルム又はシート(これらの延伸物、印刷物)、アルミニウム、鉄、銅、又はこれらを主成分とする合金などの金属箔又は金属板、シリカ蒸着プラスチックフィルム、アルミナ蒸着プラスチックフィルムなどの無機酸化物の蒸着フィルム、金、銀、アルミニウムなど金属、又はこれら金属の酸化物以外の化合物などの蒸着フィルム、上質紙、クラフト紙、板紙、グラシン紙、合成紙などの紙類、セロファン、織布、不織布などを挙げることができる。
【0088】
これらの基材層は、用途や被包装物の種類により適宜選択することができる。例えば、被包装物が腐敗しやすい食品である場合には、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステルの如く、透明性、剛性、ガス透過抵抗性の優れた樹脂を用いることができる。また、被包装物が菓子或いは繊維などである場合には、透明性、剛性、水透過抵抗性の良好なポリプロピレンなどを用いることが好ましい。
バリア性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ポリエステル(OPET)、延伸ポリアミド、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルムなどの金属、無機酸化物の蒸着フィルム、アルミ蒸着などの金属蒸着フィルム、金属箔などが挙げられる。
【0089】
(2)積層体の用途
本発明における積層体は、例えば、食品の包装材として好適である。食品の具体例としては、ポテトチップなどのスナック菓子、ビスケット、煎餅、チョコレートなどの菓子類、粉スープなどの粉末調味料、削り節や薫製などの食品などが挙げられる。
また、容器としては、上記積層体のエチレン系共重合体層面同士を向かい合わせ、その少なくとも一部をヒートシールすることにより形成することができる。具体的には、例えば、水物包装、袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装袋(スタンディングパウチなど)、規格袋、重袋、セミ重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋、食品包装用などの各種包装容器、輸液バックなどに好適に使用される。
【0090】
(3)積層体の製造
その加工方法としては、通常のプレス成形、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、フラットダイ成形(T−ダイ成形)、水冷インフレーション成形などの押出成形、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等のラミネート加工法、中空ブロー成形、圧空成形、射出成形、回転成形など、従来公知の方法が挙げられる。
【0091】
(4)ラミネート積層体
本発明におけるラミネート積層体とは、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等、公知のラミネート加工法で製造する事が出来る積層体であり、該ラミネート積層体は本発明の極性基含有オレフィン共重合体を含有してなるラミネート材料と、少なくとも1層以上の基材層とラミネート加工することで製造する事ができる積層体である。
押出ラミネート加工は、Tダイより押出した溶融樹脂膜を基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。また、サンドラミネート加工は、紙と積層するフィルムの間に溶融した樹脂を流し込んで、この溶融した樹脂が接着剤のような働きをして接着・積層する方法であり、ドライラミネート加工は、基材と積層するフィルムを貼合する接着剤及び/又は接着剤の塗布ロール付近の雰囲気湿度を除湿するか、前記接着剤及び/又は接着剤の塗布ロールの温度を温熱するか、フィルムシートの貼合面を乾燥させる方法である。
サンドラミネート加工、ドライラミネート加工においては、本発明に用いる基材の極性基含有オレフィン共重合体を含む層が形成される側で、基材と極性基含有オレフィン共重合体を含む層との間に、バリア性を向上させるため、上記アルミ箔、ポリエステル系フィルム、各種バリア性フィルムなどを積層させることが容易である。
本発明に関わるラミネート用材料と積層する基材層としては、上述した本発明の積層体における基材層として記載した各種材料を適宜用いる事ができる。
【0092】
(5)多層共押出成形品
本発明における多層共押出成形品とは、公知の多層共押出成形によって成形する事が可能な多層共押出成形品であり、本発明の極性基含有オレフィン共重合体を含有してなる層を少なくとも含む多層共押出成形品である。また、多層共押出成形品とは、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、種々の賦形方法によって成形することにより製造する事が可能な、多層構造を持った成形品の事である。
本発明における多層共押出成形品の製造方法としては、多層空冷インフレーション成形、多層空冷2段冷却インフレーション成形、多層高速インフレーション成形、多層水冷インフレーション成形、多層フラットダイ成形(T−ダイ成形)、多層管状品成形、多層コルゲートパイプ成形等、公知の多層共押出成形を挙げる事ができる。本発明における多層共押出成形品における基材層としては、上述した本発明の積層体における基材層として記載した各種材料を適宜用いる事ができる。本発明における多層共押出成形品は、本発明における極性基含有オレフィン共重合体を含む層と適当な基材とを、適当な成形方法によって加工することにより、多層フィルム、多層ブロー成形品、多層管状製景品、多層シート、その他多層パイプ、多層ホース、多層チューブ、多層コルゲートパイプ等の公知の多層共押出成形品として製造する事ができる。
【0093】
(6)多層フィルム
本発明における多層フィルムとは、公知の多層フィルム成形法によって製造する事が可能な多層フィルムであり、本発明の極性基含有オレフィン共重合体を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層フィルムである。本発明に関わる多層フィルムの製造方法としては、多層空冷インフレーション成形、多層空冷2段冷却インフレーション成形、多層高速インフレーション成形、多層水冷インフレーション成形、多層フラットダイ成形(T−ダイ成形)等、公知の多層フィルム成形法を用いる事ができる。本発明に関わる多層フィルムの基材層としては、上記に記載の各種材料を適宜用いる事ができる。
【0094】
(7)多層ブロー成形品
本発明における多層ブロー成形品とは、公知の多層ブロー成形によって製造する事が可能な多層ブロー成形品であり、本発明の極性基含有オレフィン共重合体を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層ブロー成形品である。本発明に関わる多層ブロー成形品の製造方法としては、多層ダイレクトブロー成形、多次元多層ブロー成形、多層ロータリーブロー成形等、公知のブロー成形法を挙げる事ができる。本発明に関わる多層ブロー成形品の基材層としては、上記に記載の各種材料を適宜用いる事ができる。
【0095】
(8)多層管状成形品
本発明における多層管状成形品とは、公知の多層管状成形法によって成形する事が可能な多層管状成形品であり、本発明の極性基含有オレフィン共重合体を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層管状成形品である。本発明における多層管状成形法は、例えば、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、円形もしくは異形の吐出口から吐出することによって連続的に吐出口形状に準じた形状の管状成形品が成形され、適当な賦形方法、および冷却方法によって成形、冷却固化することで管状の成形品を得る方法を挙げる事ができる。本発明における多層管状成形法の吐出口形状は特に限定されず、円形、楕円、多角形、その他公知の吐出口形状を選択する事ができる。また、本発明における多層管状成形法の成形方法は特に限定されず、サイジングプレート法、内圧サイジング法、内径サイジング法、真空サイジング法、押出した溶融材料を金型で挟み込み、マンドレル側からの圧空や金型側からの真空引き等で賦形しつつ冷却する方法等、公知の成形法を用いる事ができ、冷却方法も水冷、空冷、金型での挟み込み等、適宜使用することができる。さらに、一度冷却固化させた多層管状成形品を再加熱し、さらに別の形状へと加工することもできる。本発明における多層管状成形品の基材層としては、上述した本発明の積層体における基材層として記載した各種材料を適宜用いる事ができる。
【0096】
(9)多層シート
本発明における多層シートとは、公知の多層シート成形によって製造する事が可能な多層シートであり、本発明の極性基含有オレフィン共重合体を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層シートである。本発明における多層シートの製造方法としては各種公知の方法を用いる事ができ、例えば、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、フラットダイやサーキュラーダイ等公知のダイから吐出させることでシート状に成形する方法を挙げる事ができる。また、これら方法において、必要に応じてシートの端部をスリットしたり、円形のシートを切り開く加工を加えたりしてもよい。本発明における多層シートの基材層としては、上述した本発明の積層体における基材層として記載した各種材料を適宜用いる事ができる。
【0097】
(10)押出成形品
本発明における押出成形品とは、本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体を押出成形によって成形した押出成形品である。本発明における押出成形品は、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、水冷インフレーション成形といった各種インフレーション成形、フラットダイ成形、異形押出成形、管状品成形、カレンダー成形等、公知の押出成形によって製造する事ができる。
【0098】
(11)射出成形品
本発明における射出成形品とは、本発明における極性基含有オレフィン共重合体を射出成形によって成形した射出成形品である。本発明における射出成形品の製造には公知の方法を用いる事ができる。
【0099】
(12)複合化射出成形品
本発明における複合化射出成形品とは、本発明の極性基含有オレフィン共重合体を含有してなる部材を少なくとも含み、射出成形を用いて複数の部材を複合化することで製造できる複合化射出成形品である。複合化射出成形品は2種類以上の材料が複合化されていればよく、例えば、2種の異なる本発明の極性基含有オレフィン共重合体を含有してなる部材が複合化されていても良く、本発明の極性基含有オレフィン共重合体を含有してなる部材と基材からなる部材が複合化されていてもよい。さらに、3種以上の部材が複合化されていてもよい。本発明における複合化射出成形品は、公知の複合化射出成形が可能な射出成形法によって成形する事ができる。本発明の極性基含有オレフィン共重合体を含有してなる部材の2種類以上を複合化してなる複合化射出成形品であってもよいが、本発明の特徴である異種材料との高い接着性を有する点を考慮すると、異種材料からなる部材と複合化させた複合化射出成形品であるほうが好ましい。複合化射出成形品の製造が可能な射出成形法としては、公知の方法を挙げる事ができる。例えば、あらかじめ射出成形や押出成形、プレス成形、切削加工等公知の方法により本発明の極性基含有オレフィン共重合体を部材へと加工し、該部材を射出金型内部にインサートした状態でさらに基材材料を射出することで複合化させる方法、あらかじめ基材を部材へと加工し、基材の部材を射出金型内にインサートした状態で本発明における極性基含有オレフィン共重合体を射出することで複合化させる方法、複数の射出ユニットを有する多色射出成形機を用い、本発明における極性基含有オレフィン共重合体と基材材料を適当な順序で順次、金型内に射出することによって複合化する方法などを挙げる事ができる。
本発明における複合化射出成形品において、本発明における極性基含有オレフィン共重合体と複合化させる部材の種類としては、上述した本発明の積層体における基材層として記載した各種材料を適宜使用する事ができる。
【0100】
(13)被覆金属部材
本発明における被覆金属部材とは、金属に本発明における極性基含有オレフィン共重合体を金属被覆材料として用い、金属被覆材料を金属に被覆することにより製造できる、被覆金属部材である。本発明における被覆金属部材は公知の金属被覆方法によって製造する事ができる。被覆金属部材の例としては、例えば、鋼管の外面もしくは内面に、必要に応じてアンダーコート等を介して被覆材料を被覆させた被覆鋼管、金属被覆材料で被覆された被覆金属ワイヤー、金属被覆材料で被覆された電線、紛体に加工された被覆金属材料を用いて流動浸漬法によって被覆された被覆金属、紛体に加工された被覆金属材料を用いて静電塗装法によって被覆された被覆金属等を挙げる事ができる。
【実施例】
【0101】
以下において、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明し、好適な各実施例のデータ及び各実施例と各比較例の対照により、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。
本発明において製造される極性基含有オレフィン共重合体の物性試験方法、得られた積層体の試験方法は、以下の通りである。
【0102】
(1)極性基含有オレフィン共重合体中の極性基含有構造単位量
極性基含有オレフィン共重合体中の極性基含有構造単位量は、
13C−NMRスペクトルを用いて求めた。詳しくは本明細書の「(5)極性基含有モノマーの構造単位量」欄においてに前述している。
【0103】
(2)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布パラメーター(Mw/Mn)
重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求めた。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnによって算出した。これらの算出方法は詳しくは本明細書の「(6)極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)」欄において前述している。
【0104】
(3)融点
融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク温度によって示される。測定にはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社社製のDSC(DSC7020)を使用し、次の測定条件で実施した。
試料約5.0mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで上昇し、200℃で5分間保持した後に10℃/分で30℃まで降温させた。30℃で5分間保持した後、再度、10℃/分で昇温させる際の吸収曲線を測定し、そのピーク温度を融点とした。
【0105】
(4)接着強度
接着強度は、極性基含有オレフィン共重合体のプレス板とEVOHフィルム、及びポリアミドフィルムをそれぞれ調製し、その2種を重ね合わせて熱プレスすることによって積層体を作製し、剥離試験を行うことによって測定した。各工程の調整方法/測定方法を順に説明する。
【0106】
極性基含有オレフィン共重合体樹脂板の調製方法
極性基含有オレフィン共重合体を、寸法:50mm×60mm、厚さ1mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約0.9mmの極性基含有オレフィン共重合体樹脂板を作製した。
【0107】
EVOHフィルムの調製方法
多層Tダイ成形機を用い、中央層がEVOH、両外層がLLDPEの2種3層多層フィルムを成形後、外層のLLDPEを剥離することで、厚さ150μmのEVOH単層フィルムを調製した。フィルム成形条件は以下の通りである。
成形機:2種3層Tダイ 成形温度:200℃ 層構成:LLDPE/EVOH/LLDPE 膜厚:350μm(100μm/150μm/100μm) 外層:LLDPE(日本ポリエチレン(株)社製 銘柄:ノバテック UF943)MFR=2.0g/10分、密度=0.937/cm
3 中間層:EVOH((株)クラレ製 銘柄:エバール F101B)
【0108】
ポリアミドフィルムの調製方法
多層Tダイ成形機を用い、中央層がポリアミド、両外層がLLDPEの2種3層多層フィルムを成形後、外層のLLDPEを剥離することで、厚さ150μmのポリアミド単層フィルムを調製した。フィルム成形条件は以下の通りである。
成形機:2種3層Tダイ 成形温度:250℃ 層構成:LLDPE/EVOH/LLDPE 膜厚:350μm(100μm/150μm/100μm) 外層:LLDPE(日本ポリエチレン(株)社製 銘柄:ノバテック UF943)MFR=2.0g/10分、密度=0.937/cm
3 中間層:ポリアミド(東レ(株)製 銘柄:アミラン CM1021FS)
【0109】
EVOHフィルムと極性基含有オレフィン共重合体との積層体の調製方法
上記の樹脂板調製方法によって得られた極性基含有オレフィン共重合体の樹脂板と、上記EVOHフィルムの調製方法によって得られたEVOHフィルムを50mm×60mmの寸法に切断したものを重ね合わせ、寸法:50mm×60mm、厚さ1mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度200℃の熱プレス機を用いて4.9MPaで4分間加圧した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、極性基含有オレフィン共重合体とEVOHの積層体を調製した。
【0110】
ポリアミドフィルムと極性基含有オレフィン共重合体との積層体の調製方法
上記の樹脂板調製方法によって得られた極性基含有オレフィン共重合体の樹脂板と、上記ポリアミドフィルムの調製方法によって得られたポリアミドフィルムを50mm×60mmの寸法に切断したものを重ね合わせ、寸法:50mm×60mm、厚さ1mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度250℃の熱プレス機を用いて4.9MPaで3分間加圧した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、極性基含有オレフィン共重合体とポリアミドの積層体を調製した。
【0111】
積層体の接着強度測定方法
積層体の調製方法によって得られた積層体を10mm幅に切断し、テンシロン(東洋精機(株)製)引張試験機を用いて、50mm/分の速さでT剥離することで接着強度を測定した。接着強度の単位はgf/10mmで示した。また、接着強度が非常に強い場合、剥離試験に際して極性基含有オレフィン共重合体層が降伏し、さらには破断する。これは、積層体の接着強度が極性基含有オレフィン共重合体層の引張破断強度よりも高いために発生する現象であり、その接着性は非常に高いものと判断できる。該現象により接着強度が測定できない場合、各実施例の接着強度測定結果には「剥離不可」と記載し、接着強度の数値が測定されたものよりも、より高度に接着されたと判断する。
【0112】
〔実施例1〕
Drent系触媒の製造と重合
充分に窒素置換した30mLフラスコに、100μmolのパラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。
次に、内容積2.4リッターの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、極性含有モノマー濃度が0.1mol/Lとなるように精製トルエン、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。
先に調製した触媒溶液を添加し、100℃、エチレン圧を1MPaで重合を開始した。反応中は温度を100℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られた極性基含有オレフィン共重合体をアセトン(1L)を用いて共重合体を再沈させ、沈殿した共重合体を濾過した。濾過により得られた固形の極性基含有オレフィン共重合体をアセトンで洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥後、最終的に極性基含有オレフィン共重合体を回収した。重合条件及び活性を表1に示す。
【0113】
〔実施例2〜11,14 比較例1〜6〕
実施例1に記載の方法のうち、配位子種、配位子量、極性基含有モノマー種、極性基含有モノマー濃度、重合圧量、重合温度、重合時間、をそれぞれ変更して重合することにより、実施例2〜11、実施例14、比較例1〜6の極性基含有オレフィン共重合体を調製した。重合条件及び活性を表1に示す。また、表1中の配位子種(I)〜(IV)を下記化学式に示す。各実施例及び各比較例によって得られた極性基含有オレフィン共重合体の分析データと、EVOHフィルムとの接着強度を表2に示す。なお、表2中の末端導入は末端に導入された極性基含有モノマーの極性基含有構造単位量を、主鎖導入は分子鎖の内部(主鎖中)に導入された極性基含有モノマーの極性基含有構造単位量を、総構造単位は導入された極性基含有構造単位の総量を、それぞれ示している。表2中、「ND」とは未測定を意味する。
【0114】
【化12】
【0115】
〔実施例12〕
SHOP系配位子の合成:国際公開2010−050256記載(合成例4)の方法に従い、下記の配位子B−27DMを得た。
【0116】
【化13】
【0117】
錯体の形成:
初めに50mlのナス型フラスコに、下記B−27DMを112mg(200μmol)秤り取った。次に、ビス−1、5−シクロオクタジエンニッケル(0)(以下Ni(COD)2と称する)を50mlナス型フラスコに56mg(200μmol)秤り取り、20mlの乾燥トルエンに溶解させ10mmol/lのNi(COD)2トルエン溶液を調製した。ここで得られたNi(COD)2トルエン溶液全量(20ml)を、B−27DMの入ったナス型フラスコに加え、40℃の湯浴で30分攪拌することで、B−27DMとNi(COD)2の反応生成物の10mmol/l溶液を20ml得た。
次に、内容積2.4リットルの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、極性含有モノマー濃度が0.05mol/Lとなるように精製トルエン(1.0L)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(8.2g)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。オートクレーブの温度を100℃とした後、0.1mol/lに希釈したトリノルマルオクチルアルミニウムのトルエン溶液を1ml加えた。その後、窒素を0.3MPaまで導入し、さらにエチレンを2.8MPaまで導入した。温度と圧力が安定した後、先に調製した錯体溶液2ml(20μmol)を窒素で圧入することで反応を開始した。反応中は温度を100℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給して30分間重合を行った。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られた極性基含有オレフィン共重合体はアセトン(1L)を用いて析出させ、析出した共重合体を濾過した。濾過により得られた固形の極性基含有オレフィン共重合体をアセトンで洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥後、最終的に極性基含有オレフィン共重合体を回収した。重合条件及び活性を表1に示す。
【0118】
〔実施例13〕
実施例12に記載の方法のうち、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の濃度を0.02mol/lにし、錯体溶液量を0.5ml(錯体として5μmol)に変更して、重合を20分間行うことで実施例14の極性基含有オレフィン共重合体を得た。各実施例によって得られた極性基含有オレフィン共重合体の分析データと、EVOHフィルムおよびポリアミドフィルムとの接着強度を表2に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
〔実施例と比較例の結果の考察〕
実施例1〜実施例14の極性基含有オレフィン共重合体は、重量平均分子量(Mw)が45,000以上であり、その接着強度は実用上充分と考えられる数値を示している。
それらと比較して、比較例1〜4および比較例6の重量平均分子量(Mw)は45,000を下回っており、接着性は不充分である。
一般的に、極性基含有ポリオレフィンが極性の高い素材と強い接着強度を持つためには、極性基含有量が多いほうが有利であると考えられている。しかし、実施例1〜15と比較して比較例1〜4および6は、極性基モノマーに由来する構造単位量が十分に多いにもかかわらず、接着性が不充分となった事実は、極性基含有量が一義的に接着性を決定する訳ではなく、極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)が強い影響を与えることを示している。すなわち、重量平均分子量(Mw)が45,000以上であり、極性基含有モノマーに由来する構造単位が0.001mol%以上であれば、接着性が発現することを明らかにした。
実施例1〜10および実施例12、実施例13は極性基含有モノマーとして5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を、実施例11は極性基含有モノマーとして3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物を、実施例14は極性基含有モノマーとして2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸無水物を、それぞれ含んだ極性基含有オレフィン共重合体であるが、いずれの極性基含有モノマーを含んだ極性基含有オレフィン共重合体であっても、それぞれ十分な接着性を示している。この事実は、極性の高い素材と十分な接着性能を有する極性基含有オレフィン共重合体を得る為に必要な極性基含有モノマー種は特定されず、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーであれば限定されないことを示している。
比較例5のオレフィン共重合体は、45,000以上の重量平均分子量(Mw)を有しているが、含有する極性基種がエチルアクリレートである。EVOHやポリアミドの様な高い極性を有する素材と充分な接着性を持つためには、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含んだモノマーを共重合させる必要があることを明らかにした。
実施例12、実施例13は、実施例1〜10とは異なる製造方法で製造された極性基含有オレフィン共重合体である。いずれの製造方法で製造した極性基含有オレフィン共重合体であっても、それぞれ十分な接着性を示している。この事実は、極性の高い素材と十分な接着性能を有する極性基含有オレフィン共重合体を得る為に特定の製造方法である必要はなく、その製造方法は限定されないことを示している。
また、実施例12、実施例13はEVOHの他に、ポリアミドとも十分な接着性能を示している。この事実は、本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、特定の極性の高い素材とのみ接着性を有しているのではなく、各種極性の高い素材とも十分な接着性を有することを明らかにした。
以上の各実施例の良好な結果、及び各比較例との対照により、本発明の構成(発明特定事項)の有意性と合理性及び従来技術に対する卓越性が明確にされている。