(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
キレート剤がクエン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸 鉄(III)ナトリウム塩およびシアル酸、並びにそれらの塩または水和物から選ばれる少なくとも1である、請求項1に記載の水溶液の調製方法。
キレート剤がクエン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸 鉄(III)ナトリウム塩およびシアル酸、並びにそれらの塩または水和物から選ばれる少なくとも1である、請求項11に記載の膜ろ過する方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、培地およびキレート剤を含む水溶液の調製方法であって、該水溶液の最終pH調整よりも先にキレート剤を水溶液に添加する水溶液の調製方法に関する。
【0018】
前記水溶液とは、特に限定されるものではないが、好ましくは細胞等を培養することができる水溶液(細胞培養用水溶液ともいう)が挙げられる。
【0019】
培地としては、例えば、粉末培地、液体培地またはスラリー状の培地が挙げられる。これらの培地は市場で入手可能な培地から適宜選択でき、また、2種類以上の培地を混合してもかまわない。さらに文献に記載された公知の培地等も選択できる。
【0020】
また、培地としては、例えば、細菌細胞培養用の培地、酵母細胞培養用の培地、植物細胞培養用の培地、または動物細胞培養用の培地等が挙げられる。これらの中でも、動物細胞培養用の培地が好ましい。また、培地としては、特に制限はないが、例えば、拡大培養培地、基本(初発)培地、またはフィード培地等が挙げられる。
【0021】
また、培地は、合成培地、半合成培地、または天然培地のいずれでもよい。例えば、基礎培地、血清含有培地、無血清培地、動物由来成分を含まない培地または無蛋白質培地等が挙げられる。これらの中でも、無血清培地、無蛋白質培地または完全合成培地が好ましい。
【0022】
細胞培養用の培地としては、動物細胞培養用の培地が好ましく、チャイニーズハムスター卵巣組織由来のCHO細胞培養用の培地がより好ましい。
【0023】
基礎培地としては、例えば、RPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122,501(1952)]、ダルベッコ改変MEM(DMEM)培地[Virology,8,396(1959)]、199培地[Proceedingof the Society for the Biological Medicine,73,1(1950)]、F12培地(LTI社製)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,53,288(1965)]、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM培地)[J.Experimental Medicine,147,923(1978)]、EX−CELL(登録商標)302培地、EX−CELL(登録商標)325培地、(SAFCバイオサイエンス社製)、若しくはCHO−S−SFMII培地(インビトロジェン社製)など各社の市販培地、またはこれらの改変培地あるいは混合培地等が挙げらる。これらの中でも、RPMI1640培地、DMEM培地、F12培地、IMDM及びEX−CELL(登録商標)302培地、またはハイブリドーマSFM培地(インビトロジェン社製)が好ましい。
【0024】
血清含有培地としては、例えば、基礎培地に、ウシ若しくはウマ等の哺乳類動物血清、ニワトリ等の鳥類動物血清、ブリ等の魚類動物血清、または上記血清の分画物の内、1種以上の血清若しくは血清分画物を添加したものが挙げられる。
【0025】
無血清培地としては、例えば、基礎培地に、血清の代替物である栄養因子または生理活性物質等を添加させたものが挙げられる。
【0026】
動物由来成分を含まない培地においては、動物由来成分の代わりに添加される物質を添加してもよい。該物質としては、例えば、遺伝子組換え法で製造された生理活性物質、または加水分解物若しくは動物由来原料を含まない脂質等が挙げられる。
【0027】
無蛋白培地とは、例えば、ADPF培地(Animal derived protein free medium、ハイクローン社製)、CD−Hybridoma培地(インビトロジェン社製)、CD−CHO培地(インビトロジェン社製)、IS−CD−CHO培地(アーバイン・サイエンティフィック社製)、またはEX−CELL(登録商標)CD−CHO培地(SAFCバイオサイエンス社製)等が挙げられる。
【0028】
粉末培地の製造方法は特に限定はないが、好ましくは、乾燥成分のディスクミル、ボールミル若しくはピンミル等のような混合プロセスによる製造方法、または事前に作られた水溶液の凍結乾燥による製造方法等が挙げられる。
【0029】
粉末培地には、顆粒形態で存在する培地が含まれる。
【0030】
顆粒形態で存在する粉末培地の製造方法は特に限定されないが、例えば、Advancedgranulation Technology(登録商標)等が挙げられる。また、細粒化した成分に、更に天然糊料、合成糊料、糖類、及び油脂類からなる群から選択される少なくとも1種類の素材を溶解した溶液を噴霧し乾燥させる工程が含まれてもよい。
【0031】
前記培地に所望の栄養因子を適宜選択して添加することもできる。さらに、所望の栄養因子を適宜選択した成分で培地を構成してもよい。栄養因子としては、例えば、糖類などの炭素源、またはアミノ酸などの窒素源が挙げられる。具体的には、例えば、アミノ酸、金属、ビタミン、糖類、塩、脂質、核酸、生理活性物質、脂肪酸、有機酸、蛋白質、加水分解物等が挙げられる。また、これらの化合物は、塩酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩、及び/または、例えば水和物等の溶媒和物を形成していてもよい。
【0032】
アミノ酸としては特に限定されないが、例えば、L−アラニン(Ala)、L−アルギニン(Arg)、L−アスパラギン(Asn)、L−アスパラギン酸(Asp)、L−システイン(Cys)、L−シスチン、L−グルタミン酸(Glu)、L−グルタミン(Gln)、グリシン(Gly)、L−ヒスチジン(His)、L−イソロイシン(Ile)、L−ロイシン(Leu)、L−リジン(Lys)、L−メチオニン(Met)、L−フェニルアラニン(Phe)、L−プロリン(Pro)、L−セリン(Ser)、L−スレオニン(Thr)、L−トリプトファン(Trp)またはL−バリン(Val)等が挙げられ、1種または2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの塩酸塩、ナトリウム塩等の塩及び/または水和物等の溶媒和物を用いてもよい。ペプチドとして添加してもよく、例えば、L−アラニル−L−グルタミンまたはL−アラニル−L−システインなどが挙げられる。
【0033】
生理活性物質としては、例えば、インシュリン、トランスフェリン、血清アルブミンまたは増殖因子を含む血清分画物等が挙げられる。
【0034】
脂質としては、例えば、コレステロール、リノール酸またはリノレイン酸等が挙げられる。また、これらの塩酸塩、ナトリウム塩等の塩及び/または水和物等の溶媒和物を用いてもよい。
【0035】
金属としては特に限定されないが、例えば、鉄、マンガン、亜鉛、モリブデン、バナジウム、銅、カドミウム、ルビジウム、コバルト、ジルコニウム、ゲルマニウム、ニッケル、スズ、クロムまたはケイ素等が挙げられ、1種または2種以上組み合わせて用いられる。これらの金属は、例えば、塩酸塩、硫酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩、及び/または、例えば水和物等の溶媒和物を形成していてもよい。
【0036】
糖類としては、単糖、オリゴ糖または多糖のいずれでもよく、特に限定されない。さらにデオキシ糖、ウロン酸、アミノ糖または糖アルコール等の糖誘導体も含まれる。例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、リボース、アラビノース、リブロース、エリトロース、エリトルロース、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、セドヘプツロース、マルトース、ラクトースまたはスクロース等が挙げられ、1種または2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの塩酸塩、ナトリウム塩等の塩及び/または水和物等の溶媒和物を用いてもよい。
【0037】
ビタミンとしては特に限定されないが、例えば、d−ビオチン、D−パントテン酸、コリン、葉酸、myo−イノシトール、ナイアシンアミド、ピリドキサール、リボフラビン、チアミン、シアノコバラミンまたはDL−α−トコフェロール等が挙げられ、1種または2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの塩酸塩、ナトリウム塩等の塩及び/または水和物等の溶媒和物を用いてもよい。
【0038】
加水分解物としては、例えば、大豆、小麦、米、えんどう豆、綿実、魚若しくは酵母抽出物等の加水分解物、または抽出物等が挙げられる。具体的には、例えば、SOY HYDROLYSATE UF(SAFC Bioscience社製、カタログ番号:91052−1K3986、または91052−5K3986)が挙げられる。
【0039】
キレート剤としては、キレート剤を添加し調製される水溶液の使用目的に適っていれば、特に限定されない。また、本発明のキレート剤としては、1種類若しくは複数の種類のキレート剤を用いてもよい。
【0040】
キレート剤としては、特に水溶性のキレート剤が好ましく、例えば、アミノカルボン酸系、オキシカルボン酸系、低級二塩基性カルボン酸系、多価アルコール、または無機化合物系等が挙げられる。また、本発明のキレート剤は、キレート効果を維持していれば塩等を形成していてもよく、例えば、塩酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩、及び/または、水和物等の溶媒和物を形成していてもよい。
【0041】
アミノカルボン酸系のキレート剤としては、具体的には、例えば、ニトリロ三酢酸(NTA)、N−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(NIMDA)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸 鉄(III)ナトリウム塩(EDTA iron(III)sodium salt)、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)、トリメチレンジアミン四酢酸(TMTA)、エチレングリコールジエチルエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、エチレンジアミン四プロピオン酸(EDTP)、グルタミン酸−N,N−二酢酸や、アスパラギン酸−N,N−二酢酸、グリシン、アラニン、これらの塩及び/または水和物の溶媒和物等が挙げられる。
【0042】
オキシカルボン酸系のキレート剤としては、具体的には、例えば、乳酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、マンデル酸、これらの塩及び/または水和物の溶媒和物等が挙げられる。低級二塩基性カルボン酸系のキレート剤としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、これらの塩及び/または水和物の溶媒和物等が挙げられる。
【0043】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール若しくはトリエチレングリコール等のグリコール類、または糖アルコール類が挙げられる。具体的には、例えば、グリセリン、エリトリット、アラビット、キシリット、ソルビット、マンニットまたはガラクチット等の他イノシトール等が挙げられる。
【0044】
無機化合物系のキレート剤としては、例えば、ピロリン酸、トリリン酸、縮合リン酸、これらの塩及び/または水和物の溶媒和物等が挙げられる。キレート剤として特に好ましいのは、クエン酸3ナトリウム2水和物、L−リンゴ酸又はエチレンジアミン四酢酸 鉄(III)ナトリウム塩である。
【0045】
さらにキレート剤としては、シアル酸を用いることができる。シアル酸とは、9つの炭素骨格からなるカルボキシル基を持つ2−ケト−3デオキシノン酸を意味し、ノイラミン酸ともいう。
【0046】
シアル酸には、N−アセチルノイラミン酸、N−グライコリルノイラミン酸、O−アセチルノイラミン酸、またはデアミノノイラミン酸、または、これらの塩、水和物及び/または誘導体等が含まれる。
【0047】
またシアル酸には、骨格として5−N−アセチル、または5−N−グリコリルノイラミン酸を持つものであって、水酸基の幾つかがO−アセチル化されたものを含む。本発明のシアル酸として、特に好ましくは、N−アセチルノイラミン酸二水和物である。
【0048】
キレート剤は公知の化学合成法により製造することが出来る。
【0049】
キレート剤は水溶液の調製時に添加し、特に最終pH調整よりも先に水溶液に添加することが好ましい。本発明の水溶液の調製方法において、キレート剤を水溶液に添加する順番(添加時期)は、水溶液の最終pH調整よりも先であれば、添加する培地の組成、キレート剤の種類等により適宜選択できる。水溶液の最終pH調整よりも先にキレート剤を水溶液に添加することにより、調製された水溶液の膜ろ過性を向上することができる。
【0050】
本発明の水溶液の調製方法において、キレート剤はいずれの培地と同時にまたはその前後に水溶液に添加することができ、培地よりも先または同時に水溶液に添加することが好ましい。さらに、キレート剤は培地中に先に添加しておくこともできる。キレート剤を培地よりも先または同時に水溶液に添加することにより、調製された水溶液の膜ろ過性を更に向上することができる。
【0051】
本発明における最終pH調整とは、水溶液のpHを所定のpHに調整する工程のことをいう。最終pHは水溶液の使用目的に応じて調整される。水溶液が細胞培養用水溶液の場合、該pHの値は細胞を培養できるものであればいずれの値であってもよい。pH調整が不要な場合は、水溶液に含有される物質の水溶液への最終の添加を最終pH調整とみなす。
【0052】
最終pH調整はいずれの酸またはアルカリを用いて行うことが出来る。具体的には、例えば、炭酸水素ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム等を用いることができる。
【0053】
水溶液に含有される物質の水溶液への最終の添加を最終pH調整とみなす場合の例としては、培地中にpHを調整するNa
2CO
3または4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid(HEPES)、3−(N−Morpholino)propanesulfonic acid(MOPS)などの緩衝剤が既に含有されている場合などがある。
【0054】
キレート剤の添加量は特に限定はないが、水溶液調製後、添加した該キレートの該水溶液中の濃度が好ましくは0.001mmol/L以上、より好ましくは0.01mmol/L以上、さらに好ましくは0.1mmol/L以上、特に好ましくは0.34mmol/L以上であるような量を添加することが好ましい。
【0055】
また、水溶液へのキレート剤の添加量としては、0.001〜1000mmol/L、0.01〜100mmol/L、0.1〜100mmol/L、0.1〜50mmol/L等の範囲で当業者であれば適宜選択できるが、好ましくは0.34〜89mmol/L、更に好ましくは0.34〜15mmol/L、特に好ましくは0.34〜6.8mmol/Lであるような量を添加することもできる。調製された水溶液中のキレート剤の濃度は、培地中に鉄等の金属の供給源として加えられている鉄等金属とキレート複合体により、さらに高くてもよい。
【0056】
本発明における水溶液の調製時に、加水分解物、金属塩、糖類、ビタミン、アミノ酸、pH調整剤、有機酸、脂肪酸、ペプチド、生理活性物質、脂質または核酸等をそれぞれ別に、あるいは一部培地に混合して添加することもできる。金属塩、糖類またはビタミンを培地に混合して添加することもできる。
【0057】
細胞としては、真核細胞、原核細胞のいずれでもよく、例えば、哺乳類、鳥類、は虫類、両生類、魚類、昆虫類若しくは植物等由来の細胞、細菌、大腸菌若しくは枯草菌等の微生物、細菌、大腸菌若しくは枯草菌等微生物由来の細胞、または、酵母等若しくは酵母等由来の細胞が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、哺乳類に属する動物細胞が好ましく、ヒト若しくはサル等の霊長類に由来する動物細胞またはマウス、ラット若しくはハムスター等のげっ歯類に由来する動物細胞がより好ましく、チャイニーズハムスター卵巣組織由来のCHO細胞が最も好ましい。
【0059】
本発明におけるチャイニーズハムスター卵巣組織由来のCHO細胞とは、チャイニーズハムスター(Chinese hamster;Cricetulusgriseus)の卵巣組織から樹立された株化細胞であればいかなる細胞も包含される。
【0060】
具体的には、例えば、Journal of Experimental Medicine,108,945(1958)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,60,1275(1968)、Genetics,55,513(1968)、Chromosoma,41,129(1973)、Methods in Cell Science,18,115(1996)、Radiation Research,148,260(1997)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4216(1980)、Proc.Natl.Acad.Sci.60,1275(1968)、Cell,6,121(1975)、Molecular Cellgenetics,Appendix I,II,883−900等の文献に記載されているCHO細胞を挙げることができる。
【0061】
また、例えば、ATCC(The American Type Culture Collection)に登録されているCHO−K1株(ATCC No.CCL−61)、DUXB11株(ATCC CRL−9096)、Pro−5株(ATCC CRL−1781)、CHO/dhfr−(ATCC No.CRL−9096)、市販のCHO−S株(Lifetechnologies社 Cat#11619)若しくはCHO/DG44[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4216(1980)]またはこれら株を様々な培地に馴化させた亜株なども挙げることができる。
【0062】
哺乳類に属する細胞としては、例えば、骨髄腫細胞、卵巣細胞、腎臓細胞、血球細胞、子宮細胞結合組織細胞、乳腺細胞若しくは胚性網膜芽細胞またはこれらの細胞に由来する細胞等が挙げられる。これらの中でも、骨髄腫細胞、骨髄腫細胞に由来する細胞、卵巣細胞、または卵巣細胞に由来する細胞から選ばれる細胞が好ましい。
【0063】
例えば、ヒト細胞株であるHL−60(ATCC No.CCL−240)、HT−1080(ATCC No.CCL−121)、HeLa(ATCC No.CCL−2)、293(ECACC No.85120602)、Namalwa(ATCC CRL−1432)、Namalwa KJM−1[Cytotechnology,1,151(1988)]、NM−F9(DSM ACC2605、国際公開第2005/017130号)及びPER.C6(ECACC No.96022940、米国特許第6855544号明細書)、サル細胞株であるVERO(ATCC No.CCL−1651)及びCOS−7(ATCC No.CRL−1651)、マウス細胞株であるC127I(ATCC No.CRL−1616)、Sp2/0−Ag14(ATCC No.CRL−1581)、NIH3T3(ATCC No.CRL−1658)、NS0(ATCC No.CRL−1827)、ラット細胞株であるY3 Ag1.2.3.(ATCC No.CRL−1631)、YO(ECACC No.85110501)及びYB2/0(ATCC No.CRL−1662)、ハムスター細胞株である上記記載のチャイニーズハムスター卵巣組織由来のCHO細胞及びBHK21(ATCC No.CRL−10)またはイヌ細胞であるMDCK(ATCC No.CCL−34)等が挙げられる。
【0064】
鳥類に属する細胞としては、例えば、ニワトリ細胞株SL−29(ATCC No.CRL−29)等が挙げられる。魚類に属する細胞としては、例えば、ゼブラフィッシュ細胞株ZF4(ATCC No.CRL−2050)等が挙げられる。
【0065】
昆虫類に属する細胞としては、例えば、蛾(Spodoptera frugiperda)細胞株Sf9(ATCC No.CRL−1711)等が挙げられる。また、ワクチン製造に使用される初代培養細胞としては、例えば、初代サル腎細胞、初代ウサギ腎細胞、初代ニワトリ胎児細胞、または初代ウズラ胎児細胞等が挙げられる。
【0066】
骨髄腫細胞または骨髄腫細胞に由来する細胞としては、例えば、Sp2/0−Ag14、NS0、Y3 Ag1.2.3.、YOまたはYB2/0等が挙げられる。卵巣細胞または卵巣細胞に由来する細胞としては、例えば、上記記載のチャイニーズハムスター卵巣組織由来のCHO細胞等が挙げられる。また、腎臓細胞としては、例えば、293、VERO、COS−7、BHK21またはMDCK等が挙げられる。
【0067】
血球細胞としては、例えば、HL−60、Namalwa、Namalwa KJM−1またはNM−F9等が挙げられる。子宮細胞としては、例えば、HeLa等が挙げられる。結合組織細胞としては、例えば、HT−1080またはNIH3T3等が挙げられる。乳腺細胞としては、例えば、C1271I等が挙げられる。胚性網膜芽細胞としては、例えば、PER.C6等がそれぞれ挙げられる。
【0068】
細胞としては、物質を生産する能力の有無は、特に限定されず、例えば、体細胞へ数種類の遺伝子を導入することにより得られたiPS細胞、ヒトを含む哺乳動物ドナーから採取した精子、卵子細胞、物質を産生する細胞または物質を産生するようになった融合細胞等が挙げられる。
【0069】
これらの中でも、物質を産生する細胞、または、物質を産生するようになった融合細胞等が好ましく、物質を産生する動物細胞、または、物質を産生するようになった動物由来の融合細胞等がより好ましい。例えば、所望の物質が抗体である場合には、B細胞等の抗体産生細胞と骨髄腫細胞との融合細胞であるハイブリドーマ等が挙げられる。また、変異処理を施して物質を産生するようになった動物細胞、または物質の発現量を上昇させるような変異処理を施した動物細胞等も動物細胞に包含される。
【0070】
変異処理を施して物質を産生するようになった動物細胞としては、例えば、所望の物質を生産出来るようにする為に、蛋白質の修飾酵素等に変異が導入された細胞等が挙げられる。例えば、所望の物質が糖蛋白質である場合には、糖鎖の構造を変化させるために、種々の糖鎖修飾酵素に変異が導入された細胞等が挙げられる。
【0071】
さらに、物質を産生する動物細胞としては、所望の物質が産生出来ればいずれの動物細胞を用いてもよく、例えば、物質の生産に関与する遺伝子を含む組換え体ベクターで形質転換された動物細胞も包含される。該形質転換細胞は、物質の生産に関与するDNAとプロモーターを含む組換え体ベクターとを、上記の哺乳類に属する細胞に導入することによって得ることが出来る。
【0072】
物質の生産に関与する遺伝子としては、例えば、ペプチド等の物質をコードするDNA、物質の生合成に関わる酵素または蛋白質をコードするDNA等のいずれも用いることができる。
【0073】
プロモーターとしては、本発明で用いる動物細胞中で機能するものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のイミディエイトアーリー(IE)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーターまたはSRαプロモーター等が挙げられる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサー等をプロモーターと共に用いてもよい。
【0074】
組換え体ベクターは所望のベクターを用いて調製できる。前記組換えベクターを調製するために用いられるベクターとしては、本発明で用いる動物細胞中で機能するものであればいずれも用いることが出来、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社製)、pAGE107[日本国特開平3−22979号公報、Cytotechnology,3,133(1990)]、pAS3−3(日本国特開平2−227075号公報)、pcDM8[Nature,329,840(1987)]、pcDNAI/Amp(インビトロジェン社製)、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAGE210等が挙げられる。
【0075】
宿主細胞への組換え体ベクターの導入方法としては、当該細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることが出来、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology,3,133(1990)]、リン酸カルシウム法(日本国特開平2−227075号公報)またはリポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413(1987)、Virology,52,456(1973)]等が挙げられる。
【0076】
形質転換細胞としては、具体的には、例えば、抗GD3ヒト型キメラ抗体を生産する形質転換細胞7−9−51(FERM BP−6691)、抗CCR4キメラ抗体を生産する形質転換細胞KM2760(FERM BP−7054)、抗CCR4ヒト化抗体を生産する形質転換細胞KM8759(FERM BP−8129)及びKM8760(FERM BP−8130)、709LCA−500D(FERM BP−8239)、抗IL−5受容体α鎖キメラ抗体を生産する形質転換細胞KM7399(FERM BP−5649)、抗IL−5受容体α鎖ヒト型CDR移植抗体を生産する形質転換細胞KM8399(FERM BP−5648)及びKM9399(FERM BP−5647)、抗GM2ヒト型CDR移植抗体を生産する形質転換細胞KM8966(FERM BP−5105)、KM8967(FERM BP−5106)、KM8969(FERM BP−5527)、KM8970(FERM BP−5528)、抗CD20抗体を生産する形質転換株Ms704−CD20(FERM BP−10092)及びアンチトロンビンIIIを生産する形質転換細胞Ms705−pKAN−ATIII(FERM BP−8472)等が挙げられる。
【0077】
本発明は、水溶液の最終pH調整よりも先にキレート剤を添加することを特徴とする、培地とキレート剤を含む水溶液の調製方法により調製された水溶液に関する。
【0078】
また、本発明は、水溶液の最終pH調整よりも先にキレート剤を添加することを特徴とする、培地とキレート剤を含む水溶液の調製方法により調製された水溶液を用いた、細胞の培養方法に関する。
【0079】
細胞を培養する方法としては、例えば、バッチ培養、リピートバッチ培養、フェドバッチ培養またはパーフュージョン培養等が挙げられる。細胞を培養する方法は、用いる細胞に適した方法であればいずれでもよいが、フェドバッチ培養が好ましい。
【0080】
具体的には、例えば、通常pH6〜8、30〜40℃等の条件下で、例えば、フェドバッチ培養では3〜20日間、パーフュージョン培養では3〜60日間、培養を行う。また、培養中必要に応じて、ストレプトマイシンまたはペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。なお、溶存酸素濃度制御、pH制御、温度制御または攪拌等は通常の細胞の培養に用いられる方法を用いることが出来る。
【0081】
水溶液の保存方法としては、水溶液が無菌状態を保持する方法であれば特に制限されないが、例えば、ステンレスタンクまたはディスポーサブルバッグ等を用いる方法等が挙げられる。
【0082】
培養方法の培養量としては、細胞培養用プレートを用いた通常0.1mL〜10mLのごく微量な培養量でも、三角フラスコ等を用いた通常10〜1000mLの少量の培養量でも、ジャー等の培養槽等を用いた通常1〜20000Lの商用生産に用いることが出来る大量の培養量でも、いかなる培養量でもよい。
【0083】
また、本発明は、水溶液の最終pH調整よりも先にキレート剤を添加し調製された、培地およびキレート剤を含む水溶液を用いて細胞を培養することを含む、生理活性物質の製造方法に関する。
【0084】
本発明の生理活性物質の製造方法で製造される生理活性物質がペプチドまたは蛋白質である場合、宿主細胞内にペプチドまたは蛋白質を生産させる直接発現方法、宿主細胞外にペプチドまたは蛋白質を分泌生産させる方法(モレキュラー・クローニング第2版)等を用いることができる。
【0085】
ペプチドまたは蛋白質は、ポールソンらの方法[J.Biol.Chem.,264,17619(1989)]、ロウらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]、または日本国特開平5−336963号公報、国際公報第94/23021号等に記載の方法を利用することにより、宿主細胞外へ積極的に分泌させることが出来る。即ち、遺伝子組換えの手法を用いて、所望のペプチドまたは蛋白質のN末端にシグナルペプチドを結合させた形で発現させることにより、所望のペプチドまたは蛋白質を宿主細胞外に積極的に分泌させることが出来る。
【0086】
また、日本国特開平2−227075号公報に記載されている、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増幅系を利用することにより、所望のペプチドまたは蛋白質の生産量を上昇させることも出来る。
【0087】
本発明の方法により製造される所望のペプチドまたは蛋白質は、例えば、通常のペプチドまたは蛋白質の単離精製法等を用いて単離精製することが出来る。
【0088】
所望のペプチドまたは蛋白質が細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液にけん濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザーまたはダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。
【0089】
前記無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常のペプチドまたは蛋白質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−セファロースFF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、プロテインA若しくはプロテインG等を含むレジンを用いたアフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、または等電点電気泳動等の電気泳動法等を、単独あるいは組み合わせて用いることにより、粗精製標品または精製標品を得ることが出来る。
【0090】
所望のペプチドまたは蛋白質が細胞外に分泌された場合には、培養上清に該ペプチドまたは蛋白質を回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、粗精製標品または精製標品を得ることができる。
【0091】
生理活性物質としては、細胞、好ましくは動物細胞が生産出来る物質であればいかなるものでもよいが、哺乳類に属する動物細胞が生産できる物質が好ましい。該物質としては、例えば、アミノ酸、ペプチド、蛋白質若しくはリボザイム等の生体触媒分子、ケラチン、コラーゲン、エラスチン、レシリン若しくはフィブロイン等の構造の形成/保持分子、痘瘡ワクチン、ポリオワクチン、麻疹ワクチン、風疹ワクチン、おたふく風邪ワクチン、狂犬病ワクチン、水痘ワクチン、ウシ流行熱ワクチン、イバラキ病ワクチン若しくはウシ伝染性気管炎ワクチン等のワクチン、またはアデノウィルス若しくはバキュロウィルス等のウイルス等が挙げられる。
【0092】
ペプチドとしては、真核細胞由来のペプチドが好ましく、より好ましくは動物細胞由来のペプチド、例えば、哺乳動物細胞由来のペプチドが挙げられる。また、前記ペプチドとしては、所望のペプチドが含まれており、活性を有していればいかなる形状でもよく、例えば、他のペプチドと融合させた融合ペプチド等の人工的に改変されたペプチドであってもよいし、部分断片からなるペプチドであってもよい。
【0093】
ペプチドとしては、例えば、糖蛋白質の部分断片のうち、該糖蛋白質の活性を維持しているペプチド等が挙げられる。また、糖蛋白質が酵素である場合には、酵素の活性を調節するペプチドまたは酵素の構造を保持するペプチド等も包含される。酵素の活性を調節するペプチドとしては、具体的には、例えば、糖蛋白質のアゴニストまたはアンタゴニストとして機能するペプチド等が挙げられる。
【0094】
アゴニストとしては、糖蛋白質の活性を亢進する活性を有するペプチドであればいかなるものでもよく、具体的には、例えば、ソマトスタチン誘導体、ソマトロビン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、グルカゴン、インスリン、インスリン様成長因子または性腺刺激ホルモン等が挙げられる。
【0095】
アンタゴニストとしては、糖蛋白質の活性を抑制する活性を有するペプチドであればいかなるものでもよく、具体的には、例えば、ペグビソマトン等が挙げられる。
【0096】
蛋白質としては、真核細胞由来の蛋白質が好ましく、動物細胞由来の蛋白質がより好ましく、例えば、哺乳動物細胞由来の蛋白質が挙げられる。また、蛋白質は、所望の蛋白質が含まれており、活性を有していればいかなる構造でもよく、例えば、他の蛋白質と融合させた融合蛋白質等の人工的に改変された蛋白質であってもよいし、部分断片からなる蛋白質であってもよい。
【0097】
蛋白質としては、具体的には、例えば、糖蛋白質または抗体等が挙げられる。
【0098】
糖蛋白質とは、具体的には、例えば、エリスロポイエチン(EPO)[J.Biol.Chem.,252,5558(1977)]、トロンボポイエチン(TPO)[Nature,369 533(1994)]、組織型プラスミノーゲンアクチベータ、プロウロキナーゼ、トロンボモジュリン、アンチトロンビンIII、プロテインC、プロテインS、血液凝固因子VII、血液凝固因子VIII、血液凝固因子IX、血液凝固因子X、血液凝固因子XI、血液凝固因子XII、プロトロンビン複合体、フィブリノゲン、アルブミン、性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、ケラチノサイト増殖因子、アクチビン、骨形成因子、幹細胞因子(SCF)、顆粒球コロニ−刺激因子(G−CSF)[J.Biol.Chem.,258,9017(1983)]マクロファ−ジコロニ−刺激因子(M−CSF)[J.Exp.Med.,173,269(1992)]、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)[J.Biol.Chem.,252,1998(1977)]、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン−2(IL−2)[Science,193,1007(1976)]、インターロイキン6、インターロイキン10、インターロイキン11、インターロイキン−12(IL−12)[J.Leuc.Biol.,55,280(1994)]、可溶性インターロイキン4受容体、腫瘍壊死因子α、DNaseI、ガラクトシダーゼ、αグルコシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘモグロビン若しくはトランスフェリン、またはこれらの誘導体、及びこれらの糖蛋白質の部分断片等が挙げられる。
【0099】
抗体としては、抗原結合性を有する抗体であればいかなるものでもよく、例えば、腫瘍関連抗原を認識する抗体またはその抗体断片、アレルギー若しくは炎症に関連する抗原を認識する抗体またはその抗体断片、循環器疾患に関連する抗原を認識する抗体またはその抗体断片、自己免疫疾患に関連する抗原を認識する抗体またはその抗体断片、あるいはウイルス若しくは細菌感染に関連する抗原を認識する抗体またはその抗体断片等が挙げられる。
【0100】
腫瘍関連抗原としては、例えば、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD9、CD10、CD13、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD28、CD30、CD32、CD33、CD38、CD40、CD40Ligand(CD40L)、CD44、CD45、CD46、CD47、CD52、CD54、CD55、CD56、CD59、CD63、CD64、CD66b、CD69、CD70、CD74、CD80、CD89、CD95、CD98、CD105、CD134、CD137、CD138、CD147、CD158、CD160、CD162、CD164、CD200、CD227、adrenomedullin、angiopoietin related protein 4(ARP4)、aurora、B7−H1、B7−DC、integlin、bone marrow stromal antigen 2(BST2)、CA125、CA19.9、carbonic anhydrase 9(CA9)、cadherin、cc−chemokine receptor(CCR)4、CCR7、carcinoembryonic antigen(CEA)、cysteine−rich fibroblastgrowth factor receptor−1(CFR−1)、c−Met、c−Myc、collagen、CTA、connective tissuegrowth factor(CTGF)、CTLA−4、cytokeratin−18、DF3、E−catherin、epidermalgrowth facter receptor(EGFR)、EGFRvIII、EGFR2(HER2)、EGFR3(HER3)、EGFR4(HER4)、endoglin、epithelial cell adhesionmolecule(EpCAM)、endothelial protein C receptor(EPCR)、ephrin、ephrin receptor(Eph)、EphA2、endotheliase−2(ET2)、FAM3D、fibroblast activatingprotein(FAP)、Fc receptor homolog1(FcRH1)、ferritin、fibroblastgrowth factor8(FGF8)、FGF8 receptor、basic FGF(bFGF)、bFGF receptor、FGF receptor(FGFR)3、FGFR4、FLT1、FLT3、folate receptor、frizzled homologue 10(FZD10)、frizzled receptor 4(FZD−4)、G250、G−CSF receptor、ganglioside(例えば、GD2、GD3、GM2またはGM3等)、globo H、gp75、gp88、GPR−9−6、heparanase I、hepatocytegrowth factor(HGF)、HGF receptor、HLA antigen(例えば、HLA−DR等)、HM1.24、human milk fatglobule(HMFG)、hRS7、heat shock protein 90(hsp90)、idiotype epitope、insulin−likegrowth factor(IGF)、IGF receptor(IGFR)、interleukin(例えば、IL−6またはIL−15等)、interleukin receptor(例えば、IL−6RまたはIL−15R等)、integrin、immune receptor translocation associated−4(IRTA−4)、kallikrein 1、KDR、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KS1/4、lamp−1、lamp−2、laminin−5、Lewis y、sialylLewis x、lymphotoxin−beta receptor(LTBR)、LUNX、melanoma−associated chondroitin sulfate proteoglycan(MCSP)、mesothelin、MICA、Mullerian inhibitingsubstance type II receptor(MISIIR)、mucin、neural cell adhesionmolecule(NCAM)、Necl−5、Notch1、osteopontin、platelet−derivedgrowth factor(PDGF)、PDGF receptor、platelet factor−4(PF−4)、phosphatidylserine、Prostate Specific Antigen(PSA)、prostate stem cell antigen(PSCA)、prostate specific membrane antigen(PSMA)、Parathyroid hormone related protein/peptide(PTHrP)、receptor activator of NF−kappaBLigand(RANKL)、receptor for hyaluronic acid mediated motility(RHAMM)、ROBO1、SART3、semaphorin 4B(SEMA4B)、secretoryLeukocyte protease inhibitor(SLPI)、SM5−1、sphingosine−1−phosphate、tumor−associatedglycoprotein−72(TAG−72)、transferrin receptor(TfR)、TGF−beta、Thy−1、Tie−1、Tie2 receptor、T cell immunoglobulin domain and mucin domain 1(TIM−1)、human tissue factor(hTF)、Tn antigen、tumor necrosis factor(TNF)、Thomsen−Friedenreich antigen(TF antigen)、TNF receptor、tumor necrosis factor−related apoptosis−inducingLigand(TRAIL)、TRAIL receptor(例えば、DR4またはDR5等)、system ASC amino acid transporter 2(ASCT2)、trkC、TROP−2、TWEAK receptor Fn14、type IV collagenase、urokinase receptor、vascular endothelialgrowth factor(VEGF)、VEGF receptor(例えば、VEGFR1、VEGFR2またはVEGFR3等)またはvimentin、VLA−4等が挙げられる。
【0101】
抗体としては、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれでもよい。抗体のクラスとしては、例えば、イムノグロブリンG(IgG)、イムノグロブリンA(IgA)、イムノグロブリンE(IgE)、及びイムノグロブリンM(IgM)が挙げられるが、好ましくはIgGである。更にIgGのサブクラスとしては、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4が挙げられる。
【0102】
また、抗体には、抗体の一部分を含む断片等が包含され、例えば、Fab(Fragment of antigen binding)、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(single chain Fv、scFv)及びジスルフィド安定化抗体(disulfide stabilized Fv、dsFv)、または抗体のFc領域を含む融合蛋白質等が挙げられる。
【0103】
抗体としては、例えば、動物に抗原を免疫し、免疫動物の脾臓細胞より作製したハイブリドーマ細胞が分泌する抗体の他、遺伝子組換え技術により作製された抗体、即ち、抗体遺伝子を挿入した抗体発現ベクターを、宿主細胞へ導入することにより取得された抗体等が挙げられる。具体的には、ハイブリドーマが生産する抗体、ヒト型キメラ化抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体等が挙げられる。
【0104】
ヒト型キメラ抗体とは、ヒト以外の動物の抗体重鎖可変領域(以下、重鎖はH鎖として、可変領域はV領域としてHVまたはVHとも称す)及び抗体軽鎖可変領域(以下、軽鎖はL鎖としてLVまたはVLとも称す)と、ヒト抗体の重鎖定常領域(以下、定常領域はC領域としてCHとも称す)及びヒト抗体の軽鎖定常領域(以下、CLとも称す)とからなる抗体を意味する。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビット等、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなる動物も用いることが出来る。
【0105】
ヒト型キメラ抗体は、モノクロ−ナル抗体を生産するハイブリドーマよりVH及びVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体CH及びヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する宿主細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、宿主細胞へ導入することにより発現させ、製造することが出来る。
【0106】
ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと称す)に属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好ましく、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3またはhIgG4といったサブクラスのいずれも用いることが出来る。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいかなるものでもよく、κクラスまたはλクラスのものを用いることが出来る。
【0107】
ヒト化抗体としては、例えば、ヒト以外の動物の抗体のVH及びVLのヒト型相同性決定領域(complementarity determiningregion、以下、CDRと称す)のアミノ酸配列をヒト抗体のVH及びVLの適切な位置に移植して作製されたCDR移植抗体等が挙げられる。
【0108】
CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVH及びVLのCDR配列を任意のヒト抗体のVH及びVLのCDR配列に移植したV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCH及びヒト抗体のCLをコードする遺伝子を有する宿主細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してCDR移植抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入することによりCDR移植抗体を発現させ、製造することが出来る。
【0109】
CDR移植抗体のCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好ましく、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3またはhIgG4といったサブクラスのいずれも用いることが出来る。また、CDR移植抗体のCLとしては、hIgに属すればいかなるものでもよく、κクラスまたはλクラスのものを用いることが出来る。
【0110】
ヒト抗体とは、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルス等を感染させ不死化、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を培養でき、培養物より該抗体を精製することが出来る。
【0111】
ヒト抗体はヒト抗体ファージライブラリーから調製することができる。ヒト抗体ファージライブラリーとは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFabまたはscFv等の抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、固相化した抗原に対する結合活性を指標にして、抗原結合活性を有する抗体断片を発現しているファージを回収することが出来る。該抗体断片より、2本の完全なH鎖及び二本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へ変換することが出来る。
【0112】
ヒト抗体は、ヒト抗体産生ハイブリドーマより、VL及びVHをコードするcDNAを取得し、適宜上述の方法等により野生型(以下、WTと記載する)の1以上のアミノ酸残基をCys残基に置換させたヒト抗体のCL及びCHをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入し、動物細胞へ導入することにより発現させて製造することも出来る。
【0113】
ヒト抗体産生ハイブリドーマは、ヒト抗体産生トランスジェニック動物から、通常のヒト以外の哺乳動物で行われているハイブリドーマ作製方法により取得出来る。ヒト抗体産生トランスジェニック動物とは、ヒト抗体遺伝子が細胞内に組込まれた動物をいう。具体的には、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞をマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニックマウスを作製することが出来る[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,722(2000)]。
【0114】
あるいは、ヒト抗体は、ヒト抗体産生ハイブリドーマより、VL及びVHをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCL及びCHをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入し、さらに適宜上述の方法等によりWTの1以上のアミノ酸残基をCys残基に置換してヒト抗体発現ベクターを構築し、該ヒト抗体発現ベクターを動物細胞へ導入し、発現させて製造することも出来る。
【0115】
ヒト抗体に用いるWTのCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好ましく、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることが出来る。また、ヒト抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスまたはλクラスのものを用いることが出来る。
【0116】
本発明の方法により製造される抗体としては、具体的には以下の抗体が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0117】
腫瘍関連抗原を認識する抗体としては、例えば、抗GD2抗体[Anticancer Res.,13,331(1993)]、抗GD3抗体[Cancer Immunol.Immunother.,36,260(1993)]、抗GM2抗体[Cancer Res.,54,1511(1994)]、抗HER2抗体[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,4285(1992)、US5725856]、抗CD52抗体[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,4285(1992)]、抗MAGE抗体[British J.Cancer,83,493(2000)]、抗HM1.24抗体[Molecular Immunol.,36,387(1999)]、抗副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)抗体[Cancer,88,2909(2000)]、抗bFGF抗体、抗FGF−8抗体[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,9911(1989)]、抗bFGFR抗体、抗FGF−8R抗体[J.Biol.Chem.,265,16455(1990)]、抗IGF抗体[J.Neurosci.Res.,40,647(1995)]、抗IGF−IR抗体[J.Neurosci.Res.,40,647(1995)]、抗PSMA抗体[J.Urology,160,2396(1998)]、抗VEGF抗体[Cancer Res.,57,4593(1997)]、抗VEGFR抗体[Oncogene,19,2138(2000)、国際公開第96/30046号]、抗CD20抗体[Curr.Opin.Oncol.,10,548(1998)、米国特許第5736137号明細書]、抗CD10抗体、抗EGFR抗体(国際公開第96/402010号)、抗Apo−2R抗体(国際公開第98/51793号)、抗ASCT2抗体(国際公開第2010/008075号)、抗CEA抗体[Cancer Res.,55(23 suppl):5935s−5945s,(1995)]、抗CD38抗体、抗CD33抗体、抗CD22抗体、抗EpCAM抗体または抗A33抗体等が挙げられる。
【0118】
アレルギーまたは炎症に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗インターロイキン6抗体[Immunol.Rev.,127,5(1992)]、抗インターロイキン6受容体抗体[Molecular Immunol.,31,371(1994)]、抗インターロイキン5抗体[Immunol.Rev.,127,5(1992)]、抗インターロイキン5受容体抗体、抗インターロイキン4抗体[Cytokine,3,562(1991)]、抗インターロイキン4受容体抗体[J.Immunol.Methods,217,41(1998)]、抗腫瘍壊死因子抗体[Hybridoma,13,183(1994)]、抗腫瘍壊死因子受容体抗体[Molecular Pharmacol.,58,237(2000)]、抗CCR4抗体[Nature,400,776,(1999)]、抗ケモカイン抗体(Peri et al.,J.Immunol.Meth.,174,249,1994)または抗ケモカイン受容体抗体[J.Exp.Med.,186,1373(1997)]等が挙げられる。
【0119】
循環器疾患に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗GPIIb/IIIa抗体[J.Immunol.,152,2968(1994)]、抗血小板由来増殖因子抗体[Science,253,1129(1991)]、抗血小板由来増殖因子受容体抗体[J.Biol.Chem.,272,17400(1997)]、抗血液凝固因子抗体[Circulation,101,1158(2000)]、抗IgE抗体、抗αVβ3抗体またはα4β7抗体等が挙げられる。
【0120】
ウイルスまたは細菌感染に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗gp120抗体[Structure,8,385(2000)]、抗CD4抗体[J.Rheumatology,25,2065(1998)]、抗CCR5抗体または抗ベロ毒素抗体[J.Clin.Microbiol.,37,396(1999)]等が挙げられる。
【0121】
また、本発明は、水溶液の最終pH調整よりも先にキレート剤を添加することを特徴とする培地およびキレート剤を含む水溶液の調製方法により調製された水溶液を用いて細胞の培養をすることにより製造された、生理活性物質に関する。
【0122】
また、本発明は、培地およびキレート剤を含む水溶液を膜ろ過する方法であって、該水溶液の最終pH調整よりも先にキレート剤を添加して調製した水溶液を用いる該膜ろ過する方法に関する。
【0123】
膜ろ過する方法としては、処理水溶液を圧力により多孔質膜を透過させ、溶液中の成分、粒子、夾雑物等を除去する方法であれば、特に限定されないが、精密ろ過法、限外ろ過法、透析法、電気透析法または逆浸透法が好ましく、精密ろ過法、限外ろ過法または透析法がより好ましく、精密ろ過法が特に好ましい。
【0124】
膜ろ過に用いるろ過膜としては、特に限定されないが、精密ろ過膜、限外ろ過膜、透析膜、電気透析膜または逆浸透膜が好ましく、精密ろ過膜、限外ろ過膜または透析膜がより好ましく、精密ろ過膜が特に好ましい。
【0125】
ろ過膜の材質としては、特に限定されないが、例えば、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、セラミックス、ポリビニルアルコール、ポリビニルデンジフルオライド、セルロースの酢酸−硝酸混合エステル、ポリテトラフルオロエチレン、アルミナ、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体若しくはテフロン(登録商標)等、またはそれらの誘導体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテルスルフォンまたはポリフッ化ビニリデン等が好ましい。
【0126】
ポリエーテルスルフォンまたは、その誘導体を用いたろ過膜としては、具体的には、例えば、Millipore Express(登録商標)PLUS Membrane Filters(孔径:0.22、または0.45μm)(Millipore社製)、Millipore Express
(登録商標) SHC カートリッジ フィルター(Millipore社製)、Millipore Express
(登録商標) SHR カートリッジ フィルター(Millipore社製)、スーポア
(登録商標) EBV(Pall社製)、スーポア
(登録商標) EKV(Pall社製、カタログ番号:AB3EKV7PH4)、スーポア
(登録商標)ライフ200(Pall社製)、ザルトポア(登録商標)2(膜構造:2層膜、孔径:0.2+0.1、0.45+0.2、または0.8+0.45μm)(sartorius stedim biotech社製)、ザルトポア(登録商標)2 XLG(膜構造:2層膜、孔径:0.8+0.2μm)(sartorius stedim biotech社製)、ザルトポア(登録商標)2 XLI(膜構造:2層膜、孔径:0.35+0.2μm)(sartorius stedim biotech社製)、ザルトポア
(登録商標)2 ハイフロー(sartorius stedim biotech社製)またはPESメンブレンカートリッジフィルター TCS(孔径:0.20、または0.45μm)(ADVANTEC社製)等が挙げられる。
【0127】
または、ポリフッ化ビニリデンまたは、その誘導体を用いたろ過膜としては、具体的には、例えば、Durap
ore(登録商標)Membrane Filters(孔径:0.10、0.22、0.45、0.65、または5.0μm)(Millipore社製)、Durapore
(登録商標) II Hydrophilic Filter CartridgegV(Millipore社製)、Durapore
(登録商標) II Hydrophilic Filter Cartridge VV(Millipore社製)、フロロダイン(登録商標)II−DFLP(Pall社製)、フロロダイン
(登録商標)II−DBLP(Pall社製)、フロロダイン
(登録商標)II−DJLP(Pall社製)、ウルチポア
(登録商標)VF−DV20(Pall社製)またはウルチポア
(登録商標)VF−DV50(Pall社製)等が挙げられる。
【0128】
また、ポリエーテルスルフォンまたはその誘導体とポリフッ化ビニリデンまたはその誘導体を組み合わせたろ過膜としては、具体的には、例えば、Fluorodyne(登録商標)EXgrade EDF Membrane Filter Cartridge(Pall社製、カタログ番号:AB3UEDF7PH4)等が挙げられる。
【0129】
また、ポリエーテルスルフォンまたは、ポリフッ化ビニリデン以外の膜材質を用いたろ過膜としては、具体的には、例えば、Omnipore(登録商標)Membrane Filters(孔径:0.1、0.2、0.45、1.0、5.0、または10μm)(Millipore社製)、MF−Millipore(登録商標)Membrane Filters(孔径:0.025、0.05、0.1、0.22、0.3、0.45、0.65、0.8、1.2、3、5、または8μm)(Millipore社製)、Nylon Membrane Filters(孔径:0.20、または5.0μm)(Millipore社製)、ウルチポア
(登録商標)N66(孔径:0.2、または0.45μm)(Pall社製)、ポジダイン(登録商標)(孔径:0.10、0.20、0.3、または0.45μm)(Pall社製)、バラファイン
(登録商標) VFSP(孔径:0.2、または0.45μm)(Pall社製)、バラファイン
(登録商標) VFSE(孔径:0.02、0.1、または0.2μm)(Pall社製)、バラファイン
(登録商標) VFSG(孔径:0.02、0.1、または0.2μm)(Pall社製)、ザルトロン(sartorius stedim biotech社製)、アセテートメンブレンカートリッジフィルター TCR(孔径:0.20、0.45、または8.0μm)(ADVANTEC社製)、ユミクロン
(登録商標)カートリッジフィルター(孔径:0.2、0.4、0.6、0.9、または2.5μm)(ユアサメンブレンシステム社製)等が挙げられる。
【0130】
ろ過膜の孔径としては、特に限定されないが、1nmから100μmが好ましく、5nmから10μmがより好ましく、より好ましくは10nmから1μmが更に好ましく、0.1μmから0.5μmが特に好ましい。膜孔径の具体例としては、上記に記載したろ過膜具体例の孔径が挙げられる。
【0131】
ろ過膜の構造としては、例えば、マイレクス(Millex)
(登録商標)フィルターユニット(Millipore社製、カタログ番号:SLGV033RS)の様に、一枚からなるろ過膜構造を取ってもよく、また、0.5/0.2 μm Express
(登録商標) SHC Disk W/Typar(Millipore社製、カタログ番号:HGEP02550)の様に1枚以上のプレフィルターが付属されることにより、2層以上の構造となっていてもよい。
【0132】
水溶液のろ過性評価方法としては、特に限定されないが、例えば、Vmax試験等が挙げられる。Vmax(L/m
2)とは、ろ過開始から無限時間後に得られる単位膜面積あたりの最大処理量であり、BioPharm,46,September(1995)記載の方法により測定することが出来る。
【0133】
また、本発明は、キレート剤を水溶液に添加してキレート剤を含む水溶液を調製し、該水溶液を膜ろ過する、水溶液の膜ろ過性を向上する方法に関する。さらに本発明はキレート剤および培地を水溶液に添加してキレート剤および培地を含む水溶液を調製し、該水溶液を膜ろ過する、水溶液の膜ろ過性を向上する方法も含む。
【0134】
また、本発明は、水溶液の最終pH調整よりも先にキレート剤を水溶液に添加することによって培地および該キレート剤を含む水溶液を調製し、該水溶液を膜ろ過した後、得られた水溶液を用いて細胞を培養することによって、生理活性物質を製造する方法に関する。
【実施例】
【0135】
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0136】
[実施例1]キレート剤によるろ過性向上効果
粉末培地を含む水溶液調製時に各種キレート剤を添加したときの該水溶液のろ過性への影響を検討し、Vmax(単位膜面積あたりの最大処理量)の値が向上することを明らかにした。
【0137】
水溶液の調製は以下の手順により行った。まず900mLの純水(以下、PWと称す)に、キレート剤としてクエン酸3ナトリウム2水和物(小堺製薬社製)、L−リンゴ酸(Wako社製、カタログ番号:138−07512)、またはエチレンジアミン四酢酸 鉄(III)ナトリウム塩(以下、EDTA iron(III)sodium saltと称す)(Sigma−Aldrich社製、カタログ番号:EDFS−100G)をそれぞれ2.0g添加し攪拌した。キレート剤が完全に溶解した後のpHは、クエン酸3ナトリウム2水和物添加液で8.41、L−リンゴ酸添加液で2.57、EDTA iron(III)sodium salt添加液で5.11であった。
【0138】
次に、6.7gのSOY HYDROLYSATE UF(SAFC Bioscience社製、カタログ番号:91052−1K3986)を添加し、約15分間攪拌した。さらにアミノ酸、金属塩、ビタミン等を含む改良粉末培地EX−CELL 302(SAFC Bioscience社製)22.6gとPBS(Invitrogen社製、カタログ番号:14190−250)を用いて溶解した1mmol/LのMethotrexate溶液(Sigma−Aldrich社製、カタログ番号:M8407−500MG)0.5mLを加えて、約30分間攪拌した。
【0139】
さらに、最終pH調整として1.6gの炭酸水素ナトリウム(関東化学社製、カタログ番号:37116−00)を加えて、約5分間攪拌した後、PWを加え1Lとし、さらに約10分間攪拌した。
【0140】
水溶液調製後の上記記載の添加した各キレート剤の濃度は、クエン酸3ナトリウム2水和物が6.8mmol/L、L−リンゴ酸が15mmol/L、EDTA iron(III)sodium saltが5.4mmol/Lとなる。
【0141】
次に、調製した水溶液のVmax試験を以下の手順で行った。加圧タンク(Millipore社製)に試験水溶液を1L入れた。試験用フィルターには、孔径0.22μmのMillex(登録商標)GV Filter Unit(Millipore社製、カタログ番号:SLGV033RS)を用いた。フィルターをタンクへ接続し、圧縮空気により100kPaの圧力をかけた。
【0142】
試験開始前にタンクのバルブを若干開け、水溶液を用いてフィルターを湿潤した。フィルターを湿潤した後、バルブを全開して試験を開始した。バルブ全開時の時間を0とし、ろ過処理量5g増加するのにかかる経過時間を測定した。水溶液の密度を1g/mLとして、測定重量よりろ過量(V)を算出した。計測は3分以上行った。計測値を横軸に時間(t)、縦軸にt/Vにとってグラフを作成し、得られた直線の傾きの逆数からVmaxを算出した。
【0143】
結果を
図1に示す。Vmax(L/m
2)の値は、キレート剤を添加しなかった水溶液では452であったのに対し、キレート剤として、クエン酸3ナトリウム2水和物を添加した水溶液では1931、L−リンゴ酸を添加した水溶液では2483、EDTA iron(III)sodium saltを添加した水溶液では1834と増大した。
【0144】
以上から、水溶液の調製時にキレート剤を添加することで水溶液のVmaxの値が向上することを明らかにした。
【0145】
[実施例2]クエン酸3ナトリウム2水和物の添加時期とろ過性向上効果
粉末培地を含む水溶液調製時における、クエン酸3ナトリウム2水和物の添加時期とろ過性への影響を検討し、クエン酸3ナトリウム2水和物をアミノ酸、金属塩、ビタミン等を含む粉末培地と同時または前に添加することにより、Vmax(単位膜面積あたりの最大処理量)が大幅に増加することを明らかにした。さらに、クエン酸3ナトリウム2水和物を最終pH調整工程より前に添加することにより、Vmax(単位膜面積あたりの最大処理量)が増加することを明らかにした。
【0146】
水溶液の調製は、クエン酸3ナトリウム2水和物の添加を除き、以下の手順により行った。まず900mLの純水(以下、PWと称す)に、6.7gのSOY HYDROLYSATE UF(SAFC Bioscience社製、カタログ番号:91052−5K3986)を添加し、約15分間攪拌した。
【0147】
さらにアミノ酸、金属塩、ビタミン等を含む改良EX−CELL 302(SAFC Bioscience社製)22.6gとPBS(Invitrogen社製、カタログ番号:14190−250)を用いて溶解した1mmol/LのMethotrexate溶液(Sigma−Aldrich社製、カタログ番号:M8407−500MG)0.5mLを加えて、約30分間攪拌した。
【0148】
さらに、最終pH調整として1.6gの炭酸水素ナトリウム(関東化学社製、カタログ番号:37116−00)を加えて、約5分間攪拌した後、PWを加え1Lとし、さらに約10分間攪拌した。
【0149】
上記の水溶液調製手順のうち以下条件A〜Hの時点でクエン酸3ナトリウム2水和物(小堺製薬社製)を添加し、水溶液を調製した。上記記載の添加したクエン酸3ナトリウム2水和物の水溶液調製後の濃度は0.1g/L(0.34mmol/L)となる。
【0150】
条件A:添加なし
条件B:SOY HYDROLYSATE UF添加の10分前
条件C:SOY HYDROLYSATE UF添加の1分前
条件D:SOY HYDROLYSATE UF添加と同時
条件E:改良EX−CELL 302添加の10分前
条件F:改良EX−CELL 302添加と同時
条件G:炭酸水素ナトリウム添加の15分前
条件H:PWで1Lに調製した直後
【0151】
次に、調製した水溶液のVmax試験を以下の手順で行った。加圧タンク(Millipore社製)に試験水溶液を1L入れた。試験用フィルターには、孔径0.22μmのMillex(登録商標)GV Filter Unit(Millipore社製、カタログ番号:SLGV033RS)を用いた。フィルターをタンクへ接続し、圧縮空気により100kPaの圧力をかけた。試験開始前にタンクのバルブを若干開け、水溶液を用いてフィルターを湿潤した。フィルターを湿潤した後、バルブを全開して試験を開始した。
【0152】
バルブ全開時の時間を0とし、ろ過処理量5g増加するのにかかる経過時間を測定した。水溶液の密度を1g/mLとして、測定重量よりろ過量(V)を算出した。計測は3分以上行った。計測値を横軸に時間(t)、縦軸にt/Vにとってグラフを作成し、得られた直線の傾きの逆数からVmaxを算出した。
【0153】
結果を
図2に示す。Vmax(L/m
2)の値は、条件Aでは1163であったのに対し、条件Bでは3199、条件Cでは3652、条件Dでは3783、条件Eでは3060、条件Fでは3581となり、改良EX−CELL 302添加と同時または前にクエン酸3ナトリウム2水和物を添加することにより水溶液のろ過性が大幅に向上した。
【0154】
さらに、条件GでのVmax(L/m
2)の値は2502となり、pH調整工程である炭酸水素ナトリウムの添加前に、クエン酸3ナトリウム2水和物を添加することにより水溶液のろ過性が向上した。一方、pH調整後にクエン酸3ナトリウム2水和物を添加する条件Hでは1441となり、水溶液のろ過性の向上はAと同等あるいは微増に留まった。
【0155】
以上から、クエン酸3ナトリウム2水和物を最終pH調整工程より前に添加することにより、水溶液のVmax(単位膜面積あたりの最大処理量)が増加することを明らかにした。さらに、特に、クエン酸3ナトリウム2水和物をアミノ酸、金属塩またはビタミン等を含む粉末培地と同時または前に水溶液に添加することにより、水溶液のVmaxが増加することを明らかにした。
【0156】
[実施例3]クエン酸3ナトリウム2水和物添加濃度と水溶液ろ過性の向上の相関
水溶液調製時に添加するクエン酸3ナトリウム2水和物の濃度とろ過性への相関を検討し、濃度依存的にVmax(単位膜面積あたりの最大処理量)が向上することを明らかにした。
【0157】
水溶液の調製は以下の手順により行った。まず900mLの純水(以下、PWと称す)に、クエン酸3ナトリウム2水和物(小堺製薬社製)を0g(添加なし)、0.1gまたは1.0g添加し攪拌した。クエン酸3ナトリウム2水和物が完全に溶解した後、6.7gのSOY HYDROLYSATE UF(SAFC Bioscience社製、カタログ番号:91052−1K3986)を添加し、約15分間攪拌した。
【0158】
さらに、アミノ酸、金属塩、ビタミン等を含む改良EX−CELL 302(SAFC Bioscience社製)22.6gとPBS(Invitrogen社製、カタログ番号:14190−250)を用いて溶解した1mmol/LのMethotrexate溶液(Sigma−Aldrich社製、カタログ番号:M8407−500MG)0.5mLを加えて、約30分間攪拌した。
【0159】
さらに、最終pH調整として1.6gの炭酸水素ナトリウム(関東化学社製、カタログ番号:37116−00)を加えて、約5分間攪拌した後、PWを加え1Lとし、さらに約10分間攪拌した。水溶液調製後の上記記載の添加したクエン酸3ナトリウム2水和物の濃度は、0g/L(添加せず)、0.1g/L(0.34mmol/L)、または1.0g/L(3.4mmol/L)となる。
【0160】
次に、調製した水溶液のVmax試験を以下の手順で行った。加圧タンク(Millipore社製)に試験水溶液を1L入れた。試験用フィルターには、孔径0.22μmのMillex(登録商標)GV Filter Unit(Millipore社製、カタログ番号:SLGV033RS)を用いた。フィルターをタンクへ接続し、圧縮空気により100kPaの圧力をかけた。
【0161】
試験開始前にタンクのバルブを若干開け、水溶液を用いてフィルターを湿潤した。フィルターを湿潤した後、バルブを全開して試験を開始した。バルブ全開時の時間を0とし、ろ過処理量5g増加するのにかかる経過時間を測定した。水溶液の密度を1g/mLとして、測定重量よりろ過量(V)を算出した。計測は3分以上行った。計測値を横軸に時間(t)、縦軸に(t/V)をとってグラフを作成し、得られた直線の傾きの逆数からVmaxを算出した。
【0162】
結果を
図3に示す。Vmax(L/m
2)の値は、キレート剤を添加しなかった水溶液は452であったのに対し、0.1g/Lのクエン酸3ナトリウム2水和物を添加した水溶液は1706、1.0g/Lのクエン酸3ナトリウム2水和物を添加した水溶液は2588と増大した。
【0163】
以上から、水溶液の最終pH調整前にキレート剤としてクエン酸3ナトリウム2水和物を添加することでクエン酸3ナトリウム2水和物の濃度依存的に水溶液のVmaxの値が向上することを明らかにした。
【0164】
[実施例4]キレート剤によるろ過性向上効果の膜材質・膜構造非依存性
粉末培地を含む水溶液調製時におけるキレート剤による水溶液ろ過性向上効果を、複数のろ過膜を用いて検討した。その結果、孔径0.22μmのポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと称す)膜、または、プレフィルターとして孔径0.5μmのポリエーテルスルフォン(以下、PESと称す)膜を組み合わせた孔径0.2μmのPES膜(以下、孔径0.5/0.2μmのPES膜と称す)において、Vmax(単位膜面積あたりの最大処理量)の値が向上することを明らかにした。
【0165】
水溶液の調製は以下の手順により行った。まず900mLの純水(以下、PWと称す)に、クエン酸3ナトリウム2水和物(小堺製薬社製)を0g(添加なし)または、0.1g添加し攪拌した。クエン酸3ナトリウム2水和物が完全に溶解した後、6.7gのSOY HYDROLYSATE UF(SAFC Bioscience社製、カタログ番号:91052−1K3986、または91052−5K3986)を添加し、約15分間攪拌した。
【0166】
さらにアミノ酸、金属塩、ビタミン等を含む改良粉末培地EX−CELL 302(SAFC Bioscience社製)22.6gとPBS(Invitrogen社製、カタログ番号:14190−250)を用いて溶解した1mmol/LのMethotrexate溶液(Sigma−Aldrich社製、カタログ番号:M8407−500MG)0.5mLを加えて、約30分間攪拌した。さらに、最終pH調整として1.6gの炭酸水素ナトリウム(関東化学社製、カタログ番号:37116−00)を加えて、約5分間攪拌した後、PWを加え1Lとし、さらに約10分間攪拌した。水溶液調製後の上記記載の添加したクエン酸3ナトリウム2水和物の濃度は、0g/L(添加なし)または、0.1g/L(0.34mmol/L)となる。
【0167】
次に、試験用フィルターとして、孔径0.22μmのPVDF膜であるMillex(登録商標)GV Filter Unit(Millipore社製、カタログ番号:SLGV033RS)を用い、調製した水溶液のVmax試験を以下の手順で行った。加圧タンク(Millipore社製)に試験水溶液を1L入れた。フィルターをタンクへ接続し、圧縮空気により100kPaの圧力をかけた。
【0168】
試験開始前にタンクのバルブを若干開け、水溶液を用いてフィルターを湿潤した。フィルターを湿潤した後、バルブを全開して試験を開始した。バルブ全開時の時間を0とし、ろ過処理量5g増加するのにかかる経過時間を測定した。水溶液の密度を1g/mLとして、測定重量よりろ過量(V)を算出した。計測は3分以上行った。計測値を横軸に時間(t)、縦軸にt/Vにとってグラフを作成し、得られた直線の傾きの逆数からVmaxを算出した。
【0169】
さらに、試験用フィルターとして、孔径0.5/0.2μmのPES膜である0.5/0.2μm Express SHC Disk W/Typar(Millipore社製、カタログ番号:HGEP02550)を用い、調製した水溶液のVmax試験を以下の手順で行った。加圧タンク(Millipore社製)に試験水溶液を1L入れた。
【0170】
PWにより充分に湿潤させた試験用フィルターをフォルダー(Millipore社製)に装着し、フォルダーを加圧タンクに接続した。フォルダー付属のバルブを開け、エアーベントから十分にエアーを押し出した。加圧タンクに圧縮空気により120kPaの圧力をかけた後、バルブを全開して試験を開始した。
【0171】
バルブ全開時の時間を0とし、ろ過処理量5g増加するのにかかる経過時間を測定した。水溶液の密度を1g/mLとして、測定重量よりろ過量(V)を算出した。計測は3分以上行った。計測値を横軸に時間(t)、縦軸にt/Vにとってグラフを作成し、得られた直線の傾きの逆数からVmaxを算出した。
【0172】
結果を
図4に示す。孔径0.22μmのPVDF膜を用いたろ過において、Vmax(L/m
2)の値は、クエン酸3ナトリウム2水和物を添加しなかった水溶液では957であったのに対し、クエン酸3ナトリウム2水和物を添加した水溶液では3199と増大した。さらに、孔径0.5/0.2μmのPES膜を用いたろ過において、Vmax(L/m
2)の値は、クエン酸3ナトリウム2水和物を添加しなかった水溶液では1511であったのに対し、クエン酸3ナトリウム2水和物を添加した水溶液では3922と増大した。
【0173】
以上から、使用するろ過膜の材質がPVDFまたはPESの場合であっても、水溶液の最終pH調整前にキレート剤を水溶液に添加することで、水溶液のろ過性が向上することを明らかにした。さらに、使用するろ過膜の構造が単一の層であっても、プレフィルターと組み合わせた複数の層であっても、水溶液の最終pH調整前にキレート剤を添加することで、その水溶液のろ過性が向上することを明らかにした。
【0174】
[実施例5]最終pH調整よりも先にキレート剤を添加し調製された水溶液を用いた動物細胞の培養と生理活性物質の生産
最終pH調整よりも先にクエン酸3ナトリウム2水和物を添加し調製された水溶液を用いて、動物細胞の培養を行った。その結果、クエン酸3ナトリウム2水和物を添加した水溶液においても、添加しなかった水溶液と同等以上の細胞増殖、力価が得られることを明らかにした。
【0175】
生産水溶液1L当りの調製手順を以下に示す。
【0176】
最初に約900mLの純水(以下、PWと称す)に、クエン酸3ナトリウム2水和物(小堺製薬社製)を0g(添加せず)、または0.1g添加し攪拌した。クエン酸3ナトリウム2水和物が完全に溶解した後、6.7gのSOY HYDROLYSATE UF(SAFC Bioscience社製、カタログ番号:91052−1K3986、または91052−5K3986)を添加し、約15分間攪拌した。
【0177】
次にアミノ酸、金属塩、ビタミン等を含む改良粉末培地EX−CELL 302(SAFC Bioscience社製)22.6gとPBS(Invitrogen社製、カタログ番号:14190−250)を用いて溶解した1mmol/LのMethotrexate溶液(Sigma−Aldrich社製、カタログ番号:M8407−500MG)0.5mLを加えて、約30分間攪拌した。
【0178】
さらに、最終pH調整として1.6gの炭酸水素ナトリウム(関東化学社製、カタログ番号:37116−00)を加えて、約5分間攪拌した後、PWを加え1Lとし、その後、約10分間攪拌し、生産水溶液とした。水溶液調製後の上記記載の添加したクエン酸3ナトリウム2水和物の濃度は、0g/L(添加なし)、または0.1g/L(0.34mmol/L)なる。
【0179】
上記手順で調製された生産水溶液を用いて、モノクローナル抗体を発現するCHO細胞を3Lリアクターにて、14日間フェドバッチ培養した。培養初期の播種密度は、約3.0×106cells/mLであり、培養期間中、培養用水溶液の温度は35℃、pHは7.10に制御した。
【0180】
フィード用水溶液には、アミノ酸[L−アラニン、L−アルギニン一塩酸、L−アスパラギン一水和物、L−シスチン二塩酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン一塩酸二水和物、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン一塩酸、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン二ナトリウム二水和物、L−バリン(以上、シグマ−アルドリッチ社製)、L−アスパラギン酸、グリシン(以上、和光純薬工業社製)、L−アラニル−L−グルタミン(協和発酵バイオ製)、及びL−メチオニン(純正化学社製)]、ビタミン[D−ビオチン、D−パントテン酸カルシウム、塩化コリン、葉酸、myo−イノシトール、ナイアシンアミド、ピリドキサール塩酸、リボフラビン、チアミン塩酸、シアノコバラミン(以上、シグマ−アルドリッチ社製)]、リコンビナントヒトインスリン(ジェーアールエイチバイオサイエンス社製)、エタノールアミン(シグマ−アルドリッチ社製)、SOY HYDROLYSATE UF(SAFC Bioscience社製)、コレステロール脂質濃縮溶液(250×水溶液、インビトロジェン社製)、エチレンジアミン四酢酸第二鉄ナトリウム塩(シグマ−アルドリッチ社製)及びグルコース(和光純薬工業社製)からなる水溶液を用いた。上記フィード用水溶液を培養3、6、9及び12日目にそれぞれ初発生産水溶液量の約6.3%添加した。
【0181】
その結果、クエン酸3ナトリウム2水和物を添加しなかった水溶液を用いた培養においては、最高到達生細胞密度が5.4×106cells/mL、培養終了時のモノクローナル抗体の力価が1.8g/Lであったのに対して、0.1g/Lのクエン酸3ナトリウム2水和物を添加した水溶液を用いた培養においては、最高到達生細胞密度が5.8×106cells/mL、培養終了時のモノクローナル抗体の力価が1.9g/Lであった。
【0182】
以上から、最終pH調整よりも先にクエン酸3ナトリウム2水和物を添加し調製された水溶液においても、クエン酸3ナトリウム2水和物を添加しなかった水溶液と同等以上の細胞増殖、力価が得られることを明らかにした。
【0183】
[実施例6]N−アセチルノイラミン酸二水和物添加によるろ過性向上効果
粉末培地を含む水溶液調製時にキレート剤として、N−アセチルノイラミン酸二水和物を添加したときの該水溶液のろ過性への影響を検討し、水溶液のVmax(単位膜面積あたりの最大処理量)値が向上することを明らかにした。
【0184】
水溶液の調製は以下の手順により行った。まず、160mLの純水(以下PWと略す)に、水酸化ナトリウム(純正化学社製、カタログ番号:39155−0301)4.0g、L−Tyrosine disodium salt(SIGMA社製、カタログ番号:T1145−100G)4.5g、L−(−)−Cystine Dihydrochlorid(和光純薬社製、カタログ番号:034−05322)6.16gを添加し、約30分間攪拌後、PWを加え200mLとした水溶液(以下、Cys−Tyr溶液と略す)を調製した。
【0185】
つぎに、800mLのPWに、アミノ酸、金属塩、ビタミン等を含む粉末培地 Efficient Feed A(Life Technologies社製、カタログ番号:A12870SB)32.6g、液体添加物 polyamine solution(Life Technologies社製、カタログ番号:A12872SA)0.5mL、アミノ酸、金属塩、ビタミン等を含む粉末培地Efficient Feed B(Life Technologies社製、カタログ番号:A11498SA)27.1g、L−(+)−グルタミン(和光純薬社製、カタログ番号:078−00525)5.0g、ペプトン SE50MAF−UF(和光純薬社製、カタログ番号:P42474)30.0g、D(+)−グルコース(和光純薬社製、カタログ番号:041−00595)70.0gを添加し、キレート剤として、N−アセチルノイラミン酸二水和物(協和発酵バイオ社製)30.9gを添加し、約30分間攪拌した。
【0186】
攪拌後のpHは、4.05であった。その後、Cys−Tyr溶液を50mL添加し、約20分間攪拌した。Cys−Tyr溶液添加後のpHは、4.37であった。その後、最終pH調整として5mol/l 水酸化ナトリウム溶液(和光純薬社製、カタログ番号:196−05375)17mLを加え約20分間攪拌した後、PWを加え1Lとし、溶液Aとした。溶液Aの最終pHは8.1であった。水溶液調製後の上記記載の添加したN−アセチルノイラミン酸二水和物の濃度は、30.9g/L(89mmol/L)となる。
【0187】
一方、800mLのPWに、アミノ酸、金属塩、ビタミン等を含む粉末培地 Efficient Feed A(Life Technologies社製、カタログ番号:A12870SB)32.6g、液体添加物 polyamine solution(Life Technologies社製、カタログ番号:A12872SA)0.5mL、アミノ酸、金属塩、ビタミン等を含む粉末培地Efficient Feed B(Life Technologies社製、カタログ番号:A11498SA)27.1g、L−(+)−グルタミン(和光純薬社製、カタログ番号:078−00525)5.0g、ペプトン SE50MAF−UF(和光純薬社製、カタログ番号:P42474)30.0g、D(+)−グルコース(和光純薬社製、カタログ番号:041−00595)70.0gを添加し、キレート剤ではない酸として 5mol/l 塩酸(和光純薬社製、カタログ番号:081−05435)28mLを添加し、約30分間攪拌した。攪拌後のpHは、3.09であった。その後、Cys−Tyr溶液を50mL添加し、約20分間攪拌した。Cys−Tyr溶液添加後のpHは、3.39であった。
【0188】
その後、最終pH調整として5mol/l 水酸化ナトリウム溶液(和光純薬社製、カタログ番号:196−05375)28mLを加え約20分間攪拌した後、PWを加え1Lとし、溶液Bとした。溶液Bの最終的なpHは8.1であった。
【0189】
次に、調製した水溶液のVmax試験を以下の手順で行った。加圧タンク(Millipore社製)に試験水溶液を1L入れた。試験用フィルターには、孔径0.22μmのMillex(登録商標)GV Filter Unit(Millipore社製、カタログ番号:SLGV033RS)を用いた。
【0190】
フィルターをタンクへ接続し、圧縮空気により100kPaの圧力をかけた。試験開始前にタンクのバルブを若干開け、水溶液を用いてフィルターを湿潤した。フィルターを湿潤した後、バルブを全開して試験を開始した。
【0191】
バルブ全開時の時間を0とし、ろ過処理量5g増加するのにかかる経過時間を測定した。水溶液の密度を1g/mLとして、測定重量よりろ過量(V)を算出した。計測は3分以上行った。計測値を横軸に時間(t)、縦軸にt/Vにとってグラフを作成し、得られた直線の傾きの逆数からVmaxを算出した。
【0192】
結果を
図5に示す。Vmax(L/m
2)の値は、キレート剤を添加しなかった溶液Bでは190であったのに対し、キレート剤としてN−アセチルノイラミン酸二水和物を添加した溶液Aでは2025と増大した。
【0193】
以上から、粉末培地を含む水溶液の調製時にキレート剤として、N−アセチルノイラミン酸二水和物を添加することで、水溶液のVmaxの値が向上することを明らかにした。
【0194】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2010年12月27日付けで出願された日本出願(特願2010−290444)に基づいており、その全体が引用により援用される。