(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882937
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ポリフッ化ビニリデン背面シートを有する光起電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20160225BHJP
C08J 7/04 20060101ALN20160225BHJP
B32B 27/30 20060101ALN20160225BHJP
B32B 27/36 20060101ALN20160225BHJP
【FI】
H01L31/04 560
!C08J7/04 ACFD
!B32B27/30 D
!B32B27/36
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-79751(P2013-79751)
(22)【出願日】2013年4月5日
(62)【分割の表示】特願2010-512307(P2010-512307)の分割
【原出願日】2008年6月11日
(65)【公開番号】特開2013-179312(P2013-179312A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2013年5月7日
(31)【優先権主張番号】60/944,188
(32)【優先日】2007年6月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ティー・バーチル
(72)【発明者】
【氏名】ジアシン・ジェイソン・ゲ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・エス・オブライエン
(72)【発明者】
【氏名】サエイド・ゼラファティ
【審査官】
濱田 聖司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−530140(JP,A)
【文献】
特開2007−35694(JP,A)
【文献】
特開平10−256580(JP,A)
【文献】
特開2004−352966(JP,A)
【文献】
特開2000−188412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
c)外側透明グレージング材料と、
d)カプセル封入相互接続太陽電池と、
c)官能化ポリフッ化ビニリデン(PVDF)組成物を含む背面シートとを含み、ポリフッ化ビニリデン組成物が、背面シート基板に、水性コーティング組成物として適用される光起電モジュールであって、該PVDF組成物は、官能化アクリル変性フルオロポリマーを含み、ここで、そのフルオロポリマー部分は、該アクリル変性フルオロポリマーの少なくとも50重量%を構成し、かつ、フッ化ビニリデンモノマー単位と1〜29重量%のヘキサフルオロプロペンモノマー単位とのコポリマーであり、該アクリル変性フルオロポリマーの該アクリル部分が官能化アクリルモノマー単位を含む、光起電モジュール。
【請求項2】
前記背面シート基板が、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート基板である請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項3】
背面シート基板が、化学的に処理されて、PVDFコーティングの接着が改善される請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項4】
前記PVDFコーティング組成物が、アクリル変性フルオロポリマー水性分散液である請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項5】
前記コーティング組成物が、2〜33重量パーセントの架橋剤を含む請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項6】
前記PVDFが、130℃を超える融点を有するホモポリマーまたはコポリマーである請求項1に記載の光起電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面シートとして、ポリフッ化ビニリデンを含有する組成物を有する太陽放射線を捕捉および使用する光起電モジュールに関する。ポリフッ化ビニリデン背面シート層は、環境に曝露されて、耐化学性、低水蒸気透過率、電気絶縁性およびUV光保護を提供する。
【背景技術】
【0002】
光起電モジュールは、外側グレージング材料、概して、保護のために透明なパッケージにカプセル封入された太陽電池、および背面シートを含む。太陽電池は、これらに限定されるものではないが、シリコン、セレン化カドミウムインジウム(CIS)、セレン化カドミウムインジウムガリウム(CIGS)、量子ドットをはじめとするソーラーコレクターに用いることが公知の材料でできている。背面シートは、光起電モジュールの裏側で環境に曝露される。背面シートの主たる機能は、低水蒸気透過質、UVおよび酸素バリア性を提供することであり、シリコンウェハ(フォトセル)を、水、酸素またはUV放射線との反応により生じる劣化から保護する必要がある。シリコンウェハは、概して、エチレン酢酸ビニル(EVA)にカプセル封入されているため、背面シート材料は、熱成型プロセスで成分を一緒に積層するときに、EVAに良好に接着するものでなければならない。
【0003】
コレクターの背面シートは、鋼やアルミニウム等の金属とすることができる。しかしながら、最近では、ポリマー材料が背面シートに用いられている。Tedlar(DuPont製ポリフッ化ビニル材料)(米国特許第6,646,196号明細書)、イオノマー/ナイロン合金(米国特許第6,660,930号明細書)およびポリエチレンテレフタレート(PET)は全て、光起電モジュールの背面シート層として、単独および組み合わせで用いられている。PETは、優れた耐湿性を備え、比較的低コストのポリマーであるが、UV放射線、IR放射線およびオゾン等の環境の影響に曝露されると劣化し易い。多くの背面シート構造において、PETは、丈夫で、光安定性、耐化学性があり、長期の湿気曝露に影響されないTedlar(PVF)フィルムの使用により保護されている。それらはまた、(EVA)にも良好に接着する。しかしながら、Tedlarフィルムは比較的高価で、水蒸気に対する良好な耐性がない。従って、TedlarフィルムとPETの組み合わせが、優れた背面シート材料を提供する。光起電背面シートの典型的な構造は、PVF/PET/PVF、PVF/Al/PVFおよびPVF/PET/Al/PVF多層積層フィルムである。しかしながら、これらの構造は、PVFのPETへの接着力が低いという欠点を伴う恐れがある。接着力は、典型的に、ポリマー表面を、コロナ放電または同様の技術により処理することにより補強されて、PVFフィルムにおける接着力が増す。同様に、PVFに接着剤を用いても、接着力が増す。
【0004】
ここで、ポリフッ化ビニリデンを背面シート組成物に用いると、現在の技術よりも、性能、処理およびコストの改善がなされることが分かった。PVDFをPET積層体に与えるのに、接着層および/または表面処理を省けると有利である。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンコポリマーおよびポリフッ化ビニリデンブレンドから形成された背面シートは、ポリフッ化ビニリデンの特性を活かして、他の材料に関して上に挙げた問題を克服することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6646196号明細書
【特許文献2】米国特許第6660930号明細書
【特許文献3】米国特許第3178399号明細書
【特許文献4】米国特許第6680357号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
a)外側透明グレージング材料と、
b)カプセル封入相互接続太陽電池と、
c)最外背面層を含むポリフッ化ビニリデン(PVDF)組成物を含む背面シートと
を含む光起電モジュールまたは太陽光発電装置に関する。
【0007】
PVDF層は、共押出し、積層または接着したフィルムとして、あるいは溶剤または水性コーティングとして存在し得る。PVDFは接着力を高めるために官能化させる、またはタイ層と共に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「光起電モジュール」とは、本明細書において使用される際、環境保護積層体に密閉された光起電電池回路の構造を意味する。光起電モジュールを組み合わせて、予め配線された現場据え付け可能な装置である光起電パネルを形成してもよい。光起電アレイは、任意の数のPVモジュールとパネルとからなる完成した発電装置である。
【0009】
本発明の背面シートは、1枚以上のポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはPVDFコポリマー層を含み、ポリフッ化ビニリデン組成物は、環境に曝露される最外シートである。
【0010】
本発明の各PVDF層組成物は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーあるいはPVDFホモポリマーまたはコポリマーとPVDF(コ)ポリマーと相溶性のある1種類以上のその他ポリマーのブレンドであってよい。本発明のPVDFコポリマーおよびターポリマーは、フッ化ビニリデン単位が、ポリマー中の全モノマー単位の総重量の70パーセントを超える、より好ましくは単位の総重量の75パーセントを超えるものである。フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマーおよびそれ以上のポリマーは、フッ化ビニリデンを、フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン、1つ以上の部分または完全フッ素化α−オレフィン、例えば、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテンおよびヘキサフルオロプロペン、部分フッ素化オレフィンヘキサフルオロイソブチレン、過フッ素化ビニルエーテル、例えば、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロ−n−プロピルビニルエーテルおよびパーフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル、フッ素化ジオキソール、例えば、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)およびパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、アリル、部分フッ素化アリルまたはフッ素化アリルモノマー、例えば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルまたは3−アリルオキシプロパンジオールおよびエテンまたはプロペンからなる群から選択される1つ以上のモノマーと反応させることにより作製される。好ましいコポリマーまたはターポリマーは、フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン(TFE)およびヘキサフルオロプロペン(HFP)により形成される。
【0011】
特に好ましいコポリマーはVDFのものであり、約71〜約99重量パーセントのVDFおよび対応して約1〜29パーセントのHFP、約71〜99パーセントのVDFおよび対応して約1〜29パーセントのTFE(例えば、米国特許第3,178,399号明細書に開示)、約71〜99重量パーセントのVDFおよび約1〜29重量パーセントのトリフルオロエチレンを含む。
【0012】
特に好ましい熱可塑性ターポリマーは、VDF、HFPおよびTFEのターポリマー、ならびにVDF、トリフルオロエテンおよびTFEのターポリマーである。特に好ましいターポリマーは、少なくとも71重量パーセントのVDFを有し、他のコモノマーは、異なる割合で存在してよいが、併せて、ターポリマーの29重量パーセントまでである。
【0013】
PVDF層はまた、PVDFポリマーと、相溶性のあるポリマー、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のブレンドであり、PVDFが50重量体積パーセントを超えるものとすることもできる。PVDFおよびPMMAを溶融ブレンドして、均一なブレンドを形成することができる。好ましい実施形態は、60〜80重量パーセントのPVDFと、20〜40重量パーセントのポリメチルメタクリレートコポリマーのポリメチルメタクリレートとのブレンドである。
【0014】
PVDF層はまた、参照により本明細書に援用される米国特許第6,680,357号明細書に記載された通り、アクリル変性フルオロポリマー(AMF)からなるものとすることができる。
【0015】
PVDF含有背面シートの合計厚さは、25ミクロン〜500ミクロン、好ましくは75〜350ミクロンの厚さであり、単層または多層構造とすることができる。一実施形態において、背面シートは、各側に1ミルのPVDF層を備えた10ミルのバリア層からなる。
【0016】
PVDF層は、PVDFに加えて、その他の添加剤、これらに限定されるものではないが、例えば、UV安定剤、可塑剤、充填剤、着色剤、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、トナー顔料および分散助剤を含有していてもよい。好ましい実施形態において、顔料を添加して、ソーラーモジュールへの光の反射を補助する。UV抵抗性が、背面層の主たる機能であるため、UV吸収剤は、PVDFおよび/またはバリア層に0.05パーセント〜5.0パーセントのレベルで存在しているのが好ましい。また、顔料は、ポリマーを基準にして、2.0重量パーセント〜30重量パーセントのレベルで用いることができる。一実施形態において、耐候性フルオロポリマー層は、30〜100重量パーセントのフルオロポリマー、0〜70重量パーセントの相溶性樹脂、例えば、(メタ)アクリルポリマーまたはコポリマー、0〜30重量パーセントの無機充填剤または顔料および0〜7重量パーセントのその他の添加剤でできている。
【0017】
好ましい実施形態において、フルオロポリマーは官能化されている。1枚以上の官能化フルオロポリマー層を、さらに良い水蒸気バリア特性を有する少なくとも1枚の層と組み合わせてもよい。官能化フルオロポリマーは、官能化ポリフッ化ビニリデンポリマー、例えば、無水マレイン酸官能化PVDF(Arkema製KYNAR ADX等)とすることができる。官能化フルオロポリマーはまた、当該技術分野において公知の官能化ETFEまたはEFEPとすることもできる。有用なバリア層としては、アルミニウム、PET、PENおよびEVOHが挙げられる。一実施形態において、アルミニウムは、アルミニウムホイルの形態にある。
【0018】
フルオロポリマーは、官能基を含有するか、または官能化(好ましくは相溶性)共官能化共樹脂(官能化アクリルタイプ樹脂等)とブレンドされている。このフルオロポリマーの融点は、フルオロポリマー層の官能基と化学的に結合し得る官能化タイ層樹脂(LOTADER AX8900またはAX8840またはADX1200)と共押出しするために適合するのが好ましい。この層は、他の官能化または非官能化樹脂と配合して、耐湿性、絶縁耐力、耐熱性およびその他特性等の全体の性能を最適化してもよい。
【0019】
官能化フルオロポリマーはまた、官能化タイ層樹脂と、ポリエチレンテレフタレート、融点を下げるためにネオペンチルグリコール等の他のグリコールにより変性された他のポリエチレンテレフタレートのコポリマー、テレフタル酸をベースとする他のポリエステル、ポリ酢酸等の天然由来のポリエステル、ポリアミドとポリオレフィンのナノ層分離生成物であるLOTADER XLP等の任意の第3の層と共押出しすることもできる。
【0020】
PVDFおよび水分バリアは、共押出しまたは積層等の手段により組み合わせてよい。有用な水蒸気バリアとしては、これらに限定されるものではないが、エチレンビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびArkema Inc.製LOTADER反応性ポリエチレン等の反応性ポリエチレンが挙げられる。反応性ポリエチレンとしては、これらに限定されるものではないが、エチレン−メチルアクリレート−無水マレイン酸、エチレン−ブチルアクリレート−無水マレイン酸、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸、エチレン/グリシジルメタクリレートおよびエチレン−無水マレイン酸−グリシジルメタクリレートが挙げられる。バリア層はまた、アルミニウムホイル等の金属とすることもできる。様々なタイ層が特定されている。
【0021】
バリア層は、片側または両側に、ポリビニリデン層を有していてもよい。PVDF層がバリア層の両側にあるときは、各側は、製造を補助するために、同じ組成であるのが好ましい。ただし、層は、異なる厚さおよび組成を有することもできる。ある構造については、バリア層とPVDFは、接着剤またはタイ層を用いて接着することができる。有用なタイ層としては、Arkema Inc.より入手可能なKYNAR ADX、KYNARFLEX、KYNAR/アクリル混合物、LOTADERが挙げられる。他の有用なタイ層は、アクリルブロックコポリマーからなる。これらのブロックコポリマーは、制御されたラジカル重合プロセスにより形成することができ、b−PMMA/b−ポリブチルアクリレート/b−PMMAまたはb−PMMA/b−ポリブチルアクリレート/b−PMAA等のコポリマーを含む。
【0022】
Kynarフィルムは、コロナ放電等の技術により処理して、接着特性を改善することができる。
【0023】
好ましい実施形態において、PVDF層は、タイ層または接着剤を必要とすることなく、バリア層に直接接着する。直接接触に有用なPVDFとしては、5〜30重量パーセントのHFPレベルのPVDFコポリマーおよび無水マレイン酸グラフト化PVDFが挙げられる。接着は、光起電モジュールへ組み立てる前の多層背面シートの共押出しか、またはモジュールを全体として形成するための熱/硬化プロセス中の別個の層の積層体の形成のいずれかによりなされる。
【0024】
一実施形態において、PVDF層は、エチレン酢酸ビニルカプセル材に接着する能力のために選択される。
【0025】
背面シートは、好ましくは、共押出しまたはブローンフィルムプロセスで形成されて、光起電モジュールの背面に適用されるが、押出し積層も可能である。
【0026】
背面シートは、相溶性官能化共樹脂を含有する官能化ポリフッ化ビニリデン系配合物またはポリフッ化ビニリデン系配合物を、PETまたは他の基板上で押出し積層することにより形成される。基板は前処理(例えば、接着剤でコート)して、VF2系配合物およびPETにあるような、化学的に反応または結合可能な官能基を表面が有するようにしてもよい。結合は、押出し積層中または構造の熱後処理中になされ得る。
【0027】
UV不透明PVDF組成物の処理済みPETまたはポリエチレンナフタレート(PEN)への押出しコーティングを用いて、有用な背面シートを生成することができる。
【0028】
PVDFと、50重量パーセントまでのアクリル、0〜30重量パーセントの無機顔料充填剤および0〜5重量パーセントのUV吸収剤とのブレンドを、PETに押出し積層して、背面シートを形成することができる。
【0029】
本発明の有用な背面シートおよびそれらを形成する手段の例を以下に挙げる。当業者であれば、明細書および以下の実施例に基づいて、PVDF含有背面シートの多くのその他の例を推測できるであろう。
−官能化PVDF層//LOTADER ADX1200//PETまたはPETG//
−PVDF/アクリルブレンド//LOTADER//PVDF/アクリルブレンド
−PVDF/LOTADER/PVDF
−PVDFホモポリマー単層
−PVDF/HFPコポリマー単層
−PVDFコポリマー/アルミニウムホイル/PVDFコポリマー
【0030】
一実施形態において、PVDFまたはPVDF/アクリル化合物//タイ層//PETG//タイ層//PVDFまたはPVDFアクリル化合物の共押出し5層シートが形成される。さらに強度が必要な場合には、材料を二軸延伸してもよい。
【0031】
他の実施形態において、外側層を有する共押出し三層シートは、官能化ポリエチレン(LOTADER PE−コ−GMA)タイ層(Arkema製LOTADER AX8840、AX8900およびADX1200)およびエチレン酢酸ビニル(EVA)またはポリアミド6−g−LOTADER PE−コ−MA(LOTADER XLP)を備えた、無水マレイン酸でグラフト化されたPVDF(Arkema製KYNAR ADX)により配合される。背面シートはまた、LOTADER(GMA)およびKYNAR ADX化合物層の他のタイ層を有していてもよい。KYNAR ADX化合物の代わりを、KYNAR+PMMA酸(HT121または高酸PMMA)化合物)とすることができる。これが、PET層を必要とせず、かつ良好な耐湿性を維持する変形の背面シートとなる。他の樹脂も、上述したLOTADER XLPの代わりとすることができる。好ましい選択肢は、低水分吸収性および高絶縁耐力を有するものである。
【0032】
本発明の変形例は、カプセル封入のためにEVAと配合されたLOTADER GMAおよびLOTADER XLPと共に、外側KYNAR ADX層を有する。
【0033】
ポリフッ化ビニリデン外側層を形成する他の方法は、溶剤または水系コーティングでのコーティングによるものである。フルオロポリマー層を、PVDFまたはPVDFコポリマーをベースとする溶剤コーティングとして、公知の手段により、PET層に適用してもよい。意外なことに、コーティングの接着力は非常に良好である。任意で、PETの表面を処理すると、プライマーを添加し、高エネルギー表面前処理(コロナまたはプラズマ)処理あり、またはなしで、接着力を高めることができる。配合物には、0〜30重量%の無機充填剤、例えば、TiO
2、アクリルポリマー、安定剤およびその他添加剤が含まれる。PVDFの融点は、室温から150℃とすることができる。低温融点ポリマーについては、後のPVモジュール積層条件(5分間150C)に対して、これらのコーティングの耐熱性を、任意で架橋剤を配合することにより改善することができる。
【0034】
水系ポリフッ化ビニリデンは、本発明のアクリル変性フルオロポリマーをベースとするラテックスコーティングにより適用し、PETまたはその他基板にコートすることができる。アクリル変性ポリマーの接着力は、意外にも非常に良い。任意で、PETの表面を処理すると、プライマーを添加し、高エネルギー表面前処理(コロナまたはプラズマ)処理あり、またはなしで、接着力を高めることができる。配合物には、溶剤コーティングと同様に、添加剤が含まれる。
【0035】
コーティングはまた、ヒドロキシル等量が10〜100、最も好ましくは20〜80の官能化コモノマー(HEMA等)を含有し得る。コーティング樹脂含量には、50〜100%のVF2系ポリマー、10〜50%の官能化アクリルモノマーが含まれる。コーティングは、さらに、0〜30%の無機充填剤、0〜7%の安定剤および処理助剤を含むことができ、また、フルオロポリマー配合物を架橋し、かつPETまたはその他層ポリマーの表面に結合して、PVモジュール用の単純な低コスト背面シートを生成する2〜33%の低分子量架橋剤も含有する。有用な架橋剤としては、DESMODUR N3300、DESMODUR 4265BL、CYMEL 300および303が例示される。架橋剤の添加により、コーティングの熱安定性抵抗、硬度、引っ掻き抵抗、さらに耐溶剤性も改善される。
【0036】
様々なバリア層(水分)および絶縁耐力層(絶縁破壊強度について)を含む多層構造は、様々な方法により生成される。タイ層およびその他の層は、フルオロポリマー層が官能化されているときは特に、フルオロポリマーフィルム層に押出しまたは熱積層、共押出し、溶剤コート等することができる。ADXについては非常の興味深い適用であり得る。バリア層がこの場合含まれる。PVDF層を接着剤でコートすると、バリア層に効率的に結合する。溶剤コーティングを含有する官能化PVDF(ADX)の外側耐候性層を備えた背面シートを、アルミニウムホイルの片側または両側に配置すると、他の誘電材料に化学的に結合して、PVモジュール用の効率的かつ低透過率の背面シートを形成することができる。
【実施例】
【0037】
実施例1:(溶液コーティングの実施例)
表1に示す配合物を用いて、溶液コーティング配合物を調製した。この配合物を、ペイントシェーカーで125グラムの4mmガラスビーズと共に中身を30分間振とうすることにより混合した。このコーティングは架橋しない。このコーティングを、SKCフィルムよりSH−22として入手可能な(これは、接着力を改善するために化学処理されている)5ミルのPETに、5ミルのブレードを用いて、コートした。空気中で5分間流してから、3分間、350°Fで、強制空気オーブンにおいてオーブン硬化した。乾燥コーティング厚さは、約1ミルである。コートしたフィルムを、水に85℃で72時間浸漬し、乾燥し、ASTM D3359に定義された一般手順を用いて、クロスハッチ接着力を試験した。接着力Iを、テープを適用し、除去した後に保持されたパーセントで記録した。100%の値は、平方の全てが基板にまだ接着したままであることを意味している。50%の値は、平方の50%が基板に保持されていることを意味している。
【0038】
本実施例において、試料の接着力は100%で、優れた接着力を示している。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例2:(分散液コーティングの実施例)
分散液コーティングの実施例を、アクリルを架橋し、かつ処理済みPETと結合可能とさせるために、KYNAR 500粉末、官能化アルキルおよび架橋剤により配合した。表2の配合物を、30分間、125gの4mmのガラスビーズと、実施例1と同様のペイントシェーカーで混合した。コーティングを、SKC(SH22)より入手可能な5ミルのPETフィルムにコートした。室温で5分間流した後、3分間、350°Fでオーブン硬化した。フィルム積層体を、85℃で水に72時間浸漬し、平方の80〜90%が基板に保持されるようにして実施例1と同様に、クロスハッチ接着力を試験した。これは優れた接着力を示し、接着力は、焼成温度を最適化することにより高めることができることが分かる。
【0041】
【表2】
【0042】
例3(比較)
比較例として、実施例2と同様の配合物を調製した(表3参照)。
【0043】
【表3】
【0044】
この配合物を、実施例2と同様の方法で混合した。同じ手順を用いて、フィルムを形成し、焼成した。試料を水に85℃で72時間浸漬し、クロスハッチ接着力を試験した。結果によれば、フィルム接着力が、0%のクロスハッチ平方を保持していたことが分かった。
【0045】
実施例4
水性コーティングを、Arkemaアクリル変性フルオロポリマー技術に基づいて配合した。以下に示した配合物において、顔料濃縮物を、Cowles高速ミキサーを用いて、2000rpmで15分間、4000rpmで30分間動作させて生成した。ラテックス配合物を、低速混合攪拌器を用いて、500rpmで10分間混合し、増粘剤を、記載した通り、2アリコートで添加した。次に、これらを、低速攪拌器で、さらに10分間、一緒にブレンドし、ろ過し、実施例1と同様に、5ミルのドローダウンブレードを用いて、約1ミルの乾燥コーティング厚さまで、同じ予備処理済みPETにコートした。試料を、室温で10分間流してから、10分間、55℃でオーブン焼成した。試料を、水に85℃で72時間浸漬し、実施例1と同様にコーティング接着力を試験した。基板の平方の100%の保持により示されるように、優れた接着力であった。
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】