【実施例】
【0064】
以下の例は、例示のみを目的として提供されている。
例1.
4−アリルオキシベンゾフェノン(1)の合成
機械式撹拌器、還流冷却器、添加用漏斗及び内部温度プローブが備わった2L入りの4口フラスコ内の2−ブタノン(700mL,Fisher Scientific)の中に、4−ヒドロキシベンゾフェノン(186.7g、940mmol、Fluka Chemical)を溶解させた。反応装置にK
2CO
3(195g、1.41モル、Aldrich chemical)を添加し、中味を低速N
2パージ下に置いた。臭化アリル(123mL、1.41mol、Aldrich Chemical)を添加用漏斗に投入した。ポットの温度を65℃まで上昇させ、この時点で臭化アリルを30分間にわたり添加した。添加が完了した時点で65℃で6.5時間反応を撹拌した。この時点で、GC分析によって見極められるように、いかなる出発材料も存在しなかった。
【0065】
スラリーをろ過し、ろ液を1%のHClaq(500mL)で抽出した。有機層を単離し、無水MgSO
4上で乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空下で除去して黄白色の固体を得た(1;207g、92%)。生成物は、受容可能な
1H&
13C NMR、FT-IR、GC及びUV-Vis特性を示した。
【0066】
【化9】
【0067】
例2.
SiH官能性ベンゾフェノン誘導体(2)の合成
THF(150mL、EM Science)内で暖めながら、アリルオキシベンゾフェノン1(200g、840mmol)を溶解させ、乾燥空気パージの下で機械式撹拌器、還流冷却器及び内部温度プローブの備わった2L入り4口フラスコ上に設置された添加用漏斗にこれを投入した。反応容器に対して、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(740mL、4.18mol、 Hanse Chemie)及びTHF(100mL)を添加した。内部ポット温度を50℃まで上昇させ、この時点で4−アリルオキシベンゾフェノン/THF溶液の一部分(5mL)と共にポットにクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(「Wilkinsonの触媒」、22mg、アリルオキシベンゾフェノン1の質量に基づいて11ppm、Aldrich Chemical)を添加した。内部反応温度を60℃まで上昇させ、その時点で45分間にわたり反応装置ポットに4−アリルオキシベンゾフェノン溶液を添加した。
【0068】
反応の内部温度を、発熱性である添加の間60〜65℃の間に保持した。添加が完了した時点で反応をさらに15分間60℃で撹拌し、この時点でGC分析によりいかなる出発材料も存在しなかった。反応を35℃まで冷却させ、活性炭(ラボスプーン3杯、Aldrich Chemical)を添加した。結果として得られたスラリーを30分間撹拌し、次にろ過して黄白色の溶液を得た。真空下で生成物から溶剤を除去して黄色油を得た(329g、商業グレードの1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン出発材料中最高10モル%の1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンの存在に起因して104%;すなわち反応は基本的に定量的である)。生成物は、受容可能な
1H、
13C&
29Si NMR、UV-Vis及びFT-IRスペクトル特性を示した。
【0069】
【化10】
【0070】
例3.
ポリ(ブタジエン)−グラフトされたベンゾフェノン重合体光開始剤(3)の合成
乾燥空気のパージの下で、機械式撹拌、還流冷却器、内部温度プローブ及び添加用漏斗の備わった5L入り4口フラスコ内のトルエン(1100mL、EM Science)中にRicon 130ポリ(ブタジエン)(734g、Scartomer)を溶媒和させた。添加用漏斗に対してSiH−官能性ベンゾフェノン誘導体2(328.8g、0.88モル)を投入した。pBD溶液に対し、化合物2の一部分(最高5mL)を添加した。pBDの溶液を50℃まで暖め、その時点で1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(Gelestの1.8g 3.0-3.5wt% Pt cat、 soln. SIT7900.0)を反応装置ポットに添加した。このとき反応の内部温度を80℃まで上昇させ、化合物2を1.5時間にわたり滴下によって添加した。制御可能な形で発熱性である添加全体を通して80〜83℃の間の内部温度を維持した。
【0071】
添加後、反応の最終段階に続いて、2120cm
-1でSiH帯域の完全な消滅を監視することによりFT-IR分析を行なった。SiH部分は、80℃で30分後に完全に消費された。この時間は、Pt
0触媒溶液の活性に応じてわずかに変動しうるということに留意されたい。
【0072】
溶液を、35℃まで冷却させ、その時点でそれを小型ラボスプーン7杯の活性炭で処理した。このスラリーを60分間撹拌して、次にろ過した。真空下で結果としての黄白色の溶液から溶剤を除去して粘性の黄白色の油を得た(1060g、基本的に定量的な化学収量)。生成物pBD−結合型ベンゾフェノン誘導体3は、予想された
1H、
13C、
29Si及びFT-IRスペクトル特性を示した。RI及びUVの両方の検出器(λ=320nm)を用いたGPC分析は、ベンゾフェノン発色団の大部分がpBDバックボーンに付着したこと、そして、グラフトプロセス中にpBD MW変化がほとんど発生しなかったことを示した(今や共有結合された発色団のため、わずかなMWの増加が見られる可能性があるということに留意されたい)。
【0073】
【化11】
【0074】
例4.
2−ヒドロキシ−3,4−ジメチルチオキサンタン(4)の合成
N
2下で機械式撹拌及び内部温度プローブを備えた250mL入り3口フラスコの中で、濃H
2SO
4(100mL、EM Science)中の2,2taniジチオビス安息香酸(10.0g、32.6mmol、 Fluka)の溶液を調製した。この混合物を氷浴上で5℃まで冷却した。この冷却溶液に対し、30分間にわたり、2,3−ジメチルフェノール(7.98g、65.3mmol、 Aldrich chemical)を、分量の形で添加した。有意な発熱は、全く見られなかった。1時間氷上で反応を撹拌し、次に室温まで暖めた。反応をその後65℃の内部温度まで1時間加熱し、その後室温まで冷却した。
【0075】
【化12】
【0076】
例5.
2−ヒドロキシエチル−3,4−ジメチルチオキサンタン(5)の合成
N
2下で機械式撹拌及び還流冷却器を備えた100mL入り3口フラスコ内でDMF(11mL、EM Science)中にヒドロキシ−官能性チオキサントン5(0.23g、0.8mmol)を溶媒和した。この溶液に対し、撹拌しながら、2−ブロモエタノール(0.06mL、0.8mmol、 Aldrich)及びK
2CO
3(0.16g、1.2mmol)を添加した。結果として得たスラリーを10時間オイルバッチ上で90℃まで加熱した。
反応を室温で冷却させ、精製H
2O(150mL)上に注いだ。スラリーをろ過し、単離した固体を精製水(3×100mL)で徹底的にそしてイソプロパノール(20mL、EM Science)で一回洗浄した。生成物を真空オーブン内で乾燥させ、
1H NMR及びFT-IRで分析した。
【0077】
【化13】
【0078】
例6.
メルカプト官能性チオキサントン誘導体(6)の合成
3−メルカプトプロピオン酸でヒドロキシ官能性チオキサントン5は、標準的フィッシャーエステル化プロトコルを用いて、エステル化することができる。かくして、N
2下で磁気的撹拌及びディーンスターク冷却器を備えた50mL入りの3口フラスコ内でトルエン(20mL)中に化合物5(1g、2.9mmol)を溶媒和させることができる。この溶液に対し、3−メルカプトプロピオン酸(0.3g、2.9mmol、Aldrich Chemical)と触媒量のp−トルエンスルホン酸−水和物(0.006g、0.029mmol、Aldrich Chemical)を添加する。結果として得た溶液を還流まで加熱して水を共沸的に除去しエステル化に作用することができる。水の推移が止まった時点で、溶液を室温まで冷却させて、精製H
20(20mL)で抽出した。有機層を単離し、無水MgSO
4(Bアリールケトンer)上で乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空下で除去してメルカプト−官能性チオキサントン6を生成した。
【0079】
【化14】
【0080】
例7.
重合体結合型チオキサントン光開始剤(7)の合成
メルカプト官能性チオキサントン6は、文献中で記述されている通り(Schapman、 F.;Couvercelle、 J.P.:Bunel、 C. Polymer、 1998、39(20)、4955-4952)の過激な条件下でポリ(ブタジエン)上にグラフトさせることができる。かくして、N
2下で機械式撹拌及び内部温度プローブの備わった100mL入りの3口フラスコに対し、Ricon 130pBD(10g)を添加することができる。化合物6(3g)を添加し、続いて2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)(「AIBN」、0.013g、Aldrich Chemical)を添加する。結果として得た混合物を75℃まで加熱して、不飽和ゴムに対するチオール基の付着に作用し、重合体結合型チオキサントン誘導体7を生成する。
【0081】
【化15】
【0082】
例8.
アミドリンク型 重合体結合型光開始剤(8)の合成
N
2下で還流冷却器、内部温度プローブ及び機械式撹拌を備えた250mL入りの4口フラスコ内で、Ricon(3)MA17(28g、Sartomer)4−アミノベンゾフェノン(7.8g、39mmol)及びトルエン(45mL)の溶液を組合わせた。撹拌混合物を7時間82℃まで加熱し、次に溶剤を真空下で除去して定量的収量でアミドリンク型重合体光開始剤 8を得た。生成物は、受容可能な
1H、UV-Vis及びFT-IRスペクトル特性を示した。
【0083】
【化16】
【0084】
例9.
UV硬化性ゴムベースのPSA組成物、その硬化と評価
例3中に記述された重合体光開始剤を利用してゴムベースのUV硬化性感圧接着剤組成物を処方した。SBSブロック共重合体、SBジブロック共重合体、粘着付与剤樹脂、油可塑化剤、及び標準的安定剤パッケージを300°Fで可変量の重合体光開始剤と溶融ブレンドした。さまざまな厚みのフィルムをこの溶融体から剥離紙上に加工し、冷却させ、UVプロセス コンベヤライン硬化ユニットを用いて硬化させた。このユニットには、300wの中圧水銀アーク電球が備わっており、コンベヤのベルト速度を変動させることによって線量を変化させた。EIT Power Puck 放射計で線量を測定した。
【0085】
その後、硬化したフィルム(及び未硬化の基準標本)をMylar裏当て基板(最高2ミルの基板厚)に積層させた。180°の剥離及び高温せん断試験のため標本フィルムを標準機何形状に切断した(高温せん断試験のためには1″×1″のラップボンド、剥離試験のためには1″×6″の試験片;剥離試験速度=12″/分:高温せん断条件は、標本に対し500gの質量が付着された状態で200°Fであった;全ての標本調製は、制御された温度(70°F)及び湿度(RH50%)条件下で行なわれた)。
【0086】
これらの試験の代表的結果は表1に示されている。このデータから、複数の結論が明白である。重合体光開始剤を含有する標本は全て、UV硬化時点での高温せん断強度の増加により証明されているように標準的UV線量で容易にUV硬化される。これは、さまざまな度合までその凝集強さを増大させた複数の系のUVにより誘発された架橋の結果である。高温せん断強度は、PSAの耐熱性の標準的尺度である。これらの接着剤の耐熱性の増大により、類似の未硬化PSAよりもはるかに高い温度でのそれらの使用が可能となる。接着剤はUV架橋されていることから、その剥離強度は、未硬化基準標本に比べて低下する。このデータに関する重要な点は、数多くのPSA利用分野にとって受容可能な剥離接着を、優れた耐熱性を達成しながらUV硬化済み材料内で維持できるということにある。同様に、かなり厚い接着剤フィルム(5ミリ以上)を有効にUV硬化できるということにも同様に留意すべきである。
【0087】
【表1】
【0088】
例10.
チオール−エンUV架橋性系内での重合体 H−引き抜きクラスの光開始剤の使用
原樹脂から誘導された原樹脂成分テトラアリルビスフェノールA(Bimax)及びテトラチオール10を利用して、原型チオール−エンUV硬化性組成物を処方した。これら2つの成分を、1:1のチオール;エンモル比で混合した。この素材樹脂系を次に、下表2に示されているような異なる3つの製剤を生成するために使用した。
【0089】
処方(F1)は、光開始剤が添加されていない樹脂系であり、処方2(F2)は、2重量%のベンゾフェノン(標準的小分子光開始剤)とブレンドされた樹脂系であり、処方3(F3)は、約8重量%の例3の重合体光開始剤とブレンドされた樹脂系である(注:80重量%の重合体光開始剤は、約2重量%のペンダントベンゾフェノン発色団と等価である)。これらの製剤のUV硬化挙動は、光示差熱量計(100wの中圧水銀ランプが備わり、標本における合計光量が22w/cm
2であるPerkin Elmer DSC-7)により評価された。反応度は、重合エンタルピー(ΔH
p)、関連する化成及び最大重合発熱までの時間(Δt
o-p)の両方により判断された。結果は、表2及び
図1に要約されている。
【0090】
【表2】
【0091】
製剤1及び2を比較すると(表2及び
図1を介して)わかるように、重合体光開始剤3は、標準的チオール−エン光開始剤ベンゾフェノン以上とはいわないまでも同等の性能を示した。特定的に言うと、重合/化成エンタルピーの熱力学的数量は、基本的に同じであった。又、光重合反応速度の定性的尺度であるピーク発熱までの時間は、両方の系について類似であった。製剤1からわかるように、このチオール−エン系は、離散的光開始剤が全く無い状態でも微量のUV感度を有する。
【0092】
チオール−エン系のこの頻繁な「無開始剤」活性は、これまで基底又は励起状態の電荷移動錯体の形成又は単にさまざまな経路を介した低レベルのラジカル開始剤の光誘起生成のせいであるとされてきた。本発明の目的において注目される主たる問題は、1)添加された光開始剤を取込んだ系が、それを取込まない系に比べて数ケタ分反応度が高いこと、そして 2)重合体光開始剤3が小分子光開始剤ベンゾフェノンと基本的に等しい反応度を示すこと、という事実にある。
【0093】
例11.
チオール−エン UV架橋性系における重合体 H−引き抜きクラスの光開始剤のさらなる使用(ろ過された分析)
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピアネート)(Hampshire Chemical)及びトリアリルイソシアヌレート(Aldrich、最高200ppmのBHT安定剤)の原重合体成分を利用して、原型チオール−エンUV硬化性組成物を処方した。これら2つの成分を、1:1のチオール;エンモル比で混合した。
【0094】
この素材樹脂系を次に、下表3に示されているような2つの製剤を生成するために使用した。処方(F1)は、光開始剤が添加されていない樹脂系であり、処方2(F2)は、8重量%の例3の重合体光開始剤とブレンドされた樹脂系である(注:80重量%の重合体光開始剤は、約2重量%のペンダントベンゾフェノン発色団と等価である)。これらの製剤のUV硬化挙動は、光示差熱量計(100wの中圧水銀ランプが備わり、標本における合計光量が22w/cm
2であるPerkin Elmer DSC-7)により評価された。反応度は、重合エンタルピー(ΔH
p)、関連する化成及び最大重合発熱までの時間(Δt
o-p)の両方により判断された。
【0095】
或る種のチオール−エン製剤が光開始剤の添加無しで有意な光反応性を示すということは当業者にとって既知である。光開始剤の添加無しのこの製剤(F1)は、中圧水銀アーク灯のスペクトル分布をもつろ過されていないUV光の照射を受けた場合に、まさにこのような「無開始剤」活性を示す。この実験においては、水銀アーク灯からの光は、最高300nmのカットオフ波長をもつ干渉フィルターでろ過された(すなわち300nm未満の波長の光が完全にろ過された。300nmのカットオフフィルタでの光DSC実験の結果は、表3及び
図2に示されている。
【0096】
F1の反応及び転化のエンタルピーからわかるように、ろ過光での照射を受けた場合に、最小の反応が見られる。これは、有意な乾燥を示す、未ろ過光での照射を受けた同じ無開始剤製剤(F1)と好対照を成す。この未ろ過反応度データは、「未ろ過基準F1」という表題で、表3の中に内含されている。製剤F2についてのデータから明らかにわかるように、例3の重合体光開始剤は、カットオフフィルタの存在下でさえこの系にとって効率の良い開始剤である。この例は同様に、この反応度の大部分がこの特定のチオール−エン製剤の固有の光活性とは異なり、重合体光開始剤の光開始能力に起因しているということをも明らかに示している。
【0097】
F1及びF2についての理論上の反応エンタルピー(100%の転化率について)が、有意な質量レベル(8重量%)での重合体光開始剤の取込みの結果である2つの製剤内のチオールとエンの異なる濃度に起因して異なっているという点に留意されたい。換言すると、計算上の転化にはこれが考慮されている。この特定のチオール−エン系がもつ有意な無開始剤活性は著しいものであるが、UV硬化のためにより長い波長が使用されない場合(例えばホウケイ酸ガラスを通した硬化)有用ではない。このような場合、この例で利用した重合体といったような開始剤が必要となる。
【0098】
【表3】
【0099】
例12.
重合体H−引き抜きクラスの光開始剤との共開始剤としての水素供給源の使用
基本的成分SBSゴム、水素化粘着付与剤、飽和オイル及び酸化防止剤パッケージを用いて、素材ゴムベースのUV硬化性ホットメルト感圧接着剤(UVHMPSA)を調製した。標本♯1を形成するために、この素材PSA100gを9gのアミノドリンク型重合体光開始剤8(約2重量%の活性アミドベンゾフェノン発色団とブレンドした。標本#2を形成するためには、素材PSAの第2の100g部分を、4.5gの光開始剤8及び1gの高MW(分子量)の低臭気ポリチオール架橋剤(約1重量%の活性アミドベンゾフェノン発色団及び約1重量%のポリチオール架橋剤に添加した。両方の標本は共に、溶液及び溶融体の両方の加工によってうまく調製された。
【0100】
両標本のフィルム(公称2ミルの乾燥フィルム厚)をトルエン溶液から引き抜いた。UVプロセスコンベヤライン上で500mJ/cm
2の合計UV線量で両方の標本を硬化させた(線量は、UVプロセスコンパクト放射計によって測定された通りのスペクトルのUV引き抜きC及びV領域内の合計線量を表わす)。
【0101】
両方の標本の動的機械分析は、ポリチオールH−供与体/架橋剤を含有する標本#2のみが効率良く硬化したということを示した。これは、UV硬化された標本#2のゴム質平坦域が、ベースゴムのスチレンエンドブロックのTgよりもはるかに高い150℃以上に拡がっているという事実によって証明された。効率良く硬化しなかった標本#1は、−110℃のスチレンエンドブロックTgより高い温度での弾性係数(E′)及び流量の大幅な減少を示した。その他のゴムベースのUVHMPSA系内では、開始剤8が付加的な水素供与体/架橋剤無しで有効な架橋レベルを正に生み出すという点に留意すべきである。
かくして、充分に設計された製剤においては、ポリチオール及びアミンといったようなH−供与体/架橋剤の使用により、本発明の重合体光開始剤を取込んだ系内でのUV硬化の速度及び程度を促進することが可能である。
【0102】
例13A〜C.
SISベースの系における重合体結合型PIの使用
SISベースの感圧接着剤を光開始剤と架橋できるということは既知であるが、必要とされるUV線量は、2、3及び4官能性アクリレートといったような多官能性カップリング剤が利用されるのでないかぎり過剰である(D.J. St.Clair、 接着剤の時代、1980、p30)。しかしながら、St. clairが指摘しているように、これらの処方は、熱安定性ではなく、従って、接着剤自体の製造が通常それを数時間の高温にさらすことになる従来のホットメルトプロセスでの使用には適していない。一般に、ホットメルトは、その利用温度で24時間にわたりわずかな物性変化しか示すべきではない。例えば、25%未満の粘度変化が望ましい。
【0103】
例13Aは、従来の光開始剤(Irgacure 819)で架橋されたSISブロック共重合体の比較例である。例13B及び13Cは、本発明の光開始剤で架橋されたSISブロック共重合体を例示している。
【0104】
これらの例においては、以下の手順を用いてタンジェントデルタが測定された:
弾性(G″)及び損失(G″)係数対温度の関係を得るために、レオメトリクス動的機械分析装置(RDA700型)を使用した。計器を、Rhiosソフトウェアバージョン4,3,2、で制御した。直径8mmで、約2mmの空隙で分離された平行板を使用した。標本を搭載し、次に約−100℃まで冷却し、試験を開始した。プログラム試験は、5℃の間隔で温度を上昇させその後、各温度で10秒間のソーク時間を設けた。標本の入った対流オーブンを連続的に窒素でフラッシングした。周波数は10ラド/秒に維持した。試験の開始時の初期ひずみは0.05%であった(プレートの外縁において)。ソフトウェア内の自動ひずみオプションを用いて、試験全体を通して正確に測定可能なトルクを維持した。
【0105】
該オプションは、ソフトウェアにより許容された最大付加ひずみが50%であるように構成された。自動ひずみプログラムは、契約で保証されている場合、各温度増分で以下の手順を用いてひずみを調整した。トルクが200g-cmより低い場合、ひずみは現行値の25%だけ増分された。トルクが1200g-cmであった場合、それは現行値の25%だけ減少された。200〜1200g-cmの間のトルクでは、その温度増分でひずみは全く変化しなかった。せん断貯蔵弾性率又は弾性係数(G′)及びせん断損失係数(G″)は、トルク及びひずみデータからソフトウェアによって計算される。タン・デルタとしても知られる。その比率G″/G′を計算した。
【0106】
例13A.
比較例
4部分のQuintac 35030(Nippon-Zeonから入手可)、4部分のKraton 1119(Kraton Polymersから入手可)及び12部分のVector 4411(Dexco Polymersから入手可)を含有する20部分のSISブロック共重合体、53部分の粘着付与樹脂(Exxon-Mobil Chemical Co.から入手可能なEscoreg 5320)、23部分のBritol35T(Cromptonから入手可能な白色鉱油)、0.6部分の酸化防止剤(Ciba-Geigyから入手可能なIrganox0.3部分とSumitomoから入手可能なSumilizerTPD 0.3部分)、5部分の多官能性カップリング剤(SR454、トリエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)及び1部分のIrgacure819(Ciba-Geigyから入手可能な酸化ホスフィン光開始剤)に基づいて、感圧接着剤を処方した。
【0107】
標本を剥離紙上で5ミルにコーティングし、1000mJ/cm
2のUVB線量で融合UVH電球の下で硬化させた。
硬化されたフィルムを秤量し、それを一晩シクロヘキサンコンテナ内に浸漬し、午前中に膨張したフィルムを除去し、乾燥させることによって、シクロヘキサン中のゲル留分を決定した。ゲル留分は、理論値の21.8%又は87%であった(20%の重合体プラス5%の多官能性カップリング剤)。未硬化フィルムは、シクロヘキサン中で完全に溶解する。
【0108】
RDAを行なった。硬化したフィルムは、高温すなわちスチレンブロックTgを越える温度で、1.0よりはるかに低い、好ましくは0.5より低い、そして最も好ましくは0.2より低いタンジェントデルタ値を示す。接着剤が架橋向けではないにせよきわめて流動的になる160〜200℃での値が記憶される。流体材料は、より粘性の挙動ひいてはより高いタンジェントデルタ値を示す。タンジェントデルタ=1で、流体は、粘性的(流体様)にも弾性的(固体様)にも同等の挙動を示す。値が低くなればなるほど、挙動はさらに固体様となる。この接着剤のタンジェントデルタ値は170℃で0.06であった。
この接着剤の粘度は275°Fで2、645CPであった。粘度は24時間にわたり50%だけ時間と共に線形的に増大した。
【0109】
例13B.
SISベースの感圧接着剤の発明に基づく例
20部分のSISブロック共重合体(Kraton Polymersから入手可能なKraton1320)、53部分の粘着付与樹脂(Exxon-Mobil Chemical Co.から入手可能なEscorez 5400)、22部分のBritol、 0.6部分の酸化防止剤(0.3部分のIrganox3052及び0.3部分のSumilizer TPD)及び4部分の例3に記述された光開始剤に基づいて、感圧接着剤を処方した。
以上の例13Aで記述した通りに接着剤をコーティングし、UV硬化させた。170℃でのタンデルタは0.1であり、これは、それが充分に硬化されたことを示している。
【0110】
例13C.
SISベースの感圧接着剤の発明に基づく例25部分のSISブロック共重合体(Kraton Polymersから入手可能なKraton1320)、53部分の粘着付与樹脂(Escorez 5400)、18部分のBritol 35T、 0.6部分の酸化防止剤(0.3部分のCiba-Geigyから入手可能なIrganox3052及び0.3部分のSumitomoから入手可能なSumilizer TPD)及び4部分の例3に記述された光開始剤に基づいて、感圧接着剤を処方した。
以上の例13Aで記述した通りに接着剤をコーティングし、UV硬化させた。170℃でのタンデルタは0.03であり、これは、それが充分に硬化されたことを示している。
【0111】
325°Fでのこの接着剤の粘度は、8575cPである。この温度で保持された場合、この粘度はゆっくりと、24時間以内でわずか10%だけ降下した。高温でのエージング時点での粘度の下降は、緩慢な酸化的鎖切断に起因して、SISベースのPSAに典型的なものである。粘度のわずかな減少が予想され、これは、本発明の光開始剤には加熱された場合に早尚な接着性ゲル化を導く傾向が全くないことを表わしている。
【0112】
例14.
本発明の光開始剤と従来の光開始剤の比較
さまざまなスチレンブロック共重合体を架橋するために従来の光開始剤(Irgacure651及びベンゾフェノン)及び例3の光開始剤を使用した。表3に示されたブロック共重合体光開始剤及び油を用いてフィルムを調製した。全てのブロック共重合体はKraton Polymersから入手した。表4中、ビニルは、ペンダント2重結合すなわち1,2(SBS)又は3,4(SIS)重合を示している。
【0113】
【表4】
【0114】
ブロック共重合体は、50重量%で使用された。
Irgacure651(Ciba-Geigyから入手可能)は、固体100gあたり0.0039モルの割合で(1重量%)使用された。これは、高ビニルSBSを架橋させるものとして知られている標準開裂型の光開始剤である(米国特許第6,486,229 B1号参照)。
ベンゾフェノン(Ciba-Geigyより入手可能)は、固体100gにつき0.0039モルの割合(0.71重量%)で使用された。ベンゾフェノンは、標準開裂の光開始剤である。
例3の光開始剤は、重合体光開始剤上の活性ベンゾフェノン部位100gあたり0.0031当量の割合(3.69重量%)で使用された。
【0115】
残余部分の油(Britol 35T)は、固体組成物重量で46.31〜49%の割合で使用された。
これらの固体成分は、トルエン中で50%固体で溶解され、フィルムを剥離ライナー上に鋳造するために均質な溶液が使用された。これらを3分間250°Fで乾燥させて、2ミルの乾燥フィルムを生成した。これらを上述の通りに硬化し、次にRDA(以上で記述した通り)によりかつゲル画分についてテストした。
表5は、硬化後の重合体のゲル画分について報告している。表6は、硬化後のタンデルタについて報告している。
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
表5及び6から、例3の光開始剤がこれらのスチレンブロック共重合体の全てを硬化する上で従来の光開始剤より有効であり、SISを硬化できる唯一のものであることは明白である。
当業者にとっては明らかとなるように、本発明の数多くの修正及び変更をその精神及び範囲から逸脱することなく行なうことができる。本書に記述された特定的な実施形態は、一例としてのみ提供されており、本発明は、添付のクレームの文言及びかかるクレームが権利を有する等価物の全範囲によってのみ制限されるべきものである。