(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882955
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ロバストヒューズ付トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/82 20060101AFI20160225BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20160225BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20160225BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20160225BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20160225BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20160225BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20160225BHJP
H01L 29/49 20060101ALI20160225BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20160225BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
H01L21/82 R
H01L29/80 F
H01L29/80 H
H01L29/44 P
H01L29/50 M
H01L29/58 G
H01L27/04 H
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-147808(P2013-147808)
(22)【出願日】2013年7月16日
(65)【公開番号】特開2014-27271(P2014-27271A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2013年7月29日
(31)【優先権主張番号】61/675,494
(32)【優先日】2012年7月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/937,173
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597161115
【氏名又は名称】インターナショナル レクティフィアー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エイ ブリエール
【審査官】
宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/104302(WO,A1)
【文献】
特開平06−275658(JP,A)
【文献】
特開平01−248564(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/014951(WO,A1)
【文献】
特開平02−194654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/82
H01L 21/338
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 29/41
H01L 29/417
H01L 29/423
H01L 29/49
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタであって、
複数のソースフィンガに対しインターディジタル関係に配置された複数のドレインフィンガと、
前記複数のドレインフィンガと前記複数のソースフィンガとの間の電流の流れを制御するように構成されたゲートと、
複数のドレインヒューズであって、各ドレインヒューズは、前記ドレインフィンガを流れる電流が前記ドレインフィンガの最大飽和電流の2倍から10倍の範囲内であって、前記トランジスタの公称のドレイン−ソース電流よりも小さい所定の電流値に到達したときに、自動的に前記複数のドレインフィンガのうちの1つのドレインフィンガを前記複数のドレインフィンガのうちの前記1つのドレインフィンガ以外の残りのものから電気的に分離させるように構成されている当該複数のドレインヒューズと、
を具えるトランジスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のトランジスタにおいて、前記複数のドレインヒューズのうちの少なくとも1つが前記ドレインフィンガを共通ドレインパッドに電気的に結合しているようにしたトランジスタ。
【請求項3】
請求項1に記載のトランジスタにおいて、このトランジスタが複数のソースヒューズを有し、各ソースヒューズは、前記複数のソースフィンガのうちの1つのソースフィンガを、前記複数のソースフィンガのうちの前記1つソースフィンガ以外の残りのものから電気的に分離させるように構成されているようにしたトランジスタ。
【請求項4】
請求項1に記載のトランジスタにおいて、このトランジスタが複数のソースヒューズを有し、各ソースヒューズは、前記複数のソースフィンガのうちの1つのソースフィンガを共通ソースパッドに電気的に結合しているようにしたトランジスタ。
【請求項5】
請求項1に記載のトランジスタにおいて、このトランジスタは高電子移動度トランジスタ(HEMT)としたトランジスタ。
【請求項6】
請求項1に記載のトランジスタにおいて、このトランジスタは窒化ガリウム(GaN)トランジスタとしたトランジスタ。
【請求項7】
請求項1に記載のトランジスタにおいて、このトランジスタはIII-V族トランジスタとしたトランジスタ。
【請求項8】
トランジスタであって、
複数のソースフィンガに対しインターディジタル関係に配置された複数のドレインフィンガと、
前記複数のドレインフィンガと前記複数のソースフィンガとの間の電流の流れを制御するように構成された複数のゲートと、
複数のドレインヒューズであって、各ドレインヒューズは、前記複数のドレインフィンガのうちの1つのドレインフィンガを共通ドレインパッドに電気的に結合しており、前記ドレインフィンガを流れる電流が前記ドレインフィンガの最大飽和電流の2倍から10倍の範囲内であって、前記トランジスタの公称のドレイン−ソース電流よりも小さい所定の電流値に到達したときに、自動的に開放するように構成されている当該複数のドレインヒューズと、
を具えるトランジスタ。
【請求項9】
請求項8に記載のトランジスタにおいて、このトランジスタが複数のソースヒューズを有し、各ソースヒューズは、前記複数のソースフィンガのうちの1つのソースフィンガを共通ソースパッドに電気的に結合しているようにしたトランジスタ。
【請求項10】
請求項8に記載のトランジスタにおいて、このトランジスタは高電子移動度トランジスタ(HEMT)としたトランジスタ。
【請求項11】
請求項8に記載のトランジスタにおいて、このトランジスタは窒化ガリウム(GaN)トランジスタとしたトランジスタ。
【請求項12】
請求項8に記載のトランジスタにおいて、このトランジスタはIII-V族トランジスタとしたトランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロバストヒューズ付トランジスタに関するものである。本出願は、2012年7月25日に出願された“Robust Fused Transistor Design”と題する米国仮特許出願第61/675,494号の優先権の利益を享受するものである。この米国仮特許出願における開示の全ては参考のために本出願に導入されるものである。
[定義]
【0002】
ここで用いている用語「III-V族」は、少なくとも1つのIII族元素と少なくとも1つのV族元素を含んでいる化合物半導体を参照するものである。例えば、III-V族半導体はIII-窒化物半導体の形態をとることができる。「III-窒化物」又は「III-N」は、窒素と、アルミニウ(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)及びホウ素(B)のような少なくとも1つの III族元素とを含む化合物半導体を参照するものであり、これにはその何らかの合金、例えば、窒化アルミニウガリウム(Al
x Ga
(1-x) N)、窒化インジウムガリウム(In
y Ga
(1-y) N)、窒化アルミニウインジウムガリウム(Al
x In
y Ga
(1-x-y) N)、ヒ化リン化窒化ガリウム(GaAs
a P
b N
(1-a-b) )、ヒ化リン化窒化アルミニウインジウムガリウム(Al
x In
y Ga
(1-x-y) As
a P
b N
(1-a-b) )が含まれるが、これらの合金に限定されるものではない。III-窒化物は一般に、Ga極性、N極性、半極性又は非極性の如何なる極性の結晶軸方向をも言及するものであるが、これらの極性に限定されるものではない。III-窒化物材料には、ウルツ鉱、せん亜鉛鉱又は混合ポリタイプの何れかを含めることもでき、又シングルクリスタル、モノクリスタル、ポリクリスタル又はアモルファス構造を含めることができる。ここで用いる窒化ガリウム、すなわちGaNは、 III族元素にある量の又はかなりの量のガリウムが含まれているがこのガリウムに加えて他の III族元素をも含めることができるIII-窒化物の化合物半導体を参照するものである。III-V族又はGaNトランジスタは、このIII-V族又はGaNトランジスタを低電圧のIV族トランジスタとカスコード接続することにより形成した複合高電圧エンハンスメントモードトランジスタをも参照するものである。
【0003】
更にここで用いている用語「IV族」は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)及び炭素(C)のような少なくとも1種類のVI族元素を含む半導体を参照するものであり、これには例えば、シリコンゲルマニウム(SiGe)及びシリコンカーバイド(SiC)のような化合物半導体をも含みうるものである。IV族は、IV族元素の1つよりも多い層を含むか又はIV族元素のドーピングを含んでストレインドIV族材料を形成する半導体材料をも参照するものであり、これには、例えば、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、SIMOX(Separation by Implantation of Oxygen)処理基板及びシリコン・オン・サファイア(SOS)のようなIV族ベースド複合基板をも含みうるものである。
【背景技術】
【0004】
トランジスタはしばしば、トランジスタのドレインが複数のドレインフィンガを具え、トランジスタのソースが複数のソースフィンガを具えているマルチフィンガレイアウトを有している。複数のドレインフィンガは複数のソースフィンガに対しインターディジタル関係(指合関係)に配置されており、トランジスタが複数のドレインフィンガと複数のソースフィンガとの間に電流を流しうるようになっている。このマルチフィンガレイアウトによれば、トランジスタの電流伝導能力を高めるとともに抵抗値を低くすることができる。従って、マルチフィンガレイアウトは、パワースイッチング分野のような、高周波と高電力との双方又は何れか一方の分野において望ましいものとなりうる。
【0005】
[概要]
ロバストヒューズ付トランジスタは実質的に、少なくとも1つの図面に示すかこの図面に関連して説明したものであり、より完全には特許請求の範囲に開示した通りのものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、従来のトランジスタを示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例による代表的なトランジスタを示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の他の実施例による代表的なトランジスタを示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の更に他の実施例による代表的なトランジスタを示す平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の更に他の実施例による代表的なトランジスタを示す平面図である。
【0007】
以下の説明には、本発明の実施に関連する特定の情報が含まれるものである。この出願における図面及びこれらに付随する詳細な説明は代表的な実施例に向けられたものである。特に断らない限り、これらの図面間で同じ又は対応する素子には、同じ又は対応する参照符号を付してある。更に、この出願における図面は実際のものに比例して描いておらず、各部の相対寸法も実際のものに対応しているものではない。
【0008】
図1は、従来のトランジスタを示す平面図である。このトランジスタ100は複数のドレインフィンガを有しており、これらのうちドレインフィンガ102a、102b、102c及び102dのみを図示している。このトランジスタ100は複数のソースフィンガをも有しており、これらのうちソースフィンガ104a、104b、104c及び104dのみを図示している。このトランジスタ100は更にゲート106を有している。ドレインフィンガ102a、102b、102c及び102dはそれぞれ共通ドレインパッド108に電気的に結合されているとともにこの共通ドレインパッド108と一体に形成されている。ソースフィンガ104a、104b、104c及び104dはそれぞれ共通ソースパッド110に電気的に結合されているとともにこの共通ソースパッド110と一体に形成されている。
【0009】
ドレインフィンガ102a、102b、102c及び102dはソースフィンガ104a、104b、104c及び104dに対しインターディジタル関係に配置されており、トランジスタ100がこれらの間に電流を流しうるようになっている。ゲート106は、ドレインフィンガ102a、102b、102cとソースフィンガ104a、104b、104c及び104dとの間の電流の流れを制御する。このゲート106はゲート接点112を用いて制御することができる。
【0010】
ゲート106はドレインフィンガ102a、102b、102c及び102dとソースフィンガ104a、104b、104c及び104dとを織り交ぜる(インターウィーブさせる)。しかし、ゲート106は、共通ゲートパッドに接続した複数のゲートフィンガを有するようにすることもでき、他の相互接続層(図示せず)を用いて、複数のドレインフィンガ及び複数のソースフィンガと類似するようにインターディジタル関係の配置にすることができる。ここで、ドレインフィンガ、ソースフィンガ及びゲートフィンガを一般にデバイスフィンガと称することもできる。
【0011】
トランジスタ100は、例えば、複数のドレインフィンガ及び複数のソースフィンガをそれぞれほぼ100個以上有することができる。このトランジスタ100は、短絡が生じた場合に突発故障するおそれがある。この短絡は、ゲート106とドレインフィンガ102a、102b、102c及び102dの何れかとの間に、又はゲート106とソースフィンガ104a、104b、104c及び104dの何れかとの間に生じるおそれがある。一例としては、短絡はドレインフィンガ102a、102b、102c及び102dの何れかからゲート106までと、ゲート106からソースフィンガ104a、104b、104c及び104dの何れかまでとなるおそれがある。しかし、短絡にはゲート106を含まずに、ドレインフィンガ102a、102b、102c及び102dの何れかとソースフィンガ104a、104b、104c及び104dの何れかとの間に短絡が生じる可能性がある。この状態は例えば、トランジスタ100の1つ以上の相互接続層における不具合により短絡が生じた場合に起こる可能性がある。
【0012】
短絡によれば、ゲート制御を不能にし、ゲート106によるトランジスタ100のターンオフの制御を不可能にする。このことにより、トランジスタ100に結合しうる負荷又はその他の周辺回路を損傷するおそれがある。又、このゲート制御の不能により、トランジスタ100を長時間にわたり同時に高電圧及び高電流状態にするおそれがある。このことにより、トランジスタ100が過剰のエネルギーを消費して突発故障を生ぜしめるようにするおそれがある。
【0013】
このゲート制御の不能に加えて、トランジスタ100を流れる電流のうちの大部分が短絡部分を流れるようになる。従って、影響を受けたデバイスフィンガの電流がその公称の最大保持電流を超えるおそれがある。更に、短絡個所における高電流密度により、半導体材料の破壊や、その後の、影響を受けたデバイスフィンガを形成している金属の短絡及び溶融を生ぜしめるおそれがある。
【0014】
本発明の実施例によれば、トランジスタが複数のデバイスヒューズを有し、各デバイスヒューズは、複数のデバイスフィンガのうちの1つのデバイスフィンガが、これら複数のデバイスフィンガのうちのこの1つのデバイスフィンガ以外の残りのデバイスフィンガから電気的に分離されるように構成されているようにする。このようにすることにより、過剰の電流をデバイスフィンガに流す短絡が生じた場合に、ここを流れる電流を永久に遮断し、これによりトランジスタ及び周辺回路を保護することができる。ある実施例では、複数のヒューズの各々がデバイスフィンガの所定の最大飽和電流の約2倍〜約10倍で開放するようにする。
【0015】
一例としては、デバイスは、1cm
2 当たり約1E6アンペアとした、デバイスフィンガに対するエレクトロミグレーションにより許容される相互接続層又は金属の断面の公称保持電流密度を有しうる。デバイスは、公称のドレイン‐ソース電流が約10アンペアとなり、最大飽和電流が約40アンペアとなるように設計しうる。デバイスが100個のデバイスフィンガを有する場合には、約400ミリアンペアの最大飽和電流に対し約100ミリアンペアの公称ドレイン‐ソース電流を許容するように、各デバイスフィンガを構成する。従って、デバイスヒューズは、デバイスフィンガを流れる電流が例えば、約0.8アンペア〜約4アンペアだけ超過する場合に開放するように設計しうる。更に、デバイスヒューズは、例えば、デバイスヒューズの断面の1cm
2 当り約8E6アンペアよりも大きい電流密度で開放するように構成しうる。
【0016】
複数のデバイスヒューズを設けることによりトランジスタの抵抗値を高める可能性がある。ある実施例では、複数のデバイスヒューズにより抵抗値が追加されている為に予期される損失を考慮してトランジスタは定格電力の約5%〜約10%だけ大型化する。又、トランジスタの大型化は、影響を受けた1つ以上のデバイスフィンガが複数のデバイスヒューズのうちの1つ以上によりトランジスタから電気的に分離された場合でも、トランジスタの電力定格が依然として負荷条件を満足するようにしうる。
【0017】
図2を参照するに、この
図2は本発明の一実施例による代表的なトランジスタの平面図である。この
図2では、トランジスタ200が複数のドレインフィンガを有しており、これらのドレインフィンガのうちドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dのみを図示している。このトランジスタ200はソースフィンガをも有しており、これらのソースフィンガのうちソースフィンガ204a、204b、204c及び204dのみを図示している。このトランジスタ200は更にゲート206を有している。ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dの各々は、共通ドレインパッド208に電気的に結合されている。又、ソースフィンガ204a、204b、204c及び204dの各々は、共通ソースパッド210に電気的に結合されている。
【0018】
ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dはソースフィンガ204a、204b、204c及び204dに対しインターディジタル関係に配置され、トランジスタ200はドレインフィンガとソースフィンガとの間に電流を流しうるようになっている。ゲート106は、ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dとソースフィンガ204a、204b、204c及び204dとの間の電流の流れを制御するように構成されている。このゲート206はゲート接点212を用いて制御しうる。
【0019】
ゲート106は、ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dとソースフィンガ204a、204b、204c及び204dとを織り交ぜる。しかし、ゲート206は、共通ゲートパッドに接続した複数のゲートフィンガを有するようにすることもでき、他の相互接続層(図示せず)を用いて、複数のドレインフィンガ及び複数のソースフィンガに対しインターディジタル関係の配置にすることができる。
【0020】
トランジスタ200の抵抗値は、他のデバイスレイアウトを用いている他のトランジスタに比べて低くしうる。電力スイッチング分野では、トランジスタ200は、電力を負荷に供給する電力スイッチとして用いることができる。しかし、本発明の観点は、電力スイッチング分野に用いるトランジスタ以外にも及ぶものである。
【0021】
トランジスタ200の例には、シリコンカーバイド(炭化ケイ素)又はシリコントランジスタのようなVI族トランジスタや、ガリウムナイトライド(GaN)トランジスタのようなIII-V族トランジスタ(例えば、III-窒化物トランジスタ)が含まれるものである。ある実施例では、トランジスタ200をGaN‐HEMTのような高電子移動度トランジスタ(HEMT)とする。トランジスタ200の他の例には、種々の型の金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、ジャンクション電界効果トランジスタ(JFET)及び絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が含まれる。
【0022】
トランジスタ200は複数のドレインヒューズをも有しており、これらのドレインヒューズのうちドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dのみを図示している。ドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dの各々は、図示するようにドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dの1つを共通ドレインパッド208に電気的に結合している。ドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dの各々は、ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dの関連する1つをこれらドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dのうちの前記1つ以外の残りのものから電気的に分離させるように構成されている。従って、短絡中、ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dの関連する1つが電気的に分離され、これによりトランジスタ200及び周辺回路を保護する。しかし、ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dのうちの前記1つ以外の残りのものはトランジスタ200において動作状態に維持しうる。
【0023】
例えば、短絡がゲート206とドレインフィンガ202aとの間に生じるものとする。ゲート206及びドレインフィンガ202aを流れる電流は、これらゲート206及びドレインフィンガ202aの双方に対する最大飽和電流を超える。更に、この電流は、ドレインヒューズ214aを作動させるのに必要なこのドレインヒューズ214aの断面の電流密度を超え、このドレインヒューズの作動によりゲート206とドレインフィンガ202aとの間の短絡を分離させる。しかし、ドレインヒューズ214b、214c及び214dは閉じたままであり、トランジスタ200の他の領域の動作をそのまま続けさせる。
【0024】
ドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dは、少なくとも1種類の金属、金属合金又はポリシリコンを有しうる。例えば、これらのドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dがアルミニウ又はアルミニウ合金を有するようにしうる。ある実施例では、ドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dが窒化チタンを有するようにする。これらドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dは、ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dと共通ドレインパッド208との双方又は何れか一方と同じ又は異なる材料を有しうる。ある実施例では、ドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dの各々が、金属又は金属合金の単一層を有するようにする。これらのドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dは、ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dと共通ドレインパッド208との双方又は何れか一方と一体に(例えば、同じ金属の層から)形成しうる。しかし、ドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dの幾何学的形状配置は、短絡中にその付近の温度がヒューズ材料の気化に必要とする温度を超えるようにする。この気化は、ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dの関連する1つにおける連続する電流の流れを遮断する開回路を生ぜしめるものである。
【0025】
トランジスタ200においては、ゲート206とドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dの何れかとの間に、又はゲート206とソースフィンガ204a、204b、204c及び204dの何れかとの間に短絡が生じるおそれがある。一例としては、短絡はドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dの何れかからゲート206までと、ゲート206からソースフィンガ204a、204b、204c及び204dの何れかまでとなる可能性がある。しかし、短絡にはゲート206を含まず、ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dの何れかとソースフィンガ204a、204b、204c及び204dの何れかとの間に短絡が生じる可能性がある。この状態は例えば、トランジスタ200の1つ以上の相互接続層における不具合により短絡が生じた場合に起こる可能性がある。
【0026】
図2は、複数のドレインフィンガが関連のヒューズを有している実施例を示している。しかし、ヒューズは、複数のドレインフィンガに加えて又はこれらに代えて、複数のソースフィンガの何れとも同様に関連させるか、又は(トランジスタ200に含まれない)複数のゲートフィンガと関連させるようにするか、或いはこれらの双方の関連を達成させることができる。トランジスタがゲートとソース及びドレインの双方又は何れか一方との間の短絡部を分離しうるようにするためには、全てのデバイスフィンガが関連のヒューズを有するようにしうる。それぞれのヒューズは、
図2におけるドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dと同様に、各デバイスフィンガを共通パッドに連結しうる。しかし、本発明の全ての実施例において全てのデバイスフィンガがそれぞれのヒューズを有するようにする必要はない。
【0027】
図3を参照するに、この
図3は本発明の一実施例による代表的なトランジスタの平面図を示す。この
図3においては、トランジスタ300が複数のドレインフィンガを有しており、これらのドレインフィンガのうちドレインフィンガ302a、302b、302c及び302dのみを図示してある。ドレインフィンガ302a、302b、302c及び302dは、
図2におけるドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dに対応する。トランジスタ300は複数のソースフィンガをも有しており、これらのソースフィンガのうちソースフィンガ304a、304b、304c及び304dのみを図示してある。トランジスタ300は更に、ゲート306、共通ドレインパッド308、共通ソースパッド310、ゲート接点312及びドレインヒューズ314a、314b、314c及び314dを有しており、これらはそれぞれ
図2におけるゲート206、共通ドレインパッド208、共通ソースパッド210、ゲート接点212及びドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dに対応する。
【0028】
従って、トランジスタ300はトランジスタ200に類似している。しかし、トランジスタ300は複数のソースヒューズをも有しており、これらソースヒューズのうちソースヒューズ316a、316b、316c及び316dのみを図示してある。ソースヒューズ316a、316b、316c及び316dの各々は、図示するようにソースフィンガ304a、304b、304c及び304dの1つを共通ソースパッド310に電気的に結合している。これらソースヒューズ316a、316b、316c及び316dの各々は、ソースフィンガ304a、304b、304c及び304dの関連の1つを、これらソースフィンガ304a、304b、304c及び304dのうちの前記1つ以外の残りのものから電気的に分離させるように構成されている。従って、短絡中、ソースフィンガ304a、304b、304c及び304dの関連する1つが電気的に分離され、これによりトランジスタ300及び周辺回路を保護する。しかし、ソースフィンガ304a、304b、304c及び304dのうちの前記1つ以外の残りのものはトランジスタ300において動作状態に維持しうる。
【0029】
ソースヒューズ316a、316b、316c及び316dは、潜在的な構造、材料及び動作の点でトランジスタ200のドレインヒューズ214a、214b、214c及び214dに類似させることができる為、これらについては詳細に説明しない。しかし、ソースフィンガ304a、304b、304c及び304dは、ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dとは異なる最大飽和電流特性を有するようにでき、このことはソースヒューズ316a、316b、316c及び316dの構造に反映させることができる。
【0030】
図4を参照するに、この
図4は本発明の一実施例による代表的なトランジスタの平面図を示す。この
図4においては、トランジスタ400が複数のドレインフィンガを有しており、これらのドレインフィンガのうちドレインフィンガ402a、402b、402c及び402dのみを図示してある。ドレインフィンガ402a、402b、402c及び402dは
図3におけるドレインフィンガ302a、302b、302c及び302dに対応する。トランジスタ400は複数のソースフィンガをも有しており、これらのソースフィンガのうちソースフィンガ404a、404b及び404cのみを図示してある。これらソースフィンガ404a、404b及び404cは
図3におけるソースフィンガ304a、304b及び304cに対応する。トランジスタ400は更に、共通ドレインパッド408と、共通ソースパッド410と、ドレインヒューズ414a、414b、414c及び414dと、ソースヒューズ416a、416b及び416cとを有しており、これらはそれぞれ
図3における共通ドレインパッド308と、共通ソースパッド310と、ドレインヒューズ314a、314b、314c及び314dと、ソースヒューズ316a、316b及び316cとに対応する。
【0031】
従って、トランジスタ400はトランジスタ300に類似している。トランジスタ400は、ゲート306の代わりに複数のゲートフィンガを有しており、これらゲートフィンガのうちゲートフィンガ420a、420b及び420cのみを図示している。これらのゲートフィンガ420a、420b及び420cは、ドレインフィンガ402a、402b、402c及び402dとソースフィンガ404a、404b及び204cとの間の電流の流れを制御するように構成されている。図示の実施例では、ゲートフィンガ420a、420b及び420cの各々は、U字状になっておりそれぞれソースフィンガ404a、404b及び404cの1つを囲んでいる。しかし、これに代えて、ゲートフィンガ420a、420b及び420cの各々が、ドレインフィンガ402a、402b、402c及び402dの何れか又は全てを囲むようにすることができる。
【0032】
ゲートフィンガ420a、420b及び420cの各々は、共通ゲートパッド418に電気的に結合されている。ゲートヒューズ422a及び422bは、ゲートフィンガ420aをこのゲートフィンガ420aのそれぞれの端部で共通ゲートパッド418に電気的に結合している。又、ゲートヒューズ422c及び422dは、ゲートフィンガ420bをこのゲートフィンガ420bのそれぞれの端部で共通ゲートパッド418に電気的に結合している。同様に、ゲートヒューズ422e及び422fは、ゲートフィンガ420cをこのゲートフィンガ420cのそれぞれの端部で共通ゲートパッド418に電気的に結合している。ゲートフィンガ420a、420b及び420cの各々は、2つのゲートヒューズにより共通ゲートパッド418に電気的に結合されているが、他の実施例では、この結合に1つのみのゲートヒューズを用いることができる。
【0033】
ゲートヒューズ422a、422b、422c、422d、422e及び422fは、ゲートフィンガ420a、420b及び420cの関連の1つをこれらゲートフィンガ420a、420b及び420cのうち前記1つ以外の残りのものから電気的に分離させるように構成されている。短絡中、ゲートフィンガ420a、420b及び420cの関連の1つが電気的に分離され、これによりトランジスタ400及び周辺回路を保護する。しかし、ゲートフィンガ420a、420b及び420cのうちの前記1つ以外の残りのものはトランジスタ400において動作状態に維持しうる。
【0034】
ゲートヒューズ422a、422b、422c、422d、422e及び422fは、潜在的な構造、材料及び動作の点でトランジスタ300のドレインヒューズ314a、314b、314c及び314dに類似させることができる為、これらについては詳細に説明しない。しかし、ゲートフィンガ420a、420b及び420cは、ドレインフィンガ202a、202b、202c及び202dとは異なる最大飽和電流特性を有するようにでき、このことはゲートヒューズ422a、422b、422c、422d、422e及び422fの構造に反映させることができる。
【0035】
トランジスタ400には、ソースヒューズ及びドレインヒューズの双方又は何れか一方を設けることなしに、ゲートヒューズ422a、422b、422c、422d、422e及び422fを設けることができることに注意すべきである。更に、種々の実施例では、ゲートフィンガ及びゲートヒューズをトランジスタ400におけるものとは異なるように構成することができる。このような他の例を以下に
図5につき説明する。
【0036】
図5を参照するに、この
図5は本発明の一実施例による代表的なトランジスタの平面図を示す。この
図5においては、トランジスタ500が複数のドレインフィンガを有しており、これらのドレインフィンガのうちドレインフィンガ502a、502b、502c及び502dのみを図示してある。ドレインフィンガ502a、502b、502c及び502dは
図4におけるドレインフィンガ402a、402b、402c及び402dに対応する。トランジスタ500は複数のソースフィンガをも有しており、これらのソースフィンガのうちソースフィンガ504a、504b及び504cのみを図示してある。これらソースフィンガ504a、504b及び504cは
図4におけるソースフィンガ404a、404b及び404cに対応する。トランジスタ500は更に、共通ドレインパッド508と、共通ソースパッド510と、共通ゲートパッド518と、ドレインヒューズ514a、514b、514c及び514dと、ソースヒューズ516a、516b及び516cとを有しており、これらはそれぞれ
図4における共通ドレインパッド408と、共通ソースパッド410と、共通ゲートパッド418と、ドレインヒューズ414a、414b、414c及び414dと、ソースヒューズ416a、416b及び416cとに対応する。
【0037】
従って、トランジスタ500はトランジスタ400に類似している。しかし、トランジスタ500においては、ゲートフィンガ520a、520b及び520cの各々がそれぞれ接続部分を有している。これらのそれぞれの接続部分はソースフィンガ504a、504b及び504cの上側又は下側に位置させることができる。図示するように、ゲートフィンガ520a、520b及び520cはそれぞれ接続部分530a、530b及び530cを有している。これらの接続部分530a、530b及び530cは誘電体材料の上に位置させて、ゲートフィンガ520a、520b及び520cを、ソースフィンガ504a、504b及び504cとソースヒューズ516a、516b及び516cとの双方又は何れか一方から絶縁させるようにすることができる。
【0038】
トランジスタ500は、接続部分530a、530b及び530cのうちの1つにそれぞれ隣接するゲートヒューズ522a、522b及び522cをも有している。ゲートフィンガ520a、520b及び520cの各々は、1つのゲートヒューズにより共通ゲートパッド518に電気的に結合されているように示してあるが、
図4におけるゲートフィンガ420a、420b及び420cと同様に2つ以上のゲートヒューズを用いることができる。ゲートヒューズ522a、522b及び522cは、潜在的な構造、材料及び動作の点でトランジスタ400のゲートヒューズ422a、422b、422c、422d、422e及び422fに類似させることができる為、これらについては詳細に説明しない。しかし、ゲートフィンガ520a、520b及び520cは、ゲートフィンガ420a、420b及び420cとは異なる最大飽和電流特性を有するようにでき、このことはゲートヒューズ522a、522b及び522cの構造に反映させることができる。
【0039】
上述したドレインヒューズ、ソースヒューズ及びゲートヒューズ(すなわち、デバイスヒューズ)の何れか又は任意の組み合わせを、デバイスヒューズの下側にある又はこれらデバイスヒューズの周囲にある或いはその双方にある他のデバイスの構成要素から分離させ、影響を受けたデバイスフィンガ及び周囲のデバイス材料への電流の流れを遮断させるようにするのが望ましい。従って、ある実施例では、誘電体材料を、デバイスヒューズの各々の下側に又はこれを囲んで或いはその双方に位置させる。
【0040】
更に、デバイスヒューズは、膨張及び気化が可能であるとともに、デバイスフィンガを他のデバイスフィンガ及び共通デバイスパッドの双方又は何れか一方から物理的に分離させることができるようにする必要がある。従って、図示の実施例では、デバイスヒューズ(例えば、ドレインヒューズ)を膨張及び気化させてデバイスフィンガを共通デバイスパッドから電気的に分離させるようにする領域を含める。この領域は、少なくとも部分的にデバイスヒューズの上方に位置するようにしうるが、少なくとも部分的にデバイスヒューズの1つ以上の側部に又はデバイスヒューズの下側に位置させることもできる。ある実施例では、この領域を、複数の金属化レベルを分離させる1つ以上の金属間誘電体層のような1つ以上の誘電体層内に形成する。この領域は、保護材料又はその他のキャッピング(被覆)材料内に形成することもできる。
【0041】
ある実施例では、デバイスヒューズを酸化又はその他の腐食(すなわち、デバイスヒューズの不動態化)から保護するように、又はその他の目的のために構成したキャッピング材料を設ける。このキャッピング材料は、短絡中にデバイスヒューズが依然として前述した領域内に充分に膨張及び気化するように構成する必要がある。例えば、キャッピング材料をドレインヒューズの上方に位置させることができる。
【0042】
従って、
図2、3、4及び5につき上述したように、本発明の実施例によれば、トランジスタは複数のデバイスヒューズを有し、各デバイスヒューズは複数のデバイスフィンガのうちの1つのデバイスフィンガをこれらデバイスフィンガのうちの前記1つ以外の残りのものから電気的に分離させるように構成されている。従って、過剰の電流をデバイスフィンガに流す短絡が生じた場合、これに流れる電流を永久的に遮断させ、これによりトランジスタ及び周辺回路を保護する。
【0043】
上述したところから明らかなように、上述した本発明の概念の範囲を逸脱することなく、これらの概念を実施するのに種々の技術を用いることができる。更に、本発明の概念をある実施例につき説明したが、当業者にとって認識しうるように、本発明の概念の範囲を逸脱することなく形態及び細部において変更を行うことができる。従って、上述した実施例はあらゆる点で例示的なものであり、限定的なものではない。又、本発明は上述した実施例に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの再配列、変更及び置換を行うことができるものである。