(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における積層フィルムの貯蔵弾性率(E')が100〜500MPaである請求項1または2に記載のストレッチ包装用フィルム。
中間層が、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化ピーク温度(Tc)が70℃以上であり、結晶化熱量(ΔHc)が10〜60J/gである請求項1〜3のいずれかに記載のストレッチ包装用フィルム。
エチレン系樹脂(A)成分が、酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%であり、メルトフローレート(JIS K 7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載のストレッチ包装用フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例としてのストレッチ包装用フィルム(以下「本発明のストレッチフィルム」と称する)について説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明のストレッチフィルムでは、エチレン系樹脂(A)成分を主成分とする表面層を形成し、積層構成とすることで、特に低温でのヒートシール性(底シール性)や、自己粘着性、インフレーションした際の成形性などを高めることができる。
【0014】
ここで、エチレン系樹脂(A)としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、および、エチレンを主成分とする共重合体、例えばエチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステルおよびそのアイオノマー、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる一種または二種以上のコモノマーとの共重合体または多元共重合体、或いは、それらの混合組成物などを挙げることができる。エチレン系重合体中のエチレン単位の含有量は、通常50質量%を超えるものである。
【0015】
これらのエチレン系樹脂(A)の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも一種のエチレン系重合体が好ましい。
【0016】
なお、上記のエチレン−アクリル酸エステル共重合体のアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどが挙げられ、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体のメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
【0017】
これらの中でも、エチレン系樹脂(A)として、酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%で、メルトフローレート(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、特に0.5〜8g/10分、中でも特に1〜6g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体がさらに好ましい。
【0018】
ここで、酢酸ビニル単位含有量が5質量%以上であれば、得られるフィルムが柔らかく、柔軟性や弾性回復性を維持することができるばかりか、表面粘着性を付与することができる。その一方、25質量%以下であれば、表面粘着性が強過ぎることがなく巻き出し性や外観を良好に維持することができる。また、メルトフローレートが0.2g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持することができる一方、10g/10分以下であれば、製膜安定性を維持することができ、厚み斑や力学強度のバラツキ等が生じるのを抑えることができるから好ましい。
【0019】
中間層は、所定のプロピレン系樹脂(B)成分を主成分として含有する層である。
【0020】
本発明においては、中間層の結晶化熱量(ΔHc)を所定の範囲(10J/g以上60J/g以下)にすることが好ましい。結晶化熱量が10J/g未満では結晶性が低すぎて製膜性が悪くなることに加えて、常温ではフィルムが柔らかすぎたり、強度が不足したりするため実用上問題があることがある。また、結晶化熱量が60J/gを超えるものでは、フィルム伸展時に大きな力を要し、また不均一な伸びしか示さず、ストレッチフィルムに適さないことがある。上記結晶化熱量(ΔHc)を所定の範囲に調整する手法は、特に制限されるものではないが、プロピレン系樹脂(B)と異なる樹脂を混合する手法が好適に用いられる。その中でも、各種包装機適性(カット性、包装シワ、底折り込み安定性、ちぎれ性、パック後の透明性)を付与させる点において、後述する樹脂(C)を混合することがより好ましい。
【0021】
プロピレン系樹脂(B)としては、例えばプロピレンの単独重合体、あるいは、プロピレンと「共重合可能な他の単量体」とのランダム共重合体やブロック共重合体などを挙げることができる。
【0022】
このようなプロピレン系樹脂(B)を中間層の主成分することで、底折り込みやカット性等の各種包装適性を高めることができ、またペレット保管安定性のほか、中間層を構成する樹脂組成物の強度や耐熱性を高めることができる。
【0023】
この際、共重合可能な他の単量体としては、エチレンや1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン等の炭素数4〜20のα−オレフィンおよびジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエン類等が挙げられるが、これらの二種以上が共重合されていてもよい。
【0024】
ストレッチフィルムに必要な適度な柔軟性を付与するという観点からは、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、およびリアクタータイプのポリプロピレン系エラストマーおよび、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、ブロックポリプロピレンの中から選ばれる1種または2種類の混合成分を用いるのが好ましい。
【0025】
なお、プロピレン系樹脂(B)において、示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化熱量(ΔHc)が30J/g以上であれば、強度やヒートシール性を保持することができる。
【0026】
ここで、結晶化熱量(ΔHc)は、用いるプロピレン系樹脂(B)の分子量、エチレン含有量(共重合比)、ランダム度(エチレン成分の共重合体中の分散性)や立体規則性などに依存する。一般的に、結晶化熱量が大きいほど、当該ピーク温度も上昇する傾向にあり、総じて耐熱性に優れると言える。このような観点から結晶化熱量(ΔHc)は、30J/g以上であることが好ましく、40J/g以上であることがより好ましく、50J/g以上であるのが特に好ましい。上限値としては特に限定されるものではないが、実用上は150J/g以下である。
【0027】
また、プロピレン系樹脂(B)がブロックポリプロピレンの場合、含有されるゴム成分径は1μm以下であると透明性を損なうことなく、ストレッチ時に発生する衝撃も緩和されるため、ストレッチフィルム用途としては好ましい。なお、ゴム成分径が1μm以上になってしまうと、ストレッチ時の破断の基点となる恐れがある。
【0028】
プロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)が、0.2g/10分以上、好ましくは、0.5〜18g/10分であり、1〜15g/10分であるのがより好ましい。MFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、20g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となると共に、厚みムラや力学強度の低下やバラツキ等が少なくなり好ましい。
【0029】
上記プロピレン系樹脂(B)としては、例えば日本ポリプロ(株)の商品名「ノバテックPP」、住友化学(株)の商品名「ノーブレン」、プライムポリマー(株)の商品名「プライムポリプロ」「プライムTPO」、サンアロマー(株)の商品名「クオリア」、ダウケミカル(株)「バーシファイ」等を挙げることができる。
【0030】
樹脂(C)としては、ビニル芳香族系化合物とイソブチレンとのブロック共重合体またを挙げることができる。このような共重合体は、一般的にゴム弾性を有し柔軟であるため、フィルムに弾性回復性を付与するとともに(B)成分であるポリプロピレン系樹脂の引張弾性率の低減に有効に作用する。
【0031】
ここで、ビニル芳香族系化合物としては、スチレンが代表的なものであるが、α − メチルスチレン等のスチレン同族体も用い得る。また、共役ジエンとしては、1,3 − ブタジエン、イソプレン、1,3 − ペンタジエン等が挙げられ、これらは1種のみを単独で、または2種以上を混合して使用することができる。また、第3 成分として、ビニル芳香族系化合物およびイソブチレン以外の成分を少量含んでいてもよい。
【0032】
また、このような共重合体のビニル芳香族系化合物とイソブチレンの割合は重量比で3/97〜40/60であることが好ましい。ここで共重合組成中のビニル芳香族系化合物が3重量%未満では、共重合体自体の剛性が低下しすぎ、ペレット化が困難になる等の重合生産性が低下しやすく、一方、40重量%を超えると共重合体自体の剛性が高くなり、(B)成分添加の目的であるフィルムに弾性回復性を付与したり、引張弾性率の低減等の効果が不十分となったりすることがある。
【0033】
具体的には、スチレン−イソブチレン共重合体エラストマー(カネカ(株)商品名「SIBSTAR」)等の市販品を用いる事ができる。
【0034】
中間層を構成する樹脂組成物において、樹脂(C)の含有量は1〜50質量%であるのが好ましい。樹脂(C)の含有量が1質量%以上であれば、ストレッチフィルムに必要なフィルムの弾性回復性を付与させることができる。中でも樹脂(C)の含有量は5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、50質量%以下であればプロピレン樹脂(B)との相溶性が向上し透明性を向上する事ができる。よって、弾性回復性の付与および透明性の向上を両立する観点からすると、樹脂(C)の含有量は40質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
中間層を構成する樹脂組成物は、(B)成分、(C)成分のほかに、所定の樹脂(D)成分を含有してもよい。
【0036】
樹脂(D)としては、例えば石油樹脂、テルペン樹脂、クマロンーインデン樹脂、ロジン系樹脂、およびそれらの水素添加誘導体の中から選ばれる1種の樹脂または2種類以上の樹脂(以下、これらを総称して「石油樹脂類」とも称する)を挙げることができる。
【0037】
このような樹脂(D)成分は、フィルムの腰やカット性、底折り込み安定性等の包装適性並びに透明性の更なる向上などに有効に作用する。
【0038】
ここで、石油樹脂としては、シクロペンタジエンまたはその二量体から得られた脂環式石油樹脂やC9成分から得られた芳香族石油樹脂、または、脂環式と芳香族石油樹脂の共重合系石油樹脂等を挙げることができる。
【0039】
テルペン樹脂としては、β−ピネンから得られたテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0040】
クマロン−インデン樹脂としては、タールの160〜180℃留分を精製し、炭素数8のクマロンおよび炭素数9のインデンを主要なモノマーとして重合した熱可塑性合成樹脂等を挙げることができる。
【0041】
ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトール等で変性したエステル化ロジン樹脂等を挙げることができる。
上記のような石油樹脂は、色調や熱安定性、相溶性といった面から水素添加誘導体を用いることが好ましい。
【0042】
また、上記の石油樹脂は、主に分子量により種々の軟化温度を有するものが得られるが、軟化温度が100〜150℃、好ましくは110〜140℃にあるものがより好適である。
【0043】
具体的には、三井化学(株)の商品名「ハイレッツ」、「ペトロジン」、荒川化学工業(株)の商品名「アルコン」、ヤスハラケミカル(株)の商品名「クリアロン」、出光石油化学(株)の商品名「アイマーブ」、イーストマンケミカル(株)の商品名「エスコレッツ」、「リガライト」等の市販品を用いることができる。
【0044】
中間層を構成する樹脂組成物において、樹脂(D)の含有量は1〜40質量%であるのが好ましい。樹脂(D)の含有量が1質量%以上であれば、ストレッチフィルムに必要なカット性および底折り込み安定性を付与させることができる。中でも樹脂(D)の含有量は5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、40質量%以下であればガラス転移温度の上昇に伴ってストレッチフィルムに必要な低温適性が損なわれにくく、また、低分子物のブリードによるフィルムのブロッキングも引き起こしにくい。よって、かかる観点から、樹脂(D)の含有量は35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0045】
中間層を構成する樹脂組成物は、(B)成分、(C)成分、(D)成分のほかに、エチレン系樹脂(E)を含有してもよい。
【0046】
このエチレン系樹脂(E)は、表面層を構成するエチレン系樹脂(A)と同じポエチレン系重合体であっても、異なるエチレン系樹脂であってもよいが、好ましくは同じエチレン系樹脂であるのがよい。エチレン系樹脂(E)と表面層を構成するエチレン系重合体(A)とが同じエチレン系重合体であれば、中間層と表面層との密着性を高めることができ、フィルム全体での力学特性を高めることができるほか、例えば製膜したフィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロスを、中間層の構成原料として添加するようにして調製できるから、材料の無駄を無くし、材料コストの軽減を図ることができる。
【0047】
最も好適なエチレン系樹脂(E)として、酢酸ビニル単位含有量が5〜25質量%で、メルトフローレート(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、特に0.5〜8g/10分、中でも特に1〜6g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体がさらに好ましい。
ここで、酢酸ビニル単位含有量が5質量%以上であれば、得られるフィルムが柔らかく、柔軟性や弾性回復性を維持することができるばかりか、エチレン系樹脂(E)が表面層である場合には、表面粘着性を付与することができる。その一方、25質量%以下であれば、例えばエチレン系樹脂(E)が表面層である場合であっても、表面粘着性が強過ぎることがなく巻き出し性や外観を良好に維持することができる。また、メルトフローレートが0.2g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持することができる一方、10g/10分以下であれば、製膜安定性を維持することができ、厚み斑や力学強度のバラツキ等が生じるのを抑えることができるから好ましい。
【0048】
中間層を構成する樹脂組成物において、エチレン系樹脂(E)の含有量は1〜40質量%であるのが好ましい。エチレン系樹脂(E)の含有量が1質量%以上であればストレッチフィルムに必要な低温適性を付与することができる。中でもエチレン系樹脂(D)の含有量は5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、40質量%以下であれば底折り込み安定性や耐熱性が充分であり、かかる観点から、エチレン系樹脂(E)の含有量は35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0049】
本発明のストレッチフィルムの表面層または中間層には、防曇性、帯電防止性、滑り性、粘着性などの性能を付与するために次のような各種添加剤を適宜配合することができる。
【0050】
ここで、各種添加剤としては例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪酸アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリオレート、ポリグリセリンオレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、グリセリンラウレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、エチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキルエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、さらに、パラフィン系オイル等を挙げることができ、これらのうち一種または二種以上を併用することができる。
【0051】
そして、これらの添加剤は、表面層および/または中間層を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1〜12質量部、好適には1〜8質量部配合させるのが好ましい。
【0052】
本発明のストレッチフィルムは、表面層は、エチレン系重合体(A)であり、中間層は、所定のプロピレン系樹脂(B)成分を主成分として含有する樹脂組成物からなる中間層を備えた少なくとも3層から構成される積層フィルムであればよく、本発明の趣旨を超えない範囲で、力学特性や層間接着性の改良など、必要に応じて他の層(以下、P層と略することがある)を適宜導入してもよい。ここで、表面層(以下、S層と略することがある)は、両表面層以外に、すなわち、中間層に同様の層を有してもかまわない。また、中間層(以下、M層と略することがある)は、両表面層の間に少なくとも1層有してあればよく、2層以上有してもかまわない。例えば(S層)/(M層)/(S層)からなる3層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(S層)からなる4層構成、(S層)/(P層)/(M層)/(P層)/(S層)、(S層)/(M層)/(P層)/(M層)/(S層)などからなる5層構成を代表的に挙げることができる。この場合、各層の樹脂組成や厚み比に関しては同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
本発明のストレッチフィルムにおいて、表面層と中間層の厚み割合の好適な範囲は、表裏層10〜65%、中間層90〜35%であることが好ましい。厚み割合がかかる範囲内であれば、安定した製膜安定性が得られ、ストレッチフィルムに好適な表面粘着性を付与することができる。
【0054】
さらに、安定した製膜加工性、表面粘着性、ストレッチ包装用フィルムとしての諸物性および経済性を考慮する場合には、表裏層20〜60%、中間層80〜40%であるのがより好ましい。
【0055】
本発明のストレッチフィルムの厚さは、通常のストレッチ包装用フィルムとして用いられる範囲、すなわち8μm〜30μm程度、代表的には9μm〜20μm程度の範囲であればよい。
【0056】
本発明のストレッチフィルムは、例えば押出機から材料を溶融押出し、インフレーション成形またはTダイ成形によりフィルム状に成形することにより製造することができる。
積層フィルムとする場合は、複数の押出機を用いて多層ダイにより共押出するのが好ましい。実用的には、環状ダイから材料樹脂を溶融押出してインフレーション成形するのが好ましく、その際のブローアップ比(チューブ径/ダイ径)は3以上が好ましく、特に4〜10の範囲が好適である。その際の冷却方法としては、チューブの外面から冷却する方法、チューブの外、内面の両面から冷却する方法のどちらでもよい。
【0057】
さらに、得られたフィルムを樹脂の結晶化温度以下に加熱し、ニップロール間の速度差を利用してフィルムの縦方向に1.2〜5倍程度に延伸、またはフィルムの縦横方向に1.2〜5倍程度に二軸延伸してもよい。これにより、カット性の改良や熱収縮性の付与などを行うことができる。
【0058】
本発明のストレッチフィルムの貯蔵弾性率は、JISK−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した−40℃から0℃における損失正接(tanδ)の平均値が0.12以上であり、かつ20℃における損失正接(tanδ)が0.20以上である。上記損失正接(tanδ)を満足すれば、応力緩和性がポリ塩化ビニル系フィルムとほぼ同等となり、ポリ塩化ビニル系フィルムに対応した自動包装機において低張力で包装を実施してもしわが発生せず、綺麗に包装することができる。
上記の各物性は、中間層に使用するプロピレン系樹脂(B)、樹脂(C)、樹脂(D)の配合比率を適宜調整することによって達成し、特に樹脂(C)の配合比率を5〜40質量%にすることで達成することができる。
【0059】
本発明のストレッチフィルムの貯蔵弾性率は、JISK−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜500MPaの範囲にあることが好ましい。フィルムを軟質フィルムとして用いる場合、室温付近における弾性率の値が指標となる。20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上であれば、室温でフィルム同士が密着して作業性が悪くなる等の不具合が起こりにくい。一方、500MPa以下であればフィルムが硬すぎることがなく、低張力で包装を実施するポリ塩化ビニル系フィルムに対応する自動包装機でも適度に伸びるため、軟質フィルム用途において有利である。
上記の各物性は、中間層に使用するプロピレン系樹脂(B)、樹脂(C)、樹脂(D)の配合比率を適宜調整することによって達成し、特に樹脂(C)の配合比率を5〜40質量%にすること及び、中間層に使用するプロピレン系樹脂(B)成分の示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化ピーク温度(Tc)が70℃以上であり、結晶化熱量(ΔHc)が10〜60J/gであることによって達成することができる。
【0060】
本発明のストレッチフィルムの柔軟性は、JIS Z1702に準じて温度20℃、引張速度200mm/分で引張試験を行って測定されるフィルム横方向(TD)の100%伸び引張応力が40kgf/cm
2〜140kgf/cm
2の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは50kgf/cm
2〜130kgf/cm
2である。
上記の各物性は、前期の貯蔵弾性率(E‘)を達成するための手段と同様の手段によって達成することができる。
【0061】
本発明において「ストレッチフィルム」とは、伸び性と自己粘着性を有する包装フィルムを広く包含する意味である。典型的には、青果物、精肉、惣菜等を軽量トレーに載せてオーバーラップするプリパッケージ用の包装用フィルムや、荷物運搬時に荷物を固定するためにオーバーラップする包装用フィルムなどを挙げることができる。
【0062】
本発明において「主成分」とは、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が組成物中の50質量%以上、特に70質量%以上、中でも特に90質量%以上(100質量%を含む)を占めるのが好ましい。
【0063】
また、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さおよび幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。例えば厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称すことがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例】
【0064】
以下に、本発明を実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムおよびその材料についての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直角方向を横方向と呼ぶ。
【0065】
(1)結晶化ピーク温度(Tc)および結晶化熱量(ΔHc)
パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、JISK7121、JISK7122に準じて、測定サンプルを10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、1分間保持した後、10℃/分の降温速度で測定し、得られた結晶化曲線に基づき結晶化ピーク温度(Tc)と結晶化熱量(ΔHc)を求めた。
【0066】
(2)−40〜0℃の損失正接の平均値(tanδ)
JISK−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、フィルムの横方向(TD)について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度1℃/分で−100℃から200℃まで測定し、得られたデータからー40〜0℃までの損失正接(tanδ)の平均値を算出した。
【0067】
(3)20℃の損失正接(tanδ)
JISK−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、フィルムの横方向(TD)について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度1℃/分で−100℃から200℃まで測定し、得られたデータから20℃の損失正接(tanδ)を算出した。
【0068】
(4)貯蔵弾性率(E')
JISK−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、フィルムの横方向(TD)について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度1℃/分で−100℃から200℃まで測定し、得られたデータから温度20℃での貯蔵弾性率(E’)を求めた。
【0069】
(5)柔軟性
JIS Z1702に準じて、温度20℃、引張速度200mm/分で引張試験を行い、フィルム横方向の100%伸び引張応力(kgf/cm
2)を測定し、得られたフィルムの柔軟性について下記の基準で評価した。
【0070】
◎:引張応力値(kgf/cm
2)が50以上80未満
○:引張応力値(kgf/cm
2)が40以上50未満、または80以上90未満
△:引張応力値(kgf/cm
2)が20以上40未満、または90以上140未満
×:引張応力値(kgf/cm
2)が20未満、または140以上
【0071】
(6)包装機適性
実施例・比較例で得られたフィルム(幅350mm)を用い、ポリ塩化ビニル系フィルムに対応した自動包装機により発泡ポリスチレントレー(長さ330mm、幅230mm、高さ38mm)を包装し、第2表に示す基準で、パック後の透明性、カット性、包装シワ、底折り込み安定性、ちぎれ性について評価し表1に結果を示した。
【0072】
実施例1:
両表面層を形成する樹脂組成物については、(A)成分であるエチレン系重合体としてのEVA(酢酸ビニル含有量:15質量%、メルトフローレート(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)2.0g/10分)97質量部と、防曇剤としてのジグリセリンオレート3質量部とを溶融混練した。他方、中間層を形成する樹脂組成物については、(B)成分であるプロピレン系樹脂(ブロックポリプロピレン、結晶化熱量:67.0J/g、結晶化ピーク温度:121.0℃、メルトフローレート(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)2.0g/10分)と、(C)成分であるビニル芳香族系化合物とイソブチレンとのブロック共重合体(メルトフローレート(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)6.0g/10分)と、(D)成分として水素添加石油樹脂(軟化温度140℃、荒川化学工業(株)製、アルコンP140)を、質量比で(B)/(C)/(D)=51.4/32.4/16・2となるように溶融混練し、これらの溶融混練樹脂を環状三層ダイ190℃、ブローアップ比5.0で共押出インフレーション成形して、総厚み12μm(2μm/8μm/2μm)の3層フィルムを得た後に評価を実施した。
【0073】
実施例2:
両表面層を形成する樹脂組成物については、(A)成分であるエチレン系重合体としてのEVA(酢酸ビニル含有量:15質量%、メルトフローレート(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)2.0g/10分)97質量部と、防曇剤としてのジグリセリンオレート3質量部とを溶融混練した。他方、中間層を形成する樹脂組成物については、(B)成分であるプロピレン系樹脂(ブロックポリプロピレン、結晶化熱量:67.0J/g、結晶化ピーク温度:121.0℃、メルトフローレート(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)2.0g/10分)と(エチレン−αオレフィン共重合体、結晶化熱量:8.9J/g、結晶化ピーク温度:100.0℃、メルトフローレート(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)2g/10分)を64/36の比率で混合した後に、(C)成分であるビニル芳香族系化合物とイソブチレンとのブロック共重合体(メルトフローレート(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)6.0g/10分)と、(D)成分として水素添加石油樹脂(軟化温度140℃、荒川化学工業(株)製、アルコンP140)を、質量比で(B)/(C)/(D)=51.4/32.4/16・2となるように溶融混練し、これらの溶融混練樹脂を環状三層ダイ190℃、ブローアップ比5.0で共押出インフレーション成形して、総厚み12μm(2μm/8μm/2μm)の3層フィルムを得た後に評価を実施した。
【0074】
比較例1:
実施例1における中間層を形成する樹脂組成物について、(B)成分であるプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体、結晶化熱量:62.5J/g、結晶化ピーク温度:112.3℃、メルトフローレート(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)7.0g/10分)と、(C)成分であるビニル芳香族系化合物と共役ジエンとの水素添加誘導体(メルトフローレート(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)0.7g/10分)と、(D)成分として水素添加石油樹脂(軟化温度125℃、荒川化学工業(株)製、アルコンP125)を、質量比で(B)/(C)/(D)=51.4/32.4/16・2となるように溶融混練したものに変更した以外は、実施例1と同様にして3層フィルムを得た後に評価を実施した。
【0075】
参考例:
市販のポリ塩化ビニル系フィルム(三菱樹脂(株)製)を購入した後に評価を実施した。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1の結果より、実施例1、2は、動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した−40〜0℃における損失正接(tanδ)の平均値が0.12以上であり、かつ20℃における損失正接(tanδ)が0.20以上であり、プロピレン樹脂(B)を主成分とする中間層が(2)示差走査熱量計(DSC)にて10℃/分の降温速度で測定したときの結晶化熱量(ΔHc)が10J/g以上60J/g以下であることにより、低張力で包装を実施するポリ塩化ビニルフィルムに対応した自動包装機であっても包装適性は良好な結果を示し、かつ貯蔵弾性率(E')を満足することで、カット性、ちぎれ性等の各種包装適性及び、柔軟性についても良好な結果を得ることが確認できる。また、実施例2は、中間層を形成する樹脂組成物(B)成分および(C)成分のほかに、(D)成分として水素添加石油樹脂を含むことにより、柔軟性、包装機適性に特に優れているため、特に好ましい態様である。これに対して、動的粘弾性測定法により動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した−40〜0℃における損失正接(tanδ)の平均値が0.12以下である場合は、ポリ塩化ビニル系フィルムに対応した自動包装機の包装適性において、好適に包装できず、シワが発生するのが見受けられ(比較例1)、またポリ塩化ビニル系フィルムは、包装適性は満足するが、非塩素系ストレッチ包装用フィルムには適合しなかった(参考例)。