特許第5882979号(P5882979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5882979コンタクトレンズの材料、コンタクトレンズの製造方法およびこの方法により製造されるコンタクトレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882979
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】コンタクトレンズの材料、コンタクトレンズの製造方法およびこの方法により製造されるコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20160225BHJP
   A61L 27/00 20060101ALI20160225BHJP
   C08G 77/20 20060101ALI20160225BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20160225BHJP
   C08G 77/388 20060101ALI20160225BHJP
   C08G 77/46 20060101ALI20160225BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20160225BHJP
   C08F 299/08 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   G02C7/04
   A61L27/00 D
   C08G77/20
   C08G77/38
   C08G77/388
   C08G77/46
   C08F290/06
   C08F299/08
【請求項の数】22
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-255889(P2013-255889)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-153710(P2014-153710A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年3月5日
(31)【優先権主張番号】102104757
(32)【優先日】2013年2月7日
(33)【優先権主張国】TW
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311005301
【氏名又は名称】明基材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(74)【代理人】
【識別番号】100107560
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 惣一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲チャン▼ 凡丹
【審査官】 吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−311917(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/005645(WO,A2)
【文献】 特開2010−015175(JP,A)
【文献】 特表2003−526707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が1000〜10000であり、架橋機能を有する、式(I)で表される第1のシロキサンマクロマーと、
【化1】
(式(I)中、R、RおよびRはそれぞれ独立にC−Cアルキル基であり、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、RはOまたはNHであり、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、Rは水素、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、Rはヒドロキシル基、カルボキシ基、エポキシ基または酸無水物官能基を有する反応性官能基の残基であり、nは10〜100の整数である。)
式(II)で表されるシロキサンマクロマーおよび式(III)で表されるシロキサンマクロマーからなる群より選ばれる第2のシロキサンマクロマーと、
【化2】
【化3】
(式(II)中、pは4〜80の整数であり、式(III)中、qは4〜80の整数、rは3〜40の整数である。)
N−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、メタクリル酸、アクリル酸、グリシジルメタクリレート(GMA)、メタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、酢酸ビニル、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−アクリロイルモルホリンおよびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の親水性モノマーと、
開始剤と、
を含むコンタクトレンズの材料。
【請求項2】
前記第1のシロキサンマクロマーが5〜35重量部、前記第2のシロキサンマクロマーが30〜50重量部、前記少なくとも1種の親水性モノマーが5〜60重量部、前記開始剤が0.5〜0.7重量部である請求項1に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項3】
前記第1のシロキサンマクロマーが、式(IV)で表されるシロキサンマクロマーまたは式(V)で表されるシロキサンマクロマーを含む請求項1に記載のコンタクトレンズの材料。
【化4】
【化5】
(式(IV)中、sは10〜100の整数であり、式(V)中、tは10〜100の整数である。)
【請求項4】
前記少なくとも1種の親水性モノマーが、N−ビニルピロリドンと2−ヒドロキシエチルメタクリレートの組み合わせ、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせ、N−ビニルピロリドンとN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせ、またはN−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせである請求項1に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項5】
前記開始剤が熱開始剤であり、前記熱開始剤が2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)または2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を含む請求項1に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項6】
前記開始剤が光開始剤であり、前記光開始剤が2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(2−Hydroxy−2−methylpropiophenone)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1−Hydroxycyclohexyl phenyl ketone)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(2,2−Dimethoxy−2−phenylacetophenone)、ベンゾインメチルエーテル(Benzoin methyl ether)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル‘(2,2’−azobis−isobutyronitrile)または2,2−ジエトキシアセトフェノン(2,2−Diethoxyacetophenone)を含む請求項1に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項7】
前記少なくとも1種の親水性モノマーが前記2−ヒドロキシエチルメタクリレートと前記N,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせである請求項1に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項8】
前記第1のシロキサンマクロマーが5〜25重量部、前記第2のシロキサンマクロマーが30〜40重量部、前記2−ヒドロキシエチルメタクリレートが10〜30重量部、前記N,N−ジメチルアクリルアミドが25〜50重量部、前記開始剤が0.5〜0.7重量部である請求項7に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項9】
前記少なくとも1種の親水性モノマーが前記N−ビニルピロリドン、前記2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび前記N,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせである請求項1に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項10】
前記第1のシロキサンマクロマーが5〜10重量部、前記第2のシロキサンマクロマーが30〜50重量部、前記N−ビニルピロリドンが20〜50重量部、前記2−ヒドロキシエチルメタクリレートが5〜15重量部、前記N,N−ジメチルアクリルアミドが4〜15重量部、前記開始剤が0.5〜0.7重量部である請求項9に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項11】
追加の架橋剤をさらに含む請求項1に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項12】
前記第1のシロキサンマクロマーが5〜35重量部、前記第2のシロキサンマクロマーが30〜50重量部、前記少なくとも1種の親水性モノマーが5〜50重量部、前記開始剤が0.5〜0.7重量部、前記追加の架橋剤が0.1〜5重量部である請求項11に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項13】
前記追加の架橋剤が、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TrEGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ビニルメタクリレート、エチレンジアミンジメチルアクリルアミド、グリセロールジメタクリレート、イソシアヌル酸トリアリルまたはシアヌル酸トリアリル(triallyl cyanurate)を含む請求項11に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項14】
前記少なくとも1種の親水性モノマーが前記N−ビニルピロリドンと前記N,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせであり、かつ前記第1のシロキサンマクロマーが25〜35重量部、前記第2のシロキサンマクロマーが25〜35重量部、前記N−ビニルピロリドンが25〜35重量部、前記N,N−ジメチルアクリルアミドが5〜10重量部、前記開始剤が0.5〜0.7重量部、前記追加の架橋剤が0.1〜0.5重量部である請求項11に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項15】
前記少なくとも1種の親水性モノマーが前記N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせであり、前記第1のシロキサンマクロマーが5〜15重量部、前記第2のシロキサンマクロマーが40〜50重量部、前記N−ビニルピロリドンが0.1〜1重量部、前記2−ヒドロキシエチルメタクリレートが5〜15重量部、前記N,N−ジメチルアクリルアミドが25〜35重量部、前記開始剤が0.5〜0.7重量部、前記追加の架橋剤が0.1〜5重量部である請求項11に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項16】
色素および/または抗UV剤をさらに含む請求項1に記載のコンタクトレンズの材料。
【請求項17】
コンタクトレンズの製造方法であって、
(a)成分として第1のシロキサンマクロマー、第2のシロキサンマクロマー、少なくとも1種の親水性モノマー、開始剤および溶剤を含むコンタクトレンズを形成するのに用いる混合物を作る工程、ならびに、
(b)前記コンタクトレンズを形成するのに用いる混合物をコンタクトレンズの鋳型に入れ、加熱プロセスまたはUV光照射プロセスにより前記コンタクトレンズを形成するのに用いる混合物を反応させてコンタクトレンズを形成する工程、
を含み、
前記第1のシロキサンマクロマーは数平均分子量が1000〜10000で、架橋機能を有し、かつ式(I)で表されるものであり、前記第2のシロキサンマクロマーは式(II)で表されるシロキサンマクロマーおよび式(III)で表されるシロキサンマクロマーからなる群より選ばれるものであり、式(I)、式(II)および(III)がそれぞれ次のとおりであり、
【化6】
【化7】
【化8】
(式(I)中、R、RおよびRはそれぞれ独立にC−Cアルキル基であり、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、RはOまたはNHであり、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、Rは水素、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、Rはヒドロキシル基、カルボキシ基、エポキシ基または酸無水物官能基を有する反応性官能基の残基であり、nは10〜100の整数である。式(II)中、pは4〜80の整数であり、式(III)中、qは4〜80の整数、rは3〜40の整数である。)
前記少なくとも1種の親水性モノマーが、N−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、メタクリル酸、アクリル酸、グリシジルメタクリレート(GMA)、メタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、酢酸ビニル、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−アクリロイルモルホリンおよびこれらの組み合わせを含む、
コンタクトレンズの製造方法。
【請求項18】
前記第1のシロキサンマクロマーが5〜35重量部、前記第2のシロキサンマクロマーが30〜50重量部、前記少なくとも1種の親水性モノマーが5〜60重量部、前記開始剤が0.5〜0.7重量部である請求項17に記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項19】
前記第1のシロキサンマクロマーが、式(IV)で表されるシロキサンマクロマーまたは式(V)で表されるシロキサンマクロマーを含む請求項17に記載のコンタクトレンズの製造方法。
【化9】
【化10】
(式(IV)中、sは10〜100の整数であり、式(V)中、tは10〜100の整数である。)
【請求項20】
前記少なくとも1種の親水性モノマーが、N−ビニルピロリドンと2−ヒドロキシエチルメタクリレートの組み合わせ、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせ、N−ビニルピロリドンとN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせ、またはN−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせである請求項17に記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項21】
前記コンタクトレンズを形成するのに用いる混合物の成分に、追加の架橋剤がさらに含まれる請求項17に記載のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項22】
前記第1のシロキサンマクロマーが5〜35重量部、前記第2のシロキサンマクロマーが30〜50重量部、前記少なくとも1種の親水性モノマーが5〜50重量部、前記開始剤が0.5〜0.7重量部、前記追加の架橋剤が0.1〜5重量部である請求項21に記載のコンタクトレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンタクトレンズの材料に関し、特に、末端に親水基を有したシロキサンポリマーを含むコンタクトレンズの材料に関する。このコンタクトレンズの材料から形成されるコンタクトレンズは、酸素透過率および含水率が高いという特性を持つ。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲル(Hydrogel)素材で作製されたコンタクトレンズはハイドロゲルコンタクトレンズ(Hydrogel contact lenses)と称される。ハイドロゲル材料は、例えばポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(p−HEMA)等であり得る。架橋剤、例えばエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)等の化合物をポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)へ添加することにより、その高分子鎖を橋かけ結合させて、強度を高めることができる。しかし、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)の含水率は38.8%しかないため、コンタクトレンズの含水率を高める目的で、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)の他に、N−ビニルピロリドン(NVP)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、メタクリル酸(MAA)等のような親水性モノマーが1種以上加えられる。親水性モノマーを加えると、コンタクトレンズの含水率を38.8%から最大の80%にまで高めることができる。しかしながら、含水量が高まるほど、コンタクトレンズの張力と靭度は低下してしまう。よって含水率は適度に制御する必要があり、一般には45%から58%とされることが多い。
【0003】
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは親水性のシリコーン含有ポリマー材料を含んでなり、通常は、分子量が異なりかつ化学構造の異なる2種のシリコーン含有マクロマーに、N−ビニルピロリドン(NVP)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、メタクリル酸(MAA)等のような親水性モノマーを加えて共重合させてなる。
【0004】
しかし、シロキサンハイドロゲル材料の表面は疎水性の特性を備えるため、細菌が発生し易く目の炎症を引き起こす等の問題がある。このため、一般にはシリコーンハイドロゲル材料を修飾して表面の湿潤性を高めることが要される。よって、現在、上記問題を解決できる新規なシロキサンハイドロゲル材料が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酸素透過率および含水率が高いコンタクトレンズを形成するコンタクトレンズの材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、数平均分子量が約1000〜10000であり、かつ架橋剤の機能を有する、式(I)で表される第1のシロキサンマクロマーと、
【化1】
(式(I)中、R、RおよびRはそれぞれ独立にC−Cアルキル基であり、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、RはOまたはNHであり、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、Rは水素、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、Rはヒドロキシル基、カルボキシ基、エポキシ基または酸無水物官能基を有する反応性官能基の残基であり、nは10〜100の整数である。)
式(II)で表されるシロキサンマクロマーおよび式(III)で表されるシロキサンマクロマーからなる群より選ばれる第2のシロキサンマクロマーと、
【化2】
【化3】
(式(II)中、pは4〜80の整数であり、式(III)中、qは4〜80の整数、rは3〜40の整数である。)
N−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、メタクリル酸、アクリル酸、グリシジルメタクリレート(GMA)、メタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、酢酸ビニル、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−アクリロイルモルホリンおよびこれらの組み合わせを含む少なくとも1種の親水性モノマーと、
開始剤と、
を含むコンタクトレンズの材料を提供する。
【0007】
また、本発明は、コンタクトレンズの製造方法であって、(a)成分として第1のシロキサンマクロマー、第2のシロキサンマクロマー、少なくとも1種の親水性モノマーおよび開始剤を含むコンタクトレンズを形成するのに用いる混合物を作る工程、ならびに、(b)コンタクトレンズを形成するのに用いる混合物をコンタクトレンズの鋳型に入れ、加熱プロセスまたはUV光照射プロセスによりコンタクトレンズを形成するのに用いる混合物を反応させてコンタクトレンズを形成する工程、を含み、第1のシロキサンマクロマーは数平均分子量が約1000〜10000であり、架橋機能を有し、かつ式(I)で表されるものであり、第2のシロキサンマクロマーは式(II)で表されるシロキサンマクロマーおよび式(III)で表されるシロキサンマクロマーからなる群より選ばれるものであり、式(I)、式(II)および(III)がそれぞれ次のとおりである、製造方法を提供する。
【0008】
【化4】
【0009】
【化5】
【0010】
【化6】
【0011】
式(I)中、R、RおよびRはそれぞれ独立にC−Cアルキル基であり、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、RはOまたはNHであり、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、Rは水素、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であり、Rはヒドロキシル基、酸性基、エポキシ基または酸無水物官能基を有する反応性官能基の残基であり、nは10〜100の整数である。式(II)中、pは4〜80の整数であり、式(III)中、qは4〜80の整数、rは3〜40の整数である。また、少なくとも1種の親水性モノマーは、N−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、メタクリル酸、アクリル酸、グリシジルメタクリレート(GMA)、メタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、酢酸ビニル、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−アクリロイルモルホリンおよびこれらの組み合わせを含む。
【0012】
本発明は、上記コンタクトレンズの製造方法により得られるコンタクトレンズも提供する。
【0013】
本発明の上述およびその他の目的、特徴、ならびに長所がより明らかかつ理解し易くなるよう、以下に好ましい実施形態を挙げて詳細に説明していく。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提供するコンタクトレンズの材料によれば、酸素透過率および含水率の高いコンタクトレンズを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一態様において、本発明は、末端に親水基を有したシロキサンポリマーを含むコンタクトレンズの材料を提供する。このコンタクトレンズの材料は表面親水性を有し、かつ酸素透過率および含水率の高いコンタクトレンズを形成することができる。
【0016】
本発明が提供するコンタクトレンズの材料は、式(I)で表される第1のシロキサンマクロマーと、式(II)で表されるシロキサンマクロマーおよび式(III)で表されるシロキサンマクロマーからなる群より選ばれる第2のシロキサンマクロマーと、少なくとも1種の親水性モノマーと、開始剤とを含み得るが、これに限定はされない。上記第1のシロキサンマクロマーは平均分子量が約1000〜10000であり、架橋剤の機能を有する。
【0017】
【化7】
【0018】
【化8】
【0019】
【化9】
【0020】
式(I)中、R、RおよびRはそれぞれ独立にC−Cアルキル基であってよく、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であってよく、RはOまたはNHであってよく、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であってよく、Rは水素、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であってよく、Rはヒドロキシル基、カルボキシ基、エポキシ基または酸無水物官能基を有する反応性官能基の残基であってよく、nは10〜100の整数であってよい。式(II)中、pは4〜80の整数であってよく、式(III)中、qは4〜80の整数、rは3〜40の整数であってよい。
【0021】
上記本発明のコンタクトレンズの材料において、第1のシロキサンマクロマーは約5〜35重量部とすることができ、第2のシロキサンマクロマーは約30〜50重量部とすることができ、少なくとも1種の親水性モノマーは約5〜60重量部とすることができ、開始剤は約0.5〜0.7重量部とすることができる。
【0022】
一実施形態において、上記式(I)で表される第1のシロキサンマクロマーは、式(IV)で表されるシロキサンマクロマーまたは式(V)で表されるシロキサンマクロマーを含んでいてよい。
【0023】
【化10】
【0024】
【化11】
【0025】
式(IV)中、sは10〜100の整数であってよく、式(V)中、tは10〜100の整数であってよい。
【0026】
上記少なくとも1種の親水性モノマーの例には、限定はされないが、N−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、メタクリル酸、アクリル酸、グリシジルメタクリレート(GMA)、メタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、酢酸ビニル、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−アクリロイルモルホリンおよびこれらの組み合わせが含まれ得る。一実施形態において、上記少なくとも1種の親水性モノマーは、N−ビニルピロリドンと2−ヒドロキシエチルメタクリレートの組み合わせ、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせ、N−ビニルピロリドンとN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせ、またはN−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせとすることができる。
【0027】
また、上記開始剤は熱開始剤または光開始剤であってよい。好適な熱開始剤の例には、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)および2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が含まれ得るが、これらに限定はされない。光開始剤の好適な例には、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(2−Hydroxy−2−methylpropiophenone)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1−Hydroxycyclohexyl phenyl ketone)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(2,2−Dimethoxy−2−phenylacetophenone)、ベンゾインメチルエーテル( Benzoin methyl ether)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(2,2’−azobis−isobutyronitrile)および2,2−ジエトキシアセトフェノン(2,2−Diethoxyacetophenone)等が含まれ得る。
【0028】
一実施形態において、上記少なくとも1種の親水性モノマーは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせとすることができる。この実施形態では、第1のシロキサンマクロマーを約5〜25重量部、第2のシロキサンマクロマーを約30〜40重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを約10〜30重量部、N,N−ジメチルアクリルアミドを約25〜50重量部、開始剤を約0.5〜0.7重量部とすることができる。
【0029】
別の実施形態においては、上記少なくとも1種の親水性モノマーは、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせとすることができる。この実施形態では、第1のシロキサンマクロマーを約5〜10重量部、第2のシロキサンマクロマーを約30〜50重量部、N−ビニルピロリドンを約20〜50重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを約5〜15重量部、N,N−ジメチルアクリルアミドを約4〜15重量部、開始剤を0.5〜0.7重量部とすることができる。
【0030】
一実施形態において、本発明のコンタクトレンズの材料は、追加の架橋剤をさらに含んでいてもよい。この実施形態では、第1のシロキサンマクロマーを約5〜35重量部、第2のシロキサンマクロマーを約30〜50重量部、少なくとも1種の親水性モノマーを約5〜50重量部、開始剤を約0.5〜0.7重量部、追加の架橋剤を約0.1〜5重量部とすることができる。
【0031】
好適な架橋剤の例には、例えばエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TrEGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ビニルメタクリレート、エチレンジアミンジメチルアクリルアミド、グリセロールジメタクリレート、イソシアヌル酸トリアリルおよびシアヌル酸トリアリル(triallyl cyanurate)等が含まれ得る。
【0032】
上述の本発明のコンタクトレンズの材料が追加の架橋剤を含み得る実施形態において、上記少なくとも1種の親水性モノマーはN−ビニルピロリドンとN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせとすることができ、第1のシロキサンマクロマーを約25〜35重量部、第2のシロキサンマクロマーを約25〜35重量部、N−ビニルピロリドンを約25〜35重量部、N,N−ジメチルアクリルアミドを約5〜10重量部、開始剤を約0.5〜0.7重量部、追加の架橋剤を約0.1〜0.5重量部とすることができる。
【0033】
あるいは、上述の本発明のコンタクトレンズの材料が追加の架橋剤を含み得る実施形態において、上記少なくとも1種の親水性モノマーは、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせとすることができ、第1のシロキサンマクロマーを約5〜15重量部、第2のシロキサンマクロマーを約40〜50重量部、N−ビニルピロリドンを約0.1〜1重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを約5〜15重量部、N,N−ジメチルアクリルアミドを約25〜35重量部、開始剤を約0.5〜0.7重量部、追加の架橋剤を約0.1〜5重量部とすることができる。
【0034】
さらに、必要に応じて、本発明のコンタクトレンズの材料にその他の成分を加えることもできる。その他の成分には、限定はされないが、色素および/または抗UV剤等が含まれ得る。
【0035】
本発明の別の態様において、本発明はコンタクトレンズの製造方法を提供する。
【0036】
上記方法は次の工程を含み得るが、これらに限定はされない。
【0037】
先ず、コンタクトレンズを形成するのに用いる混合物を作る。当該コンタクトレンズを形成するのに用いる混合物の成分には、限定はされないが、第1のシロキサンマクロマー、第2のシロキサンマクロマー、少なくとも1種の親水性モノマーおよび開始剤が含まれ得る。第1のシロキサンマクロマーは、数平均分子量が約1000〜10000で、架橋機能を有し、かつ式(I)で表されるものであり、また第2のシロキサンマクロマーは、式(II)で表されるシロキサンマクロマーおよび式(III)で表されるシロキサンマクロマーからなる群より選ばれるものであり、式(I)、式(II)および(III)はそれぞれ次に示すとおりである。
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
式(I)中、R、RおよびRはそれぞれ独立にC−Cアルキル基であってよく、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であってよく、RはOまたはNHであってよく、RはC−Cアルケニレン基、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であってよく、Rは水素、C−Cアルキレン基またはエーテル官能基を含むC−Cアルキレン基であってよく、Rはヒドロキシル基、カルボキシ基、エポキシ基または酸無水物官能基を有する反応性官能基の残基であってよく、nは10〜100の整数であってよい。式(II)中、pは4〜80の整数であってよく、式(III)中、qは4〜80の整数、rは3〜40の整数であってよい。
【0042】
上記コンタクトレンズを形成するのに用いる混合物の成分において、第1のシロキサンマクロマーは約5〜35重量部、第2のシロキサンマクロマーは約30〜50重量部、少なくとも1種の親水性モノマーは約5〜60重量部、開始剤は約0.5〜0.7重量部である。
【0043】
一実施形態において、上記式(I)で表される第1のシロキサンマクロマーは、式(IV)で表されるシロキサンマクロマーまたは式(V)で表されるシロキサンマクロマーを含んでいてよい。ただし、これらに限定されることはない。
【0044】
【化15】
【0045】
【化16】
【0046】
式(IV)中、sは10〜100の整数であってよく、式(V)中、tは10〜100の整数であってよい。
【0047】
上記少なくとも1種の親水性モノマーの例には、N−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、メタクリル酸、アクリル酸、グリシジルメタクリレート(GMA)、メタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、酢酸ビニル、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−アクリロイルモルホリンおよびこれらの組み合わせ等が含まれ得るが、これらに限定はされない。一実施形態において、上記少なくとも1種の親水性モノマーは、N−ビニルピロリドンと2−ヒドロキシエチルメタクリレートの組み合わせ、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせ、N−ビニルピロリドンとN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせ、またはN−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアクリルアミドの組み合わせとすることができる。
【0048】
また、上記開始剤は熱開始剤または光開始剤であってよい。好適な熱開始剤の例には、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)および2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が含まれ得るが、これらに限定はされない。光開始剤の好適な例には、例えば2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルまたは2,2−ジエトキシアセトフェノン等が含まれ得るが、これらに限定はされない。
【0049】
一実施形態において、コンタクトレンズを形成するのに用いる混合物の成分は、追加の架橋剤をさらに含んでいてもよい。この実施形態では、第1のシロキサンマクロマーは約5〜35重量部、第2のシロキサンマクロマーは約30〜50重量部、少なくとも1種の親水性モノマーは約5〜50重量部、開始剤は約0.5〜0.7重量部、追加の架橋剤は約0.1〜5重量部である。
【0050】
好適な架橋剤には、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TrEGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ビニルメタクリレート、エチレンジアミンジメチルアクリルアミド、グリセロールジメタクリレート、イソシアヌル酸トリアリルまたはシアヌル酸トリアリル(triallyl cyanurate)が含まれ得るが、これらに限定はされない。
【0051】
さらに、必要に応じて、コンタクトレンズを形成するのに用いる混合物にその他の成分を加えることもできる。その他の成分には、限定はされないが、色素および/または抗UV剤等が含まれ得る。
【0052】
次いで、コンタクトレンズを形成するのに用いる混合物をコンタクトレンズの鋳型に入れ、加熱プロセスまたはUV光照射プロセスによりコンタクトレンズを形成するのに用いる混合物を反応させてコンタクトレンズを形成する。
【0053】
上記加熱の温度は約60〜120℃とすることができ、加熱の時間は約1〜12時間とすることができる。一実施形態では、加熱の温度は約80℃、加熱の時間は約10時間とすることができる。
【0054】
上記UV光照射プロセスの光照射の強度は約2〜3mW/cmの間とすることができ、光照射の時間は約1時間とすることができる。
【0055】
本発明の方法は、コンタクトレンズを形成した後に、コンタクトレンズに対して水和プロセスを行う工程をさらに含んでいてもよい。一実施形態において、水和プロセスの工程には、限定はされないが、以下の工程が含まれ得る。
【0056】
先ず、コンタクトレンズを溶剤中に浸す。溶剤には、限定はされないが、イソプロパノールまたはアルコールが含まれ得る。次いで、コンタクトレンズを精製水中に浸す。そして、コンタクトレンズを緩衝溶液に入れて平衡にする。緩衝溶液には緩衝食塩水が含まれ得る。
【0057】
また、本発明の別の態様において、本発明は、上記本発明のコンタクトレンズの製造方法によって得られるコンタクトレンズを提供する。
【0058】
本発明のコンタクトレンズの酸素透過率は、80以上、ひいては150以上となり得る。
【0059】
また、本発明のコンタクトレンズの含水率は約30%以上となり得、一実施形態においては約30〜60%である。
【実施例】
【0060】
1.シロキサンマクロマーの獲得
(1)シロキサンマクロマー(A)の合成
(I)シロキサンマクロマー(A)合成機構
【化17】
【0061】
(II)シロキサンマクロマー(A)の合成の工程
乾燥した100mLの丸底フラスコに、アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン (20g、0.02モル、DMS−A12、分子量Mnが約1,000であり、Gelestから購入される)、ジクロロメタン40mLおよびイタコン酸無水物(4.5g、0.0401モル)を加えた。室温下、上述の反応物を攪拌した。12時間攪拌した後、大量の水を加えて化合物を洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過した後、ジクロロメタン溶剤を除去して、シリコーン化合物(分子量Mnが約1,200であり)を得た。
【0062】
(III)シロキサンマクロモノマー(A)の分析結果
核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)
1H−NMR(400MHz,CDCl)、δ6.36(s,1H)、5.82(s,1H)、3.39−3.21(m,4H)、1.62−1.42(m,2H)、0.62−0.47(m,2H)、0.19−0.02(Si−CH
赤外線スペクトル分析(IR)
(i)Si−CHの吸収ピークは802cm−1と1259cm−1
(ii)Si−O−Siの吸収ピークは1032cm−1と1100cm−1
【0063】
(2)シロキサンマクロマー(B)の合成
(I)シロキサンマクロマー(B)合成機構
【化18】
【0064】
(II)シロキサンマクロマー(B)の合成の工程
乾燥した100mLの丸底フラスコに、アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン(20g、0.02モル、DMS−A12、分子量Mnが約1,000であり、Gelestから購入される)、ジクロロメタン40mLおよび無水マレイン酸(4.02g、0.0401モル)を加えた。室温下、上述の反応物を攪拌した。12時間攪拌した後、大量の水を加えて化合物を洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過した後、ジクロロメタン溶剤を除去して、シリコーン化合物(分子量Mnが約1,200であり)を得た。
【0065】
(III)シロキサンマクロモノマー(B)の分析結果
核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)
1H−NMR(400MHz,CDCl)、δ6.32(s,2H)、3.35−3.20(m,2H)、1.68−1.57(m,2H)、0.67−0.48(m,2H)、0.19−0.02(Si−CH
赤外線スペクトル分析(IR)
(i)Si−CHの吸収ピークは802cm−1と1259cm−1
(ii)Si−O−Siの吸収ピークは1032cm−1と1100cm−1
【0066】
(3)シロキサンマクロマー(C1)の獲得
【化19】
【0067】
シロキサンマクロマー(C1)は購入したものである(Gelest,x−22−174DX、分子量が約800−1,000であり)。
【0068】
(4)シロキサンマクロマー(C2)の合成
(I)シロキサンマクロマー(C2)合成機構
【化20】
【0069】
(II)シロキサンマクロマー(C2)の合成の工程
イソホロンジイソシアネート4.44g、触媒としてのジブチル錫ジラウレート0.0025g、およびジクロロメタン40mLを丸底フラスコに入れ、窒素環境下で攪拌した。α−ブチル−ω−[3−(2,2−(ビスヒドロキシメチル)ブトキシ)プロピル]ポリジメチルシロキサン(MCR−C12、分子量が約1,000であり、Gelestから購入される)、20gを正確に量り取り、約1時間かけて丸底フラスコに滴下して加えた。12時間反応させた後、新たにジブチル錫ジラウレート0.0025gとポリエチレングリコールメタクリレート7.2gを量り取り、約1時間かけて丸底フラスコに滴下して加えた。12時間反応させた後、形成された生成物を大量の水を加えて洗浄し、続いてその生成物に対して脱水およびろ過を行った。次に、生成物からジクロロメタン溶剤を除去し、シロキサンマクロマー(C2)(分子量が約1,700であり)を得た。
【0070】
2.コンタクトレンズの作製
(1)実施例の作製工程
実施例1〜実施例10の詳細な作製工程は以下に示すとおりである。また、実施例1〜実施例10の詳細な組成は表1に示すとおりである。
【0071】
(I)実施例1の詳細な作製工程
シロキサンマクロマー(A)、シロキサンマクロマー(C1)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、光開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(ダロキュア(Darocur)(登録商標)1173)および溶剤としてのエタノールを、表1で示される割合で混合し、約1時間攪拌して混合物を作った。
【0072】
次に、混合物をPPの鋳型に入れ、2〜3mW/cmの強度で約1時間光を照射した。重合反応が完了した後、鋳型とレンズをイソプロパノールに1時間浸してから、コンタクトレンズを取り出した。そして、コンタクトレンズを水中に入れて4時間加熱した後、それを緩衝食塩水中に入れた。
【0073】
(II)実施例2の詳細な作製工程
シロキサンマクロマー(B)、シロキサンマクロマー(C2)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、光開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(Darocur1173)および溶剤としてのエタノールを、表1で示される割合で混合し、約1時間攪拌して混合物を作った。
【0074】
次に、混合物をPPの鋳型に入れ、2〜3mW/cmの強度で約1時間光を照射した。重合反応が完了した後、鋳型とレンズをイソプロパノールに1時間浸してから、コンタクトレンズを取り出した。そして、コンタクトレンズを水中に入れて4時間加熱した後、それを緩衝食塩水中に入れた。
【0075】
(III)実施例3の詳細な作製工程
シロキサンマクロマー(A)、シロキサンマクロマー(C2)、N−ビニルピロリドン(NVP)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、光開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(Darocur1173)および溶剤としてのエタノールを、表1で示される割合で混合し、約1時間攪拌して混合物を作った。
【0076】
次に、混合物をPPの鋳型に入れ、2〜3mW/cmの強度で約1時間光を照射した。重合反応が完了した後、鋳型とレンズをイソプロパノールに1時間浸してから、コンタクトレンズを取り出した。そして、コンタクトレンズを水中に入れて4時間加熱した後、それを緩衝食塩水中に入れた。
【0077】
(IV)実施例4の詳細な作製工程
シロキサンマクロマー(A)、シロキサンマクロマー(C1)、N−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、熱開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、および溶剤としてのn−ヘキサノールを、表1で示される割合で混合し、約1時間攪拌して混合物を作った。
【0078】
次に、混合物をPPの鋳型に入れ、80℃のオーブンで10時間硬化させた。重合反応が完了した後、鋳型とレンズをイソプロパノールに1時間浸してから、コンタクトレンズを取り出した。そして、コンタクトレンズを水中に入れて4時間加熱した後、それを緩衝食塩水中に入れた。
【0079】
(V)実施例5の詳細な作製工程
シロキサンマクロマー(A)、シロキサンマクロマー(C1)、N−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、熱開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、および溶剤としてのn−ヘキサノールを、表1で示される割合で混合し、約1時間攪拌して混合物を作った。
【0080】
次に、混合物をPPの鋳型に入れ、80℃のオーブンで10時間硬化させた。重合反応が完了した後、鋳型とレンズをイソプロパノールに1時間浸してから、コンタクトレンズを取り出した。そして、コンタクトレンズを水中に入れて4時間加熱した後、それを緩衝食塩水中に入れた。
【0081】
(VI)実施例6の詳細な作製工程
シロキサンマクロマー(A)、シロキサンマクロマー(C1)、N−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、熱開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、および溶剤としてのn−ヘキサノールを、表1で示される割合で混合し、約1時間攪拌して混合物を作った。
【0082】
次に、混合物をPPの鋳型に入れ、80℃のオーブンで10時間硬化させた。重合反応が完了した後、鋳型とレンズをイソプロパノールに1時間浸してから、コンタクトレンズを取り出した。そして、コンタクトレンズを水中に入れて4時間加熱した後、それを緩衝食塩水中に入れた。
【0083】
(VII)実施例7の詳細な作製工程
シロキサンマクロマー(A)、シロキサンマクロマー(C1)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、熱開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、および溶剤としてのn−ヘキサノールを表1で示される割合で混合し、約1時間攪拌して混合物を作った。
【0084】
次に、混合物をPPの鋳型に入れ、80℃のオーブンで10時間硬化させた。重合反応が完了した後、鋳型とレンズをイソプロパノールに1時間浸してから、コンタクトレンズを取り出した。そして、コンタクトレンズを水中に入れて4時間加熱した後、それを緩衝食塩水中に入れた。
【0085】
(VIII)実施例8の詳細な作製工程
シロキサンマクロマー(A)、シロキサンマクロマー(C2)、N−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、熱開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、および溶剤としてのn−ヘキサノールを、表1で示される割合で混合し、約1時間攪拌して混合物を作った。
【0086】
次に、混合物をPPの鋳型に入れ、80℃のオーブンで10時間硬化させた。重合反応が完了した後、鋳型とレンズをイソプロパノールに1時間浸してから、コンタクトレンズを取り出した。そして、コンタクトレンズを水中に入れて4時間加熱した後、それを緩衝食塩水中に入れた。
【0087】
(IX)実施例9の詳細な作製工程
シロキサンマクロマー(A)、シロキサンマクロマー(C2)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、熱開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、および溶剤としてのn−ヘキサノールを、表1で示される割合で混合し、約1時間攪拌して混合物を作った。
【0088】
次に、混合物をPPの鋳型に入れ、80℃のオーブンで10時間硬化させた。重合反応が完了した後、鋳型とレンズをイソプロパノールに1時間浸してから、コンタクトレンズを取り出した。そして、コンタクトレンズを水中に入れて4時間加熱した後、それを緩衝食塩水中に入れた。
【0089】
(X)実施例10の詳細な作製工程
シロキサンマクロマー(A)、シロキサンマクロマー(C2)、N−ビニルピロリドン(NVP)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、熱開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、および溶剤としてのn−ヘキサノールを表1で示される割合で混合し、約1時間攪拌して混合物を作った。
【0090】
次に、混合物をPPの鋳型に入れ、80℃のオーブンで10時間硬化させた。重合反応が完了した後、鋳型とレンズをイソプロパノールに1時間浸してから、コンタクトレンズを取り出した。そして、コンタクトレンズを水中に入れて4時間加熱した後、それを緩衝食塩水中に入れた。
【0091】
【表1-1】
【0092】
【表1-2】
【0093】
【表1-3】
【0094】
【表1-4】
【0095】
物理特性試験(Physical properties test)
市販のボシュロムのコンタクトレンズ(B&L,PureVision)およびチバビジョンのコンタクトレンズ(Ciba,day and night)をそれぞれ比較例1および2とし、これらと実施例について各種物理特性試験を行った。試験結果が表2に示されている。
【0096】
【表2】
【0097】
表2に示される結果から分かるように、市販されている従来のコンタクトレンズに比べ、本発明のコンタクトレンズの材料から形成されるコンタクトレンズは、実施例4および6を除き、いずれもよりすぐれた酸素透過率を有していた。実施例3、7および8では酸素透過率が100を超えており、特に実施例7および8に至っては酸素透過率が150以上に達していた。また、含水率については、実施例3、5、8および10の含水率は40%以上に達しており、これに対して比較例1および2では含水率はそれぞれ36%および24%しかなかった。
【0098】
上述から分かるように、本発明のコンタクトレンズの材料から形成されるコンタクトレンズは、高い酸素透過率および高い含水率を有するコンタクトレンズである。
【0099】
本発明を好ましい実施形態により以上のように開示したが、これらは本発明を限定するものではない。当業者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱しない限りにおいて、いくらかの変更および修飾を加えることができる。よって、本発明の保護範囲は、後述の特許請求の範囲で定められたものを基準とすべきである。