特許第5882994号(P5882994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5882994履物のアイテムを適合させる装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882994
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】履物のアイテムを適合させる装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 5/04 20060101AFI20160225BHJP
   A43D 3/08 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   A43B5/04 M
   A43D3/08
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-513496(P2013-513496)
(86)(22)【出願日】2011年6月7日
(65)【公表番号】特表2013-531519(P2013-531519A)
(43)【公表日】2013年8月8日
(86)【国際出願番号】AT2011000253
(87)【国際公開番号】WO2011153567
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年4月30日
(31)【優先権主張番号】A925/2010
(32)【優先日】2010年6月7日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】512315315
【氏名又は名称】フィッシャー シュポルツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】アドルフ ルーツルバウアー
(72)【発明者】
【氏名】アロイス ピーバー
(72)【発明者】
【氏名】フランツ ヨーゼフ レッシュ
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4964229(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0047228(US,A1)
【文献】 特開昭52−130741(JP,A)
【文献】 特開平09−207149(JP,A)
【文献】 実開平04−045408(JP,U)
【文献】 実開昭62−009905(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 5/04
A43D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が硬い熱可塑性樹脂からなる、予め作製された履物(1)のアイテムを、ユーザの足(7)および脚(7’)の少なくとも一方に適合させる装置であって、
本質的に前記履物(1)のアイテムを包み込み、該履物(1)のアイテムを収容するように構成された収容空間(13)を有する圧力負荷要素(8)を備え、
前記収容空間(13)は、前記圧力負荷要素(8)の内側層(8”)を形成する変形可能な材料によって、少なくとも部分的に画定され、
前記圧力負荷要素(8)は、キャビティー(8''')と、圧力負荷流体を導入するための入口開口(9)と、を有し、
前記圧力負荷要素(8)は、外側層(8’)を有し、
前記外側層(8’)は、前記内側層(8”)に強固に接着されて、前記キャビティー(8''')を形成する、装置において、
前記圧力負荷要素(8)の少なくとも1つの領域は、前記圧力負荷流体が入り込まないように、形成されており、
前記内側層(8”)および外側層(8’)が前記領域において互いに接着されているか、
前記領域において前記圧力負荷要素(8)の切欠き部が設けられているか、
前記圧力負荷要素(8)は、前記領域において、単一の層として形成されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記圧力負荷流体が入り込まない領域は、ソール領域(14)に配置され、
前記ソール領域(14)は、前記履物(1)のアイテムのソール(5)の領域における当接のために設けられることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項3】
出口バルブ(10’)を有する出口開口(10)を備え、
前記出口バルブ(10’)は、好ましくは制御可能な圧力制御バルブの形態であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記内側層(8”)は、コーティングされた繊維織物からなることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記外側層(8’)は、樹脂シート、特に、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等からなることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記収容空間(13)に接続された入口開口(12’)の周縁部は、少なくとも1つの閉鎖要素(12)を開くことによって、拡張可能であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記圧力負荷要素(8)の連結領域は、前記閉鎖要素(12)によって閉鎖可能であり、前記入口開口(12’)から前記ソール領域(14)付近まで本質的に延在することを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項8】
熱可塑性樹脂材料からなり、ユーザの足(7)および脚(7’)の少なくとも一方に適合された、スポーツに用いられる履物(1)のアイテムを製造する方法であって、
予め作製された履物(1)のアイテムの少なくとも一部を加熱し、該加熱された領域を、外部から圧力を加えて変形させることによって、前記履物(1)のアイテムの少なくとも一部を構成し、次いで、前記履物のアイテムを冷却し、
本質的に前記履物(1)のアイテムを包み込み、キャビティー(8''')を画定する変形可能な材料から少なくとも部分的に構成された、スリーブ状の圧力負荷要素(8)内に、前記加熱された履物(1)のアイテムを挿入し、
前記圧力負荷要素(8)は、前記キャビティー(8''')を形成するように外側層(8’)に強固に接着された内側層(8”)を有し、
前記履物(1)のアイテムの少なくとも一部を、ユーザの足(7)および脚(7’)のいずれか一方に適合するように、圧力負荷流体を前記キャビティー(8''')内に導入する、方法において、
前記圧力負荷要素(8)の少なくとも1つの領域を、前記圧力負荷流体を前記キャビティー(8''')内に導入した場合に前記圧力負荷流体が該領域に入り込まないように、形成し、
前記内側層(8”)および外側層(8’)が前記領域において互いに接着されているか、
前記領域において前記圧力負荷要素(8)の切欠き部が設けられているか、
前記圧力負荷要素(8)は、前記領域において、単一の層として形成されていることを特徴とする、方法。
【請求項9】
ユーザの足(7)が前記履物(1)のアイテム内に挿入される前に、前記履物(1)のアイテムの少なくとも一部を、特にオーブンにおいて、前記履物(1)のアイテムの材料の軟化温度よりも高い温度で加熱することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記圧力負荷流体を、同時に排出される前記圧力負荷流体の出口圧力よりも高い入口圧力で、前記圧力負荷要素(8)内に導入することを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
前記履物(1)のアイテムの少なくとも一部を覆う、冷却されたカラー(16)を、前記履物(1)のアイテムが前記圧力負荷要素(8)内に挿入される前に、前記履物(1)のアイテム上に被せることを特徴とする、請求項〜1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ユーザが前記履物(1)のアイテムを装着した直後に、前記カラー(16)を、前記履物(1)のアイテム上に被せることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め作製された履物のアイテムを、ユーザの足および/または脚に適合させるための装置に関し、該履物のアイテムは、少なくとも部分的に、硬い熱可塑性樹脂材料からなる。また、本発明は、ユーザの足および/または脚に適合された、スポーツに用いられる履物のアイテムを製造する方法に関し、該履物のアイテムは、硬い熱可塑性樹脂材料からなる。この方法においては、予め作製された履物のアイテムの少なくとも一部は、加熱され、該加熱された領域を、外部から圧力を加えることにより変形させることによって、適合される。そして、その後に、上記履物のアイテムは、冷却される。
【背景技術】
【0002】
予め作製された履物のアイテムを、ユーザの足に適合させるための様々な方法が、本技術分野において知られている。国際公開WO2009/046477A2号公報は、以下の方法を教示している。すなわち、最初に、履物のアイテムを加熱し、次いで、ユーザが該履物のアイテムを装着した後に、該履物のアイテムを覆うようにシートを設置し、負圧を掛けることによって、予め加熱されたシェルを足に適合させる。基本的には、この方法は問題なく機能する。しかしながら、不利なことに、ユーザが負圧を掛けることに対して不快を感じることが、明らかとなってきた。
【0003】
米国特許第3,613,271号公報は、ユーザの足に履物のアイテムを適合させるために、手動の圧力を足首領域に加えることによって、予め作製された履物のアイテムを適合させる方法を開示している。手動の適合用圧力に対する代替として、圧力スリーブが、足首領域に設けられる。しかしながら、この圧力スリーブに関しては、詳細に説明されていない。このような方法は、適合を行うオペレータが、本技術分野の高い技能と知識を有することを要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、技能を持たない者でも、予め作製された履物のアイテムを、ユーザの足および/または脚に、簡単且つ確実に適合させることを可能とする装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した本発明に係る装置において、この目的は、本質的に履物のアイテムを包み込み、該履物のアイテムを収容するように構成された収容空間を有する圧力負荷要素を提供することによって、達成される。ここで、収容空間は、圧力負荷要素の内側層を形成する変形可能な材料によって、少なくとも部分的に画定される。また、圧力負荷要素は、キャビティーと、圧力負荷流体を導入するための入口開口とを有する。
【0006】
本発明に係る装置を用いることによって、履物のアイテムを装着し、適合装置の収容空間内に挿入するだけでよい。次いで、圧力負荷流体(好ましくは、空気)が、キャビティー内に導入される。ここで、キャビティーは、内側(すなわち、履物のアイテムに面する側)に配置された変形可能な材料から構成される。そして、圧力が、履物のアイテムに、外部から加えられる。これにより、予め作製された履物のアイテムよりも足が小さくなっている領域を、圧力負荷要素を用いて加えられた圧力によって、足に適合させる。装置へ挿入する前に、履物のアイテムが軟化温度よりも高い温度で加熱された場合、ユーザの足よりも小さな体積を有する、履物のアイテムの領域は、足が履物のアイテム内に挿入されると、足自体が押圧ラムのように作用することにより、即時に押し広げられる。材料が軟化温度よりも低い温度に冷却されるまで、圧力負荷要素が圧力を維持すると、履物のアイテムは、加圧が停止された後においても、装置によって生成された形状を維持する。このように、加熱された樹脂材料を手動で適合させる必要がない。装置のオペレータは、履物のアイテムを装置の収容空間内に配置し、圧力負荷流体を導入するだけでよい。このことは、以下のことを意味している。すなわち、履物のアイテムをユーザの足に適合させる工程が、簡単となり、技能を持たない者によって行うこともできる。
【0007】
圧力負荷流体がキャビティー内に導入される圧力を確実に制限するために、入口開口は、入口バルブを含み、該入口バルブは、好ましくは制御可能な圧力制御バルブの形態である。
【0008】
出口バルブを有する出口開口を備え、該出口バルブが、好ましくは制御可能な圧力制御バルブの形態である場合、圧力負荷流体は、導入され、且つ、(出口開口を介して)同時に排出され得る。その結果、圧力負荷要素は、恒久的な気体の流れをもたらすことになる。このことは、以下のことを意味している。すなわち、圧力が加えられている間に、冷たい流体が、常に供給されることになる。これにより、予め加熱された履物のアイテムの冷却工程を加速させることができる。入口開口と出口開口との間の高圧力を保証するために、入口圧力が約80kPa(0.8bar)に設定される一方、出口圧力は、例えば約60kPa(0.6bar)に制限される。
【0009】
圧力負荷流体を受容する目的で設けられるキャビティーを形成するために、有利には、圧力負荷要素は、外側層を有し、該外側層は、内側層に強固に接着されて、キャビティーを形成する。実際上、バッグ状の圧力負荷要素を製造することは、費用効率がよく、且つ容易であることが明らかとなった。ここで、この圧力負荷要素は、互いに接着された少なくとも2つの層(すなわち、内側層と外側層)から構成され、履物のアイテムを(足を入れるための開口を除いて)本質的に包み込むものである。当然ながら、圧力負荷要素は、適切に成形された変形可能な材料からなる1つの部材(すなわち、端部が互いに連結された単一部材)から作製されてもよい。しかしながら、有利には、2つの層が設けられ、各層は、各々の目的を果たすように機能する。すなわち、内側層は、コーティングされた繊維織物から適正に構成される。何故ならば、この構成は、圧力負荷流体に対して不透過性を有する、変形可能な材料を、容易且つ安価に提供するからである。したがって、これは、圧力が加えられる、履物のアイテムの外側部に対して適用するのに適している。外側層は、履物のアイテムに圧力を加えるために用いられるものではないので、外側層を樹脂シート(特に、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等)から構成すれば十分である。
【0010】
圧力負荷要素によって包まれている履物のアイテムの表面全体が、圧力負荷流体を導入したときに加圧されるのを避けるために、内側層および外側層が互いに接着されている領域を設けることは、有益である。圧力負荷流体は、内側層および外側層が互いに接着されている領域には流入することができない。したがって、圧力は、履物のアイテムのこれら領域には負荷されない。当然ながら、圧力負荷流体が流入しない領域は、他の方法で(例えば、圧力負荷要素を切断すること、または、これら領域に単一の層を設けることによって)設けられてもよい。
【0011】
内側層および外側層は、履物のアイテムのソールの領域において互いに当接するように、ソール領域において互いに接着されることは、特に適切である。何故ならば、ソール領域を加圧することによって、不利には、予め作製されたソール形状に、望ましくない変形が結果的に生じてしまうからである。これにより、履物のアイテムをスキーブーツとして形成したときに、スキーのビンディングへの受容の安定性を損なってしまうことになる。
【0012】
装置内に履物のアイテムを容易に収容するために、収容空間に接続された入口開口の周縁部は、少なくとも1つの閉鎖要素を開くことによって、拡張可能である。
【0013】
この構成において、有利には、圧力負荷要素の連結領域は、閉鎖要素によって閉鎖可能であり、入口開口からソール領域付近まで本質的に延在する。このような連結領域は、好ましくは、ユーザの脹脛から踵の領域まで延び、履物のアイテムを、該履物のアイテムを包む圧力負荷要素内に、閉鎖状態とするように特に容易に導入することを可能とする。このように、容易な挿入および容易な取り出しの双方が実現され、履物のアイテムの表面が、より広範に加圧される。
【0014】
外側(すなわち、履物のアイテムと逆の側)における圧力負荷要素の拡張を制限し、実使用の間に鋭い物によって装置が損傷してしまうのを避けるために、圧力負荷要素は、有利には、本質的に圧力耐性を有するスリーブによって包まれる。この外側の圧力耐性を有するスリーブは、例えば、安定した繊維物から構成されてもよい。
【0015】
上述したような方法は、本質的に、履物のアイテムを包み込み、キャビティーを画定する変形可能な材料から少なくとも部分的に構成された、スリーブ状の圧力負荷要素内に、加熱された履物のアイテムを挿入し、履物のアイテムの少なくとも一部を、ユーザの足および/または脚に適合させるように、圧力負荷流体をキャビティー内に導入することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る装置に関して既に説明したように、硬い熱可塑性樹脂材料からなる履物のアイテムを、ユーザの足に所望通りに適合させることは、以下のことによって、容易に達成される。すなわち、履物のアイテムの表面上の接触圧力を、圧力負荷流体を導入することによって、少なくとも履物のアイテムに面する側に負荷し得るように、履物のアイテムを本質的に環囲する(または、包み込む)圧力負荷要素を設ける。
【0017】
足によって内部から加えられる圧力と、圧力負荷要素によって外部から加えられる圧力とを用いて、予め作製された履物のアイテムを、確実且つ恒久的に適合させるのを実現するために、有利には、ユーザの足が履物のアイテム内に挿入される前に、履物のアイテムの少なくとも一部を、特にオーブンにおいて、履物のアイテムの材料の軟化温度よりも高い温度で加熱する。
【0018】
圧力負荷流体を、同時に排出される圧力負荷流体の出口圧力よりも高い入口圧力で、圧力負荷要素内に導入すると、本発明に係る装置に関して上記に説明したように、圧力が加えられている間に、圧力負荷流体の恒久的な流れをもたらすことができる。これにより、冷たい流体が流れ続けることになる。このため、有利には、予め加熱された履物のアイテムの冷却工程を加速させることができる。
【0019】
さらに、予め加熱された履物のアイテムを効率的に冷却し、これにより、ユーザの足に迅速に適合させるために、好ましくは、履物のアイテムの少なくとも一部を覆う、冷却されたカラーを、履物のアイテムが圧力負荷要素内に挿入される前に、履物のアイテム上に被せる。冷却されたカラーは、冷却ジェルを含んでもよく、該冷却ジェルは、有利には変形可能なシートによって形成されたキャビティー内に満たされる。任意的に、上記シートは、変形可能な繊維物から作製されたカバーを、追加的に有してもよい。このようなカラー(または、ゲートル)は、使用の前に、冷却装置(すなわち、冷蔵庫等)にて冷却される。これにより、履物のアイテムの冷却工程を大幅に加速させることができる。
【0020】
工程の効率性の観点から、有利には、ユーザが履物のアイテムを装着した直後に、カラーを、履物のアイテム上に被せる。このように、冷却されたカラーが履物のアイテムに適用された後、圧力負荷要素によって、高圧力が加えられる。その結果、圧力負荷要素の内側層がカラーの外面に近接して適合する。その結果、静水圧の原理に従って、ゲートル内に導入された、冷却されたカラー(または、冷却ジェル)は、圧力負荷要素からの圧力を、履物のアイテムの表面に伝達する。また、カラーと、加熱された履物のアイテムの表面との間の接触によって、良好な熱伝導がもたらされる。その結果として、履物のアイテムが迅速に冷却され、その形状がユーザの足に適合する。
【0021】
工程の費用効率を向上させ、且つ、工程を簡単とするために、有利には、気体を、圧力負荷流体として、圧力負荷要素内に導入する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】硬い熱可塑性樹脂材料からなる履物のアイテムの図である。
図2図1の履物のアイテム内に受容された、繊維物からなるインナーシューまたはインナーブーツの図である。
図3】履物のアイテムの断面図であって、該履物のアイテム内に、ユーザの足および/または脚が挿入された状態を示す。
図4】履物のアイテムの加熱工程の概略図である。
図5】本発明に係る装置内に挿入された履物のアイテムの図である。
図6図5の構成に係る図であって、踵および脹脛の側の履物のアイテムの図である。
図7】圧力負荷要素の斜視図である。
図8図7の線VIII−VIIIによる断面図である。
図9】入口開口からソール領域まで延在する閉鎖装置を示す、装置の他の図である。
図10図9に対応する図であって、ユーザの足が履物のアイテムに挿入されるように、閉鎖装置を開いた状態を示す。
図11】スリーブが圧力負荷要素を包んだ状態を示す、装置の斜視図である。
図12】適合されるべき履物のアイテムの斜視図である。
図13図12に係る斜視図であって、冷却カラーが履物のアイテム上に被せられた状態を示す。
図14図10に類似する図であって、冷却カラーが適合されるべき履物のアイテム上に被せられた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、図面に示された好ましい実施形態を参照して、より詳細に説明する。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
【0024】
図1は、足首領域の直上付近まで足を覆う下側シェル2と、連結要素(例えば、関節ジョイント3’)を介して該下側シェル2に枢着されたカラー3とを備えるスキーブーツ1を示す。また、スキーブーツ1は、通常の閉鎖手段4(すなわち、バックル)と、ソール5とを備える。ソール5は、通常、上記シェル2に一体的に形成されている。また、ソール5は、スキーのビンディング内に受容されるように、下側シェル2から突出して延びる前側連結領域5’と、踵側の端部において下側シェル2から突出して延びる後側連結領域5”とを有する。
【0025】
図2は、舌部6’を有するインナーシューまたはインナーブーツ6を示す。舌部6’は、容易な装着のために前方に折り畳まれ得る。この前方の折り畳み位置は、図2において破線によって示されている。
【0026】
図3の断面図は、インナーブーツ6がブーツ1内に挿入され、次いで、ユーザの足7およびユーザの脚7’の下側領域がブーツ1内に挿入された状態を示す。下側シェル2およびカラー3は、通常、熱可塑性樹脂から作製される。図3に示された、予め作製された形状は、射出成形によって準備される。一方、インナーブーツ6は、通常、繊維材料または皮革から作製され、ユーザの快適性を向上させるとともに、硬いブーツ1(すなわち、外側のシェル)を足7および/または脚7’に対してある程度適合させるために、クッションを有する。
【0027】
図4に概略的に示されているように、インナーブーツ6を有する(または、有さない)ブーツ1は、ブーツを構成する熱可塑性樹脂を加熱するために、例えばオーブン等において、いわゆる材料の軟化温度よりも高い温度で、高温に曝される。用いられている材料に依存して、ブーツ1は、通常、70℃〜140℃の間の温度まで加熱される。
【0028】
次いで、ユーザは、好ましくは、インナーブーツ6を用いつつ、足7および/または脚7’をブーツ1内に挿入し、バックル4を用いてブーツ1を閉鎖する。次いで、ユーザは、加熱されたブーツ1を、図5に示す圧力負荷要素8内に設置する。この圧力負荷要素は、本質的に、バッグまたは包装部材として形成され、入口開口12’を除いて、ブーツ1全体を包み込む。
【0029】
圧力負荷要素8は、バルブ9’を収容する開口9を備える。図6に概略的に示されているように、加圧された気体は、矢印Pの方向に、圧力負荷要素8内に設けられたキャビティー8'''内に、バルブ9’を介して導入される。これにより、圧力負荷要素8の内側層8”と外側層8’(開口9を有する)との間において、高圧力が形成される。この高圧力によって、ブーツ1(すなわち、下側シェル2とカラー3の双方)は、ユーザの足7および/または脚7’に対して押し付けられることになる。ユーザの足7および/または脚7’がより大きくなっている領域は、外側に向けて既に押圧されている。何故ならば、足7および/または脚7’は、加熱されたブーツ1に入れられたときに、押圧ラムのように作用するからである。そして、ユーザの足7および/または脚7’が、予め作製されたブーツよりも小さくなっている領域は、導入された加圧気体により発生された高圧力によって、内側層8”が当接することにより圧縮され、これにより、足7および/または脚7’の形状に適合されることになる。足7および/または脚7’に適合された、予め作製されたブーツ1の形状を維持するために、ブーツは、この適合された形状で、ブーツ1の熱可塑性樹脂材料の軟化温度より低い温度(好ましくは、軟化温度よりも10℃低い温度)に、冷却される。
【0030】
冷却工程を加速するとともに、キャビティー8'''内の高圧力を所定のレベルに制御可能とするために、圧力負荷要素8は、入口開口9に加えて、出口バルブ10’を含む出口開口10を有してもよい。有利には、バルブ9’および10’の双方は、例えば、以下のように制御可能である。すなわち、入口バルブ9’が約80kPa(0.8bar)の高圧力に設定され、且つ、出口バルブ10’が約60kPa(0.6bar)に設定される。結果として、圧力負荷要素8において、恒久的な気体の流れがもたらされる。これにより、圧力を加えつつ、冷えた気体を絶えず供給することができる。このため、予め加熱されたブーツ1の冷却工程を加速させることができる。
【0031】
図7の斜視図に示すように、圧力負荷要素8は、圧力を加えるために圧力媒体(すなわち、好ましくは気体)が内部に導入される2つの層から、必ずしも構成される必要はない。例えば、領域11が、足の前部上側の領域において、足の甲の屈曲部に至るまで、設けられている。この領域11においては、内側層8”および外側層8’が、互いに接着されている。その結果として、有利には、圧力が、この領域11においてブーツ1に加えられることがない。このため、高さのある足の甲を有するユーザであっても、この領域において、圧力による如何なる痛みも受けないことを保証することができる。
【0032】
図8の断面図は、内側層と外側層との間に形成されたキャビティー8'''を、特に示している。キャビティー8'''において、加圧された気体は、バルブ9’を介して導入され、必要がある場合は、出口バルブ10’を介して排出される。また、図8の断面図は、ジッパーの形態としての閉鎖要素12を示している。
【0033】
変形例としての実施形態(図示せず)によれば、圧力負荷要素8のキャビティー8'''の一部(例えば、その体積の2/3まで、または、入口バルブ9’および/または出口バルブ10’の下部まで)は、好ましくは冷水で満たされる。加圧された気体を導入することによって、圧力負荷要素8は、家庭用水供給装置の圧力容器のように形成され得る。この場合、水の上の気体クッションは、水に対して圧力を加え、これにより、ブーツ表面に対して内側層8”を押圧することになる。冷水を用いることによって、加熱されたブーツ1を迅速に冷却することができる。
【0034】
図9および図10に特に示されているように、入口開口12’の周縁部は、ブーツ1を収容するために設けられた圧力負荷要素8の収容空間13に接続されており、閉鎖要素12を設けることによって拡張され得る。この構成は、図10に特に示されているように、ブーツ1を圧力負荷要素8の収容空間13内に挿入することを、大幅に容易とすることができる。図10に示すように、閉鎖要素12(すなわち、ジッパー、ボタンの列、スナップファスナの列、ベルクロ(Velcro)、レース付ファスナ等)は、有利には、入口開口12’から、圧力負荷要素8の下側領域14まで延在する。なお、この下側領域14において、通常、ブーツ1のソール5が、装置の動作位置に配置されている。圧力負荷要素8のソール領域14において、領域11と同様に、外側層8’および内側層8”は、有利には、互いに接着される。これにより、この領域に加圧気体が流入することを避けることができ、それ故に、この領域が変形されず、むしろ、予め作製された形状に維持されることを保証する。この構成によって、ソール5の連結領域5’および5”がスキービンディング内に確実に受容されることが、保証される。
【0035】
さらに、図11は、圧力負荷要素8が、該圧力負荷要素8を包み込むスリーブ15内に受容され得ることを、示している。スリーブ15は、安定した繊維物から構成され、加圧気体が外側層8’に沿って導入された後に、圧力負荷要素8を支持する。このような外側スリーブ15が設けられた場合、外側層8’は、薄い弾性シート(例えば、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等)によって、容易且つ安価に作製され得る。この場合、外側スリーブ15は、外側部に安定性をもたらし、ブーツを、鋭い物等による損傷から保護することができる。外側スリーブ15は、閉鎖手段17を有する。この閉鎖手段は、閉鎖手段12に対応しており、スリーブ15内への容易な挿入を可能とするために、本質的に閉鎖領域の近傍に配置される。下側シェル2、カラー3、およびバックル4に圧力を確実且つ適切に加えることを考慮して、内側層8”は、気密コーティングされた繊維織物から構成される。
【0036】
図12および図13は、他の有利な実施形態を示している。図12は、軟化温度より高い温度で予め加熱されたブーツ1を示している。なお、このブーツ1は、図1図11に示す実施形態と同様である。しかしながら、この例の場合、カラーまたはゲートル16が、ユーザがブーツに足を入れた直後に、ブーツ1上に被されている。このゲートル16は、冷却剤(例えば、冷却ジェル)を含み、該冷却剤は、変形可能なシートによって形成されたキャビティー内に満たされる。ゲートル16は、繊維物から作製されたカバーを、任意で有してもよい。ゲートル16をブーツ上に被せる前に、ゲートル16は、冷却装置(例えば、冷蔵庫)において、低温に冷却され、次いで、冷却を大きく加速させるために、ブーツ1上に被せられる。
【0037】
図14に示されているように、使用者は、予め加熱されたブーツ1を履き、次いで、冷却ゲートル16を用いつつ、圧力負荷要素8の収容空間13内に足を入れる。その後に、圧力負荷要素8は、閉鎖手段12によって閉じられ、上述したように、加圧された気体を導入することによって、高圧力が加えられる。その結果、圧力負荷要素8の内側層8”が、冷却ゲートル16の外面と密に接触して適合する。そして、ゲートル16内に収容された冷却ジェルが、基本的に、圧力負荷要素8からの静水圧を、ブーツ1の表面に伝達する。冷却ゲートル16と、加熱されたブーツの表面との間の接触によって、結果的に、良好な熱伝導がもたらされ、ブーツ1を、ユーザの足7および/または脚7’に適合された形状で、迅速に冷却することが可能となる。
図1
図2
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図7
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図9
図10
図11
図12
図13
図14