【実施例】
【0074】
[例1]
[膜蒸留のための複合膜を最適化する方法]
MDの調査の61%は、MDプロセスの性能の調査に基づくモデリングを含むことが記載されている[6]。DCMDプロセスは、MDの最も一般的な用途である脱塩のために最も適した構成であるので、大部分のMDの刊行物は、DCMDプロセスのモデリングに焦点を置いてきた。DCMDのモデリングは、i)プロセスにおける熱及び物質移動の分析、並びにii)膜の特徴の影響という2つの領域に分けることができる。第1の領域の研究は、主に透過流束、熱及び物質輸送係数、熱及び物質抵抗、並びに温度及び濃度分極化係数を予測することに焦点を置いた[4、32、36〜40、及び42]。他の研究は第2の領域に関し、膜の特徴(例えば膜厚、多孔性、及び孔径分布)が膜の性能に及ぼす影響の調査に焦点を置いた[9、10、13〜17、41、及び43〜47]。
【0075】
キャピラリー、又はフラットシートの形態で入手可能な市販の微小孔構造の疎水性膜が、大部分のMDの研究において使用されてきた。El―Bourawiらは[6]、MDプロセスにおいて一般的に用いられる大部分の市販の膜を、それらのいくつかの特徴と共にまとめた。それらの膜は、主にポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から成るものであった。全てのこれらの市販の膜は、精密濾過、又は限外濾過目的のために上市されたが、これらの疎水性、及び妥当な孔径のため、MDにおいて使用されてきた点に留意すべきである。一方で、ほんの少数の著者らが、MDのための新規な膜、及びモジュールを設計した[9、10、13〜19、44、45]。
【0076】
最近の刊行物[15〜19、及び45]において、MDのための疎水性/親水性複合膜の使用が採用されてきた。より高い流束のMD膜の要件が、MDプロセスの物理的な理解に基づいて確認された。結果的に、薄い疎水性/厚い親水性膜の方法が開発され、実験的に証明された。
【0077】
複合疎水性/親水性膜の概念は、高い流束のMD膜の要件のより良い理解に基づく。簡潔には、この概念は、物質移動抵抗が減少するので、厚い親水性副層と組み合わせたより薄い疎水性層が流束を増加させることがあるということを指し示す。一方で、厚い親水性副層のため、温度分極の影響が減少する[21]。
【0078】
この例の目的は、疎水性/親水性複合膜の概念の理解を高めて、DCMDによる脱塩のための高い流束の疎水性/親水性膜の設計を支援するために、理論的な視点から疎水性/親水性複合膜の性能を調査することである。疎水性上層、及び親水性副層の両者の特徴がDCMDプロセスの性能に及ぼす影響を説明する数学モデルを開発した。4つの異なる表面変性高分子(SMM)をブレンドしたポリエーテルイミド(PEI)膜、及び2つの市販のPTFE膜を考慮した[16、及び17]。モデル、及び調査に基づいて、DCMDの水蒸気流束の強化のために必要な、複合疎水性/親水性膜の疎水性上層、及び親水性副層の特徴を確認した。
【0079】
[実験データ]
ゲルマン社によって供給された、ポリプロピレンネットによって支持された2つの市販のポリテトラフルオロエチレン膜、TF200(孔径0.22μm、多孔性0.8)、及びTF450(孔径0.45μm、多孔性0.8)、及び研究室で作った4つの疎水性/親水性複合膜(M12、M15、M17、及びM20[16])を、この調査において使用した。膜調製手順の詳細は、他の文献で入手できる[16]。これらの膜は、表面変性高分子(SMM)の濃度を2質量%に維持した12〜20質量%のキャスティング溶液中のポリエーテルイミド(PEI、Ultem(登録商標)1000、ゼネラルエレクトリック社)の濃度の変化に基づいて、M12、M15、M17、及びM20と称する。
【0080】
本調査において使用した全ての膜は、厚み(δ)、前進接触角(θ
α)、水の液体侵入圧力(LEP
W)、及び気体透過性試験の測定によって特性評価した。気体透過性のデータを用いて平均孔径(d
P,t)、疎水性上層の有効空隙率(ε
t/L
p)を得た[16、及び17]。他の表面(すなわち、親水性層)は、多孔性親水性副層の表面多孔性(ε
s)、並びに膜の上層及び副層の粗さについてのデータの決定を可能にする原子間力顕微鏡(AFM)を使用して調査した。実験的な手順の詳細は、以前に開示した[16、及び17]。
【0081】
表1は、市販及び研究室製の膜について、膜の特性評価の結果を示す。本調査において、これらの結果を使用して、疎水性/親水性層の特徴が複合膜のDCMDの性能に及ぼす影響について述べる。
【表1】
【0082】
[理論的アプローチ]
調査した系は、熱い純水(以下供給側と称す)、及び冷たい純水(透過側)の間に維持した複合疎水性/親水性膜から成った。膜の疎水性側を熱い供給水に接触させつつ、膜の親水性層は親水性層の孔に浸透した冷水に接触させて保った。一方で、適用した膜間圧が膜の水の液体侵入圧力(LEP
W)を超えない限り、疎水性層の孔は乾燥に保った。この点において、
図1に示すように、疎水性層の孔の両方の末端において液/気界面が形成した。
【0083】
疎水性層全体に確立された温度低下は、DCMDプロセスの駆動力である蒸気圧差を生ずる。この場合、熱い供給側で蒸発が起こり、水蒸気が疎水性層の孔を通って輸送されたあと、疎水性及び親水性層の境界において形成した蒸気/液体界面において凝縮が起こる。
【0084】
上記の系において、物質及び熱の移動は、膜全体で同時に起こる。結果的に、膜表面における温度は、バルクの液相における温度とは異なり、駆動力の減少、及びDCMD流束の減少(すなわち温度分極効果)を引き起こす。
【0085】
[熱伝導]
以下の熱伝導流束は、以前に開示したDCMD系に含まれる。
【0086】
供給溶液の境界層において、
【数2】
疎水性上層において、
【数3】
親水性副層において、
【数4】
透過溶液の境界層において、
【数5】
定常状態において、DCMD系全体を通した全体の熱伝導流束(Q)は、下式、
【数6】
で与えられる。
【0087】
上記の式において、hは熱伝導係数であり、J
wは透過流束であり、ΔH
vは蒸発の潜熱であり、及びTは絶対温度である。温度の位置を特定する添字b、f、p、m、及びsはそれぞれ、バルク溶液、供給、透過、膜の疎水性上層、及び膜の親水性副層を指す。
【0088】
従って、上記の方程式から、熱流束は以下のように書くことができる。
【数7】
その結果、DCMDプロセスについての全体の熱伝導係数(U)は以下のように書くことができる。
【数8】
【0089】
熱伝導係数h
f及びh
pは、無次元数と、水の粘度の温度依存性を表すために用いる補正係数との、公知の経験的相関性の助けを借りて推定することができる。
【数9】
ここで、Nu、Re、及びPrはそれぞれヌッセルト、レイノルズ、及びプラントル数であり、a、b、c、及びdは液流領域の特性定数であり、μ
b、及びμ
mは、それぞれバルク、及び膜の対応する面における水の動的粘度である[16、及び17]。
【0090】
親水性副層の熱伝導係数(h
s)は、親水性膜ポリマーの熱伝導率(k
s)、及び孔の中の水の熱伝導率(k
w)から算出することができる。
【数10】
ここで、δ
s及びε
sは、それぞれ複合膜の親水性層の厚さ、及び多孔性である。
【0091】
疎水性上層の熱伝導係数(h
t)は、疎水性膜ポリマーの熱伝導率(k
t)、及び孔の中に存在する気体の熱伝導率(k
g)から算出することができる。
【数11】
ここでδ
t、及びε
tは、それぞれ複合膜の疎水性上層の厚み、及び多孔性である。
【0092】
[物質移動]
DCMDプロセスにおいて、液水の透過流束(J
w)は、以下のように膜内外の液体圧力に関連する場合がある[6、8、11、21、25]。
【数12】
ここで、p
m,f、及びp
m,pは、それぞれ温度T
m,f、及びT
m,pにおいて算出した、供給及び透過における水の分圧であり、B
mはDCMD膜の正味の透過性である。
【0093】
膜内の蒸気圧は、直接測定可能ではない。従って、温度に関する式(11)で表すことがより便利である。本調査において使用する膜内外のバルクの小さな温度差(T
b,f−T
b,p≦10K)について、Schofieldらによって示されるように[6]、以下の表現を用いることができる。
【数13】
ここで、K´は、
【数14】
のように定義される。ここで、T
mは平均温度(T
b,f+T
b,p)/2であり、(dp/dT)は、クラウジウス―クラペイロンの式と共に、水の蒸気圧の算出に用いるアントワンの式から評価することができる[1、21]。
【数15】
【0094】
クヌーセン機構、分子拡散機構、及び/又はそれらの組み合わせといった様々な形の機構が、DCMDの蒸気輸送について提案されている[1]。所定の実験的な条件の下、どの機構が動いているかを決定する際のガイドラインを提供する支配的な量は、膜孔径に対する輸送された分子の平均自由行程(λ)の比率として定義される(すなわちKn=λ/d
p,t)クヌーセン数(Kn)である。
【0095】
したがって、膜透過性(B
m)は、以下のような流れの機構によって評価することができる。
−クヌーセン機構
【数16】
ここで、ε
t、τ
t、r
p,t、δ
tは、それぞれ多孔性、孔ねじれ、孔径、及び膜の疎水性層の厚みであり、Mは水の分子量であり、Rは気体定数であり、及びTは絶対温度である。
−分子拡散機構
【数17】
ここで、P
aは空気圧力であり、Pは、一定と仮定し、空気及び水蒸気の分圧の合計に等しい孔内部の全圧であり、Dは水の拡散係数である。水―空気についてのPD(Pam
2/s)の値は、以下の表現から算出することができる[8]。
【数18】
−複合型クヌーセン/通常の拡散機構
【数19】
【0096】
[疎水性/親水性複合膜の特徴が透過流束に及ぼす影響を説明する数学モデル]
高効率なMD膜の将来の開発にガイドラインを提供する、膜蒸留(MD)のための疎水性/親水性膜のための有効な数学モデルを開発することは非常に重要である。モデルは、疎水性/親水性膜の性能に影響を及ぼす、異なるパラメータの最適化を可能にする。
【0097】
行った熱移動解析の結果、式(2)は以下、のように変形することができる。
【数20】
式(19)のQをU(T
b,f−T
b,p)で置換して変形すると、
【数21】
式(20)の水蒸気流束(J
w)を式(12)で置換すると、
【数22】
式(21)の(T
m,f−T
m,p)を式(12)で置換して変形すると、水蒸気流束は以下のように表すことができる。
【数23】
【0098】
供給及び透過溶液において無限の撹拌速度を仮定する場合、境界層の熱伝導係数は無限となる。無限の熱伝導係数に対応する全体の熱伝導係数、及び蒸気流束が、それぞれU
∞、及びJ
w∞として与えられる場合、式(7)は、
【数24】
となる。式(23)において、h
s、h
t、及びJ
wを適切な表現で置換することにより、
【数25】
となり、式(22)、及び(24)から、以下の式を得ることができる。
【数26】
式(25)を更に変形して以下が得られる。
【数27】
定数δを疎水性/親水性複合膜の総厚とみなす場合、
【数28】
式(26)のδ
tを式(27)で置換すると、
【数29】
式(28)を更に変形すると下式が得られる。
【数30】
ここで、
【数31】
式(30)において、k
t’、k
s’、及びK’を、それぞれ式(9)、(10)、及び(13)で置換して、以下のf
iの式が得られる。
【数32】
したがって、f
iは、疎水性上層、及び親水性副層のモルホロジー(すなわちε
t、r
p,t、ε
s)、並びにこれらの熱伝導率のみを反映する。
【0099】
[結果及び考察]
[疎水性/親水性膜の概念の理論的検証]
式(29)は、式(31)によって与えられる量f
iが1より小さい場合、親水性副層の厚さ(δ
s)の増大が、複合疎水性/親水性膜を通るDCMD流束(J
w∞)を強化することを示す。そうでなければ、親水性副層の厚さが増加するとき、DCMD流束は減少する傾向を示す。f
iは明らかに正の値であるから、δ
sの増加に伴うJ
w∞の増加の基準は、
【数33】
である。
【0100】
これは、1より小さい量のf
iを有することは、膜全体の質量流束に対するバリア抵抗を最終的に減少させることとなる親水性副層の多孔性若しくは熱伝導率のいずれかの増加、及び/又は疎水性上層の多孔性の増加を意味することから予想外ではない。
【0101】
δ
tの数値は、式(31)に現れるが、式(31)のδ
tは式(15)、(16)、及び(18)に従いB
mの分母に現れるδ
tによって相殺されるから、f
iに対する影響を全く有しないことに留意すべきである。さらに、疎水性材料の変更は、大部分の疎水性ポリマーが類似の熱伝導率を有するので、f
iにほとんど影響を及ぼさない[26]。
【0102】
提示したDCMDモデルの式を用いて、疎水性/親水性膜の物理的な概念を立証するために、水を供給として用いたDCMDの構成についてシミュレーションを行った。総厚をδ=60μmに維持しつつ、親水性副層の異なる厚み(δ
s)について、DCMD流束を算出した。DCMD操作条件は、バルク供給温度(T
b,f)に45℃、及びバルク浸透温度(T
b,p)に35℃を使用した以前の刊行物[6]における条件と同様であると仮定した。それに加えて、膜の供給側及び透過側の両者について無限の撹拌速度を仮定した。一方で、[21]において示されるように、透過流束を異なる撹拌速度で測定し、無限の撹拌速度に対して外挿を行った。
【0103】
表2は、計算のために必要な、全ての必要な膜パラメータを示す。膜特性評価パラメータ、例えば多孔性(ε
t)及び(ε
s)、並びに孔径(d
p,t)を、〔21〕において報告されたように、気体透過性試験、及び原子間力顕微鏡から得た。多孔性及び孔径は、市販の膜より実質的により大きいことが分かった。k
s’値を式(9)から算出し、k
t’値を、先の刊行物[21]において報告された0.032W/mKに等しく設定し、またK’値を式(13)〜(18)によって算出した。上記の膜特性評価パラメータに加えて、以下の数値を、k
t’、k
s’、及びK’の算出のために使用した。
【表2】
【0104】
値2405.55kJ/kgを蒸発の潜熱(ΔH
v)に使用し、0.0269W/mKを気体の熱伝導率(k
g)に使用し、0.626W/mKを水の熱伝導率(k
w)に使用し、0.25W/mKを、PTFEの熱伝導率に等しいと考えられるSMMの熱伝導率(k
t)に使用した。PEI及びPPの熱伝導率(k
s)はそれぞれ、0.1297W/mK、及び0.135W/mKであった。
【0105】
k
s’値は、研究室製の膜より市販の膜について高い点に留意すべきである。これは、市販の膜のより高い多孔性のためである。市販の膜について、K’値は1桁大きいことを指摘しなければならない。これは、市販の膜と比較して、研究室の膜の疎水性SMM層のより小さい孔径、及びより低い多孔性のためである。
【0106】
表2はまた、研究室製の膜について、疎水性上層の孔を通した水蒸気の物質移動がクヌーセン機構によって支配されることを示す。一方で、市販の膜の場合、遷移機構は一般的な機構である。これは、クヌーセン数(Kn)を評価することによって決定した。平均自由行程(λ)は、所定の操作条件の下、137.7nmと推定した。
【0107】
表2にも示した計算したf
i値は、研究室製の膜、及び市販の膜の両者について、式(32)によって与えられる条件を満たす。
【0108】
式(29)によるモデル計算と、実験の結果との一致を調査した。無限の撹拌速度に対応する実験値を、上述したように外挿によって得た[21]。
図2は、異なるPEI濃度についての理論的、及び実験的な流束値を示す。一致は合理的で、モデルの有効性を示している。PEIの濃度が増加するにつれて、平均孔径(d
p,t)が減少するため、流束は減少する。
【0109】
図3において、DCMD流束が親水性副層の厚み(δ
s)の増大、又は疎水性層の厚み(δ
t)の減少とともに増加することがわかる。市販の膜(TF200、及びTF450)より、研究室で調製した膜(M12〜M20)について、DCMD流束(J
w)に及ぼすδ
sの影響が強いことを認めることもできる。これは、研究室製の膜についての、より少ないf
i値のためである。
【0110】
[研究室製の膜の改善に関する議論]
[1. 疎水性層の多孔性]
疎水性層の多孔性の増加は、以下の2つの理由のため、DCMD流束に対して明らかに好影響を及ぼす。
a)−疎水性層の多孔性の増加は、式(15)、(16)、及び(17)に従い、係数B
mを、並びに結果的に式(29)のK’を増加させる。
b)−k
tと比較してk
gは低い値であるため、式(10)に従いk
t’が減少する。しかしながら、この影響は、以前に述べたように0.032W/mKであるk
t’の非常に低い値のため、今のところは無視される。
【0111】
疎水性上層の多孔性の影響を知るために、疎水性層の多孔性を0.2から0.6に増やしつつ、他のパラメータを以下のように一定に保つことにより、計算を行った。d
p,t=17.53nm、ε
s=0.1587、δ=52.3μm、及びδ
s=47.07μm(すなわち、他の文献[22]で述べたように複合膜の総厚の90%)。
【0112】
d
p,t、及びε
sは、4つの研究室製の膜(SMMをブレンドしたPEI膜)の平均である点に留意すべきである。算出の結果を
図4に示す。示されるように、上部の疎水性層の多孔性が増加するにつれて、DCMD流束は増加する。疎水性上層の多孔性を0.2から0.6に増やしたとき、DCMD流束は3倍になった。従って、これは、新規な高い流束のDCMD膜の設計に取り入れるべきである。
【0113】
物理的に、疎水性上層の多孔性の増加は、(i)膜孔内に入り込まれた空気は、膜のポリマー材料より低い熱伝導率を有し、及び(ii)蒸発のために利用できる表面領域が増加するという2つの理由のため、透過流束を増加させる。
【0114】
[2. 親水性層の多孔性]
k
sよりk
wの値が高いため、k
s’が式(9)に従って増加するので、親水性副層の多孔性の増加はDCMD流束の増加をもたらす。式(30)によって示されるように、これはf
i値を減少させ、DCMD流束の増加をもたらす。
親水性副層の多孔性を0.1から0.6に増やしつつ、他のパラメータを以下のように一定に保つことによって、計算を行った。d
p,t=17.53nm、ε
t=0.2197、δ=52.3μm、及びδs=47.07μm。
【0115】
d
p,t、及びε
tの値は、研究室で調製した膜の平均値である点に留意すべきである。算出の結果を
図5に示す。予想されたように、
図5は親水性副層多孔性(ε
s)の増加に伴うDCMD流束の増加を示す。より具体的には、親水性副層の多孔性を0.1から0.6に増やすことは、DCMD流束の60%の増加をもたらす。従って、これもまた複合疎水性/親水性膜の設計において考慮すべきである。
【0116】
複合疎水性/親水性膜を通したDCMD流束は、親水性副層の多孔性の増加よりも、疎水性上層の多孔性の増加により影響されることを指摘しなければならない。
【0117】
[3.親水性副層の熱伝導率]
親水性副層の材料(本調査においてPEI)の熱伝導率(k
s)の増加は、式(9)に述べたように、親水性層全体の熱伝導率(k
s’)を上昇させる。式(29)から予想できるように、これはf
iを減少させ(式(30)を参照)、DCMD流束を増加させる。
【0118】
研究室製の膜(M12、M15、M17、及びM20)を考慮して、理論的計算を行った。算出の結果を、
図6に示す。予想されたように、DCMD流束はk
sの増加によってかなり増加し、それぞれの膜についての漸近値に接近する。これは、親水性副層の熱伝導率(k
s)が、結果としてf
i値の劇的な減少につながるという事実に起因する。この値(f
i)をゼロに近づくまで減少させることができれば、透過流束はいかなる公知のMD流束より何倍も大きくなる。
【0119】
図6はまた、親水性/疎水性膜を適切に設計し、温度分極を除去することができる場合、所定の操作条件において、DCMD流束が90kg/m
2hに接近することがあることを示す。26W/mKの親水性副層の熱伝導率は、達成できる最大の流束を得る程度に十分である。
【0120】
図6から、親水性副層の熱伝導率はできるだけ高くすべきであると結論付けることができる。その理由は、親水性層の熱伝導率の増加とともに疎水性層全体の温度勾配(
図1)がより急になり、結果として、式(33)に示すように定義される温度分極も増加するということである。
【数34】
【0121】
ポリマーの熱伝導率は目標値に及ばないことは言及するに値する。ポリマーの熱伝導率よりはるかに大きい熱伝導率を有する材料を選択することを推奨する。
【0122】
[4.最適熱伝導率に対する撹拌速度の影響]
有限の熱伝導係数は、実用的用途の現実により近い場合がある。この場合、式(7)、(22)、及び(30)の組合せにより、下式が得られる。
【数35】
ここで、h
f、及びh
pは、それぞれ供給及び透過側の境界層の熱伝導係数である。更に、h
f=h
p=hと仮定して、式(34)を以下のように変形する。
【数36】
【0123】
5000〜50000W/m
2Kに渡るさまざまな熱伝導係数について、全ての他のパラメータを節4.2.3において使用したものと同様に保ちつつ、シミュレーションを行った。具体的には膜M12をシミュレーションのために選択した。結果を
図7に示す。シミュレーションした流束値が、無限の熱伝導係数について達成される流束値よりはるかに低いことは明らかであるが、熱伝導率(k
s)が増加するにつれて流束は増加する。hが増加するにつれて、増加するk
s値の影響はより顕著になる。例えば、0.13から26W/mKへのksの増加は、それぞれ5000W/m
2K、及び50000W/m
2Kのhの値について、透過流束を53.2%、及び334.1%改善した。
図7から得ることができる他の観察は、熱伝導係数が減少するにつれて、流束値がより急速にレベルを落とす(より低いk
s値を意味する)ということである。
【0124】
[結論]
上述のように、新規な数学的な式の設定を導き、疎水性/親水性複合膜の性能を開示した。疎水性上層、及び親水性副層のモルホロジー(すなわち表面多孔性(ε
t)、及び疎水性上層の平均孔半径(r
p,t)、及び親水性副層の表面多孔性(ε
s))を反映するパラメータf
iを定義した。パラメータf
iは、親水性副層の厚さを減少させた場合にMD流束を増加させるために、1より低くすべきであることを示した。そうしなければ、MD流束の減少を引き起こす。提案した数学モデルを使用するシミュレーションは、疎水性上層、及び親水性副層の多孔性の増加が、MD流束を増加させることを示した。さらに、親水性副層の熱伝導率の増加は、親水性層の熱伝導率の約26W/mKにおいて、MD流束を増加させ漸近値に到達させる。
[用語]
[記号]
a 実験的相関性についての特性定数(式8)
B
m 正味のDCMD透過性(kgm
−2s
−1Pa
−1)
d
p,t 疎水性上層の平均孔径(nm)
D 水拡散係数(m
2s
−1)
f
i 式(30)で定義される関数
h 熱伝導係数(Wm
−2K
−1)
J
w DCMD流束(kgm
−2h
−1)
J
w∞ 無限の撹拌速度におけるDCMD流束(kgm
−2h
−1)
k 熱伝導率(Wm
−1K
−1)
k
t’ 上層の熱伝導率(Wm
−1K
−1)
k
s’ 副層の熱伝導率(Wm
−1K
−1)
K’ 膜透過性(kgm
−1s
−1K
−1)
Kn クヌーセン数
LEP
w 水の液体侵入圧力(Pa)
M 水の分子量(kgkmol
−1)
Nu ヌッセルト数
p 水蒸気の分圧(Pa)
P 全圧(Pa)
P
a 空気圧力(Pa)
Pr プラントル数
Q 熱流束(Wm
−2)
T 絶対温度(K)
T
m 平均絶対温度(K)
r
p,t 疎水性上層の平均孔半径(nm)
R 気体定数(Jmol
−1K
−1)
Re レイノルズ数
U 全体の熱伝導係数(Wm
−2K
−1)
U
∞ 無限の撹拌速度における全体の熱伝導係数(Wm
−2K
−1)
[ギリシア文字]
δ 総膜厚(μm)
δ
s 親水性副層の厚み(μm)
δ
t 疎水性上層の厚み(μm)
ε 多孔性(%)
ε/τ 有効空隙率(%)
λ 平均自由行程(nm)
μ 水の動的粘度(kgm
−1s
−1)
θ 水接触角(°)
τ 孔ねじれ
ΔH
v 蒸発の潜熱(kJ/kg)
[添字]
a 前進接触角
b バルク
f 供給
g 気体
m 膜
m,f 供給側における膜の疎水性表面
m,p 膜の疎水性/親水性界面
p 孔
s 親水性副層
s,p 透過側における膜の疎水性表面
t 疎水性上層
w 水
[上付き文字]
b 実験的相関性についての特性定数(式8)
c 実験的相関性についての特性定数(式8)
d 実験的相関性についての特性定数(式8)
K クヌーセン
D 分子拡散
C クヌーセン/通常の拡散の組合せ
【0125】
[例2]
[直接接触膜蒸留による脱塩のための疎水性/親水性ポリエーテルイミド複合膜の調製、及び特性評価]
この例の目的は、疎水性/親水性膜の調製条件が、膜モルホロジー、及びこれらの膜の脱塩DCMDの性能に対する影響を確認し、述べることである。膜の性能は、膜モルホロジー、並びに膜調製ファクター、例えばSMMの種類、SMM濃度、蒸発時間、及び溶媒の種類に関連した。2つの異なる種類のSMMを合成し、及び特性評価した。ポリエーテルイミド(PEI)をホスト親水性ポリマーとして使用した。異なる膜を準備し、気体透過性試験、水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定、走査電子顕微鏡検査(SEM)、接触角度(CA)、及びX線光電子分光法(XPS)分析を用いて特性評価した。最後に、全ての膜を、蒸留水及び0.5MのNaCl溶液の供給を用いたDCMDによって試験した。結果を、市販のPTFE膜(FGLP1425、Millipore社、米国)の結果と比較した。用意した膜は、DCMDによる脱塩における実用的用途のために有望なようであった。
【0126】
[実験]
[物質]
この実験において使用した全ての化学品、及びそれらの化学情報検索サービス(CAS)番号を表3に挙げた。ポリエーテルイミド(PEI)の重量平均分子量(M
w)は15kDaであり、ガラス転移温度(T
g)は216.8℃である。使用した市販の膜は、多孔性0.70、及び公称孔径0.25μmを有する、Millipore社、Billerica、MA、米国によって供給されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(FGLP1425)である。
【表3】
【0127】
[SMMの合成]
SMMは、二段階溶液重合法を使用して合成した[22、及び23]。溶媒N,N―ジメチルアセトアミド(DMAc)を、133.3Pa(1.0Torr)の圧力の下、約25℃で蒸留した。メチレンビス(p―フェニルイソシアネート)(ジフェニルメタンジイソシアネート、MDI)もまた、66.7Pa(0.5Torr)下、150℃で蒸留した。ポリプロピレングリコール(PPG)、α,ω―アミノプロピルポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、及び2―(パーフルオロアルキル)エタノール(FAE)を、66.7Paの下、24時間脱気した。第1の重合工程は、所定の組成を有する溶液中で行い、プレポリマーとして、MDIとPPGとの反応でポリウレタン、又はMDIとPDMSとの反応でポリ尿素を形成した。第2の重合工程において、プレポリマーをFAEの添加によって末端キャップし、結果としてSMMの溶液にした。SMMの組成は、MDI:PPG:FAE=3:2:2、又はMDI:PDMS:FAE=3:2:2である。調製したSMMは、
図8に示すこれらの化学構造、すなわち、両者ともFAEで末端キャップしたポリ(ウレタンプロピレングリコール)(PUP)、及びポリ(ウレアジメチルシロキサンウレタン)(PUDU)に基づいて、以下PUP、及びPUDUと称する。
【0128】
[SMMの特性評価]
2つの調製したSMMのフッ素含有量の元素分析を、ASTM D3761の標準方法を使用して行った。正確な質量(10〜50mg)のサンプルを、酸素フラスコ燃焼容器(酸素燃焼カロリメーター、Gallenkamp)の中に入れた。熱加水分解の後、フッ素(イオン)を、イオンクロマトグラフィ(イオンクロマトグラフ、Dionex DX1000)で測定した。
【0129】
ガラス転移温度(T
g)は、汎用分析2000プログラム(DSC Q1000、TA Instruments、New Castle、DE)を備えた示差走査カロリメーター(DSC)によって調べた。約10mgのポリマーを、アルミニウムパン内に圧着した。SMMは、10分間280℃でアニールし、次に−50℃まで急冷し、10℃/分の加熱速度で走査した。対応する熱容量の遷移の中間点でTgの値を記録した。
【0130】
Waters410屈折率検出器を備えたWaters Associates GPCクロマトグラフを用いたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、合成したSMMの重量平均分子量(Mw)、及び数平均分子量(Mn)を測定した。3つのWaters UltraStyragel
TM充填カラムを直列に取り付けた。テトラヒドロフラン(THF)を40℃、及び0.3ml/minの流量で濾過して使用した。最初に、1.3x10
3〜3.15x10
6g/molの異なる分子量を有する標準ポリスチレン(Shodex、東京、日本)を使用して、系のキャリブレーションを行った。標準、及びSMMサンプルをTHF水溶液(0.2w/v%)に調製し、注入の前に0.45μmのフィルタを通して濾過して、高分子量構成成分を除去した。Millenium32ソフトウェア(Waters)をデータ収集のために使用した。
【0131】
[膜の調製]
SMM変性したPEI膜を、相転換法による単一のキャスティング工程で調製した[25、27、及び36]。γ―ブチロラクトン(GBL)を非溶媒添加物として用いた。所定量のPEIを、DMAc/GBL、又はNMP/GBL混合物中に溶解した。キャスティング溶液中のPEI濃度を12質量%に維持しつつ、GBLの量を10質量%に維持した。SMMの2つの異なる種類(PUP、及びPUDU)を、0.5〜2質量%の範囲の異なる濃度でPEI溶液に加えた。得られた混合物を、室温で少なくとも48時間、オービタルシェーカー内で撹拌した。これらを使用する前に、全ての得られたポリマー溶液を、0.5μmのテフロン(登録商標)フィルタを通してろ過し、室温で脱気した。ポリマー溶液を、キャスティングロッドを使用して、室温で滑らかなガラスプレート上に0.30mmの厚さにキャストした。次に、キャストフィルムをガラスプレートと共に室温で蒸留水中に1時間浸漬する前に、溶媒を所定の時間、周囲温度で蒸発させた。ゲル化の間、膜が自発的にガラスプレートから剥離することが観察された。次に全ての膜を3日間、周囲条件で乾燥させた。表4に、調製した膜、それらの構成物質、及び調製条件を示す。
【表4】
【0132】
[膜の特性評価]
[1.気体透過性試験、及び水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定]
調製した表面変性PEI膜について、水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定、及び気体透過性試験を行った。LEPwの測定の前に気体透過性試験を行った。
図14は、試験の構成のブロック線図を示す。膜の有効面積は、9.6cm
2であった。最初に、圧力容器に窒素を5barの圧力で充填することによって、装置を気体透過性試験のために準備した。次に、ステンレススチール膜ホルダーの吸込弁を開き、入口窒素圧を圧力計の助けを借りて制御した。膜の底から流れる窒素の流束を、気流計で測定した。
【0133】
本調査において、10〜100kPaに渡るさまざまな膜間圧において、それぞれの乾燥した膜を通した窒素の透過流束を測定した。一般に、多孔性媒体についての気体透過性(B)は拡散項、及び粘性項を含み、Carmanによって報告されたように[24]、これらの寄与は適用した圧力に依存する。
【数37】
ここで、Rは気体定数であり、Tは絶対温度であり、Mは気体の分子量であり、μは気体粘度であり、P
mは膜孔内の平均圧力であり、rは膜孔半径であり、εは多孔性であり、また、L
pは有効空隙長さである。
【0134】
行った全ての気体透過性実験の全体を通して、気体透過性は圧力から独立していることがわかり、このことは気体透過性がP
mから独立していることを意味する。従って、拡散機構が膜孔を通した気体輸送を支配すると考えられ、本実験で調製した膜が小さい孔径を有するという事実を明らかにしている。したがって、気体透過性は、式(34)の粘性項を除いた後に、下式のように記載しうる[16、及び17]。
【数38】
【0135】
従って、この試験は、孔径/有効空隙率の比率(rε/L
p)を評価する際に有用であった。得られた値のバッチ間の変動を評価するために、同じキャスティング溶液バッチから作った異なる膜シートを使用して、いくつかの気体透過性実験を繰り返した。更に、それぞれの膜について、気体流量の測定を所定の気圧で3回行い、得られた値を平均して膜浸透値を得た。
【0136】
次に、圧力容器を2Lの水で満たして、LEP
wの測定のために装置を準備した。次に、窒素ボンベから水に圧力を適用した。水が膜を通って浸透して濾過セルが残るまで、圧力を0.1barごと増加させた。水が流れ始めたらすぐに圧力を記録し、その膜についての水の液体侵入圧力(LEP
w)とみなした。実験は、キャスティング溶液バッチから作った3つの異なるシートを用いて3回行った。結果を平均して、LEP
wを得た。
【0137】
[2.走査電子顕微鏡検査(SEM)]
SMMをブレンドしたPEI膜の断面図を、走査電子顕微鏡検査(SEM)(JSM―6400 JEOL、日本)によって分析した。膜を細かく切り(3mm幅、及び10mm長)、その後液体窒素リザーバーに5秒間浸漬した。破片を液体窒素中に保ちつつ、それらを両末端から引いて2つの破片に破断した。破片の1つを、炭素ペーストを用いて金属プレート上に載せ、使用前に金で被覆した。最後に破断部分の膜の断面図をSEMによって調べた。
【0138】
[3.X線光電子分光(XPS)]
それぞれのSMMをブレンドした膜の表面の元素組成を、X線光電子分光法(XPS、Kratos Axis HS X線光電子分光計、Manchester、英国)によって決定した。それぞれの膜を、膜の無作為な位置から1cm
2のサンプルに切った。単色化したAlK
αX線照射を励起のために使用し、また、3つのチャネル検出器を有する180°半球体のアナライザを使用した。15kV、及び20mAでX線銃を操作した。アナライザチャンバーの圧力は、1.33x10
−4〜1.33x10
−5Paであった。分析領域のサイズは約1mm
2であった。全ての膜サンプルの上面、及び底面の両側におけるフッ素含有量を分析した。
【0139】
[4.接触角(CA)の測定]
SMMをブレンドした膜の接触角(CA)を測定して、これらの疎水性/親水性を調査した。CAの測定は、VCA―Optima(AST products社、MA、米国)を使用して行った。それぞれの膜から無作為な位置で、面積4cm
2(2×2cm)のサンプルを準備した。次に、サンプルをガラスサンプルプレートに配置し、スコッチテープで固定した。蒸留水で満たした装置シリンジを取り付けて垂直に立たせた。2マイクロリットルの水を、膜表面に堆積させた。CAは、それぞれの膜サンプルの上面及び底面の両側の5つの異なる点において測定した。
【0140】
[DCMD実験]
以前の研究[36]に示したDCMDの構成によって、調製したSMMをブレンドしたPEI膜を試験した。水蒸気流束、及びNaCl分離係数に関して、それぞれの膜の性能を、市販のPTFE膜の性能と比較した。膜モジュールは、各々2つの円筒状チャンバーから成る3つの円形のステンレススチールセルの系である。それぞれのセルは、水の漏出を防止するOリング、供給側において1つの入口及び1つの放出口、並びに透過側において1つの入口及び1つの放出口をそれぞれ有する。それぞれのセルの直径は約10cmで、結果として235.6cm
2の(3つのセルの)総有効面積になる。それぞれのセルは、2.5〜3cmの厚さを有する、2つの支えとなる区画を有する。供給チャンバーを、ジャケットを通して加熱システムに接続して、液体供給の温度を制御した。透過チャンバーを、冷却装置に接続して、透過側の流れの温度を制御した。膜は、2つのチャンバー(供給側、及び透過側)の間に配置した。供給、及び透過流量を、それぞれのセルについて2l/minで一定の状態に保った(総流量は6l/minであった)。定常状態に達したあと、±0.05℃の精度を有するデジタルメーターに接続した熱電対を使用して、供給及び透過溶液の出入りの温度を測定した。MDモジュールセルと共に全ての管を断熱して、熱損失を防止した。供給及び透過の円筒状の目盛り付き容器内の水位を監視することにより、透過流束を測定した。DCMDの構成中に水の漏出がない場合、供給容器の水量の損失は、透過容器の水量の増加と等しくあるべきである。
【0141】
蒸留水、及び0.5MのNaCl水溶液を供給として使用して、異なる設定のDCMD実験を行った。供給として蒸留水を使用した場合、供給温度を35〜65℃まで変化させつつ、透過物温度を11〜15℃に維持した。0.5MのNaCl溶液を供給として使用した場合、供給温度は65℃であり、透過物温度は15℃であった。
【0142】
[結果及び考察]
[SMM、及びSMMをブレンドしたPEI膜の特性評価]
SMM(PUP、及びPUDU)についてのT
g、M
w、及びM
nの値を表3に与える。PUDUについての正確なT
g値は、サンプルを280℃まで加熱したが、装置の高温の限界により得ることができなかった。
図8に示したSMMの化学組成によれば、m(CF
2の繰り返し単位の数)の値は、2―(パーフルオロアルキル)エタノール(FAE)の分子量から7.58と算出した。n(プロピレングリコールの繰り返し単位の数)、及びy(ジメチルシロキサンの繰り返し単位の数)の値は、PPG、及び、PDMSの平均分子量から、それぞれ7.02、及び9.81と算出した。q(ウレタン又はウレアの繰り返し単位の数)の値は、それぞれのSMMの重量平均分子量から、PUP、及びPUDUについて、それぞれ50.60、及び22.58と算出した。
【表5】
【0143】
全ての膜の接触角(CA)データを、表6に示す。調製した膜の上面のCAは、底面のCAより高いことを観察した。SMMの種類以外は同じ条件の下で調製した膜M1のCAと比較してより高い膜M2のCAは、SMMのPUDUの疎水性がPUPの疎水性より高いことを示す。SMM濃度から予想されるように、PUPを使用してブレンドした膜のCAは以下、M4>M1>M3の順序である。他のホストポリマーを用いて調製した他のSMM膜について、これらの結果が観察された[13、及び31]。
【表6】
【0144】
溶媒蒸発時間の増加に伴い、膜のCAは、増加した蒸発時間とともにSMMがより移動するので予想もされる、M7>M6>M5の順序であった。この結果は、他のSMMをブレンドした膜についても、以前に観察された[13、25、45、及び50]。
【0145】
PEI、及びSMMをブレンドしたPEI膜の両者についてのXPS分析の結果を表7に示す。フッ素は、PEI膜中に検出されなかった。これは、フッ素はSMMに関連するので予想された。全てのSMMをブレンドしたPEI膜について、上面の膜のフッ素含有量は、底面のフッ素含有量より高いことがわかり、このことは膜の上層に向かうSMMの移動を示している。同じSMM濃度について、PUDUをブレンドしたPEI膜(M2)は、PUPをブレンドしたPEI膜(M1)より多くのフッ素を示した。これは表5に示すように、PUPと比較してPUDUについてより高いフッ素濃度に関連がある。PUP濃度をPEIポリマーキャスティング溶液中で変化させた場合、対応する膜(M3、M1、及びM2)のCAは、フッ素含有量と併せて、それぞれ表6、及び7に示すようにSMM濃度の増加と共に増加することをここで指摘しなければならない。この結果は、他のSMMをブレンドした膜についても、以前に観察された[13、25、45、及び50]。
【表7】
【0146】
膜断面のSEM画像を
図9に示す。認められるように、全ての膜は上面において指状の構造を有する非対称の構造であったが、一方底面の構造はSMMの種類、SMM濃度、溶媒の種類、及び溶媒蒸発時間に応じて様々であった。
【0147】
LEP
w、及び(rε/L
p)についてのデータを表8にまとめる。このデータは、DCMDのデータと合わせて後述する。
【表8】
【0148】
[膜の性能]
[1. SMMの種類の影響]
M1(PUP)、及びM2(PUDU)膜を選択し、モルホロジー、及びDCMD性能に対するSMMの種類の影響を比較した(膜調製条件については表4を参照)。
図10は、市販の膜(FGLP1425)のDCMD流束とともに、上記の膜のDCMD流束を示す。
図10aは、蒸留水を供給として使用した場合の、DCMD流束vs(versus)供給入口温度を示す。
図10bは、0.5MのNaCl水溶液を供給として使用した場合の、同じ膜のDCMD流束を示す。観察できるように、市販の膜、及びSMMをブレンドしたPEI膜の両者とも、供給入口温度の増加に伴い、DCMD流束の指数関数的な増加を示した。
図10a、及び10bの両者は、DCMD流束の順序がM1>M2>FGLP1425であることを示す。調製したSMMをブレンドしたPEI膜は、市販の膜より高い透過流束を示し、PUPをブレンドした膜(M1)は、PUDUをブレンドしたPEI膜よりDCMD用途について優れていた。特に、膜M1のDCMD流束は、市販の膜のDCMD流束より55%高いことがわかった。
【0149】
NaCl水溶液を供給として使用した場合の透過流束は、塩溶液のより低い蒸気圧を反映して、蒸留水を供給として使用したときに得た透過流束より25〜30%低かった。DCMD流束の減少の他の原因は、供給膜側中のNaCl溶質の存在による濃度分極化である[16]。塩溶液の実験を参照すれば、溶質分離係数は下式で定義される。
【数39】
ここで、C
p、及びC
fは、それぞれ透過、及びバルク供給溶液中のNaCl濃度である。3つの試験した膜について、αは99%を超えることを観察した。これは、SMMをブレンドした膜M1、及びM2が、以前の研究[16〜18]において報告したように、有望なMD膜であることを示す。一方、SMMをブレンドせずに調製した膜M0はいかなる塩排除能力も示さず、このことはSMMをブレンドすることがMD膜の調製にとって重要であることを示した。
【0150】
表6、及び7によれば、CA、及びフッ素含有量は両者とも、M1膜の表面より、M2膜の表面について高い。従って、M2膜は、M1膜より疎水性である。さらに表8は、M1膜のLEP
w値は膜M2のLEP
w値より小さいことを示し、このことは各M1膜がより親水性であること、及び/又はM1膜はラプラスの式[24]に従ってM2膜より大きい最大孔径を有することを示している。M1膜はより親水性であり膜M2より大きい比率(εr/L
p)の値を有するので、両方のケースを適用することができる。従って、より高い比率(εr/L
p)を示す膜がより高いDCMD流束を有すると結論することができる。比率(εr/L
p)の増加は、多孔性及び/若しくは孔半径の増大、又は有効空隙長さの減少を意味するので、これは予想外ではない。比率(εr/L
p)の値を気体透過性実験から得たことを考慮して、気体輸送と蒸気輸送の間の並列関係を見いだした。
【0151】
2つの異なるSMM/PEI膜の断面のSEM画像を、
図9a、及び
図9bに示す。両方の画像は、下を指状の構造によって支持された密度の高い上層を有する非対称膜の構造を示す。しかしながら、両方の膜の底部は全く異なる。膜M2の指状の構造(
図9b)は、大きく、十分に発達したマクロボイドを形成した底面に達した。一方、M1膜の底において(
図9a)、大きいマクロボイドと合わせてスポンジの様な構造が形成した。スポンジの様な構造を示す膜の、指状構造を有する膜の透過流束より高い透過流束が記載されている[20]。従って、スポンジの様なM1膜の、指状のM2膜より高い流束は当然であると思われる。しかしながら、この解釈は、DCMDの質量輸送に対する上面のスキン層の貢献を無視している。事実、全体の膜輸送を制御しているのはスキン層である。理論に制約されないが、多孔性副層は機械的な支持のみを提供すると考えられる。(副層の構造とDCMD流束との間の関係についての)上記の観察は、多孔性副層もまた、液体の水がその空隙部内部へ浸透することから、膜輸送に関与していることを示唆する。
【0152】
[2. SMM濃度の影響]
M0(0質量%)、M3(1.0質量%)、M1(1.5質量%)、及びM4(2.0質量%)膜を選択して、SMM濃度の影響を調査した(表4を参照)。
図11は、市販の膜(FGLP1425)のDCMD流束とともに、上記の膜のDCMD流束を示す。
図11aは、蒸留水を供給として用いたDCMD実験における、DCMD流束vs供給入口温度を示す。
図11bは、0.5MのNaCl水溶液を供給として用いたDCMDについて膜の性能を示す。M0膜についてのデータは、MD膜として機能することに失敗したため含んでいない。他の全ての膜についての分離係数(α)は99%を超えることがわかった。
図11aにおいて、
図10aと類似して、DCMD流束は供給温度とともに指数的に増加した。
【0153】
透過流束のデータを比較して、M4及びM3が市販の膜と比較して、それぞれ40及び20%の流束の強化を示したという事実にもかかわらず、M1膜は試験した膜の中で最良の性能を示した。
【0154】
表8によれば、LEP
w値の増加した順序は、M1(3.7bar)<M4(4.9bar)<M3(5.2bar)であり、このことは、M1膜がラプラスの式に従って最も大きい最大孔径を有すること[24]、及び/又はより疎水性でない(すなわち、上層のCAがより小さい)ことを示す。一方で、εr/L
p値の減少は、M1(7.09x10
−5)>M4(6.03×10
−6)>M3(5.48×10
−7)であった。この傾向は、より高いεr/L
p値を有する膜がより高い流束を示すという結論を立証した。
【0155】
膜の表面のフッ素含有量を表7に示す。観察された順序は、M3(9.16%)<M1(23.70%)<M4(27.17%)であり、このことは、膜の上面のフッ素含有量がSMM濃度の増加とともに増加することを示す。CAは、M3(88.4°)<M1(89.3°)<M4(96.3°)であり、M4膜について最も高い疎水性を確認した。
【0156】
M3、及びM4膜の断面のSEM画像を、それぞれ
図9c、及び97dに示す(M1膜の断面構造については
図9aを参照)。一般に、スポンジの様な構造を有する十分に発達したマクロボイドの底層、指状構造を有する中間層、及び上面のスキン層からなる構造は、非常に類似していた。したがって、ドープ中のPUP濃度は膜構造に影響を及ぼさなかったが、一方εr/L
p値に影響を及ぼした。後者のパラメータはスキン層の構造を反映しており、スキン層の詳細な構造はSEMによって観察することはできなかった。
【0157】
他に重要なことは、全ての上記の膜が、SMM濃度に関わらず、市販のPTFE膜(FGLP1425)より高い流束を示したということである。これはおそらく、MDにおけるより高い流束の膜に有利と思われるスポンジの様な構造、並びに以前の研究[16、及び17]において報告した上面の疎水性層のより小さな厚みに起因する。
【0158】
[3. 溶媒の種類の影響]
異なる溶媒を用いて調製したSMM/PEI膜の比較のために、M2(NMP)、及びM5(DMAc)を選択した。他の膜調製パラメータは変えずに保った(表4を参照)。
図12は、市販の膜(FGLP1425)のDCMD流束とともに、上記の膜のDCMD流束を示す。
図12aは、蒸留水を供給として用いたDCMD実験からの、DCMDの透過流束vs供給入口温度を示す。
図12bは、0.5MのNaCl水溶液を供給として用いたDCMDについて膜の性能を示す。M2膜及びM5膜の両者についての分離係数(α)は99%を超えることがわかった。再び
図12aにおいて、試験した全ての膜のDCMD流束は、
図10aと類似して、供給温度に伴い指数的に増加した。
【0159】
M2膜は、M5膜(及び市販の膜)より高い流束を示した。流束は、M5膜からM2膜まで約11%増加した。M2膜は、M5膜より低いLEP
wを示し、このことはM2膜がラプラスの式に従ってより大きい最大孔径を有する可能性があること[24]、又はM5膜がより疎水性であることを示している。事実、M5膜のCA(100.6°)は、M2膜のCA(91.93°)より高い。さらに、有効空隙率/孔径の比率(εr/L
p)の順序は、M2>M5であり、このことは、より高い(εr/L
p)を有する膜がより高いDCMD流束を示すという我々の前述の結論を更に立証する。
【0160】
M5膜のSEM断面画像を
図9eに示し、また、M2の画像を
図97bに示す。両方の膜は、指状構造を有する十分に発達したマクロ孔の底層、指状構造の中間層、及び上面のスキン層から成る。しかしながら、M5膜のマクロ孔はより小さい。これは、M2膜の流束と比較してより高いM5の流束を更に説明することができる。
【0161】
[4.蒸発時間の影響]
他の膜調製パラメータを不変に保ちつつ、M2(0min)、M6(2min)、及びM7(4min)膜によって、蒸発時間の影響を調査した(表4を参照)。
図13は、市販の膜(FGLP1425)のDCMD流束とともに、上記の膜のDCMD流束を示す。
図13aは、蒸留水を供給として用いたDCMD実験における、DCMD流束vs供給入口温度を示す。
図13bは、0.5MのNaCl水溶液を供給として用いたDCMDについて膜の性能を示す。上記の全ての膜について、分離係数(α)は、99%を超えることがわかった。
図13において、試験した全ての膜について、以前の図に示した傾向と類似して、DCMD流束は供給温度に伴って指数的に増加した。透過流束はM2膜からM7膜で劇的に減少し、換言すれば、蒸発時間の増加を伴った。より具体的には、DCMD流束は、蒸発時間0(M2)から、2分(M6)、及び4分(M7)の蒸発時間について、それぞれ60%、及び85%減少した。
【0162】
LEP
w値を比較して、増加の順序はM2(4.0bar)<M6(4.7bar)<M7(5.5bar)であり、このことは、膜M2がラプラスの式[24]に従って最も大きい最大孔径を有すること、及び/又は最も低いCAを有することを示している。CAについて観察した増加の順序は、M2(91.93)<M6(104°)<M7(121.2°)であった(表7を参照)。蒸発時間が増加するにつれて、膜表面の疎水性は増加した。Sukらは[23、及び25]、蒸発時間がSMMの上層への移動に及ぼす影響を調査し、類似の挙動を得た。εr/L
p値に関して、観察された減少の順序は、M2>M6>M7であった。この傾向もまた、より高いεr/L
pを有する膜がより高いDCMD透過流束を示すという結論をうまく立証する。この例において示したDCMD実験は、膜表面をMDに使用する程度に十分な疎水性にするのに、時間は必要ではないことを示す。
【0163】
M7膜の断面のSEM画像を
図9fに示し、また、M2膜の画像を
図9bに示す。両方の膜は、指状構造を有する十分に発達したマクロボイドの底層、指状構造を有する中間層、及び上面のスキン層から成る。マクロボイドのサイズ及び数は蒸発時間の増加に伴い減少し、マクロボイドの間のスポンジの様な構造はより厚くなった。蒸発時間が4分である場合、マクロボイドはほぼ完全に除去された。これもまた、蒸発時間の増加に伴うDCMD流束の劇的な減少を説明する可能性がある。膜M7において、より厚いスポンジの様な構造が維持されたことを指摘しなければならない。したがって、M7は高い透過流束を有すると考えられる。それにもかかわらず、この膜は、蒸発時間なしで調製した膜M2の流束より低い透過流束を示した。これはまた、DCMD流束を支配するεr/L
p値が、多孔性副層の特性ではなく、上面のスキン層の特性であることを意味する。
【0164】
[結論]
この例は、MDにおける複合疎水性/親水性PEI膜の性能を改善する手段を提供した。これは、異なる膜調製パラメータ(例えばSMMの種類、SMM濃度、溶媒の種類、及びゲル化前の蒸発時間)の影響を調査することによって達成した。
【0165】
膜モルホロジーとMDにおけるその性能との間の関係を見いだすことによって、MDにおける疎水性/親水性膜の性能の、良好な、及び有益な理解が得られた。膜の特徴と膜の性能との連関は、整合的であった。上面のスキン層(疎水性層)の特徴が、DCMD流束に非常に影響することを確認した。これらの特徴は主に、水の液体侵入圧力、及び平均孔径と単位有効空隙長さ当たりの有効空隙率との積である(rε/L
p)。さらに、底層(親水性層)においてスポンジの様な構造、及び/又はより大きいマクロボイドを有する膜がより高い流束を示したような方法で、膜の断面構造がDCMD流束を強化する役割を果たすことを示した。試験した膜の調製条件の中で、PUPベースのSMMを有する膜は、PUDUベースのSMMを有する膜より良好であること、NMPはDMAcより膜調製のための良い溶媒であること、蒸発時間なしで調製した膜は、ゲル化前に蒸発時間を有する膜より高い透過流束を示すこと、及び最後に、1.5質量%のSMMを有する膜は、他の異なるSMM濃度を有する膜より高い透過流束を生じることが分かった。これらの有益な発見の全ては、上記に提示した理解によって説明した。
【0166】
一般に、大部分のSMM変性PEI膜は、市販のPTFE膜を使用して得た膜より高い透過流束を示したが、SMM変性PEI膜はかなり小さな孔径、及び多孔性を有する。さらに、全ての試験した膜について、分離係数が99%より高いことがわかった。
MDにおいて実行可能な膜を作るためにSMMが必要であるということを証明した。
【0167】
[例3]
[直接接触膜蒸留による脱塩のための疎水性/親水性ポリスルホン複合膜の調製、及び特性評価]
この例の目的は、膜蒸留の膜を製造するための可能性のある最初の膜材料として、逆浸透(RO)、限外濾過(UF)、及び精密濾過(MF)膜の調製[21]において広く使用されるポリスルホン(PS)を提供することである。このため、PSをホスト親水性ポリマーとして用いた相転換法によって疎水性/親水性膜を調製したが、疎水性層は、SMMをブレンドしたポリスルホンドープをフィルムへとキャストする間に疎水性SMMが空気/ポリマー界面へと移動することよって形成した。さらに、この例は、疎水性/親水性膜の調製条件が、調製した膜の膜モルホロジー、及び脱塩DCMDの性能に及ぼす影響を確認し、述べるものである。膜の性能は、膜モルホロジー、並びに膜調製ファクター(例えば、SMMの種類、PS濃度、非溶媒濃度、及び溶媒の種類)に関連があった。3つの異なる種類のSMMを合成し、特性評価し、及び膜調製のためPSにブレンドした。そのように調製した膜は、気体透過性試験、水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定、走査電子顕微鏡検査(SEM)、及び接触角(CA)の測定を使用して特性評価した。最後に、全ての膜を、蒸留水及び0.5MのNaCl溶液の供給を用いたDCMDによって試験した。結果は、市販のPTFE膜(FGLP1425、Millipore社、米国)の結果と比較した。調製した膜は、DCMDによる脱塩において有用であった。
【0168】
[実験]
[物質]
この実験において使用した全ての化学品、及びそれらの化学情報検索サービス(CAS)番号を表7.1に挙げた。ポリスルホン(PS)の平均分子量(M
w)は79000g/molであり、ガラス転移温度(Tg)は185℃である。使用した市販の膜は、Millipore社、Billerica、MA、米国によって供給される、多孔性0.70、及び公称孔径0.25μmを有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(FGLP1425)であった。
【表9】
【0169】
[SMMの合成]
SMMは、上記の二段階溶液重合法を使用して合成した[22、及び23]。この例において、第1の重合工程は、所定の組成の溶液中で行い、MDIとPDMSとの反応によって、プレポリマーとしてポリ尿素を形成した。第2の重合工程において、プレポリマーをFAEの添加によって末端キャップし、結果として
図6に示したPUDU構造を有するSMMの溶液にした。
【0170】
SMMの組成は、MDI:PDMS:FAEの比率が、(i)2:1:2、(ii)3:2:2、及び(iii)4:3:3となるよう変更した。調製したSMMは、PDMS化学量論数に基づいて、以下それぞれnSMM1、nSMM2、及びnSMM3と称する。
【0171】
[SMMの特性評価]
3つの調製したSMMのフッ素含有量の元素分析を、ASTM D3761の標準方法を使用して行った。正確な質量(10〜50mg)のサンプルを、酸素フラスコ燃焼容器(酸素燃焼カロリメーター、Gallenkamp)の中に入れた。熱加水分解の後、フッ素(イオン)を、イオンクロマトグラフィ(イオンクロマトグラフ、Dionex DX1000)で測定した。
【0172】
合成したSMMのガラス転移温度(T
g)を、示差走査カロリメーターによって調べ、合成したSMMの重量平均分子量を、例2で先に述べたようにゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定した。
【0173】
[膜の調製]
SMM変性PS膜を、相転換法によって、単一のキャスティング工程で調製した[15―16]。エタノールを非溶媒添加物として用いた。所定の量のPSを、NMP/エタノール、又はDMAc/エタノール混合物中に溶解した。キャスティング溶液中のPS濃度を10〜14質量%の範囲で変更し、10及び20質量%の2つの異なるエタノール濃度を使用した。nSMM1、nSMM2、及びnSMM3の3つの異なる種類のSMMを、PS溶液に1.5質量%に維持した濃度で加えた。得られたポリマー溶液を、使用前に、室温で少なくとも48時間、オービタルシェーカー内で撹拌した。得られたポリマー溶液は、0.5μmテフロン(登録商標)フィルタを通してろ過し、室温で脱気した。ポリマー溶液を、キャスティングロッドを使用して、室温で滑らかなガラスプレート上に0.30mmの厚さにキャストした。得られたキャストフィルムをガラスプレートと共に、室温で、蒸留水中に1時間浸漬した。ゲル化の間、膜が自発的にガラスプレートから剥離することを観察した。次に全ての膜を3日間、周囲条件で乾燥させた。表10に、調製した膜、それらの構成物質、及び調製条件を示す。
【表10】
【0174】
[膜の特性評価]
[1.気体透過性試験、及び水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定]
本質的に例2において上記に開示したように、調製した表面変性PS膜について、水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定、及び気体透過性試験を行った。
【0175】
例2のように、10〜100kPaに渡るさまざまな膜間圧において、それぞれの乾燥した膜を通した窒素の透過流束を測定した。一般に、多孔性媒体のための気体透過性(B)は拡散項、及び粘性項を含み、これらの寄与は上記の方程式34によって求められたように、適用した圧力に依存する。
【0176】
類似して、全ての気体透過性実験の全体にわたって、気体透過性は圧力(P
m)から独立していることがわかった。したがって、気体透過性は、[16、及び17]のように式(34)の粘性項を除いて表され、比率(rε/L
p)の評価に有用な式(35)が得られる。
【0177】
例2のように、得られた値のバッチ間の相違を評価するために、同じキャスティング溶液のバッチから作った異なる膜シートを使用して、いくつかの気体透過性実験を繰り返した。さらに、それぞれの膜について、所定の気圧において気体流量の測定を3回行い、平均値を膜浸透性として報告する。
【0178】
次に、例2で述べたようにLEP
wについて測定を行った。実験は、キャスティング溶液バッチから作った3つの異なるシートを用いて3回行った。結果を平均し、それぞれの膜の最終的なLEPw値を得た。
【0179】
[2.走査電子顕微鏡検査(SEM)]
例2において述べたものと同じ系、及び技術を使用したSEMによって、SMMをブレンドしたPS膜の断面を分析した。
【0180】
[3.接触角(CA)の測定]
例2において述べたものと同じ系、及び技術を用いて、SMMをブレンドした膜の接触角(CA)を測定して、それらの疎水性/親水性を調査した。
【0181】
[DCMD実験]
SMMをブレンドしたPS膜についてのDCMD実験を行うために使用した実験的な系を
図15に示す。系の中心部は、2つの円筒状チャンバーから成るステンレススチールセルである。チャンバーの1つは、そのジャケットを通して加熱システムに接続し、液体供給原料の温度を制御する。他のチャンバーは冷却装置に接続し、透過物の温度を制御する。膜は、2つのチャンバー(供給側、及び透過側)の間に配置する。熱い供給溶液は膜の疎水性上層と接触して供給し、冷たい透過溶液は膜の親水性部分と接触している。有効膜面積は、2.75x10
−3m
2であった。定常状態に達したあと、±0.1℃の精度を有するデジタルメーターに接続した一対のセンサによって、それぞれのチャンバー内部で、バルク供給、及び透過物の温度を測定した。供給、及び透過液を、セルの内部で段階的マグネティックスターラーによって撹拌した。所定の期間で透過チャンバー内に集まった凝縮物を測定することによって、あらゆる場合においてDCMDの流束を算出した。実験は、最初に純水について行い、膜の水蒸気透過性を決定した。その後、0.5Mの塩化ナトリウムの水溶液を供給として使用した。
【0182】
実験は、供給及び浸透物の間の10℃温度差の下で行った。蒸留水を供給として使用した場合、撹拌速度を500rpmに維持しつつ、平均温度を20〜45℃まで変化させた。0.5MのNaCl溶液を供給として使用した場合、平均温度は45℃であり、撹拌速度は500rpmであった。供給及び浸透溶液の濃度を、伝導率測定器(712ΩMetrohm)によって決定した。溶質分離係数(α)は下式を使用して算出した。
【数40】
ここで、C
p、及びC
fはそれぞれ、透過及びバルク供給溶液中のNaCl濃度である。
【0183】
[結果及び考察]
[SMMの特性評価]
SMM(nSMM1、nSMM2、及びnSMM3)についての正確なT
g値は、サンプルを280℃まで加熱したが、装置の高温の限界のため得ることができなかった。
図8に示したSMMの化学構造によれば、m(CF
2の繰り返し単位の数)の値は、(FAE)の分子量から算出した。y(ジメチルシロキサンの繰り返し単位の数)の値は、PDMSの平均分子量から算出した。q(ウレアの繰り返し単位の数)は、SMMのフッ素含有量に基づいてSMMごとに推定した。SMMについてのT
g、重量平均分子量(M
w)、フッ素含有量(F質量%)、m、y、及びqの値を表11に与える。
【表11】
【0184】
[膜の特性評価]
全ての膜の接触角(CA)データを表12に示す。調製した膜の上面のCAは、膜の底面より高いことを観察し、これは膜上層の疎水性が底の副層の疎水性より高いことを示す。このことは、熱力学原理[15、16、20、22、23、及び25]に従って界面エネルギーを最小化するために、ゲル化の間、疎水性SMMが膜の上面に向かって移動する傾向があるという事実に起因している。
【0185】
表面変性高分子としてnSMM1、nSMM2、及びnSMM3を使用した、SMMをブレンドした膜のCAは、M1(96.66°)>M2、及びM3(それぞれ100.4°、及び100.52°)の順番で続いた。
【0186】
より高い親水性ポリマー濃度を有する膜は、膜上面においてより高い接触角を示した。表面変性高分子としてnSMM1を使用したが異なるPS濃度を有する、ブレンドした膜のCAは、M5>M4>M1の順番で続いた。更に、DMAcを溶媒として使用した、SMMをブレンドしたPS膜(M6)は、M1より高いCAを示した。類似の傾向は、非溶媒濃度の観点からも観察された(M7>M1)。
【表12】
【0187】
膜断面のSEM画像を
図16に示す。認められるように、全ての膜は、下を指状構造によって支持された高密度の上層を有する非対称構造である。しかしながら、膜の底部は異なる。膜M1、M2、及びM3の指状構造(それぞれ
図16a、
図16b、及び
図16c)は、小さいマクロボイドが垂直方向に形成した底面に達する。膜の底において、マクロボイドは、垂直なスポンジの様なポリマー層によって分離されていることがわかる。
【0188】
ポリマー濃度の観点から、M1膜、M4膜、及びM5膜のSEM画像(
図16a、
図16d、及び
図16eを参照)は、底層のマクロボイドのサイズがポリマー濃度の増加に伴い減少することを示した。一方、上層、及び中間層の構造は不変であり、すなわち、類似した高密度の上層は下の指状構造によって支持されている。
【0189】
DMAcを溶媒として用いて調製したM6膜(
図16f)は、NMPを溶媒として用いて調製した膜(
図16a)とは完全に異なる構造を示した。M6膜において、上層は下の短い指状構造によって支持された高密度の層であり、次に膜の中間、及び底層におけるスポンジの様な構造が続く。
【0190】
非溶媒添加物の濃度を変更したM1、及びM7膜は両者とも(
図16a、及び
図16gを参照)、下の指状構造によって支持された上面の高密度の層を有する類似の構造を示した。しかしながら、M7におけるマクロボイドのサイズはM1より小さかった。そのうえ、膜の底においてマクロボイドを分離する垂直なスポンジの様なポリマー層は、M7膜においてより顕著であった。
【0191】
LEP
w、及び(rε/L
p)についてのデータを表13にまとめる。データは、DCMDデータと共に後述する。
【表13】
【0192】
[膜の性能]
[1. SMMの種類の影響]
M1(nSMM1)、M2(nSMM2)、及びM3(nSMM3)膜を選択し、DCMD性能に対するSMMの種類の影響を比較した(膜調製条件については表10を参照)。
図17は、市販の膜(FGLP1425)のDCMD流束とともに、上記の膜のDCMD流束を示す。
図17aは蒸留水を供給として使用したときの、DCMD流束vs供給及び透過溶液の平均温度(T
m)を示し、また、
図17bは、0.5MのNaCl水溶液を供給として使用したときの同じ膜のDCMD流束を示す。
【0193】
アントワンの式に従って、温度に伴う蒸気圧の指数関数的な増加により、温度はMD流束に最も影響を及ぼす操作の変数であることが十分に記載されている[1〜6]。
図17aに示すように、市販の膜、及びSMMをブレンドしたPS膜は、T
mの増加に伴い、DCMD流束の指数関数的な増加を示した。
【0194】
図17a、及び17bは両者とも、DCMD流束の順序がM1>M2>M3>FGLP1425であることを示す。換言すれば、調製したSMMをブレンドしたPS膜は、市販の膜より高い透過流束を示した。特に、膜M1、M2、及びM3のDCMD流束は、試験した温度の範囲内での平均において、
図15aに示した市販の膜よりそれぞれ(43±8.51)%、(35±8.30)%、及び(31±6.63)%高いことがわかった。
【0195】
表13によれば、調査したそれらの膜のLEP
wは、M3>M2>M1の順序で続いた。これは、ラプラスの式[26]に従う最大孔径の順序が、流束の順序に一致するM1>M2>M3であろうことを示す。さらに、表13は、比率(rε/L
p)の減少する順序が、この場合も透過流束と同じ順序であるM1>M2>M3であることを示す。上記のポリエーテルイミド複合膜によって観察されるように、より高い(εr/L
p)比率を示す膜は、より高いDCMD流束を有することがある。これは、比率(εr/Lp)の増加が多孔性及び/若しくは孔半径の増大、又は有効空隙長さの減少を意味することから、予想される。
【0196】
図17bにおいて観察できるように、塩化ナトリウムの存在下で、より小さな透過流束を得た。M1、及びFGLP1425の流束は、供給として蒸留水を使用したときに得られた流束と比較して、13〜15%減少した。一方、M2及びM3の場合、流束の低下は約26%であった。一般に、NaClの存在下においては、水蒸気圧が減少し、結果として蒸気輸送のための駆動力がより低くなるため、流束の低下が観察されることが予測される。さらに、濃度分極化によりNaCl濃度が膜表面に向かって増加する供給の膜表面の隣に境界層が発達する。濃度境界層、及び温度境界層の存在は、共に駆動力を減らす。
【0197】
溶質分離係数は、下式で定義される。
【数41】
ここでC
p、及びC
fは、それぞれ透過、及びバルクの供給溶液におけるNaCl濃度であり、試験した全ての膜について99.9%より高かった(試験した全ての膜において、透過物の伝導率は常に25μS/cmより小さい)。これは、SMMをブレンドした膜M1、M2、及びM3がMDプロセスにおいて有用であることを示す。
【0198】
[2.ポリマー濃度の影響]
M1(10質量%)、M4(12質量%)、及びM5(14質量%)膜を選択し、DCMD流束に対する親水性ホストポリマー(PS)濃度の影響を調査した(表10を参照)。
図18は、市販の膜(FGLP1425)のDCMD流束とともに、上記の膜のDCMD流束を示す。
図18aは、蒸留水を供給として使用したときの、DCMD流束vs供給及び透過溶液の平均温度(T
m)を示し、また、
図18bは、0.5MのNaCl水溶液を供給として使用したときの同じ膜のDCMD流束を示す。
【0199】
透過流束のデータを比較すれば、M1膜は、試験した膜の中で最良の性能を示した。上述したように、M1膜は市販の膜と比較して(43±8.51)%の流束の強化を示した。反対に、M4及びM5膜のDCMDは、試験した温度の範囲内の平均において、市販の膜の流束よりそれぞれ(43±3.69、及び94±1.64)%低い流束を示した。
【0200】
表13によれば、LEPw値の増加する順序はM1<M4<M5であり、このことはM1膜がラプラス式[26]に従って最も大きい最大孔径を有すること、及び/又はより低い疎水性を有すること(すなわち上層のCAがより小さい)を示す。εr/L
p値の減少する順序は、一方、M1>M4>M5であった。この傾向は、より高いεr/L
p値を有する膜がより高い流束を示すという発明者らの前記の結論を立証する。
【0201】
ポリマー濃度の上昇は、最大孔径の減少、又はεr/L
p比率の減少に起因する、透過流束の著しい減少を引き起こすと結論付けることができる。異なるポリマーを使用したときに、類似の傾向が観察された[16、及び23]。
【0202】
NaClの存在下において(
図18bを参照)、流束は、蒸留水を供給として使用したときに得られた流束の値と比較して減少した。M4及びM5膜の場合、流束の低下はそれぞれ、66%、及び43%であった。繰り返せば、これは、温度境界層と共に流束の低下に寄与する濃度境界層の形成によって説明することができる。
【0203】
溶質分離係数は、全ての上記の膜について99.9%より高かった。透過物の伝導率は、M4、及びM5膜について約12μS/cmであり、また、市販、及びM1膜について約23μS/cmであった。
【0204】
[3. 溶媒の種類の影響]
異なる溶媒を用いて調製したSMM/PS膜の比較のために、M1(NMP)、及びM6(DMAc)を選択した。他の膜調製パラメータは変えずに保った(表10を参照)。
図19は、市販の膜(FGLP1425)のDCMD流束とともに、上記の膜のDCMD流束を示す。
図19aは、供給として蒸留水を使用したときの、DCMD流束vs供給及び透過溶液の平均温度(T
m)を示し、また、
図19bは、0.5MのNaCl水溶液を供給として使用したときの同じ膜のDCMD流束を示す。
【0205】
図19aに示すように、市販の膜、及びSMMをブレンドしたPS膜は、SMMの種類の影響に関する節において述べたように、T
mの増加に伴いDCMD流束の指数関数的な増加を示した。
【0206】
M1膜は、市販、又はM6膜の流束より優れた流束を示した。特に、流束の減少する順序は、M1>FGLP1425>M6であった。M6膜の流束は、試験した温度の範囲内での平均において、市販の膜の流束より約(53±2.73)%低かった。この減少する順序は、表13に示すように、それぞれSMMをブレンドしたPS膜のLEP
wの増加する順序に一致した。より具体的には、LEP
wの増加する順序は、M1(2.9bar)<M6(3.2bar)であった。これは、より低いLEP
wを有する膜は、これらがより大きい最大孔径を有するのでより高い流束を示すという発明者らの前記の結論を立証する。更に、流束の減少する順序は、比率(εr/L
p)の減少する順序と一致し、すなわちM1(1.15x10
−4)>M6(1.65x10
−6)である。これは、比率(εr/L
p)と透過流束との間の関係の、発明者らの前記の結論を更に立証する。
【0207】
M6膜は、中間、及び底の副層において、MDにおいてより有利な[13]、M1膜より発達したスポンジのような構造を示した(
図16a(M1)、及び
図16f(M6)を参照)にもかかわらず、流束における傾向が逆であったことは述べるに値する。これは、流束が、(εr/L
p)比率、及びLEP
wを含む上面のスキン層の特性によってより影響を受けることを示唆する。
【0208】
NaClの存在下において、流束は、蒸留水を供給として使用したときに得られた流束の値と比較して減少した(
図19bを参照)。M6膜の場合、流束の低下は58%であった。繰り返せば、これは濃度境界層の形成によって説明することができる。最も重要なことに、溶質分離係数は、M6及びM1膜についてのそれぞれ約12μS/cm、及び23μS/cmの透過物の伝導率に関係して、全ての膜について99.9%より高かった。
【0209】
[4.非溶媒(エタノール)濃度の影響]
異なる非溶媒濃度によって調製したSMM/PS膜の比較のため、M1(エタノール10%)、及びM7(エタノール20%)を選択した。他の膜調製パラメータは変えずに保った(表10を参照)。
図20は、市販の膜(FGLP1425)のDCMD流束とともに、上記の膜のDCMD流束を示す。
図20aは、蒸留水を供給として使用したときの、DCMD流束vs供給及び透過溶液の平均温度(T
m)を示し、また、
図20bは、供給として0.5MのNaCl水溶液を使用したときの同じ膜のDCMD流束を示す。
【0210】
図20aに示すように、市販の膜、及びSMMをブレンドしたPS膜は、SMMの種類の影響に関する節において前述した理由のため、T
mの増加に伴うDCMD流束の指数関数的な増加を示した。
【0211】
M1膜は、市販又はM7膜の流束より優れた流束を示した。特に、流束の減少する順序は、M1>FGLP1425>M7であった。M7膜の流束は、市販の膜の流束より、試験した温度範囲において、市販の膜の流束より約(23±5.39)%低かった。この減少する順序は、表13に示すように、それぞれSMMをブレンドしたPS膜のLEP
wの増加する順序に一致した。より具体的には、LEPwの増加する順序は、M1(2.9bar)<M7(3.3bar)であった。これは、再び、より低いLEP
wを有する膜が、それらがより大きい最大孔径を有するので、より高い流束を示すという発明者らの前記の結論を立証する。更に、流束の減少する順序は、比率(εr/L
p)の減少する順序と一致し、すなわちM1(1.15x10
−4)>M7(5.48x10
−7)である。これは、比率(εr/L
p)と透過流束との間の関係における、前記の結論を更に立証する。
【0212】
非溶媒添加物を使用して、膜の孔径及び/又は多孔性を強化し[27]、並びにより良好な透過流束を達成したが、
図20に示した傾向は逆であった。結論的見解として、エタノール濃度を上昇させることによって透過流束を強化する必要性はない。Z.L.Xu、及びF.Qusay[28]は、ポリエーテルスルホンの限外濾過の中空繊維において、エタノール濃度を0から15質量%に増やすことが平均孔径を減少させ、及び孔密度の増加につながることを発見した。一方、彼らはまた、エタノール濃度を15質量%より高く上昇させた場合、逆のことが起こると報告した。NaClの存在下、流束は、蒸留水を供給として使用したときに得られた流束の値と比較して減少した(
図20bを参照)。M7膜の場合、流束の低下は38%であった。繰り返せば、これは、濃度境界層の形成によって説明することができる。溶質分離係数は、M7、及びM1膜についてのそれぞれ約18μS/cm、及び23μS/cmの透過物の伝導率に関係して、全ての膜について99.9%より高かった。
【0213】
[結論]
この例は、膜蒸留(MD)膜のための製造材料としてのポリスルホン(PS)の使用を実証した。これは3つの異なる種類の表面変性高分子と、親水性ポリマーであるPSをブレンドすることによって達成した。異なる膜調製パラメータ、例えばSMMの種類、親水性ポリマー濃度、溶媒の種類、及び非溶媒添加物の濃度が、DCMDにおける膜の特徴、及び性能に及ぼす影響を明らかに確認した。
【0214】
DCMDを支配する上面のスキン層の特徴は、報告した流束の傾向を説明できることがわかった。それらの特徴とは、平均孔径と単位有効空隙長さ当たりの有効空隙率との積(rε/L
p)、及び水の液体侵入圧力(LEP
w)である。換言すれば、より高いrε/L
p、及びより低いLEP
wを有する膜は、より高い透過流束を生じた。
【0215】
試験した膜調製条件の中で、nSMM1/PS膜は、nSMM2、及びnSMM3を用いて調製した膜より良好であることが分かった。NMPはDMAcより良好な膜調製のための溶媒であり、より低い親水性ポリマー(PS)濃度を用いて調製した膜は、より高いPS濃度の膜より高い透過流束を示し、そして最後に、10質量%の非溶媒添加物(エタノール)濃度を有する膜は、20質量%のエタノール濃度を用いて調製した膜より高い透過流束を生じた。
【0216】
一般に、SMM/PS膜は、新規なMD膜として有望である。SMM変性PS膜のいくつかは、市販のPTFE膜を使用して得た膜より高い透過流束を示したが、SMM変性PS膜はかなり低い孔径、及び多孔性を有した。
【0217】
最も重要なことに、分離係数は、試験した膜の全てについて99.9%より高いことがわかった。
【0218】
[例4]
[直接接触膜蒸留による、SMMをブレンドしたポリエーテルスルホンの、SMMをブレンドしたポリエーテルイミド膜に対する脱塩性能の比較]
この例において、nSMMを使用して、SMMをブレンドしたPES複合膜、及びPEI複合膜を調製した。膜は、以前の研究[16]において開示したように、相転換法による単一のキャスティング工程によって調製した。膜は、気体透過性試験、水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定、走査電子顕微鏡検査(SEM)、原子間力顕微鏡検査(AFM)、及び接触角測定(CA)を含むさまざまな特性評価技術を使用して特性評価した。
【0219】
この例の主要な目的は、蒸留水、又は0.5MのNaCl溶液を供給として使用したときに、親水性ポリマーの種類が膜の特徴、及びDCMD性能に及ぼす影響を調査することであった。結果を、市販のPTFE膜(FGLP1425、Millipore社、米国)の結果と比較した。調製した膜は、DCMDによる脱塩における実用的用途のために有用であった。この例は更に、複合疎水性/親水性複合膜の特徴と、DCMD性能との間の関連性を提供する。これは、膜蒸留における疎水性/親水性複合膜の原理の全体の理解を改善する。
【0220】
[実験]
[物質]
この実験において使用した全ての化学品、及びそれらの化学情報検索サービス(CAS)番号を表14に挙げた。この研究において使用したポリエーテルイミド(PEI)、及びポリエーテルスルホンの重量平均分子量(M
w)は、それぞれ15、及び30.8kDaである。使用した市販の膜は、Millipore社、Billerica、MA、米国によって供給された、多孔性0.70、及び公称孔径0.25μmを有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(FGLP1425)であった。
【表14】
【0221】
[SMMの合成、及び特性評価]
SMMを、例2で前述したように二段階溶液重合法を使用して合成した[23]。第1の重合工程を、所定の組成を有する溶液中で行い、MDIとPDMSとの反応から、プレポリマーとしてポリ尿素を形成した。第2の工程において、プレポリマーをFAEの添加によって末端キャップし、結果としてSMMの溶液にした。SMMの合成のためのモノマーの比率は、MDI:PDMS:FAE=3:2:2であった。調製したSMMは以下nSMM2と称し、また、
図8に示したPUDU構造を有する。
【0222】
調製したSMMは、例2、及び3で前述したように、フッ素含有量、ガラス転移温度、並びに重量平均分子量及び数平均分子量について特性評価した。上記のように、SMMの化学構造(
図8を参照)に示した繰り返し単位について、m、y、及びqのための値は、それぞれFAE、PDMS、及びSMMの平均分子量から算出した。
【0223】
[膜の調製]
SMM変性したPES膜及びPEI膜を、相転換法による単一のキャスティング工程で調製した[16]。γ―ブチロラクトン(GBL)をPEIのための非溶媒添加物として使用し、及びPESの場合にはエタノール(EtOH)を使用した。NMPを溶媒として使用した。所定の量のPES、又はPEIを、NMP/ETOH、又はNMP/GBL混合物中に溶解した。キャスティング溶液中のポリマー(PES、又はPEI)濃度を12質量%に維持しつつ、非溶媒添加物(EtOH、又はGBL)の量を10質量%に維持した。添加したSMMの濃度は1.5質量%であった。得られた混合物を、室温で少なくとも48時間、オービタルシェーカー内で撹拌した。全てのポリマー溶液を、使用前に、0.5μmテフロン(登録商標)フィルタを通してろ過し、室温で脱気した。ポリマー溶液を、キャスティングロッドを使用して、室温で滑らかなガラスプレート上に0.30mmの厚さにキャストした。キャストフィルムを、ガラスプレートと共に、室温で、蒸留水中に1時間浸漬した。ゲル化の間、膜が自発的にガラスプレートから剥離することを観察した。次に全ての膜を3日間、周囲条件で乾燥させた。2つの膜、ホストポリマーとしてPESからなるM1、及びホストポリマーとしてPEIに基づくM2を調製した。
【0224】
[膜の特性評価]
[1.気体透過性試験、及び水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定]
調製した表面変性膜について、水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定、及び気体透過性試験を行った。LEP
wの測定の前に気体透過性試験を行った。系、及び方法の詳細は、例2及び3、並びに本明細書の引用文献において上記で提供した。
【0225】
例2及び3のように、全ての気体透過性実験の全体にわたって、気体透過性はP
mから独立していることが分かった。従って、拡散機構が膜孔を通した気体輸送を支配すると考えられ、本実験で調製した膜が小さい孔径を有するという事実を明らかにしている。したがって、気体透過性は、式(34)の粘性項を無視し、比率(rε/L
p)を評価する際に有用であった式(35)を得ることによって与えられる。
【0226】
また、例2及び3のように、得られた値のバッチ間の変動を評価するために、同じキャスティング溶液のバッチから作った異なる膜シートを使用して、いくつかの気体透過性試験を繰り返した。さらに、それぞれの膜について、気体流量の測定を所定の気圧において3回行い、得られた値を平均して、膜浸透値を得た。
【0227】
次にLEP
wの測定を、前述、及び他の文献[14]で開示したように行った。実験は、各々のキャスティング溶液のバッチから作った3つの異なるシートを用いて3回行った。結果を平均し、それぞれの膜の最終的なLEP
w値を得た。
【0228】
[2.走査電子顕微鏡検査(SEM)]
例2において述べたものと同じ系、及び技術を使用したSEMによって、SMMをブレンドしたPS膜の断面を分析した。
【0229】
[3.原子間力顕微鏡(AFM)観察]
SMM/PES膜、及びSMM/PEI膜の上面(すなわち、疎水性表面)のモルホロジーを、原子間力顕微鏡(AFM)によって調査した。タッピングモード(TM)―AFM技術の詳細は、他の文献[33]で与えられる。粗さ、孔径、及び小塊凝集のサイズに関して膜上面を特性評価した。
【0230】
孔径、及び小塊/小節凝集サイズを、得られたAFM像からラインプロフィールの目視検査によって測定した。孔径、及び小塊/小節凝集サイズを得るために、断面のラインプロフィールを、TM―AFM画像のミクロン走査表面積を横断するよう選択した。小塊(すなわち、光領域、又は明るい領域、高いピーク)、又は孔(すなわち、暗い領域、低い谷、低下)の直径を、基準線に沿って一対のカーソルによって測定した。カーソルのそれぞれの一対間の水平距離を、小塊/小節集計、又は孔の直径としてとった。
【0231】
孔、又は小塊/小節凝集のサイズは、少なくとも30回の測定の平均に基づく。AFM像から得られる粗さパラメータは、粗さの絶対値とみなすべきではない。本調査において、全ての実験について同じ情報を使用し、キャプチャーした全ての表面は同様に扱った。それぞれの膜サンプルの粗さパラメータの評価は、さまざまなマイクロメートルのスキャンエリア(すなわち、1x1μm
2)に基づいた。Singhらによって開示された方法によって、孔径分布を算出した[34]。
【0232】
[4.接触角(CA)の測定]
例2で述べたものと同じ系、及び技術を用いて、SMM/PES膜、及びSMM/PEI膜の接触角(CA)を測定して、それらの疎水性/親水性を調査した。
[DCMD実験]
【0233】
調製したSMMをブレンドしたPES膜、及びPEI膜を、以前の研究[16]に示し、及び例3において上述したDCMDの構成によって試験した。
【0234】
[結果及び考察]
[SMM、及び膜の特性評価]
ガラス転移温度(T
g)、重量平均分子量(M
w)、数平均分子量(M
n)、フッ素含有量、及び構造的繰り返し単位の数を含むSMMの特徴を表15に与える。
【表15】
【0235】
SMMについての正確なガラス転移温度(T
g)値は、サンプルを280℃まで加熱することができたが、装置の高温の限界のため、得ることができなかった。
図8に示したSMMの化学組成について、m(CF
2の繰り返し単位の数)の値は、FAEの分子量から算出した。y(ジメチルシロキサンの繰り返し単位の数)の値は、PDMSの平均分子量から算出した。q(ウレア繰り返し単位の数)の値は、SMMの重量平均分子量から算出した。
【0236】
調製したSMM/PES膜、及びSMM/PEI膜は、以下それぞれM1、及びM2と称する。これらの膜から得られた接触角(CA)データを、表16に示す。調製した膜の上面のCAは、膜の底面より高いことを観察した。上面のCAは、90°にほとんど等しく、又は90°より高く、上層が十分に疎水性であることを示す。対照的に、膜の底面のCAは、90°より低く、底層の親水性を示す。これは、疎水性nSMMを親水性ポリマーにブレンドする相転換法による複合疎水性/親水性膜の形成の証拠である。
【表16】
【0237】
膜断面のSEM画像を
図21に示す。認められるように、全ての膜は、下を指状構造によって支持された高密度の上層を有する非対称構造である。しかしながら、膜の底部は異なる。膜M1の指状構造(
図21a)は、小さいマクロボイドが垂直方向に形成した底面に到達する。他方で、M2膜について(
図21b)、指状構造が断面の中央においてより不規則になり、大きいマクロボイドが水平方向に形成した。
【0238】
SMM/PES(M1)膜、及びSMM/PEI(M2)膜の上面のAFM像を
図22に示す。明るい側は最も高い点(小塊)であり、暗い領域は最も低い点(孔)である。上面の特徴を分析するために、AFM像分析プログラムを使用した。表17は、AFM分析からの、平均孔径、表面粗さ、及び平均小塊サイズを含む、調製した膜の上面の特徴を示す。
【表17】
【0239】
表17に示すように、M1膜は、M2膜と比較して、より小さい平均孔径、及びより大きい小塊サイズを示した。平均孔径(d
p)、及び幾何標準偏差(σ
p)のデータから、研究室製の膜の孔径分布を、確率密度関数によって表すことができる[34]。
【数42】
【0240】
M1膜、及びM2膜の孔径分布を、
図23に示す。認められるように、M1膜は、M2膜より狭い孔径分布を示した。LEP
w、及び平均孔径と単位有効空隙長さ当たりの有効空隙率との積(rε/L
p)についてのデータを表18にまとめる。
【表18】
【0241】
[膜の性能]
図24は、調製したM1(PES)膜、及びM2(PEI)膜のDCMD流束を、市販の膜(FGLP1425)の流束とともに示す。
図24aは、蒸留水を供給として使用した際のDCMD流束vs供給及び透過溶液の平均温度(T
m)を示し、また、
図24bは、供給として0.5MのNaCl水溶液を使用した際の同じ膜のDCMD流束を示す。
【0242】
アントワンの式に従って、温度に伴う蒸気圧の指数関数的な増加により、温度がMDの流束に最も影響を及ぼす操作の変数であることが十分に記載されている[1〜6、及び32]。
図24aに示すように、市販の膜、並びにSMMをブレンドしたPES膜、及びPEI膜は、T
mの増加に伴い、DCMD流束の指数関数的な増加を示した。
【0243】
図24a、及び24bの両者は、DCMD流束の順序がM1>M2>FGLP1425であることを示す。換言すれば、調製したSMMをブレンドしたPES膜、又はPEI膜は、市販の膜より高い透過流束を示した。特に、膜M1、及びM2のDCMD流束は、試験した温度の範囲内での平均において、
図24aに示すような市販の膜の流束よりそれぞれ40%、及び8%高いことがわかった。
【0244】
表18によれば、調査した膜のLEP
wは、M2>M1の順序で続いた。これは、最大孔径の順序が、ラプラスの式[13]に従って、両方の膜の疎水性が等しい場合、M1>M2であるべきことを示す。さらに、表18は、比率(rε/L
p)の減少する順序がM1>M2であることを示す。最大孔径、及び(rε/L
p)の両者の順序は、透過流束における順序に一致した。従って、より高い(rε/L
p)比率を示す膜がより高いDCMD流束を有すると結論付けることができる。比率(rε/L
p)の増加が多孔性及び/又は孔半径の増大、又は有効空隙長さの減少を意味するので、これは予想される。
【0245】
AFMデータによれば(表17を参照)、M1膜は、M2膜と比較してより小さい平均孔径を示した。これは、報告した透過流束の結果を否定する。しかし、rε/L
p値によれば、この流束の強化は、M1膜についてより大きな、有効空隙率比率(ε/L
p)の増加に起因するものである。
【0246】
図24bにおいて観察できるように、塩化ナトリウムの存在下で、より小さな透過流束が得られた。M1、M2、及びFGLP1425の流束は、供給として蒸留水を使用した場合に得られた流束と比較して13〜15%減少した。一般に、NaClの存在下においては、水蒸気圧が減少し、結果として蒸気輸送のための駆動力がより低くなるため、流束の低下が観察されることが予測される。さらに、濃度分極化によりNaCl濃度が膜表面に向かって増加する供給の膜表面の隣に、境界層が発達する。濃度境界層、及び温度境界層の存在は、共に駆動力を減らす。
【0247】
式(37)において前記に定義した溶質分離係数は、試験した全ての膜について99.9%より高かった(透過物の伝導率は、常に全ての試験した膜において25μS/cmより小さかった)。これは、SMMをブレンドした膜M1、及びM2がMDプロセスのために有用であることを示す。
【0248】
[結論]
この例において示したデータは、膜モルホロジーとMDにおける膜の性能との間の関係を見出すことによって、MDにおける疎水性/親水性膜の性能のより良好な、及び有益な理解を提供した。特に、より高い平均孔径と単位有効空隙長さ当たりの有効空隙率との積(rε/L
p)の膜は、より高い流束を生じた。より高い水の液体侵入圧力(より小さい最大孔径)を有する膜は、より高い流束を示した。
【0249】
試験した膜調製条件のうち、SMM/PESがSMM/PEI膜より良好な膜として機能することが判明した。
【0250】
全体として、両方の研究室製の膜は市販のPTFE膜よりよく機能したが、これらはかなり低い孔径、及び多孔性を有する。さらに、分離係数は、全ての試験した膜について99.9%より高かった。更に、MDにおいて実行可能な膜を製造するためにSMMが必要であるということを証明した。
【0251】
[例5]
[表面変性高分子の化学量論的比率が、複合疎水性/親水性膜の特徴、及び膜蒸留の性能に及ぼす影響]
本例は、nSMMの構造を変えることによって、MD膜の性能の更なる改善を提供する。この目的で、nSMMの合成において、nSMMの構成成分の化学量論的比率を系統的に変えた。
1.nSMM1:2(MDI):1(PDMS):2(FAE)
2.nSMM2:3(MDI):2(PDMS):2(FAE)
3.nSMM3:4(MDI):3(PDMS):3(FAE)。
【0252】
更に、新しく開発したSMMを、PEIホストポリマーとブレンドして、複合疎水性/親水性膜を調製した。これは、相転換法による単一のキャスティング工程において行った。
【0253】
気体透過性試験、水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定、走査電子顕微鏡検査(SEM)、及び接触角の測定(CA)を使用して、膜を特性評価した。SMMの種類が膜モルホロジーに及ぼす影響を確認し、発明者らは膜モルホロジーを膜の性能と関連づけることができた。
【0254】
0.5MのNaCl溶液の脱塩のためのDCMDによって膜を更に試験し、結果を市販のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜(FGLP1425、Millipore社、米国)と比較した。
【0255】
[実験の材料]
この実験において使用した全ての化学品、及びこれらの化学情報検索サービス(CAS)番号を上記の例2に開示し、及び表3に掲げる。
【0256】
[SMMの合成、及び特性評価]
SMMは、例2で前述したように、二段階溶液重合法を使用して合成した。SMMの構成成分の比率は、MDI:PDMS:FAE=2:1:2、3:2:2、及び4:3:3であった。調製したSMMは、PDMSの化学量論数に基づいて、以下それぞれnSMM1、nSMM2、及びnSMM3と称する。合成したSMMの化学構造をPUDUとして
図8に示す。
【0257】
調製したSMMは、例2及び3で前述したように、フッ素含有量、ガラス転移温度、並びに重量平均分子量及び数平均分子量について特性評価した。
【0258】
[膜の調製]
SMM変性PEI膜は、相転換法によって、単一のキャスティング工程で調製した[15、及び16]。γ―ブチロラクトン(GBL)を非溶媒添加物として用いた。所定の量のPEIを、NMP/GBL混合物中に溶解した。キャスティング溶液中のPEI濃度を12質量%に維持しつつ、GBLの量を10質量%に維持した。3つの異なる種類のSMM(nSMM1、nSMM2、及びnSMM3)を、1.5質量%の濃度においてPEI溶液に加えた。得られた混合物を、室温で少なくとも48時間、オービタルシェーカー内で撹拌した。全ての得られたポリマー溶液を、使用前に、0.5μmテフロン(登録商標)フィルタを通してろ過し、室温で脱気した。ポリマー溶液を、キャスティングロッドを使用して、室温で滑らかなガラスプレート上に0.30mmの厚さにキャストした。次に、キャストフィルムをガラスプレートと共に室温で蒸留水中に1時間浸漬する前に、所定の時間、周囲温度で溶媒を蒸発させた。ゲル化の間、膜が自発的にガラスプレートから剥離することを観察した。次に全ての膜を3日間、周囲条件で乾燥させた。表19に、調製した膜、それらの構成物質、及び調製条件を示す。
【表19】
【0259】
[膜の特性評価]
[1.気体透過性試験、及び水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定]
調製した表面変性膜について、水の液体侵入圧力(LEP
w)の測定、及び気体透過性試験を行った。LEP
wの測定の前に気体透過性試験を行った。系、及び方法の詳細は、例2及び3、並びに本明細書の引用文献において上記で提供した。
【0260】
例2及び3のように、全ての気体透過性実験の全体にわたって、気体透過性はP
mから独立していることが分かった。従って、拡散機構が膜孔を通した気体輸送を支配すると考えられ、本実験で調製した膜が小さい孔径を有するという事実を明らかにしている。したがって、気体透過性は、式(34)の粘性項を無視し、比率(rε/L
p)を評価する際に有用であった式(35)を得ることによって与えられる。
【0261】
また、例2及び3のように、得られた値のバッチ間の変動を評価するために、同じキャスティング溶液のバッチから作った異なる膜シートを使用して、いくつかの気体透過性試験を繰り返した。さらに、それぞれの膜について、気体流量の測定を所定の気圧において3回行い、得られた値を平均して、膜浸透値を得た。
【0262】
次にLEP
wの測定を、前述、及び他の文献[14]で開示したように行った。実験は、各々のキャスティング溶液のバッチから作った3つの異なるシートを用いて3回行った。結果を平均し、それぞれの膜の最終的なLEP
w値を得た。
【0263】
[2.走査電子顕微鏡検査(SEM)]
例2において述べたものと同じ系、及び技術を使用したSEMによって、SMMをブレンドしたPS膜の断面を分析した。
【0264】
[3.X線光電子分光(XPS)]
例2で述べたものと同じ系、及び技術を用いたX線光電子分光法によって、それぞれのSMMをブレンドした膜の表面の元素組成を決定した。
【0265】
[4.接触角(CA)の測定]
例2において述べたものと同じ系、及び技術を用いて、SMMをブレンドした膜の接触角(CA)を測定して、それらの疎水性/親水性を調査した。
【0266】
[DCMD実験]
以前の研究[36]に示したDCMDの構成によって、調製したSMMをブレンドしたPEI膜を試験した。実験は、例2において上述した系、及び方法を使用して行った。
【0267】
[結果及び考察]
[SMMの特性評価]
SMM(nSMM1、nSMM2、及びnSMM3)についての正確なT
g値は、サンプルを280℃まで加熱したが、装置の高温の限界のため得ることができなかった。
図8に示したSMMの化学構造によれば、m(CF
2の繰り返し単位)の値は、(BAL)の分子量から算出した。y(ジメチルシロキサンの繰り返し単位)の値はPDMSの平均分子量から算出した。q(ウレアの繰り返し単位の数)は、SMM分子量(q
Mwt)、及びフッ素含有量(q
Fwt%)の2つの異なる方法論を使用して、SMMごとに推定した。SMMについてのT
g、数平均分子量(M
w)、フッ素含有量(F質量%)、m、y、q
Mwt、及びq
Fwt%の値を、表20に与える。
【表20】
【0268】
[膜の特性評価]
全ての膜の接触角(CA)データを表21に示す。調製した膜の上面のCAは、それらの底面より高いことを観察した。同じ条件で調製した膜M2のCAと比較してより高い膜M1、及びM3のCAは、nSMM1(M1)、及びnSMM3(M3)を用いて調製した膜の疎水性が、nSMM2(M2)を用いて調製した膜の疎水性より高いことを示す。
【表21】
【0269】
PEI、及びSMMをブレンドしたPEI膜についてのXPS分析の結果を表22に示す。フッ素は、PEI膜中に検出されなかった。これは、フッ素はSMMに関連するので、予想された。全てのSMMをブレンドしたPEI膜について、フッ素含有量は、底面より上面において高いことがわかり、これはSMMの上面への移動を示している。nSMM1をブレンドしたPEI膜(M1)は、それぞれnSMM2、及びnSMM3をブレンドしたPEI膜(M2、及びM3)より多くのフッ素を示した。これは、SMMのフッ素含有量の順序、すなわちnSMM1>nSMM2>nSMM3(表20)に関連がある。nSMM1、及びnSMM2をブレンドしたPEI膜の上面のフッ素含有量が、底面より著しく高かったことは述べるに値する。一方、nSMM3をブレンドしたPEI膜は、上面と底面の間の小さな違いのみを示した。これは、nSMM1、及びnSMM2の上層への移動が、nSMM3より非常に速かったことを示す。nSMM2の上層への速い移動は、〔25〕において報告されている。
【表22】
【0270】
膜断面のSEM画像を
図25に示す。認められるように、全ての膜は、下を指状構造によって支持された高密度の上層を有する非対称構造である。しかしながら、膜の底部は異なる。膜M1、及びM3の指状構造(それぞれ
図25a、及び
図25c)は、小さいマクロボイドが垂直方向に形成した底面に到達する。一方、M2膜について(
図25b)、指状構造は断面の中央においてより不規則になり、大きいマクロボイドが水平方向に形成した。
【0271】
LEP
w、及び平均孔径と単位有効空隙長さ当たりの有効空隙率との積(rε/L
p)のデータを、表23にまとめる。LEP
w値の増加する順序は、M2(4.0bar)<M1(4.5bar)<M3(4.7bar)であった。ラプラスの式[27]によれば、上記の順序は、孔径の減少、及び/又は疎水性の増加の順序と同様であるべきである。表23のεr/L
p値(M2(1.53×10
−5)>M1(6.02×10
−6)>M3(2.74×10
−6))、及び表21のCAデータ(M2(91.93°)<M1(93.55°)<M3(100.17°))を調べると、両者が満たされていることが分かる。
【表23】
【0272】
[膜の性能]
図26は、市販の膜(FGLP1425)のDCMD流束とともに、調製した膜のDCMD流束を示す。
図26aは、蒸留水を供給として使用した場合の、DCMD流束vs供給入口温度を示す。
図26bは、0.5MのNaCl水溶液を供給として使用した場合の、これらの膜のDCMD流束を示す。観察できるように、市販の膜、及びSMMをブレンドしたPEI膜は、供給入口温度の増加に伴い、DCMD流束の指数関数的な増加を示した。
図26a、及び26bの両者は、DCMD流束の順序がM2>FGLP1425>M1>M3であることを示す。nSMM2をブレンドしたPEI膜(M2)は、市販の膜より10%高い透過流束を示した。一方で、M1、及びM3は、市販の膜の流束よりそれぞれ42%、及び72%低い流束を示した。
【0273】
NaCl水溶液についての透過流束は、塩溶液のより低い蒸気圧を反映して、蒸留水の流束より25〜30%低かった。DCMD流束の減少の他の原因は、供給膜側中のNaCl溶質の存在による濃度分極化である[16]。塩溶液を用いた調査を参照すれば、溶質分離係数(式(37)によって定義される)は、調製した、及び市販の膜の両者について99%より高かった。これは、以前の研究[16〜18]において報告したように、SMMをブレンドした膜M1、M2、及びM3が有望なMD膜であることを示す。DCMD流束の順序が、ちょうど(rε/L
p)における減少の順序であるM2>M1>M3である点に注目すると興味深い。従って、εr/L
pがより高いほど、流束はより高くなる可能性があると結論付けることができる。これは(rs/L
p)の増加が、多孔性若しくは孔半径の増大、又は有効空隙長さの減少と同時に起こり、当然バリア抵抗の減少を引き起こすことがある、という事実に整合している。にもかかわらず、気体輸送と蒸気輸送との間に見られる並列関係は、以前の研究[14]において記述している。
【0274】
更に、最も低いLEP
w、及びCAを有する膜は、前述したように最も大きい最大孔径を有するという事実に起因して最も高い流束を示したため、報告した流束の結果はLEP
w及びCAの測定とよく合う。
【0275】
図25に示したSEM画像によれば、M2膜のマクロボイドのサイズは、M1及びM3膜のマクロボイドのサイズより大きかった。これは、バリア抵抗を物質移動の方へ減らし、その結果として流束を強化した可能性がある。
[引用]
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【0276】
この明細書に記載した全ての刊行物、特許、及び特許出願は、本発明に関係する当業者の技術レベルを表し、並びにあたかもそれぞれの個々の刊行物、特許、又は特許出願が具体的及び個々に引用により含まれることが示されたと同じ程度に、本明細書において引用により含まれる。
【0277】
したがって、本発明が開示され、本発明をさまざまな方法に変形してもよいことは明らかである。そのようなバリエーションは、本発明の趣旨、及び範囲からの逸脱とみなされるべきでなく、当業者にとって明らかであるような全てのそのような変形例は、請求項の範囲内に含まれることを意図する。
本発明の実施態様の一部を以下の項目1−24に列記する。
[1]
親水性ポリマー層、疎水性ポリマー層、及びフッ化表面変性高分子(SMM)を含む、複合疎水性/親水性膜。
[2]
前記親水性ポリマー層がポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリデン、及び酢酸セルロースからなる群から選択される、項目1に記載した複合膜。
[3]
前記フッ化表面変性高分子(SMM)が、ポリウレタン化学を使用して合成し、及びフッ化末端基を用いて調整したオリゴマーフルオロポリマーから成る、項目1、又は2のいずれか一つの項目に記載した複合膜。
[4]
前記フッ化SMMを前記親水性ポリマー層とブレンドした、項目1〜3のいずれか一つの項目に記載した複合膜。
[5]
前記SMMがポリ(ウレタンプロピレングリコール)、及びポリ(ウレアジメチルシロキサンウレタン)からなる群から選択された、項目4に記載した複合膜。
[6]
前記SMMが、4,4’―メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、及びポリプロピレングリコール(PPG)からポリウレタンプレポリマーを形成する第1の重合工程と、2―(パーフルオロアルキル)エタノールの添加によってポリウレタンプレポリマーを末端キャップする第2の重合工程とを含む二段階重合法を使用して調製したポリ(ウレタンプロピレングリコール)である、項目5に記載した複合膜。
[7]
MDI:PPG:FAEの比率が約3:2:2である、項目6に記載した複合膜。
[8]
前記SMMが、4,4’―メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、及びα,ω―アミノプロピルポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)からポリ尿素プレポリマーを形成する第1の重合工程と、2―(パーフルオロアルキル)エタノール(FAE)の添加によってポリ尿素プレポリマーを末端キャップする第2の重合工程とを含む二段階重合法を使用して調製したポリ(ウレアジメチルシロキサンウレタン)である、項目5に記載した複合膜。
[9]
MDI:PDMS:FAEの比率が、約2:1:2、約3:2:2、又は約4:3:3である、項目8に記載した複合膜。
[10]
前記複合膜が流束、及び前記流束を最大化するために考えられるモルホロジーを有する、項目1〜9のいずれか一つの項目に記載した複合膜。
[11]
前記モルホロジーが、前記モルホロジーのさまざまな特徴を反映する数学的パラメータを編集することによって考えられた、項目10に記載した複合膜。
[12]
前記数学的パラメータが、前記疎水性層の厚み、多孔性密度、及び熱伝導率、並びに前記親水性層の厚み、多孔性密度、及び熱伝導率を表すパラメータを含む、項目11に記載した複合膜。
[13]
前記モルホロジーが以下、
【数43】
に従って考えられ、fiは前記モルホロジーを反映する、項目12に記載した複合膜。
[14]
前記複合膜が高い蒸気流束を有する、項目1〜13のいずれか一つの項目に記載した複合膜。
[15]
項目1〜14のいずれか一つの項目に記載した複合膜を含む、膜蒸留系。
[16]
前記系が直接接触膜蒸留系、減圧膜蒸留系、スイープガス膜蒸留系、及びエアギャップ膜蒸留系からなる群から選択された、項目15に記載した膜蒸留系。
[17]
親水性ポリマー層、及び疎水性ポリマー層を含む複合疎水性/親水性膜を製造する方法であって、前記方法は、
(a)ホスト親水性ポリマーを、溶媒中で、フッ化表面変性高分子(SMM)、及び非溶媒添加物とブレンドする工程と、
(b)前記親水性ポリマーブレンドをキャストし、所定の時間、室温で前記溶媒を蒸発させる工程と、
(c)工程(b)において生じた前記キャストフィルムを水中に浸漬してゲル化する工程とを含む、方法。
[18]
項目17に記載した複合膜を製造する方法であって、前記複合膜の流束を増加させるために、前記複合膜の前記疎水性ポリマー層の多孔性を最大化し、厚みを最小化する工程を更に含む、方法。
[19]
前記親水性ポリマー層の厚み、多孔性、及び熱伝導率を最大化する工程を更に含む、項目17、又は18のいずれか一つの項目に記載した複合膜を製造する方法。
[20]
前記ホスト親水性ポリマーがポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリデン、及び酢酸セルロースの少なくとも一つを含む、項目17〜19のいずれか一つの項目に記載した複合膜を製造する方法。
[21]
前記SMMがポリ(ウレタンプロピレングリコール)、及びポリ(ウレアジメチルシロキサンウレタン)からなる群から選択された、項目17〜20のいずれか一つの項目に記載した複合膜を製造する方法。
[22]
前記非溶媒添加物がγ―ブチロラクトン、及びエタノールからなる群から選択された、項目17〜21のいずれか一つの項目に記載した複合膜を製造する方法。
[23]
前記溶媒がN,N―ジメチルアセトアミド、及び1―メチル―2―ピロリジノンからなる群から選択された、項目17〜22のいずれか一つの項目に記載した複合膜を製造する方法。
[24]
親水性ポリマー層、及び疎水性ポリマー層を含む複合疎水性/親水性膜のMDの性能を最適化する方法であって、前記方法は、
(a)複合膜の上面の疎水性層の多孔性を最大化する工程と、
(b)複合膜の上面の疎水性層の厚みを最小化する工程と、
(c)底の親水性層の厚さ、多孔性、及び熱伝導率を最大化する工程とを含む、方法。