(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883046
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】多重アンテナ無線中継システム及びこれを用いたフィードバック干渉除去方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/005 20060101AFI20160225BHJP
H04B 7/15 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
H04B7/005
H04B7/15
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-27570(P2014-27570)
(22)【出願日】2014年2月17日
(65)【公開番号】特開2015-73259(P2015-73259A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2014年2月17日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0117250
(32)【優先日】2013年10月1日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514042934
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】李 政▲祐▼
【審査官】
前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】
Taneli Riihone, et al.,Residual self-interference in full-duplex MIMO relays after null-space projection and cancellation,2010 Conference Record of the Forty Fourth Asilomar Conference on Signals, Systems and Computers (ASILOMAR),米国,IEEE,2010年11月 7日,pages.653-657
【文献】
Jun Ma, et al.,A New Coupling Channel Estimator for Cross-Talk Cancellation at Wireless Relay Stations,IEEE Global Telecommunications Conference, 2009. GLOBECOM 2009.,米国,IEEE,2009年11月30日,pages.1-6
【文献】
Taneli Riihonen, et al.,Spatial loop interference suppression in full-duplex MIMO relays,2009 Conference Record of the Forty-Third Asilomar Conference on Signals, Systems and Computers,米国,IEEE,2009年11月 1日,pages.1508-1512
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/005
H04B 7/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信アンテナ、受信アンテナにより受信された信号をデジタル信号に変換する受信部、受信部の出力信号から干渉を除去する干渉除去部、前記干渉除去部の出力信号をアナログ信号に変換する送信部、及び前記送信部の出力信号を送出する送信アンテナを備える中継装置が複数具備される多重アンテナ中継システムであって、
前記それぞれの中継装置に具備されるそれぞれの前記干渉除去部は、前記受信部の出力信号が入力信号として提供され、前記複数の中継装置の各々から提供される基準信号が基準信号ベクターとして入力され、前記入力信号及び前記基準信号ベクターに応じて生成される現在時点のフィルタ係数ベクターにより予測信号を出力し、前記入力信号から前記予測信号を除去する、多重アンテナ中継システム。
【請求項2】
前記干渉除去部は、
前記入力信号から前記予測信号を除去してエラー信号を生成する干渉信号除去器、
前記エラー信号に基づいて基準信号を生成する基準信号生成器、及び、
前記入力信号、前記基準信号ベクター及び以前時点のフィルタ係数ベクターに応じて前記現在時点のフィルタ係数ベクターを生成し、前記現在時点のフィルタ係数ベクターにより前記基準信号ベクターをフィルタリングして前記予測信号を出力する干渉信号検出器を含む、請求項1に記載の多重アンテナ中継システム。
【請求項3】
前記干渉信号検出器は、
前記入力信号、前記基準信号ベクター及び前記以前時点のフィルタ係数ベクターに応じて生成される前記現在時点のフィルタ係数ベクターによりフィードバック干渉信号のチャンネルを推定するフィルタ係数生成部、及び、
前記フィルタ係数ベクターにより前記基準信号ベクターをフィルタリングして前記予測信号を出力するフィルタリング部を含む、請求項2に記載の多重アンテナ中継システム。
【請求項4】
前記フィルタ係数生成部は、
前記入力信号、前記基準信号ベクター及び前記以前時点のフィルタ係数ベクターに応じて、前記入力信号に含まれたエラー量を算出するエラー計算部、及び、
前記エラー量、前記基準信号ベクター及び前記以前時点のフィルタ係数ベクターに応じて、前記現在時点のフィルタ係数ベクターを算出するフィルタ係数計算部を含む、請求項3に記載の多重アンテナ中継システム。
【請求項5】
前記フィルタリング部は、前記フィルタ係数ベクター及び前記基準信号ベクターの内積を算出する、請求項3に記載の多重アンテナ中継システム。
【請求項6】
受信アンテナ、受信アンテナにより受信された信号をデジタル信号に変換する受信部、受信部の出力信号から干渉を除去する干渉除去部、前記干渉除去部の出力信号をアナログ信号に変換する送信部、及び前記送信部の出力信号を送出する送信アンテナを備える中継装置が複数具備される多重アンテナ中継システムにおけるフィードバック干渉除去方法であって、
前記干渉除去部は、
前記受信部の出力信号が入力される段階、
前記複数の中継装置の各々から提供される基準信号が基準信号ベクターとして入力される段階、
前記入力信号及び前記基準信号ベクターに応じて生成される現在時点のフィルタ係数ベクターにより予測信号を生成する段階、及び、
前記入力信号から前記予測信号を除去する段階を含む、フィードバック干渉除去方法。
【請求項7】
前記予測信号を生成する段階は、
前記入力信号、前記基準信号ベクター及び以前時点のフィルタ係数ベクターに応じて、前記現在時点のフィルタ係数ベクターを生成する段階、及び、
前記現在時点のフィルタ係数ベクターにより前記基準信号ベクターをフィルタリングして、前記予測信号を出力する段階を含む、請求項6に記載のフィードバック干渉除去方法。
【請求項8】
前記現在時点のフィルタ係数ベクターを生成する段階は、
前記入力信号、前記基準信号ベクター及び以前時点のフィルタ係数ベクターに応じて、前記入力信号に含まれたエラー量を算出する段階、及び、
前記エラー量、前記基準信号ベクター及び前記以前時点のフィルタ係数ベクターに応じて、前記現在時点のフィルタ係数ベクターを算出する段階を含む、請求項7に記載のフィードバック干渉除去方法。
【請求項9】
前記予測信号を出力する段階は、前記フィルタ係数ベクター及び前記基準信号ベクターの内積を算出する段階である、請求項7に記載のフィードバック干渉除去方法。
【請求項10】
iを1以上M(中継装置の数)以下の自然数としたとき、
時点nにおけるi番目の干渉除去部では、受信部からデジタル信号に変換された元信号とフィードバック干渉信号との混合信号が入力信号(d_i(n))として受信され、
干渉信号除去器は、前記干渉信号検出器から出力される予測信号(y_i(n))を入力信号(d_i(n))から除去して、最終出力信号であるエラー信号(e_i(n))を出力し、
基準信号生成器は、エラー信号(e_i(n))を一定時間遅延させて基準信号(r_ii(n))を生成し、
エラー信号(e_i(n))は、送信部に提供されるとともに、基準信号生成器に提供され、干渉除去部に入力される信号(d_i(n))の干渉信号を推定するのに用いられ、
干渉信号検出器は、入力信号(d_i(n))と共に、全ての中継装置で生成される基準信号(r_ii(n)、r_ik(n)、kはiでない1以上M以下の自然数)を、基準信号ベクター(r_i(n)=[r_i1(n)、r_i2(n)、…、r_iM(n)]T)として受信し、
以前時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n−1))を用いて現在時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n))を生成し、
現在時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n))で基準信号ベクター(r_i(n))をフィルタリングして予測信号(y_i(n))を出力し、
予測信号(y_i(n))は、入力信号(d_i(n))から除去され、干渉除去部の最終出力信号であるエラー信号(e_i(n))が出力される
ことを特徴とする請求項2に記載の多重アンテナ中継システム。
【請求項11】
iを1以上M(中継装置の数)以下の自然数としたとき、
時点nにおけるi番目の干渉除去部では、
受信部からデジタル信号に変換された元信号とフィードバック干渉信号との混合信号が入力信号(d_i(n))として受信され、
干渉信号除去器が、干渉信号検出器から出力される予測信号(y_i(n))を入力信号(d_i(n))から除去して、最終出力信号であるエラー信号(e_i(n))を出力し、
基準信号生成器が、エラー信号(e_i(n))を一定時間遅延させて基準信号(r_ii(n))を生成し、
エラー信号(e_i(n))が、送信部に提供されるとともに、基準信号生成器に提供され、干渉除去部に入力される信号(d_i(n))の干渉信号を推定するのに用いられ、
干渉信号検出器が、入力信号(d_i(n))と共に、全ての中継装置で生成される基準信号(r_ii(n)、r_ik(n)、kはiでない1以上M以下の自然数)を、基準信号ベクター(r_i(n)=[r_i1(n)、r_i2(n)、…、r_iM(n)]T)として受信し、以前時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n−1))を用いて現在時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n))を生成し、
現在時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n))で基準信号ベクター(r_i(n))をフィルタリングして予測信号(y_i(n))を出力し、
予測信号(y_i(n))が、入力信号(d_i(n))から除去され、干渉除去部の最終出力信号であるエラー信号(e_i(n))が出力される
ことを特徴とする請求項6に記載のフィードバック干渉除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関し、より詳しくは、多重アンテナ無線中継システム及びこれを用いたフィードバック干渉除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、移動通信システムでは、基地局からの電波の強度が弱くなる陰影地域、或いは、基地局から遠距離の地域における移動通信システムの通話可能地域(coverage)を拡張するために中継機を用いる。
【0003】
中継機としては、光線路を用いる光中継機と、基地局からの信号を無線で受信及び送信を行う無線中継機とがある。
【0004】
光中継機は、安定した性能は得られるが、光線路の布設や賃借による費用増加の短所がある。無線中継機は、光線路の布設が不要であるので、設置場所を自由に選択でき、保守管理が容易であり、周波数の再使用が可能であるという長所がある(例えば、特許文献1)。
【0005】
図1は、一般の無線中継機の概念図である。
【0006】
基地局1から無線で送出される信号は中継機3が受信する。中継機3は、受信した信号を増幅し、さらに無線信号として端末機5側に送出する。
【0007】
無線中継機は、受信信号及び送信信号が同一の周波数を用いるため、送受信アンテナ間の隔離度が十分に確保されなければならない。そうでなければ、送信アンテナから送出される信号が受信アンテナにフィードバックされて、基地局1から伝送された元信号とフィードバック信号とが結合して、発振現象を起こす等の問題が発生する。
【0008】
これを解決するために、フィードバック干渉を除去できる無線中継機(Interference Cancellation System;ICS)が導入され、
図2にその例を示す。
【0009】
図2を参照すれば、フィードバック干渉除去機能を持つ無線中継機10は、受信アンテナ101、第1の信号処理部103、干渉除去部105、第2の信号処理部107及び送信アンテナ109を含む。
【0010】
受信アンテナ101は、基地局からの高周波信号を受信する。第1の信号処理部103は、受信アンテナ101を介して受信された高周波信号の周波数帯域を基底帯域のデジタル信号に変換する。
【0011】
干渉除去部105は、第1の信号処理部103の出力信号から干渉信号を推定して除去した後、出力する。
【0012】
第2の信号処理部107は、干渉除去部105によりフィードバック干渉が除去された信号の周波数帯域を高周波帯域に上方調整し、アナログ変換して送信アンテナ109を介して送出する。
【0013】
このように、ICS中継機10は、中継機が受信したフィードバック干渉信号を推定して除去できるシステムである。送受信アンテナ間の距離を十分に離隔させる場合はICS中継機を用いる必要のないが、家庭用室内中継機のような場合は送受信アンテナ間の離隔度を十分に確保し難いため、中継機の発振を防止するためにICS中継機を用いる。そして、ICS中継機は、設置費用が低いため、離島・山間地域で選好している。
【0014】
このようなICS中継機は、単一のアンテナを用いる場合を仮定して設計した。しかしながら、第3世代移動通信システム、或いはLTE(Long Term Evolution)やモバイルワイマックス(Mobile WiMax)のような第4世代移動通信システムは、基地局及び端末機で多重アンテナを用いるので、中継機も多重アンテナを用いて信号を中継する。
【0015】
図3は、多重アンテナ中継システムの概略図である。多重アンテナ中継システム20は、複数の受信アンテナ201、受信アンテナ201の信号を増幅する中継機203及び増幅の信号を無線で送出する複数の送信アンテナ205を含む。複数の送信アンテナ205は、各々互いに異なる信号を端末機側に送出する。
【0016】
このような多重アンテナ中継システムにおいて、複数の送信アンテナ205の各々から送出される互いに異なる信号が、複数の受信アンテナ201に各々フィードバックされるので、一つの受信ンテナにフィードバックされる信号は、自分と連結している送信アンテナの送信信号だけでなく、他の送信アンテナの送信信号も含まれざるを得ない。
【0017】
したがって、多重アンテナ中継システムのためのフィードバック干渉除去技術が、切実に要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平10−224284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、複数の送信アンテナから各々フィードバックされる干渉信号を除去できる多重アンテナ中継システム及びこれを用いたフィードバック干渉除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一実施例に係る多重アンテナ中継システムは、受信アンテナ、受信アンテナにより受信された信号をデジタル信号に変換する受信部、受信部の出力信号から干渉を除去する干渉除去部、前記干渉除去部の出力信号をアナログ信号に変換する送信部、及び前記送信部の出力信号を送出する送信アンテナを備える中継装置が複数具備される多重アンテナ中継システムであって、前記それぞれの中継装置に具備されるそれぞれの前記干渉除去部は、前記受信部の出力信号が入力信号として提供され、前記複数の中継装置の各々から提供される基準信号が基準信号ベクターとして入力され、前記入力信号及び前記基準信号ベクターに応じて生成される現在時点のフィルタ係数ベクターにより予測信号を出力し、前記入力信号から前記予測信号を除去できる。
【0021】
一方、本技術の一実施例に係る多重アンテナ中継システムにおけるフィードバック干渉除去方法は、受信アンテナ、受信アンテナにより受信された信号をデジタル信号に変換する受信部、受信部の出力信号から干渉を除去する干渉除去部、前記干渉除去部の出力信号をアナログ信号に変換する送信部及び前記送信部の出力信号を送出する送信アンテナを備える中継装置が複数具備される多重アンテナ中継システムにおけるフィードバック干渉除去方法であって、前記干渉除去部は、前記受信部の出力信号が入力される段階;前記複数の中継装置の各々から提供される基準信号が基準信号ベクターとして入力される段階;前記入力信号及び前記基準信号ベクターに応じて生成される現在時点のフィルタ係数ベクターにより予測信号を生成する段階;及び、前記入力信号から前記予測信号を除去する段階;を含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、多重アンテナ中継システムにおいて、複数の送信アンテナから一つの受信アンテナにフィードバックされる干渉信号を除去できる。
【0023】
したがって、送受信アンテナ間の離隔度を確保しなくても、限定された空間内で多重アンテナ中継システムの発振現象を防止でき、高品質の無線通信サービスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】フィードバック干渉除去機能を持つ無線中継機の構成図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る多重アンテナ無線中継システムの構成図である。
【
図6】
図5の干渉信号検出器の一例を示す図である。
【
図7】
図6のフィルタ係数生成部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。以下の説明において、r_i(n)、w_i(n)、w_i(n−1)、w(n)、w1(n)、w2(n) はベクターを意味する。
【0026】
図4は、本発明の一実施例に係る多重アンテナ無線中継システムの構成図である。
【0027】
図4を参照すれば、本発明の一実施例に係る多重アンテナ無線中継システム30は、複数の中継装置310、320、…、3M0を含むことができる。
【0028】
それぞれの中継装置310、320、…、3M0は、受信アンテナ311、受信部313、干渉除去部315、送信部317及び送信アンテナ319を含むように構成される。
【0029】
受信部313は、受信アンテナ311により受信された高周波(RF)信号を基底帯域のデジタル信号に変換して出力する。このとき、受信アンテナ311により受信された高周波信号は、基地局から伝送される元信号と複数の送信アンテナ319からフィードバックされる干渉信号とが混合されている。
【0030】
干渉除去部315は、時点nにおいて、受信部313から出力されたデジタル形態の受信信号(スカラー)が入力信号(d_i(n)、iは1以上M以下の自然数)として提供される。そして、複数の送信アンテナから各々フィードバックされる干渉信号を除去するために、多重アンテナ中継システム30をなす全ての中継装置310、320、…、3M0から提供されるそれぞれの基準信号(r_ij(n))が基準信号ベクター(r_i(n)=[r_i1(n)、r_i2(n)、…、r_iM(n)]
T)として入力される。つまり、基準信号ベクター(r_i(n))はM個の行からなるベクター行列であり得る。ここで、i及びjは各々1以上M(中継装置の数)以下の自然数である。そして、r_ijは中継装置jから中継装置iに提供される基準信号を意味する。
【0031】
各中継装置310、320、…、3M0で生成される基準信号は、それぞれの中継装置の最終出力信号であるエラー信号(e_i(n))(スカラー)に基づき、例えばエラー信号(e_i(n))を所定時間遅延させて生成し得る。また、干渉除去部315は、基準信号ベクター(r_i(n))及び入力信号(d_i(n))を用いて、フィルタ係数ベクター(w_i(n)=[w_i1(n)、w_i2(n)、…、w_iM(n)]
T)を生成し、フィルタ係数ベクター(w_i(n))により基準信号ベクター(r_i(n))をフィルタリングすることで、予測信号(y_i(n))(スカラー)を出力する。予測信号(y_i(n))は、入力信号(d_i(n))から除去され、これにより、干渉除去部315の最終出力信号であるエラー信号(e_i(n))が出力される。
【0032】
送信部317は、干渉除去部315から出力されるエラー信号(e_i(n))を高周波(RF)アナログ信号に変換して、送信アンテナ319側に出力する。
【0033】
図5は、
図4の干渉除去部の一例を示す図である。
【0034】
図5を参照すれば、それぞれの干渉除去部315は、干渉信号除去器410、基準信号生成器420及び干渉信号検出器430を含むことができる。本発明の一実施例において、干渉除去部315は適応フィルタ(Adaptive filter)であり得る。
【0035】
図5には、M個の中継装置310、320、…、3M0のうち、i番目の中継装置3i0に含まれる干渉除去部315を示す。
【0036】
時点nにおいて、i番目の干渉除去部315は、受信部313からデジタル信号に変換された元信号とフィードバック干渉信号との混合信号を入力信号(d_i(n))として受信する。干渉信号除去器410は、干渉信号検出器430から出力される予測信号(y_i(n))を入力信号(d_i(n))から除去して、最終出力信号であるエラー信号(e_i(n))を出力する。
【0037】
エラー信号(e_i(n))は、送信部317に提供されるが、基準信号生成器420に提供されて、干渉除去部315に入力される信号(d_i(n))の干渉信号を推定するのに用いられる。すなわち、基準信号生成器420は、エラー信号(e_i(n))を一定時間遅延させて基準信号(r_ii(n))を生成できる。
【0038】
干渉信号検出器430は、入力信号(d_i(n))と共に、多重アンテナ中継システム30を構成する全ての中継装置310、320、…、3M0で生成される基準信号(r_ii(n)、r_ik(n)、kはiでない1以上M以下の自然数)を、基準信号ベクター(r_i(n)=[r_i1(n)、r_i2(n)、…、r_iM(n)]
T)として受信し、以前時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n−1))を用いて現在時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n))を生成する。そして、現在時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n))で基準信号ベクター(r_i(n))をフィルタリングして予測信号(y_i(n))を出力する。
【0039】
単一アンテナを用いる中継システムにおいて、フィードバック干渉除去のために適応フィルタを適用するのが知られている。時点nにおいて、適応フィルタのフィルタタブベクター(w(n))、すなわち、フィルタ係数は、フィルタタブサイズをLとする時、
【数1】
として提供される。フィルタ係数は、LMS(Least Mean Squared)、RLS(Recursive Least Squared)、又はそれらの変種アルゴリズムを適用して生成し得る。また、基準信号r(n)もベクターであり、
【数2】
として提供される。
【0040】
したがって、単一アンテナ中継システムでは、次の関係が成立される。
【0041】
【数3】
本発明は、M個のアンテナを用いる多重アンテナ中継システムにおけるフィードバック干渉を除去するために、適応フィルタのタブサイズをM*Lに拡張する。そして、基準信号ベクターのサイズもM倍に拡張して、i番目の中継装置3i0の場合、下記のような基準信号ベクター(r_i)を用いるようになる。
【0042】
【数4】
そして、L個のタブ単位で各送信アンテナから何れか一つの受信アンテナにフィードバックされるチャンネルを推定する。チャンネル推定の結果であるフィルタ係数ベクター(w_i(n))は、下記のようである。
【0043】
【数5】
ここで、w_ij(n)は、中継装置j(1以上M以下の自然数)の送信アンテナから中継装置iの受信アンテナにフィードバックされるフィードバックチャンネルに該当する、サイズがLであるフィルタ係数である。また、r_ijは、中継装置jから中継装置iに提供される、サイズがLである基準信号である。
【0044】
アンテナの個数が2個の場合を仮定すれば、タブサイズを2Lとし、最初のL個のタブは自分の送信アンテナから自分の受信アンテナにフィードバックされるチャンネルを推定し、残りのL個のタブは他の送信アンテナから自分の受信アンテナにフィードバックされるチャンネルを推定することになる。
【0045】
アンテナの個数が2個の場合、第1の中継装置310及び第2の中継装置320の各フィルタ係数ベクター(w1(n)、w2(n))及び基準信号ベクター(r1、r2)は、次の通りである。
【0046】
【数6】
【数7】
前述のような方式により、各中継装置310、320、…、3M0のフィルタ係数ベクター及び基準信号ベクターを定義すれば、単一アンテナ中継システムの適応フィルタアルゴリズムの原理を借用して、多重アンテナ中継システムのための適応フィルタを具現できる。
【0047】
図6は、
図5の干渉信号検出器の一例を示す図である。
【0048】
i番目の中継装置3i0の干渉信号検出器430は、フィルタ係数生成部4301及びフィルタリング部4303を含んで構成される。
【0049】
フィルタ係数生成部4301は、入力信号(d_i(n))、基準信号ベクター(r_i(n))及び以前時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n−1))に応じて、入力信号(d_i(n))に含まれたエラーを計算する。そして、計算されたエラー量、以前時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n−1))及び基準信号ベクター(r_i(n))を用いて、現在時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n))を生成する。現在時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n))を生成するために、LMS(Least Mean Squared)、RLS(Recursive Least Squared)、又はそれらの変種アルゴリズムが用いられる。
【0050】
フィルタリング部4303は、フィルタ係数ベクター(w_i(n))で基準信号ベクター(r_i(n))をフィルタリングして、予測信号(y_i(n))を出力する。
【0051】
フィルタ係数生成部4301は、例えば、
図7のように構成され得る。
【0052】
図7は、エラー計算部4311及びフィルタ係数計算部4321を含むフィルタ係数生成部4301を示す。
【0053】
エラー計算部4311は、入力信号(d_i(n))、基準信号ベクター(r_i(n))及び以前時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n−1))に応じて、入力信号(d_i(n))に含まれたエラー量(e(n))を算出する。
【0054】
エラー量(e(n))を算出するために、下記のような方式が用いられる。
【0055】
e(n)=d_i(n)−w_i(n−1)
Hr_i(n)(H:エルミート行列(Hermitian matrix)
フィルタ係数計算部4321は、エラー計算部4311の出力信号(e(n))、基準信号ベクター(r_i(n))及び以前時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n−1))に応じて、現在時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n))を算出する。
【0056】
フィルタ係数計算部4321は、例えば、下記のような方法により現在時点のフィルタ係数ベクター(w_i(n))を算出できる。
【0057】
w_i(n)=[w_i(n−1)+F(r_i(n)e(n))]
関数F(・)は、適応フィルタのアルゴリズム(LMS、RLS又はそれらの変種アルゴリズム)の種類により決定され得る。
【0058】
前述したように、予測信号(y_i(n))は、干渉信号除去器410に提供されて、入力信号(d_i(n))から予測信号(y_i(n))が除去されたエラー信号(e_i(n))が出力されるようにする。予測信号(y_i(n))を生成するために、フィルタ係数ベクター(w_i(n))
H(H:エルミート行列)と、基準信号ベクター(r_i(n))との内積(inner product)を算出する演算が行われる。
【0059】
本発明の多重アンテナ中継システムは、単一アンテナ中継システムと比較する時、フィルタ係数ベクター及び基準信号ベクターがアンテナの個数、すなわち、内蔵された中継装置の個数だけ増加するという点である。そして、このように増加したフィルタ係数ベクター及び基準信号ベクターを用いて、公知の適応フィルタのアルゴリズムがそのまま用いられるという長所がある。また、M個のアンテナがある場合、M個の独立した適応フィルタを実行させて、それぞれの受信アンテナにフィードバックされる干渉信号を独立して除去できる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施例に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲により定められ、特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その等価概念から導出される全ての変更や変形の形態が、本発明の範囲に含まれるものと解析すべきである。
【符号の説明】
【0061】
30 多重アンテナ中継システム
310、320、…、3M0 中継装置
315 干渉除去部
410 干渉信号除去器
420 基準信号生成器
430 干渉信号検出器